有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100KDPI (EDINETへの外部リンク)
株式会社メディネット 事業等のリスク (2020年9月期)
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。また、当社は必ずしも事業上のリスクとは考えていない事項についても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する情報開示の観点から積極的に開示しております。
なお、当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応等に努める方針でありますが、投資判断は、以下の記載事項及び本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があります。以下の記載は、当社に関連するリスクを全て網羅するものではないことにご留意ください。
なお、文中の将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。
①価格に係るリスク
免疫細胞治療は先進的な医療技術であるため、一般的な治療として行われている外科療法、放射線療法、化学療法(抗がん剤治療等)等のように、現時点では保険診療の対象とはなっておらず、当社契約医療機関における免疫細胞治療1クールの治療費総額は、医師が適切と判断する治療の種類等にもよりますが、およそ160万円であります。当社は、特定細胞加工物の製造の対価として細胞加工の種類と回数に基づく変動課金制による加工料を頂いておりますが、その金額は当該契約医療機関の患者が負担する治療費に制約されます。また、免疫細胞治療は先端医療であるがゆえに、医師の治療方法に対する考え方に相違があること、関連技術が急速な進歩過程にあること等の理由により、標準的な価格水準が定まっていません。今後、免疫細胞治療の治療費水準の変化等に伴い、加工料の見直しがなされた場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。また、2014年11月に「再生医療等安全性確保法」が施行され、免疫細胞治療は医療機関により適切に提供されることになりましたが、今後、本法令を遵守した運用の中で新たな対応策が求められる可能性も考えられることから、特定細胞加工物の製造の対価そのものの形態が変更される可能性があります。
企業が細胞加工を受託する「細胞加工業」というビジネスモデル構築の過程において、どのような価格体系が形成されるかは今後の動向次第であり、そのため免疫細胞治療に係る価格については未だ不確定要素があります。
今後、再生・細胞医療分野の産業化に向けた環境が整備され、多くの新規企業による市場参入及び競争激化に伴い、特定細胞加工物の製造の対価及び新たなビジネスの価格競争が生じた場合には、当社業績に影響を与える可能性があります。
②競合及び競合他社に係るリスク
(1)再生・細胞医療に係る分野への企業参入状況
「再生医療関連法」の施行は、これまで明確な法的枠組みが整わなかったために再生・細胞医療市場への参入を控えていた製薬企業等が参入する機会となり得ます。現在、複数の企業が、当社のビジネスと類似したモデルで免疫細胞治療を含む再生・細胞医療に係る分野に参入してきております。こうした動きは、新たな技術革新の進展を促し、市場が拡大していく反面、玉石混淆の状況を作り出す可能性もあり、結果として患者のデメリットになることも考えられます。他企業がトラブルを起こした場合、業界全体のイメージ低下等により、当社も間接的に悪影響を受け、当社の業績に影響を与える可能性があります。
(2)バイオテクノロジーの進歩に伴う競合
当社の属するバイオテクノロジー業界は急速に変化・拡大しておりますが、特にがん治療分野では新しい治療薬の研究開発が進んでおります。大手製薬企業が、がんをターゲットとして開発を進める免疫チェックポイント阻害薬(がんの免疫逃避機構を阻止する薬)、分子標的薬(病気に関係がある細胞だけに働きかける機能を持った新しいタイプの治療薬)、血管新生阻害剤(がん細胞に栄養や酸素を供給する血管の新生を抑える薬)等は免疫細胞治療との併用効果が期待されておりますが、仮に免疫細胞治療との併用とは関連なく、治療効果の高い医薬品が開発された場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。
