有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100LJZ3 (EDINETへの外部リンク)
株式会社アイシン 事業等のリスク (2021年3月期)
当社グループでは、グループ主要4社の取締役社長が参画する「リスクマネジメント委員会」において、企業経営に重大な影響を及ぼす様々なリスクを洗い出し、グループ各社が連携してリスクマネジメント体制の強化やリスク対応力の向上に努めています。また、経営会議においては、事業・投資リスクの多面的な検討を行っています。
当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性のあるリスクのうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあると考えられる主な事項を以下に記載しています。なお、以下は当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載した以外にも投資家の判断に影響を及ぼす事項が発生する可能性があります。また、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1) 社会的課題への対応
当社グループは、自動車部品関連、住生活・エネルギー関連などの事業領域で多様な製品・サービスを提供していますが、国際社会で持続可能な社会を目指す動きが加速する中で、気候変動、資源枯渇、環境汚染、事故・災害など将来予想される社会課題に対する意識の高まりは、市場動向や顧客ニーズに変化をもたらす可能性があります。こうした事業環境の変化に適切に対応できない場合、競争力や企業価値の低下などにより、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、“移動”に感動を、未来に笑顔を届けるため、社会課題を解決するソリューションを提供し、安心・快適な“移動”を実現することで、ステークホルダーの皆さまからパートナーと呼ばれる企業グループをめざし、持続可能な社会の実現に貢献する企業行動の実践を推進しています。このような価値観・取り組みは、2016年1月に発効した国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」と親和性が高く、今後も、事業活動を通じ、SDGsの達成に貢献できると考えています。これらの活動を加速していくため、当社グループとして注力していく7つのマテリアリティ(優先課題)に対し、KPI(重要業績評価指標)と2030年度目標を設定し、社長を議長としたサステナビリティ会議にて当社グループの取り組みを議論しています。今後もステークホルダーの皆さまに積極的に情報発信するよう努めていきます。
(2) 経済状況
当社グループの連結売上収益のうち、重要な部分を占める自動車関連製品の需要は、当社グループが製品を販売している国又は地域の経済状況の影響を受けます。したがって、日本、北米、欧州、中国、タイ、インドネシア、インドなど当社グループの主要市場における経済や景気及びそれに伴う自動車需要の縮小は、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
こうしたリスクに対処するために、当社グループでは、グローバルでの経済状況の変化や自動車需要の動向を常に注視するとともに、需要変動に対応した柔軟な生産体制づくりの推進やリーンな企業体質への変革を進めています。リーンな企業体質に向けては、市場の激しい変化に耐えうるよう、固定費の削減を徹底して進め、「スクラップ&ビルド」「分社経営からグループ経営」をキーワードに、事業、組織、業務のそれぞれにおいて改革を進めています。また、デジタルトランスフォーメーションへの取り組みを加速し、あらゆる業務プロセスの革新を実現するデジタル経営基盤を確立するとともに、グループ全体視点で保有資産・経営資源の有効活用を進め、さらなる企業価値の向上をはかっていきます。
(3) 為替レートの変動
当社グループは、海外連結子会社の財務諸表を連結財務諸表作成のため円貨換算しており、現地通貨建ての項目は、現地通貨における価値に変動がない場合も、換算時の為替レートにより円貨換算後の価値が影響を受ける可能性があります。また、当社グループが行う外貨建取引から生ずる費用・収益及び外貨建債権・債務の円換算額は、為替レートの変動の影響を受ける場合があり、当社グループが日本で生産し、輸出する取引における他の通貨に対する円高は、当社グループ製品のグローバルベースでの相対的な価格競争力を低下させるなど、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、通貨別に為替リスクを測定したうえでヘッジ効果とヘッジコストを勘案し、許容可能な為替リスク量まで為替リスクを軽減するため、資金事務手続規定におけるデリバティブ取扱要領に従い、為替予約、通貨スワップ、通貨オプションを利用してヘッジをしています。
(4) 金融市況の変動
株式市況の低迷等により当社グループの保有する株式等の価値変動が生じ、当社グループの財政状態や経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは純投資目的での株式は保有していませんが、当社グループの企業価値を中長期的に維持・向上させることを目的とする政策保有株式を保有しています。政策保有株式については、毎年の取締役会で保有の適否を判断しており、中長期的な企業価値の維持・向上に資すると認められない株式がある場合は、縮減を検討します。
また、市場の金利状況により、資金運用・資金調達の受取・支払利息が増減し、当社グループの経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、資産と負債の統合管理をはかるとともに、金利スワップ等により金利変動によるリスクを軽減するための対策を講じています。
