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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100IX64 (EDINETへの外部リンク)

有価証券報告書抜粋 五洋建設株式会社 研究開発活動 (2020年3月期)


事業等のリスクメニュー株式の総数等


当連結会計年度は、生産性向上とICT技術の積極的導入を技術開発方針として、ブランド技術の開発や技術提案力の向上に資する技術開発を推進した。
なお、当連結会計年度における研究開発費は、24億円であった。
また、当連結会計年度における主要な研究開発内容および成果は次のとおりである。

(国内土木事業、国内建築事業及び海外建設事業)
1.土木分野

(1)CIMへの取組み

国土交通省はCIM(Construction Information Modeling/ Management)導入ガイドライン制定(2017年3月)に続き、その港湾版を2019年3月に公開するなど、CIM導入の取り組みを加速させている。当社はこれらの動きを先取りし、2016年度より桟橋工事に港湾分野としては初の全面的なCIMを導入して効果の検証を行うなど、積極的にCIMに取り組んできた。
当連結会計年度も適用工種や用途を拡大し、約100件のCIM案件に取り組んだ。これらの取り組みを通して、BIM/CIMに関する国内・国際部門の連携が進み、計画・設計段階や施工段階での効果的な活用方法を見出すことができた。当社はこれからも生産性向上や現場職員の負担軽減に寄与できるよう積極的にCIMの活用・導入に取り組む予定である。

(2)ICT技術のトンネル工事への導入
当社は、東北の復興支援道路「国道106号与部沢トンネル工事」において、国土交通省の官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)を活用した「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」に前連結会計年度及び当連結会計年度の2回にわたり採択され、生産性向上に資するICT技術を工事現場に導入した。
当現場では、MRやVR※を応用し遠隔地から現場の状況を3次元映像等で体感する技術や、AIにより岩種を判定し書類作成を効率化する技術、BIM/CIM対応クラウドにより発注者へ遠隔自動説明を行う技術、自律飛行型ドローンとAIによりコンクリート点検を省力化する技術などを導入することによって、受発注者双方の生産性向上に寄与することができた。引き続き当社は、これらの取り組みで得られた知見を活かし、トンネル以外の工種にもICT技術の適用を拡大し、省人化や生産性向上に取り組んでいく。
※MR:Mixed Realityの略で「複合現実」といい、仮想世界と現実世界を融合させる技術
VR:Virtual Realityの略で「仮想現実」といい、人工的に作られた仮想世界を現実かのように体感させる技術

(3)人工知能(AI)を活用した埋立管理システム

海域の埋立によって土地を造成する場合、砂質土が一般に用いられているが、その確保が困難となりつつある。社会の持続的発展の観点からは、航路や泊池の浚渫等で発生する粘性土を有効利用することが今後ますます重要になっている。しかしながら、粘性土を使用する際には、地盤のすべりや支持力破壊に対する安定性の確保、将来沈下量を踏まえた埋立高さの嵩上げや地盤改良方法の検討が必要であり、埋立の土層構成や土質性状を事前に把握することが重要である。
当社は、土運船に積載された粘性土の土源情報、湿潤密度、写真等の情報に基づき、強度定数や圧密定数を推定する人工知能技術を構築するとともに、土運船から投入された粘性土の堆積形状(土層構成)の解析技術と圧密沈下の3次元解析技術を統合した新しい埋立管理システムを構築し、海上工事の現場に適用した。


(4)ARを活用した安全可視化システムの開発と現場適用

当社はこれまで、電気、ガス、水道などが3次元的に複雑に埋設された環境下で地下構造物を構築する工事にAR※を導入してきた。現場地表面映像に埋設管・地下構造物躯体の3Dモデルを重ねて表示させることで、工事関係者間での不可視領域のイメージ共有が容易となり、より高度な施工検討を事前に行うことが可能となった。
当連結会計年度は、あらゆる現場で活用できる汎用的な「AR安全可視化システム」を開発した。港湾工事において、作業船の航行時に予定針路や進入禁止エリア、周辺の船舶情報を現場海面映像に重ねて表示させることで、夜間や濃霧時などの目視確認が困難な条件においても状況把握が容易となり、船舶航行時の安全性を向上させることができた。また、港湾防波堤工事や河川内の橋梁下部工事にも本技術を適用し、クレーンオペレータからは見えない水面下の状況をARで可視化することで、より安全に施工することができた。
※AR:Augmented Realityの略で「拡張現実」といい、現実世界に仮想世界を反映(拡張)させる技術

