有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100LN57 (EDINETへの外部リンク)
鹿島建設株式会社 研究開発活動 (2021年3月期)
当社グループは、多様化する社会及び顧客のニーズに対応し、受注や生産への貢献を目的に、建設事業の生産性及び品質向上のための技術開発を進めている。さらに、近年のIoTやAIの急速な技術革新がもたらす建設業のビジネスモデルの転換や、国連が採択したSDGsの実現、地球環境改善等の社会課題解決に資する研究開発を中長期的な課題として取り組んでおり、大学、公共機関や他企業との共同研究も推進しながら、効率的に実施している。
当連結会計年度における研究開発費の総額は150億円であり、主な成果は次のとおりである。なお、当社は研究開発活動を土木事業、建築事業のセグメントごとに区分していないため建設事業として記載している。
(建設事業)
1 当社
(1) 次世代建設生産システムの構築
① 建設現場用ロボット向けにAI技術を搭載した自律移動システムを開発
当社は、㈱Preferred Networksと共同で、建設現場で使用するロボットが現場内を自律移動するためのシステム「iNohTM」(アイノー)を開発した。本システムを搭載することで、GNSS(全球測位衛星システム)や人による事前設定がなくても、各種ロボットがリアルタイムに自己位置や周辺環境を認識し、日々刻々と状況が変化する現場内を安全かつ確実に移動できるようになる。また、「iNohTM」を初搭載したAI清掃ロボット「raccoonTM」(ラクーン)を開発し、首都圏の現場に導入を開始した。今後、「iNohTM」を巡回や資材搬送などを担う各種ロボットに実装することで、建設現場へのロボット導入をさらに促進していく。
② デジタルツイン基盤「鹿島ミラードコンストラクション※」を構築
当社は、ピクシーダストテクノロジーズ㈱と共同で、「鹿島スマート生産※」で活用するデジタルツイン基盤「鹿島ミラードコンストラクション※」(Kajima Mirrored Construction、以下KMC)を構築した。併せて、KMCを用いて施工の進捗状況を部材単位で数値化・可視化するプログラムを開発し、運用を開始した。KMCはクラウド上のデータベースで、着工前に作成するBIMと施工中の建設現場に設置したセンサ・デバイスから取得する空間データを一元管理する。当社は、KMCを東京都内のプロジェクトに導入し、レーザスキャナーやToFセンサ(*1)、Webカメラによる空間データの継続取得を開始しており、取得した空間データには撮影時刻(タイムスタンプ)が付与され、日々変化する建設現場を映し出すデジタルツイン・データとして、施工管理の効率化、遠隔管理、自動搬送ロボットの運用に活用していく。
*1:Time of Flightセンサ
センサからパルス投光されたレーザがセンサ内の受光素子に戻ってくるまでの時間を計測し、その時間を距離に換算する測定センサ
③ トンネル覆工コンクリートの完全自動打設に成功
当社は、岐阜工業㈱及び㈱シンテックと共同で、従来に無い革新的な打設配管システムを開発し、トンネルの覆工コンクリート打設を完全に自動化することに成功した。本システムは、覆工用高流動コンクリートを用いることで締固め作業を不要とし、またコンクリートポンプ車の圧送信号と配管の切替えをリンクさせることで打込み作業も不要としたことにより、人の手を全く介さずに、打上がり高さを自動で調整しながら、全断面で左右均等にコンクリートを吹上げ打設する。
これにより省人化、省力化を図り、安定したコンクリート品質を確保するとともに、従来工法と同等のコストを実現した。
(2) 社会・顧客にとって価値ある建設・サービスの提供
① 超高性能繊維補強セメント系複合材料(UHPFRC(*2))を用いた道路橋床版のリニューアル工法を開発
当社は、中日本高速道路㈱と共同で、超高性能繊維補強セメント系複合材料(UHPFRC)を用いた道路橋床版のリニューアル工法を開発した。本工法は、鋼繊維を多量に混入したUHPFRCを現場で製造・打設して補強・補修を行い、薄層でありながら、高耐久な床版を構築するものである。UHPFRCは超高強度であるため、コンクリート床版・鋼床版のどちらのリニューアルにおいても、床版の厚さの増加を最小限に抑えることができる。そのため、道路橋床版自体の重量を減らすことができ、橋梁下部工の補強が不要となる。
