有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100IBQS (EDINETへの外部リンク)
株式会社電通グループ 事業等のリスク (2019年12月期)
当社グループの業績、株価および財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1) 景気変動に伴うリスク
当社グループを含めた広告会社の業績は、景気によって広告支出を増減させる広告主が多いため、景気変動の影響を受けやすい傾向があります。とりわけ、新型肺炎コロナウイルスの感染拡大は世界規模でマクロ経済に影響を与えており、これに伴い、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の延期をはじめ企業や団体等によるイベントを含む広告コミュニケーション活動にも中止や延期による影響が生じ始めています。それに加えて、国内・海外を問わず、広告支出額の大きい産業部門(自動車業界や飲料業界など)の事業環境の変化が、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(2) 広告業界内の競争環境に起因するリスク
① 競合社との価格競争のリスク
当社グループは、国内・海外を問わず、同業の広告会社グループやデジタルエージェンシーグループとの厳しい競争にさらされており、顧客企業における営業費削減のニーズが強まる中で、とりわけメディアプランニング・バイイングの領域において、競合社との価格競争に巻き込まれるケースもあります。
当社グループは、従来から、単に顧客の商品・サービスの広告作業や各種マーケティング施策を受託するに留まらず、顧客の抱える課題の本質を見極め、その課題解決に向けた統合的ソリューションをデザインし、提案から実施までワンストップで提供できる体制を整えてまいりました。このような高付加価値のソリューションを引き続き提供することで、競合社との差別化が図られ、価格競争に巻き込まれない強固な顧客との関係性を維持できると考えております。
しかしながら、競合社との価格競争により低マージンで受注せざるを得ないケース、または利益を確保できないために受注を辞退せざるを得ないケースが増加した場合、当社グループの収益の減少やオペレーティングマージンの悪化につながる可能性があります。
② グローバル企業の扱い喪失リスク
当社グループの顧客には、グローバルレベルで事業を展開する企業が多数含まれます。これらの顧客は、広告キャンペーンの統一性を担保する必要性や効率的な運用の観点から、とりわけメディアプランニング・バイイングの領域において、グローバルレベル(あるいはAPAC等の地域レベル)で取り扱い広告会社を選定する入札(グローバルピッチ)を実施することがあります。グローバルピッチは対象となる広告宣伝費の取扱高が多額になる傾向があります。
今後、当社グループの既存顧客が実施するグローバルピッチで当社が敗北した場合、またはこれらのピッチで勝利するために従来よりも低マージンでの受注を余儀なくされた場合、当社グループの収益の減少やオペレーティングマージンの悪化につながる可能性があります。
(3) 広告業界の構造変化に起因するリスク
① メディア環境の構造変化に伴うリスク
生活者を取り巻くメディア環境は、インターネットおよびデジタルデバイスの技術革新を背景に、グローバルレベルで大きくデジタルへとシフトしています。当社グループは、このメディア環境の構造変化を商機と捉え、次世代のメディアにグループのリソースを柔軟に配分・投下し、常に最新の生活者の行動原理に合わせたマーケティングソリューションを顧客企業に提供することで、このメディア環境の構造変化を収益拡大につなげております。
しかしながら、当社グループがこのメディア環境の構造変化に迅速かつ適切に対応できない場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、このメディア環境の構造変化は、国・地域ごとに異なる形態および時間軸で進行しており、当社グループが、一部の国・地域において、この潮流に乗り遅れるリスクもあります。とりわけ、国内において、マス四媒体(新聞、雑誌、テレビ、ラジオ)の生活者への浸透度や影響力が今後急速に弱まり、それに伴い広告出稿が減少した場合、国内事業の収益の減少やオペレーティングマージンの悪化につながる可能性があります。
② 他業種との競争の拡大
当社グループは、同業の広告会社グループやデジタルエージェンシーグループとの競争に加え、この数年で他業種との新たな競争にさらされています。顧客からの広告・マーケティング活動の効率化・最適化の要求が強まり、生活者ひとりひとりにカスタマイズしたマーケティング・コミュニケーションへの要求が高まる中、データアナリティクス領域、カスタマーエクスペリエンス(CX)領域、コンサルティング領域の企業と競合するケースが増えております。
