有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100N2I8 (EDINETへの外部リンク)
浜松ホトニクス株式会社 研究開発活動 (2021年9月期)
当社グループの研究開発活動は、「光の本質に関する研究及びその応用」をメインテーマとし、主に当社の中央研究所及び各事業部において行っております。
光の世界は未だその本質すら解明されていないという、多くの可能性を秘めた分野であり、光の利用という観点からみても、光の広い波長領域のうち、ごく限られた一部しか利用することができていないのが現状であります。こうした中、当社の中央研究所においては、光についての基礎研究と光の利用に関する応用研究を進めており、また、各事業部においては、製品とその応用製品及びそれらを支える要素技術、製造技術、加工技術に関する開発を行っております。
当連結会計年度の研究開発費の総額は、11,367百万円であり、これを事業のセグメントでみますと、電子管事業3,509百万円、光半導体事業2,342百万円、画像計測機器事業418百万円、その他事業405百万円及び各事業区分に配賦できない基礎的研究4,692百万円であります。
当連結会計年度における主要な研究開発の概要は次のとおりであります。
次世代ニュートリノ観測実験「ハイパーカミオカンデ」に用いられる大口径光電子増倍管を開発
当社は、2027年に運用開始が予定されている次世代ニュートリノ観測実験「ハイパーカミオカンデ」用の光検出器として大口径光電子増倍管を開発いたしました。本実験はノーベル物理学賞の受賞につながったカミオカンデ、スーパーカミオカンデの後継実験で、巨大な水槽に満たされた超純水にニュートリノが反応した際に発する微弱なチェレンコフ光を観測しその性質を調べることで、宇宙や生命の起源の解明につながると期待されています。当社は、これまでニュートリノ観測用の光電子増倍管を開発してまいりましたが、ハイパーカミオカンデではさらに高性能な光検出器が求められました。このような中、当社は光電面や電極の構造を一から見直すことで、スーパーカミオカンデ用光電子増倍管に比べ光の感度や測定精度を約2倍に向上させたほか、検出器由来のノイズを最小限に抑えた光電子増倍管を新たに開発いたしました。当社は、今後も高性能な光検出器の開発を通して素粒子物理学の発展に貢献してまいります。
演算機能を内蔵し、高速な位置検出を可能としたプロファイルセンサを新たに開発
プロファイルセンサとは、対象物の位置を検出することに特化したイメージセンサの一種です。通常のイメージセンサに比べ、必要な情報を少ない信号量で高速に取得できるという特徴を有しており、物体との距離等を計測する測量機器などに用いられております。当社はこれまで測量機器向けにプロファイルセンサを開発してまいりましたが、取得した信号を測量に必要な座標データとして出力するためには演算処理を行う外付けの制御装置が別途必要でした。この度、当社は回路設計を見直し、演算処理を行う回路をセンサに内蔵することによって、制御装置を用いずに座標データを出力できるプロファイルセンサを新たに開発いたしました。本製品を用いることで、測量機器の小型化や軽量化、低価格化が期待されるほか、信号の取得速度を高め、動いている対象物の位置検出を補助する機能を加えたことで、FA分野への応用拡大も見込まれます。
究極の低ノイズ性能の科学計測用CMOSデジタルカメラ「ORCA-Quest」を開発
科学計測分野においては、微弱光を計測できる低ノイズのカメラが求められております。この度当社は、独自の設計技術と最新の製造技術を用いることで世界一の低ノイズ性能かつ高精細で高速な画像取得を可能とする2次元CMOSイメージセンサを開発し、その性能を最大限に引き出す設計を施したカメラ「ORCA-Quest」を新たに開発いたしました。これは、光の最小単位である光子を2次元的に正確に計測して画像化することができる世界初のカメラです。本製品は、量子の状態を正確に観察することや極微弱光を広視野で撮像することが可能であるため、今後、量子コンピュータなどの量子情報分野のほか、天文、ライフサイエンス分野等での応用が期待されます。
産業分野におきましては、LD励起(注1)において世界最高出力となる250ジュールの産業用パルスレーザ装置を開発いたしました(注2)。本開発品は、既に開発済みの高出力レーザ装置からのパルスレーザをさらに新たな増幅器で増幅して出力を高める仕組みで、増幅器内のレーザ媒質(注3)の構成を改良するとともに、増幅器の構造を最適化することで、レーザの増幅能力を向上させております。また、独自の光学制御技術によりレーザビームの高い集光性も達成しております。これらにより、従来装置と同等のサイズながらパルスレーザの出力を2倍以上に増幅することに成功し、250ジュール級の高出力なパルスレーザ装置を世界で初めて実現いたしました。今後、本開発品により、自動車や航空機の金属部品を強靭化し、疲労強度を向上させる加工技術への展開など産業分野での応用範囲の拡大が期待されます。
