有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100J1A2 (EDINETへの外部リンク)
株式会社村田製作所 事業等のリスク (2020年3月期)
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。ただし、以下に記載された項目以外のリスクが生じた場合においても、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
当社では、代表取締役社長を委員長とするCSR統括委員会の下部委員会としてリスク管理委員会を設置しております。この委員会は、担当執行役員を委員長とし、総務、人事、経理、財務、企画、広報、知的財産、環境、情報システム、法務などの部門長で構成され、全社的なリスク案件についての対策を検討しております。そして、リスクの把握については、各リスクの主管部門が年2回、当社グループが現在直面しているリスク、あるいは近い将来に予想されるリスクを抽出・評価し、対策を策定し、リスク管理委員会でそれらの内容を審議し必要に応じて追加対策を指示しております。各リスクは、発生頻度と影響度を基に分類され、取締役会等において経営陣が重要度・緊急度の高いリスクを把握し、適切なリスク対策が講じられるようにしております。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2020年6月26日)現在入手し得る情報に基づいて当社グループが判断したものであります。
(1)当社製品の需要変動について
当社グループは、各種エレクトロニクス製品を生産する電子機器メーカーに対して、電子部品を供給することを主たる事業としております。
エレクトロニクス製品の需要動向は、世界の経済情勢に大きく左右されます。従って、経済情勢の急激な変化は、当社グループの業績に大きな影響を及ぼします。加えて、特に成長性の高いエレクトロニクス製品に使用される電子部品については、実態とは乖離する部品需要が発生することもあり、その場合、当社グループは需要変動の影響をさらに増幅して受けることになります。
当社グループでは、これに対して、1)通信市場を基盤としつつ、製品ライフサイクルの比較的長い自動車市場への事業展開を推進しリスク分散を図る、2)世界経済の動向を注視し、中長期的な需要予測に基づき生産設備と必要人員を迅速に手配し生産能力を拡充する、3)IT技術の積極活用等による生産効率の継続的改善に注力する、4)生産能力や稼働日数の柔軟な調整を行う、等の対策により、需要の急激な増加への対応と余剰資産等ロスの発生を抑制するよう対策を講じております。
しかし、世界経済やエレクトロニクス産業全般の急激な変化により当社グループの製品の需要が予測を大幅に下回る事態となった場合には、手配した生産設備、人員、資材、製品等が余剰となり、当社グループの業績や財政状態の悪化をもたらす可能性があります。一方、想定を超える需要が急激に発生した場合には、顧客の要求に応じられず販売機会を逃し、そのことが将来の競争力低下に繋がる可能性があります。
(2)製品の価格競争について
電子部品の価格は、厳しい値下げ要請や同業者間の熾烈な競争により、恒常的に低下する傾向にあります。さらに一部の製品については、東アジア地域の電子部品メーカーが低価格品を販売していることもあり、価格競争はさらに激化する傾向にあります。
これに対して当社グループは、小型、薄型、高信頼性、低消費電力等を実現する付加価値の高い新商品の継続的な投入による平均単価の維持向上、独自の材料技術や生産技術、現場のモノづくり力を統合した継続的かつ積極的なコストダウンの推進により、売上の拡大や収益性の向上に努めております。
しかし、価格競争の一層の激化により、価格下落を補うコストダウンや売上・生産の拡大が必ずしも実現できず、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(3)安定調達について
資材調達におけるリスクとしては、仕入先の事業運営上のトラブル、治安の悪化、感染症の蔓延、災害(人災・自然災害)、資源の枯渇等の発生に伴う資材品の供給停止や価格高騰が想定されます。
これに対して当社グループは、資材品の在庫政策に基づく適正在庫の確保、マルチベンダー化、仕入先の事業継続計画(BCP)体制の事前確認等を通じてそれらのリスクを低減しております。
また、資材仕入先の生産場所をデータベース化し、災害発生時に速やかに仕入先と連携できる体制を整えるとともに、災害発生時の初動対応フローを策定し、迅速な復旧対応ができる体制を整えております。
しかし、想定を超える規模・期間の災害等が発生した場合、当社グループの事業活動に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(4)特定の取引先、製品への依存について
当社グループには、当連結会計年度において連結売上高の10%を超える顧客グループが1グループあります。当社グループは強みであるグローバルな販売ネットワークを駆使して、当社グループの製品を幅広い用途、顧客に販売するなど特定の顧客への依存度を下げる取り組みを実施しておりますが、当該顧客グループからの受注が減少したり、当該顧客グループ製品の販売が低迷した場合は、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループにとって、コンデンサは当連結会計年度において連結売上高の36%を超える主力製品であります。5G化の進展、CASEと呼ばれる自動車産業の変革による需要機会は大きく、今後も継続して当事業の強化を図っていくとともに、通信用デバイス、モジュール、バッテリー事業等の拡大により収益の多角化を進めてまいります。しかし、コンデンサを代替しうる革新技術、製品の出現、強力な競合の台頭は、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(5)新技術・製品の開発について
当社グループが属する電子部品業界は、技術革新のスピードが加速し、製品のライフサイクルが短期化しており、将来にわたって当社グループの売上高を維持・拡大していくためには、革新的な新製品の開発を適切なタイミングで実施していくことが重要となっております。
当社グループでは、新技術や新製品開発に必要な研究開発投資を継続的かつ積極的に行っており、売上高に占める研究開発費の割合は6~7%で電子部品業界の中でも比較的高い水準にあります。
研究開発のテーマについては、将来の市場、製品及び技術動向の予測に基づいて選定し、研究開発活動の各段階において研究開発成果の評価を行うなど、その実効性と効率性の向上に努めております。
