有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100IXA6 (EDINETへの外部リンク)
株式会社 神戸製鋼所 研究開発活動 (2020年3月期)
当社グループ(当社及び連結子会社)は、幅広い技術分野での高度な技術力を源泉として、当社グループならではの顧客価値を実現する製品の創出と、それに必要な「ものづくり力」の強化を中心に取り組み、また拡販のための技術支援、ソリューション提案など多くの成果をあげております。
当社技術開発本部では、各事業の基盤と競争力強化に向けた研究開発に加え、将来に向けた新製品・プロセスを具現化する高度で先端的な技術の開発も先導して行なっており、自動車分野、航空機分野、エネルギー分野、人工知能(AI)含むICT分野などでの新たなメニュー創出とそれらを支えるものづくり力を強化していきます。
また、当社各部門及び連結子会社の技術開発部門では、事業の競争力強化に直結する製品及び生産技術の開発を行なっております。今後とも、グループ全体にわたる研究開発への経営資源の投入を効果的に行なってまいります。
当連結会計年度における当社グループの研究開発費は、358億円であります。なお、本費用には、当社技術開発本部で行なっている事業部門横断的又は基礎的研究開発などで、各事業区分に配分できない費用として計上する費用68億円が含まれております。
主な事業の種類別セグメント毎の研究開発活動の状況は、次のとおりであります。
[鉄鋼]
鉄鋼では、輸送機分野(自動車、船舶、航空機)や建設分野を中心に特殊鋼や高強度鋼、鋳鍛鋼、チタン、鉄粉の商品力・強みを生かした商品開発と「ものづくり力」の強化に向けた生産技術の開発に引き続き注力して取り組んでおります。
薄板分野では、プレスの生産性に優れたホットスタンプ用めっき鋼板(焼入れ後強度1500MPa級)を開発しました。本製品とスペインの自動車部品会社であるGestamp社の加工技術を組み合わせることで、欧州自動車メーカーへ初めて適用され、量産化に至りました。本製品は、2017年に開発した高生産性ホットスタンプ用冷延鋼板(注1)に亜鉛めっき処理を施したものであり、高生産性ホットスタンプ用冷延鋼板の適用部品の拡大の可能性を大きく広げるものです。
また、優れた耐食性、耐疵付き性、加工性を有し、構造用から建築、電機、自動車分野など広く適用可能なアルミニウム-マグネシウム合金めっき鋼板である「KOBEMAG®」については、日鉄日新製鋼(株)(注2)への製造委託から、同社へのめっき委託(原板となる熱延鋼板は当社材)へ移行を進めていますが、今般、めっき委託材について、建築基準法(第37条第二号)に適合するものとして国土交通大臣の認定を取得しました。これにより、「KOBEMAG®」はめっき委託材においても建築構造部材を含む幅広い用途へ採用できる素材となりました。
なお、当連結会計年度における研究開発費は、78億円であります。
(注1) 高生産性ホットスタンプ用冷延鋼板
従来のホットスタンプ用鋼板と比べて焼入れ性を向上させることで、お客様でのプレス生産性の改善、加工後の冷却ムラによる強度不足の軽減、プレス部品形状の自由度向上、プレス後のレーザーカット工程の省略を可能とした鋼板
(注2) 2020年4月1日付で製造委託契約の相手会社である日鉄日新製鋼(株)が日本製鉄(株)に吸収合併されたことに伴い、契約相手先が日本製鉄(株)に変更となりました。
[溶接]
溶接では、「世界で最も信頼される溶接ソリューション企業」の実現を目指し、溶接材料と溶接ロボット・装置・電源を組合せ、さらに溶接プロセスを加えた「溶接ソリューション」を提供する企業として、引続き開発に注力しています。
溶接材料分野では、舶用LNG燃料タンクに用いられる9%Ni鋼の溶接に適したNi基合金のフラックス入りワイヤ「PREMIARCTM DW-N609SV」を開発しました。本製品は、Ni基合金溶接で問題となる高温割れが生じ難く、溶接作業性、特に立向溶接性に優れるという特長を有しています。既にメガコンテナ船LNG燃料タンクで採用され、今後、需要の拡大が見込まれます。
