有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100LOJH (EDINETへの外部リンク)
東急建設株式会社 研究開発活動 (2021年3月期)
セグメントごとの研究開発は次のとおりであります。なお、「建設事業(建築)」及び「建設事業(土木)」の研究開発費は、建設事業共通でかかる費用のため、「建設事業」として記載しております。
[建設事業]
研究開発活動については、社会課題の把握と抽出を行い、SDGs(持続可能な開発目標)において当社が優先して取り組む重要な社会課題のうち、安全で安心・快適なまちづくりへの貢献、技術革新による生産プロセスの効率性向上、省資源・省エネルギーの推進につながる技術の開発を目指します。また、施工品質向上技術、環境技術等受注確保につながる技術の実用化も目指しております。当連結会計年度においては、以下の技術分野に関して、研究開発を進めました。
1.安心安全 ・維持管理技術・災害対策技術(地震、洪水等)・施工自動化システム
2.生産性向上 ・建築構造・省力化技術・通信技術・土壌浄化促進技術・検査支援システム
・ICTロボット技術・シミュレーション技術
3.環境負荷低減 ・脱炭素技術・ZEB(Net Zero Energy Building)・グリーンインフラ
・木材の積極利用技術
更に、大学、公共研究機関及び関連企業との共同研究をはじめとする社外連携を進め、競争的資金の活用等により研究開発の効率を高めております。特に、東京都市大学とは産学連携に関する包括契約を締結しており、2020年度は4テーマの共同研究を実施しました。
当連結会計年度における研究開発費は、1,039百万円であります。
主な研究開発成果は次のとおりであります。
(1)木造建築最高レベルの高遮音二重床システム「SQサイレンス50」(※1)を共同開発
当社、ナイス㈱、淡路技建㈱の3社は、床衝撃音遮断性能の確保が難しいとされてきた木質系建築に適用できる高遮音二重床システム「SQサイレンス50」を共同で開発しました。木質系建築における従来の床の遮音対策には、床を重厚化させることや防振装置などを利用する事例がありましたが、これらの対策は材料費や施工手間の増加によってコストが上昇するのみならず、建物自重の増加によって耐震性に影響を及ぼす可能性もあるため、必ずしも有効な対策とは言えませんでした。本システムは木製床板の振動特性に着目した遮音機構を採用することで、重量アップや特殊な部材を使用せずに、木造建築最高レベルの重量床衝撃音遮断性能LH-50(※2)の遮音性能を実現しました。
また、本システムは、このたび「ウッドデザイン賞2020」(※3)の「ソーシャルデザイン部門(建築・空間・建材・部材分野)」を受賞しました。
※1 「SQサイレンス」は、当社、ナイス㈱、淡路技建㈱が共同で商標出願済(商願2020-113168)
※2 LH-50:JIS A 1418-2に定める『衝撃力特性(1)を持つ標準重量衝撃源(タイヤ)』による重量床衝撃音遮断性能で、「生活実感」が「小さく聞こえる」に相当。
※3 ウッドデザイン賞:木材利用の促進が図られることを目的に、木で暮らしと社会を豊かにするモノ・コトを表彰し、国内外に発信するための林野庁による顕彰制度。
(2)CELBIC(環境配慮型BFコンクリート)ゼネコン13社で建設材料技術性能証明を取得
当社を含むCELBIC研究会13社(文末参照)は、普通ポルトランドセメントに対して10~70%の範囲で高炉スラグ微粉末を使用したコンクリート「CELBIC-環境配慮型BFコンクリート-」について、一般財団法人 日本建築総合試験所より2021年2月22日付けで、建設材料技術性能証明(GBRC材料証明 第20-04号)を取得しました。
CELBIC(セルビック:Consideration for Environmental Load using Blast furnace slag In Concrete)は、循環型社会の形成と地球環境問題の改善に寄与することを目的とし、建築コンクリート構造物に求められる所要の品質を確保しつつ、コンクリート材料に由来する二酸化炭素の排出量の約9~63%を削減する環境配慮型コンクリートです。またCELBICは、JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)に適合するコンクリートとして製造・出荷が可能であり、CELBIC研究会に参加の13社において施工することが可能です。