(5)桟橋上部工の汎用プレキャスト技術の開発

桟橋工事では海上作業を最小限に抑えるプレキャスト施工が生産性向上の有効な手段として期待されている。これまで、桟橋上部工のプレキャスト床版は実用化されているものの、より海水面に近い梁部材においては、鋼管杭との有効な接合技術が確立されておらず、プレキャスト化が進んでいなかった。当社は、国立大学法人東京工業大学および国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所との共同研究により、桟橋上部工の杭頭接合構造技術を開発した。本技術は、国土交通省東北地方整備局発注工事に採用され、上部工の梁工事に関して従来の現場打ちコンクリート施工に対して約30%の工期短縮を達成した。
桟橋上部工のプレキャスト化にあたっては、杭頭部の剛結接合条件が技術的課題となるが、現場溶接が不要で施工性の優れた鞘管方式を提案した。性能確認実験・構造解析に基づき本構造に関する設計手法を確立した。本構造は、新設・更新工事の区別なく、梁形式やスラブ形式などの多様な構造形式にも対応可能であり、調達できる起重機船の吊能力や作業ヤードの広さに応じてプレキャスト材の大きさを自由に割り付けできるため、汎用的なプレキャスト技術として活用が期待できる。
(表彰)日本港湾協会論文賞:2019年5月

(6)海外大型プロジェクトへの国内技術導入

海外のプロジェクトでは、国内で経験のない施工条件や課題が課せられる場合が多い。バングラデシュのマタバリプロジェクトの建設場所は波浪条件の厳しい外洋に面しており、潮流が速く海域は著しく濁っている。このような環境下にあるため、現地に波高・流速計、濁度計などを設置して時系列データを取得するとともに、定期的な深浅測量や採水調査などを実施し、海底地形変化に関する総合的なモニタリング調査を行った。これらの物理データを基に開発した航路埋没予測解析モデルをブラッシュアップし、埋め戻り土砂量を考慮した浚渫計画に反映した。
また、マダガスカルのトアマシナ港拡張事業、インドネシアのパティンバン新港事業などの大型プロジェクトに対して、国内で活用実績が豊富な気海象予測システムや稼働率算定システム、数値波動水路CADMAS-SURF等の数値解析技術を適用し、構造物の設計や施工順序などの施工計画に反映した。

(7)桟橋の調査診断システムの開発

港湾施設の目視調査は、専門知識を有するものが小型船に乗り、船上から構造物を観察して劣化状況を把握するが、専門家の確保が困難であること、特に桟橋下面は狭い空間で上向きの調査となるため労力・時間を要することが問題となっていた。そこで『i-Boat(旧称:無線LANボート)』を航行させ、搭載したカメラにより桟橋下面の劣化状況を撮影し、得られた画像から構造物の劣化度を診断できるシステムを開発し、これまで複数の桟橋調査に適用してきた。
これまで専門家が手動でひび割れや剥落部の抽出を行っていたが、当連結会計年度はこれらの検知を自動化するAI技術を構築した。また、桟橋管理者自らの施設管理計画を支援するため、過去に取得した3D画像や劣化診断結果から劣化の進行状況等を容易に閲覧できる維持管理システムを構築した。


(8)新船種作業船の開発・建造

我が国における洋上風力発電プロジェクトは、港湾区域に引き続き、一般海域においても洋上風力発電の開発を促進する法律が整備され、全国各地で取り組みが本格化している。これらの動向を見据え、前連結会計年度に建造した800t吊SEP型多目的起重機船「CP-8001」に続き、当連結会計年度は洋上風車およびその基礎構造の大型化に対応するため,10~12MWクラスの風車を複数基運搬・設置可能な1,600t吊SEP型多目的起重機船の建造を開始した。
また、SEP型多目的起重機船のレグを効率的かつ安全に海底に設置できるよう,設置状況を計測しながら、リアルタイムで可視化する「リアルタイムLEG着底監視システム」をフランスのiXblue S.A.Sと共同で開発し、「CP-8001」に導入した。建造中の2隻目のSEP型多目的起重機船にも同システムの導入を予定している。
当社は、保有する800t吊SEP型多目的起重機船「CP-8001」と自航式多目的起重機船「CP-5001」に加え、新たな1,600t吊SEP型多目的起重機船を多種多様な工事に積極的に投入していく予定である。

2.建築分野

(1)設計、施工へのBIM活用

当社は、建築分野での品質および生産性の向上を目指し、計画・設計段階や施工段階でのBIM(Building Information Modeling/ Management)活用に取り組んでいる。
当連結会計年度は、RC造事務所ビルの設計施工案件に対し、基本計画から実施設計までの各段階においてBIMを適用した。まず、基本設計段階で意匠設計と構造設計の3次元モデルを統合して納まりを調整し、その後、実施設計段階で建築(意匠・構造)と設備(電気・機械)の統合・調整をおこなった。これにより、意匠・構造・設備間で整合性が取れた3次元モデルから任意の2次元設計図を作成することが可能となり、品質の向上につなげることができた。今後はこの3次元モデルを施工に引き継ぎ、施工図の作成等に活用する予定である。また、施工支援として25件の工事に対し、施工段階での納まり調整等にBIMを導入・活用した。今後も設計施工案件や施工案件でBIM活用を進め、さらなる品質と生産性の向上を目指していく。