当社グループは、この業界構造の変化を商機と捉え、国内においては、顧客企業の課題を人(People)基点で捉え直し、必要な人に、必要な場所で、必要なタイミングで情報提供することを目指した統合マーケティング・フレームワークPeople Driven Marketingを軸に据えて、顧客企業のマーケティング戦略の立案から実施まで提供できる体制を整えております。また、海外においては、2016年に米国のマークル社を買収して大規模なデータアナリティクス関連のケイパビリティを獲得する等の施策により、業界構造の変化に対応しつつ大きなトップラインの成長を実現しております。
しかしながら、当社グループの基軸事業である広告マーケティング領域と他領域の間の境界線が今後ますます曖昧になり、他業種との競争が激化した場合、当社グループの収益の一部を他業種の競合社に奪われる可能性があります。
③ 海外におけるインハウス化の潮流
この数年、海外の広告市場、とりわけ米国市場を中心に、顧客企業が従来広告会社に外注してきたマーケティング活動の一部を顧客内部で実施する潮流(インハウス化)が広がっており、旧来型の広告会社の提供サービスへの需要が減るとともに、顧客のインハウス化を支援できるコンサルティング機能への需要が高まっています。
当社グループは、マークル社を中心にこの潮流に対応したコンサルティング機能の強化を図っておりますが、当社グループ傘下の一部の広告会社は、この潮流の影響を受けて収益が減少する可能性があります。
(4) テクノロジーおよびサービスの陳腐化に起因するリスク
当社グループは、顧客企業のマーケティング・コミュニケーション上の課題を解決するソリューションを提供するために、アドテクノロジーやマーケティングテクノロジー等への継続的な投資および独自のデータマーケティングプラットフォームの開発等を行っております。しかしながら、これらの投資や開発が想定通りに進まない可能性または顧客企業の課題解決に最適なソリューションに必ずしもつながらない可能性、当社グループのテクノロジーまたはサービスが技術革新により陳腐化する可能性、競合社が当社グループよりも顧客企業の課題解決に資するテクノロジーまたはサービスを開発する可能性等があります。
(5) コンテンツ事業に係るリスク
当社グループは、国内・海外を問わず、映画への制作出資やスポーツイベントの放送権の仕入販売などのコンテンツ事業を展開しております。これらのコンテンツ事業には、収入を得る前に支払が先行するもの、収支計画が多年度にわたるものが多く含まれております。また、大型のスポーツイベントの協賛権や放送権の獲得などには多額の財務的コミットメントを必要とするものもあります。
当社グループはこれらのコンテンツ事業領域に長く従事しているため一定の精度で収支計画を立てる知見を有しており、また多くのコンテンツ事業案件をポートフォリオとして管理することでコンテンツ事業のリスク分散を図っております。
しかしながら、コンテンツ事業の収入を左右する生活者の反応を確実に予測することは困難であり、案件が収支計画通りに進捗しない場合、また、当社による仕入金額を下回る金額でしか協賛権や放送権を顧客に販売できない場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(6) 売掛金の未収リスク
顧客企業が倒産等した場合に、広告料金を含む業務受託料等の売掛金の一部が未収となるリスクがあります。これらのケースが増加した場合、当社グループの業績及び資金繰りに悪影響を及ぼす可能性があります。
(7) 海外事業の構造改革に係るリスク
当社グループは、当期の海外事業の業績の低迷を受けて、オーストラリア、ブラジル、中国、フランス、ドイツ、シンガポール及び英国の7つの市場を対象として、対象市場全体の約11%の人員削減を含む構造改革に着手しております。この構造改革により、新たな事業モデルの導入を加速してクライアントへより良いサービスを提供し、従業員満足度の向上、収益の拡大およびオペレーティング・マージンの改善を目指します。しかしながら、同構造改革が想定通りに進まなかった場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(8) 中長期の視点での新たなビジネス開発に伴うリスク
当社グループは、国内において、中長期での新たな収益源の確保を企図して、新たな事業の開発やビジネスモデルの構築に向けた様々な取り組みを強化しております。これらには、顧客企業との共同事業への取り組みや、広告・マーケティング領域とは必ずしも関連性のない領域でのビジネス開発も含みます。例えば、2019年度の、株式会社北海道日本ハムファイターズおよび日本ハム株式会社との新球場の運営業務等に係る合弁会社の設立などが挙げられます。
しかしながら、技術革新、消費者動向の読み違い、過度に楽観的な事業計画、共同事業パートナーとの交渉難航など様々な理由で、これらのビジネス開発が中長期的に収益化できず、当社グループの業績に悪影響が出る可能性があります。また、仮に中長期的に収益化できる事業であっても、投下した資本の回収に一定の期間を要する場合、一時的に当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(9) 人材の確保に係るリスク