超高強度かつ耐久性に優れたUHPFRCを用いた現場打ち施工による補修・補強技術は、高速道路のリニューアルに大きく寄与することが期待されることから、今後は実工事への適用に向けた準備を進めていく。
*2:Ultra High Performance Fiber Reinforced cement-based Composites
水結合材比が15%程度で極めて緻密なセメント系材料を繊維で補強したもの
② 躯体のひずみに関する光ファイバによる高精度なリアルタイム管理システムを開発
当社は、ニューブレクス㈱と共同で、これまでにない革新的な計測技術により光ファイバ上に生じたわずかなひずみ変化を検知できる管理システムを開発し、ケーソン沈設工事に適用した。他の技術では見ることのできない躯体内部全体のひずみ分布を、網羅的にリアルタイムでモニタリングし、地盤摩擦などケーソン沈設時のトラブルの予兆を捉え、高品質で周辺環境に優しい施工を実現した。わずかなひずみ変化もピンポイントかつ瞬時に捉えられる同システムは広く展開が可能であり、本設・仮設を問わず様々な工種における施工管理へ積極的に活用していく。さらに、光ファイバを残置することにより、長年にわたり構造物の維持管理に活用できることから、インフラのライフサイクル全般での当技術の普及を目指す。
③ リアルタイム現場管理システム「3D K-Field※(*3)」をスマートシティに初適用
当社は、建設現場における資機材の位置や稼働状況、人の位置やバイタル情報等をリアルタイムに3次元で表示するリアルタイム現場管理システム「3D K-Field※」を、当社など9社が出資する羽田みらい開発㈱が運営する大規模複合施設「HANEDA INNOVATION CITY※(*4)」(東京都大田区)の施設運営ツールとして導入した。本システムを施設のデジタルツインとして活用し、各施設や自律走行バスの混雑状況並びに施設管理スタッフやサービスロボットの稼働状況を把握することで、来場者の満足度の向上や合理的な施設管理・運営を目指す。なお、本システムの導入に際しては、当社の関係会社である㈱One Teamがシステムのカスタマイズと各種センサの取付等を担当した。*3:当社、マルティスープ㈱及びアジアクエスト㈱の共同開発
*4:当社の関係会社である羽田みらい開発㈱の登録商標
(3) 社会課題取組み強化(インフラ、耐震環境)
① 飛沫感染対策に「富岳」による室内環境シミュレーションを活用
新型コロナウイルスの脅威が続く中、当社は、室内に漂う飛沫の動きをコンピューター上で予測・見える化し、空調・換気、衝立などによる気流制御を駆使して、ウイルス感染のリスクを低減するための研究・開発を進めている。さらに部屋の広さや建材・家具に適したアドバイス・計画立案で接触感染を防ぐ除菌コンサル、レイアウト診断など多様な感染対応策の提供も行っている。当社は、2002年のSARS(重症急性呼吸器症候群)、2009年の新型インフルエンザの流行を契機に、いち早く飛沫に着目した研究をスタートし、2020年4月からは、国立研究開発法人理化学研究所を中心とした、世界最高性能のスーパーコンピュータ「富岳」を利用した新型コロナ対策に貢献するプロジェクトに建設会社として唯一参画している。
② CO2吸収コンクリート「CO2-SUICOM※(*5,6)」(シーオーツースイコム)を開発・実用化
当社は、中国電力㈱及びデンカ㈱と共同で、硬化の過程でCO2を吸い込み、カーボンネガティブ(CO2排出量がゼロ未満)を実現する革新的なCO2吸収コンクリート「CO2-SUICOM※」を世界で初めて開発・実用化した。「CO2-SUICOM※」は、セメントの半分以上を産業副産物に置き換えるとともに、産業廃棄物を原料とする特殊な混和材(γ-C2S)の配合により産業活動で排出されるCO2をコンクリート中に大量に固定することができる。