また、造船向けに、小型可搬型溶接ロボット「石松」での自動溶接用フラックス入りワイヤ「FAMILIARCTM MX-100ER」を開発しました。「MX-100ER」はソリッドワイヤに比べ大粒スパッタを大幅に削減し、スラグが少ないことにより2~3パスの連続溶接が可能で、自動溶接に適しています。また、石松にはMX-100ERの溶接パラメータが搭載されており、コントローラでMX-100ERを選択すれば、姿勢・板厚・開先形状に応じた溶接条件が自動設定され、最適な条件で優れた溶接品質が得られます。
溶接システム分野では、アーク溶接ロボットの小型機種「ARCMANTM A40」を開発しました。同機は、従来機種「ARCMANTM SR」の後継機で、アーム長さや中厚板溶接機能など基本スペックは従来機を継承しました。新たな特長として、ロボット旋回軸を中空化して溶接ケーブルを内挿する構造を採用しました。これにより溶接品質の向上と自動化を阻害する同ケーブルの巻きつきを解消しました。また動作範囲を大幅に拡大し、より様々な形状のワークを溶接することが可能になりました。
さらに、当社アーク溶接ロボットのスタンダード機「ARCMANTM MP」の後継機となる「ARCMANTM A60」を開発しました。A60はアーム長がMPと同等で、既存の周辺装置や教示プログラムを活かした設備リニューアルに対応することが可能です。A60はA40と同様にロボット旋回軸を中空化することでケーブル類の干渉を防止し、また3軸目の動作範囲をMP比で約23%拡大することでワークとの干渉を回避したアプローチが可能となり、さらなる自動化率の向上につながります。ARCMANTMシリーズ各ロボットの特長を活かし、国内外の中厚板溶接の分野で対象ワークやユーザニーズに最適なシステムを提案してまいります。
なお、当連結会計年度における研究開発費は、40億円であります。
[アルミ・銅]
アルミ・銅では、中長期事業競争力の強化に向け、自動車関連部材等「成長分野」の技術開発と品質及び生産技術に注力して研究開発を進めております。また、缶用材料、電子機器材料等の「コア製品分野」では、安定した生産性確保とさらなる品質向上を継続的に推進しています。
アルミ板分野では、自動車パネル材において、真岡製造所・神鋼汽車鋁材(天津)有限公司の両拠点に加え、真岡製造所に新熱処理・表面処理設備の建設が完了し、量産に向けた準備を進めています。また、当社の特徴である接合や解析技術のソリューション提案力も高く評価されており、自動車へのアルミ板材の採用拡大に貢献しています。飲料缶材料では、市場シェア維持・拡大のため品質向上や薄肉化に対応できる材料開発を推進しました。また、HDD用ディスク基板では今後進展する薄肉化に対応した材料及び生産技術の開発に注力しております。
鋳鍛分野では、自動車サスペンション用アルミ鍛造部品において北米・中国を始めとしてグローバルに需要が拡大しており、サスペンション部品の生産性向上、さらなる品質向上のための技術開発を推進しています。また、他社との差別化を図るために、高強度合金開発と構造設計の両面から軽量化提案を行ない、お客様から高い評価を得ています。さらに自動車分野以外でも、高性能な耐熱材料の開発や、競争力向上のためのプロセス技術の開発を行なっています。
押出分野では、アルミ製バンパーシステムや車両骨格部材などの自動車用押出形材に対して、軽量で衝突安全性に優れた材料のニーズが高まっています。当社では高強度でかつ耐応力腐食割れ性に優れた独自の7000系合金押出形材を開発し、日本だけではなく米国でも溶解鋳造から押出、加工までの一貫生産を開始しています。将来の差別化・競争力強化に向けて、更なる高強度合金開発やその生産技術開発にも注力しております。
銅板分野では、自動車向け電装部品用端子材料の需要が好調であり、低摩擦係数と耐熱性に優れた錫めっき(新リフローめっき)技術が高く評価され、国内外で採用が拡大しています。欧州につづき米国伸銅メーカーへも「新リフローめっき」技術のライセンスを供与し、現地からの供給を始めています。今後も更なるグローバル供給体制の拡充を推進します。また、自動運転化に伴う電装化の進展から、端子の小型化、多極化に最適な高強度、薄板材料の開発を推進しています。さらに、スマートフォン用などの散熱部材への開発合金の採用も順調に増加しています。
