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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100LTOE (EDINETへの外部リンク)

有価証券報告書抜粋 日揮ホールディングス株式会社 研究開発活動 (2021年3月期)


事業等のリスクメニュー株式の総数等


中期経営計画「Beyond the Horizon」の最終年度に当たる当連結会計年度は、差別化技術に基づいたビジネス開発を推進してきました。重点戦略を環境問題の解決を通じて持続可能な社会の実現に貢献する①低炭素・脱炭素化分野、②資源循環分野、③バイオ分野とし、資源、環境、ライフサイエンス、新エネルギー、ものづくりの各分野に注力してきました。その結果、プロジェクト受注や技術ライセンス供与などの実績をあげるとともに、成長分野における将来のビジネスの核となる技術の早期獲得を目的とした産官学の連携による開発を促進することができました。なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、7,742百万円(消費税等は含まない)です。

① 総合エンジニアリング事業

設計・調達・建設(EPC)ビジネス分野
現地セキュリティや自然環境が厳しい地域や労働者の確保が困難な地域等、建設工事の遂行が困難な地域におけるプロジェクトが増加傾向にある中で、当社グループは大型Module工法の採用や、プロジェクト遂行の効率性向上のためにAWP(Advanced Work Packaging)による工事管理の採用などを実践していますが、さらなる新しい工法(ロボット化、自動化、3Dプリンター導入、小型Module工法、リモート化など)、要素技術の導入(新素材、設計にAIやBIM導入など)、EPC全領域でAWP採用拡大などに挑戦し続けそれらを実装することで、熟練労働者不足、不安定な現場生産性、スケジュール遅延などのプロジェクトリスクを低減することを狙っています。同時にこれらの挑戦が競争力強化につながると考え全社的な活動を展開しています。

IT/DX関連
1. EPC効率向上を目指して行っているもの
(1) プロットプラン自動化Auto Plot PATHFINDERTM
プラント全体の配置図であるプロットプランの設計は、プラントの運転・メンテナンスのし易さ、安全性の確保、環境保全はもちろんのこと、建設コストを決定付ける最も重要なものとして位置付けられています。従って複雑な制約条件のもとで様々な要求を最適化するという大変難しい技術が必要であり、従来、経験豊富なシニア技術者の感覚に頼る部分が大きい領域でしたが、ITグランドプラン2030でAI設計イノベーションを掲げる中で、プロットプラン設計を自動化するAuto Plot PATHFINDERTMを開発しました。Auto Plot PATHFINDERTMによる設計は、形式知化・コード化されたシニア技術とAIによるユニット分割をもとにしたユニット単位・機器単位の自動配置、位置確定などエンジニアによる指示取込み、最適配置のステップで行われます。Auto Plot PATHFINDERTMにより、多数のプロットプラン案を超短時間で作成することが可能になり、人間が思いつかないものを含む多くの提案が瞬時にできることから、新しい提案型設計 (Generative Design)へ変革し、基本設計の段階から顧客の検討に貢献できると考えております。
(2) Data Centric EPC遂行、AWP
Data Centric EPC遂行は、従来の人の手を介した図書ベースの情報交換に代え、ICT技術を最大活用したデータ中心の効率の良い情報交換とタイムリーな意思決定を図ることを目指した新たなプロジェクト遂行手法であり、プロジェクト遂行におけるリスクを低減させ品質・コスト・納期それぞれの要素を向上させることが期待されています。当社におけるData Centric EPC開発では、設計・調達・建設の作業対象となるタグを一元管理し、そのタグのデータをデータソースとなるシステムから集約し、またそのデータを活用するシステムへ連携する仕組みを構築しています。AWPは、Data Centric EPC遂行の仕組みを活用した一例であり、対象作業の開始を制限する可能性がある先行作業の特定とモニタリングが可能となります。現在、建設工事への実装に続き、設計・調達業務との連携と効果波及を目指してAWP管理の拡大を進めています。また、当社では、Data Centric EPC遂行とAWPの統合を主軸に置き、EPC全体におけるデジタルトランスフォーメーション (EPC DX) にも取り組んでまいります。