光材料の分野におきましては、当社が開発中のメタレンズを用いて、当社製光半導体素子と組み合わせた結果、素子の性能向上に有用に機能することを確認いたしました。メタレンズとは波長より十分小さな周期のナノ構造が2次元配列された構造体であり、ナノ構造の形状を調整することで薄型レンズとして機能するため、受発光デバイスの高性能化・小型化に貢献できると期待されております。この度、素子の上部にメタレンズを実装したところ、受光感度が約10%向上し、素子の高性能化が可能であることを実証いたしました。今後も、半導体技術と相性が良く大量生産・低コスト化が可能なメタレンズによる当社製品の高付加価値化及び高性能化を目指すとともに、LiDAR(注4)用MPPC(注5)をはじめとする様々な用途への応用を進めてまいります。
医療の分野におきましては、PET等の核医学検査におけるイメージング技術の向上を進めております。核医学検査において、高精細な診断画像を取得するためには、患者の体内から放出される放射線の位置を検出器で正確にとらえる必要がありますが、現在の検出器では、その特性上、画像再構成と呼ばれる処理を行って画像を補正しております。この度、当社は放射線をより正確にとらえる高時間特性検出器と人工知能を用いて、ファントム(注6)による検出実験を実施し、世界で初めて画像再構成を行うことなく画像を取得することに成功いたしました(注7)。本成果により、核医学検査におけるリアルタイムでの高精細な画像取得や少ない放射線量での検査による患者の身体的な負担軽減等が期待できます。
(注)1 LD励起とは、半導体レーザを使用して、レーザ媒質の原子や分子をエネルギーの高い状態にすることです。
2 本開発品は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「高輝度・高効率次世代レーザー技術開発」プロジェクトにより開発いたしました。
3 レーザ媒質とは、外部からのエネルギーを蓄え、そこを通過するレーザにエネルギーを与え増幅させる物質です。
4 LiDARとは、対象物にレーザ光を照射し、その反射光を光センサでとらえて距離を測定するリモートセンシング技術の1つで、自動車の自動運転化等の用途で注目されております。
5 MPPCとは、高い増倍機能をもち、フォトンカウンティングレベルの微弱光を検出できる高性能な光半導体素子です。LiDAR用途においては、近赤外波長に高い感度をもつMPPCが求められております。
6 ファントムとは、人体の形状を模した放射能分布をもつ模型を指し、核医学検査装置のイメージング技術を評価する試験に用いられております。
7 本成果はカリフォルニア大学デイビス校、福井大学、北里大学との共同研究によるものです。
光の世界は未だその本質すら解明されていないという、多くの可能性を秘めた分野であり、光の利用という観点からみても、光の広い波長領域のうち、ごく限られた一部しか利用することができていないのが現状であります。こうした中、当社の中央研究所においては、光についての基礎研究と光の利用に関する応用研究を進めており、また、各事業部においては、製品とその応用製品及びそれらを支える要素技術、製造技術、加工技術に関する開発を行っております。
当連結会計年度の研究開発費の総額は、11,367百万円であり、これを事業のセグメントでみますと、電子管事業3,509百万円、光半導体事業2,342百万円、画像計測機器事業418百万円、その他事業405百万円及び各事業区分に配賦できない基礎的研究4,692百万円であります。
当連結会計年度における主要な研究開発の概要は次のとおりであります。
次世代ニュートリノ観測実験「ハイパーカミオカンデ」に用いられる大口径光電子増倍管を開発
当社は、2027年に運用開始が予定されている次世代ニュートリノ観測実験「ハイパーカミオカンデ」用の光検出器として大口径光電子増倍管を開発いたしました。本実験はノーベル物理学賞の受賞につながったカミオカンデ、スーパーカミオカンデの後継実験で、巨大な水槽に満たされた超純水にニュートリノが反応した際に発する微弱なチェレンコフ光を観測しその性質を調べることで、宇宙や生命の起源の解明につながると期待されています。当社は、これまでニュートリノ観測用の光電子増倍管を開発してまいりましたが、ハイパーカミオカンデではさらに高性能な光検出器が求められました。このような中、当社は光電面や電極の構造を一から見直すことで、スーパーカミオカンデ用光電子増倍管に比べ光の感度や測定精度を約2倍に向上させたほか、検出器由来のノイズを最小限に抑えた光電子増倍管を新たに開発いたしました。当社は、今後も高性能な光検出器の開発を通して素粒子物理学の発展に貢献してまいります。
演算機能を内蔵し、高速な位置検出を可能としたプロファイルセンサを新たに開発