しかし、市場、製品動向の変化や当社グループの技術を代替しうる技術革新が予測を超えて起こった場合には、期待した製品需要の減退、開発期間の長期化や開発費用の増大を招き、将来の企業経営に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(6)海外での事業展開について
当社グループの海外売上高比率は90%を超えており、生産・販売等の事業活動をグローバルに展開しております。従って、当社グループの業績は、進出当該国・地域の政情、為替、税制等の法制度、金融・輸出入に関する諸規制、社会資本の整備状況、その他の地域的特殊性、及びこれらの諸要因の急激な変化の影響を受ける傾向にあります。
当社グループは、海外展開にあたり、市場や顧客の変化を的確にとらえ、高品質の製品と充実したサービスを提供できる体制を構築すべく、販売拠点は世界の主要市場を網羅できる地域に、生産拠点は採算性、周辺市場の拡大予測、生産コスト等から総合的に判断して配置することとしております。また、新たな国への進出に際しては、そのリスクを慎重に検討、評価した上で判断しております。その上で、進出した地域への貢献を重視し、価値向上に努め、国々での信頼を勝ち得る努力をしております。
一方で、昨今、米中の貿易摩擦や輸出規制に代表される国際情勢の変化が大きく、直接・間接的に事業に影響を及ぼす可能性があります。当社グループ連結売上高の約50%、生産高の約20%を中華圏が占めており、中国の内外情勢による経営へのインパクトは高まっております。これに対して、多方面から情報を収集し有事に迅速に対応できる体制の構築に努めており、加えて、事業継続計画(BCP)の観点からのアセアン等での生産強化による多極化、日本を含めた代替生産体制の実現等を進めております。しかし、想定を超える政治・経済・社会的要因の急激な変化が起きた場合には、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(7)M&A、業務提携、戦略的投資について
当社グループは、新技術の獲得、新たな事業領域への進出、既存事業の競争力強化などを目的に、必要に応じてM&A、業務提携、戦略的投資を実施しております。
当社グループは、このような他社との協業に際しては、対象となる市場や事業並びに相手先企業の経営状況などのリスク分析を行った上で判断しております。また、該当案件について定期的に検証を実施し、必要に応じて戦略の軌道修正を図り、協業の有効性を高めております。
しかし、市場環境や競争環境の著しい変化、提携当事者間の利害の不一致、買収した企業や事業の顧客基盤の変化又は人材の流出などにより、計画通り事業を展開することができず、投下資金の未回収や追加的な費用の発生、のれん及び長期性資産の減損損失などにより、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(8)顧客の信用リスクについて
当社グループは、世界各地の電子機器メーカーに対して電子部品を供給しておりますが、エレクトロニクス市場は事業環境の変化が激しいことから、当社グループが売上債権を有する顧客に財務上重要な問題が発生する可能性があります。
当社グループの売上は、大手電子機器メーカーを中心に多数の顧客に分散しており、また取引条件は顧客に対する継続的な信用リスク評価を勘案して設定するよう努めております。
しかし、エレクトロニクス製品の大幅な需要変動、エレクトロニクス業界での企業再編や技術革新、災害や感染症による操業の停止などにより、当社グループの重要な顧客の事業環境が急激に悪化した場合には、売上債権の一部が回収不能となることも想定され、そのことが当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(9)為替変動について
当社グループの海外売上高比率は約91%と高く、またグローバルに事業を展開していることから、生産・販売等の事業活動が為替変動の影響を大きく受けます。また、為替変動は当社グループの外貨建取引から発生する収益・費用及び資産・負債の円換算額を変動させ、業績及び財政状態に影響を及ぼします。当連結会計年度において為替変動が営業利益に及ぼす影響は、米ドルに対して円高方向に1円変動した場合に年間約45億円の減益となっております。
当社グループでは、為替変動リスクを軽減させるため、海外での販売について為替の変動を販売価格に反映させるよう努めており、また為替変動による損益への影響をヘッジする目的で外貨建取引金額の一定比率に対して為替予約契約を締結しております。
しかし、これらの対策を講じても為替変動による影響を完全に排除することは困難であり、米ドルなど他の通貨に対して、円高が急激に進んだり長期に及んだ場合には、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(10)資金について
当社グループは、設備投資及びその他の事業資金については、自らの事業活動により獲得した内部資金で対応することを基本方針としておりますが、事業の成長に向けた投資や運転資金のために資金需要が生ずる場合には、時々の金融市場の状況を踏まえた適切な手段により外部から調達することとしており、現時点においては銀行からの借入及び国内普通社債発行による資金調達を実施しております。金融市場の不安定化により、金融機関が貸出を圧縮した場合、円の金利が上昇した場合、また格付機関による当社信用格付けの引下げの事態が生じた場合などには、資金調達の制約を受け、資金調達コストが増加し、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、事業活動による資金需要への機動的な対応と金融市場の市況悪化等のリスクを最小限に抑えるため必要な資金流動性を確保しております。事業投資の原資として手許資金を保有しているため、投機目的の運用は行わず、信用リスクが小さいと考えられる銀行への預金など、安全性の高い金融商品に分散して資金を保有しております。しかし、金融市場の急激な変化、又は保有する預金や債券の信用リスクの増大等に伴い金融資産に損失が発生し、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(11)公的規制とコンプライアンスについて
当社グループは、国内及び諸外国・地域において、商取引、独占禁止法、知的財産権、製造物責任、環境、労務、租税等の法規制、事業投資の許認可、輸出入規制など、様々な公的規制の適用を受けて事業を行っております。これらの公的規制に違反した場合、監督官庁による処分、訴訟の提起、さらには事業活動の停止に至るリスクや企業ブランド価値の毀損、社会的信用の失墜等のリスクがあります。
当社グループでは、公的規制の対象領域ごとに主管する部門を決め、公的規制に対応した社内ルールを定めるなど、未然に違反を防止するための方策を講じ、適時にモニタリングを実施しております。