2. 顧客によるオペレーション&メンテナンス(O&M)業務の面からの要求に応えるもの
(1) アセットインフォメーションマネジメント(IM)
アセットインフォメーションは、当社グループが遂行したプラントの完成・引き渡し後に顧客がスムーズに運転・保全に移行し、安定したプラント操業を維持するために重要な情報となります。設計・調達・建設(EPC)の各フェーズの中で生成されるプラントを構成する各種のアセットのインフォメーションに関し、一貫性をもって管理・統合する手法を構築し、社内標準化を進めることでインフォメーションの精度を飛躍的に向上させるとともに、データハンドオーバーの国際業界標準規格である「CFIHOS」に準拠したインフォメーションマネジメント遂行を実現しています。
これにより顧客のスムーズな操業への移行を可能とするとともに、アセットやプラントのO&Mコストの低減という付加価値を提供し、顧客の事業価値向上に貢献しています。
(2) 保全サービスINTEGNANCE®
当社グループは、プラントの設備診断業務を強力に支援する設備管理システム(A-MISTM)の販売・運用を行ってきました。また、このシステムを包含する、情報プラットフォームを構築し、業務の効率化と付加価値創造を目的とした統合型スマート保全サービス(INTEGNANCE®)の事業化を進めています。プラントの予知保全と定期修理計画の立案を保全戦略支援サービスとして提供するほか、モバイル端末タブレットやスマートフォンを活用した作業状況の電子化とタイムリーな情報共有による工事進捗管理を行っています。2020年4月から、日揮株式会社内に新たにデジタルイノベーション室(DI室)を設立し、保全部門とも連携したINTEGNANCE®構想並びにデジタル技術を活用したソリューションを提案、実装することで顧客の課題解決への貢献を目指しています。

天然ガス分野
昨今、温室効果ガスの一つである二酸化炭素(CO2)の排出量削減が求められていますが、当社グループではCO2の排出抑制→分離回収→有効利用・貯留→資源再生というカーボンマネジメント・サイクルの各要素で技術・知見を継続して積み上げています。
CO2-EORにおいては、原油とともに随伴されるCO2を有効に活用するために、当社グループは特殊なゼオライト膜で効率的にCO2を分離回収することを可能とする技術を開発し、米国テキサス州で実証試験を実施しています。本技術とともにカーボンマネジメント・サイクルの知見と合わせて、産油ガス国/企業向けにCO2に関する課題解決に向けたトータルソリューションを提供しています。
さらに、「尼国Gundihガス田におけるCCSプロジェクトのJCM実証に向けた調査」として、現在、大気放散されているCO2を近郊の圧入井までパイプライン輸送して、地下に圧入・貯留するCCS実証プロジェクトの詳細計画を策定しています。本ガス田におけるCCSプロジェクトを実証フェーズに移行させるため、我が国の先進的な技術の適用可能性及びJCM(二国間クレジット)方法論を検討しています。本プロジェクトが実現すれば、東南アジア初のCCS実証プロジェクトとなり、アジア地域におけるCCS事業のモデルになるものと期待しています。
また、既設LNGプラント関連のAI・IoTビジネスとして、運転ビッグデータ解析及び気象解析を通じて得られた知見を基に制御方法改善によるLNG増産サービスを海外顧客向けに展開しています。LNG生産量減退の要因となるHot Air Recirculationに対しFoggingを適用しLNG増産に繋げた試みの他、昨年に引き続き、マレーシア国営石油会社(ペトロナス社)向けにHot Air Recirculationの予測モデルを開発、本モデルを操業と連携させ増産するシステムを構築、運用中です。増産量を正確に把握するため、機械学習やシミュレータを利用したデジタルツインの開発も行っています。また、その他複数社のLNGプラントオーナー向けに、月次で運転ビッグデータ解析から解析結果・改善案を提供するサブスクリプション型サービスをLNG3 Envisionとして提供しています。

