有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100IWST (EDINETへの外部リンク)
株式会社SUBARU 事業等のリスク (2020年3月期)
当社グループはSUBARUを自動車と航空宇宙事業における魅力あるグローバルブランドとして持続的に成長させ、中長期的な企業価値の向上を図っております。また、中期経営ビジョン「STEP」において「安心と愉しさ」の提供を通じて、お客様から共感され信頼していただける存在となることを目指し、ありたい姿である「モノをつくる会社から笑顔をつくる会社へ」の実現に向け、最重要テーマとして「組織風土改革」「品質改革」「SUBARUづくりの刷新」を推進しております。
当社グループでは事業活動を取り巻くリスク全般について、以下の体制によりリスクの特性に応じた未然防止策や低減策を講じたリスクマネジメントを行っております。
また、取締役会では、リスクマネジメントに関する体制整備や内部監査部門(監査部)の独立性の確保、また子会社に対する内部統制に係る基本的な考え方の明確化等の議論の機会を充実させることにより、リスク把握・管理体制の強化及び定着化を図っております。さらに、平時のリスクマネジメントの取り組みの総括の場として、従前のコンプライアンス委員会を2020年度より「リスクマネジメント・コンプライアンス委員会」に発展させ、リスクマネジメント及びコンプライアンスに関する事項の審議・報告等を行っております。
中期経営ビジョン「STEP」や事業活動を推進する上で、当社グループの経営成績及び財務状況、キャッシュ・フロー等に数百億円以上の大きな影響を与え、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事業等のリスクならびに新型コロナウイルスの感染拡大の影響と対応策は以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであり、当社グループに関するすべてのリスクを列挙したものではありません。
(1) 主要市場の経済動向
当社グループの主要な市場である国及び地域の経済情勢は当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。国内はもとより当社グループの売上収益の約7割を占める北米における景気後退及び需要減少、価格競争の激化等が進むことにより、当社グループの提供する商品・サービスの売上収益や収益性において悪影響を及ぼす可能性があります。
(2) 為替の変動
当社グループにおいて北米売上収益は約7割を占め、売上収益、営業利益、資産等の中には、米ドルを中心とした現地通貨建ての項目が含まれており、連結財務諸表作成時に円換算しております。通期の業績見通しにおいて想定した為替レートに対し、実際の決算換算時の為替レートに乖離が生じた場合、主に円高局面では当社グループの売上収益と財務状況はマイナスに作用し、円安局面ではプラスに作用する可能性があります。当社では為替リスクを最小限にすべく、状況に応じ為替予約等によるヘッジを実施しておりますが、期末日に極端な為替変動が生じた場合、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(3) 金融市場の変動
当社は事業活動の資金を内部資金及び金融機関からの借入や社債の発行によって確保しております。また、十分な手元流動性を確保するために一定額の現金及び現金同等物残高の確保を行っております。しかしながら、経済・金融危機等の発生により金融市場から適切な条件で資金調達が出来なくなった場合、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは市場性のある証券や債券等の金融資産を保有しており、金融市場の影響により公正価値や金利等が著しく変動した場合、金融資産の減損及び年金資産の減少による従業員給付債務の増加により、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(4) 原材料価格の変動
当社グループは原材料を多数のお取引先様から適時適切な量で調達しておりますが、特定の原材料及びお取引先様に依存している場合があり、需給状況の逼迫等により安定したコストで調達できない場合、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(5) 特定の事業および市場への集中
