有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100IYF1 (EDINETへの外部リンク)
住友電気工業株式会社 研究開発活動 (2020年3月期)
当社及び連結子会社は経営理念に「技術を創造し、変革を生み出し、絶えざる成長に努めます」とありますように、社会の変革・伸長分野に焦点を合わせ、オリジナリティがありかつ収益力のある新事業・新製品の開発に努めております。また、将来の技術ニーズを踏まえ、当社グループの次代の成長を担う研究テーマの発掘・育成にも積極的に取り組んでおります。
自動車関連事業、情報通信関連事業、エレクトロニクス関連事業、環境エネルギー関連事業、産業素材関連事業他の各事業分野における当連結会計年度の主な成果は以下のとおりであります。
また、当連結会計年度における研究開発費の総額は125,449百万円であります。
(1) 自動車関連事業
ワイヤーハーネス及び車載エレクトロニクス機器については、当社、住友電装㈱及び両社の共同出資による㈱
オートネットワーク技術研究所を中心に、当社固有の材料技術・解析技術を活かして安全・快適・環境のニーズに対応した新製品の開発を行っております。
特に近年のCASEの流れに対応するため体制を強化し、従来の枠にとらわれないコンセプト・企画から技術開発まで一貫して行い、ハーネスをコアとした新事業創出のスピードアップを進めております。
ワイヤーハーネスについては、次世代車載システムにパワー供給や情報伝送するためのハーネスアーキテクチャを構築し、システム設計を行うとともに、それに必要な要素技術の開発を進めております。例えば自動運転等で必要になる高速通信用ハーネスやコネクタ技術の開発を進めております。また市場規模が拡大してきた電気自動車(EV)・ハイブリッド自動車(HEV)用高圧ハーネスやコネクタ、バッテリー内配線モジュールの開発等にも取り組んでおります。
車載エレクトロニクス機器に関しては、パワー系ネットワーク化に対応すべく、電源制御機器や半導体デバイス、情報系ネットワーク対応機器ではゲートウェイ、情報セキュリティ技術などの高速大容量通信に適用可能な次世代車載LAN(Local Area Network)製品の開発を進めております。さらに当社事業であるエネルギーや通信の社会基盤と車が繋がる変革に対応した新製品・新技術の開発にも取り組んでおります。
一方、新製品の開発効率化や高いレベルの品質確保に向け、要素技術開発や信頼性確保に不可欠な試験・分析・評価・解析技術の開発を推進しております。環境試験装置や分析装置等の評価設備の充実を図るとともに、CAE(Computer-Aided Engineering)技術を用いたシミュレーション技術も充実させております。
また、交通インフラ関連では、信号制御アルゴリズム、自動運転支援を含む高度走行支援システムやインフラミリ波レーダの開発を行っております。
住友理工㈱では、CASEを代表とする新たなトレンドに対応した経営資源の最適配分を行う一環として、2020年4月に事業分野別に分かれていた開発センターなどを統合し、新たに「新商品開発センター」を設置し、開発アイテムの優先順位を迅速に見極めることで開発のスピードアップと早期事業化を図ります。また、福岡県糸島市及び九州大学との3者協定に基づき開所した「九州大学ヘルスケアシステムLABO糸島」において医療・介護・日常生活をつなぐ新たな製品やシステム、サービスの創出を目指し、実用化促進に引き続き取り組んでおります。
当事業に係る研究開発費は78,464百万円であります。
(2) 情報通信関連事業
光通信関連製品、通信用デバイス・化合物半導体材料、ネットワーク・システム製品などの分野において、総合的に研究開発を行っております。
光通信関連製品では、光ファイバ通信のさらなる高速化・長距離化に向けて、海底ケーブル用途の低損失低非線形光ファイバの研究開発を進め、生産性と品質のさらなる向上に取り組んでおります。
また、伝送容量の飛躍的な拡大に向けて、1本の光ファイバに複数本のコアを形成するマルチコア型光ファイバの研究開発を進めており、その実用化に不可欠な光増幅や接続技術の開発に取り組んでおります。