オフショア分野
世界には未開発の中小規模海洋ガス田が多数存在し、効率的な開発手段が期待されています。その最有力候補が、当社グループが世界有数の建造実績を持つ洋上LNGプラント(FLNG)です。
FLNGは、現地ガス消費市場規模に限界のある、またセキュリティ・環境問題を抱えるような地域での陸上パイプラインガス、並びに操業中の洋上石油生産設備で大量に生産される随伴ガスなどの現金化ソリューションでもあります。また、当連結会計年度は、海洋石油・ガス開発分野において、低炭素化・脱炭素化に代表されるSDGs達成に向けたソリューションへのニーズの高まりを受け、当社グループは、社会と顧客の課題に応えるべく、以下4点に取り組んできました。

1. 現在遂行中の2件のFLNGの設計、調達、建設、据付、試運転(EPCIC)プロジェクトの経験を活かし、低価格・短納期型FLNGコンセプトを開発中です。(2020年度国土交通省・海洋資源開発関連技術高度化研究開発事業テーマとして採択)
2. 浮体式海洋石油生産・貯蔵・出荷設備上で効率的に高濃度CO2を分離し、海底への再注入を目指す、CO2を分離回 収するゼオライト膜(前述)の顧客指定条件によるラボ試験並びに経済性検討(既存別技術との比較)を実施しています。(2020年日本財団オーシャンイノベーションプロジェクト Phase 2として採択)
3. 洋上生産設備の遠隔・無人操業の実現に向けて、現状の洋上での機能・業務・組織を分析し、自動化・省力化・遠隔操作に関連するデジタルテクノロジーの調査・検討を進めています。
4. 低炭素化FLNGや、ゼロエミッション燃料として期待されるアンモニアの洋上設備(Floatingブルーアンモニア)の開発方針策定にあたっての予備調査を実施しました。

低炭素・脱炭素化分野
温室効果ガス排出量削減に向けた取り組みとして、当社ではCO2フリー燃料の導入促進やカーボンリサイクル、及び、EMS(エネルギーマネジメントシステム)の観点で研究開発を行っています。
CO2フリー燃料としてCO2フリーアンモニアが着目されており、2020年代半ばの日本でのCO2フリーアンモニアの商業実装に向けた検討が進められています。当社グループは、2014~2018年度に実施した内閣府による戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)のエネルギーキャリアプロジェクトの成果を活用し、再生可能エネルギーや化石資源からのCO2フリーアンモニアの製造・供給の社会実装を目指して、様々な案件のフィージビリティスタディに参画するとともに、CO2フリーアンモニアのより効率的な製造方法やコストダウンに向けた研究開発を行っています。特に変動する再生可能エネルギー由来のCO2フリーアンモニア製造について、従来にはないダイナミックな変動型アンモニア合成システムを開発しています。
当連結会計年度の具体的な取り組みとしては、住友商事株式会社が豪州クイーンズランド州のグラッドストンで計画中の水素製造・販売プロジェクトにおける、水素製造プラントの基本設計役務が挙げられます。本プロジェクトでは、太陽光由来の電力を主電源として、水の電気分解装置から水素を製造、現地で販売し、地産地消型の水素コミュニティの構築を検討するものです。今般基本設計を行う初期の水素製造プラントでは、年間250-300トンの水素製造を予定しています。初期プラントで水素製造実証を行うとともに、同地域での需要開発を進め、地産地消型の水素事業の可能性を検討します。
また、カーボンリサイクル技術の一つとして、化石燃料等の利用により排出されるCO2の固定化技術の開発を目的として、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の研究開発委託事業として、以下2件が採択され、二酸化炭素を炭酸塩として固定化する技術の開発を行っています。「廃コンクリートなど産業廃棄物中のカルシウム等を用いた加速炭酸塩化プロセスの研究開発」では、廃コンクリート等カルシウムを多く含む産業廃棄物から原料となるカルシウムを抽出し、廃ガス中のCO2と反応させて固定化させるプロセスの実用化と普及を目指した技術開発を行います。また、カルシウム分の抽出と炭酸塩化の効率を高めるため、加速炭酸塩化技術について試験・評価を実施するとともに、プロセス全体の最適化を図りながら技術を確立させ、CO2削減効果を評価していきます。

