有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100LPF9 (EDINETへの外部リンク)
日清食品ホールディングス株式会社 事業等のリスク (2021年3月期)
(1) リスクの定義及び管理体制
当社グループ(以下「当社」という。)では、リスクを組織の収益や損益に影響を与える不確実性と定義しています。リスクにはプラス影響とマイナス影響の両面があり、環境変化の中で組織が行う事業・投資により発生するプラス・マイナス影響は機会、インシデントが与えるマイナス影響はリスクと区分しております。機会については、投融資委員会、経営会議、取締役会で判断され、リスクについては「総合リスク対策委員会」で管理されます。
当社では、代表取締役副社長・COOを委員長とする「総合リスク対策委員会」を設置し、「日清食品グループリスク管理規程」に基づき、日清食品グループに係る種々のリスクの予防・発見・管理及び対応を行っております。特に、商品事故、BCP(事業継続計画)、コンプライアンス、情報セキュリティをグループの重点リスクと位置付け、「委員会」を設置し対応を行っております。また、環境・安全リスクに対応する組織を、サステナビリティ委員会のもとに設置しており、環境面等における重大事故が発生したときは、マニュアルに従って直ちに対応し、事態の収拾、解決にあたっております。
(2) 総合リスク対策委員会の具体的な活動
総合リスク対策委員会はリスクを一元的に俯瞰し、各主管部門のリスクを洗い出し、リスク事象を予防する仕組みの構築を指示しています。日清食品グループに甚大な影響を及ぼすリスク事象が発生した場合は「グループ重大事案対策本部」を設置し、速やかにリスク事象に対処し、再発防止の対策をたてます。また各年度に1度、事業会社社長および各チーフオフィサーによるリスク評価報告を基に、発生可能性と影響度の2軸で構成されるリスクマップにて各リスクを4段階のステージに分けて評価し、管理方針を定めて管理状況を取締役会に報告しています。
(3) 投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。記載内容のうち将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 製造物責任
当社は、食品メーカーとして、お客様に安全・安心な食品を提供していくことを使命と考え、厳密な品質管理基準を設け生産を行っています。更に、グローバル食品安全研究所を設置し、原材料の安全性及び各工場での品質管理体制の強化を図っています。また、万が一、製造物責任を問われるような事態が発生した場合に備え、製造物責任賠償保険に加入しております。しかしながら、製造物責任上の事故が発生し製品の回収を余儀なくされるような事態が発生した場合、すべての賠償額を保険でカバーできる保証はなく、社会的評価や企業イメージの低下は、当社製品に対する消費者の購買意欲を減退させるおそれがあり、当社の財政状態及び業績に影響を及ぼすおそれがあります。
② 食品の安全・安心
安全な食品を提供し、消費者の皆様に安心して召しあがっていただくことは、当社の基本理念です。過去に、食品業界においては、残留農薬問題、食品偽装問題、放射能汚染問題、有害物質の混入等、食品の品質や安全性が疑われる問題が多発したこともあり、食品の安全性に対する消費者の要求は、毎年高まってきております。特に、食物アレルギーについては、アレルギーをお持ちの消費者の健康影響リスクは高く、製品表示の正確性と原材料の適切な管理が必要です。これらに対し、当社では、1998年に食品安全センターを設立(2004年に食品安全研究所と改称、2014年3月期にはthe WAVEを設立)しており、更なる機能の充実、品質保証体制の強化を図っております。しかしながら、将来において当社の想定を超える食品の安全性に関する問題が発生した場合、又は当社製品に直接関係がない場合であっても、風評等により当社製品のイメージが低下するなどの事態が発生した場合、当社の財政状態及び業績に影響を及ぼすおそれがあります。特に、情報がグローバルに拡散される時代において、海外で発生した食品安全問題も国内に大きな影響を及ぼすおそれがあり、当社では中国上海市に上海食品安全研究所を設立(2006年)するなど、海外における品質保証体制も強化しています。
③ 災害・事故