一方で、データセンターにおける情報機器内や情報機器間の高速大容量伝送に適した光配線製品を、従来のテレコム光通信で培った技術を応用して開発しております。特に、新型光コネクタや情報機器内の高密度光配線を実現する光部品などの製品開発と市場開拓を進めております。
デバイス関連分野では、光通信用デバイス及び無線通信用電子デバイス関連の新製品をいち早く市場に投入することにより、事業拡大に努めております。
光通信用デバイス関連製品では、データセンター用機器等に搭載される支線系対応製品や、長距離幹線機器に対応したコヒーレント伝送用デバイスを開発しております。無線通信デバイス関連製品では、高効率・高出力のGaN(窒化ガリウム)トランジスタを開発し、携帯基地局用途に製品化しておりますが、第5世代(5G)移動通信システム用にさらなる効率改善、高周波/広帯域化に取り組んでおります。また、これらデバイス技術の蓄積を活かし、多様な分野への応用が期待できる近赤外、中赤外領域の製品開発も進めております。
化合物半導体では、高速通信用の光デバイスや無線通信用電子デバイスなどに用いられるインジウムリン及びガリウムヒ素系エピタキシャルウエハの新製品開発を進めております。また、青紫色レーザダイオード、白色LEDやパワーデバイス等に応用されるGaN基板の高品質化に加え、それら材料からデバイス技術の研究とその応用製品の開発も行っております。
ネットワーク・システム関連分野では、情報通信技術の革新により、安全・安心・快適かつ持続可能な社会の実現を目指した情報通信機器の研究開発を推進しております。
有線通信システム関連では、携帯基地局やデータセンターを支える光伝送システムの研究開発に、無線通信システム関連では、携帯基地局向けの高周波増幅器モジュールの開発と第5世代移動通信システム向けの新製品の検討に取り組んでおります。
当事業に係る研究開発費は18,641百万円であります。
(3) エレクトロニクス関連事業
当社固有のマイクロ・ナノテクノロジーをベースに、FPC、電子ワイヤー製品、照射架橋製品、ふっ素樹脂製品など広範な新材料や部品の開発を行っております。FPCでは、携帯機器等向けの次世代微細回路製品や車載向けの高耐熱性電子回路製品、配線部材の開発に取り組んでおります。また、金属材料とセラミックスを複合化した電子デバイス用の低線膨張率の高放熱素材、独自の多孔化技術を適用した半導体用途向けの微細多孔質ふっ素樹脂膜の開発にも注力しております。
当事業に係る研究開発費は3,500百万円であります。
(4) 環境エネルギー関連事業
超電導や次世代送電網の分野でのネットワーク技術を活用したエネルギーソリューション事業など、新しい分野への進出を図るとともに、蓄電池などエネルギー分野での積極的な開発を推進しております。
超電導分野では、ビスマス系高温超電導線材の特性と量産性を大幅に向上させ、世界各国のケーブルプロジェクトやモータ、マグネット用などに線材を納入するなど、商業ベースでの販売本格化を図りつつあります。機械強度を大幅に向上した高強度超電導線材は、超高磁場発生用の超電導マグネットに採用され、30Tを超える磁場発生に貢献しております。
産業応用では超電導マグネットシステムの開発を進めており、磁気特性評価装置への適用、さらに産業界での実用化、用途開拓に注力しているところであります。一方、レアアース系次世代超電導線材の実用化にも取り組んでおります。本線材では超電導接合技術を開発し、理化学研究所他とともに永久電流モード高温超電導コイルの実現と同コイルを用いた核磁気共鳴信号の取得に世界で初めて成功しました。
次世代送電網の分野では、自然エネルギーの導入、省エネルギー、電力網の分散管理といった社会ニーズに対応すべく、レドックスフロー電池(蓄電池)と集光型太陽光発電装置(CPV)について、大規模システムによる実証運転を実施しております。また、分散型電源を統合的に監視し最適な制御を行うためのエネルギーマネジメントシステム、宅内の電力使用量を最適化するシステム(HEMS)、電力線通信(PLC)によるメガソーラー監視装置とAIによる異常診断サービス、家庭用の小型蓄電池やパワーコンディショナ等の開発にも注力しており、販売を開始しております。