また、当社においては、積極的な研究開発投資により、常に最先端の技術への対応、業界に先駆けた新技術の開発等に注力しておりますが、当該技術革新への対応が遅れた場合、あるいは、現在の主力事業の対象となっている免疫細胞治療に代わる画期的な治療法が開発された場合等には、当社の業績に影響を与える可能性があります。
③品質管理体制に係るリスク
当社は、2014年に施行された再生医療関連法の下、これまで培った経験・知見、再生・細胞医療分野の事業ノウハウを用いて効率的に適合させ、信頼ある細胞加工業を推進しております。現在、当社では以下のような品質管理体制を整備・運用しております。
(1)細胞培養加工施設
当社が細胞加工を行っている品川細胞培養加工施設は、「再生医療等安全性確保法」に適合する設備構造を有しており、2015年5月に特定細胞加工物製造事業者許可を取得し、医療機関、企業等からの細胞加工を受託できる体制が整っております。
(2)細胞加工技術者の育成・確保
「再生医療等安全性確保法」の施行により、企業が医療機関から治療用細胞の加工を受託することが可能となっております。十分な安全管理体制を確保できない医療機関や細胞培養加工施設を有しながらも効率的な運営ができない等の問題を抱える医療機関から治療用細胞の加工を受託することが可能となり、当社にとってこれまでの事業経験をアドバンテージとして、営業収益を拡大する機会となります。しかしながら、治療用細胞を適正かつ安全に加工するためには、十分な教育を受けた細胞加工技術者の確保・育成が必須です。当社ではこれまでの経験に裏付けされた治療用細胞の加工を適正かつ安全に行うための細胞加工技術者の育成システムを有しており、継続的に細胞加工技術者を育成・確保に努めております。
(3)原材料管理
細胞加工には常に安全な原材料を用いることが条件となるため、培地(細胞培養液)や試薬については、購入先との厳密な購買契約を締結し、培地や試薬の不良品の混入、劣化を未然に防ぐとともに、仕入、保存管理の徹底、検査体制の充実等、常に品質管理体制の強化を図っております。
当社は、今後とも常に品質管理体制の強化に努めてまいりますが、人材流出、培地や試薬の不良品の混入、劣化、細胞加工の過程における人為的な過失、地震や火災の災害等が発生した場合には、重大な事故に繋がる恐れもあり、当社の業績に影響を与える可能性があります。また、再生医療関連法が施行された下で運営されている細胞培養加工施設の前例がまだ少なく、新たに定められた法律であるため、関係官庁の動向や当社が想定し得ない事象が生じた場合には、その対応の為、当社の事業推進に影響を与える可能性があります。
④法的規制の影響
当社は、事業の遂行にあたって、関連法令を含めた法令を遵守しております。主には、次に挙げる再生医療関連法の法的規制の適用を受けています。
(1)「再生医療等安全性確保法」との関連
「再生医療等安全性確保法」は、再生医療等に用いられる再生医療等技術の安全性の確保及び生命倫理への配慮や医療機関が再生医療技術を用いた治療を行う場合に講じるべき措置、治療に用いる細胞組織の加工を医療機関以外が実施する場合の細胞加工物の製造の許可等の制度を定めた法律です。今後、治療に用いる細胞加工を行う場合には、細胞培養加工施設ごとに「特定細胞加工物製造業許可」を取得する必要があります(但し、医療機関が細胞加工を行う場合には届出のみ)。医療機関が再生医療を行おうとする場合には、再生医療等提供計画の作成、認定再生医療等委員会における審議、厚生労働省への計画書等の提出が義務付けられます。そのため、医療機関にとっては、こうした手続き等の負担が大きくなりますが、一方で、こうした適切な治療手続きを行っていない医療機関等は排除されていくことになります。
当社は、上記のような医療機関に対して法律対応を支援するとともに、特定細胞加工物製造事業者許可を取得した当社が保有する細胞培養加工施設で医療機関からの細胞加工を受託しております。しかしながら、新たに定められた法律であるため、関係官庁の動向や当社が想定し得ない事象が生じた場合には、その対応のためのコストが発生する可能性があり、そのため、当社の財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2)「医薬品医療機器等法」との関連