当社グループは主に自動車と航空宇宙の2つの事業で構成され、お客様第一を基軸に「存在感と魅力ある企業」を目指し、選択と集中を進め、限られた経営資源を最大限活用することで高収益なビジネスモデルを展開しております。自動車事業の売上収益が9割以上を占め、販売市場は主に北米を中心とした先進国となります。主要拠点である国内の群馬製作所及び米国のスバル オブ インディアナ オートモーティブ インク(SIA)においてはSUV(多目的スポーツ車)を中心とした生産をしております。このため、自動車事業に関わる需要や市況、同業他社との価格競争等が予測し得る水準を超えた場合、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(6) 市場における需要・競争環境の変化
当社グループの主力事業である自動車業界は大きな環境変化を迎えております。このような状況の中、当社グループは中期経営ビジョン「STEP」を推進し、安心・安全への取り組みやアライアンスの強化、強固なブランドの構築を推進することで新たなモビリティ領域への対応、商品の環境性能向上を強化しております。常に市場の需要動向、お客様ニーズに基づく商品企画を行い、適切なタイミングと価格で新商品を開発・製造し、市場に投入することに努めております。また、デジタルイノベーションの強化に向け最新のデジタル技術やデータの戦略的活用によるビジネスプロセスの改革、新たなビジネスイノベーションの機会創出と推進を行っております。しかしながら、モビリティサービスの普及に伴う異業種からの参入や環境対応に伴うガソリン車以外の自動車へのシフト、シェアリングや自動運転普及に伴う移動手段の多様化によって、お客様の価値観や嗜好ニーズはさらに多様化していくことが予想されます。今後、当社グループの新型車や新商品が販売計画に満たない場合、デジタルイノベーションに遅れが生じた場合、現行の商品の陳腐化等が想定以上に進んだ場合には、販売台数の減少等により当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(7) 商品ならびに販売・サービスに関する責任
当社グループは中期経営ビジョン「STEP」において、「品質改革」を最重要テーマの一つとして、品質マネジメントの強化を図っております。2019年4月には品質方針を「私たちは何より品質を大切にしてお客様の信頼に応えます」に改定しました。商品の企画から生産・販売・サービスに至るまであらゆるプロセスにおいて質の向上を図り「お客様が安心して長く使い続けることが出来る品質」№1を目指して品質改革を進めております。「生まれの品質」の向上を図るべく、これまで以上に開発の上流の段階から品質を向上させる開発プロセスの改革に取り組んでいます。CQO(最高品質責任者)が中心となり、お客様に当社製品を安心して長くお使いいただけるよう「品質を万全に仕上げる」、そして万が一品質問題が生じた際は「早く、正確に改善する」との方針のもと、抜本策に取り組んでおります。また、品質最優先の徹底に向けて従業員一人ひとりの品質意識をさらに高めるための取り組みを進めております。具体的には、全従業員へ品質意識醸成講座等を通じた啓蒙活動や、全従業員に加えお取引先様も対象とした「品質キャラバン」を開催し、SUBARUの品質の現状やお客様の声を直接伝える取り組みを行っております。さらに、2020年4月よりCQO直属の組織として当社グループ全体の品質保証を統括する品質保証統括室を設置し、グローバルレベルでの品質改革を加速しております。このような品質改革への取り組みの一方で、大規模なリコール等が起こった場合、多額のコストとして品質関連費用等が発生することに加え、ブランドイメージの毀損等により、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(8) サプライチェーンの分断
当社グループは自動車や航空機等の製造にあたり、多数のお取引先様から部品や材料を調達しております。定期的にお取引先様の品質保証力や供給能力のチェックを行うとともに、必要に応じお取引先様の経営状況のチェックも行い、安定調達に努めております。また、有事が発生した際は、平時より整備をしております一次・二次お取引先様の部品ごとの「サプライチェーン情報データベース」に基づき、影響を受ける可能性のあるお取引先様や部品を早期に特定することにより、生産継続に必要な在庫数の確認や代替品の生産検討、さらには生産設備の復旧支援を行う等、サプライチェーン分断の影響を最小限に留める対応を取っております。しかしながら、大規模な地震や台風等の自然災害、新型コロナウイルス等の感染症の発生やその他の要因により、サプライチェーンの分断や需給の逼迫が発生した場合、安定したコスト・納期・品質で調達が維持出来ず、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(9) 知的財産の侵害