当社グループの確定給付制度債務の算出において前提条件とした割引率・制度資産などについて、金融市況の悪化により、実際の結果が前提条件よりも低下・減少することで当社グループの確定給付制度債務が増加するなど、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、企業年金の積立金の運用が、従業員の安定的な資産形成に加えて自らの財政状態にも影響を与えることを踏まえ、運用にあたる適切な資質を持った人材の計画的な登用・配置などの人事面や運営面における取り組みにより、企業年金が運用の専門性を高めてアセットオーナーとして期待される機能を発揮できるよう努めています。また、政府の規制や人材戦略・人事制度を踏まえ、適宜制度の見直しを検討、実施しています。
(5) 原材料や部品の調達
当社グループは、製品の製造に必要な原材料や部品を複数のグループ外供給元から調達しています。これらのグループ外供給元とは、取引基本契約を結び、安定的な取引を行っていますが、需要の急激な変化や供給元が災害等により被災するなど供給能力の制約により、当社グループの生産に必要な量を確保することが困難となった場合、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループが調達している原材料や部品の価格が高騰し、内部努力や販売価格への転嫁などにより影響を吸収できない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、得意先への製品の継続的な供給と急激な需給変動の要請に応えられるよう、供給元とのコミュニケーションを強化するとともに、供給元と一体になった新材料・新工法開発や徹底的なムダ排除を観点とした工程改善による原価低減活動を積極的に推進することなどにより、確実な納期の確保、安定的かつ柔軟な供給体制の構築、最適な価格の維持に努めています。また、安定的な生産や調達活動に影響を及ぼす自然災害や火災などへの対応として、平時から災害に備えるとともに、サプライチェーン情報管理システムを整備するなど有事の際の迅速な初動・復旧を確実に実行できるよう取り組んでいます。
(6) 得意先への依存
当社グループの連結売上収益の大部分を占める自動車部品事業は、世界の主要自動車メーカーを得意先としています。当社グループの業績は、各自動車メーカーの業績や販売・生産動向の変動など当社グループが管理できない要因により影響を受ける可能性があります。また、当社グループの連結売上収益に占めるトヨタグループに対する連結売上収益の割合は、当連結会計年度において60.7%を占めており、トヨタグループの事業戦略や購買政策等は、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、これまで培ってきた専門性の高い技術をベースとして、電動化や自動運転をはじめとするCASE領域を中心とした社会課題の解決に貢献するソリューション型商品の開発や世界のどの地域でも高品質な製品を生産できるグローバル生産体制の整備を推進し、新興国での新たな需要の発掘や世界中の自動車メーカーへの拡販活動を強化しています。
(7) 価格競争
当社グループの連結売上収益の大部分を占める自動車部品事業におけるグローバルでの価格競争は、大変厳しいものとなっています。得意先からの価格引き下げ要請や、新しい競合先の台頭や既存の競合先間の提携などにより、価格競争力や製品の優位性が維持できない場合には、当社グループ製品に対する需要の低下及び製品価格の低下を通じて、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、高い技術開発力、圧倒的なものづくり力、グループの総合力により、高品質で高い付加価値を有する自動車関連製品をグローバルで供給し続けることで優位性を確保するとともに、事業環境を見極めたグローバルでの効率的な事業体制の構築やグローバルベストを活かした生産性向上・原単位改革による商品競争力・低コスト競争力の強化など既存事業の更なる競争力向上に取り組んでいます。
(8) 新商品開発
当社グループは、新しい価値を提供し豊かな社会づくりに貢献できるよう、未来を見据えた新商品開発に努めています。今後も、環境・燃費、安全・安心、快適・利便を追求した独創的な魅力ある新商品を開発できると考えていますが、最先端の新商品開発と販売のプロセスは、その性質から複雑かつ不確実なものであり、以下をはじめとする様々なリスクが含まれます。
①新商品や新技術への投資に必要な資金と資源を、今後十分充当できる保証はありません。
②長期的な投資と大量の資源投入が、成功する新商品又は新技術の創造へつながる保証はありません。
③当社グループが市場からの支持を獲得できる新商品又は新技術を正確に予想できるとは限らず、またこれらの商品の販売が成功する保証はありません。
④新たに開発した商品又は技術が、独自の知的財産権として保護される保証はありません。
⑤技術の急速な進歩と市場ニーズの変化により、当社グループの商品が時代遅れになる可能性があります。
⑥現在開発中の新技術の商品化遅れにより、市場の需要についていけなくなる可能性があります。
上記のリスクをはじめとして、当社グループが業界と市場の変化を十分に予測できず、魅力ある新商品のタイムリーな開発と市場への投入ができない場合には、将来の成長と収益性を低下させ、財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、持続的な成長と持続可能な社会の実現に向け、CASE領域を中心とした社会課題の解決に貢献するソリューション型商品の拡充に取り組んでいます。電動駆動ユニットや駐車支援システムなど、商品ラインアップの拡充に向けて、競争力が弱く、成長が望めない商品への開発リソーセスをCASE領域へシフトするとともに、デジタル開発による効率化をはかり、商品開発を加速していきます。また、あらゆる領域で自前主義にこだわらずパートナーとの技術連携を積極的に取り入れ、新規事業の開拓も加速していきます。
さらに、当社グループは、CASEに対応する企業構造への変革を進めており、電動駆動モジュールの開発・拡販強化に向け、株式会社デンソーと合弁で株式会社BluE Nexus(ブルーイーネクサス)を2019年4月に設立するとともに、自動運転や車両運動制御等に必要な統合制御ソフトウェアの開発を行うJ-QuAD DYNAMICSを当社、株式会社アドヴィックス、株式会社ジェイテクト、株式会社デンソーの4社で2019年4月に設立するなど、CASE領域での開発、販売、生産体制の強化にも積極的に取り組んでいます。
(9) 海外事業展開