当社はCELBICを2021年3月着工の店舗・オフィスの複合ビル新築工事に適用することを提案し、その結果、業界で初めてCELBICが採用されました。本工事では、建物全体に打設されるコンクリートの製造に伴う建築時の総CO2排出量の約40%程度の削減が見込まれ、環境配慮設計による物件運用時の総CO2排出量削減とともに、当該建物のライフサイクルCO2に対し幅広く貢献する効果が得られます。
当社以外のCELBIC研究会参画会社は次の通りです。青木あすなろ建設㈱、㈱淺沼組、㈱安藤・間、㈱奥村組、㈱熊谷組、㈱鴻池組、五洋建設㈱、㈱錢高組、鉄建建設㈱、東洋建設㈱、㈱長谷工コーポレーション、矢作建設工業㈱
(3)建設廃棄物を自動で選別するロボットを共同開発
当社と石坂産業㈱は、建設副産物の中間処理プラントにおいて、建設廃棄物の自動選別を行う「廃棄物選別ロボット」を共同開発しました。
中間処理プラントにおける分別・再資源化において、様々なものが混在している建設混合廃棄物は特に選別自動化が難しく、ベルトコンベアを流れる廃棄物を人の手によって選別しているのが一般的であります。また、粉塵などが舞う過酷な作業環境であり、将来的な就労者不足が建設副産物の再資源化の停滞や廃棄物処理費の高騰に繋がると予想されています。本ロボットは、石坂産業㈱の知見、ノウハウ及び当社の廃棄物選別技術をベースに、深層学習(ディープラーニング)による画像解析技術を用いることで選別作業の自動化を実現するもので、既存の中間処理プラントの手選別ラインに設置することも可能であります。
現在、石坂産業㈱のプラントにおいてロボット2台体制での実用化を開始しており、実際のラインで得られたデータをもとに改良を重ね、引き続き開発を進めてまいります。
(4)「配筋検査システム」共同研究開発における「配筋チェック機能」の現場試行を開始
当社を含むゼネコン21社(文末参照)は、施工現場の生産性を向上させるため、AIおよび画像解析を応用した「配筋検査システム」の共同研究開発を2019年4月から進めています。
本研究開発では、配筋工事の施工管理を支援する「配筋チェック機能」と、配筋検査の業務効率を改善する「配筋検査機能」の2つの機能を兼ね備えた統合システムの実現を目指しています。
今回、タブレット端末を用いた「配筋チェック機能」の現場試行を実施した結果、多様な施工環境において迅速かつ正確な配筋チェック機能の実現に一定の目途が立ちました。今後も現場試行を繰り返し実施し、より汎用性の高い機能の開発を引き続き進めてまいります。
当社以外の共同研究参画会社は次の通りです。青木あすなろ建設㈱、㈱淺沼組、㈱安藤・間、㈱奥村組、北野建設㈱、㈱熊谷組、五洋建設㈱、佐藤工業㈱、大末建設㈱、髙松建設㈱、鉄建建設㈱、戸田建設㈱、飛島建設㈱、西松建設㈱、日本国土開発㈱、㈱長谷工コーポレーション、㈱ピーエス三菱、㈱松村組、村本建設㈱、矢作建設工業㈱
(5)コンクリート舗装のひび割れ補修材「CRACK REPAIR」を共同開発
当社と世紀東急工業㈱は、道路のコンクリート舗装に発生するひび割れの補修材「CRACK REPAIR(クラックリペア )」を共同開発しました。
道路のコンクリート舗装は、アスファルト舗装に比べ高耐久でライフサイクルコスト(LCC)の低減が可能であること、また自動車の低燃費に貢献し、路面温度の上昇を伴わないことから環境面でも注目を集めています。しかし、従来のコンクリート舗装の補修工法は、コンクリート片の飛散等の安全面や、入念な準備工を必要とするなど施工手間・時間を多く要することに課題がありました。
本補修材は、水のような極低粘度のポリウレタン系の薬液を使用することでひび割れの深部まで注入することができるため、ひび割れの拡大と割れたコンクリート片の飛散を防止することができ、さらには注入開始から道路の通行が可能となるまで約1時間となることから、安全性の確保と施工時間の短縮を実現しております。
今後は本技術を両社の事業において活用し、インフラ整備の長寿命化と環境に配慮した社会の実現に貢献してまいります。
