有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100IBIQ (EDINETへの外部リンク)
カルナバイオサイエンス株式会社 研究開発活動 (2019年12月期)
当社は、主にキナーゼタンパク質(*)を標的とした低分子の分子標的薬(*)であるキナーゼ阻害薬(*)の創製研究(*)及び医薬品候補化合物の開発(*)を行うため、研究開発へ積極的に先行投資を行っております。さらに、キナーゼ阻害薬等を創製するための基盤となる技術である「創薬基盤技術」をさらに強化するための研究開発を行うとともに、長年培ってきたこの創薬基盤技術を駆使し、他の製薬企業やアカデミア等からのニーズが高いキナーゼ関連製品・サービスを開発するための研究開発も行っております。
当連結会計年度において当社グループが支出した研究開発費の総額は1,281,980千円であり、項目別には以下のとおりであります。
当社グループの研究開発活動は、研究開発本部ならびに創薬支援事業本部(製造部、受託試験部)が中心となって行っております。2019年12月末現在、研究開発本部(含むCarnaBio USA)には32名、創薬支援事業本部(除く営業部門)には15名が在籍しており、そのうち15名が博士号を取得しております。また、ドラッグデザイン、有機合成、薬理、基質(*)探索、遺伝子クローニング(*)、細胞培養、タンパク質精製、アッセイ(*)開発等の専門家を有し、先端技術の蓄積を行っております。さらに、2018年に研究開発本部内に臨床開発部を新設し、2019年2月には米国に臨床開発オフィスを開設するなど、自社臨床試験の実施に向けて基盤整備に取り組んでおります。当社は、今後も研究開発へ積極的に投資を行い、複数の臨床試験段階のパイプラインを有する創薬ベンチャーとなることで、当社の企業価値を高めてまいります。
当社の創薬研究(*)は、当社グループの強力なキナーゼ(*)に関する創薬基盤技術を最大限に活用し、がん及び免疫炎症疾患を重点領域として、効率的な創薬研究を行っております。がん領域においては、自社研究に加えて国立研究開発法人国立がん研究センター、広島大学、愛媛大学及び慶應義塾大学等と共同研究を行っております。また、重点領域以外の疾患についても、大日本住友製薬株式会社との精神神経疾患領域の共同研究に加えて、自社独自研究や岐阜薬科大学ならびに北里大学等との共同研究を実施し、パイプラインの拡充を図っています。
創薬には、アッセイ(*)開発、有機合成、薬理研究、薬物動態試験、毒性試験等に関する様々な技術が必要です。優れた技術を保有する企業を積極的に活用することで、創薬の効率化を図っています。
また、新規創薬ターゲットの同定、新規創薬技術の開発などの基礎的な研究については、国立がん研究センターや大阪府立大学、愛媛大学、慶應義塾大学、大阪大学などのアカデミアとの共同研究も活用しながら推進しております。
このようななか、2018年3月には、大日本住友製薬株式会社と、精神神経疾患における画期的な治療薬の創製に向けた共同研究を開始し、契約一時金を受領するとともに、同社が臨床開発・販売への移行を決定した場合、当社に対して、開発段階、販売額目標達成に応じた開発・販売マイルストンとして総額で最大約106億円を支払う可能性があります。さらに、販売後、大日本住友製薬は本剤の販売額に応じた一定のロイヤリティを当社に支払う契約となっています。
医薬品の研究開発プロセスにおいて、前臨床試験以降を開発段階といいます。当社の創薬プログラムにおいて、すでに製薬企業等に導出済のものを除き、2019年12月末現在で2つのBTK阻害薬(炎症性免疫疾患及び血液がん)が前臨床試験段階にあります。前臨床試験では、レギュラトリーサイエンス(*)に基づき、様々な試験を外部委託先と連携を図りながら進めており、開発品目について早期の臨床試験開始を目指しております。なお、当社の開発研究は、臨床試験の前期第2相(フェーズⅡa)までの開発投資が比較的少額の段階までを対象としており、それ以降の開発は医薬品候補化合物の導出先である製薬企業等において実施することを想定しています。