当社グループは、世界の主要自動車メーカーの近くで多様なニーズに対応し、高い付加価値を有する製品を開発、提供できるよう、グローバルな供給体制を構築しています。当社グループが事業を展開している国又は地域における事業運営には以下のようなリスクが内在しており、これらの事象が発生した場合には当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
①予期しえない法律・規制、不利な影響を及ぼす租税制度の変更
②社会的共通資本(インフラ)が未整備なことによる当社グループの活動への悪影響
③不利な政治的又は経済的要因の発生
④人材の採用と確保の難しさ
⑤テロ、戦争、疾病その他の要因による社会的混乱
当社グループは、国内グループ会社に加え、北中南米、欧州、豪亜、中国、インドを統括する各地域統括本部長が、グループに共通する経営上のリスクと国や地域によって異なるリスクの情報を共有することによって効果的な対策を推進しており、グローバルな視点でリスクマネジメントを強化しています。また、当社グループが事業展開する国又は地域の経済・政治・社会的状況に加えて、事業に関連する各国の環境関連規制、製品の安全性・品質関連規制、輸出入関連規制の情報をタイムリーに収集し、適時適切な対応をとっています。
(10) 事業投資
当社グループは、グローバルでの事業拡大に向け、成長領域や需要の拡大が見込まれる事業への設備投資等の事業投資を行い、更なる企業価値の向上に努めています。しかしながら、投資判断時に想定していなかった水準で、市場環境や経営環境が悪化し、事業計画との乖離等により期待されるキャッシュ・フローが創出できない場合、設備投資により計上した有形固定資産の減損処理などにより、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社連結子会社において経営環境の著しい悪化や収益状況の悪化等が将来にわたって見込まれる場合、繰延税金資産の回収可能性の判断、当社が保有する関係会社株式や当社連結子会社への貸付金の評価などに影響を及ぼす可能性があり、当社、当社連結子会社の財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、事業軸での6つのカンパニーが、グループ全体視点から将来を見据えた開発のさらなる加速や持続的な事業価値の最大化、重点事業課題への対応等を担っており、中長期目線で事業の方向性を示すプレジデント及び統括役員が意思決定を行っています。また、当社グループの中長期の方向性及びグループを含めた意思決定については、取締役会運用基準に則り、取締役会にて審議・決議するとともに経営会議、執行会議、各種機能会議等で、当社グループ各社の業績や重要な投資に対してのモニタリングを実施し、今後の方向性や業績改善のための対策を検討しています。
(11) 製品の品質不具合
当社グループは、お客様に高い品質を確保した商品を提供するため、厳格な品質管理体制や品質管理基準に従い、グローバルで各種製品を製造しています。しかしながら、すべての製品について品質不具合がなく、将来にリコールが発生しないという保証はありません。また、製造物責任賠償については保険に加入していますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような製品の品質不具合は、多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を与え、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、徹底したTQM(Total Quality Management 総合的品質管理)活動を続け、開発から生産にいたるまで、厳格な品質保証体制を構築しています。企画、製品設計、生産準備から量産にいたる各段階において節目管理を実施するとともに、サイマルテニアス・エンジニアリング(SE)活動により製品設計段階から、技術、生産技術、工場、仕入先企業が一体となって品質の向上につなげています。量産にあたっては、「ジャストインタイム」と「自働化」によるトヨタ生産方式に基づいた生産を行なうとともに、各種品質管理手法を用いて工程を維持・管理し、お客様の信頼に応えるものづくりを実践しています。また、仕入先企業に対するリスク評価及びモニタリング、仕入先企業の能力向上に向けた様々な取り組みにより、仕入先企業の品質レベル向上をはかっています。
(12) 災害等による影響
当社グループは、大規模地震、自然災害、火災・爆発等の事故、感染症など災害等の発生により、グループ会社に人的・物的被害が生じるリスクを想定しており、当社グループの工場、又はその周辺地域での大きな事故の発生や、大規模地震、自然災害、感染症の蔓延等による操業停止で、得意先への製品供給に支障をきたした場合、財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。特に当社グループの国内工場や取引先は、中部地区をはじめ国内外に所在しており、これらの地域で大規模な災害等が発生した場合、生産・納入活動が遅延・停止する可能性があります。
また、新型ウイルス等の感染症の発生及び感染拡大による影響が長期化、深刻化した場合、個人消費の低迷、国内外のサプライチェーンの停滞、当社グループの事業活動の停滞など、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
こうしたリスクに対処するために、当社グループ全てを対象としたリスクマネジメント委員会においてリスクの顕在化と未然防止をはかり、危機に強い企業づくりに取り組んでいます。当社グループでは、平時(リスク発生前)から緊急時(リスク発生時)の対応に関する実践要領をまとめた「危機管理ガイド」に基づき、一人ひとりの従業員がリスク発生時に的確な行動をとれるよう教育・啓発活動に取り組み、災害に強い企業づくりをグループ一体となって推進しています。また、地震など大規模災害に備えて、1.「人命・安全」、2.「地域貢献」、3.「生産復旧」を基本方針として、災害発生時の対応力を強化しています。