(6)「トンネル粉じん測定システム」の導入開始
当社は、マック㈱、㈱東宏と共同で、山岳トンネル工事の安全管理を効率的に実施する「トンネル粉じん測定システム」を開発しました。
本システムは、山岳トンネル工事で発生する粉じんがじん肺の原因となるため、作業環境を良好に維持する観点から「ずい道等建設工事における粉じん対策に対するガイドライン」(2021年4月1日施行)が改正されたことに合わせて開発した、長時間の粉じん濃度測定および膨大な量のデータ整理・周知を自動化できる支援ツールです。
当社が既に開発・展開している「切羽監視責任者支援システム」や「入坑管理システム」等の既存システムと連携することで、山岳トンネル工事の安全管理のさらなる向上を進めてまいります。
(7)グリーンインフラと生物多様性の取り組みの推進
当社は、技術研究所の敷地内に設置している集中豪雨の雨水保全等を目的としたグリーンインフラの実証実験施設で、昆虫や鳥類が生息する周辺緑地との中継地としての生態系ネットワークの形成の確認や、ヘイケボタルの累代飼育の成功などにより、多様な昆虫や鳥類の生息を可能にする生物多様性の保全効果を確認しました。
近年、都市部における集中豪雨が頻発する中で、自然環境が持つ機能(防災・減災、生物の生息空間など)を活用したグリーンインフラが推進されており、雨水を「貯める」、「使う」、「自然に還す」、生き物が「棲む」、「育つ」をキーワードに、都市型集中豪雨対策と、環境保全の技術を検証してまいりました。
今後、本取り組みで得られたグリーンインフラ技術を用いて、都市部における防災・減災の提案や環境保全活動を進めるとともに、脱炭素社会に向けて貢献してまいります。
(8)クリーンルームの実証実験施設を構築
2021年6月よりすべての食品事業者にHACCP(※)に沿った衛生管理の実施が義務付けられることとなりました。これに伴い、顧客の衛生管理に対する意識が益々高まることが予想されます。
当社はクリーンルームの構築について、顧客毎に異なる清浄度等の要求スペックに細やかに対応する為に、当社技術研究所内に清浄度や温湿度等を遠隔にてモニタリングが可能な実証実験施設を構築いたしました。これにより、顧客の求める性能とコストの最適なバランスが取れたシステムの提案を目指します。
本施設では、エアロゾル発生装置による発塵、機器による計測を行い、清浄度クラス毎に必要な処理風量等を把握します。これらの計測を自社で行うことにより、性能、コスト両面から最適な清浄度空間を実現するシステムを提案することが可能になります。また、食品工場等に適した吸込み口をはじめ、イニシャルコスト、ランニングコストに優れた、顧客の要求水準を満たす性能を実現します。加えて、発熱による影響や食品工場等を想定し、ウエットエリアや室圧を考慮したシステムの空間清浄能力についても計測します。
今後は年間を通じて、最適な湿度管理が可能な技術提案や、アフターコロナ時代に求められる換気システム、食品工場ならびにバイオクリーンルームにて求められるコンタミネーション防止技術について取り組んでまいります。
※ HACCP(ハサップ):食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法
(9)外壁タイル工事の接着剤張り工法における下地調整記録支援システムを確立
当社は、外壁タイル工事の有機系接着剤張り工法において、下地調整の計測から記録を支援する「コンクリート表面評価システム」(特許出願済)を開発いたしました。
これまで、建物の外壁タイルの定期調査報告において、竣工後10年毎に「全面打診検査」等を行うこととされていましたが、接着剤張り工法を採用した場合に、一定の条件を満たすことでより労力の少ない「引張接着試験」の採用が認められました。しかし、この条件を満たすために必要な下地調整の計測・記録において、人による従来の手法では正確性確保の難しさや記録作成に多くの時間と労力を要することに課題がありました。
本システムは、3Dスキャナを用いて下地面精度を計測し、記録をデータ化することで先の条件を満たし、業務の効率化と品質確保を実現します。今後はAR等の活用により、記録データをタブレット端末等で可視化させ、作業効率をより向上させる手法を研究してまいります。