さらに、これらの取り組みに加え、当社ではコンプライアンス推進委員会を設け、法令遵守のみならず、役員・従業員が共有すべき倫理観、遵守すべき倫理規範等を「企業倫理規範・行動指針」として制定し、当社グループにおける行動指針の遵守並びに法令違反等の問題発生を全社的に予防するとともに、コンプライアンスの実効性を担保するため、コンプライアンス上の問題を報告する通報窓口を社内・社外に設けております。
しかし、グローバルに事業を展開するなかで、国や地域において、公的規制の新設・強化や想定外の適用等により、結果として当社グループが公的規制に抵触することになった場合には、事業活動に制約が生じたり、公的規制を遵守するための費用が増加するなど、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(12)品質問題について
当社グループは、各種エレクトロニクス製品を生産する電子機器メーカーに対して電子部品を供給しておりますが、顧客において当社グループの製品の品質に起因する事故、市場回収、生産停止等が生じた場合、顧客の損失に対する賠償責任を問われる可能性があります。また、自動車の電装品の増加に伴って、当社グループの自動車市場向けの売上は増加しており、市場回収に至った際に業績に与える影響度も増大しております。
当社グループは、製品の生産にあたり、設計審査、製品アセスメント、内部品質監査、工程管理、各種評価試験、仕入先など協力者への監査・指導、並びにM&A先や業務提携先との仕組みの融合等を通じ、開発段階から出荷に至る全ての段階で品質の作り込みや製品コンプライアンスの遵守を行う品質保証体制整備に努めております。
しかし、現時点での技術、管理レベルを超える事故が発生する可能性は皆無ではなく、品質に関わる重大な問題が起こった場合には、多額の損害賠償金の支払や売上の減少又は当社グループ製品に対する信頼の低下等により、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(13)環境規制について
当社グループは、国内外において、大気汚染、水質汚濁、土壌・地下水汚染、廃棄物処理、製品に含有する化学物質など、様々な環境法令の規制を受けております。当社グループでは、これら法令を遵守し、事業活動を進めておりますが、地球環境保全の観点、事業の継続的な発展の観点において、今後ますます国内外での環境規制が強化され、これに適応するための費用の増大が予想されます。特に、近年では資源循環と事業との調和も重要性を強く認識しており、リデュース・リユース・リサイクル(3R)の広い視野をもとに継続的な廃棄物削減の取り組みを進めております。この他、化学物質の使用に関する規制や揮発性有機溶剤の大気放出に関する規制への対応など、環境保全に関する当社グループの課題認識とその対応に関して、担当執行役員を委員長とする環境委員会を組織し、当社グループ全体で対策を推進しております。
しかし、環境規制への適応が極めて困難な場合、想定を超える費用の発生や事業からの部分撤退、当社グループへの社会的信頼が損なわれる可能性も想定され、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(14)気候変動によるリスクについて
当社グループは、気候変動対策に関して、継続的な省エネ施策に取り組みCO2排出量の抑制に努め、太陽光発電を含めた再生可能エネルギーの導入に取り組んでおります。また、SBT(Science Based Target)のガイドラインに沿って、当事業におけるCO2排出量を2021年度に140万t-CO2以下という目標を定めており、目標必達に向け、新たな制度導入を検討しております。また、2020年1月には、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)提言に賛同の意を表明しました。今後は気候変動に関するリスク・機会を抽出し、シナリオ分析に沿って財務影響の開示を進めてまいります。気候変動対策に関する当社グループの課題認識とその対応に関して、担当執行役員を委員長とする温暖化防止委員会を組織し、当社グループ全体で対策を推進しております。
しかし、ステーク―ホルダーからの要請への適応が極めて困難な場合、想定を超える費用の発生や当社グループへの社会的信頼が損なわれる可能性も想定され、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(15)情報セキュリティについて
当社グループは、社内情報処理の多くをIT化しており、入手した取引情報や個人情報の大半を電子データとして蓄積しております。電子データは瞬時にコピーしたり改ざんすることが技術的に可能であり、蓄積した電子データが不正アクセスや不正使用により外部へ流出したり、検知できないまま改ざんされる恐れがあります。
当社グループが持続的に成長を続けるためには、技術ノウハウをはじめとする企業機密を含め、会社の資産である情報を守ることが必要であります。そのため、リスク管理委員会の下部組織として情報セキュリティ分科会を設置し、情報セキュリティ施策の整備と運用の浸透を図っております。
情報セキュリティ基本方針、情報セキュリティ管理規定を制定し、国内外の全役員・従業員が情報セキュリティについて理解し、情報を正しく取り扱えるよう、日本語、英語、中国語の3ヶ国語で作成した「情報セキュリティガイドブック」の配付、情報セキュリティに関するメールマガジンの発行及び階層別の社内研修やセキュリティテスト等を実施しております。
また、当社グループの企業機密や個人情報の漏えい、サイバーアタックによる企業活動の停止などを抑止するため、全社のパソコンや利用サービスへのマルウェア対策、インターネット通信の監視、ID管理とアクセスコントロール、脆弱性の診断とその対応などを実施しております。また、グローバルで各種ログを監視し、セキュリティ事故になりうるインシデントへの対応体制も構築し、日々変化するサイバー攻撃への対応・対策を進めております。なお、サイバーセキュリティの取り組みにおいては、評価指標を定義し、その目標値との差を管理するなどのマネジメントサイクルの実践により日々改善を図っております。
しかし、想定した防御レベルを超える技術による不正アクセスや、予期せぬ不正使用があった場合には、電子データが外部へ流出したり検知できないまま改ざんされるリスクが残り、当社グループの社会的信用に影響を及ぼすのみならず、その対応のために多額の費用負担が発生し、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(16)知的財産権について
当社グループは、技術革新の著しい電子部品業界に属していることから、知的財産権は重要な経営資源の一つであり、知的財産権の保護、知的財産権にからむ紛争の回避は重要な経営課題であります。