当社は、国内外に多数の事業所や工場を有しており、当該地域における大規模な地震や台風などによる風水害、その他の自然災害の発生に対して、事業継続計画(BCP)を策定の上、BCP委員会を設置し、定期的な見直しをしております。また新型コロナウイルス感染症についても、当社は従業員の安全確保と製品の安定供給を社会的責務と考え、オンライン会議の活用などによる在宅勤務環境を整備するとともに工場では高度な衛生基準に基づく生産体制のもと迅速かつ適切な対策を講じております。しかしながら、大規模な自然災害が発生した場合、生産設備への被害に伴う生産能力の低下、設備修復による費用増に加え、サプライチェーンの寸断による供給不能などにより、当社の財政状態、業績等に影響を及ぼすおそれがあります。
④ コンプライアンス
当社は、世界の各拠点で事業を展開しており、その中で各国の法令や企業倫理等の社会的規範に抵触することで、刑事罰、行政処分、損害賠償責任等の法的責任の追及や、社会的制裁を受ける懸念があります。こうした事象が発生した場合、当社に対する信頼やブランド価値を低下させる可能性があります。これらのリスクに対して、代表取締役副社長・COOを委員長とする「コンプライアンス委員会」を原則四半期に一度開催し、内部通報窓口への相談・通報の傾向や発生事例の共有、予防策ならびに再発防止策の検討等を実施しています。また、法務部コンプライアンスグループを中心に組成するコンプライアンス委員会事務局および各社・各部署に配置する「コンプライアンス推進責任者」が、実務者として諸課題・諸事案への対応にあたっております。
⑤ 情報セキュリティ
当社は、生産、販売、管理等の情報をコンピュータを利用した情報システムにより管理しています。これらの情報システムの運用は、構成する機器の故障・不具合や、社外からの電子的攻撃に対して、システム停止や外部への社内情報の漏洩が生じないよう万全の対策を講じています。しかしながら、当社の想定を超えた全世界的な大規模障害や、未知の技術による不正アクセスなどにより、システム障害や外部への社内情報の流出が発生した場合、当社の財政状態及び業績に影響を及ぼすおそれがあります。このようなリスクを可能な限り回避するために、適切なシステム障害の復旧プランを策定し訓練するとともに、情報セキュリティ委員会によるモニタリングの実施と定期的な報告を行うことで、リスクの低減を図っております。
⑥ 環境
当社は、気候変動やそれに起因する自然災害により、原材料価格の高騰、製造工場の被災、カーボンプライシング制度の導入や人々の行動様式の変容など、さまざまな影響を受ける可能性があります。そのため、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)提言に則ったシナリオ分析を進め、リスクおよび機会となる要因について科学的根拠をもとに業績に及ぼす影響を引き続き分析・評価しており、将来の不確実性に応じた戦略立案を進めております。そのような中で、当社は2020年4月に2030年までの環境戦略「EARTH FOOD CHALLENGE 2030」を策定し、気候変動に対する取り組みや資源の有効活用に関する目標を定めました。なかでも、CO2排出量の削減を重要課題と位置付けており、SBT(Science Based Targets)イニシアチブより認定を受けた目標(国内外のスコープ1と2の合計排出量を2018年度総量比で30%削減、スコープ3では同15%削減)を掲げております。さらに2021年2月、事業活動で使用する電力の再生可能エネルギー100%調達を目指す国際イニシアチブRE100(Renewable Energy 100%)に参画し、「2030年度までに国内外の事業活動で利用する電力の60%を再生可能エネルギーで調達する」「2050年度までに国内外の事業活動で利用する電力を100%再生可能エネルギーで調達する」ことを掲げ、国内外の製造工場を中心に電力の再生可能エネルギーへの切替えを進めており、規制対応リスクの軽減を図っております。
⑦ ブランド価値毀損
「チキンラーメン」、「カップヌードル」をはじめとする日本国内における当社の主力製品は、その技術力と商品力により永年に亘りお客様に親しまれてまいりました。しかしながら、即席めん市場では毎年多くの新製品が投入されており、今後、画期的な技術革新が他社によって行われたり、若年層を中心に新しい価値観の変化が起きることで当社製品のブランド価値を低下させるおそれがあります。そのようなリスクを考慮し、当社の主力製品は、現状維持ではなく常に進化と革新を続け、新しい顧客層も確実に取り込みながら持続的なブランド価値の向上に努めております。また、海外においてもカップヌードルのグローバルブランディング戦略を中心に主要地域ごとの市場環境や生活者の価値観の違いを捉えたブランド価値を高めるマーケティング施策を実行しております。