当社グループの成長力および競争力は、優秀な人材の獲得および退職率の低減に依存します。当社グループは、従業員に対して労働市場で一定の競争力ある待遇を提供すること、および従業員ひとりひとりがやりがいを持つとともに成長を実感できる業務にアサインすること等で、優秀な人材の確保および退職率の低減を図りつつ、従業員ひとりひとりの能力を最大限に活性化するよう努めております。
しかしながら、労働市場の逼迫による人材不足等に起因して、当社グループが必要な人材を十分に確保できない場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(10) 電通イージス・ネットワーク社に係るのれんおよび無形資産の減損リスク
当社は2013年3月に英国の大手広告会社Aegis Group plcを買収し、当社グループの海外事業の推進をイージス社に一本化して電通イージス・ネットワーク社に再編しました。
当社は、イージス社の買収、およびその後電通イージス・ネットワーク社がグローバルレベルで実施した、マークル社を含む多数の会社の買収に伴い、多額ののれんおよび無形資産を計上しております。
当社は、当期において、オーストラリア・中国等における業績の低迷やAPAC地域のマクロ環境の不透明感を踏まえ、同地域の事業計画を保守的に見直し、同地域を1つの資金生成単位グループとして減損テストを行いました。その結果、同地域に係る将来キャッシュフローの見積もりおよび現在価値を減少させたことで、同地域に係るのれん減損損失約701億円を計上しました。
当社は、APAC地域以外の地域に係るのれんおよび無形資産については、現時点で減損の必要はないと考えております。しかしながら、今後の資金生成単位グループ毎の減損テストの結果、再び減損損失が発生した場合、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(11) 法規制・訴訟等に係るリスク
① 労働法規に違反するリスク
当社グループは、社員ひとりひとりが恒常的に良好なコンディションを維持できる労働環境を整えることを経営の最優先課題の1つとして取り組んでおりますが、同労働環境の整備が不十分なものに留まるまたは遅延する場合、当社グループの社員のモチベーションおよびパフォーマンスの低下、優秀な社員の外部流出、多様性ある人材の獲得の困難化などの事態が発生し、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社の完全子会社である株式会社電通において2017年度から継続的に取り組んでいる労働環境改革により、同社の国内における社員の労働環境は着実に改善され、2016年度に「2,166時間」だった社員1人当たり総労働時間は2019年度には「1,903時間」にまで減少したものの、同社における労務管理上の不祥事が再発した場合、当社グループのレピュテーションが大きく悪化する可能性があります。
② 個人情報等に係るリスク
当社グループは、その業務遂行の過程で、顧客企業にとっての既存顧客・潜在顧客の個人情報を受領することがあります。また、顧客企業からの消費者ひとりひとりにカスタマイズしたマーケティング・コミュニケーションへの要求が高まる中、パーソナルデータを利活用した商品・サービスを開発して顧客企業に提供しております。
当社グループは、国内・海外を問わず、個人情報保護法およびEU一般データ保護規則等の法令または諸規制を遵守し、また、これら法令または諸規制の改定に迅速に対応しており、現時点においてこれらの法令または諸規制が当社グループの事業に悪影響を及ぼすことは想定しておりません。
しかしながら、万一個人情報の漏えい等の事故が発生した場合、当社グループの信頼性が損なわれ、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、今後、これら法令または諸規制が改定され、当社のパーソナルデータの利活用に何らかの制限が課され、当社の商品・サービスの一部を顧客企業に提供できなくなった場合、当社グループの事業に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 情報セキュリティに係るリスク
当社グループは、その業務遂行の過程で、顧客企業の未公開の商品・サービス情報や事業戦略に係る情報を受領することが頻繁にあります。当社グループでは情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格を取得するなど、情報管理には万全を期しておりますが、万一情報漏えい等の事故が発生した場合、当社グループの信頼性が損なわれ、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
④ 訴訟等に係るリスク
現在、当社グループは、その業績に重大な影響を及ぼし得る訴訟等を抱えておりません。しかしながら、当社グループが広範な領域にわたり遂行している事業は、国内・海外を問わず、常に顧客・媒体社・協力会社等から訴訟を提起されるリスクを内包しております。
(12) 災害、事故等に関わるリスク
当社グループが事業を遂行又は展開する地域において、自然災害、電力その他の社会的インフラの障害、通信・放送の障害、流通の混乱、大規模な事故、伝染病、戦争、テロ、政情不安、社会不安等が起こった場合に