プロファイルセンサとは、対象物の位置を検出することに特化したイメージセンサの一種です。通常のイメージセンサに比べ、必要な情報を少ない信号量で高速に取得できるという特徴を有しており、物体との距離等を計測する測量機器などに用いられております。当社はこれまで測量機器向けにプロファイルセンサを開発してまいりましたが、取得した信号を測量に必要な座標データとして出力するためには演算処理を行う外付けの制御装置が別途必要でした。この度、当社は回路設計を見直し、演算処理を行う回路をセンサに内蔵することによって、制御装置を用いずに座標データを出力できるプロファイルセンサを新たに開発いたしました。本製品を用いることで、測量機器の小型化や軽量化、低価格化が期待されるほか、信号の取得速度を高め、動いている対象物の位置検出を補助する機能を加えたことで、FA分野への応用拡大も見込まれます。
究極の低ノイズ性能の科学計測用CMOSデジタルカメラ「ORCA-Quest」を開発
科学計測分野においては、微弱光を計測できる低ノイズのカメラが求められております。この度当社は、独自の設計技術と最新の製造技術を用いることで世界一の低ノイズ性能かつ高精細で高速な画像取得を可能とする2次元CMOSイメージセンサを開発し、その性能を最大限に引き出す設計を施したカメラ「ORCA-Quest」を新たに開発いたしました。これは、光の最小単位である光子を2次元的に正確に計測して画像化することができる世界初のカメラです。本製品は、量子の状態を正確に観察することや極微弱光を広視野で撮像することが可能であるため、今後、量子コンピュータなどの量子情報分野のほか、天文、ライフサイエンス分野等での応用が期待されます。
産業分野におきましては、LD励起(注1)において世界最高出力となる250ジュールの産業用パルスレーザ装置を開発いたしました(注2)。本開発品は、既に開発済みの高出力レーザ装置からのパルスレーザをさらに新たな増幅器で増幅して出力を高める仕組みで、増幅器内のレーザ媒質(注3)の構成を改良するとともに、増幅器の構造を最適化することで、レーザの増幅能力を向上させております。また、独自の光学制御技術によりレーザビームの高い集光性も達成しております。これらにより、従来装置と同等のサイズながらパルスレーザの出力を2倍以上に増幅することに成功し、250ジュール級の高出力なパルスレーザ装置を世界で初めて実現いたしました。今後、本開発品により、自動車や航空機の金属部品を強靭化し、疲労強度を向上させる加工技術への展開など産業分野での応用範囲の拡大が期待されます。
光材料の分野におきましては、当社が開発中のメタレンズを用いて、当社製光半導体素子と組み合わせた結果、素子の性能向上に有用に機能することを確認いたしました。メタレンズとは波長より十分小さな周期のナノ構造が2次元配列された構造体であり、ナノ構造の形状を調整することで薄型レンズとして機能するため、受発光デバイスの高性能化・小型化に貢献できると期待されております。この度、素子の上部にメタレンズを実装したところ、受光感度が約10%向上し、素子の高性能化が可能であることを実証いたしました。今後も、半導体技術と相性が良く大量生産・低コスト化が可能なメタレンズによる当社製品の高付加価値化及び高性能化を目指すとともに、LiDAR(注4)用MPPC(注5)をはじめとする様々な用途への応用を進めてまいります。
医療の分野におきましては、PET等の核医学検査におけるイメージング技術の向上を進めております。核医学検査において、高精細な診断画像を取得するためには、患者の体内から放出される放射線の位置を検出器で正確にとらえる必要がありますが、現在の検出器では、その特性上、画像再構成と呼ばれる処理を行って画像を補正しております。この度、当社は放射線をより正確にとらえる高時間特性検出器と人工知能を用いて、ファントム(注6)による検出実験を実施し、世界で初めて画像再構成を行うことなく画像を取得することに成功いたしました(注7)。本成果により、核医学検査におけるリアルタイムでの高精細な画像取得や少ない放射線量での検査による患者の身体的な負担軽減等が期待できます。
(注)1 LD励起とは、半導体レーザを使用して、レーザ媒質の原子や分子をエネルギーの高い状態にすることです。
2 本開発品は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「高輝度・高効率次世代レーザー技術開発」プロジェクトにより開発いたしました。
3 レーザ媒質とは、外部からのエネルギーを蓄え、そこを通過するレーザにエネルギーを与え増幅させる物質です。
4 LiDARとは、対象物にレーザ光を照射し、その反射光を光センサでとらえて距離を測定するリモートセンシング技術の1つで、自動車の自動運転化等の用途で注目されております。
5 MPPCとは、高い増倍機能をもち、フォトンカウンティングレベルの微弱光を検出できる高性能な光半導体素子です。LiDAR用途においては、近赤外波長に高い感度をもつMPPCが求められております。
6 ファントムとは、人体の形状を模した放射能分布をもつ模型を指し、核医学検査装置のイメージング技術を評価する試験に用いられております。
7 本成果はカリフォルニア大学デイビス校、福井大学、北里大学との共同研究によるものです。
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