⑧ 有価証券の公正価値下落
当社は、配当・キャピタルゲインの獲得以外に、経営戦略上、取引先との良好な関係を構築し、効率的・安定的な取引や業務提携等により事業の円滑な推進を図ることで中長期的な企業価値の向上を実現する観点から、必要と判断する株式などの有価証券を保有することがあります。当社が保有する有価証券は、将来の市況の悪化による公正価値下落や投資先の業績不振等により減損処理が必要となる場合があり、当社の財政状態及び業績に影響を及ぼすおそれがあります。なお、2021年4月7日に開催された取締役会では、今後2年程度で100億円を目途に政策保有株式の縮減を行う方針を決議しております。
⑨ 固定資産の減損
当社は、事業の用に供するさまざまな固定資産を有しております。それらの固定資産から生み出される将来の収益性によっては減損処理が必要となる可能性があり、当社の財政状態及び業績に影響を及ぼすおそれがあります。このようなリスクを低減するために、投融資委員会において社内基準に基づき経済合理性を十分に吟味し、投資判断を行っている他、実行後も投資効果について継続的にモニタリングを実施しております。
⑩ 為替変動
当社は、グローバルに事業を展開しております。当社の主要な為替リスクとして為替相場の変動による外貨建て仕入値の高騰がありますが、為替予約をおこなうなど為替リスクを低減するための措置をとっております。また各海外地域において所在地国の通貨で作成された財務諸表は、連結財務諸表作成のために機能通貨である円に換算されており、為替相場の変動により当社の財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑪ 人材
国内においては生産年齢人口の減少や、コロナ禍後の働き方の変容により、優秀な人材の採用及び維持が課題となり、企業経営や主要事業に影響を及ぼすおそれがあります。当社では、多様な人材を受け入れ、個々の能力を存分に発揮できる職場環境の実現に向け、「ダイバーシティ委員会」を設置し継続的な取り組みを行っているほか、障がい者の雇用を促進するために2013年に「日清食品ビジネスサポートプラス」を設立するなど、人材の確保に努めております。また、働き方改革の一環としてスマートワークプロジェクトに取り組み、より柔軟で生産性の高い働き方が実現できるよう、コアタイムのないフレックスタイム制の導入やテレワークの拡充など制度の整備とIT環境の整備を進め、残業時間の低減や有給取得率の向上にもつなげております。
⑫ 原材料価格の変動
当社製品の主要原材料は、小麦粉・パーム油などの農産物及び包材に使用する石油製品であり、その価格は市場の状況により変動いたします。これらの原産国で政情不安や国際紛争の発生、地球温暖化に伴う天候不順による農作物の不作など、原材料価格の高騰要因が、従来より増加しており、原材料価格が高騰した場合、当社の業績に影響を及ぼすおそれがあります。これらの課題に対するため、市況情報を常に把握し適切なタイミングで購入することや、原材料の産地や購買先を分散化することで価格高騰リスクを低減するなど、安定供給体制の強化に努めております。さらに各国で生産している戦略商品であるカップヌードルの原材料について、日清食品ホールディングス主導で共同調達を行い、安定供給とコストダウンを実現しております。
⑬ 物流
物流業界におけるドライバー人材不足、倉庫内作業者不足の問題など、今後は市場供給力が停滞するおそれがあります。これに対して、「ホワイト物流」推進運動の趣旨に賛同し、自主行動宣言を行い、得意先のご協力のもとでのリードタイムの延長、パレットなどの活用、トラック予約受付システムの導入、荷主側の施設面の改善、物流の改善提案と協力などを行っております。また、2020年9月より複数企業による関東~九州間における共同輸送を開始するなど、今後も持続可能な物流体制を構築していきます。
⑭ 特定の取引先への依存
当社は、製品の販売及び一部原材料の仕入において、特定の取引先に大きく依存しております。販売において、特定の商社に依存しておりますが、信用力の極めて高い大手商社に取引を集中させることで、与信管理の省力化及び信用リスクの低減を図ることが可能なためであります。また、一部原材料の仕入についても特定の取引先に依存しているのは、これらの原材料を効率的に、かつ安定的に調達することが可能であるためであります。取引先に対する与信管理は適切に実施しているものの、これらの取引先の経営状態が悪化した場合は、当社は売掛金の回収が困難となったり、また、原材料の供給が断たれた場合には生産活動が停止することにより、当社の財政状態及び業績に影響を及ぼすおそれがあります。