当社グループでは、独自技術を保護するために、戦略的知財活動として事業に役立つ強い特許網を構築する全社的な活動をしております。特に、海外売上比率の上昇とともに海外出願を積極的に行っており、グローバルな知的財産ポートフォリオの構築を進めております。2018年度の当社グループの保有特許件数は20,595件であり、そのうち海外出願は12,474件となりました。また、事業状況の見極めと費用対効果を考慮した海外出願を行うために、積極的にPCT(特許協力条約)出願を利用しており、WIPO(世界知的所有権機関)にて公表されている2018年度のPCTに基づく国際出願ランキングにおいて、世界ランキング第29位となりました。また、材料から製品まで一貫生産体制を構築しているため、材料技術、基板技術などを独自に開発しており、数多くのノウハウを蓄積・管理しております。さらに、各事業部・開発部門に知財活動を推進する責任者及びパテントリーダーを設定し、知的財産部と協力しながら、責任者及びパテントリーダーが中心となって知財活動に取り組んでおります。また、知的財産に関する階層・職能教育、ワークショップ、パテントフォーラムなどのさまざまな社内イベントを実施することにより、当社グループ従業員の知財マインドの醸成を行っております。
しかし、当社グループの知的財産権が、第三者により無効とされる可能性、特定の地域では十分な保護が得られない可能性や知的財産権の対象が模倣される可能性もあります。このように知的財産権によって完全に保護されない場合、もしくは、機密管理しているノウハウが漏洩した場合は、当社グループの事業活動に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループでは、他社の権利を尊重するため、設計開発の適切なタイミングで、他社の知的財産権の調査及び確認を実行し、必要に応じて設計回避等の対策を行っております。しかし、当社グループの製品等が第三者の知的財産権を侵害しているとの主張を受ける可能性もあります。万一、このような主張を受けた場合、当社製品の生産・販売が制約されたり、損害賠償金・実施許諾料等の支払が発生し、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(17)税務に関するリスクについて
当社グループは、世界各国で販売や生産などの事業活動を行っており、各国税務当局から多額の追徴課税を課されるリスク、さらにそれに伴って発生する信用毀損リスク及び移転価格税制の課税による二重課税リスク等の税務リスクがあります。
当社グループは、「グローバルタックスポリシー」に従い、早期に税務リスク情報を収集し、法令の立法趣旨に照らして税務処理を決定し、税務処理に不確実性が残った場合は、税務当局への事前照会や外部専門家への相談を行い不確実性の排除に努めております。また、税務専門組織を独立した組織として設置し、専門的知識と経験豊富な人材の確保・育成を行い、税務リスク極小化のための体制を整備しております。
しかし、近年のビジネスの拡大とグローバル化の進展に伴い、税務リスクが顕在化する可能性は高まっており、また、その金額的重要性も高まる傾向にあります。税務リスクが顕在化した場合は、法人税等の追加負担が発生し、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(18)人材の採用・確保について
当社グループは、材料から商品までの一貫生産を行うとともに、主要な生産設備を内作するなど技術の独自性を追求しておりますが、技術の高度化、技術革新が加速する今日、多様な技術分野において優れた専門性を有した人材の必要性がますます高まっております。
一方、各産業分野における技術革新の進展、とりわけエレクトロニクス分野の広がりにより、当社グループが必要とする多様な技術領域の人材ニーズの産業界全体における増大や少子高齢化に伴う労働人口の減少など、優秀な人材の獲得は競争状態となっております。
これに対して当社グループでは、計画的な新卒採用に加え、ニーズに基づいた過年度卒の通年採用を実施しており、2020年10月に神奈川県横浜市に新たな研究開発拠点「みなとみらいイノベーションセンター」を設立し、重点成長市場である通信市場・自動車市場を中心とした事業に加え、エネルギー、ヘルスケア、IoTなどの新規市場向け人材やデジタルトランスフォーメーションに必要な人材の採用強化も進めてまいります。
また、能力開発を支援する教育制度の拡充、多様な社員の能力が十分に発揮できるよう適性を重視した配置や、専門系人材の適切なキャリアルートの設定、ワークライフバランス支援制度の整備により、社員のモチベーションを高め、社員の定着・育成に努めております。
しかし、雇用環境の変化などにより当社グループが求める人材の確保やその定着・育成が計画通りに進まなかった場合には、当社グループの将来の成長に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(19)災害・感染症等による事業活動の停止について
当社グループは、事業所所在地における大規模な自然災害の発生や感染症の流行等により、事業活動が長期間停止する可能性があります。
当社グループでは、地震災害による主要製品の操業停止の影響を最小限にし、「お客様に製品を安定供給する」という責任を果たすため、事業継続計画(BCP)を策定しており、生産拠点を国内外に分散するとともに、国内全拠点において一定規模の地震災害を想定して建物・生産設備の耐震性・安全性確保、通信・情報システムのバックアップ体制、在庫による供給維持などの施策を講じております。さらに、定期的な防災訓練や事業継続訓練の実施により、初動対応の実効性確認と継続的な改善や危機対応能力の向上とBCPの改善点の把握に取り組んでおります。
また、新型インフルエンザのパンデミックに備えて、グループ全体の基本計画を定め、WHO(世界保健機関)の警戒フェーズに対応した行動計画を策定しております。
なお、2020年1月以降世界的に感染が拡大している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関して、代表取締役社長を本部長とする危機対策本部を設置し、感染予防と感染拡大防止のための様々な施策を決定し、実行しております。具体的には、在宅勤務や時差出勤の活用、出張規制、社内における従業員の行動履歴の記録、食堂や職場における衝立の設置など従業員の感染防止のための施策や、感染者が発生した場合のBCPの策定など、新型コロナウイルス感染症による従業員の健康や当社の事業活動への影響が最小限になるよう取り組んでおります。
しかし、想定を超える大規模災害の発生や新型コロナウイルス感染症の更なる流行、新たな感染症の世界的な流行、原子力発電所の事故等による、長期にわたる製造ラインや情報システムの機能低下、世界レベルでの経済活動の停滞に伴う大幅な事業活動の縮小や停止が、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