当社グループは「安心と愉しさ」等のSUBARUらしさを際立たせるため、他社製品と差別化できる技術を知的財産として保護するとともに、コーポレートブランド管理規程を定め、SUBARUのブランド価値を維持・向上させることに努めております。しかしながら、第三者が当社グループの知的財産を不当に使用した類似製品を製造した場合、知的財産に係わる紛争が生じて当社に不利な判断がなされる場合、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(10) 情報ネットワークセキュリティ
当社グループは製品の開発・生産・販売など、事業活動において情報技術やネットワーク、システムを利用しております。これらの資産を守るためにサイバーセキュリティ基本方針を定め、従業員のセキュリティ意識向上に向け、セキュリティ教育を定期的に実施するとともに、IT戦略部門が中心となり、サイバー攻撃検知の迅速化を図るための監視とセキュリティインシデント発生時のSIRT(Security Incident Response Team)体制を整備しております。データのバックアップ体制につきましては、当社データセンター内の自社運用ならびにクラウド環境において、複数個所に分散しバックアップが取れる体制を整えており、局所的な災害等においても、事業継続や復旧の早期化に向けた対策を講じております。当社グループの情報技術やネットワーク、システムは、安全対策が施されているものの、サイバー攻撃、不正アクセス、コンピューターウィルスによる攻撃や大規模な停電、火災等が発生した場合、重要な業務やサービスの中断、データの破損・喪失、機密情報の漏洩等が発生し、ブランドイメージの毀損や当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(11) コンプライアンス
当社グループは中期経営ビジョン「STEP」において、「組織風土改革」を最重要テーマの一つとして掲げ、「正しい会社をつくる」活動を加速してまいりました。特に、コンプライアンスの徹底を経営の最重要課題の一つと位置付け、企業活動上求められるあらゆる法令・社内諸規程等の遵守はもとより、社会規範に則した公明かつ公正な企業活動を遂行することを従業員一人ひとりに浸透させ、行動の実践につなげるべく、コンプライアンス体制・組織の構築および運営、ならびに各種研修等の活動を行うことにより、コンプライアンスリスクの回避または最小化に努めております。それにも関わらず、当社グループ及び委託先等において重大な法令違反等が発生した場合、お客様の信用・信頼を失うことや社会的評価・評判の低下等によるブランドイメージの毀損等が事業基盤に重大な影響を与え、経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(12) 人材の確保と育成
当社グループは持続的な成長に向けて中期ビジョン「STEP」で掲げたありたい姿「モノをつくる会社から笑顔をつくる会社へ」を実現するために、人材育成を極めて重要なテーマと位置付けております。従業員自らが高い意欲を持って成長していくことを支援するため、職能資格制度、人事考課制度、目標管理制度、人事ローテーション、教育体系で構成される「人事制度」を整備しております。また、業界を取り巻く激しい環境変化に迅速に対応できる多様な価値観や専門性を持った人材の確保を行っております。しかしながら、労働市場の逼迫により人材確保が出来ない場合、専門性の高い人材の流出が続いた場合等、長期的に当社グループの事業活動や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(13) 事業活動に影響を与える各国の政治・規制・法的手続き
当社グループは米国を中心に世界各国において事業を展開しております。海外市場での事業活動には、以下のようなリスクが内在しており、当該リスクが顕在化した場合、当社グループの経営成績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(14) 気候変動