⑮ 海外カントリーリスク
当社は、海外においても、現地生産・現地販売を基本スタンスに即席めんをはじめとする食品を製造しています。これらの進出国において政情不安や国際紛争が発生した場合には従業員の安全を最優先に対応する方針ですが、このほかにも食品の安全性を脅かす事態や各国での法的規制により生産が困難になる場合、それらの子会社又は当社の財政状態及び業績に影響を及ぼすおそれがあります。これらの課題に対するため、日清食品ホールディングスに専門性を有するプラットフォームを設置し、各海外現地法人のサポートに努める体制を構築しております。
⑯ 人口動態
日本国内では、現在、少子・高齢化が急速に進んでおり、当社の中長期での主たる購買層である若年ユーザー層が減少して市場は長期的に横ばい傾向にあります。このような状況の中、当社では、シニア層・若年層・女性等の各ターゲット層に対応したきめ細かな製品の開発により、新たな喫食機会や価値の創出により顧客層の維持・拡大に努めております。一方で海外においては、若年層は増加しボリュームゾーンとなっているため積極的に若者へのアプローチを強化する製品開発・コミュニケーション活動を展開しております。このように国内と海外主要地域における様々な人口動態の変化に柔軟に対応しながらグローバルにおける顧客の持続的な拡大に取り組んでおります。
⑰ 顧客ニーズの多様化
食における顧客ニーズの多様化が進む中、特に、オーバーカロリーによる肥満や生活習慣病が問題となる一方で、間違ったダイエット方法による栄養不足などが世界的な社会課題となり、健康意識が高まっております。そのような顧客ニーズに答えるために、「見た目やおいしさはそのままに、カロリーや塩分、糖質、脂質などがコントロールされ、必要な栄養素を全て満たす食」を開発し、事業化を進めてまいります。また、2021年度から始まる中長期成長戦略の3つの成長戦略テーマでは新規事業を掲げ、新たなビジネスモデルの創造に向けた新規投資を進め、おいしく、健康的な「食」を通して未病改善や健康寿命の延伸などの社会課題の解決に努めてまいります。
当社グループ(以下「当社」という。)では、リスクを組織の収益や損益に影響を与える不確実性と定義しています。リスクにはプラス影響とマイナス影響の両面があり、環境変化の中で組織が行う事業・投資により発生するプラス・マイナス影響は機会、インシデントが与えるマイナス影響はリスクと区分しております。機会については、投融資委員会、経営会議、取締役会で判断され、リスクについては「総合リスク対策委員会」で管理されます。
当社では、代表取締役副社長・COOを委員長とする「総合リスク対策委員会」を設置し、「日清食品グループリスク管理規程」に基づき、日清食品グループに係る種々のリスクの予防・発見・管理及び対応を行っております。特に、商品事故、BCP(事業継続計画)、コンプライアンス、情報セキュリティをグループの重点リスクと位置付け、「委員会」を設置し対応を行っております。また、環境・安全リスクに対応する組織を、サステナビリティ委員会のもとに設置しており、環境面等における重大事故が発生したときは、マニュアルに従って直ちに対応し、事態の収拾、解決にあたっております。
(2) 総合リスク対策委員会の具体的な活動
総合リスク対策委員会はリスクを一元的に俯瞰し、各主管部門のリスクを洗い出し、リスク事象を予防する仕組みの構築を指示しています。日清食品グループに甚大な影響を及ぼすリスク事象が発生した場合は「グループ重大事案対策本部」を設置し、速やかにリスク事象に対処し、再発防止の対策をたてます。また各年度に1度、事業会社社長および各チーフオフィサーによるリスク評価報告を基に、発生可能性と影響度の2軸で構成されるリスクマップにて各リスクを4段階のステージに分けて評価し、管理方針を定めて管理状況を取締役会に報告しています。
(3) 投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。記載内容のうち将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 製造物責任