なお、当連結会計年度における研究開発費は、33億円であります。
[機械]
機械では、環境、省エネ(CO2削減)をキーワードに、オンリーワン・ナンバーワン技術や商品を創出することで独自性を徹底追求するとともに、マーケット及び生産の両面からさらなるグローバル化を推進し、世界トップレベルの「ものづくり」の実現を目指しています。
圧縮機関連分野では、グリーン冷媒(低GWP冷媒)を採用し、環境性と高い省エネ性を両立した高温ヒートポンプ「HEM-HR-GN/GLシリーズ」を開発しました。55℃から95℃の温水取出機ラインアップのうち、95℃温水取出機は、木村化工機(株)と共同開発したモデルで、本年パイロットプラントでの検証試験を行ないます。
また、東京ガス(株)、三菱重工エンジン&ターボチャージャ(株)、三浦工業(株)、当社の4社が2015年に開発したガスエンジンの廃温水を蒸気として回収する「全蒸気回収ガスエンジンコージェネレーションシステム」が、一般社団法人日本ガス協会が主催する2019年度「技術賞」を受賞しました。本システムは発電効率と蒸気回収効率を合わせた総合効率で世界最高を達成しています。
なお、当連結会計年度における研究開発費は、35億円であります。
[エンジニアリング]
エンジニアリングでは、独自プロセス・技術のさらなる差別化、競争力強化に向けた開発を継続するとともに、将来の成長が見込まれる、環境、エネルギー等の有望分野において、積極的に開発を推進しております。
還元鉄関連分野では、天然ガスを還元剤とした製鉄法(MIDREXプロセス)の競争力維持・強化に向けた開発を継続しております。2019年9月には、当社子会社であるMidrex Technologies, Inc.が、世界最大の鉄鋼メーカーであるArcelorMittal(以下、アルセロール・ミッタル社)が進める水素を活用した低炭素製鉄の研究・開発において、水素を活用した直接還元製鉄法の技術サプライヤーとして採用され、アルセロール・ミッタル社と共同開発契約を締結しました。
水処理関連分野では、下水道におけるバイオマスエネルギーの利活用を目指した高濃度汚泥消化技術、環境配慮型創エネ汚泥焼却システムなど、ライフサイクルコストの低減に向けた技術開発を継続して推進しております。
廃棄物処理関連分野では、ごみクレーンの自動化やAIや通信技術を利用した操業の省力化・安定化、CO2有効利用技術の開発に取り組んでおります。
化学・食品機械関連分野では、機能性グラスライニング、撹拌式凍結乾燥機等、競争力強化に向けた商品開発に取り組んでおります。
新規事業関連分野では、水素発生装置のブラッシュアップを推進し、水素の利用拡大が見込まれるモビリティ分野向けの装置を受注いたしました。また、ユーグレナ(微細藻類)については、ユーグレナグラシリスEOD-1の機能性表示食品の商品化等に取り組んでおります。
なお、当連結会計年度における研究開発費は、24億円であります。
[建設機械]
建設機械では、主力製品である油圧ショベル、クローラクレーンなどの安全性向上、省エネ性向上、排ガス対応・騒音低減などの環境対応に加え、建設リサイクル機械・金属リサイクル機械の開発に取り組んでいます。クラウドやAI、IoT等の先進テクノロジーを活用して、「働く人を中心とした、建設現場のテレワークシステム」を意味するK-DIVE CONCEPT推進のために、日本マイクロソフト(株)と協業することを2019年5月22日の「建設・測量生産性向上展2019」にて発表いたしました。クラウドマッチングシステムにより、特定の人・場所・時間などの制約を受けずに、現場の施工が可能となる「建設現場のテレワーク化」を実現し、深刻化する建設技能者の不足に対する多様な人材活用、現場生産性の向上、現場無人化による本質的な安全確保などを目指しています。
ショベル関連分野では、機能性・快適性を大幅に向上させた7トン級油圧ショベルSK75SR-7の販売を2019年5月1日より開始しました。燃費改善開発により従来機比で登坂走行速度を27%、アーム掘削速度を15%向上させ生産性を改善しています。また、筋電位の計測データに基づき、人間工学や感性工学的な視点を盛り込みながらシートやレバー、スイッチ類のポジションの最適化を行なうことで、作業時の快適性も大幅に向上させました。