当社グループは気候変動を最も重要な課題の一つと認識し、21世紀後半の早い段階で脱炭素社会を目指す「パリ協定」の趣旨を支持し、SCOPE1・2及びSCOPE3(商品)に関する中長期目標を掲げ、取り組んでいます。SCOPE1・2に関しては、2050年度にカーボン・ニュートラルを目指し、そのマイルストーンとして2030年度までに2016年度比で30%(総量ベース)のCO2削減に取り組みます。SCOPE3(商品)に関しては、2050年にWell to Wheelで新車平均(走行時)のCO2排出量を2010年比で90%以上削減を目指し、2030年までに全世界販売台数の40%以上を電気自動車(EV)+ハイブリッド車とし、2030年代前半には生産・販売するすべてのSUBARU車への電動技術の搭載に取り組みます。しかしながら、これらの取り組みが適切に進まない場合、異常気象による調達・生産・物流活動の停滞等が生じた場合、現時点での将来予測が極めて困難な移行リスク・物理的リスクの影響及び発現度によっては、研究開発費用等の増加、顧客満足やブランドイメージの低下等による販売機会の逸失、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(15) 災害・戦争・テロ・感染症等の影響
当社グループは特に経営に重要な影響を及ぼしかつ通常の意思決定ルートでは対処困難な緊急性が求められるクライシスリスクについては、自然災害、事故、内部人的要因、外部人的要因、社会的要因(国内・海外)、コンプライアンスリスクに分類し、有事の際に最適な対応ができる体制を整備しております。しかしながら、事業継続に影響を及ぼす災害・戦争・テロ・感染症等の発生により、当社グループの事業活動が妨げられ、原材料・部品の購入、生産、製品の販売及び物流、サービスの提供等に遅延や停止が生ずる可能性があります。このような遅延や停止が長期化する場合、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
① 新型肺炎対策本部の設置
2020年2月上旬にCEO(最高経営責任者)をトップとした「新型肺炎対策本部」を立ち上げ、実務面ではCRMO(最高リスク管理責任者)による全体統括のもと国内外グループ各社等から情報収集を行い、状況の変化に応じて、お客様やお取引先様、従業員の健康と安全を最優先に感染拡大の防止と事業活動の継続を図るべく施策を講じております。
② 従業員への対応
本感染症発生の初期段階より従業員とその家族の安全確保を最優先としつつ、事業活動を継続させるために柔軟な対応を進めております。具体的には、2020年1月下旬から2月上旬にかけて段階的に中国全域やその他海外各国、国内への出張を中止いたしました。2月中旬からは社内外イベントの開催や参加の自粛、フレックスタイムを活用した時差出勤の推奨、オフィスにおける昼食の時差対応等を実施し、IT対応の強化を段階的に図りながら4月以降には東京地区を中心に本格的な在宅勤務体制を取りました。6月以降も東京地区では引き続き出勤率を最大5割とした体制で在宅勤務や時差出勤等の柔軟な働き方を推進し、感染リスクを軽減させる取り組みを続けております。
③ 生産・販売活動への影響
生産については、米国の生産拠点であるスバル オブ インディアナ オートモーティブ インク(SIA)は2020年3月23日より、国内の群馬製作所は4月9日より生産活動を一時停止し、いずれも5月11日に再開いたしましたが、サプライチェーン及び販売活動への影響が続いたことから、国内については6月19日まで生産量を調整いたしました。米国についても正常な操業に向けた体制が整い始めております。販売については、米国を中心に多くの販売店において様々な制約を受ける事態が続いておりましたが、徐々に回復の兆しが見え始めております。
④ 手元流動性の確保
本感染症の影響による資金需要に備え、一定額の現金及び現金同等物の確保に加え、2020年4月から5月にかけて運転資金として金融機関からコミットメントライン契約1,515億円及び証書貸付契約により600億円の資金調達を行いました。また、同感染症の影響が長期化した場合に備え、コミットメントライン約2,000億円(既借入分を含む)に加え、社債発行枠の設定800億円、コマーシャル・ペーパー発行枠の設定1,000億円等、合計約3,800億円の資金調達枠を確保し、資金需要に機動的に対応できる体制を整えております。
当社グループでは事業活動を取り巻くリスク全般について、以下の体制によりリスクの特性に応じた未然防止策や低減策を講じたリスクマネジメントを行っております。
当社グループのリスクマネジメント体制
2019年4月よりグループ全体の内部統制とリスクマネジメントの実効性をより高めていくことを目的として、CEO(最高経営責任者)を補佐し当社グループのリスクマネジメント及びコンプライアンス活動を統括するCRMO(最高リスク管理責任者)を設置しました。CRMO管轄下にあるリスクマネジメント・コンプライアンス室が共通部門をはじめとした各部門・カンパニーと密接に連携することでグループ全体を取り巻くリスク顕在化の把握と拡大防止を図っております。また、取締役会では、リスクマネジメントに関する体制整備や内部監査部門(監査部)の独立性の確保、また子会社に対する内部統制に係る基本的な考え方の明確化等の議論の機会を充実させることにより、リスク把握・管理体制の強化及び定着化を図っております。さらに、平時のリスクマネジメントの取り組みの総括の場として、従前のコンプライアンス委員会を2020年度より「リスクマネジメント・コンプライアンス委員会」に発展させ、リスクマネジメント及びコンプライアンスに関する事項の審議・報告等を行っております。