HEVなどの環境対応車に多用されるニッケル水素電池の集電体として上市しているニッケル製セルメットを各種燃料電池向けに展開するため、高温耐久性を付与した耐熱セルメットや、耐強酸性を高めた耐食セルメットを開発しております。
一方、蓄電池分野では、リチウムイオン電池やキャパシタなどの蓄電デバイスの高性能化に貢献する集電材料として、当社独自の溶融塩めっき技術を用いた金属多孔体「アルミセルメット」を開発しており、量産化に向けた生産技術開発に注力するとともに、ニーズの調査、顧客での評価を進めております。また、EVやHEV等の環境対応車の分野では、固有の高分子材料の合成技術を駆使し、駆動モータ等に適用する高性能平角巻線の開発にも取り組んでおり、モータの高性能化に貢献する薄肉皮膜で高度な電気絶縁性を発揮する次世代平角巻線の開発に注力しております。
電力ケーブルの技術開発では、長距離直流連系線、再生エネルギー関連の需要伸長に対応すべく、超高圧直流CVケーブル、洋上風力向けケーブルや送電線路の効率的な保守監視を支援するシステム製品を開発しております。
住友電設㈱では、社会や顧客の多様化するニーズに応えるべく、太陽光発電システム用保守監視システム、監視・エネルギー管理等のビル・マネジメントシステム、工場向け統合セキュリティシステム、異常通報装置、超電導冷却システム、バーチャルパワープラント、クラウド活用など、最新技術、情報化技術を活用し、新技術、新工法、各種システムの開発に取り組んでおります。
日新電機㈱では、電力システム改革の進展や環境意識の向上、持続可能な社会に向けた動きに対応すべく、研究開発に取り組んでおります。電力機器分野においては、縮小化及び環境負荷の低減を狙いとした製品開発と共に、太陽光発電をはじめ、多様な分散型電源が導入拡大される社会を支えるための技術研究や製品開発、並びにソ
リューション開発に取り組んでおります。ビーム・真空応用分野では、新たなコーティング薄膜や用途拡大に向けた研究開発、半導体製造用イオン注入装置や電子線照射装置など、社会を支える材料・部品・デバイスの進化に資するべく、技術研究や製品開発に注力しております。また新エネルギー・環境分野においては、太陽光発電の導入などに資するパワーエレクトロニクス応用製品の開発、工場・水処理設備の進化に資する監視制御システム、EMS(エネルギー管理システム)関連やIoT関連の技術研究や製品開発、並びにソリューション開発を進めております。
当事業に係る研究開発費は16,482百万円であります。
(5) 産業素材関連事業他
超硬合金、ダイヤモンド、立方晶窒化硼素、コーティング薄膜、特殊鋼線、鉄系焼結部品やセラミックスに関する当社固有の材料技術とプロセス技術を駆使し、切削用工具や超精密加工用工具、各種自動車機構部品・機能部品、家電部品等の開発を進めております。
切削用工具開発においては、今後、市場が伸長していく航空機分野を重点ターゲットとし、計算科学を活用した硬質合金の開発、コーティング技術開発を進めております。また切削加工のIoT化に向け、切削工具に各種センサを内蔵させたスマートツールの開発にも取り組んでおります。
ダイヤモンドでは、超精密加工や高品位加工用工具素材として使用することを目的として、独自の原料技術や超高圧技術で機械特性を向上させた単結晶ダイヤモンド素材や新材料の開発及び精密金型・航空機部品・医療に用いられる難削材の精密加工技術の開発に注力しております。
焼結部品の関連では、粉末冶金技術の特長である均質性や組成自由度を活かした高強度焼結ギアの開発や、自動車の電動化ニーズに対応し磁気特性と造形性に優れた圧粉軟磁性材料を使った小型・高出力モータの開発に注力しております。
当事業に係る研究開発費は8,362百万円であります。
今後の成長を担う新規分野への挑戦として、水素エネルギー社会を実現する技術開発、ライフサイエンス分野では医療機器及び健康介護の分野向けの製品販売を行っております。また次世代の電線や高強度材料として期待されるカーボンナノチューブの長尺化にも独自製法で取り組んでおります。新しい軽量材料として当社が世界で初めて開発に成功した、アルミ9%と亜鉛1%を添加したマグネシウム合金板材は、国内外の複数の大手パソコンメーカーの筐体での採用が進んでおります。さらに機能を高めた合金開発とその用途開拓も進めております。