クレーン関連分野では、国立大学法人豊橋技術科学大学と、クローラクレーンに関する両者の知識、経験及び人的資源、物的資源を相互に活用した研究の推進、研究成果の社会活用促進、高度な人材の育成を目的として、包括連携協定を2019年2月5日に締結しており、2019年4月1日に豊橋技術科学大学に「コベルコ建機次世代クレーン共同研究講座」を開設しました。
なお、当連結会計年度における研究開発費は、69億円であります。
[その他]
(株)コベルコ科研では、エネルギー、自動車、エレクトロニクス、土木・建築、環境など広範囲にわたる分析・試験技術を蓄積するとともに、高度で先端的な評価・解析技術の開発を進めています。さらに、液晶テレビなどのフラットパネルディスプレイ用の配線に用いられる薄膜用のターゲット材料や半導体等の検査装置の開発に取り組んでいます。
近年発達著しいAI(Artificial Intelligence)、MI(Materials Informatics)、ビッグデータを用いた解析等の研究開発、自動車分野におけるモータ・インバータや電池などの駆動電子部品に関する研究開発を効果的・効率的に進めるために、分散していた計算科学に関する技術と人材、EVモーター、自動車用電子部品、二次電池に関する技術、人材を集約し、「計算科学センター(Computational Science Department)」と「EV・電池プロジェクト室」を新設しました。両室においては、構造解析、熱流体等の分野での機械学習を活用したCAEのメニュー開発、EV用高容量電池の電池試作や分析技術、CAE、安全性試験の複合解析評価技術開発等の市場に即したメニュー開発に取り組んでおります。
また、「パルス渦流法を用いた非破壊検査技術」が、国土交通省の公共工事等における新技術活用システム「NETIS-VE」に登録され、併せて「活用促進技術」に指定されました。この技術は主に、土砂・アスファルト・コンクリート等に埋設された道路附属物(照明柱、標識柱等)の地際部腐食を掘削することなく測定できる技術で、現状の掘削後に4か所の板厚測定をする技術に対し、測定時間の大幅な短縮が可能となります。
なお、当連結会計年度における研究開発費は、9億円であります。
当社技術開発本部では、各事業の基盤と競争力強化に向けた研究開発に加え、将来に向けた新製品・プロセスを具現化する高度で先端的な技術の開発も先導して行なっており、自動車分野、航空機分野、エネルギー分野、人工知能(AI)含むICT分野などでの新たなメニュー創出とそれらを支えるものづくり力を強化していきます。
また、当社各部門及び連結子会社の技術開発部門では、事業の競争力強化に直結する製品及び生産技術の開発を行なっております。今後とも、グループ全体にわたる研究開発への経営資源の投入を効果的に行なってまいります。
当連結会計年度における当社グループの研究開発費は、358億円であります。なお、本費用には、当社技術開発本部で行なっている事業部門横断的又は基礎的研究開発などで、各事業区分に配分できない費用として計上する費用68億円が含まれております。
主な事業の種類別セグメント毎の研究開発活動の状況は、次のとおりであります。
[鉄鋼]
鉄鋼では、輸送機分野(自動車、船舶、航空機)や建設分野を中心に特殊鋼や高強度鋼、鋳鍛鋼、チタン、鉄粉の商品力・強みを生かした商品開発と「ものづくり力」の強化に向けた生産技術の開発に引き続き注力して取り組んでおります。
薄板分野では、プレスの生産性に優れたホットスタンプ用めっき鋼板(焼入れ後強度1500MPa級)を開発しました。本製品とスペインの自動車部品会社であるGestamp社の加工技術を組み合わせることで、欧州自動車メーカーへ初めて適用され、量産化に至りました。本製品は、2017年に開発した高生産性ホットスタンプ用冷延鋼板(注1)に亜鉛めっき処理を施したものであり、高生産性ホットスタンプ用冷延鋼板の適用部品の拡大の可能性を大きく広げるものです。