新型ウイルス等の感染症への対応では、当社グループが事業を展開している国・地域において、現地の政府及び自治体等の指導に沿った対応をしています。また、新型ウイルス等の発生及び感染拡大に対して、当社グループの従業員及びその家族の健康に配慮し、国内外の出張や渡航の制限など管理強化をするとともに、在宅勤務の推奨や、テレビ会議の活用等の感染防止策に取り組むなど、事業への影響を最小限に抑えるよう日々努めています。
(13) 気候変動
当社グループは、「"移動"に感動を、未来に笑顔を。」をアイシングループ経営理念の基本とし、自然と調和し、誰もが安心して暮らせる社会の構築をめざして、2050年カーボンニュートラルの実現など、環境貢献の取り組みを全方位で加速しています。当社グループは、気候変動への対応を注力していくマテリアリティ(優先課題)の1つとして選定し、グループの総力を結集して中長期の削減シナリオづくりや生産技術の確立を進め、排出量低減に努めています。また、2019年11月にTCFDに賛同し、TCFD提言に沿ったシナリオ分析の実施により、リスクと機会を明確にし、企業の強靭性を開示しています。
脱炭素社会への移行リスクとして、炭素税導入や再生可能エネルギーへの代替などに伴う製造コストの増加や、市場・顧客ニーズに適切に対応できず競争力や企業価値の低下につながる可能性があります。また、物理的リスクとして、局地的な暴風雨や干ばつなど異常気象の深刻化により、当社グループの生産オペレーションやサプライチェーンに悪影響を及ぼし、生産能力の低下や製品供給の遅延といった事態を引き起こす可能性があります。
当社グループは、気候変動をリスクとしてだけではなく、機会としても捉え、事業活動を通じて気候変動に関する社会課題を解決してくことをめざしています。当社グループは、脱炭素社会への移行リスクに対処するため、CO₂削減に寄与する電動化商品の売上高比率を2030年には50%以上とする目標を掲げ、電動化商品の商品ラインアップの拡充に向けた開発の加速や電動化商品の拡販に向けた世界各地域での生産体制の強化に取り組んでいます。また、エネルギー関連商品の需要拡大に向けて、事業の柱であるエネファームの新モデルを2020年4月から市場投入するなど、CO₂削減に貢献するクリーンエネルギー関連商品の開発・販売に取り組んでいます。物理的リスクへの対応としては、上記、「(5)原材料や部品の調達」、「(12)災害等による影響」に記載のとおり、サプライチェーンに対するリスクマネジメントの強化などに取り組んでいます。
(14) 知的財産権
当社グループは、他社製品と差別化をはかるため、独自の技術とノウハウ等を蓄積し知的財産を適切に保護するとともに、第三者の知的財産権侵害のリスク軽減に努めています。しかし、特定の国及び地域においては、法的要件により、知的財産の完全な保護が不可能又は限定的にしか保護されない可能性があります。また、保有する知的財産権が無効となる可能性があります。そのため、第三者による当社グループの知的財産権の不正使用あるいは権利侵害を防ぐための手段が有効に機能しない可能性があります。
また、当社グループの製品は広範囲にわたる技術を利用しているため、将来的に知的財産権を侵害したとして第三者から訴訟を提起されることにより訴訟費用が発生する可能性があります。
こうしたリスクに対処するために、当社グループでは、知的財産管理の専門部署を設け、関係部門と連携して、特許をはじめとする各種知的財産権により技術と知的財産の保護を行うとともに特許調査等を行い第三者の知的財産権の侵害予防に努めています。
(15) 情報セキュリティ
当社グループでは、日々巧妙化するサイバー攻撃等の脅威や「会社情報」「得意先・お客様情報」等の情報漏洩から守る事は、リスク管理上の重要課題と捉え、情報セキュリティの強化に取り組んでいます。しかしながら、サイバー攻撃を含む意図的な行為や過失等により、情報システム等に障害が生じる場合や、機密情報及び個人情報が外部に流出する可能性があります。また、サプライチェーン等の事業活動が一時的に中断する可能性があります。このような事象が発生した場合、当社グループの事業活動の停滞や社会的信用の低下等により、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、「アイシングループ情報セキュリティ基本方針」を基本に、お客様や取引先からお預かりした、又は当社グループが保有する事業活動に関わる情報資産は、当社グループの重要な資産であるとの認識に立ち、組織的かつ継続的に情報セキュリティ対策に取り組んでいます。また、アイシングループ全体のサイバー攻撃や内部不正等のリスクから企業を守るため、2020年4月よりアイシングループ全体のコーポレートセキュリティガバナンスを強化しました。CDO(Chief Digital Officer)やセキュリティ専門組織であるGA-CSC(Global AISIN-Corporate Security Center)を任命・設置し、GA-CSCではアイシングループ全体からセキュリティ関連情報の収集・展開とインシデント対応を行い、早期検知と迅速な対応に努めています。
(16) コンプライアンス
当社グループは、事業活動を遂行するうえで、コンプライアンスを基本においていますが、規制当局による措置その他の法的手続きに関するリスクを有しています。これらのリスクにより、当社グループに対して損害賠償請求や規制当局による金銭的な賦課を課され、又は事業の遂行に関する制約が加えられる可能性があります。また、社会情勢の変化、価値観や働き方などの多様化に伴い、ハラスメント等のリスクが増加する可能性があります。当社グループが重大なコンプライアンス違反を起こした場合は、当社グループの社会的信用の失墜による事業への悪影響などにより、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、グループ全役職員の行動規範となる「アイシングループ企業行動倫理憲章」及びその具体的な行動基準となる「社会的責任を踏まえた行動指針」を策定しています。また、コンプライアンスに関わる方針・体制を決める会議体として、「企業行動倫理委員会」を設置しています。グループ主要4社の取締役社長と担当役員が、法令遵守を含むコンプライアンスの活動状況を確認すると共に、次年度の活動方針、重点活動分野(独占禁止法、腐敗防止、ハラスメントなど)を承認しています。さらに、コンプライアンス活動を推進するのはあくまで人であると考え、各種教育活動を継続的に行い、従業員一人ひとりのコンプライアンス意識向上に努めています。