当社は、食品メーカーとして、お客様に安全・安心な食品を提供していくことを使命と考え、厳密な品質管理基準を設け生産を行っています。更に、グローバル食品安全研究所を設置し、原材料の安全性及び各工場での品質管理体制の強化を図っています。また、万が一、製造物責任を問われるような事態が発生した場合に備え、製造物責任賠償保険に加入しております。しかしながら、製造物責任上の事故が発生し製品の回収を余儀なくされるような事態が発生した場合、すべての賠償額を保険でカバーできる保証はなく、社会的評価や企業イメージの低下は、当社製品に対する消費者の購買意欲を減退させるおそれがあり、当社の財政状態及び業績に影響を及ぼすおそれがあります。
② 食品の安全・安心
安全な食品を提供し、消費者の皆様に安心して召しあがっていただくことは、当社の基本理念です。過去に、食品業界においては、残留農薬問題、食品偽装問題、放射能汚染問題、有害物質の混入等、食品の品質や安全性が疑われる問題が多発したこともあり、食品の安全性に対する消費者の要求は、毎年高まってきております。特に、食物アレルギーについては、アレルギーをお持ちの消費者の健康影響リスクは高く、製品表示の正確性と原材料の適切な管理が必要です。これらに対し、当社では、1998年に食品安全センターを設立(2004年に食品安全研究所と改称、2014年3月期にはthe WAVEを設立)しており、更なる機能の充実、品質保証体制の強化を図っております。しかしながら、将来において当社の想定を超える食品の安全性に関する問題が発生した場合、又は当社製品に直接関係がない場合であっても、風評等により当社製品のイメージが低下するなどの事態が発生した場合、当社の財政状態及び業績に影響を及ぼすおそれがあります。特に、情報がグローバルに拡散される時代において、海外で発生した食品安全問題も国内に大きな影響を及ぼすおそれがあり、当社では中国上海市に上海食品安全研究所を設立(2006年)するなど、海外における品質保証体制も強化しています。
③ 災害・事故
当社は、国内外に多数の事業所や工場を有しており、当該地域における大規模な地震や台風などによる風水害、その他の自然災害の発生に対して、事業継続計画(BCP)を策定の上、BCP委員会を設置し、定期的な見直しをしております。また新型コロナウイルス感染症についても、当社は従業員の安全確保と製品の安定供給を社会的責務と考え、オンライン会議の活用などによる在宅勤務環境を整備するとともに工場では高度な衛生基準に基づく生産体制のもと迅速かつ適切な対策を講じております。しかしながら、大規模な自然災害が発生した場合、生産設備への被害に伴う生産能力の低下、設備修復による費用増に加え、サプライチェーンの寸断による供給不能などにより、当社の財政状態、業績等に影響を及ぼすおそれがあります。
④ コンプライアンス
当社は、世界の各拠点で事業を展開しており、その中で各国の法令や企業倫理等の社会的規範に抵触することで、刑事罰、行政処分、損害賠償責任等の法的責任の追及や、社会的制裁を受ける懸念があります。こうした事象が発生した場合、当社に対する信頼やブランド価値を低下させる可能性があります。これらのリスクに対して、代表取締役副社長・COOを委員長とする「コンプライアンス委員会」を原則四半期に一度開催し、内部通報窓口への相談・通報の傾向や発生事例の共有、予防策ならびに再発防止策の検討等を実施しています。また、法務部コンプライアンスグループを中心に組成するコンプライアンス委員会事務局および各社・各部署に配置する「コンプライアンス推進責任者」が、実務者として諸課題・諸事案への対応にあたっております。
⑤ 情報セキュリティ
当社は、生産、販売、管理等の情報をコンピュータを利用した情報システムにより管理しています。これらの情報システムの運用は、構成する機器の故障・不具合や、社外からの電子的攻撃に対して、システム停止や外部への社内情報の漏洩が生じないよう万全の対策を講じています。しかしながら、当社の想定を超えた全世界的な大規模障害や、未知の技術による不正アクセスなどにより、システム障害や外部への社内情報の流出が発生した場合、当社の財政状態及び業績に影響を及ぼすおそれがあります。このようなリスクを可能な限り回避するために、適切なシステム障害の復旧プランを策定し訓練するとともに、情報セキュリティ委員会によるモニタリングの実施と定期的な報告を行うことで、リスクの低減を図っております。
⑥ 環境