当社は、2019年12月末現在で、がんを適応疾患としたCDC7キナーゼ阻害薬AS-141をカナダのシエラ・オンコロジー社へ、また、がん免疫療法の創薬プログラムを米国のギリアド・サイエンシズ社に導出しております。導出後の開発は、導出先企業によって行われており、当社はそれぞれのプログラムの開発(*)等の進展に伴い、導出契約時に合意したマイルストーン達成時に一時金を獲得できる契約となっております。
創薬事業において、特許による権利確保は製薬企業等との導出交渉時の重要な要素となるため、特許出願時期に加えて、国際出願(指定国及び国内移行)も考慮しながら、知的財産権を確保していく方針です。
他方、創薬支援事業においては、当社グループの高品質かつ網羅的なキナーゼタンパク質(*)の製造方法やキナーゼ活性の測定方法(アッセイ(*)条件)などは、他社が容易に模倣しがたい技術的ノウハウであることから、特許出願等はせず、社内に技術力を着実に蓄積することで、効率的な製品の生産と製品レベルの向上などを図っていく方針です。
ノバルティスファーマ社のグリベック®を始めとする多くのキナーゼ阻害剤(*)の成功例により、製薬企業はキナーゼ阻害薬の研究開発を活発に進めており、近年ではそれらの成果として、がん疾患のみならず、ファイザー社のゼルヤンツ®やイーライリリー社のオルミエント®のように、自己免疫疾患領域においてもキナーゼ阻害剤が承認され上市(*)されております。これらキナーゼ阻害薬の研究活動においては、高品質かつ網羅的に製品・サービスを揃える当社グループの創薬支援事業で提供する製品・サービスへのニーズが依然高いものと考えております。当社グループのキナーゼ阻害薬を創製するための技術(創薬基盤技術)を駆使して、競合他社とのさらなる差別化を図るべく、積極的な研究開発活動により、顧客要望に応じた製品・サービスの品揃えを拡充してまいります。
当連結会計年度末において、提供可能なキナーゼタンパク質(*)の種類は360種類、また製品数は442種類であり、当社グループは世界でトップクラスの品揃えを有し、キナーゼタンパク質を製造販売しております。また、プロファイリング(*)可能なキナーゼ(*)の種類は332製品あり、阻害すべきキナーゼと阻害すべきでないキナーゼに対する効果を網羅的に検証可能な信頼性の高いキナーゼアッセイをサービスとして提供しております。また、表面プラズモン共鳴 (SPR)(*)やバイオレイヤー干渉法 (BLI)(*)といった物質間の相互作用を評価する系(解析機器)で利用可能なビオチン化キナーゼタンパク質(*)の製品数は107種類となりました。さらに、次世代の創薬ターゲットとして期待される脂質キナーゼ(*)の品揃え拡充に取り組んでおり、すでにPIPK等の製品・サービスの開発に成功しております。また、細胞を用いて化合物を評価するセルベースアッセイ(*)では、2つの製品・サービスを提供しています。1つ目はプロメガ社のNanoBRET™テクノロジーを用いて細胞内でのキナーゼ阻害剤の作用を評価する受託試験サービスで、化合物の細胞内におけるキナーゼに対する結合阻害の強さを測定するとともに、化合物の特徴づけの指標として最近注目されているレジデンスタイムの測定が可能です。もう一つは、細胞内のタンパク質間相互作用(*)を可視化できる相補型スプリットルシフェラーゼアッセイ技術(*)を用いたタンパク質間相互作用(*)を測定することが可能なセルベースアッセイで、安定発現細胞株として27製品を有しております。それらに加えて、ACD社、CAI社及びNTRC社等の協力会社の提供するセルベースアッセイサービスの代理店として国内外の顧客へ提供しており、より高度化する顧客ニーズに対応することにより、顧客満足度の向上を図ってまいります。
今後もキナーゼ阻害薬(*)の創薬研究(*)に有用な最新の技術開発を行い、自社研究及び他機関との共同研究を通じて、研究期間の短縮に寄与する創薬基盤技術の強化を図ってまいります。
当連結会計年度における研究開発活動をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
1.創薬事業