当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性のあるリスクのうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあると考えられる主な事項を以下に記載しています。なお、以下は当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載した以外にも投資家の判断に影響を及ぼす事項が発生する可能性があります。また、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1) 社会的課題への対応
当社グループは、自動車部品関連、住生活・エネルギー関連などの事業領域で多様な製品・サービスを提供していますが、国際社会で持続可能な社会を目指す動きが加速する中で、気候変動、資源枯渇、環境汚染、事故・災害など将来予想される社会課題に対する意識の高まりは、市場動向や顧客ニーズに変化をもたらす可能性があります。こうした事業環境の変化に適切に対応できない場合、競争力や企業価値の低下などにより、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、“移動”に感動を、未来に笑顔を届けるため、社会課題を解決するソリューションを提供し、安心・快適な“移動”を実現することで、ステークホルダーの皆さまからパートナーと呼ばれる企業グループをめざし、持続可能な社会の実現に貢献する企業行動の実践を推進しています。このような価値観・取り組みは、2016年1月に発効した国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」と親和性が高く、今後も、事業活動を通じ、SDGsの達成に貢献できると考えています。これらの活動を加速していくため、当社グループとして注力していく7つのマテリアリティ(優先課題)に対し、KPI(重要業績評価指標)と2030年度目標を設定し、社長を議長としたサステナビリティ会議にて当社グループの取り組みを議論しています。今後もステークホルダーの皆さまに積極的に情報発信するよう努めていきます。
(2) 経済状況
当社グループの連結売上収益のうち、重要な部分を占める自動車関連製品の需要は、当社グループが製品を販売している国又は地域の経済状況の影響を受けます。したがって、日本、北米、欧州、中国、タイ、インドネシア、インドなど当社グループの主要市場における経済や景気及びそれに伴う自動車需要の縮小は、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
こうしたリスクに対処するために、当社グループでは、グローバルでの経済状況の変化や自動車需要の動向を常に注視するとともに、需要変動に対応した柔軟な生産体制づくりの推進やリーンな企業体質への変革を進めています。リーンな企業体質に向けては、市場の激しい変化に耐えうるよう、固定費の削減を徹底して進め、「スクラップ&ビルド」「分社経営からグループ経営」をキーワードに、事業、組織、業務のそれぞれにおいて改革を進めています。また、デジタルトランスフォーメーションへの取り組みを加速し、あらゆる業務プロセスの革新を実現するデジタル経営基盤を確立するとともに、グループ全体視点で保有資産・経営資源の有効活用を進め、さらなる企業価値の向上をはかっていきます。
(3) 為替レートの変動
当社グループは、海外連結子会社の財務諸表を連結財務諸表作成のため円貨換算しており、現地通貨建ての項目は、現地通貨における価値に変動がない場合も、換算時の為替レートにより円貨換算後の価値が影響を受ける可能性があります。また、当社グループが行う外貨建取引から生ずる費用・収益及び外貨建債権・債務の円換算額は、為替レートの変動の影響を受ける場合があり、当社グループが日本で生産し、輸出する取引における他の通貨に対する円高は、当社グループ製品のグローバルベースでの相対的な価格競争力を低下させるなど、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、通貨別に為替リスクを測定したうえでヘッジ効果とヘッジコストを勘案し、許容可能な為替リスク量まで為替リスクを軽減するため、資金事務手続規定におけるデリバティブ取扱要領に従い、為替予約、通貨スワップ、通貨オプションを利用してヘッジをしています。
(4) 金融市況の変動
株式市況の低迷等により当社グループの保有する株式等の価値変動が生じ、当社グループの財政状態や経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは純投資目的での株式は保有していませんが、当社グループの企業価値を中長期的に維持・向上させることを目的とする政策保有株式を保有しています。政策保有株式については、毎年の取締役会で保有の適否を判断しており、中長期的な企業価値の維持・向上に資すると認められない株式がある場合は、縮減を検討します。
また、市場の金利状況により、資金運用・資金調達の受取・支払利息が増減し、当社グループの経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、資産と負債の統合管理をはかるとともに、金利スワップ等により金利変動によるリスクを軽減するための対策を講じています。
当社グループの確定給付制度債務の算出において前提条件とした割引率・制度資産などについて、金融市況の悪化により、実際の結果が前提条件よりも低下・減少することで当社グループの確定給付制度債務が増加するなど、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、企業年金の積立金の運用が、従業員の安定的な資産形成に加えて自らの財政状態にも影響を与えることを踏まえ、運用にあたる適切な資質を持った人材の計画的な登用・配置などの人事面や運営面における取り組みにより、企業年金が運用の専門性を高めてアセットオーナーとして期待される機能を発揮できるよう努めています。また、政府の規制や人材戦略・人事制度を踏まえ、適宜制度の見直しを検討、実施しています。
(5) 原材料や部品の調達