当社では、代表取締役社長を委員長とするCSR統括委員会の下部委員会としてリスク管理委員会を設置しております。この委員会は、担当執行役員を委員長とし、総務、人事、経理、財務、企画、広報、知的財産、環境、情報システム、法務などの部門長で構成され、全社的なリスク案件についての対策を検討しております。そして、リスクの把握については、各リスクの主管部門が年2回、当社グループが現在直面しているリスク、あるいは近い将来に予想されるリスクを抽出・評価し、対策を策定し、リスク管理委員会でそれらの内容を審議し必要に応じて追加対策を指示しております。各リスクは、発生頻度と影響度を基に分類され、取締役会等において経営陣が重要度・緊急度の高いリスクを把握し、適切なリスク対策が講じられるようにしております。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2020年6月26日)現在入手し得る情報に基づいて当社グループが判断したものであります。
(1)当社製品の需要変動について
当社グループは、各種エレクトロニクス製品を生産する電子機器メーカーに対して、電子部品を供給することを主たる事業としております。
エレクトロニクス製品の需要動向は、世界の経済情勢に大きく左右されます。従って、経済情勢の急激な変化は、当社グループの業績に大きな影響を及ぼします。加えて、特に成長性の高いエレクトロニクス製品に使用される電子部品については、実態とは乖離する部品需要が発生することもあり、その場合、当社グループは需要変動の影響をさらに増幅して受けることになります。
当社グループでは、これに対して、1)通信市場を基盤としつつ、製品ライフサイクルの比較的長い自動車市場への事業展開を推進しリスク分散を図る、2)世界経済の動向を注視し、中長期的な需要予測に基づき生産設備と必要人員を迅速に手配し生産能力を拡充する、3)IT技術の積極活用等による生産効率の継続的改善に注力する、4)生産能力や稼働日数の柔軟な調整を行う、等の対策により、需要の急激な増加への対応と余剰資産等ロスの発生を抑制するよう対策を講じております。
しかし、世界経済やエレクトロニクス産業全般の急激な変化により当社グループの製品の需要が予測を大幅に下回る事態となった場合には、手配した生産設備、人員、資材、製品等が余剰となり、当社グループの業績や財政状態の悪化をもたらす可能性があります。一方、想定を超える需要が急激に発生した場合には、顧客の要求に応じられず販売機会を逃し、そのことが将来の競争力低下に繋がる可能性があります。
(2)製品の価格競争について
電子部品の価格は、厳しい値下げ要請や同業者間の熾烈な競争により、恒常的に低下する傾向にあります。さらに一部の製品については、東アジア地域の電子部品メーカーが低価格品を販売していることもあり、価格競争はさらに激化する傾向にあります。
これに対して当社グループは、小型、薄型、高信頼性、低消費電力等を実現する付加価値の高い新商品の継続的な投入による平均単価の維持向上、独自の材料技術や生産技術、現場のモノづくり力を統合した継続的かつ積極的なコストダウンの推進により、売上の拡大や収益性の向上に努めております。
しかし、価格競争の一層の激化により、価格下落を補うコストダウンや売上・生産の拡大が必ずしも実現できず、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(3)安定調達について
資材調達におけるリスクとしては、仕入先の事業運営上のトラブル、治安の悪化、感染症の蔓延、災害(人災・自然災害)、資源の枯渇等の発生に伴う資材品の供給停止や価格高騰が想定されます。
これに対して当社グループは、資材品の在庫政策に基づく適正在庫の確保、マルチベンダー化、仕入先の事業継続計画(BCP)体制の事前確認等を通じてそれらのリスクを低減しております。
また、資材仕入先の生産場所をデータベース化し、災害発生時に速やかに仕入先と連携できる体制を整えるとともに、災害発生時の初動対応フローを策定し、迅速な復旧対応ができる体制を整えております。
しかし、想定を超える規模・期間の災害等が発生した場合、当社グループの事業活動に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(4)特定の取引先、製品への依存について
当社グループには、当連結会計年度において連結売上高の10%を超える顧客グループが1グループあります。当社グループは強みであるグローバルな販売ネットワークを駆使して、当社グループの製品を幅広い用途、顧客に販売するなど特定の顧客への依存度を下げる取り組みを実施しておりますが、当該顧客グループからの受注が減少したり、当該顧客グループ製品の販売が低迷した場合は、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループにとって、コンデンサは当連結会計年度において連結売上高の36%を超える主力製品であります。5G化の進展、CASEと呼ばれる自動車産業の変革による需要機会は大きく、今後も継続して当事業の強化を図っていくとともに、通信用デバイス、モジュール、バッテリー事業等の拡大により収益の多角化を進めてまいります。しかし、コンデンサを代替しうる革新技術、製品の出現、強力な競合の台頭は、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(5)新技術・製品の開発について
当社グループが属する電子部品業界は、技術革新のスピードが加速し、製品のライフサイクルが短期化しており、将来にわたって当社グループの売上高を維持・拡大していくためには、革新的な新製品の開発を適切なタイミングで実施していくことが重要となっております。
当社グループでは、新技術や新製品開発に必要な研究開発投資を継続的かつ積極的に行っており、売上高に占める研究開発費の割合は6~7%で電子部品業界の中でも比較的高い水準にあります。
研究開発のテーマについては、将来の市場、製品及び技術動向の予測に基づいて選定し、研究開発活動の各段階において研究開発成果の評価を行うなど、その実効性と効率性の向上に努めております。
しかし、市場、製品動向の変化や当社グループの技術を代替しうる技術革新が予測を超えて起こった場合には、期待した製品需要の減退、開発期間の長期化や開発費用の増大を招き、将来の企業経営に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(6)海外での事業展開について