「海水および廃かん水を用いた有価物併産CO2固定化技術の研究開発」では、火力発電所などから排出されるCO2を、海水及び海水淡水化プラントの廃水である「廃かん水」に含まれるマグネシウムと反応させることで、炭酸マグネシウムとして固定化し、コンクリート製品の骨材などの部材として有効利用するまでの一連の技術の開発に取り組みます。資源として豊富に存在する海水や廃かん水を活用することで、供給安定性を実現するだけでなく、マグネシウムを抽出する過程で副生される各種イオン物質(カルシウム、ナトリウム、カリウムなど)を軟水、石膏、芒硝、食塩、塩酸、肥料といった工業製品として併産することによる収益性への貢献を期待しています。
電気を蓄えることが可能な蓄電池は、太陽光などの再生可能エネルギーと併用することで、昼間に発電して蓄えた電気を夜に使うなど、全体として効率的な運用が可能となります。当社グループは、EMS(エネルギーマネジメントシステム)やVPP(Virtual Power Plant)のリソースとして、最適な蓄電池を提供することで、再生可能エネルギーの出力安定化、需給調整、災害対策などに貢献します。大規模蓄エネルギーは、再生可能エネルギー電源などを用いて発電された電力を貯蔵し、需要が急増する夕方以降に集中して供給するなどの大規模な調整を可能にするシステムです。当社グループは蓄電の性能を向上させることで、季節による電力需要の変動などにも対応する大規模ユニットの開発を目指しています。一方で、気象条件によって出力が左右される再生可能エネルギーの導入が進んだ結果、出力変動や余剰電力の発生といった、電力系統に影響を及ぼす課題が顕在化しており、電力系統の安定化を低コストで実現する技術に対するニーズが高まっています。当社グループは、蓄電池、工場設備などからの余剰電力を集めて、再生可能エネルギーの出力変動に応じて適切に配分を行う仮想発電所としての役割を果たすVPPの開発にも取り組んでいます。

資源循環分野
当社グループは、荏原環境プラント株式会社と宇部興産株式会社からEUP(Ebara Ube Process)に関する技術供与、昭和電工株式会社から量産化技術の供与と運転支援を受け、廃プラスチックのリサイクル推進に向けて、①廃プラスチックのガス化設備並びにガス化設備から製造される合成ガスを用いた化学品製造設備の提案、②廃プラスチックを原料とする水素製造装置の提案、及び、③廃プラスチックリサイクルを実現するためのバリューチェーン構築を行っています。具体的な事例としては、韓国初となる廃プラスチックガス化リサイクルプラントの実現に向けた事業化調査業務を実施しています。本プロジェクトは、韓国における十数カ所の廃プラスチック選別施設から、リサイクルが困難な混合フィルムや選別残渣のプラスチックを収集し、EUPを活用した廃プラスチックガス化リサイクルを実現するプラント(日量数百トン規模)の建設に係る事業化調査を実施するものです。
また、航空業界においては、運航時のCO2排出量の削減が喫緊の課題であり、産業廃棄物などから製造される持続可能な航空燃料であるSAF(Sustainable Aviation Fuel)の開発・安定供給への期待が高まっています。当社グループは、使用済み食用油や廃プラスチックなどを用いたSAF製造に関して、製造体制の確立とバリューチェーンの構築に向けて検討を行っています。具体的な事例としては、日本航空株式会社、丸紅株式会社、ENEOS株式会社、大成建設株式会社、株式会社タケエイと共同で、廃棄プラスチックを含む産業廃棄物・一般廃棄物等からSAFを日本で製造・販売することについての事業性調査を実施しています。本調査では、米国の代替航空燃料製造企業の技術を活用し、現在リサイクルできず、国内で焼却処理されている中・低品位の廃棄プラスチックを含む産業廃棄物や一般廃棄物を原料とする「国産」代替航空燃料の製造・販売に関わるサプライチェーン構築に向けた事業性評価を行います。さらに、株式会社レボインターナショナル及びコスモ石油株式会社と共同で、使用済み食用油を原料としたSAFの国内におけるサプライチェーン構築に向けた事業化検討を実施しています。現在、国内におけるSAFの製造体制の確立とサプライチェーンの構築に向けて、原料となる使用済み食用油の調達計画、欧米等で商業実績のある技術を適用した製造プロセスの導入、製造設備のコスト積算、製品輸送・販売スキーム等を中心に具体的なサプライチェーンの構築に向けた検討を進めています。また、利用者である航空会社、航空機燃料供給に関わる関係省庁等との連携強化も進めており、これらの取り組みを通じて最終的には2025年頃を目標とするSAF製造設備の稼働及び本格商業化に向けた事業計画を具現化させていく予定です。