当社グループは、製品の製造に必要な原材料や部品を複数のグループ外供給元から調達しています。これらのグループ外供給元とは、取引基本契約を結び、安定的な取引を行っていますが、需要の急激な変化や供給元が災害等により被災するなど供給能力の制約により、当社グループの生産に必要な量を確保することが困難となった場合、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループが調達している原材料や部品の価格が高騰し、内部努力や販売価格への転嫁などにより影響を吸収できない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、得意先への製品の継続的な供給と急激な需給変動の要請に応えられるよう、供給元とのコミュニケーションを強化するとともに、供給元と一体になった新材料・新工法開発や徹底的なムダ排除を観点とした工程改善による原価低減活動を積極的に推進することなどにより、確実な納期の確保、安定的かつ柔軟な供給体制の構築、最適な価格の維持に努めています。また、安定的な生産や調達活動に影響を及ぼす自然災害や火災などへの対応として、平時から災害に備えるとともに、サプライチェーン情報管理システムを整備するなど有事の際の迅速な初動・復旧を確実に実行できるよう取り組んでいます。
(6) 得意先への依存
当社グループの連結売上収益の大部分を占める自動車部品事業は、世界の主要自動車メーカーを得意先としています。当社グループの業績は、各自動車メーカーの業績や販売・生産動向の変動など当社グループが管理できない要因により影響を受ける可能性があります。また、当社グループの連結売上収益に占めるトヨタグループに対する連結売上収益の割合は、当連結会計年度において60.7%を占めており、トヨタグループの事業戦略や購買政策等は、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、これまで培ってきた専門性の高い技術をベースとして、電動化や自動運転をはじめとするCASE領域を中心とした社会課題の解決に貢献するソリューション型商品の開発や世界のどの地域でも高品質な製品を生産できるグローバル生産体制の整備を推進し、新興国での新たな需要の発掘や世界中の自動車メーカーへの拡販活動を強化しています。
(7) 価格競争
当社グループの連結売上収益の大部分を占める自動車部品事業におけるグローバルでの価格競争は、大変厳しいものとなっています。得意先からの価格引き下げ要請や、新しい競合先の台頭や既存の競合先間の提携などにより、価格競争力や製品の優位性が維持できない場合には、当社グループ製品に対する需要の低下及び製品価格の低下を通じて、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、高い技術開発力、圧倒的なものづくり力、グループの総合力により、高品質で高い付加価値を有する自動車関連製品をグローバルで供給し続けることで優位性を確保するとともに、事業環境を見極めたグローバルでの効率的な事業体制の構築やグローバルベストを活かした生産性向上・原単位改革による商品競争力・低コスト競争力の強化など既存事業の更なる競争力向上に取り組んでいます。
(8) 新商品開発
当社グループは、新しい価値を提供し豊かな社会づくりに貢献できるよう、未来を見据えた新商品開発に努めています。今後も、環境・燃費、安全・安心、快適・利便を追求した独創的な魅力ある新商品を開発できると考えていますが、最先端の新商品開発と販売のプロセスは、その性質から複雑かつ不確実なものであり、以下をはじめとする様々なリスクが含まれます。
①新商品や新技術への投資に必要な資金と資源を、今後十分充当できる保証はありません。
②長期的な投資と大量の資源投入が、成功する新商品又は新技術の創造へつながる保証はありません。
③当社グループが市場からの支持を獲得できる新商品又は新技術を正確に予想できるとは限らず、またこれらの商品の販売が成功する保証はありません。
④新たに開発した商品又は技術が、独自の知的財産権として保護される保証はありません。
⑤技術の急速な進歩と市場ニーズの変化により、当社グループの商品が時代遅れになる可能性があります。
⑥現在開発中の新技術の商品化遅れにより、市場の需要についていけなくなる可能性があります。
上記のリスクをはじめとして、当社グループが業界と市場の変化を十分に予測できず、魅力ある新商品のタイムリーな開発と市場への投入ができない場合には、将来の成長と収益性を低下させ、財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、持続的な成長と持続可能な社会の実現に向け、CASE領域を中心とした社会課題の解決に貢献するソリューション型商品の拡充に取り組んでいます。電動駆動ユニットや駐車支援システムなど、商品ラインアップの拡充に向けて、競争力が弱く、成長が望めない商品への開発リソーセスをCASE領域へシフトするとともに、デジタル開発による効率化をはかり、商品開発を加速していきます。また、あらゆる領域で自前主義にこだわらずパートナーとの技術連携を積極的に取り入れ、新規事業の開拓も加速していきます。
さらに、当社グループは、CASEに対応する企業構造への変革を進めており、電動駆動モジュールの開発・拡販強化に向け、株式会社デンソーと合弁で株式会社BluE Nexus(ブルーイーネクサス)を2019年4月に設立するとともに、自動運転や車両運動制御等に必要な統合制御ソフトウェアの開発を行うJ-QuAD DYNAMICSを当社、株式会社アドヴィックス、株式会社ジェイテクト、株式会社デンソーの4社で2019年4月に設立するなど、CASE領域での開発、販売、生産体制の強化にも積極的に取り組んでいます。
(9) 海外事業展開
当社グループは、世界の主要自動車メーカーの近くで多様なニーズに対応し、高い付加価値を有する製品を開発、提供できるよう、グローバルな供給体制を構築しています。当社グループが事業を展開している国又は地域における事業運営には以下のようなリスクが内在しており、これらの事象が発生した場合には当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
①予期しえない法律・規制、不利な影響を及ぼす租税制度の変更