当社グループの海外売上高比率は90%を超えており、生産・販売等の事業活動をグローバルに展開しております。従って、当社グループの業績は、進出当該国・地域の政情、為替、税制等の法制度、金融・輸出入に関する諸規制、社会資本の整備状況、その他の地域的特殊性、及びこれらの諸要因の急激な変化の影響を受ける傾向にあります。
当社グループは、海外展開にあたり、市場や顧客の変化を的確にとらえ、高品質の製品と充実したサービスを提供できる体制を構築すべく、販売拠点は世界の主要市場を網羅できる地域に、生産拠点は採算性、周辺市場の拡大予測、生産コスト等から総合的に判断して配置することとしております。また、新たな国への進出に際しては、そのリスクを慎重に検討、評価した上で判断しております。その上で、進出した地域への貢献を重視し、価値向上に努め、国々での信頼を勝ち得る努力をしております。
一方で、昨今、米中の貿易摩擦や輸出規制に代表される国際情勢の変化が大きく、直接・間接的に事業に影響を及ぼす可能性があります。当社グループ連結売上高の約50%、生産高の約20%を中華圏が占めており、中国の内外情勢による経営へのインパクトは高まっております。これに対して、多方面から情報を収集し有事に迅速に対応できる体制の構築に努めており、加えて、事業継続計画(BCP)の観点からのアセアン等での生産強化による多極化、日本を含めた代替生産体制の実現等を進めております。しかし、想定を超える政治・経済・社会的要因の急激な変化が起きた場合には、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(7)M&A、業務提携、戦略的投資について
当社グループは、新技術の獲得、新たな事業領域への進出、既存事業の競争力強化などを目的に、必要に応じてM&A、業務提携、戦略的投資を実施しております。
当社グループは、このような他社との協業に際しては、対象となる市場や事業並びに相手先企業の経営状況などのリスク分析を行った上で判断しております。また、該当案件について定期的に検証を実施し、必要に応じて戦略の軌道修正を図り、協業の有効性を高めております。
しかし、市場環境や競争環境の著しい変化、提携当事者間の利害の不一致、買収した企業や事業の顧客基盤の変化又は人材の流出などにより、計画通り事業を展開することができず、投下資金の未回収や追加的な費用の発生、のれん及び長期性資産の減損損失などにより、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(8)顧客の信用リスクについて
当社グループは、世界各地の電子機器メーカーに対して電子部品を供給しておりますが、エレクトロニクス市場は事業環境の変化が激しいことから、当社グループが売上債権を有する顧客に財務上重要な問題が発生する可能性があります。
当社グループの売上は、大手電子機器メーカーを中心に多数の顧客に分散しており、また取引条件は顧客に対する継続的な信用リスク評価を勘案して設定するよう努めております。
しかし、エレクトロニクス製品の大幅な需要変動、エレクトロニクス業界での企業再編や技術革新、災害や感染症による操業の停止などにより、当社グループの重要な顧客の事業環境が急激に悪化した場合には、売上債権の一部が回収不能となることも想定され、そのことが当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(9)為替変動について
当社グループの海外売上高比率は約91%と高く、またグローバルに事業を展開していることから、生産・販売等の事業活動が為替変動の影響を大きく受けます。また、為替変動は当社グループの外貨建取引から発生する収益・費用及び資産・負債の円換算額を変動させ、業績及び財政状態に影響を及ぼします。当連結会計年度において為替変動が営業利益に及ぼす影響は、米ドルに対して円高方向に1円変動した場合に年間約45億円の減益となっております。
当社グループでは、為替変動リスクを軽減させるため、海外での販売について為替の変動を販売価格に反映させるよう努めており、また為替変動による損益への影響をヘッジする目的で外貨建取引金額の一定比率に対して為替予約契約を締結しております。
しかし、これらの対策を講じても為替変動による影響を完全に排除することは困難であり、米ドルなど他の通貨に対して、円高が急激に進んだり長期に及んだ場合には、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(10)資金について
当社グループは、設備投資及びその他の事業資金については、自らの事業活動により獲得した内部資金で対応することを基本方針としておりますが、事業の成長に向けた投資や運転資金のために資金需要が生ずる場合には、時々の金融市場の状況を踏まえた適切な手段により外部から調達することとしており、現時点においては銀行からの借入及び国内普通社債発行による資金調達を実施しております。金融市場の不安定化により、金融機関が貸出を圧縮した場合、円の金利が上昇した場合、また格付機関による当社信用格付けの引下げの事態が生じた場合などには、資金調達の制約を受け、資金調達コストが増加し、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、事業活動による資金需要への機動的な対応と金融市場の市況悪化等のリスクを最小限に抑えるため必要な資金流動性を確保しております。事業投資の原資として手許資金を保有しているため、投機目的の運用は行わず、信用リスクが小さいと考えられる銀行への預金など、安全性の高い金融商品に分散して資金を保有しております。しかし、金融市場の急激な変化、又は保有する預金や債券の信用リスクの増大等に伴い金融資産に損失が発生し、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(11)公的規制とコンプライアンスについて
当社グループは、国内及び諸外国・地域において、商取引、独占禁止法、知的財産権、製造物責任、環境、労務、租税等の法規制、事業投資の許認可、輸出入規制など、様々な公的規制の適用を受けて事業を行っております。これらの公的規制に違反した場合、監督官庁による処分、訴訟の提起、さらには事業活動の停止に至るリスクや企業ブランド価値の毀損、社会的信用の失墜等のリスクがあります。
当社グループでは、公的規制の対象領域ごとに主管する部門を決め、公的規制に対応した社内ルールを定めるなど、未然に違反を防止するための方策を講じ、適時にモニタリングを実施しております。
さらに、これらの取り組みに加え、当社ではコンプライアンス推進委員会を設け、法令遵守のみならず、役員・従業員が共有すべき倫理観、遵守すべき倫理規範等を「企業倫理規範・行動指針」として制定し、当社グループにおける行動指針の遵守並びに法令違反等の問題発生を全社的に予防するとともに、コンプライアンスの実効性を担保するため、コンプライアンス上の問題を報告する通報窓口を社内・社外に設けております。
