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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100LTLP (EDINETへの外部リンク)

有価証券報告書抜粋 株式会社 熊谷組 研究開発活動 (2021年3月期)


事業等のリスクメニュー株式の総数等

当社グループの研究開発活動は、企業業績に対して即効性のある技術、商品の開発、各種技術提案に直結した技術の開発、中長期的市場の変化を先取りした将来技術の研究、開発技術の現業展開と技術部門の特性を生かした技術営業、総合的技術力向上のための各種施策からなっており、社会経済状況の変化に対し機動的に対応できる体制をとっている。
当連結会計年度は、研究開発費として2,660百万円投入した。
当連結会計年度における主な研究開発活動は次のとおりである。
(1) 土木事業
① 高速道路リニューアルプロジェクトの主力商品「コッター床版工法」
NEXCO各社が進める高速道路リニューアルプロジェクト(総事業費約3兆円)は、2015年度から2030年度までの16ヵ年の長期計画であるが、これまで5年余で事業費の執行済みは約14%に留まっており、今後は同プロジェクトを加速させるために、さらに積極的な工事発注が行われる見込みである。橋梁床版取替工事は、その50%強(事業費約1兆6,500億円)を占め、同プロジェクトの主要工事である。
当社は、この橋梁床版取替工事において、急速施工、省人化、取替性の改善など生産性の向上を目的に、コッター式継手を用いた橋梁用プレキャストPC床版(コッター床版)を株式会社ガイアート、オリエンタル白石株式会社及びジオスター株式会社と共同で開発した。本工法は、単純作業のため熟練工が不要で、床版の99%がプレキャスト化されるため、品質向上にも大きく寄与するものである。
当連結会計年度はNEXCO東日本発注の東北自動車道十和田管内高速道路リニューアル工事において、高速道路で初採用となる小坂川橋上り線約118m及び新遠部沢橋下り線約284mの2橋梁の施工を完了し、その有効性を実証した。今後は、現在の継手をさらに軽量・小型化した新製品を投入する。
② 小断面トンネル施工機械開発 ~KITプロジェクトⓇ~
「次世代トンネル施工システムの開発」の一環として、トンネル断面積が10㎡程度の小断面NATMトンネルの施工時における生産性向上と作業環境の改善並びに安全性の確保を目的とした施工機械群の開発KITプロジェクトⓇ(Kumagai Innovative Tunnel Project)を進めている。
当連結会計年度は土砂掘削・積込機械、土砂搬送トレンローダー、同専用鋼車が完成し、技術研究所内模擬トンネルで確認実験を行った。また、並行して掘削・積込機械の新聞発表、「KITプロジェクトⓇ」の商標登録も行った。現在は吹付機械が先日工場完成し、1ブーム式削孔機械と爆薬遠隔装填装置の製作が佳境に入っている。これらが完成してKITプロジェクトⓇの第一段階が完了する。
今後は、完成した機械群を現場に導入し、実稼働させデータの蓄積、機械の改良・改善、遠隔化・自動化など実用化に向けたプロジェクトの第二段階が開始される。また、逐次新聞発表も行ない社外アピールも進めていく予定である。
③ DX(デジタルトランスフォーメーション)の取組み
当社は、建設業就業者の高齢化が進行していく中で、どのようにして施工のノウハウや技術を伝承していくかを課題としていた。こうした課題に対し、多岐にわたる情報をデジタルデータとして収集・蓄積することから始め、デジタル技術を活用したWEBアプリケーションを構築した。