②社会的共通資本(インフラ)が未整備なことによる当社グループの活動への悪影響
③不利な政治的又は経済的要因の発生
④人材の採用と確保の難しさ
⑤テロ、戦争、疾病その他の要因による社会的混乱
当社グループは、国内グループ会社に加え、北中南米、欧州、豪亜、中国、インドを統括する各地域統括本部長が、グループに共通する経営上のリスクと国や地域によって異なるリスクの情報を共有することによって効果的な対策を推進しており、グローバルな視点でリスクマネジメントを強化しています。また、当社グループが事業展開する国又は地域の経済・政治・社会的状況に加えて、事業に関連する各国の環境関連規制、製品の安全性・品質関連規制、輸出入関連規制の情報をタイムリーに収集し、適時適切な対応をとっています。
(10) 事業投資
当社グループは、グローバルでの事業拡大に向け、成長領域や需要の拡大が見込まれる事業への設備投資等の事業投資を行い、更なる企業価値の向上に努めています。しかしながら、投資判断時に想定していなかった水準で、市場環境や経営環境が悪化し、事業計画との乖離等により期待されるキャッシュ・フローが創出できない場合、設備投資により計上した有形固定資産の減損処理などにより、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社連結子会社において経営環境の著しい悪化や収益状況の悪化等が将来にわたって見込まれる場合、繰延税金資産の回収可能性の判断、当社が保有する関係会社株式や当社連結子会社への貸付金の評価などに影響を及ぼす可能性があり、当社、当社連結子会社の財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、事業軸での6つのカンパニーが、グループ全体視点から将来を見据えた開発のさらなる加速や持続的な事業価値の最大化、重点事業課題への対応等を担っており、中長期目線で事業の方向性を示すプレジデント及び統括役員が意思決定を行っています。また、当社グループの中長期の方向性及びグループを含めた意思決定については、取締役会運用基準に則り、取締役会にて審議・決議するとともに経営会議、執行会議、各種機能会議等で、当社グループ各社の業績や重要な投資に対してのモニタリングを実施し、今後の方向性や業績改善のための対策を検討しています。
(11) 製品の品質不具合
当社グループは、お客様に高い品質を確保した商品を提供するため、厳格な品質管理体制や品質管理基準に従い、グローバルで各種製品を製造しています。しかしながら、すべての製品について品質不具合がなく、将来にリコールが発生しないという保証はありません。また、製造物責任賠償については保険に加入していますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような製品の品質不具合は、多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を与え、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、徹底したTQM(Total Quality Management 総合的品質管理)活動を続け、開発から生産にいたるまで、厳格な品質保証体制を構築しています。企画、製品設計、生産準備から量産にいたる各段階において節目管理を実施するとともに、サイマルテニアス・エンジニアリング(SE)活動により製品設計段階から、技術、生産技術、工場、仕入先企業が一体となって品質の向上につなげています。量産にあたっては、「ジャストインタイム」と「自働化」によるトヨタ生産方式に基づいた生産を行なうとともに、各種品質管理手法を用いて工程を維持・管理し、お客様の信頼に応えるものづくりを実践しています。また、仕入先企業に対するリスク評価及びモニタリング、仕入先企業の能力向上に向けた様々な取り組みにより、仕入先企業の品質レベル向上をはかっています。
(12) 災害等による影響
当社グループは、大規模地震、自然災害、火災・爆発等の事故、感染症など災害等の発生により、グループ会社に人的・物的被害が生じるリスクを想定しており、当社グループの工場、又はその周辺地域での大きな事故の発生や、大規模地震、自然災害、感染症の蔓延等による操業停止で、得意先への製品供給に支障をきたした場合、財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。特に当社グループの国内工場や取引先は、中部地区をはじめ国内外に所在しており、これらの地域で大規模な災害等が発生した場合、生産・納入活動が遅延・停止する可能性があります。
また、新型ウイルス等の感染症の発生及び感染拡大による影響が長期化、深刻化した場合、個人消費の低迷、国内外のサプライチェーンの停滞、当社グループの事業活動の停滞など、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
こうしたリスクに対処するために、当社グループ全てを対象としたリスクマネジメント委員会においてリスクの顕在化と未然防止をはかり、危機に強い企業づくりに取り組んでいます。当社グループでは、平時(リスク発生前)から緊急時(リスク発生時)の対応に関する実践要領をまとめた「危機管理ガイド」に基づき、一人ひとりの従業員がリスク発生時に的確な行動をとれるよう教育・啓発活動に取り組み、災害に強い企業づくりをグループ一体となって推進しています。また、地震など大規模災害に備えて、1.「人命・安全」、2.「地域貢献」、3.「生産復旧」を基本方針として、災害発生時の対応力を強化しています。
新型ウイルス等の感染症への対応では、当社グループが事業を展開している国・地域において、現地の政府及び自治体等の指導に沿った対応をしています。また、新型ウイルス等の発生及び感染拡大に対して、当社グループの従業員及びその家族の健康に配慮し、国内外の出張や渡航の制限など管理強化をするとともに、在宅勤務の推奨や、テレビ会議の活用等の感染防止策に取り組むなど、事業への影響を最小限に抑えるよう日々努めています。
(13) 気候変動