また、優れた耐食性、耐疵付き性、加工性を有し、構造用から建築、電機、自動車分野など広く適用可能なアルミニウム-マグネシウム合金めっき鋼板である「KOBEMAG®」については、日鉄日新製鋼(株)(注2)への製造委託から、同社へのめっき委託(原板となる熱延鋼板は当社材)へ移行を進めていますが、今般、めっき委託材について、建築基準法(第37条第二号)に適合するものとして国土交通大臣の認定を取得しました。これにより、「KOBEMAG®」はめっき委託材においても建築構造部材を含む幅広い用途へ採用できる素材となりました。
なお、当連結会計年度における研究開発費は、78億円であります。
(注1) 高生産性ホットスタンプ用冷延鋼板
従来のホットスタンプ用鋼板と比べて焼入れ性を向上させることで、お客様でのプレス生産性の改善、加工後の冷却ムラによる強度不足の軽減、プレス部品形状の自由度向上、プレス後のレーザーカット工程の省略を可能とした鋼板
(注2) 2020年4月1日付で製造委託契約の相手会社である日鉄日新製鋼(株)が日本製鉄(株)に吸収合併されたことに伴い、契約相手先が日本製鉄(株)に変更となりました。
[溶接]
溶接では、「世界で最も信頼される溶接ソリューション企業」の実現を目指し、溶接材料と溶接ロボット・装置・電源を組合せ、さらに溶接プロセスを加えた「溶接ソリューション」を提供する企業として、引続き開発に注力しています。
溶接材料分野では、舶用LNG燃料タンクに用いられる9%Ni鋼の溶接に適したNi基合金のフラックス入りワイヤ「PREMIARCTM DW-N609SV」を開発しました。本製品は、Ni基合金溶接で問題となる高温割れが生じ難く、溶接作業性、特に立向溶接性に優れるという特長を有しています。既にメガコンテナ船LNG燃料タンクで採用され、今後、需要の拡大が見込まれます。
また、造船向けに、小型可搬型溶接ロボット「石松」での自動溶接用フラックス入りワイヤ「FAMILIARCTM MX-100ER」を開発しました。「MX-100ER」はソリッドワイヤに比べ大粒スパッタを大幅に削減し、スラグが少ないことにより2~3パスの連続溶接が可能で、自動溶接に適しています。また、石松にはMX-100ERの溶接パラメータが搭載されており、コントローラでMX-100ERを選択すれば、姿勢・板厚・開先形状に応じた溶接条件が自動設定され、最適な条件で優れた溶接品質が得られます。
溶接システム分野では、アーク溶接ロボットの小型機種「ARCMANTM A40」を開発しました。同機は、従来機種「ARCMANTM SR」の後継機で、アーム長さや中厚板溶接機能など基本スペックは従来機を継承しました。新たな特長として、ロボット旋回軸を中空化して溶接ケーブルを内挿する構造を採用しました。これにより溶接品質の向上と自動化を阻害する同ケーブルの巻きつきを解消しました。また動作範囲を大幅に拡大し、より様々な形状のワークを溶接することが可能になりました。
さらに、当社アーク溶接ロボットのスタンダード機「ARCMANTM MP」の後継機となる「ARCMANTM A60」を開発しました。A60はアーム長がMPと同等で、既存の周辺装置や教示プログラムを活かした設備リニューアルに対応することが可能です。A60はA40と同様にロボット旋回軸を中空化することでケーブル類の干渉を防止し、また3軸目の動作範囲をMP比で約23%拡大することでワークとの干渉を回避したアプローチが可能となり、さらなる自動化率の向上につながります。ARCMANTMシリーズ各ロボットの特長を活かし、国内外の中厚板溶接の分野で対象ワークやユーザニーズに最適なシステムを提案してまいります。
なお、当連結会計年度における研究開発費は、40億円であります。
[アルミ・銅]
アルミ・銅では、中長期事業競争力の強化に向け、自動車関連部材等「成長分野」の技術開発と品質及び生産技術に注力して研究開発を進めております。また、缶用材料、電子機器材料等の「コア製品分野」では、安定した生産性確保とさらなる品質向上を継続的に推進しています。
アルミ板分野では、自動車パネル材において、真岡製造所・神鋼汽車鋁材(天津)有限公司の両拠点に加え、真岡製造所に新熱処理・表面処理設備の建設が完了し、量産に向けた準備を進めています。また、当社の特徴である接合や解析技術のソリューション提案力も高く評価されており、自動車へのアルミ板材の採用拡大に貢献しています。飲料缶材料では、市場シェア維持・拡大のため品質向上や薄肉化に対応できる材料開発を推進しました。また、HDD用ディスク基板では今後進展する薄肉化に対応した材料及び生産技術の開発に注力しております。