そのほか、当社の持つ材料技術を活かして、省エネルギー化のために期待されているSiCパワーデバイスを、結晶(基板)から、エピ、デバイスまで一貫して開発しております。2019年度は、自社基板開発を通じSiC高品質エピ基板の品質をさらに改善し、エピに起因する欠陥の無欠陥領域率を97%、さらには基板起因を含むエピ欠陥の無欠陥領域率を85%にまで高め、量産活動を推進しております。またデバイスについては、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)と協力してつくばに立ち上げた専用6インチ・ラインで製造したSiCトランジスタを販売するとともに、産総研と共同で開発した、世界最小のオン抵抗をもつトランジスタなど次世代デバイスの製品化に向けた開発を行っております。
以上の5分野他の研究開発及びグループ全体の生産、品質などを支える解析技術の分野では、ナノスケールの構造解析や、ポリマーの分子構造解析など、世界トップレベルの分析を行っております。これに加え、九州シンクロトロン光研究センターに当社グループ専用のビームラインを建設し、放射光施設を利用した世界トップ水準の原子スケール解析を実現し、製品開発の加速や知的財産権の強化などに利用しております。また、高速計算機を用いた高度な計算機シミュレーション技術の開発にも注力しており、生産プロセスの改善、革新と多くの製品の信頼性に直結する強度解析、電磁波解析など、各種新製品設計に活用することで他社との差別化につながる解析技術の開発を推進しております。その他、中国・蘇州市に中国解析センターを設置し、当社グループのグローバル展開を支えております。
生産技術分野では、IoTに向けた高度なサービス実現の基盤となる省電力無線センサ技術、AI・データ分析技術を用いた設備故障の予兆診断等の研究にも取り組んでおります。
当社は大阪製作所内の研究本館「WinD Lab」を研究・開発活動の中核とし、海外についても米国カリフォルニア州のICS(Innovation Core SEI)等を拠点として、広い視野で事業の成長を目指します。また、グループ全体として、これらの研究開発の成果を早期に収穫すべく努めるとともに、企業の社会的責任を自覚し、省エネ、省資源、環境保護を一層前進させる研究にも注力してまいります。
自動車関連事業、情報通信関連事業、エレクトロニクス関連事業、環境エネルギー関連事業、産業素材関連事業他の各事業分野における当連結会計年度の主な成果は以下のとおりであります。
また、当連結会計年度における研究開発費の総額は125,449百万円であります。
(1) 自動車関連事業
ワイヤーハーネス及び車載エレクトロニクス機器については、当社、住友電装㈱及び両社の共同出資による㈱
オートネットワーク技術研究所を中心に、当社固有の材料技術・解析技術を活かして安全・快適・環境のニーズに対応した新製品の開発を行っております。
特に近年のCASEの流れに対応するため体制を強化し、従来の枠にとらわれないコンセプト・企画から技術開発まで一貫して行い、ハーネスをコアとした新事業創出のスピードアップを進めております。
ワイヤーハーネスについては、次世代車載システムにパワー供給や情報伝送するためのハーネスアーキテクチャを構築し、システム設計を行うとともに、それに必要な要素技術の開発を進めております。例えば自動運転等で必要になる高速通信用ハーネスやコネクタ技術の開発を進めております。また市場規模が拡大してきた電気自動車(EV)・ハイブリッド自動車(HEV)用高圧ハーネスやコネクタ、バッテリー内配線モジュールの開発等にも取り組んでおります。
車載エレクトロニクス機器に関しては、パワー系ネットワーク化に対応すべく、電源制御機器や半導体デバイス、情報系ネットワーク対応機器ではゲートウェイ、情報セキュリティ技術などの高速大容量通信に適用可能な次世代車載LAN(Local Area Network)製品の開発を進めております。さらに当社事業であるエネルギーや通信の社会基盤と車が繋がる変革に対応した新製品・新技術の開発にも取り組んでおります。