当社グループは、「"移動"に感動を、未来に笑顔を。」をアイシングループ経営理念の基本とし、自然と調和し、誰もが安心して暮らせる社会の構築をめざして、2050年カーボンニュートラルの実現など、環境貢献の取り組みを全方位で加速しています。当社グループは、気候変動への対応を注力していくマテリアリティ(優先課題)の1つとして選定し、グループの総力を結集して中長期の削減シナリオづくりや生産技術の確立を進め、排出量低減に努めています。また、2019年11月にTCFDに賛同し、TCFD提言に沿ったシナリオ分析の実施により、リスクと機会を明確にし、企業の強靭性を開示しています。
脱炭素社会への移行リスクとして、炭素税導入や再生可能エネルギーへの代替などに伴う製造コストの増加や、市場・顧客ニーズに適切に対応できず競争力や企業価値の低下につながる可能性があります。また、物理的リスクとして、局地的な暴風雨や干ばつなど異常気象の深刻化により、当社グループの生産オペレーションやサプライチェーンに悪影響を及ぼし、生産能力の低下や製品供給の遅延といった事態を引き起こす可能性があります。
当社グループは、気候変動をリスクとしてだけではなく、機会としても捉え、事業活動を通じて気候変動に関する社会課題を解決してくことをめざしています。当社グループは、脱炭素社会への移行リスクに対処するため、CO₂削減に寄与する電動化商品の売上高比率を2030年には50%以上とする目標を掲げ、電動化商品の商品ラインアップの拡充に向けた開発の加速や電動化商品の拡販に向けた世界各地域での生産体制の強化に取り組んでいます。また、エネルギー関連商品の需要拡大に向けて、事業の柱であるエネファームの新モデルを2020年4月から市場投入するなど、CO₂削減に貢献するクリーンエネルギー関連商品の開発・販売に取り組んでいます。物理的リスクへの対応としては、上記、「(5)原材料や部品の調達」、「(12)災害等による影響」に記載のとおり、サプライチェーンに対するリスクマネジメントの強化などに取り組んでいます。
(14) 知的財産権
当社グループは、他社製品と差別化をはかるため、独自の技術とノウハウ等を蓄積し知的財産を適切に保護するとともに、第三者の知的財産権侵害のリスク軽減に努めています。しかし、特定の国及び地域においては、法的要件により、知的財産の完全な保護が不可能又は限定的にしか保護されない可能性があります。また、保有する知的財産権が無効となる可能性があります。そのため、第三者による当社グループの知的財産権の不正使用あるいは権利侵害を防ぐための手段が有効に機能しない可能性があります。
また、当社グループの製品は広範囲にわたる技術を利用しているため、将来的に知的財産権を侵害したとして第三者から訴訟を提起されることにより訴訟費用が発生する可能性があります。
こうしたリスクに対処するために、当社グループでは、知的財産管理の専門部署を設け、関係部門と連携して、特許をはじめとする各種知的財産権により技術と知的財産の保護を行うとともに特許調査等を行い第三者の知的財産権の侵害予防に努めています。
(15) 情報セキュリティ
当社グループでは、日々巧妙化するサイバー攻撃等の脅威や「会社情報」「得意先・お客様情報」等の情報漏洩から守る事は、リスク管理上の重要課題と捉え、情報セキュリティの強化に取り組んでいます。しかしながら、サイバー攻撃を含む意図的な行為や過失等により、情報システム等に障害が生じる場合や、機密情報及び個人情報が外部に流出する可能性があります。また、サプライチェーン等の事業活動が一時的に中断する可能性があります。このような事象が発生した場合、当社グループの事業活動の停滞や社会的信用の低下等により、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、「アイシングループ情報セキュリティ基本方針」を基本に、お客様や取引先からお預かりした、又は当社グループが保有する事業活動に関わる情報資産は、当社グループの重要な資産であるとの認識に立ち、組織的かつ継続的に情報セキュリティ対策に取り組んでいます。また、アイシングループ全体のサイバー攻撃や内部不正等のリスクから企業を守るため、2020年4月よりアイシングループ全体のコーポレートセキュリティガバナンスを強化しました。CDO(Chief Digital Officer)やセキュリティ専門組織であるGA-CSC(Global AISIN-Corporate Security Center)を任命・設置し、GA-CSCではアイシングループ全体からセキュリティ関連情報の収集・展開とインシデント対応を行い、早期検知と迅速な対応に努めています。
(16) コンプライアンス
当社グループは、事業活動を遂行するうえで、コンプライアンスを基本においていますが、規制当局による措置その他の法的手続きに関するリスクを有しています。これらのリスクにより、当社グループに対して損害賠償請求や規制当局による金銭的な賦課を課され、又は事業の遂行に関する制約が加えられる可能性があります。また、社会情勢の変化、価値観や働き方などの多様化に伴い、ハラスメント等のリスクが増加する可能性があります。当社グループが重大なコンプライアンス違反を起こした場合は、当社グループの社会的信用の失墜による事業への悪影響などにより、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、グループ全役職員の行動規範となる「アイシングループ企業行動倫理憲章」及びその具体的な行動基準となる「社会的責任を踏まえた行動指針」を策定しています。また、コンプライアンスに関わる方針・体制を決める会議体として、「企業行動倫理委員会」を設置しています。グループ主要4社の取締役社長と担当役員が、法令遵守を含むコンプライアンスの活動状況を確認すると共に、次年度の活動方針、重点活動分野(独占禁止法、腐敗防止、ハラスメントなど)を承認しています。さらに、コンプライアンス活動を推進するのはあくまで人であると考え、各種教育活動を継続的に行い、従業員一人ひとりのコンプライアンス意識向上に努めています。
このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E01593] S100LJZ3)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
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