当社は、がん、免疫炎症疾患を重点領域としてキナーゼ阻害薬を中心に創薬研究開発を行なっています。2019年12月末現在で、がん領域においては4つの創薬プログラムおよび2つの導出済みプログラムがあり、免疫炎症疾患領域では2つの創薬プログラムの研究開発を実施しております。また、重点領域以外にも2つの創薬プログラムの研究を実施しております。
次世代がん免疫療法として自社研究しておりました創薬プログラムにつきましては、2019年6月にギリアド社に開発・商業化にかかる全世界における独占的な権利を供与する契約を締結し、契約一時金20百万ドル(2,128,000千円)を受領しております。今後、同プログラムの研究開発の進展に伴い、最大で450百万ドル(約472億円、1ドル105円換算)および売上高に応じたロイヤリティを受領することになります。また2016年5月に導出いたしましたCDC7キナーゼ阻害剤AS-141(SRA141)については、導出先であるシエラ社が2018年12月期第3四半期に米国FDAに対しIND申請(新薬臨床試験開始届)を完了しております。同社は、同社が保有する別のパイプライン(momelotinib)のフェーズ3試験にリソースを集中させるために、SRA141の開発方針について様々な選択肢を戦略的に検討中と発表しておりますが、当社は今後、開発の進展に伴い、最大で270百万ドル(約283億円、1ドル105円換算)および売上高に応じたロイヤリティを受領することになります。イブルチニブ耐性の血液がんを治療標的とした次世代BTK阻害剤AS-1763は、2020年中のIND申請、その後の臨床試験開始を目指し、前臨床試験を進めております。また、wntシグナル経路やTGFβシグナル経路を標的とした創薬研究も順調に進んでおり、早期のステージアップを目指しております。
また自社臨床試験の第1号として開発を進めております、もう一つのBTK阻害剤(AS-0871)について、各種前臨床試験が終了し、2019年12月にオランダ当局にCTA(欧州における臨床試験許認可申請)を提出いたしました。オランダ当局および倫理委員会による審査が完了したことから、炎症性免疫疾患を標的とした臨床試験の開始が可能となりました。現地での試験準備が整い次第、2020年上期中に健康成人を対象とした臨床試験(フェーズ1試験)を開始する予定です。
その他の領域では、2018年3月に大日本住友製薬株式会社と精神神経疾患を標的とした共同研究契約を締結しており、今後、研究開発の進展に伴い、契約に基づくマイルストーンの達成(最大約106億円)および売上高に応じたロイヤリティを受領することになります。
また、北里大学北里生命科学研究所との新規マラリア治療薬プログラムについても、早期のステージアップを目指して共同研究を継続してまいります。
上記に加え、将来のパイプラインを継続的に生み出せるよう次世代の研究テーマの準備を進め、有望な研究テーマが同定された場合は、限られたリソースで効率的に研究開発が行なえるよう、テーマの選択と集中も随時行なっていく予定です。当事業に係る研究開発費は、1,187,160千円であります。
2.創薬支援事業
創薬支援事業の研究開発では、新たなキナーゼタンパク質製品の開発ならびにキナーゼタンパク質およびプロファイリング・スクリーニングサービスの品質および作業効率の向上が主要なテーマとなっております。当社製キナーゼタンパク質およびそれを用いた受託試験サービスは顧客から高品質との評価を得ており、今後さらなる信頼を獲得し売上拡大を図るため、一層の品質の向上に取り組むとともに、顧客ニーズに基づく新製品の開発にも取り組んでまいります。また、収益力の強化を目指した作業工程の改善にも取り組んでおります。当事業に係る研究開発費は、94,820千円であります。
(注) *を付している専門用語については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」の末尾に用語解説を設け、説明しております。
このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E00987] S100IBIQ)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。