「医薬品医療機器等法」は、医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の品質、有効性及び安全性の確保のために必要な規制を行うとともに、指定薬物の規制に関する措置を講ずるほか、医療上特にその必要性が高い医薬品及び医療機器の研究開発の促進のために必要な措置、医薬品等の有効性及び安全性の確保のために必要な規制を行うことを目的とした法律です。本法律では、再生医療技術を用いた医療用の製品として、新たに再生医療等製品がカテゴリ化されており、当社が再生医療技術を用いた医療用の製品開発を行う場合には、当法律に従うことになります。
再生医療関連法には罰則が規定されており、「再生医療等安全性確保法」に関しては当社及び契約医療機関が、「医薬品医療機器等法」に関しては当社及び当社が技術導入・導出した企業等が、予期せず当該罰則規定に抵触した場合には、罰則金の支払いが生じること等から、当社の社会的な信用を失う可能性があります。
⑤研究開発に内在する不確実性
当社が事業展開する再生・細胞医療分野は、日進月歩に進化するがゆえに、継続的な研究開発活動は持続的成長にとって大変重要な役割を担っております。
当社では、研究開発を通して将来に渡る企業価値向上を図るべく、研究開発を戦略的に遂行していくための体制を構築し、積極的な活動を行っております。
これらに必要な研究開発費は、2018年9月期1,502,882千円(売上高に対する比率150.5%)、2019年9月期276,566千円(同比率26.1%)、2020年9月期249,996千円(同比率31.9%)となっており、将来に渡る企業価値向上を図るための先行投資と認識しております。
しかしながら、研究開発投資に見合うだけの事業化等による研究成果が得られなかった場合等には、当社の業績に影響を与える可能性があります。
⑥知的財産権に係るリスク
医療技術や細胞加工に密接に関わる重要な(周辺)技術については、積極的に知的財産権の出願を行い、当社の技術を適切に保護しております。
また、これら先端医療技術の中には、特許として知的財産権を獲得するよりも、ノウハウとして保有する方が事業戦略上優位であると考えられるものも少なからずあり、ノウハウについては、取引先あるいは共同研究先との秘密保持契約等で守ることにより、外部に流出しないよう厳しく管理しております。
しかしながら、以上のような対応している中においても、出願した案件が権利化できないという可能性もあり、また、権利化できた場合でも、実際にその権利を行使できない可能性や、第三者の権利に抵触している可能性もあります。
⑦政府の推進政策等の変化
現在、日本においては、再生医療関連法の施行等により、再生・細胞医療分野に関する規制制度環境が整備されております。また、それ以外にも再生・細胞医療、バイオテクノロジー及び先端医療に係る各種の推進政策が実施されており、これらの推進政策は、当社が事業を展開する細胞加工事業及び再生医療等製品事業等の分野に大きく関わっております。
政府の主な推進政策とその概要は以下のとおりであります。
(1)新たな成長戦略テーマとしての医療関連産業
日本経済の再生に向けた成長戦略の一環として2016年2月に閣議決定された「日本再興戦略-第4次産業革命に向けて-」の官民戦略プロジェクト10において、医療関連産業の活性化を行うための方策として、医薬品・医療機器開発・再生医療研究を加速させる規制・制度改革等が含まれる等、近年、成長産業としての医療分野の注目度が急速に高まってきております。上記戦略においては、医療などの社会保障関連分野が有望成長市場の一つに位置づけられ、「世界最先端の健康立国へ」として日本発の優れた医薬品・医療機器等の開発・事業化、グローバル市場の獲得・国際貢献を行うこと等が盛り込まれていることから、その政策動向如何により、当社の今後の事業展開に影響を与えるものと考えております。
(2)先進医療制度
日本における医療制度においては、保険診療と保険で認められていない診療(保険外診療)の併用は原則として禁止されております。しかし、将来的に保険導入を目指す先端的医療技術については、「先進医療」という制度によって保険診療との併用が認められています。これにより今後、「先進医療」として免疫細胞治療を実施する医療機関が増え、免疫細胞治療の認知、普及がさらに進むことが期待されます。しかしながら、今後、これら政府の政策の方向性に大きな変化が生じることとなった場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。