中期経営ビジョン「STEP」や事業活動を推進する上で、当社グループの経営成績及び財務状況、キャッシュ・フロー等に数百億円以上の大きな影響を与え、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事業等のリスクならびに新型コロナウイルスの感染拡大の影響と対応策は以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであり、当社グループに関するすべてのリスクを列挙したものではありません。
主要な事業等のリスク
経済・金融環境の変動に関連するリスク
(1) 主要市場の経済動向
当社グループの主要な市場である国及び地域の経済情勢は当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。国内はもとより当社グループの売上収益の約7割を占める北米における景気後退及び需要減少、価格競争の激化等が進むことにより、当社グループの提供する商品・サービスの売上収益や収益性において悪影響を及ぼす可能性があります。
(2) 為替の変動
当社グループにおいて北米売上収益は約7割を占め、売上収益、営業利益、資産等の中には、米ドルを中心とした現地通貨建ての項目が含まれており、連結財務諸表作成時に円換算しております。通期の業績見通しにおいて想定した為替レートに対し、実際の決算換算時の為替レートに乖離が生じた場合、主に円高局面では当社グループの売上収益と財務状況はマイナスに作用し、円安局面ではプラスに作用する可能性があります。当社では為替リスクを最小限にすべく、状況に応じ為替予約等によるヘッジを実施しておりますが、期末日に極端な為替変動が生じた場合、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(3) 金融市場の変動
当社は事業活動の資金を内部資金及び金融機関からの借入や社債の発行によって確保しております。また、十分な手元流動性を確保するために一定額の現金及び現金同等物残高の確保を行っております。しかしながら、経済・金融危機等の発生により金融市場から適切な条件で資金調達が出来なくなった場合、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは市場性のある証券や債券等の金融資産を保有しており、金融市場の影響により公正価値や金利等が著しく変動した場合、金融資産の減損及び年金資産の減少による従業員給付債務の増加により、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(4) 原材料価格の変動
当社グループは原材料を多数のお取引先様から適時適切な量で調達しておりますが、特定の原材料及びお取引先様に依存している場合があり、需給状況の逼迫等により安定したコストで調達できない場合、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
業界及び事業活動に関連するリスク
(5) 特定の事業および市場への集中
当社グループは主に自動車と航空宇宙の2つの事業で構成され、お客様第一を基軸に「存在感と魅力ある企業」を目指し、選択と集中を進め、限られた経営資源を最大限活用することで高収益なビジネスモデルを展開しております。自動車事業の売上収益が9割以上を占め、販売市場は主に北米を中心とした先進国となります。主要拠点である国内の群馬製作所及び米国のスバル オブ インディアナ オートモーティブ インク(SIA)においてはSUV(多目的スポーツ車)を中心とした生産をしております。このため、自動車事業に関わる需要や市況、同業他社との価格競争等が予測し得る水準を超えた場合、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(6) 市場における需要・競争環境の変化