なお、子会社においては、研究開発活動は特段行われておりません。
[不動産事業等]
研究開発活動は、特段行われておりません。
[建設事業]
研究開発活動については、社会課題の把握と抽出を行い、SDGs(持続可能な開発目標)において当社が優先して取り組む重要な社会課題のうち、安全で安心・快適なまちづくりへの貢献、技術革新による生産プロセスの効率性向上、省資源・省エネルギーの推進につながる技術の開発を目指します。また、施工品質向上技術、環境技術等受注確保につながる技術の実用化も目指しております。当連結会計年度においては、以下の技術分野に関して、研究開発を進めました。
1.安心安全 ・維持管理技術・災害対策技術(地震、洪水等)・施工自動化システム
2.生産性向上 ・建築構造・省力化技術・通信技術・土壌浄化促進技術・検査支援システム
・ICTロボット技術・シミュレーション技術
3.環境負荷低減 ・脱炭素技術・ZEB(Net Zero Energy Building)・グリーンインフラ
・木材の積極利用技術
更に、大学、公共研究機関及び関連企業との共同研究をはじめとする社外連携を進め、競争的資金の活用等により研究開発の効率を高めております。特に、東京都市大学とは産学連携に関する包括契約を締結しており、2020年度は4テーマの共同研究を実施しました。
当連結会計年度における研究開発費は、1,039百万円であります。
主な研究開発成果は次のとおりであります。
(1)木造建築最高レベルの高遮音二重床システム「SQサイレンス50」(※1)を共同開発
当社、ナイス㈱、淡路技建㈱の3社は、床衝撃音遮断性能の確保が難しいとされてきた木質系建築に適用できる高遮音二重床システム「SQサイレンス50」を共同で開発しました。木質系建築における従来の床の遮音対策には、床を重厚化させることや防振装置などを利用する事例がありましたが、これらの対策は材料費や施工手間の増加によってコストが上昇するのみならず、建物自重の増加によって耐震性に影響を及ぼす可能性もあるため、必ずしも有効な対策とは言えませんでした。本システムは木製床板の振動特性に着目した遮音機構を採用することで、重量アップや特殊な部材を使用せずに、木造建築最高レベルの重量床衝撃音遮断性能LH-50(※2)の遮音性能を実現しました。
また、本システムは、このたび「ウッドデザイン賞2020」(※3)の「ソーシャルデザイン部門(建築・空間・建材・部材分野)」を受賞しました。
※1 「SQサイレンス」は、当社、ナイス㈱、淡路技建㈱が共同で商標出願済(商願2020-113168)
※2 LH-50:JIS A 1418-2に定める『衝撃力特性(1)を持つ標準重量衝撃源(タイヤ)』による重量床衝撃音遮断性能で、「生活実感」が「小さく聞こえる」に相当。
※3 ウッドデザイン賞:木材利用の促進が図られることを目的に、木で暮らしと社会を豊かにするモノ・コトを表彰し、国内外に発信するための林野庁による顕彰制度。
(2)CELBIC(環境配慮型BFコンクリート)ゼネコン13社で建設材料技術性能証明を取得
当社を含むCELBIC研究会13社(文末参照)は、普通ポルトランドセメントに対して10~70%の範囲で高炉スラグ微粉末を使用したコンクリート「CELBIC-環境配慮型BFコンクリート-」について、一般財団法人 日本建築総合試験所より2021年2月22日付けで、建設材料技術性能証明(GBRC材料証明 第20-04号)を取得しました。
CELBIC(セルビック:Consideration for Environmental Load using Blast furnace slag In Concrete)は、循環型社会の形成と地球環境問題の改善に寄与することを目的とし、建築コンクリート構造物に求められる所要の品質を確保しつつ、コンクリート材料に由来する二酸化炭素の排出量の約9~63%を削減する環境配慮型コンクリートです。またCELBICは、JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)に適合するコンクリートとして製造・出荷が可能であり、CELBIC研究会に参加の13社において施工することが可能です。