⑧特定の取引先への依存
2020年9月期の売上高783,035千円のうち、医療法人社団滉志会に対する売上は、604,904千円(売上高に占める割合77.3%)と、現時点では同医療法人に対する依存度が高い状態にあります。医療法人社団滉志会は、当社と緊密かつ安定的な関係にありますが、今後両者の関係が悪化した場合や、万が一同医療法人において不慮の事故が発生すること等により受診患者数の減少、閉鎖等の事態に至った場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。
⑨再生医療等製品事業に係るリスク
当社は、計画的に再生医療等製品の開発を進め、最終的には再生医療等製品の製造販売承認を取得することにより、再生医療等製品事業を細胞加工業に続く新たな収益の柱とすることを目指してまいります。再生医療等製品開発においては、計画の進捗管理のためにマイルストーンを設け、マイルストーンごとに検証を加えながら慎重に再生医療等製品開発を進めてまいりますが、再生医療等製品の臨床試験において必ずしも当社の期待したとおりの結果が得られるとは限らず、結果として再生医療等製品の製造販売承認が得られなかった場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。
⑩マイナスの利益剰余金
当社は、多額の研究開発費用が先行して計上されること等により、2011年9月期より10期連続して当期純損失を計上しており、当事業年度末では利益剰余金の欠損額7,352,457千円を計上するに至っております。来期以降もこれまで事業の中核をなしていた契約医療機関向けの特定細胞加工物の製造に加えて、企業等に向けた細胞加工業への展開等、新たなビジネス領域を拡大することで、早期の黒字化を目指してまいります。さらに、再生医療等製品の開発を加速させ、製造販売承認を取得することで、収益化することにより、利益剰余金の欠損額の解消を目指してまいります。しかしながら、当社の売上高が計画通りに確保できず、今後も当期純利益を獲得出来ない場合、利益剰余金のマイナスが長期に渡って継続する可能性があります。
⑪資金調達に関する事項
当社は、当事業年度において第16回及び第17回新株予約権の発行による資金調達を実施したこともあり、当事業年度末の手元資金(現金及び預金)残高は3,643,814千円となり財政基盤は安定しております。しかしながら当事業年度においては営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスであり、今後の当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況、また金融市場の状況等によっては、資金調達が困難になる可能性があります。その場合には、再生医療等製品の開発や細胞培養加工施設等への設備投資等が計画通りに進められず、当社の事業の推進に影響が及ぶ可能性があります。
⑫継続企業の前提に関する重要事象等
当社は、がん免疫療法市場の環境変化に伴う細胞加工業の売上急減に加え、再生医療等製品事業分野における自社製品の開発進捗に伴う支出が累増しているため、継続的に営業損失及びマイナスの営業キャッシュ・フローが発生しており、継続企業の前提に疑義を生じさせるリスクが存在しております。
しかしながら、当社は、2018年4月に開始した事業構造改革を着実に実行することで、細胞加工業セグメントにおいては、細胞加工施設の統廃合、希望退職募集の実施等を通じて製造体制の適正化を図り、同セグメントのセグメント利益の早期黒字化を目指しております。また、再生医療等製品事業セグメントにおいては、早期の製造販売承認の取得に向けて有望でかつ可能性の高いシーズを優先して開発を進めるとともに、再生医療等製品の開発費等については資金状況を勘案の上、機動的に資金調達を実施してまいります。現状では、構造改革の着実な実行を通じた資金の確保、さらに2019年6月の第14回及び第15回、2020年7月の第16回並びに2020年9月の第17回新株予約権の発行による再生医療等製品開発費の資金調達等により、安定的なキャッシュポジションを維持しており、当面の資金繰りに懸念はないものと判断しております。これらに加えて、当社における当事業年度末の資金残高の状況を総合的に検討した結果、事業活動の継続性に疑念はなく、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないものと判断しております。