当社グループの主力事業である自動車業界は大きな環境変化を迎えております。このような状況の中、当社グループは中期経営ビジョン「STEP」を推進し、安心・安全への取り組みやアライアンスの強化、強固なブランドの構築を推進することで新たなモビリティ領域への対応、商品の環境性能向上を強化しております。常に市場の需要動向、お客様ニーズに基づく商品企画を行い、適切なタイミングと価格で新商品を開発・製造し、市場に投入することに努めております。また、デジタルイノベーションの強化に向け最新のデジタル技術やデータの戦略的活用によるビジネスプロセスの改革、新たなビジネスイノベーションの機会創出と推進を行っております。しかしながら、モビリティサービスの普及に伴う異業種からの参入や環境対応に伴うガソリン車以外の自動車へのシフト、シェアリングや自動運転普及に伴う移動手段の多様化によって、お客様の価値観や嗜好ニーズはさらに多様化していくことが予想されます。今後、当社グループの新型車や新商品が販売計画に満たない場合、デジタルイノベーションに遅れが生じた場合、現行の商品の陳腐化等が想定以上に進んだ場合には、販売台数の減少等により当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(7) 商品ならびに販売・サービスに関する責任
当社グループは中期経営ビジョン「STEP」において、「品質改革」を最重要テーマの一つとして、品質マネジメントの強化を図っております。2019年4月には品質方針を「私たちは何より品質を大切にしてお客様の信頼に応えます」に改定しました。商品の企画から生産・販売・サービスに至るまであらゆるプロセスにおいて質の向上を図り「お客様が安心して長く使い続けることが出来る品質」№1を目指して品質改革を進めております。「生まれの品質」の向上を図るべく、これまで以上に開発の上流の段階から品質を向上させる開発プロセスの改革に取り組んでいます。CQO(最高品質責任者)が中心となり、お客様に当社製品を安心して長くお使いいただけるよう「品質を万全に仕上げる」、そして万が一品質問題が生じた際は「早く、正確に改善する」との方針のもと、抜本策に取り組んでおります。また、品質最優先の徹底に向けて従業員一人ひとりの品質意識をさらに高めるための取り組みを進めております。具体的には、全従業員へ品質意識醸成講座等を通じた啓蒙活動や、全従業員に加えお取引先様も対象とした「品質キャラバン」を開催し、SUBARUの品質の現状やお客様の声を直接伝える取り組みを行っております。さらに、2020年4月よりCQO直属の組織として当社グループ全体の品質保証を統括する品質保証統括室を設置し、グローバルレベルでの品質改革を加速しております。このような品質改革への取り組みの一方で、大規模なリコール等が起こった場合、多額のコストとして品質関連費用等が発生することに加え、ブランドイメージの毀損等により、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(8) サプライチェーンの分断
当社グループは自動車や航空機等の製造にあたり、多数のお取引先様から部品や材料を調達しております。定期的にお取引先様の品質保証力や供給能力のチェックを行うとともに、必要に応じお取引先様の経営状況のチェックも行い、安定調達に努めております。また、有事が発生した際は、平時より整備をしております一次・二次お取引先様の部品ごとの「サプライチェーン情報データベース」に基づき、影響を受ける可能性のあるお取引先様や部品を早期に特定することにより、生産継続に必要な在庫数の確認や代替品の生産検討、さらには生産設備の復旧支援を行う等、サプライチェーン分断の影響を最小限に留める対応を取っております。しかしながら、大規模な地震や台風等の自然災害、新型コロナウイルス等の感染症の発生やその他の要因により、サプライチェーンの分断や需給の逼迫が発生した場合、安定したコスト・納期・品質で調達が維持出来ず、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(9) 知的財産の侵害
当社グループは「安心と愉しさ」等のSUBARUらしさを際立たせるため、他社製品と差別化できる技術を知的財産として保護するとともに、コーポレートブランド管理規程を定め、SUBARUのブランド価値を維持・向上させることに努めております。しかしながら、第三者が当社グループの知的財産を不当に使用した類似製品を製造した場合、知的財産に係わる紛争が生じて当社に不利な判断がなされる場合、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(10) 情報ネットワークセキュリティ