バイオ分野
バイオLNGとは、有機廃棄物のメタン発酵により発生させたバイオガスを液化させることで得られる持続可能なバイオ燃料です。化石燃料由来の従来のLNGと比較してCO2をLCA(ライフサイクルアセスメント)ベースで約80%削減できることから、特に船舶燃料の脱炭素化に向けた切り札としても注目されています。当社グループは、バイオLNGの経済的な製造プロセスの確立に加え、バリューチェーンの構築に向けた検討を行っています。
さらに、CO2削減やサステイナビリティなどの観点から、バイオマスを原料とする化学品や燃料の社会的需要が高まっています。当社グループでは、CO2の削減効果が高く、かつ食料と競合しない非可食バイオマス原料を効率的にバイオエタノールやバイオプラスチック等の原料に転換するための技術開発を進めています。また、現在は石油から製造されている1,3-ブタジエン(主にタイヤの原料となる製品)をバイオマス由来のエタノールやブタンジオールから製造する技術の開発を化学会社と共同で進めています。

ライフサイエンス分野
医薬品業界では、これまでの低分子合成医薬品に加え中分子合成医薬品、バイオ医薬品を主体とする高分子医薬品、再生医療等製品の開発が増加傾向であり、製造が複雑な医薬品や活性の強い医薬品が増え、付加価値の高い医薬品が開発されています。これに対し、合成医薬品製造に関しては、高薬理活性物質の製造に適用するための封じ込め技術等に加え、これまでの多くの実績に基づく封じ込め測定結果の設計への反映、中分子医薬品製造に関する独自技術の設備開発など、多角的な面から技術開発を進めています。また、医薬品業界の注目度が高まっている原薬及び製剤の連続生産に関し、独自の連続技術開発を進めています。バイオ医薬品製造に関しては、マイクロバブル発生技術に高性能撹拌技術を付加したバイオリアクター開発、バイオ医薬品連続生産に向けた技術開発等を進めています。再生医療等製品に関しては、再生医療関連施設の多くの建設実績を踏まえ、細胞・組織培養環境基準の構築、再生医療関連要素技術の高度化を進めています。固形製剤、無菌製剤製造工場ではロボット活用による無人(塵)化の実現、スマート工場化の開発を進めています。このような研究開発活動の成果として、当社グループが建設するプラント・施設への導入事例も増えており、当社グループの技術差別化に繋がっています。
さらに、病院分野では、カンボジアでの病院経営、日本国内でのPFI事業における病院運営で得た医療、経営、運営の知見をもとに施設設計との融合を図るとともに、ICTの活用により利便性、効率性を高め、より高い機能性とホスピタリティを持つ病院づくりを進めています。また、BIM(Building Information Modeling)をさらに進め、プロジェクト遂行の効率化を図るとともに、より高いレベルでの設計技術の構築を進めています。

原子力分野
当社グループは、原子力発電所及び再処理工場の廃止措置に係るプロジェクトマネジメントのサービス提供と廃棄物処理関連技術の開発を進めています。このうち、原子力発電所の廃止措置について、発電所内に貯蔵されている放射線量の高い使用済イオン交換樹脂を安全、かつ安定的に貯蔵するための分解技術の実用化に目処が得られつつあります。また、分解されたイオン交換樹脂を含む、多種・多様な放射性廃棄物への適用を目指し、閉じ込め性能の高い固型化技術の開発を進めています。さらに、再処理工場を含む様々な原子力施設の廃止措置を対象に、長期間にわたる廃止措置プロジェクトを安全、かつ効率的に実施するためのマネジメント支援システムを開発中です。
国内外で注目されている小型モジュール炉(SMR)をはじめとする次世代原子炉技術については、米国NuScale社が開発している炉型を中心に海外で開発中の技術や原子力に係る国内の議論を踏まえつつ、将来的に事業展開を進めること等を視野に検討を進めています。