なお、当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応等に努める方針でありますが、投資判断は、以下の記載事項及び本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があります。以下の記載は、当社に関連するリスクを全て網羅するものではないことにご留意ください。
なお、文中の将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。
①価格に係るリスク
免疫細胞治療は先進的な医療技術であるため、一般的な治療として行われている外科療法、放射線療法、化学療法(抗がん剤治療等)等のように、現時点では保険診療の対象とはなっておらず、当社契約医療機関における免疫細胞治療1クールの治療費総額は、医師が適切と判断する治療の種類等にもよりますが、およそ160万円であります。当社は、特定細胞加工物の製造の対価として細胞加工の種類と回数に基づく変動課金制による加工料を頂いておりますが、その金額は当該契約医療機関の患者が負担する治療費に制約されます。また、免疫細胞治療は先端医療であるがゆえに、医師の治療方法に対する考え方に相違があること、関連技術が急速な進歩過程にあること等の理由により、標準的な価格水準が定まっていません。今後、免疫細胞治療の治療費水準の変化等に伴い、加工料の見直しがなされた場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。また、2014年11月に「再生医療等安全性確保法」が施行され、免疫細胞治療は医療機関により適切に提供されることになりましたが、今後、本法令を遵守した運用の中で新たな対応策が求められる可能性も考えられることから、特定細胞加工物の製造の対価そのものの形態が変更される可能性があります。
企業が細胞加工を受託する「細胞加工業」というビジネスモデル構築の過程において、どのような価格体系が形成されるかは今後の動向次第であり、そのため免疫細胞治療に係る価格については未だ不確定要素があります。
今後、再生・細胞医療分野の産業化に向けた環境が整備され、多くの新規企業による市場参入及び競争激化に伴い、特定細胞加工物の製造の対価及び新たなビジネスの価格競争が生じた場合には、当社業績に影響を与える可能性があります。
②競合及び競合他社に係るリスク
(1)再生・細胞医療に係る分野への企業参入状況
「再生医療関連法」の施行は、これまで明確な法的枠組みが整わなかったために再生・細胞医療市場への参入を控えていた製薬企業等が参入する機会となり得ます。現在、複数の企業が、当社のビジネスと類似したモデルで免疫細胞治療を含む再生・細胞医療に係る分野に参入してきております。こうした動きは、新たな技術革新の進展を促し、市場が拡大していく反面、玉石混淆の状況を作り出す可能性もあり、結果として患者のデメリットになることも考えられます。他企業がトラブルを起こした場合、業界全体のイメージ低下等により、当社も間接的に悪影響を受け、当社の業績に影響を与える可能性があります。
(2)バイオテクノロジーの進歩に伴う競合
当社の属するバイオテクノロジー業界は急速に変化・拡大しておりますが、特にがん治療分野では新しい治療薬の研究開発が進んでおります。大手製薬企業が、がんをターゲットとして開発を進める免疫チェックポイント阻害薬(がんの免疫逃避機構を阻止する薬)、分子標的薬(病気に関係がある細胞だけに働きかける機能を持った新しいタイプの治療薬)、血管新生阻害剤(がん細胞に栄養や酸素を供給する血管の新生を抑える薬)等は免疫細胞治療との併用効果が期待されておりますが、仮に免疫細胞治療との併用とは関連なく、治療効果の高い医薬品が開発された場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。
また、当社においては、積極的な研究開発投資により、常に最先端の技術への対応、業界に先駆けた新技術の開発等に注力しておりますが、当該技術革新への対応が遅れた場合、あるいは、現在の主力事業の対象となっている免疫細胞治療に代わる画期的な治療法が開発された場合等には、当社の業績に影響を与える可能性があります。