当社グループは製品の開発・生産・販売など、事業活動において情報技術やネットワーク、システムを利用しております。これらの資産を守るためにサイバーセキュリティ基本方針を定め、従業員のセキュリティ意識向上に向け、セキュリティ教育を定期的に実施するとともに、IT戦略部門が中心となり、サイバー攻撃検知の迅速化を図るための監視とセキュリティインシデント発生時のSIRT(Security Incident Response Team)体制を整備しております。データのバックアップ体制につきましては、当社データセンター内の自社運用ならびにクラウド環境において、複数個所に分散しバックアップが取れる体制を整えており、局所的な災害等においても、事業継続や復旧の早期化に向けた対策を講じております。当社グループの情報技術やネットワーク、システムは、安全対策が施されているものの、サイバー攻撃、不正アクセス、コンピューターウィルスによる攻撃や大規模な停電、火災等が発生した場合、重要な業務やサービスの中断、データの破損・喪失、機密情報の漏洩等が発生し、ブランドイメージの毀損や当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(11) コンプライアンス
当社グループは中期経営ビジョン「STEP」において、「組織風土改革」を最重要テーマの一つとして掲げ、「正しい会社をつくる」活動を加速してまいりました。特に、コンプライアンスの徹底を経営の最重要課題の一つと位置付け、企業活動上求められるあらゆる法令・社内諸規程等の遵守はもとより、社会規範に則した公明かつ公正な企業活動を遂行することを従業員一人ひとりに浸透させ、行動の実践につなげるべく、コンプライアンス体制・組織の構築および運営、ならびに各種研修等の活動を行うことにより、コンプライアンスリスクの回避または最小化に努めております。それにも関わらず、当社グループ及び委託先等において重大な法令違反等が発生した場合、お客様の信用・信頼を失うことや社会的評価・評判の低下等によるブランドイメージの毀損等が事業基盤に重大な影響を与え、経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(12) 人材の確保と育成
当社グループは持続的な成長に向けて中期ビジョン「STEP」で掲げたありたい姿「モノをつくる会社から笑顔をつくる会社へ」を実現するために、人材育成を極めて重要なテーマと位置付けております。従業員自らが高い意欲を持って成長していくことを支援するため、職能資格制度、人事考課制度、目標管理制度、人事ローテーション、教育体系で構成される「人事制度」を整備しております。また、業界を取り巻く激しい環境変化に迅速に対応できる多様な価値観や専門性を持った人材の確保を行っております。しかしながら、労働市場の逼迫により人材確保が出来ない場合、専門性の高い人材の流出が続いた場合等、長期的に当社グループの事業活動や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
その他事業活動に影響を与える各国規制やイベント性のリスク
(13) 事業活動に影響を与える各国の政治・規制・法的手続き
当社グループは米国を中心に世界各国において事業を展開しております。海外市場での事業活動には、以下のようなリスクが内在しており、当該リスクが顕在化した場合、当社グループの経営成績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
・不利な政治、経済的要因
・法律または規制の変更による障害
・課税、関税、その他の税制変更
また、環境等に関して当社グループが受ける主な法的規制は、国内外ともに自動車の燃費、排出ガス、省エネルギーの推進、騒音、リサイクル、製造工場からの汚染物質排出レベル及び自動車等の安全性に関するものであります。今後、法的規制が強化されることによるコスト等の増加が、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。(14) 気候変動
当社グループは気候変動を最も重要な課題の一つと認識し、21世紀後半の早い段階で脱炭素社会を目指す「パリ協定」の趣旨を支持し、SCOPE1・2及びSCOPE3(商品)に関する中長期目標を掲げ、取り組んでいます。SCOPE1・2に関しては、2050年度にカーボン・ニュートラルを目指し、そのマイルストーンとして2030年度までに2016年度比で30%(総量ベース)のCO2削減に取り組みます。SCOPE3(商品)に関しては、2050年にWell to Wheelで新車平均(走行時)のCO2排出量を2010年比で90%以上削減を目指し、2030年までに全世界販売台数の40%以上を電気自動車(EV)+ハイブリッド車とし、2030年代前半には生産・販売するすべてのSUBARU車への電動技術の搭載に取り組みます。しかしながら、これらの取り組みが適切に進まない場合、異常気象による調達・生産・物流活動の停滞等が生じた場合、現時点での将来予測が極めて困難な移行リスク・物理的リスクの影響及び発現度によっては、研究開発費用等の増加、顧客満足やブランドイメージの低下等による販売機会の逸失、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(15) 災害・戦争・テロ・感染症等の影響