洋上風力発電
国内の洋上風力発電は、港湾区域に続いて一般海域の促進区域におけるプロジェクトが動き出そうとしています。今後、洋上風力発電は毎年複数案件が継続的に開発される見通しであり、当社グループも主力EPCプレーヤーを目指し、事業性検討や基本設計などの早い段階から継続して関与しながら将来のEPC遂行を目指しています。また、浮体式洋上風力に関しては、事業のフィージビリティスタディや、国の浮体式実証設備の撤去にも参画しており、将来成長が期待されている浮体式へのノウハウと実績を蓄積することによって、技術力・競争力の強化を図りながら、プロジェクト全体コストの最適化を目指しています。

なお、当事業での研究開発費は5,122百万円(消費税等は含まない)です。

② 機能材製造事業

石油精製分野
国内石油精製会社では、エネルギー供給構造高度化法の施行や地球環境保護に向けた燃料油需要構造変化を踏まえ、ガソリン留分から軽油やジェット燃料といった中間留分、ナフサやアロマといった化学原料を中心とする石化シフトへの生産体制の転換や更なるボトムレス化が進められています。当社グループは、こうした動きに対応する高いボトム分解能を有し、石化型運転に対応できる流動接触分解触媒の開発・実証化や付加価値の高いプロピレン収率アップ用アディティブの国内外への展開を図っています。また多様化する顧客ニーズに適合した触媒開発の迅速化や効率化を目的に、蓄積した試作データや性能データを構築した触媒設計シミュレータに取り込み、各種触媒の改良や新触媒の提案に活用しています。
一方、世界全体ではCOVID-19の影響で一時的な影響はあるものの、アジアを中心に低硫黄分の燃料油需要は増加が見込まれています。そのため、残油流動接触分解装置の前処理や船舶燃料油硫黄規制に対応する高性能の残油水素化脱硫触媒やVGO脱硫触媒が求められています。当社グループが新たに開発した脱硫触媒は、国内で採用され良好な結果が得られており、今後海外展開についても進める計画です。また、国内石油精製会社の研究所と共同開発した水素化分解触媒及び海外石油精製会社と共同開発した水素化分解触媒は、共に採用された製油所で高性能を発揮しており、継続採用や他製油所への展開を目指しています。

石油化学分野
汎用ケミカル製品は中国をはじめとする新興国での生産が進み、市場競争が激しくなっています。国内ケミカルメーカーは生産性の高いプロセスや高付加値製品へのシフトを進めています。当社グループは、新規プロセスに対応する触媒や高活性、高選択性の触媒を顧客に提供するため、コア技術のブラッシュアップに努めながら、研究開発・工業化に取り組んでいます。一方、ケミカル触媒素材と調製技術及び評価技術を活用して、新規プロパー触媒や吸着剤開発にも取り組んでおり、従前から開発に取り組んできた硫化カルボニル吸着剤は顧客評価も良好で、化学メーカーや石油精製会社での採用が拡大しています。また、塩素吸着剤や新規ニッケル系水素化触媒などプロパー触媒、吸着剤開発などに加え、ケミカルリサイクル用触媒開発についても積極的に取組を開始しました。

環境保全分野
環境保全分野では、国内の石炭火力発電用の脱硝触媒に一定の取り換え需要があるものの、CO2削減のためバイオマス混焼や専焼発電への動きが進んでいます。バイオマスを用いた発電はバイオマス中のアルカリ成分が脱硝触媒を被毒するため、当社グループは劣化を抑制する脱硝触媒の開発を行い、実証試験を行っています。また、ごみ焼却場の脱硝処理用途として、200℃以下での低温脱硝触媒のニーズが高まっており、低温での活性向上を図るため、触媒活性成分素材から新規低温脱硝触媒開発にも注力しています。

クリーンエネルギー分野
温暖化ガス排出抑制に向け定置型水素燃料電池や再生エネルギーの拡大が進んでいます。当社グループは、都市ガス水素燃料電池向けに既に吸着型脱硫剤を実商化していますが、さらに効率的でコンパクトな水素化脱硫剤の開発にも取り組んでおり、実験室レベルの検討から実商化に向けた工業化試験段階に進捗しています。また、再生可能エネルギーの一つである独立電源に用いられる低照度光発電用材料が顧客での実証試験段階に入りました。