鋳鍛分野では、自動車サスペンション用アルミ鍛造部品において北米・中国を始めとしてグローバルに需要が拡大しており、サスペンション部品の生産性向上、さらなる品質向上のための技術開発を推進しています。また、他社との差別化を図るために、高強度合金開発と構造設計の両面から軽量化提案を行ない、お客様から高い評価を得ています。さらに自動車分野以外でも、高性能な耐熱材料の開発や、競争力向上のためのプロセス技術の開発を行なっています。
押出分野では、アルミ製バンパーシステムや車両骨格部材などの自動車用押出形材に対して、軽量で衝突安全性に優れた材料のニーズが高まっています。当社では高強度でかつ耐応力腐食割れ性に優れた独自の7000系合金押出形材を開発し、日本だけではなく米国でも溶解鋳造から押出、加工までの一貫生産を開始しています。将来の差別化・競争力強化に向けて、更なる高強度合金開発やその生産技術開発にも注力しております。
銅板分野では、自動車向け電装部品用端子材料の需要が好調であり、低摩擦係数と耐熱性に優れた錫めっき(新リフローめっき)技術が高く評価され、国内外で採用が拡大しています。欧州につづき米国伸銅メーカーへも「新リフローめっき」技術のライセンスを供与し、現地からの供給を始めています。今後も更なるグローバル供給体制の拡充を推進します。また、自動運転化に伴う電装化の進展から、端子の小型化、多極化に最適な高強度、薄板材料の開発を推進しています。さらに、スマートフォン用などの散熱部材への開発合金の採用も順調に増加しています。
なお、当連結会計年度における研究開発費は、33億円であります。
[機械]
機械では、環境、省エネ(CO2削減)をキーワードに、オンリーワン・ナンバーワン技術や商品を創出することで独自性を徹底追求するとともに、マーケット及び生産の両面からさらなるグローバル化を推進し、世界トップレベルの「ものづくり」の実現を目指しています。
圧縮機関連分野では、グリーン冷媒(低GWP冷媒)を採用し、環境性と高い省エネ性を両立した高温ヒートポンプ「HEM-HR-GN/GLシリーズ」を開発しました。55℃から95℃の温水取出機ラインアップのうち、95℃温水取出機は、木村化工機(株)と共同開発したモデルで、本年パイロットプラントでの検証試験を行ないます。
また、東京ガス(株)、三菱重工エンジン&ターボチャージャ(株)、三浦工業(株)、当社の4社が2015年に開発したガスエンジンの廃温水を蒸気として回収する「全蒸気回収ガスエンジンコージェネレーションシステム」が、一般社団法人日本ガス協会が主催する2019年度「技術賞」を受賞しました。本システムは発電効率と蒸気回収効率を合わせた総合効率で世界最高を達成しています。
なお、当連結会計年度における研究開発費は、35億円であります。
[エンジニアリング]
エンジニアリングでは、独自プロセス・技術のさらなる差別化、競争力強化に向けた開発を継続するとともに、将来の成長が見込まれる、環境、エネルギー等の有望分野において、積極的に開発を推進しております。
還元鉄関連分野では、天然ガスを還元剤とした製鉄法(MIDREXプロセス)の競争力維持・強化に向けた開発を継続しております。2019年9月には、当社子会社であるMidrex Technologies, Inc.が、世界最大の鉄鋼メーカーであるArcelorMittal(以下、アルセロール・ミッタル社)が進める水素を活用した低炭素製鉄の研究・開発において、水素を活用した直接還元製鉄法の技術サプライヤーとして採用され、アルセロール・ミッタル社と共同開発契約を締結しました。
水処理関連分野では、下水道におけるバイオマスエネルギーの利活用を目指した高濃度汚泥消化技術、環境配慮型創エネ汚泥焼却システムなど、ライフサイクルコストの低減に向けた技術開発を継続して推進しております。
廃棄物処理関連分野では、ごみクレーンの自動化やAIや通信技術を利用した操業の省力化・安定化、CO2有効利用技術の開発に取り組んでおります。