当社は、気候変動やそれに起因する自然災害により、原材料価格の高騰、製造工場の被災、カーボンプライシング制度の導入や人々の行動様式の変容など、さまざまな影響を受ける可能性があります。そのため、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)提言に則ったシナリオ分析を進め、リスクおよび機会となる要因について科学的根拠をもとに業績に及ぼす影響を引き続き分析・評価しており、将来の不確実性に応じた戦略立案を進めております。そのような中で、当社は2020年4月に2030年までの環境戦略「EARTH FOOD CHALLENGE 2030」を策定し、気候変動に対する取り組みや資源の有効活用に関する目標を定めました。なかでも、CO2排出量の削減を重要課題と位置付けており、SBT(Science Based Targets)イニシアチブより認定を受けた目標(国内外のスコープ1と2の合計排出量を2018年度総量比で30%削減、スコープ3では同15%削減)を掲げております。さらに2021年2月、事業活動で使用する電力の再生可能エネルギー100%調達を目指す国際イニシアチブRE100(Renewable Energy 100%)に参画し、「2030年度までに国内外の事業活動で利用する電力の60%を再生可能エネルギーで調達する」「2050年度までに国内外の事業活動で利用する電力を100%再生可能エネルギーで調達する」ことを掲げ、国内外の製造工場を中心に電力の再生可能エネルギーへの切替えを進めており、規制対応リスクの軽減を図っております。
⑦ ブランド価値毀損
「チキンラーメン」、「カップヌードル」をはじめとする日本国内における当社の主力製品は、その技術力と商品力により永年に亘りお客様に親しまれてまいりました。しかしながら、即席めん市場では毎年多くの新製品が投入されており、今後、画期的な技術革新が他社によって行われたり、若年層を中心に新しい価値観の変化が起きることで当社製品のブランド価値を低下させるおそれがあります。そのようなリスクを考慮し、当社の主力製品は、現状維持ではなく常に進化と革新を続け、新しい顧客層も確実に取り込みながら持続的なブランド価値の向上に努めております。また、海外においてもカップヌードルのグローバルブランディング戦略を中心に主要地域ごとの市場環境や生活者の価値観の違いを捉えたブランド価値を高めるマーケティング施策を実行しております。
⑧ 有価証券の公正価値下落
当社は、配当・キャピタルゲインの獲得以外に、経営戦略上、取引先との良好な関係を構築し、効率的・安定的な取引や業務提携等により事業の円滑な推進を図ることで中長期的な企業価値の向上を実現する観点から、必要と判断する株式などの有価証券を保有することがあります。当社が保有する有価証券は、将来の市況の悪化による公正価値下落や投資先の業績不振等により減損処理が必要となる場合があり、当社の財政状態及び業績に影響を及ぼすおそれがあります。なお、2021年4月7日に開催された取締役会では、今後2年程度で100億円を目途に政策保有株式の縮減を行う方針を決議しております。
⑨ 固定資産の減損
当社は、事業の用に供するさまざまな固定資産を有しております。それらの固定資産から生み出される将来の収益性によっては減損処理が必要となる可能性があり、当社の財政状態及び業績に影響を及ぼすおそれがあります。このようなリスクを低減するために、投融資委員会において社内基準に基づき経済合理性を十分に吟味し、投資判断を行っている他、実行後も投資効果について継続的にモニタリングを実施しております。
⑩ 為替変動
当社は、グローバルに事業を展開しております。当社の主要な為替リスクとして為替相場の変動による外貨建て仕入値の高騰がありますが、為替予約をおこなうなど為替リスクを低減するための措置をとっております。また各海外地域において所在地国の通貨で作成された財務諸表は、連結財務諸表作成のために機能通貨である円に換算されており、為替相場の変動により当社の財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑪ 人材
国内においては生産年齢人口の減少や、コロナ禍後の働き方の変容により、優秀な人材の採用及び維持が課題となり、企業経営や主要事業に影響を及ぼすおそれがあります。当社では、多様な人材を受け入れ、個々の能力を存分に発揮できる職場環境の実現に向け、「ダイバーシティ委員会」を設置し継続的な取り組みを行っているほか、障がい者の雇用を促進するために2013年に「日清食品ビジネスサポートプラス」を設立するなど、人材の確保に努めております。また、働き方改革の一環としてスマートワークプロジェクトに取り組み、より柔軟で生産性の高い働き方が実現できるよう、コアタイムのないフレックスタイム制の導入やテレワークの拡充など制度の整備とIT環境の整備を進め、残業時間の低減や有給取得率の向上にもつなげております。
⑫ 原材料価格の変動