業務支援を行う「工事情報簡易参照システム」は竣工データ、工事中のデータを共有・参照できるシステムであり、「Knowledge Explorer」はAIを搭載した検索システムとなり膨大に蓄積させたデータから必要なデータを自動的に抽出することができる。施工支援を行う「トンネル切羽AI診断システム」は技術者の経験の有無にかかわらない客観的な評価ができ、若手技術者の判断支援を行い、「CV映像公開システム」は360度映像を用いて施工の効率化を図るアプリケーションである。

④ ローカル5Gを用いた無人化施工技術の高度化
自然災害現場での無人化施工は二次災害を防ぐために極めて有効な手段であり、施工の高度化を実現するためには、建機に取り付けられた4Kカメラの映像や、加速度センサーで取得された動きの情報を遠隔操作室へリアルタイムに伝送する必要がある。
この課題に対して、大容量かつ低遅延を可能とするローカル5G(第5世代移動通信)を活用した自然災害現場におけるネットワーク対応型無人化施工を想定した屋内実証実験を行った。実験は株式会社日本電気と共同で行い、遠隔操作が可能な仮想現場環境を用意し、4K映像をVRヘッドマウントディスプレイに表示すると同時に、操縦席が取り付けられたモーションベースで建設機械の傾きや振動などの動きを再現した。ローカル5Gを活用して高品質かつリアルタイムに大容量の情報を伝送することにより、傾斜地などで建設機械を運用する場合でも、実際の搭乗操作に近い感覚で遠隔操作が可能となる。
⑤ 切羽崩落監視システムの開発
切羽肌落ち災害は山岳トンネルの特有災害であり、2000年から10年間で肌落ちを起因とした災害の60%以上が休業4日以上の災害であり、その作業内容の70%以上が装薬・鋼製支保工建込み中に被災しており、切羽肌落ちは重篤災害につながりやすい。当社は、肌落ちの予兆を捉えるため、WEBカメラを用いた画像処理で礫塊(5~10cm程度)の落石を検出する「切羽崩落監視システム」を開発した。
本システムは、ドリルジャンボ等の機体に設置したカメラ画像(30fps)のフレーム間差分画像を連続的に検出処理することにより落石を認識する。さらに、機体や作業員の動きを起因とした誤検出を防止するため、マスキング処理で機体等の人工物を対象から除外する機能と照明条件変化や風等による揺らぎを起因とした微小変化(ノイズ)を除去する機能を付加している。実機実験では誤検出が激減し、90%近い落石検出率を確保しており、切羽崩落の予兆監視に効果的である結果を得ている。今後も稼働現場で実証実験を継続して行い、検出率をさらに向上させて実用化を目指す。
⑥ 斜面対策工に特化したのり面CIMの実施
現在、建設生産システムの業務効率化や高度化を目指してCIM(Construction Information Modeling/ Management)の導入が活発化している。その中で、斜面対策工事においては、トンネル工事、ダム工事、道路工事や橋梁工事等と比較すると、CIMの導入事例が少ない傾向がみられる。このような状況から、斜面対策工に特化した「のり面CIM」を開発した。本システムは、グラウンドアンカーや鉄筋挿入工などの斜面対策工の施工データを集約・三次元モデル化(可視化)し、一元管理した情報を次ブロックの施工へフィードバックすることにより、施工の効率化を図るシステムである。本システムは、斜面安定計算ソフトウェアと連係できることから、地質状況が想定と異なることが判明した場合には、早急に適切な再検討を行うことが可能となっている。斜面対策工は、激甚化する自然災害に対する備えとして重要な位置づけを担っており、今後は、施工時だけでなく、調査・設計時から維持・管理までを見据えた運用を目指す。

(2) 建築事業
① 「熊谷組鉄骨梁横座屈補剛工法」の開発 ―床スラブによる上フランジ拘束効果を考慮した横補剛―
床スラブ付き鉄骨梁を対象に、床スラブによるH形鋼梁上フランジの水平変位及び回転拘束効果を利用して鉄骨梁の横座屈補剛を行う工法「熊谷組鉄骨梁横座屈補剛工法」を開発した。本工法は、2020年3月に日本ERI株式会社の構造性能評価を取得しており、既に2件の新築工事に適用されている。