化学・食品機械関連分野では、機能性グラスライニング、撹拌式凍結乾燥機等、競争力強化に向けた商品開発に取り組んでおります。
新規事業関連分野では、水素発生装置のブラッシュアップを推進し、水素の利用拡大が見込まれるモビリティ分野向けの装置を受注いたしました。また、ユーグレナ(微細藻類)については、ユーグレナグラシリスEOD-1の機能性表示食品の商品化等に取り組んでおります。
なお、当連結会計年度における研究開発費は、24億円であります。
[建設機械]
建設機械では、主力製品である油圧ショベル、クローラクレーンなどの安全性向上、省エネ性向上、排ガス対応・騒音低減などの環境対応に加え、建設リサイクル機械・金属リサイクル機械の開発に取り組んでいます。クラウドやAI、IoT等の先進テクノロジーを活用して、「働く人を中心とした、建設現場のテレワークシステム」を意味するK-DIVE CONCEPT推進のために、日本マイクロソフト(株)と協業することを2019年5月22日の「建設・測量生産性向上展2019」にて発表いたしました。クラウドマッチングシステムにより、特定の人・場所・時間などの制約を受けずに、現場の施工が可能となる「建設現場のテレワーク化」を実現し、深刻化する建設技能者の不足に対する多様な人材活用、現場生産性の向上、現場無人化による本質的な安全確保などを目指しています。
ショベル関連分野では、機能性・快適性を大幅に向上させた7トン級油圧ショベルSK75SR-7の販売を2019年5月1日より開始しました。燃費改善開発により従来機比で登坂走行速度を27%、アーム掘削速度を15%向上させ生産性を改善しています。また、筋電位の計測データに基づき、人間工学や感性工学的な視点を盛り込みながらシートやレバー、スイッチ類のポジションの最適化を行なうことで、作業時の快適性も大幅に向上させました。
クレーン関連分野では、国立大学法人豊橋技術科学大学と、クローラクレーンに関する両者の知識、経験及び人的資源、物的資源を相互に活用した研究の推進、研究成果の社会活用促進、高度な人材の育成を目的として、包括連携協定を2019年2月5日に締結しており、2019年4月1日に豊橋技術科学大学に「コベルコ建機次世代クレーン共同研究講座」を開設しました。
なお、当連結会計年度における研究開発費は、69億円であります。
[その他]
(株)コベルコ科研では、エネルギー、自動車、エレクトロニクス、土木・建築、環境など広範囲にわたる分析・試験技術を蓄積するとともに、高度で先端的な評価・解析技術の開発を進めています。さらに、液晶テレビなどのフラットパネルディスプレイ用の配線に用いられる薄膜用のターゲット材料や半導体等の検査装置の開発に取り組んでいます。
近年発達著しいAI(Artificial Intelligence)、MI(Materials Informatics)、ビッグデータを用いた解析等の研究開発、自動車分野におけるモータ・インバータや電池などの駆動電子部品に関する研究開発を効果的・効率的に進めるために、分散していた計算科学に関する技術と人材、EVモーター、自動車用電子部品、二次電池に関する技術、人材を集約し、「計算科学センター(Computational Science Department)」と「EV・電池プロジェクト室」を新設しました。両室においては、構造解析、熱流体等の分野での機械学習を活用したCAEのメニュー開発、EV用高容量電池の電池試作や分析技術、CAE、安全性試験の複合解析評価技術開発等の市場に即したメニュー開発に取り組んでおります。
また、「パルス渦流法を用いた非破壊検査技術」が、国土交通省の公共工事等における新技術活用システム「NETIS-VE」に登録され、併せて「活用促進技術」に指定されました。この技術は主に、土砂・アスファルト・コンクリート等に埋設された道路附属物(照明柱、標識柱等)の地際部腐食を掘削することなく測定できる技術で、現状の掘削後に4か所の板厚測定をする技術に対し、測定時間の大幅な短縮が可能となります。
なお、当連結会計年度における研究開発費は、9億円であります。
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