(2)ICTを用いた施工管理システムの開発と導入
当社は、「武蔵小山駅前通り地区第一種市街地再開発事業施設建築物新築工事」において、BIMモデルを活用して建築工事を統括管理する「五洋建設統合施工管理システム」(PiCOMS(ピーコムス):Penta-ocean integrated COnstruction Management System)を開発し、生産性向上に資するICT技術として導入した。
当現場はプレキャスト部材を用いた超高層建物新築工事であり、プレキャスト部材の製造・取付の情報(予定日時や完了日時など)を、製作工場を含めた工事関係者間でリアルタイムに共有することで、工事の進捗状況の「見える化」が可能となり、施工管理業務の生産性向上を達成した。今後は本システムをプレキャスト工事だけでなく他工種へも展開し、さらなる生産性向上に向けて現場導入を加速させる予定である。

(3) 異種強度を打ち分けた鉄筋コンクリート造梁工法の開発

ハーフプレキャストの梁は、梁上部と梁下部に同一の高強度コンクリートを使用し、スラブの低強度コンクリートと打ち分ける工法が一般的に用いられている。ただし、梁とスラブの境界が強度の異なるコンクリートの打ち継ぎ面となり、施工性の課題やひび割れ発生が懸念されるなどの品質の問題を抱えていた。
そこで、高強度コンクリートで打設された梁下部の上に、梁上部とスラブを低強度コンクリートで一体的に打設する造梁工法(DicosBeam工法:Difference concrete strength Beam Method)を開発した。本工法の採用によって、施工の合理化が図られ、打ち継ぎ面のひび割れ発生リスクの低減が可能となる。梁断面内で強度が異なるコンクリートを使用するため、構造実験および構造解析に基づき、梁の耐力にスラブを考慮した等価平均強度を採用して設計することを定義し、設計法および施工法について構造性能評価を取得した。
(構造性能評価)
異種強度を打ち分けた鉄筋コンクリート造梁工法の設計法及び施工方法 -DicosBeam工法-
構造性能評価書:日本ERI株式会社 ERI-K19023 2019年11月


(4)PSP工法:一般評定改定

PSP(Permanent Soil cement mixing Pile)工法は、仮設の山留壁として用いられるソイルセメント柱列壁の芯材(H形鋼)を本設地下外壁に使用するもので、基礎構造の大幅な合理化とコストダウンが図れる工法として開発し、現場適用を推進してきた。
当連結会計年度は、これまで適用範囲外であった地震時に作用する引抜き力に抵抗する鉛直アンカーとしての適用技術を開発した。対象建物は塔状比の大きい中低層建物としている。構造実験および構造解析結果に基づき設計手法・施工方法を確立し、(一財)日本建築総合試験所の建築技術性能証明を改定した。
(一般評定改定)
PSPII工法 ―芯材を有するソイルセメント改良体工法―(改造2)
建築技術性能証明書: 日本建築総合試験所 GBRC性能証明第02-22号改2 2020年2月

(5) ZEB化技術への取り組み
地球温暖化防止に向けた脱炭素化への動きを背景に、お客様の省エネルギーやZEB化に対する関心が高まっている。当社は、久光製薬ミュージアムにおいて、創エネルギーを含めた省エネ率103%を達成し、建築物省エネルギー性能表示制度(BELS:Building Energy-efficiency Labeling System)の最高ランクの「ZEB(Zero Energy Building)」の認証を取得した。
当連結会計年度は、ZEB化技術への取り組みを加速するため、当社技術研究所内の展示実験棟の省エネルギー化改修工事を実施した。省エネ化にあたり、最新技術を含め約30の省エネ技術をバランスよく組み合わせて配置することで、省エネルギー率70%超を見込んだ省エネルギー建物を実現した。
今後、導入したZEB化技術の運用効果について計測・分析・検証を繰り返し、その成果をお客様への設計提案、技術提案に反映・活用して行く予定である。

3.環境分野

(1) 浚渫土の有効利用技術

カルシア改質土は、浚渫土にカルシア改質材(転炉系製鋼スラグを成分管理、粒度調整した材料)を混合することで、浚渫土の物理性・化学性を改善した材料である。港湾工事によって発生する浚渫土を有効活用し、埋立材や干潟・浅場の中詰材、潜堤材等として使用されている。
当連結会計年度は、港湾域でのカルシア改質土の活用促進を見込み、施工の効率化を図るために解泥・混合・打設技術の開発に取り組み、浚渫土とカルシア改質材のより効果的な混合を実現する混合バケットを開発し,実現場に導入した。今後、ICT技術を活用したリアルタイム品質管理方法の開発、吸水性改質材や短繊維を添加することにより新たな用途に適用可能な高機能カルシア改質材料の技術開発を進めていく。

4.技術評価証等の取得
NETIS登録
・AR安全可視化システム:KTK-190007-A 2020年2月
・石材・ブロック等大水深投入支援システム:KTK-190008-A 2020年3月
大臣認定
・高強度コンクリート(Fc60~150):国土交通大臣認定(一般) 2020年3月

事業等のリスク株式の総数等


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