③品質管理体制に係るリスク
当社は、2014年に施行された再生医療関連法の下、これまで培った経験・知見、再生・細胞医療分野の事業ノウハウを用いて効率的に適合させ、信頼ある細胞加工業を推進しております。現在、当社では以下のような品質管理体制を整備・運用しております。
(1)細胞培養加工施設
当社が細胞加工を行っている品川細胞培養加工施設は、「再生医療等安全性確保法」に適合する設備構造を有しており、2015年5月に特定細胞加工物製造事業者許可を取得し、医療機関、企業等からの細胞加工を受託できる体制が整っております。
(2)細胞加工技術者の育成・確保
「再生医療等安全性確保法」の施行により、企業が医療機関から治療用細胞の加工を受託することが可能となっております。十分な安全管理体制を確保できない医療機関や細胞培養加工施設を有しながらも効率的な運営ができない等の問題を抱える医療機関から治療用細胞の加工を受託することが可能となり、当社にとってこれまでの事業経験をアドバンテージとして、営業収益を拡大する機会となります。しかしながら、治療用細胞を適正かつ安全に加工するためには、十分な教育を受けた細胞加工技術者の確保・育成が必須です。当社ではこれまでの経験に裏付けされた治療用細胞の加工を適正かつ安全に行うための細胞加工技術者の育成システムを有しており、継続的に細胞加工技術者を育成・確保に努めております。
(3)原材料管理
細胞加工には常に安全な原材料を用いることが条件となるため、培地(細胞培養液)や試薬については、購入先との厳密な購買契約を締結し、培地や試薬の不良品の混入、劣化を未然に防ぐとともに、仕入、保存管理の徹底、検査体制の充実等、常に品質管理体制の強化を図っております。
当社は、今後とも常に品質管理体制の強化に努めてまいりますが、人材流出、培地や試薬の不良品の混入、劣化、細胞加工の過程における人為的な過失、地震や火災の災害等が発生した場合には、重大な事故に繋がる恐れもあり、当社の業績に影響を与える可能性があります。また、再生医療関連法が施行された下で運営されている細胞培養加工施設の前例がまだ少なく、新たに定められた法律であるため、関係官庁の動向や当社が想定し得ない事象が生じた場合には、その対応の為、当社の事業推進に影響を与える可能性があります。
④法的規制の影響
当社は、事業の遂行にあたって、関連法令を含めた法令を遵守しております。主には、次に挙げる再生医療関連法の法的規制の適用を受けています。
(1)「再生医療等安全性確保法」との関連
「再生医療等安全性確保法」は、再生医療等に用いられる再生医療等技術の安全性の確保及び生命倫理への配慮や医療機関が再生医療技術を用いた治療を行う場合に講じるべき措置、治療に用いる細胞組織の加工を医療機関以外が実施する場合の細胞加工物の製造の許可等の制度を定めた法律です。今後、治療に用いる細胞加工を行う場合には、細胞培養加工施設ごとに「特定細胞加工物製造業許可」を取得する必要があります(但し、医療機関が細胞加工を行う場合には届出のみ)。医療機関が再生医療を行おうとする場合には、再生医療等提供計画の作成、認定再生医療等委員会における審議、厚生労働省への計画書等の提出が義務付けられます。そのため、医療機関にとっては、こうした手続き等の負担が大きくなりますが、一方で、こうした適切な治療手続きを行っていない医療機関等は排除されていくことになります。
当社は、上記のような医療機関に対して法律対応を支援するとともに、特定細胞加工物製造事業者許可を取得した当社が保有する細胞培養加工施設で医療機関からの細胞加工を受託しております。しかしながら、新たに定められた法律であるため、関係官庁の動向や当社が想定し得ない事象が生じた場合には、その対応のためのコストが発生する可能性があり、そのため、当社の財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2)「医薬品医療機器等法」との関連
「医薬品医療機器等法」は、医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の品質、有効性及び安全性の確保のために必要な規制を行うとともに、指定薬物の規制に関する措置を講ずるほか、医療上特にその必要性が高い医薬品及び医療機器の研究開発の促進のために必要な措置、医薬品等の有効性及び安全性の確保のために必要な規制を行うことを目的とした法律です。本法律では、再生医療技術を用いた医療用の製品として、新たに再生医療等製品がカテゴリ化されており、当社が再生医療技術を用いた医療用の製品開発を行う場合には、当法律に従うことになります。