しかし、グローバルに事業を展開するなかで、国や地域において、公的規制の新設・強化や想定外の適用等により、結果として当社グループが公的規制に抵触することになった場合には、事業活動に制約が生じたり、公的規制を遵守するための費用が増加するなど、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(12)品質問題について
当社グループは、各種エレクトロニクス製品を生産する電子機器メーカーに対して電子部品を供給しておりますが、顧客において当社グループの製品の品質に起因する事故、市場回収、生産停止等が生じた場合、顧客の損失に対する賠償責任を問われる可能性があります。また、自動車の電装品の増加に伴って、当社グループの自動車市場向けの売上は増加しており、市場回収に至った際に業績に与える影響度も増大しております。
当社グループは、製品の生産にあたり、設計審査、製品アセスメント、内部品質監査、工程管理、各種評価試験、仕入先など協力者への監査・指導、並びにM&A先や業務提携先との仕組みの融合等を通じ、開発段階から出荷に至る全ての段階で品質の作り込みや製品コンプライアンスの遵守を行う品質保証体制整備に努めております。
しかし、現時点での技術、管理レベルを超える事故が発生する可能性は皆無ではなく、品質に関わる重大な問題が起こった場合には、多額の損害賠償金の支払や売上の減少又は当社グループ製品に対する信頼の低下等により、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(13)環境規制について
当社グループは、国内外において、大気汚染、水質汚濁、土壌・地下水汚染、廃棄物処理、製品に含有する化学物質など、様々な環境法令の規制を受けております。当社グループでは、これら法令を遵守し、事業活動を進めておりますが、地球環境保全の観点、事業の継続的な発展の観点において、今後ますます国内外での環境規制が強化され、これに適応するための費用の増大が予想されます。特に、近年では資源循環と事業との調和も重要性を強く認識しており、リデュース・リユース・リサイクル(3R)の広い視野をもとに継続的な廃棄物削減の取り組みを進めております。この他、化学物質の使用に関する規制や揮発性有機溶剤の大気放出に関する規制への対応など、環境保全に関する当社グループの課題認識とその対応に関して、担当執行役員を委員長とする環境委員会を組織し、当社グループ全体で対策を推進しております。
しかし、環境規制への適応が極めて困難な場合、想定を超える費用の発生や事業からの部分撤退、当社グループへの社会的信頼が損なわれる可能性も想定され、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(14)気候変動によるリスクについて
当社グループは、気候変動対策に関して、継続的な省エネ施策に取り組みCO2排出量の抑制に努め、太陽光発電を含めた再生可能エネルギーの導入に取り組んでおります。また、SBT(Science Based Target)のガイドラインに沿って、当事業におけるCO2排出量を2021年度に140万t-CO2以下という目標を定めており、目標必達に向け、新たな制度導入を検討しております。また、2020年1月には、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)提言に賛同の意を表明しました。今後は気候変動に関するリスク・機会を抽出し、シナリオ分析に沿って財務影響の開示を進めてまいります。気候変動対策に関する当社グループの課題認識とその対応に関して、担当執行役員を委員長とする温暖化防止委員会を組織し、当社グループ全体で対策を推進しております。
しかし、ステーク―ホルダーからの要請への適応が極めて困難な場合、想定を超える費用の発生や当社グループへの社会的信頼が損なわれる可能性も想定され、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(15)情報セキュリティについて
当社グループは、社内情報処理の多くをIT化しており、入手した取引情報や個人情報の大半を電子データとして蓄積しております。電子データは瞬時にコピーしたり改ざんすることが技術的に可能であり、蓄積した電子データが不正アクセスや不正使用により外部へ流出したり、検知できないまま改ざんされる恐れがあります。
当社グループが持続的に成長を続けるためには、技術ノウハウをはじめとする企業機密を含め、会社の資産である情報を守ることが必要であります。そのため、リスク管理委員会の下部組織として情報セキュリティ分科会を設置し、情報セキュリティ施策の整備と運用の浸透を図っております。
情報セキュリティ基本方針、情報セキュリティ管理規定を制定し、国内外の全役員・従業員が情報セキュリティについて理解し、情報を正しく取り扱えるよう、日本語、英語、中国語の3ヶ国語で作成した「情報セキュリティガイドブック」の配付、情報セキュリティに関するメールマガジンの発行及び階層別の社内研修やセキュリティテスト等を実施しております。
また、当社グループの企業機密や個人情報の漏えい、サイバーアタックによる企業活動の停止などを抑止するため、全社のパソコンや利用サービスへのマルウェア対策、インターネット通信の監視、ID管理とアクセスコントロール、脆弱性の診断とその対応などを実施しております。また、グローバルで各種ログを監視し、セキュリティ事故になりうるインシデントへの対応体制も構築し、日々変化するサイバー攻撃への対応・対策を進めております。なお、サイバーセキュリティの取り組みにおいては、評価指標を定義し、その目標値との差を管理するなどのマネジメントサイクルの実践により日々改善を図っております。
しかし、想定した防御レベルを超える技術による不正アクセスや、予期せぬ不正使用があった場合には、電子データが外部へ流出したり検知できないまま改ざんされるリスクが残り、当社グループの社会的信用に影響を及ぼすのみならず、その対応のために多額の費用負担が発生し、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(16)知的財産権について
当社グループは、技術革新の著しい電子部品業界に属していることから、知的財産権は重要な経営資源の一つであり、知的財産権の保護、知的財産権にからむ紛争の回避は重要な経営課題であります。