は、当社グループ又は当社グループの取引先の事業活動に悪影響を及ぼし、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1) 景気変動に伴うリスク
当社グループを含めた広告会社の業績は、景気によって広告支出を増減させる広告主が多いため、景気変動の影響を受けやすい傾向があります。とりわけ、新型肺炎コロナウイルスの感染拡大は世界規模でマクロ経済に影響を与えており、これに伴い、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の延期をはじめ企業や団体等によるイベントを含む広告コミュニケーション活動にも中止や延期による影響が生じ始めています。それに加えて、国内・海外を問わず、広告支出額の大きい産業部門(自動車業界や飲料業界など)の事業環境の変化が、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(2) 広告業界内の競争環境に起因するリスク
① 競合社との価格競争のリスク
当社グループは、国内・海外を問わず、同業の広告会社グループやデジタルエージェンシーグループとの厳しい競争にさらされており、顧客企業における営業費削減のニーズが強まる中で、とりわけメディアプランニング・バイイングの領域において、競合社との価格競争に巻き込まれるケースもあります。
当社グループは、従来から、単に顧客の商品・サービスの広告作業や各種マーケティング施策を受託するに留まらず、顧客の抱える課題の本質を見極め、その課題解決に向けた統合的ソリューションをデザインし、提案から実施までワンストップで提供できる体制を整えてまいりました。このような高付加価値のソリューションを引き続き提供することで、競合社との差別化が図られ、価格競争に巻き込まれない強固な顧客との関係性を維持できると考えております。
しかしながら、競合社との価格競争により低マージンで受注せざるを得ないケース、または利益を確保できないために受注を辞退せざるを得ないケースが増加した場合、当社グループの収益の減少やオペレーティングマージンの悪化につながる可能性があります。
② グローバル企業の扱い喪失リスク
当社グループの顧客には、グローバルレベルで事業を展開する企業が多数含まれます。これらの顧客は、広告キャンペーンの統一性を担保する必要性や効率的な運用の観点から、とりわけメディアプランニング・バイイングの領域において、グローバルレベル(あるいはAPAC等の地域レベル)で取り扱い広告会社を選定する入札(グローバルピッチ)を実施することがあります。グローバルピッチは対象となる広告宣伝費の取扱高が多額になる傾向があります。
今後、当社グループの既存顧客が実施するグローバルピッチで当社が敗北した場合、またはこれらのピッチで勝利するために従来よりも低マージンでの受注を余儀なくされた場合、当社グループの収益の減少やオペレーティングマージンの悪化につながる可能性があります。
(3) 広告業界の構造変化に起因するリスク
① メディア環境の構造変化に伴うリスク
生活者を取り巻くメディア環境は、インターネットおよびデジタルデバイスの技術革新を背景に、グローバルレベルで大きくデジタルへとシフトしています。当社グループは、このメディア環境の構造変化を商機と捉え、次世代のメディアにグループのリソースを柔軟に配分・投下し、常に最新の生活者の行動原理に合わせたマーケティングソリューションを顧客企業に提供することで、このメディア環境の構造変化を収益拡大につなげております。
しかしながら、当社グループがこのメディア環境の構造変化に迅速かつ適切に対応できない場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、このメディア環境の構造変化は、国・地域ごとに異なる形態および時間軸で進行しており、当社グループが、一部の国・地域において、この潮流に乗り遅れるリスクもあります。とりわけ、国内において、マス四媒体(新聞、雑誌、テレビ、ラジオ)の生活者への浸透度や影響力が今後急速に弱まり、それに伴い広告出稿が減少した場合、国内事業の収益の減少やオペレーティングマージンの悪化につながる可能性があります。
② 他業種との競争の拡大
当社グループは、同業の広告会社グループやデジタルエージェンシーグループとの競争に加え、この数年で他業種との新たな競争にさらされています。顧客からの広告・マーケティング活動の効率化・最適化の要求が強まり、生活者ひとりひとりにカスタマイズしたマーケティング・コミュニケーションへの要求が高まる中、データアナリティクス領域、カスタマーエクスペリエンス(CX)領域、コンサルティング領域の企業と競合するケースが増えております。
当社グループは、この業界構造の変化を商機と捉え、国内においては、顧客企業の課題を人(People)基点で捉え直し、必要な人に、必要な場所で、必要なタイミングで情報提供することを目指した統合マーケティング・フレームワークPeople Driven Marketingを軸に据えて、顧客企業のマーケティング戦略の立案から実施まで提供できる体制を整えております。また、海外においては、2016年に米国のマークル社を買収して大規模なデータアナリティクス関連のケイパビリティを獲得する等の施策により、業界構造の変化に対応しつつ大きなトップラインの成長を実現しております。