当社製品の主要原材料は、小麦粉・パーム油などの農産物及び包材に使用する石油製品であり、その価格は市場の状況により変動いたします。これらの原産国で政情不安や国際紛争の発生、地球温暖化に伴う天候不順による農作物の不作など、原材料価格の高騰要因が、従来より増加しており、原材料価格が高騰した場合、当社の業績に影響を及ぼすおそれがあります。これらの課題に対するため、市況情報を常に把握し適切なタイミングで購入することや、原材料の産地や購買先を分散化することで価格高騰リスクを低減するなど、安定供給体制の強化に努めております。さらに各国で生産している戦略商品であるカップヌードルの原材料について、日清食品ホールディングス主導で共同調達を行い、安定供給とコストダウンを実現しております。
⑬ 物流
物流業界におけるドライバー人材不足、倉庫内作業者不足の問題など、今後は市場供給力が停滞するおそれがあります。これに対して、「ホワイト物流」推進運動の趣旨に賛同し、自主行動宣言を行い、得意先のご協力のもとでのリードタイムの延長、パレットなどの活用、トラック予約受付システムの導入、荷主側の施設面の改善、物流の改善提案と協力などを行っております。また、2020年9月より複数企業による関東~九州間における共同輸送を開始するなど、今後も持続可能な物流体制を構築していきます。
⑭ 特定の取引先への依存
当社は、製品の販売及び一部原材料の仕入において、特定の取引先に大きく依存しております。販売において、特定の商社に依存しておりますが、信用力の極めて高い大手商社に取引を集中させることで、与信管理の省力化及び信用リスクの低減を図ることが可能なためであります。また、一部原材料の仕入についても特定の取引先に依存しているのは、これらの原材料を効率的に、かつ安定的に調達することが可能であるためであります。取引先に対する与信管理は適切に実施しているものの、これらの取引先の経営状態が悪化した場合は、当社は売掛金の回収が困難となったり、また、原材料の供給が断たれた場合には生産活動が停止することにより、当社の財政状態及び業績に影響を及ぼすおそれがあります。
⑮ 海外カントリーリスク
当社は、海外においても、現地生産・現地販売を基本スタンスに即席めんをはじめとする食品を製造しています。これらの進出国において政情不安や国際紛争が発生した場合には従業員の安全を最優先に対応する方針ですが、このほかにも食品の安全性を脅かす事態や各国での法的規制により生産が困難になる場合、それらの子会社又は当社の財政状態及び業績に影響を及ぼすおそれがあります。これらの課題に対するため、日清食品ホールディングスに専門性を有するプラットフォームを設置し、各海外現地法人のサポートに努める体制を構築しております。
⑯ 人口動態
日本国内では、現在、少子・高齢化が急速に進んでおり、当社の中長期での主たる購買層である若年ユーザー層が減少して市場は長期的に横ばい傾向にあります。このような状況の中、当社では、シニア層・若年層・女性等の各ターゲット層に対応したきめ細かな製品の開発により、新たな喫食機会や価値の創出により顧客層の維持・拡大に努めております。一方で海外においては、若年層は増加しボリュームゾーンとなっているため積極的に若者へのアプローチを強化する製品開発・コミュニケーション活動を展開しております。このように国内と海外主要地域における様々な人口動態の変化に柔軟に対応しながらグローバルにおける顧客の持続的な拡大に取り組んでおります。
⑰ 顧客ニーズの多様化
食における顧客ニーズの多様化が進む中、特に、オーバーカロリーによる肥満や生活習慣病が問題となる一方で、間違ったダイエット方法による栄養不足などが世界的な社会課題となり、健康意識が高まっております。そのような顧客ニーズに答えるために、「見た目やおいしさはそのままに、カロリーや塩分、糖質、脂質などがコントロールされ、必要な栄養素を全て満たす食」を開発し、事業化を進めてまいります。また、2021年度から始まる中長期成長戦略の3つの成長戦略テーマでは新規事業を掲げ、新たなビジネスモデルの創造に向けた新規投資を進め、おいしく、健康的な「食」を通して未病改善や健康寿命の延伸などの社会課題の解決に努めてまいります。
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ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
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