地球温暖化防止に向けてCO2削減が急務となっている中、2020年12月に経済産業省が策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では「CO2-SUICOM※」が戦略技術として取り上げられており、普及・展開に大きな期待が寄せられている。
現在、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)の委託を受け、「CO2-SUICOM※」の適用範囲を拡大するための開発を進めており、社会課題の解決に向けての検討をさらに加速させていく。
*5:CO2-Storage Utilization Infrastructure by COncrete Materials
*6:当社、中国電力㈱及びデンカ㈱の登録商標
③ 分散ファンによる省エネ空調システム「OCTPUSTM(*7)」(オクトパス)を開発
当社は、ダイキン工業㈱と共同で、分散ファンによる最適風量制御空調システム「OCTPUSTM」を開発し、本システムをみなとみらい21中央地区58街区(横浜市西区)で当社が他社と共同で開発を進めるオフィスビル「横濱ゲートタワー※」に初導入した。本システムは、大規模なオフィスビルなどで採用されるセントラル空調方式において、空調ゾーン毎にファン付風量制御装置を設置、空調機と連携させることで空調風量制御を最適化し、省エネルギーを実現する。
今後、オフィスビルなどの空調システムとして「OCTPUSTM」を積極的に提案し、建物運用エネルギーの削減を図っていくほか、IoTセンサとの組み合わせによるウェルネス空間への展開も検討していく。
*7:Optimal Controlled Terminal fan Powered Unit System
(国内関係会社)
1 鹿島道路㈱
舗装に関する新技術の開発舗装現場のDX化、CO2排出抑制技術、建機の自動化等ICTを用いた省力化、省人化技術、重機の安全性向上技術等について、研究開発を進めている。舗装現場のDX化の第一ステップとして、トンネル内などの電波不感区域でデジタル通信を可能とする、PLC(*8)技術を用いた通信網構築技術を開発した。今後は、実工事への展開を図る。
*8:Power Line Communication
2 ケミカルグラウト㈱
土壌汚染対策遮水壁の開発施工機械の小型化とこれに対応した特殊材料の開発により、土壌汚染対策に適した遮水壁を造成する工法を開発した。
従来の土壌汚染対策は、汚染土をセメント系遮水壁で囲い込むことで汚染物質の流出を防ぐことや汚染土そのものを掘削除去することが主流であったが、遮水壁の造成や掘削除去には大型機械が必要であり、汚染土直上にある工場等の稼働停止または解体撤去が必要となるなど、施工上の制約が多く、土壌汚染対策実施の足かせとなっていた。
本工法は、施工機械の小型化により、狭隘な場所での施工並びに工場等の稼働を止めることなく対策工事を行うことを可能とするものである。また、小型施工機での造成用に新たに開発した特殊材料は、地盤変位に追随できる柔軟性を持つため、地震等の外力に対しても遮水壁の性能を維持することが可能となる。さらに、この特殊材料には鉄粉等の浄化材を混入させることができるため、遮水壁の造成と土壌汚染の原位置浄化を同じ機械で行うことで費用対効果の高い施工も可能となる。
本技術は、土壌汚染の封じ込めと原位置浄化の適用範囲を拡大し、従来は施工が難しかった厳しい条件下での土壌汚染対策に特に有効と考えられる。今後、実工事での実績を積み、多様な地盤への適用を含めた開発をさらに進めていく。
(開発事業等及び海外関係会社)
研究開発活動は特段行われていない。(注) 工法等に「※」が付されているものは、当社及び関係会社の登録商標である。また、「TM」が付されているものは当社の商標である。
このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E00058] S100LN57)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
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