生活関連・化粧品分野
プラスチック眼鏡レンズは高屈折率化によるレンズ厚の薄肉化が進んでいます。大手眼鏡メーカーの高屈折レンズ用ハードコート膜に採用された当社グループの高屈折率酸化物粒子は、顧客の世界展開に一部遅れはあるものの着実に採用に向けた動きが進んでいます。より耐光性と高屈折率を両立する粒子の開発にも取り組んでおり、プラスチックレンズの高屈折率化のニーズに対応しています。また、高屈折率酸化物粒子の多用途展開にも着手し、新しい光学電子デバイス向けの顧客評価が進んでいます。
化粧品やサニタリー分野では、海洋汚染問題となっているマイクロプラスチックビーズを環境負荷の小さな材料に代える検討が進行しています。プラスチックビーズの代替としてシリカ材は、既にスクラブ材に採用され、化粧品への採用の検討も進んでいます。プラスチックビーズの感触に近い新たなシリカ製品も開発し、サンプル展開に着手しました。また、EUナノ材料規制に適合する紫外線防止材の開発など、環境と人に貢献する化粧品材料開発に取り組んでいます。

電子材料分野
高速通信やデジタル化の流れにより、デバイスの高記憶容量、高速化ニーズは拡大していくと見込まれています。当社グループは、この高記憶容量化に向けた研磨面品質と研磨効率を両立したハードディスク用研磨砥粒の改良検討に継続して取り組んでいます。また、高速通信用として低誘電率、高誘電率材料開発にも取り組み、顧客評価が進んでいます。半導体製造研磨用途では微細化・多層化に伴い、低欠陥かつ高研磨速度の研磨砥粒が求められています。当社グループ独自の無機複合型研磨砥粒や異形状シリカ砥粒の開発が進捗し、顧客の採用に向けた評価も始まっています。
光学フィルム用機能性光学材料では、高画質テレビの視認性向上のための反射防止フィルム用途で低屈折率粒子が採用されていますが、液晶テレビでは汎用化に伴い反射防止ニーズも低下しています。一方、高画質を訴求する有機ELテレビ用途では低反射防止ニーズは強く、当社グループはより低屈折率な粒子の開発・工業化に取り組んでいます。また、車載用に搭載される液晶ディスプレイ用途に向けた光学ナノ粒子開発など、新しい用途開拓にも取り組んでいきます。

ファインセラミックス分野
ハイブリッド車、電気自動車、太陽光発電、LEDなどの高出力化や省エネルギーを達成するために、パワー半導体の高性能化が進んでいますが、同時に絶縁放熱基板への要求が厳しくなってきています。その要求に応えるため、当社グループは、産業技術総合研究所と共同開発した独自の製造方法により世界最高レベルの放熱性・信頼性をもつ「高熱伝導窒化ケイ素基板」の開発並びに事業化を推進してきました。既に新量産工場を立ち上げ、製品の品質及び生産効率向上を実現しながら、更なる高性能品開発にも取り組んでいます。
通信分野においては、自動運転やIoTの普及に欠かせない5Gの本格導入が目前に迫っており、今後データ量の増大に伴い光通信回線の大容量化・高速化が求められています。当社グループは、最先端の光通信技術に対応できる薄膜回路基板の性能・信頼性向上等の開発・製造・販売を行っています。
今後成長が期待される再生医療分野においては、最先端の骨再生材料について東北大学等との共同研究を継続しています。その他、当社グループ独自のセラミックス材料技術と高精度加工技術により、補助人工心臓用部品や「はやぶさ2」などの宇宙衛星用部品など先端分野で使用される製品の開発や新材料の開発に大学や各研究機関などと連携して取り組んでいます。

なお、当事業での研究開発費は2,582百万円(消費税等は含まない)です。

また、総合エンジニアリング事業及び機能材製造事業に加え、その他の事業において37百万円(消費税等は含まない)の研究開発費を計上しております。

事業等のリスク株式の総数等


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