有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100IVZ0 (EDINETへの外部リンク)
古河電気工業株式会社 研究開発活動 (2020年3月期)
当社グループは、新商品、新技術開発による新規事業の創出と展開を図るべく、国内の当社研究所等(先端技術研究所、コア技術融合研究所、自動車・エレクトロニクス研究所、情報通信・エネルギー研究所、次世代インフラ創生センター)及び海外のOFS Laboratories, LLC (米国)、Furukawa Electric Institute of Technology Ltd.(ハンガリー)、SuperPower Inc.(米国)、Silicon Valley Innovation Laboratories, Furukawa Electric(米国)を中心とした研究体制を有し、積極的に研究開発へ取り組んでおります。
当連結会計年度における研究開発費は、注力分野及び新事業創出の強化を進めていくため、前連結会計年度比2.4%増の21,650百万円とし、各セグメントの主な成果等は次のとおりであります。
(1)インフラ
①次世代の大容量光デジタルコヒーレント通信向け超小型狭線幅制御回路付信号光源(Nano ITLA)の開発に成功しました。本製品は、大幅な小型化と低消費電力化に対応し、かつ超高速光通信に用いられる多値変調の光デジタルコヒーレント通信に要求される狭線幅の特性を有しております。また、光ファイバ通信の伝送特性向上及び伝送距離拡大に有効なインコヒーレント光を用いたラマン増幅用の新しい励起光源FRSi4XXシリーズを開発しました。これらの技術は、5G時代の急激なトラフィックの増大を見据えて世界的に開発が進む600Gbps超の光デジタルコヒーレント通信を支えるキーデバイスです。引き続き次世代光ファイバ通信システムの高速化・大容量化・長距離化を支える技術開発を進め、5Gなど人々の生活利便性の向上に大きく貢献してまいります。②光ファイバ及び光ファイバ・ケーブルについては、長距離用途におけるさらなる低コスト化、並びに光ファイバネットワークの大容量化・多心化が求められているデータセンタや大都市ネットワーク用途における省スペース化が可能な「ローラブルリボンを搭載した光ファイバ・ケーブル」のさらなる高密度化を推し進めております。また、将来の超大容量光通信における空間多重技術の長距離幹線系、加入者アクセス系への適用に向けて、国立研究開発法人情報通信研究機構が実施するプロジェクトからの委託研究である「空間多重フォトニックノード基板技術の研究開発」、「マルチコアファイバの実用化加速に向けた研究開発」、総務省が実施する「新たな社会インフラを担う革新的光ネットワーク技術の研究開発」を活用し、1本の光ファイバに複数のコアを含むマルチコア光ファイバを用いた、光ファイバ及び光ファイバ・ケーブルの製造技術や光ファイバの接続技術並びにマルチコア光増幅技術の検討を行っております。
③ファイバレーザの製品群として、新たに12kWのマルチモードファイバレーザを製品化しました。ビーム品質を良好に維持しつつ高出力化を行うことで、金属の厚板溶接や薄板の高速溶接が可能となり、高付加価値加工の実現及び製造コスト削減に大きく貢献しております。また、かねてより開発を進めているビームモード制御技術を活用することにより、10kW超の高出力レーザを用いた厚板溶接で課題となるスパッタ飛散の抑制、自動車用亜鉛めっき鋼板やアルミニウム合金の高速かつ高品質な溶接が可能となりました。さらに、溶接品質管理のためのモニタリング技術等の開発も進めております。これらの研究開発により、自動車や船舶における難接合材の溶接など高度な加工技術でものづくり競争力を支援し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
④国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「高温超電導高安定磁場マグネットシステム技術開発」に参画し、高温超電導線材の超電導接続の開発を実施しました。また、MRIマグネットで要求される10-12Ω以下の抵抗を達成し、超電導コイルの永久電流実現に成功しました。引き続き、実用化に向けた開発を継続してまいります。