しかしながら、当社グループの基軸事業である広告マーケティング領域と他領域の間の境界線が今後ますます曖昧になり、他業種との競争が激化した場合、当社グループの収益の一部を他業種の競合社に奪われる可能性があります。
③ 海外におけるインハウス化の潮流
この数年、海外の広告市場、とりわけ米国市場を中心に、顧客企業が従来広告会社に外注してきたマーケティング活動の一部を顧客内部で実施する潮流(インハウス化)が広がっており、旧来型の広告会社の提供サービスへの需要が減るとともに、顧客のインハウス化を支援できるコンサルティング機能への需要が高まっています。
当社グループは、マークル社を中心にこの潮流に対応したコンサルティング機能の強化を図っておりますが、当社グループ傘下の一部の広告会社は、この潮流の影響を受けて収益が減少する可能性があります。
(4) テクノロジーおよびサービスの陳腐化に起因するリスク
当社グループは、顧客企業のマーケティング・コミュニケーション上の課題を解決するソリューションを提供するために、アドテクノロジーやマーケティングテクノロジー等への継続的な投資および独自のデータマーケティングプラットフォームの開発等を行っております。しかしながら、これらの投資や開発が想定通りに進まない可能性または顧客企業の課題解決に最適なソリューションに必ずしもつながらない可能性、当社グループのテクノロジーまたはサービスが技術革新により陳腐化する可能性、競合社が当社グループよりも顧客企業の課題解決に資するテクノロジーまたはサービスを開発する可能性等があります。
(5) コンテンツ事業に係るリスク
当社グループは、国内・海外を問わず、映画への制作出資やスポーツイベントの放送権の仕入販売などのコンテンツ事業を展開しております。これらのコンテンツ事業には、収入を得る前に支払が先行するもの、収支計画が多年度にわたるものが多く含まれております。また、大型のスポーツイベントの協賛権や放送権の獲得などには多額の財務的コミットメントを必要とするものもあります。
当社グループはこれらのコンテンツ事業領域に長く従事しているため一定の精度で収支計画を立てる知見を有しており、また多くのコンテンツ事業案件をポートフォリオとして管理することでコンテンツ事業のリスク分散を図っております。
しかしながら、コンテンツ事業の収入を左右する生活者の反応を確実に予測することは困難であり、案件が収支計画通りに進捗しない場合、また、当社による仕入金額を下回る金額でしか協賛権や放送権を顧客に販売できない場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(6) 売掛金の未収リスク
顧客企業が倒産等した場合に、広告料金を含む業務受託料等の売掛金の一部が未収となるリスクがあります。これらのケースが増加した場合、当社グループの業績及び資金繰りに悪影響を及ぼす可能性があります。
(7) 海外事業の構造改革に係るリスク
当社グループは、当期の海外事業の業績の低迷を受けて、オーストラリア、ブラジル、中国、フランス、ドイツ、シンガポール及び英国の7つの市場を対象として、対象市場全体の約11%の人員削減を含む構造改革に着手しております。この構造改革により、新たな事業モデルの導入を加速してクライアントへより良いサービスを提供し、従業員満足度の向上、収益の拡大およびオペレーティング・マージンの改善を目指します。しかしながら、同構造改革が想定通りに進まなかった場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(8) 中長期の視点での新たなビジネス開発に伴うリスク
当社グループは、国内において、中長期での新たな収益源の確保を企図して、新たな事業の開発やビジネスモデルの構築に向けた様々な取り組みを強化しております。これらには、顧客企業との共同事業への取り組みや、広告・マーケティング領域とは必ずしも関連性のない領域でのビジネス開発も含みます。例えば、2019年度の、株式会社北海道日本ハムファイターズおよび日本ハム株式会社との新球場の運営業務等に係る合弁会社の設立などが挙げられます。
しかしながら、技術革新、消費者動向の読み違い、過度に楽観的な事業計画、共同事業パートナーとの交渉難航など様々な理由で、これらのビジネス開発が中長期的に収益化できず、当社グループの業績に悪影響が出る可能性があります。また、仮に中長期的に収益化できる事業であっても、投下した資本の回収に一定の期間を要する場合、一時的に当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(9) 人材の確保に係るリスク
当社グループの成長力および競争力は、優秀な人材の獲得および退職率の低減に依存します。当社グループは、従業員に対して労働市場で一定の競争力ある待遇を提供すること、および従業員ひとりひとりがやりがいを持つとともに成長を実感できる業務にアサインすること等で、優秀な人材の確保および退職率の低減を図りつつ、従業員ひとりひとりの能力を最大限に活性化するよう努めております。