当社グループは特に経営に重要な影響を及ぼしかつ通常の意思決定ルートでは対処困難な緊急性が求められるクライシスリスクについては、自然災害、事故、内部人的要因、外部人的要因、社会的要因(国内・海外)、コンプライアンスリスクに分類し、有事の際に最適な対応ができる体制を整備しております。しかしながら、事業継続に影響を及ぼす災害・戦争・テロ・感染症等の発生により、当社グループの事業活動が妨げられ、原材料・部品の購入、生産、製品の販売及び物流、サービスの提供等に遅延や停止が生ずる可能性があります。このような遅延や停止が長期化する場合、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響と対応策
当社グループは新型コロナウイルスの感染拡大の初期段階からお客様、お取引先様、従業員の健康と安全を最優先に、以下の取り組みを進め感染拡大の防止や地域医療現場への支援に努めた事業活動を行っております。引き続き中期経営ビジョン「STEP」の推進を加速させるために、固定費構造の改革や投資の選択と集中等に取り組むとともに、在宅勤務の拡大等に合わせた働き方改革や間接業務の生産性向上、経費の全面見直しによる経営の筋肉質化等によって強靭な収益構造と事業基盤を作るべく、あらゆる改革にグループ一丸となって取り組んでおります。しかしながら、同感染症の世界的な再流行等により、新たな外出規制やサプライチェーンへの影響が発生し、想定を上回る経済活動の停滞が続いた場合、当社グループの生産・販売活動が経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性がありますが、有価証券報告書提出日現在において影響額を合理的に見積ることは困難であります。① 新型肺炎対策本部の設置
2020年2月上旬にCEO(最高経営責任者)をトップとした「新型肺炎対策本部」を立ち上げ、実務面ではCRMO(最高リスク管理責任者)による全体統括のもと国内外グループ各社等から情報収集を行い、状況の変化に応じて、お客様やお取引先様、従業員の健康と安全を最優先に感染拡大の防止と事業活動の継続を図るべく施策を講じております。
② 従業員への対応
本感染症発生の初期段階より従業員とその家族の安全確保を最優先としつつ、事業活動を継続させるために柔軟な対応を進めております。具体的には、2020年1月下旬から2月上旬にかけて段階的に中国全域やその他海外各国、国内への出張を中止いたしました。2月中旬からは社内外イベントの開催や参加の自粛、フレックスタイムを活用した時差出勤の推奨、オフィスにおける昼食の時差対応等を実施し、IT対応の強化を段階的に図りながら4月以降には東京地区を中心に本格的な在宅勤務体制を取りました。6月以降も東京地区では引き続き出勤率を最大5割とした体制で在宅勤務や時差出勤等の柔軟な働き方を推進し、感染リスクを軽減させる取り組みを続けております。
③ 生産・販売活動への影響
生産については、米国の生産拠点であるスバル オブ インディアナ オートモーティブ インク(SIA)は2020年3月23日より、国内の群馬製作所は4月9日より生産活動を一時停止し、いずれも5月11日に再開いたしましたが、サプライチェーン及び販売活動への影響が続いたことから、国内については6月19日まで生産量を調整いたしました。米国についても正常な操業に向けた体制が整い始めております。販売については、米国を中心に多くの販売店において様々な制約を受ける事態が続いておりましたが、徐々に回復の兆しが見え始めております。
④ 手元流動性の確保
本感染症の影響による資金需要に備え、一定額の現金及び現金同等物の確保に加え、2020年4月から5月にかけて運転資金として金融機関からコミットメントライン契約1,515億円及び証書貸付契約により600億円の資金調達を行いました。また、同感染症の影響が長期化した場合に備え、コミットメントライン約2,000億円(既借入分を含む)に加え、社債発行枠の設定800億円、コマーシャル・ペーパー発行枠の設定1,000億円等、合計約3,800億円の資金調達枠を確保し、資金需要に機動的に対応できる体制を整えております。
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