一方、新製品の開発効率化や高いレベルの品質確保に向け、要素技術開発や信頼性確保に不可欠な試験・分析・評価・解析技術の開発を推進しております。環境試験装置や分析装置等の評価設備の充実を図るとともに、CAE(Computer-Aided Engineering)技術を用いたシミュレーション技術も充実させております。
また、交通インフラ関連では、信号制御アルゴリズム、自動運転支援を含む高度走行支援システムやインフラミリ波レーダの開発を行っております。
住友理工㈱では、CASEを代表とする新たなトレンドに対応した経営資源の最適配分を行う一環として、2020年4月に事業分野別に分かれていた開発センターなどを統合し、新たに「新商品開発センター」を設置し、開発アイテムの優先順位を迅速に見極めることで開発のスピードアップと早期事業化を図ります。また、福岡県糸島市及び九州大学との3者協定に基づき開所した「九州大学ヘルスケアシステムLABO糸島」において医療・介護・日常生活をつなぐ新たな製品やシステム、サービスの創出を目指し、実用化促進に引き続き取り組んでおります。
当事業に係る研究開発費は78,464百万円であります。
(2) 情報通信関連事業
光通信関連製品、通信用デバイス・化合物半導体材料、ネットワーク・システム製品などの分野において、総合的に研究開発を行っております。
光通信関連製品では、光ファイバ通信のさらなる高速化・長距離化に向けて、海底ケーブル用途の低損失低非線形光ファイバの研究開発を進め、生産性と品質のさらなる向上に取り組んでおります。
また、伝送容量の飛躍的な拡大に向けて、1本の光ファイバに複数本のコアを形成するマルチコア型光ファイバの研究開発を進めており、その実用化に不可欠な光増幅や接続技術の開発に取り組んでおります。
一方で、データセンターにおける情報機器内や情報機器間の高速大容量伝送に適した光配線製品を、従来のテレコム光通信で培った技術を応用して開発しております。特に、新型光コネクタや情報機器内の高密度光配線を実現する光部品などの製品開発と市場開拓を進めております。
デバイス関連分野では、光通信用デバイス及び無線通信用電子デバイス関連の新製品をいち早く市場に投入することにより、事業拡大に努めております。
光通信用デバイス関連製品では、データセンター用機器等に搭載される支線系対応製品や、長距離幹線機器に対応したコヒーレント伝送用デバイスを開発しております。無線通信デバイス関連製品では、高効率・高出力のGaN(窒化ガリウム)トランジスタを開発し、携帯基地局用途に製品化しておりますが、第5世代(5G)移動通信システム用にさらなる効率改善、高周波/広帯域化に取り組んでおります。また、これらデバイス技術の蓄積を活かし、多様な分野への応用が期待できる近赤外、中赤外領域の製品開発も進めております。
化合物半導体では、高速通信用の光デバイスや無線通信用電子デバイスなどに用いられるインジウムリン及びガリウムヒ素系エピタキシャルウエハの新製品開発を進めております。また、青紫色レーザダイオード、白色LEDやパワーデバイス等に応用されるGaN基板の高品質化に加え、それら材料からデバイス技術の研究とその応用製品の開発も行っております。
ネットワーク・システム関連分野では、情報通信技術の革新により、安全・安心・快適かつ持続可能な社会の実現を目指した情報通信機器の研究開発を推進しております。
有線通信システム関連では、携帯基地局やデータセンターを支える光伝送システムの研究開発に、無線通信システム関連では、携帯基地局向けの高周波増幅器モジュールの開発と第5世代移動通信システム向けの新製品の検討に取り組んでおります。
当事業に係る研究開発費は18,641百万円であります。
(3) エレクトロニクス関連事業
当社固有のマイクロ・ナノテクノロジーをベースに、FPC、電子ワイヤー製品、照射架橋製品、ふっ素樹脂製品など広範な新材料や部品の開発を行っております。FPCでは、携帯機器等向けの次世代微細回路製品や車載向けの高耐熱性電子回路製品、配線部材の開発に取り組んでおります。また、金属材料とセラミックスを複合化した電子デバイス用の低線膨張率の高放熱素材、独自の多孔化技術を適用した半導体用途向けの微細多孔質ふっ素樹脂膜の開発にも注力しております。
当事業に係る研究開発費は3,500百万円であります。