⑤大型・高効率のフライホイールに用いられている高温超電導磁気軸受の開発を進めており、研究子会社であるSuperPower Inc.(米国)の高温超電導線材を用いた超電導コイルで、従来の4倍以上の荷重となる15トンの浮上に成功しました。また、㈱ミラプロ及び公益財団法人鉄道総合技術研究所と共同で鉄道用途に向けた超電導磁気軸受の実用化に取り組んでおります。
⑥経済産業省の委託事業「浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業」に受託コンソーシアムの一員として参画し、現在、運転・メンテナンス実証を実施しております。当社は、浮体式設備の動きや波・潮流に追従し水中で浮遊する浮体式風力発電用ライザーケーブルを担当しており、発電事業期間となる20年間における維持管理手法のとりまとめを行いました。
⑦情報・エネルギー・モビリティが融合した「次世代の新しいインフラ」を考案し社会実装を目指す組織として設立した「次世代インフラ創生センター」では、「古河電工グループ ビジョン2030」を具現化するため、安全・安心・快適で地球環境にやさしい社会基盤を創生すること、さらには社会的受容性のあるコストで社会基盤=スマートコミュニティを実現することを目指して、パートナーの皆様と共創しながら活動を推進しております。
以上、当該事業に係る研究開発費は11,333百万円であります。
(2)電装エレクトロニクス
①自動車用ワイヤハーネスについては、車両軽量化への要請を背景としたアルミ電線のさらなる適用部位拡大やCASE(Connected:つながる化、Autonomous:自動運転、Shared&Services:シェアリング、Electric:電動化)対応への関連技術の開発を行っております。②自動車用バッテリ状態検知センサについては、過充電抑制での燃費向上及び過放電によるバッテリ上がり防止などへの貢献が期待されており、拡販及び受注活動とともに、高機能化に向けた開発を行っております。また、今後予測される車載電子機器の増加や自動車の電動化に対して、電源品質を維持する電源マネジメントシステムに関連した製品の開発を行っております。
③パルス方式により複数の対象物を分離して正確に認識可能な車載用の24GHz帯周辺監視レーダの量産を行っております。さらに性能を向上させ、様々な車種の安全運転支援システムへの適用を検討しております。また、建機・農機等向け周辺監視レーダの量産開始も予定されております。今後、建機・農機等の無人化にも貢献できる周辺監視レーダの開発を進めてまいります。
④新しいワイヤレス電力伝送方法として期待される電界共振結合方式を用いて、世界で初めて4.7kWの電力を伝送することに成功しました。本方式は、軽量かつ金属異物を加熱しないという特徴を有しており、次世代の電動小型モビリティ、ロボット、無人搬送車などへのワイヤレス給電の適用を想定しております。今後は、窒化ガリウム(GaN)パワーデバイス開発の経験を活かし、さらなる小型・軽量化と大電力・高効率化により、モビリティの電動化に貢献してまいります。
⑤カーボンナノチューブ(CNT)電線開発技術については、NEDOの委託事業と環境省の補助事業を実施しております。NEDO「超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト」では、先端素材高速開発技術研究組合(ADMAT)の一員として、産業技術総合研究所とともに計算・計測・プロセスの三位一体でCNT電気電導シミュレーション開発を行いました。環境省「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」では、CNT電線を用いた100W超級のモーター試作に成功、車載適用によるCO2削減効果を実証確認し、本補助事業を成功させました。NEDO事業は次年度へ継続となり、引き続きCNT電線の実用化に向けた開発を進めてまいります。
⑥シミュレーション技術及び分析技術を有効活用し、研究開発の効率化を推進しております。ワイヤハーネスなどの自動車用部品の変形・応力シミュレーション、電子機器開発においては振動・熱流体シミュレーション、レーダ開発においては電磁界シミュレーションを活用したほか、車載ソフト用のアルゴリズム構築に際してのモデルベース開発などを行いました。また、CNTなどの新材料に対しては、第一原理計算を用いた材料特性予測や先端電子顕微鏡を活用しております。Furukawa Electric Institute of Technology Ltd.(ハンガリー)では、先進的なシミュレーション技術開発に取り組んでおり、車載バッテリの環境負荷を加味した基礎シミュレーションの構築やCNT生成プロセスを評価するための化学反応シミュレーションを実施しました。引き続き、シミュレーション技術及び分析技術を活用し、メカニズム解明や設計の最適化に加え、試作代替による環境負荷低減への取組みを推進してまいります。