再生医療関連法には罰則が規定されており、「再生医療等安全性確保法」に関しては当社及び契約医療機関が、「医薬品医療機器等法」に関しては当社及び当社が技術導入・導出した企業等が、予期せず当該罰則規定に抵触した場合には、罰則金の支払いが生じること等から、当社の社会的な信用を失う可能性があります。
⑤研究開発に内在する不確実性
当社が事業展開する再生・細胞医療分野は、日進月歩に進化するがゆえに、継続的な研究開発活動は持続的成長にとって大変重要な役割を担っております。
当社では、研究開発を通して将来に渡る企業価値向上を図るべく、研究開発を戦略的に遂行していくための体制を構築し、積極的な活動を行っております。
これらに必要な研究開発費は、2018年9月期1,502,882千円(売上高に対する比率150.5%)、2019年9月期276,566千円(同比率26.1%)、2020年9月期249,996千円(同比率31.9%)となっており、将来に渡る企業価値向上を図るための先行投資と認識しております。
しかしながら、研究開発投資に見合うだけの事業化等による研究成果が得られなかった場合等には、当社の業績に影響を与える可能性があります。
⑥知的財産権に係るリスク
医療技術や細胞加工に密接に関わる重要な(周辺)技術については、積極的に知的財産権の出願を行い、当社の技術を適切に保護しております。
また、これら先端医療技術の中には、特許として知的財産権を獲得するよりも、ノウハウとして保有する方が事業戦略上優位であると考えられるものも少なからずあり、ノウハウについては、取引先あるいは共同研究先との秘密保持契約等で守ることにより、外部に流出しないよう厳しく管理しております。
しかしながら、以上のような対応している中においても、出願した案件が権利化できないという可能性もあり、また、権利化できた場合でも、実際にその権利を行使できない可能性や、第三者の権利に抵触している可能性もあります。
⑦政府の推進政策等の変化
現在、日本においては、再生医療関連法の施行等により、再生・細胞医療分野に関する規制制度環境が整備されております。また、それ以外にも再生・細胞医療、バイオテクノロジー及び先端医療に係る各種の推進政策が実施されており、これらの推進政策は、当社が事業を展開する細胞加工事業及び再生医療等製品事業等の分野に大きく関わっております。
政府の主な推進政策とその概要は以下のとおりであります。
(1)新たな成長戦略テーマとしての医療関連産業
日本経済の再生に向けた成長戦略の一環として2016年2月に閣議決定された「日本再興戦略-第4次産業革命に向けて-」の官民戦略プロジェクト10において、医療関連産業の活性化を行うための方策として、医薬品・医療機器開発・再生医療研究を加速させる規制・制度改革等が含まれる等、近年、成長産業としての医療分野の注目度が急速に高まってきております。上記戦略においては、医療などの社会保障関連分野が有望成長市場の一つに位置づけられ、「世界最先端の健康立国へ」として日本発の優れた医薬品・医療機器等の開発・事業化、グローバル市場の獲得・国際貢献を行うこと等が盛り込まれていることから、その政策動向如何により、当社の今後の事業展開に影響を与えるものと考えております。
(2)先進医療制度
日本における医療制度においては、保険診療と保険で認められていない診療(保険外診療)の併用は原則として禁止されております。しかし、将来的に保険導入を目指す先端的医療技術については、「先進医療」という制度によって保険診療との併用が認められています。これにより今後、「先進医療」として免疫細胞治療を実施する医療機関が増え、免疫細胞治療の認知、普及がさらに進むことが期待されます。しかしながら、今後、これら政府の政策の方向性に大きな変化が生じることとなった場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。
⑧特定の取引先への依存