(4) 環境エネルギー関連事業
超電導や次世代送電網の分野でのネットワーク技術を活用したエネルギーソリューション事業など、新しい分野への進出を図るとともに、蓄電池などエネルギー分野での積極的な開発を推進しております。
超電導分野では、ビスマス系高温超電導線材の特性と量産性を大幅に向上させ、世界各国のケーブルプロジェクトやモータ、マグネット用などに線材を納入するなど、商業ベースでの販売本格化を図りつつあります。機械強度を大幅に向上した高強度超電導線材は、超高磁場発生用の超電導マグネットに採用され、30Tを超える磁場発生に貢献しております。
産業応用では超電導マグネットシステムの開発を進めており、磁気特性評価装置への適用、さらに産業界での実用化、用途開拓に注力しているところであります。一方、レアアース系次世代超電導線材の実用化にも取り組んでおります。本線材では超電導接合技術を開発し、理化学研究所他とともに永久電流モード高温超電導コイルの実現と同コイルを用いた核磁気共鳴信号の取得に世界で初めて成功しました。
次世代送電網の分野では、自然エネルギーの導入、省エネルギー、電力網の分散管理といった社会ニーズに対応すべく、レドックスフロー電池(蓄電池)と集光型太陽光発電装置(CPV)について、大規模システムによる実証運転を実施しております。また、分散型電源を統合的に監視し最適な制御を行うためのエネルギーマネジメントシステム、宅内の電力使用量を最適化するシステム(HEMS)、電力線通信(PLC)によるメガソーラー監視装置とAIによる異常診断サービス、家庭用の小型蓄電池やパワーコンディショナ等の開発にも注力しており、販売を開始しております。
HEVなどの環境対応車に多用されるニッケル水素電池の集電体として上市しているニッケル製セルメットを各種燃料電池向けに展開するため、高温耐久性を付与した耐熱セルメットや、耐強酸性を高めた耐食セルメットを開発しております。
一方、蓄電池分野では、リチウムイオン電池やキャパシタなどの蓄電デバイスの高性能化に貢献する集電材料として、当社独自の溶融塩めっき技術を用いた金属多孔体「アルミセルメット」を開発しており、量産化に向けた生産技術開発に注力するとともに、ニーズの調査、顧客での評価を進めております。また、EVやHEV等の環境対応車の分野では、固有の高分子材料の合成技術を駆使し、駆動モータ等に適用する高性能平角巻線の開発にも取り組んでおり、モータの高性能化に貢献する薄肉皮膜で高度な電気絶縁性を発揮する次世代平角巻線の開発に注力しております。
電力ケーブルの技術開発では、長距離直流連系線、再生エネルギー関連の需要伸長に対応すべく、超高圧直流CVケーブル、洋上風力向けケーブルや送電線路の効率的な保守監視を支援するシステム製品を開発しております。
住友電設㈱では、社会や顧客の多様化するニーズに応えるべく、太陽光発電システム用保守監視システム、監視・エネルギー管理等のビル・マネジメントシステム、工場向け統合セキュリティシステム、異常通報装置、超電導冷却システム、バーチャルパワープラント、クラウド活用など、最新技術、情報化技術を活用し、新技術、新工法、各種システムの開発に取り組んでおります。
日新電機㈱では、電力システム改革の進展や環境意識の向上、持続可能な社会に向けた動きに対応すべく、研究開発に取り組んでおります。電力機器分野においては、縮小化及び環境負荷の低減を狙いとした製品開発と共に、太陽光発電をはじめ、多様な分散型電源が導入拡大される社会を支えるための技術研究や製品開発、並びにソ
リューション開発に取り組んでおります。ビーム・真空応用分野では、新たなコーティング薄膜や用途拡大に向けた研究開発、半導体製造用イオン注入装置や電子線照射装置など、社会を支える材料・部品・デバイスの進化に資するべく、技術研究や製品開発に注力しております。また新エネルギー・環境分野においては、太陽光発電の導入などに資するパワーエレクトロニクス応用製品の開発、工場・水処理設備の進化に資する監視制御システム、EMS(エネルギー管理システム)関連やIoT関連の技術研究や製品開発、並びにソリューション開発を進めております。
当事業に係る研究開発費は16,482百万円であります。