当社はCELBICを2021年3月着工の店舗・オフィスの複合ビル新築工事に適用することを提案し、その結果、業界で初めてCELBICが採用されました。本工事では、建物全体に打設されるコンクリートの製造に伴う建築時の総CO2排出量の約40%程度の削減が見込まれ、環境配慮設計による物件運用時の総CO2排出量削減とともに、当該建物のライフサイクルCO2に対し幅広く貢献する効果が得られます。
当社以外のCELBIC研究会参画会社は次の通りです。青木あすなろ建設㈱、㈱淺沼組、㈱安藤・間、㈱奥村組、㈱熊谷組、㈱鴻池組、五洋建設㈱、㈱錢高組、鉄建建設㈱、東洋建設㈱、㈱長谷工コーポレーション、矢作建設工業㈱
(3)建設廃棄物を自動で選別するロボットを共同開発
当社と石坂産業㈱は、建設副産物の中間処理プラントにおいて、建設廃棄物の自動選別を行う「廃棄物選別ロボット」を共同開発しました。
中間処理プラントにおける分別・再資源化において、様々なものが混在している建設混合廃棄物は特に選別自動化が難しく、ベルトコンベアを流れる廃棄物を人の手によって選別しているのが一般的であります。また、粉塵などが舞う過酷な作業環境であり、将来的な就労者不足が建設副産物の再資源化の停滞や廃棄物処理費の高騰に繋がると予想されています。本ロボットは、石坂産業㈱の知見、ノウハウ及び当社の廃棄物選別技術をベースに、深層学習(ディープラーニング)による画像解析技術を用いることで選別作業の自動化を実現するもので、既存の中間処理プラントの手選別ラインに設置することも可能であります。
現在、石坂産業㈱のプラントにおいてロボット2台体制での実用化を開始しており、実際のラインで得られたデータをもとに改良を重ね、引き続き開発を進めてまいります。
(4)「配筋検査システム」共同研究開発における「配筋チェック機能」の現場試行を開始
当社を含むゼネコン21社(文末参照)は、施工現場の生産性を向上させるため、AIおよび画像解析を応用した「配筋検査システム」の共同研究開発を2019年4月から進めています。
本研究開発では、配筋工事の施工管理を支援する「配筋チェック機能」と、配筋検査の業務効率を改善する「配筋検査機能」の2つの機能を兼ね備えた統合システムの実現を目指しています。
今回、タブレット端末を用いた「配筋チェック機能」の現場試行を実施した結果、多様な施工環境において迅速かつ正確な配筋チェック機能の実現に一定の目途が立ちました。今後も現場試行を繰り返し実施し、より汎用性の高い機能の開発を引き続き進めてまいります。
当社以外の共同研究参画会社は次の通りです。青木あすなろ建設㈱、㈱淺沼組、㈱安藤・間、㈱奥村組、北野建設㈱、㈱熊谷組、五洋建設㈱、佐藤工業㈱、大末建設㈱、髙松建設㈱、鉄建建設㈱、戸田建設㈱、飛島建設㈱、西松建設㈱、日本国土開発㈱、㈱長谷工コーポレーション、㈱ピーエス三菱、㈱松村組、村本建設㈱、矢作建設工業㈱
(5)コンクリート舗装のひび割れ補修材「CRACK REPAIR」を共同開発
当社と世紀東急工業㈱は、道路のコンクリート舗装に発生するひび割れの補修材「CRACK REPAIR(クラックリペア )」を共同開発しました。
道路のコンクリート舗装は、アスファルト舗装に比べ高耐久でライフサイクルコスト(LCC)の低減が可能であること、また自動車の低燃費に貢献し、路面温度の上昇を伴わないことから環境面でも注目を集めています。しかし、従来のコンクリート舗装の補修工法は、コンクリート片の飛散等の安全面や、入念な準備工を必要とするなど施工手間・時間を多く要することに課題がありました。
本補修材は、水のような極低粘度のポリウレタン系の薬液を使用することでひび割れの深部まで注入することができるため、ひび割れの拡大と割れたコンクリート片の飛散を防止することができ、さらには注入開始から道路の通行が可能となるまで約1時間となることから、安全性の確保と施工時間の短縮を実現しております。
今後は本技術を両社の事業において活用し、インフラ整備の長寿命化と環境に配慮した社会の実現に貢献してまいります。
(6)「トンネル粉じん測定システム」の導入開始
当社は、マック㈱、㈱東宏と共同で、山岳トンネル工事の安全管理を効率的に実施する「トンネル粉じん測定システム」を開発しました。