しかしながら、労働市場の逼迫による人材不足等に起因して、当社グループが必要な人材を十分に確保できない場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(10) 電通イージス・ネットワーク社に係るのれんおよび無形資産の減損リスク
当社は2013年3月に英国の大手広告会社Aegis Group plcを買収し、当社グループの海外事業の推進をイージス社に一本化して電通イージス・ネットワーク社に再編しました。
当社は、イージス社の買収、およびその後電通イージス・ネットワーク社がグローバルレベルで実施した、マークル社を含む多数の会社の買収に伴い、多額ののれんおよび無形資産を計上しております。
当社は、当期において、オーストラリア・中国等における業績の低迷やAPAC地域のマクロ環境の不透明感を踏まえ、同地域の事業計画を保守的に見直し、同地域を1つの資金生成単位グループとして減損テストを行いました。その結果、同地域に係る将来キャッシュフローの見積もりおよび現在価値を減少させたことで、同地域に係るのれん減損損失約701億円を計上しました。
当社は、APAC地域以外の地域に係るのれんおよび無形資産については、現時点で減損の必要はないと考えております。しかしながら、今後の資金生成単位グループ毎の減損テストの結果、再び減損損失が発生した場合、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(11) 法規制・訴訟等に係るリスク
① 労働法規に違反するリスク
当社グループは、社員ひとりひとりが恒常的に良好なコンディションを維持できる労働環境を整えることを経営の最優先課題の1つとして取り組んでおりますが、同労働環境の整備が不十分なものに留まるまたは遅延する場合、当社グループの社員のモチベーションおよびパフォーマンスの低下、優秀な社員の外部流出、多様性ある人材の獲得の困難化などの事態が発生し、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社の完全子会社である株式会社電通において2017年度から継続的に取り組んでいる労働環境改革により、同社の国内における社員の労働環境は着実に改善され、2016年度に「2,166時間」だった社員1人当たり総労働時間は2019年度には「1,903時間」にまで減少したものの、同社における労務管理上の不祥事が再発した場合、当社グループのレピュテーションが大きく悪化する可能性があります。
② 個人情報等に係るリスク
当社グループは、その業務遂行の過程で、顧客企業にとっての既存顧客・潜在顧客の個人情報を受領することがあります。また、顧客企業からの消費者ひとりひとりにカスタマイズしたマーケティング・コミュニケーションへの要求が高まる中、パーソナルデータを利活用した商品・サービスを開発して顧客企業に提供しております。
当社グループは、国内・海外を問わず、個人情報保護法およびEU一般データ保護規則等の法令または諸規制を遵守し、また、これら法令または諸規制の改定に迅速に対応しており、現時点においてこれらの法令または諸規制が当社グループの事業に悪影響を及ぼすことは想定しておりません。
しかしながら、万一個人情報の漏えい等の事故が発生した場合、当社グループの信頼性が損なわれ、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、今後、これら法令または諸規制が改定され、当社のパーソナルデータの利活用に何らかの制限が課され、当社の商品・サービスの一部を顧客企業に提供できなくなった場合、当社グループの事業に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 情報セキュリティに係るリスク
当社グループは、その業務遂行の過程で、顧客企業の未公開の商品・サービス情報や事業戦略に係る情報を受領することが頻繁にあります。当社グループでは情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格を取得するなど、情報管理には万全を期しておりますが、万一情報漏えい等の事故が発生した場合、当社グループの信頼性が損なわれ、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
④ 訴訟等に係るリスク
現在、当社グループは、その業績に重大な影響を及ぼし得る訴訟等を抱えておりません。しかしながら、当社グループが広範な領域にわたり遂行している事業は、国内・海外を問わず、常に顧客・媒体社・協力会社等から訴訟を提起されるリスクを内包しております。
(12) 災害、事故等に関わるリスク
当社グループが事業を遂行又は展開する地域において、自然災害、電力その他の社会的インフラの障害、通信・放送の障害、流通の混乱、大規模な事故、伝染病、戦争、テロ、政情不安、社会不安等が起こった場合に
は、当社グループ又は当社グループの取引先の事業活動に悪影響を及ぼし、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
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