鋼構造建築物に使用されるH形断面梁は、大きな荷重が作用した際に水平方向(横方向)にはらみ出す横座屈現象が懸念されるため、横座屈補剛材を小梁や方杖として設置すること(保有耐力横補剛)が建築基準法で規定されている。一方で、大梁の上フランジは、床スラブなどにより連続的もしくは断続的な拘束を受けていることが多く、横座屈抑制効果として期待できることは広く知られている。これらのことから、床スラブの横座屈補剛効果を利用した設計及び施工の合理化工法の開発に至った。
本工法では、頭付きスタッド等のシアコネクタを用いて鉄骨梁と床スラブを一体化することにより、床スラブによる鉄骨梁上フランジの水平変位及び回転への拘束効果を考慮した横座屈補剛の設計を行う。これにより、鉄骨梁は横座屈せずに全塑性モーメントに達するとともに、塑性化後の早期耐力劣化を防ぐことができる。本工法により設計された鉄骨梁は、梁端部が全塑性モーメントに達するまで横座屈が生じないものとし、かつ、保有耐力横補剛を満たした梁部材として扱うことができ、H形鋼の大梁であれば、高炉材、電炉材によらず、適用することが可能な工法となっている。
今後もより合理的な設計、施工を目指し、物流施設、商業施設、オフィスなどの建物に加え、宿泊施設、生産施設などを含めた様々な鉄骨造の建物への適用を積極的に行っていく予定である。

② 「異種強度を打ち分けた鉄筋コンクリート梁工法の設計法及び施工方法」の構造性能評価を取得
「異種強度を打ち分けた鉄筋コンクリート梁工法の設計法及び施工方法」を開発した。本工法は、断面の上部と下部で強度が異なるコンクリートを使用する梁の設計及び施工に関するものであり、現場打ちまたはハーフプレキャスト部材において、梁上部とスラブのコンクリートを同じ強度で打設することができる。また、異なる強度のコンクリートが同一梁断面内に存するため、「等価平均強度」(注)を用いて、許容応力度設計と終局強度設計を行う。今回この「等価平均強度」に基づき算定された梁のせん断終局強度に対し、既往実験データの安全率がより高いことが確認されたため、設計指針の取り纏めに至った。
本工法を採用することにより、梁の上部とスラブを同じコンクリート強度で一度に打設することが可能となるため、施工手順を省くことができ、「施工の合理化と生産性の向上」が期待できる。
本開発は、株式会社淺沼組、株式会社奥村組、五洋建設株式会社、鉄建建設株式会社及び矢作建設工業株式会社との共同開発で実施し、日本ERI株式会社の構造性能評価を取得した。
今後は、各社において設計施工物件を主としたRC建物に適用し、施工の合理化、生産性の向上を推進していく予定である。
(注)スラブが存することによる効果と異種強度コンクリートが混在する影響を同時に考慮した強度算出方法。
③ 「断熱耐火λ-WOODⓇ(柱)」の1~3時間耐火の大臣認定取得
中大規模の木造建築への導入を念頭に、当社が開発した木質耐火部材「断熱耐火λ-WOOD(ラムダ-ウッド)」シリーズとして、柱の1~3時間における耐火構造の国土交通大臣認定を取得した。同シリーズは、これまでにCLT(直交集成板)壁とCLT床の1時間と2時間の耐火構造で国土交通大臣認定を取得している。
今回大臣認定を取得した、1~3時間の集成材柱の特徴として、荷重支持部(柱)の周囲に設置する「燃え止まり層(注)」に、普通硬質せっこうボードと断熱耐火パネルを積層することにより、その部分の厚さを薄くした。このことは、木質感を演出しつつ居室内の有効利用面積を大きく取れる利点がある。さらに表面仕上げ材を自由に選択することが可能となったため、お客様及び設計者のニーズに対応することができる。また、今般実施工として、「断熱耐火λ-WOOD(柱)」を現在施工中の当社福井本店の建替工事に採用している。