本システムは、山岳トンネル工事で発生する粉じんがじん肺の原因となるため、作業環境を良好に維持する観点から「ずい道等建設工事における粉じん対策に対するガイドライン」(2021年4月1日施行)が改正されたことに合わせて開発した、長時間の粉じん濃度測定および膨大な量のデータ整理・周知を自動化できる支援ツールです。
当社が既に開発・展開している「切羽監視責任者支援システム」や「入坑管理システム」等の既存システムと連携することで、山岳トンネル工事の安全管理のさらなる向上を進めてまいります。
(7)グリーンインフラと生物多様性の取り組みの推進
当社は、技術研究所の敷地内に設置している集中豪雨の雨水保全等を目的としたグリーンインフラの実証実験施設で、昆虫や鳥類が生息する周辺緑地との中継地としての生態系ネットワークの形成の確認や、ヘイケボタルの累代飼育の成功などにより、多様な昆虫や鳥類の生息を可能にする生物多様性の保全効果を確認しました。
近年、都市部における集中豪雨が頻発する中で、自然環境が持つ機能(防災・減災、生物の生息空間など)を活用したグリーンインフラが推進されており、雨水を「貯める」、「使う」、「自然に還す」、生き物が「棲む」、「育つ」をキーワードに、都市型集中豪雨対策と、環境保全の技術を検証してまいりました。
今後、本取り組みで得られたグリーンインフラ技術を用いて、都市部における防災・減災の提案や環境保全活動を進めるとともに、脱炭素社会に向けて貢献してまいります。
(8)クリーンルームの実証実験施設を構築
2021年6月よりすべての食品事業者にHACCP(※)に沿った衛生管理の実施が義務付けられることとなりました。これに伴い、顧客の衛生管理に対する意識が益々高まることが予想されます。
当社はクリーンルームの構築について、顧客毎に異なる清浄度等の要求スペックに細やかに対応する為に、当社技術研究所内に清浄度や温湿度等を遠隔にてモニタリングが可能な実証実験施設を構築いたしました。これにより、顧客の求める性能とコストの最適なバランスが取れたシステムの提案を目指します。
本施設では、エアロゾル発生装置による発塵、機器による計測を行い、清浄度クラス毎に必要な処理風量等を把握します。これらの計測を自社で行うことにより、性能、コスト両面から最適な清浄度空間を実現するシステムを提案することが可能になります。また、食品工場等に適した吸込み口をはじめ、イニシャルコスト、ランニングコストに優れた、顧客の要求水準を満たす性能を実現します。加えて、発熱による影響や食品工場等を想定し、ウエットエリアや室圧を考慮したシステムの空間清浄能力についても計測します。
今後は年間を通じて、最適な湿度管理が可能な技術提案や、アフターコロナ時代に求められる換気システム、食品工場ならびにバイオクリーンルームにて求められるコンタミネーション防止技術について取り組んでまいります。
※ HACCP(ハサップ):食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法
(9)外壁タイル工事の接着剤張り工法における下地調整記録支援システムを確立
当社は、外壁タイル工事の有機系接着剤張り工法において、下地調整の計測から記録を支援する「コンクリート表面評価システム」(特許出願済)を開発いたしました。
これまで、建物の外壁タイルの定期調査報告において、竣工後10年毎に「全面打診検査」等を行うこととされていましたが、接着剤張り工法を採用した場合に、一定の条件を満たすことでより労力の少ない「引張接着試験」の採用が認められました。しかし、この条件を満たすために必要な下地調整の計測・記録において、人による従来の手法では正確性確保の難しさや記録作成に多くの時間と労力を要することに課題がありました。
本システムは、3Dスキャナを用いて下地面精度を計測し、記録をデータ化することで先の条件を満たし、業務の効率化と品質確保を実現します。今後はAR等の活用により、記録データをタブレット端末等で可視化させ、作業効率をより向上させる手法を研究してまいります。
なお、子会社においては、研究開発活動は特段行われておりません。
[不動産事業等]
研究開発活動は、特段行われておりません。
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