当社グループでは、独自技術を保護するために、戦略的知財活動として事業に役立つ強い特許網を構築する全社的な活動をしております。特に、海外売上比率の上昇とともに海外出願を積極的に行っており、グローバルな知的財産ポートフォリオの構築を進めております。2018年度の当社グループの保有特許件数は20,595件であり、そのうち海外出願は12,474件となりました。また、事業状況の見極めと費用対効果を考慮した海外出願を行うために、積極的にPCT(特許協力条約)出願を利用しており、WIPO(世界知的所有権機関)にて公表されている2018年度のPCTに基づく国際出願ランキングにおいて、世界ランキング第29位となりました。また、材料から製品まで一貫生産体制を構築しているため、材料技術、基板技術などを独自に開発しており、数多くのノウハウを蓄積・管理しております。さらに、各事業部・開発部門に知財活動を推進する責任者及びパテントリーダーを設定し、知的財産部と協力しながら、責任者及びパテントリーダーが中心となって知財活動に取り組んでおります。また、知的財産に関する階層・職能教育、ワークショップ、パテントフォーラムなどのさまざまな社内イベントを実施することにより、当社グループ従業員の知財マインドの醸成を行っております。
しかし、当社グループの知的財産権が、第三者により無効とされる可能性、特定の地域では十分な保護が得られない可能性や知的財産権の対象が模倣される可能性もあります。このように知的財産権によって完全に保護されない場合、もしくは、機密管理しているノウハウが漏洩した場合は、当社グループの事業活動に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループでは、他社の権利を尊重するため、設計開発の適切なタイミングで、他社の知的財産権の調査及び確認を実行し、必要に応じて設計回避等の対策を行っております。しかし、当社グループの製品等が第三者の知的財産権を侵害しているとの主張を受ける可能性もあります。万一、このような主張を受けた場合、当社製品の生産・販売が制約されたり、損害賠償金・実施許諾料等の支払が発生し、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(17)税務に関するリスクについて
当社グループは、世界各国で販売や生産などの事業活動を行っており、各国税務当局から多額の追徴課税を課されるリスク、さらにそれに伴って発生する信用毀損リスク及び移転価格税制の課税による二重課税リスク等の税務リスクがあります。
当社グループは、「グローバルタックスポリシー」に従い、早期に税務リスク情報を収集し、法令の立法趣旨に照らして税務処理を決定し、税務処理に不確実性が残った場合は、税務当局への事前照会や外部専門家への相談を行い不確実性の排除に努めております。また、税務専門組織を独立した組織として設置し、専門的知識と経験豊富な人材の確保・育成を行い、税務リスク極小化のための体制を整備しております。
しかし、近年のビジネスの拡大とグローバル化の進展に伴い、税務リスクが顕在化する可能性は高まっており、また、その金額的重要性も高まる傾向にあります。税務リスクが顕在化した場合は、法人税等の追加負担が発生し、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(18)人材の採用・確保について
当社グループは、材料から商品までの一貫生産を行うとともに、主要な生産設備を内作するなど技術の独自性を追求しておりますが、技術の高度化、技術革新が加速する今日、多様な技術分野において優れた専門性を有した人材の必要性がますます高まっております。
一方、各産業分野における技術革新の進展、とりわけエレクトロニクス分野の広がりにより、当社グループが必要とする多様な技術領域の人材ニーズの産業界全体における増大や少子高齢化に伴う労働人口の減少など、優秀な人材の獲得は競争状態となっております。
これに対して当社グループでは、計画的な新卒採用に加え、ニーズに基づいた過年度卒の通年採用を実施しており、2020年10月に神奈川県横浜市に新たな研究開発拠点「みなとみらいイノベーションセンター」を設立し、重点成長市場である通信市場・自動車市場を中心とした事業に加え、エネルギー、ヘルスケア、IoTなどの新規市場向け人材やデジタルトランスフォーメーションに必要な人材の採用強化も進めてまいります。
また、能力開発を支援する教育制度の拡充、多様な社員の能力が十分に発揮できるよう適性を重視した配置や、専門系人材の適切なキャリアルートの設定、ワークライフバランス支援制度の整備により、社員のモチベーションを高め、社員の定着・育成に努めております。
しかし、雇用環境の変化などにより当社グループが求める人材の確保やその定着・育成が計画通りに進まなかった場合には、当社グループの将来の成長に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(19)災害・感染症等による事業活動の停止について
当社グループは、事業所所在地における大規模な自然災害の発生や感染症の流行等により、事業活動が長期間停止する可能性があります。
当社グループでは、地震災害による主要製品の操業停止の影響を最小限にし、「お客様に製品を安定供給する」という責任を果たすため、事業継続計画(BCP)を策定しており、生産拠点を国内外に分散するとともに、国内全拠点において一定規模の地震災害を想定して建物・生産設備の耐震性・安全性確保、通信・情報システムのバックアップ体制、在庫による供給維持などの施策を講じております。さらに、定期的な防災訓練や事業継続訓練の実施により、初動対応の実効性確認と継続的な改善や危機対応能力の向上とBCPの改善点の把握に取り組んでおります。
また、新型インフルエンザのパンデミックに備えて、グループ全体の基本計画を定め、WHO(世界保健機関)の警戒フェーズに対応した行動計画を策定しております。
なお、2020年1月以降世界的に感染が拡大している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関して、代表取締役社長を本部長とする危機対策本部を設置し、感染予防と感染拡大防止のための様々な施策を決定し、実行しております。具体的には、在宅勤務や時差出勤の活用、出張規制、社内における従業員の行動履歴の記録、食堂や職場における衝立の設置など従業員の感染防止のための施策や、感染者が発生した場合のBCPの策定など、新型コロナウイルス感染症による従業員の健康や当社の事業活動への影響が最小限になるよう取り組んでおります。
しかし、想定を超える大規模災害の発生や新型コロナウイルス感染症の更なる流行、新たな感染症の世界的な流行、原子力発電所の事故等による、長期にわたる製造ラインや情報システムの機能低下、世界レベルでの経済活動の停滞に伴う大幅な事業活動の縮小や停止が、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E01914] S100J1A2)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
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