当社では、今後さらに需要が高まると予測される中大規模の木造建築の実現に向けて技術開発を進めている。中大規模の建築物に木造を適用するための課題として、建築基準法に規定される防・耐火性能があり、建物の規模によりそれぞれの使用箇所に応じた耐火性能を有する部材を使う必要がある。これを踏まえて、すべての建築物において木質部材が使用できるように、「断熱耐火λ-WOOD」シリーズとして木質耐火部材の開発と大臣認定の取得を目指している。今回の柱における1~3時間までの耐火構造大臣認定を取得したことにより、「断熱耐火λ-WOOD」の柱については、耐火要件上の階数による制限がなくなり、高層建築物にも使用することができるようになった。
今後、優れた中大規模の木造建築を実現するために、様々な技術を組合せることにより、さらなる性能の向上やコストダウンに向けた技術開発を進めていく。
(注)燃え止まり層とは、荷重支持部材(集成材柱)の外側にある燃焼を停止させる層である。
④ CELBIC(環境配慮型BFコンクリート)ゼネコン13社で建設材料技術性能証明を取得
当社とゼネコン12社(注1)で構成されている「CELBIC研究会」は、生コン工場において、予め建築物の部位・部材や所定の性能に合わせて、普通ポルトランドセメントの10~70%を高炉スラグ微粉末と置換したコンクリート「CELBIC-環境配慮型BFコンクリート-」を開発し、一般財団法人日本建築総合試験所より2021年2月22日付けで、建設材料技術性能証明(GBRC 材料証明 第20-04号)を取得した(注2)。
CELBIC(注3)は、循環型社会形成と地球環境問題改善への寄与を目的とし、コンクリート建築物の所要品質を確保しつつ、コンクリート材料に由来する二酸化炭素の排出量の約9~63%を削減する環境配慮型コンクリートである。また、JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)に適合するコンクリートとして製造・出荷が可能であり、CELBIC研究会13社において責任施工する。
CELBICに使用される高炉スラグ微粉末は、製鉄所の高炉における製銑において副生されるスラグを微粉砕したものである。水硬性を有しており、製造時に排出される二酸化炭素はポルトランドセメントの1/20以下であることから環境負荷低減のために有効利用が望まれていたもので、JIS A 5308においては、セメントに置き換えて使用されるコンクリート混和材料の一つである。
今後は、建築物やそれ以外の鉄筋コンクリート構造物に対しても、環境配慮性を有したCELBICを適材適所へ有効活用し、普及展開を目指していく。
(注)1 株式会社熊谷組、株式会社長谷工コーポレーション(幹事)、青木あすなろ建設株式会社、株式会社淺沼組、株式会社安藤ハザマ、株式会社奥村組、株式会社鴻池組、五洋建設株式会社、株式会社錢高組、鉄建建設株式会社、東急建設株式会社、東洋建設株式会社、矢作建設工業株式会社
2 一般財団法人日本建築総合試験所より2020年10月5日付けで、建設材料技術性能証明(GBRC 材料証明 第20-02号)を取得し、その後データの一部を更新したため、2021年2月22日付けで、建設材料技術性能証明(GBRC 材料証明 第20-04号)を再取得した。
3 CELBIC(セルビック):Consideration for Environmental Load using Blast furnace slag In Concrete
⑤ 「KMLAセンサー」の開発
鋼製の部材に設置することで、部材に閾値以上のひずみが生じた時に光のアラームを発して危険を可視化する「KMLA(Kumagai Magnet Light Alarm)センサー」を開発した。
地盤の開削工事などで土留支保工に変状が発生した場合、仮設・本設構造物に影響を及ぼすだけでなく、作業中の人命に関わる危険性がある。特に土留支保工の変状が予測される場合は、部材に軸力計やひずみゲージなどを設置し、計測管理を行いながら施工するが、一般的には専門的な知識がある者が行うため、作業中の者へ変状の情報をリアルタイムに伝えることは容易ではない。