⑦電子機器における小型化・大容量化に伴う接続部品(コネクタ、端子等)の多極化・高密度化、発熱の制御、自動車の電動化や車載電子機器の増加に伴う電装品(ワイヤハーネス等)の高電圧化・大電流化へ対応できる、高強度・高導電な銅合金及び貴金属めっきの開発を行っております。
以上、当該事業に係る研究開発費は5,046百万円であります。
(3)機能製品
①植物由来のセルロース繊維の高剛性・軽量性という特長を活かし、自動車分野など様々な用途での活用が期待されるセルロース強化樹脂の高効率製造法の開発を行い、その実用化に向けた検証を行っております。また、昨今のプラスチックごみ問題に対応すべく、リサイクルされていない使い捨てプラスチックパッケージと古紙でセルロース繊維強化樹脂を製造し、そのセルロース繊維強化樹脂を使用した製品の製造・販売を行っております。さらに、古紙の代わりに使用済みの家具・建材などの木質系廃棄物を使用したセルロース繊維強化樹脂の開発にも成功しました。引き続き、国内外の行政機関、プラスチック業界及びリサイクル業界と連携し、本技術の普及を進め、地球環境の改善に貢献してまいります。②ヒートシンク・ヒートパイプを活用した熱マネジメント(均熱・熱輸送・熱交換)技術により、データセンタ、スマートフォン、太陽光発電システム、鉄道、自動車などの情報/エネルギー/モビリティ分野の製品の薄型化・軽量化を可能とする研究開発を進めております。エレクトロニクス機器の薄型化、軽量化、高発熱化に対応する製品や次世代自動車への搭載に向けた製品の開発を行っております。
③通信ネットワークの高速化、高周波数化に対応するインフラ用大型高速サーバー・ルーター向けのプリント基板の需要が高まっております。従来、FV-WSやFZ-WSなどを代表とする高周波基板用銅箔を供給してまいりましたが、さらなる高速化に対応した次世代高周波基板用銅箔を開発しました。今後、高周波基板用銅箔の製品群を拡充し、高速通信ネットワークの需要に対応してまいります。
以上、当該事業に係る研究開発費は2,180百万円であります。
(4)サービス・開発等
①研究子会社であるSuperPower Inc.(米国)において、イットリウム系高温超電導線材の研究開発を継続しております。この高温超電導線材と当社製金属系超電導線材とを併せ用いることにより、次世代エネルギー源と期待される核融合炉、新素材や先端医薬の開発に欠かせない高磁場マグネットなど、各方面への応用が期待されます。また、顧客の旺盛な需要に応えるため、現工場の近隣地区に新工場を建設し、2020年夏に移転後再稼働・増産体制の構築を予定しております。②オープン・イノベーションによる新事業創出を目的に2017年9月に営業部門と研究部門の連携組織として設立した先行開発センターでは、VOC(Voice Of Customer)から顧客ニーズを捉え迅速にコンセプトサンプルを作製し、新たな価値を提案する活動を推進しております。同センターでは、新事業の創出に繋げるべく、エネルギーインフラ・モビリティインフラ・ヘルスケア分野などにおいて、当社の技術を活かした実証実験を行っております。
③2018年8月に、米国カリフォルニア州のシリコンバレーに開設したSilicon Valley Innovation Laboratories, Furukawa Electric(SVIL)では、「古河電工グループ ビジョン2030」の実現に繋がる新技術を獲得することを目的として、スタートアップ企業とのオープン・イノベーションを積極的に推進しております。シリコンバレーを拠点とするアクセラレータや自動車技術協議会などが主催するイベントを通じて、スタートアップ企業情報や最新の技術動向を調査し、実証実験を実施しております。
以上、当該事業に係る研究開発費は3,089百万円であります。
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