2020年9月期の売上高783,035千円のうち、医療法人社団滉志会に対する売上は、604,904千円(売上高に占める割合77.3%)と、現時点では同医療法人に対する依存度が高い状態にあります。医療法人社団滉志会は、当社と緊密かつ安定的な関係にありますが、今後両者の関係が悪化した場合や、万が一同医療法人において不慮の事故が発生すること等により受診患者数の減少、閉鎖等の事態に至った場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。
⑨再生医療等製品事業に係るリスク
当社は、計画的に再生医療等製品の開発を進め、最終的には再生医療等製品の製造販売承認を取得することにより、再生医療等製品事業を細胞加工業に続く新たな収益の柱とすることを目指してまいります。再生医療等製品開発においては、計画の進捗管理のためにマイルストーンを設け、マイルストーンごとに検証を加えながら慎重に再生医療等製品開発を進めてまいりますが、再生医療等製品の臨床試験において必ずしも当社の期待したとおりの結果が得られるとは限らず、結果として再生医療等製品の製造販売承認が得られなかった場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。
⑩マイナスの利益剰余金
当社は、多額の研究開発費用が先行して計上されること等により、2011年9月期より10期連続して当期純損失を計上しており、当事業年度末では利益剰余金の欠損額7,352,457千円を計上するに至っております。来期以降もこれまで事業の中核をなしていた契約医療機関向けの特定細胞加工物の製造に加えて、企業等に向けた細胞加工業への展開等、新たなビジネス領域を拡大することで、早期の黒字化を目指してまいります。さらに、再生医療等製品の開発を加速させ、製造販売承認を取得することで、収益化することにより、利益剰余金の欠損額の解消を目指してまいります。しかしながら、当社の売上高が計画通りに確保できず、今後も当期純利益を獲得出来ない場合、利益剰余金のマイナスが長期に渡って継続する可能性があります。
⑪資金調達に関する事項
当社は、当事業年度において第16回及び第17回新株予約権の発行による資金調達を実施したこともあり、当事業年度末の手元資金(現金及び預金)残高は3,643,814千円となり財政基盤は安定しております。しかしながら当事業年度においては営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスであり、今後の当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況、また金融市場の状況等によっては、資金調達が困難になる可能性があります。その場合には、再生医療等製品の開発や細胞培養加工施設等への設備投資等が計画通りに進められず、当社の事業の推進に影響が及ぶ可能性があります。
⑫継続企業の前提に関する重要事象等
当社は、がん免疫療法市場の環境変化に伴う細胞加工業の売上急減に加え、再生医療等製品事業分野における自社製品の開発進捗に伴う支出が累増しているため、継続的に営業損失及びマイナスの営業キャッシュ・フローが発生しており、継続企業の前提に疑義を生じさせるリスクが存在しております。
しかしながら、当社は、2018年4月に開始した事業構造改革を着実に実行することで、細胞加工業セグメントにおいては、細胞加工施設の統廃合、希望退職募集の実施等を通じて製造体制の適正化を図り、同セグメントのセグメント利益の早期黒字化を目指しております。また、再生医療等製品事業セグメントにおいては、早期の製造販売承認の取得に向けて有望でかつ可能性の高いシーズを優先して開発を進めるとともに、再生医療等製品の開発費等については資金状況を勘案の上、機動的に資金調達を実施してまいります。現状では、構造改革の着実な実行を通じた資金の確保、さらに2019年6月の第14回及び第15回、2020年7月の第16回並びに2020年9月の第17回新株予約権の発行による再生医療等製品開発費の資金調達等により、安定的なキャッシュポジションを維持しており、当面の資金繰りに懸念はないものと判断しております。これらに加えて、当社における当事業年度末の資金残高の状況を総合的に検討した結果、事業活動の継続性に疑念はなく、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないものと判断しております。
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