(5) 産業素材関連事業他
超硬合金、ダイヤモンド、立方晶窒化硼素、コーティング薄膜、特殊鋼線、鉄系焼結部品やセラミックスに関する当社固有の材料技術とプロセス技術を駆使し、切削用工具や超精密加工用工具、各種自動車機構部品・機能部品、家電部品等の開発を進めております。
切削用工具開発においては、今後、市場が伸長していく航空機分野を重点ターゲットとし、計算科学を活用した硬質合金の開発、コーティング技術開発を進めております。また切削加工のIoT化に向け、切削工具に各種センサを内蔵させたスマートツールの開発にも取り組んでおります。
ダイヤモンドでは、超精密加工や高品位加工用工具素材として使用することを目的として、独自の原料技術や超高圧技術で機械特性を向上させた単結晶ダイヤモンド素材や新材料の開発及び精密金型・航空機部品・医療に用いられる難削材の精密加工技術の開発に注力しております。
焼結部品の関連では、粉末冶金技術の特長である均質性や組成自由度を活かした高強度焼結ギアの開発や、自動車の電動化ニーズに対応し磁気特性と造形性に優れた圧粉軟磁性材料を使った小型・高出力モータの開発に注力しております。
当事業に係る研究開発費は8,362百万円であります。
今後の成長を担う新規分野への挑戦として、水素エネルギー社会を実現する技術開発、ライフサイエンス分野では医療機器及び健康介護の分野向けの製品販売を行っております。また次世代の電線や高強度材料として期待されるカーボンナノチューブの長尺化にも独自製法で取り組んでおります。新しい軽量材料として当社が世界で初めて開発に成功した、アルミ9%と亜鉛1%を添加したマグネシウム合金板材は、国内外の複数の大手パソコンメーカーの筐体での採用が進んでおります。さらに機能を高めた合金開発とその用途開拓も進めております。
そのほか、当社の持つ材料技術を活かして、省エネルギー化のために期待されているSiCパワーデバイスを、結晶(基板)から、エピ、デバイスまで一貫して開発しております。2019年度は、自社基板開発を通じSiC高品質エピ基板の品質をさらに改善し、エピに起因する欠陥の無欠陥領域率を97%、さらには基板起因を含むエピ欠陥の無欠陥領域率を85%にまで高め、量産活動を推進しております。またデバイスについては、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)と協力してつくばに立ち上げた専用6インチ・ラインで製造したSiCトランジスタを販売するとともに、産総研と共同で開発した、世界最小のオン抵抗をもつトランジスタなど次世代デバイスの製品化に向けた開発を行っております。
以上の5分野他の研究開発及びグループ全体の生産、品質などを支える解析技術の分野では、ナノスケールの構造解析や、ポリマーの分子構造解析など、世界トップレベルの分析を行っております。これに加え、九州シンクロトロン光研究センターに当社グループ専用のビームラインを建設し、放射光施設を利用した世界トップ水準の原子スケール解析を実現し、製品開発の加速や知的財産権の強化などに利用しております。また、高速計算機を用いた高度な計算機シミュレーション技術の開発にも注力しており、生産プロセスの改善、革新と多くの製品の信頼性に直結する強度解析、電磁波解析など、各種新製品設計に活用することで他社との差別化につながる解析技術の開発を推進しております。その他、中国・蘇州市に中国解析センターを設置し、当社グループのグローバル展開を支えております。
生産技術分野では、IoTに向けた高度なサービス実現の基盤となる省電力無線センサ技術、AI・データ分析技術を用いた設備故障の予兆診断等の研究にも取り組んでおります。
当社は大阪製作所内の研究本館「WinD Lab」を研究・開発活動の中核とし、海外についても米国カリフォルニア州のICS(Innovation Core SEI)等を拠点として、広い視野で事業の成長を目指します。また、グループ全体として、これらの研究開発の成果を早期に収穫すべく努めるとともに、企業の社会的責任を自覚し、省エネ、省資源、環境保護を一層前進させる研究にも注力してまいります。
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