本センサーは、土留支保工などの鋼材に磁石によって手軽に設置することができ、取り外しも容易であるため、設置に専門的な技能を必要としない。また、工事の進捗に合わせて、より大きな負荷が想定される部材にセンサーを設置しなおすことも容易である。部材に変状が発生したとき、周囲に危険を知らせて避難を促す機能を有する本センサーの導入は、現場の安全性の向上に寄与するものである。
閾値は0μから900μの間において100μ刻みで設定でき、設定された閾値以上のひずみを感知した際にセンサー中央の警報LEDが点灯する仕組みとなっている。また、オプションでアラーム機能も追加することができる。
本センサーは既に商品化されているが、IoT化して計測工にも利用できるように改良を進めている。
⑥ 共同住宅における重量床衝撃音の予測検討に関する手引書「インピーダンス法による重量床衝撃音レベル予測計算法(改訂3版)」を発刊
当社は、信州大学山下恭弘名誉教授監修のもと、泰成株式会社、フジモリ産業株式会社、野原産業株式会社、万協株式会社、有限会社音研と共同で研究した成果を、床衝撃音研究会として実務的な床衝撃音レベルの予測法に関する手引書である「インピーダンス法による重量床衝撃音レベル予測計算法(改訂3版)」を発刊した。
インピーダンス法は、床衝撃音遮断性能の予測計算法の一つであり、一般的な表計算ソフトを利用して計算ができることから、実務に広く利用されている。これまで、大脇(株式会社熊谷組)と山下名誉教授らによって1998年に提案されたインピーダンス法に基づき作成した解説書「インピーダンス法による床衝撃音レベル予測計算法の解説」を2006年2月に刊行し、併せて、表計算ソフトで簡単に床衝撃音レベルを予測計算できる「予測計算シート」を公開した。その後、2012年10月に、改訂版(大脇・山下式2012)の刊行及び予測計算シートの公開を行っているが、今般8年の経過をうけて、その後の知見を加えた全面的な見直しを行い、改訂3版として本解説書(大脇・山下式2021)を発刊した。また、この解説書に対応した予測計算シートは、床衝撃音研究会を組織する各社のウェブサイトから入手できる。
本書は、重量床衝撃音レベルの予測精度をさらに向上させ、多様な共同住宅の予測計算に幅広く対応しているほか、専門的な内容や細かな疑問点については、コラムを設けて丁寧に説明している。
今後も、共同住宅の重量床衝撃音レベルの予測検討を行う重要なツールとして位置付け、デベロッパーや設計事務所などに対して積極的に提案していく予定である。
⑦ 立ち上がり補助機能付き歩行車「フローラ・テンダー」のニューモデル発表
かねてから開発していた、立ち上がり補助機能付き歩行車「フローラ・テンダー」の販売を2020年11月よりグループ会社の株式会社ファテックを通じて開始した。「フローラ・テンダー」は、電動による立ち上がり補助機能のある歩行車である。使用者は専用のスリング・ベルトを着け、歩行車に連結することにより、電動で楽に立ち上がれ、歩行時は転倒の心配もない。立ち上がりや座り込み時の操作は、介助者がリモコンを操作することで、周囲の確認と使用者のサポートなどが可能となるため、安全に使用することができる。しかも、立ち上がり動作が電動で補助できるため、介護者の負担軽減も期待できる。また、車イスと同等のサイズで開発されているため、車イスが使える環境であれば、使用場所の改修は必要ない。
「フローラ・テンダー」は、立ち上がり補助と歩行補助という2つの機能を持ち、かつ、立ち上がりの補助を電動で行う製品として国内で初めて介護保険の適用対象になった。そのため、介護認定を受けた方は、1~3割の自己負担でのレンタルまたは購入が可能である。さらに、複数のJIS規格(注1)とリスクアセスメントに基づき、福祉用具として一般財団法人電気安全環境研究所(JET)のロボット安全認証(注2)を国内で初めて取得した。
今後は、福祉用具の開発・販売を進めるとともに、当社グループの新たな事業分野として福祉介護市場を開拓していくとともに、SDGsの17の目標の一つである「すべての人に健康と福祉を」の実現に取り組んでいく予定である。
(注)1 JIS T 9265 : 2019「福祉用具-歩行補助具-歩行車」とJIS T 9241-6 : 2015「移動・移乗支援用リフト-第6部:立ち上がり用リフト」及びその関連規程
2 認証書番号 RT002-001、認証登録日 2020年11月10日

(3) 子会社
株式会社ガイアート
① FFP(フルファンクションペーブ:多機能型排水性舗装)のCAE路盤(セメント・アスファルト乳剤安定処理路盤)上への直接施工の可能性の確認
FFPは、混合物一層で排水機能と防水機能を持つ縦溝粗面型ハイブリッド舗装である。従来は、防水機能に対する懸念から、強度が低く不陸も多い路盤上への直接施工は実施せず、舗装版上への施工を行ってきた。しかし、コスト削減及び省資源化に向け、路盤上への直接施工のニーズが増えてきており、これにFFPが対応することが望まれていた。今回、同社の子会社が運営する白糸ハイランドウェイにおいて、CAE路盤上へのFFP直接施工の試験施工を実施した結果、既設舗装版上への施工と同等の路面性状と防水性が得られることが確認された。
② G・Asシート(クラック抑制シート)の開発
既設舗装におけるクラックやコンクリート舗装の目地に起因するリフレクションクラックを抑制するため、従来からガラス繊維等を基材とするクラック抑制シートが使用されてきた。このクラック抑制シートは、基材の引張強度がリフレクションクラックの動きを抑制して効果を得るものであったが、その基材が要因となり、当該クラック抑制シートを使用した舗装が再利用できないケースが多かった。リサイクル性を向上させるため、クラック抑制工法として実績があるじょく層工法(応力の伝達を緩和する層)を応用し、再利用を阻害する基材を用いず、アスファルトシートを利用した新たなクラック抑制シートを開発した。
テクノス株式会社
① 建方精度管理システム「建方キングE」の開発
本システムは、計測結果を計測者、建方調整者、工事管理者の全てが同時共有できることを可能にしたDX技術導入システム「建方キング」の発展版である。カメラ付自動追尾計測機器を用い画像認識技術を導入することで、計測機器側での測量管理担当者の常駐を不要とするリモート計測機能を実現した。計測機器近傍に設置したシステムPCを使用することにより、建方作業者や施工管理担当者自身による計測が実現し、工事事務所に居ながら監理技術者は修正・確定の判断をし、建方作業者に指示を出すことも可能としている。本システムを採用することにより、従来の建方作業(測量管理担当者2名・計測機器2台使用)との比較において、40%の工程短縮、50%のコスト低減が可能となった。
② 橋梁床版取替工事における床版と桁の切離し・結合の急速化技術の開発
高速道路等の橋梁は、構築後50年以上経過したものが多く、老朽化した床版の取替工事は、交通規制等の社会的影響を少なくするため急速施工が求められている。工場製作のPC床版による急速取替工法は、コッター式床版等いくつかの工法が開発されているが、既存床版の急速解体工法は開発がほとんど進んでいない。この点に着目し開発した「切り方じょうず」は、交通規制前に、床版下部の水平切断と、切断した床版と桁との再結合を同時に行うことを目指した工法である。実際の道路床版と桁を再現した橋梁床版モデルによる実証実験を実施し、安全に高精度で切断が可能であることを実証済みである。桁に残置されるコンクリートも極めて少量で、撤去工事での課題であった残コンクリート撤去作業の省力化も確認できた。今後は、切り離された床版再結合化の安全性評価を行い、現場での試験施工をとおし、交通規制時間の大幅短縮を目指した橋梁床版解体工法として確立させていく予定である。

事業等のリスク株式の総数等


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