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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100LMYP (EDINETへの外部リンク)

有価証券報告書抜粋 塩野義製薬株式会社 事業等のリスク (2021年3月期)


従業員の状況メニュー研究開発活動

当社グループ(当社及び連結子会社)は、各組織が主体的にリスク管理・対応策を講じることを基本としております。機会の創出とリスクの回避や低減など、適切な対応を行うとともに、グループ全体を統括する全社リスクマネジメント体制を経営戦略の一環として構築し、その推進を図っております。特に経営に影響を及ぼすような重要なリスクやその対応方針については取締役会及び経営会議にて審議・決定し、対応方針に基づき、主管組織が関連組織と協働し対策を実施しております。
また、事業活動を通じて経済、社会、環境等の様々な社会課題の解決及び医療ニーズに応えることで、社会の持続可能性への貢献と当社グループの持続的な成長を目指すサステイナビリティ活動を推進しております。
以下では、業績及び経営に重要な影響を及ぼす可能性のある主なリスクを記載しており、それぞれのリスクに対し、記載の取り組みによりその低減に努めております。
なお、文中の将来に関する事項及びリスクは、当連結会計年度末現在において判断したものです。

(1)制度・行政に関するリスク
医薬品事業は、各国の政策により様々な規制を受けております。医療保険財政のひっ迫に伴い、先進諸国で薬剤費抑制の圧力が強まる中、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する多額の財政出動はこの圧力をさらに強める可能性があります。我が国においては高齢化の更なる進展に伴う医療費の増加を見越した医療保険制度の改革が進められており、医療用医薬品については2021年度より毎年薬価改定が実施されるなど、これら行政施策の動向が業績に影響を与える可能性があります。また、医薬品の開発、製造などに関連する国内外の規制の厳格化により、追加的な費用の発生や製品が規制に適合しなくなる等の事態が、業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、革新的な新薬を社会が許容できる価格で提供し、社会保障の維持に貢献することを重視する一方で、創出したイノベーションの価値を示す科学的根拠となるエビデンスの構築に努めるとともに、国内外の業界団体活動を通じてイノベーションの価値を訴求する取り組みを推進しております。また、薬価制度を含む医療保険制度改革や研究開発、製造、販売等に関する規制等の動向について常に最新の情報を入手し、その変化に迅速かつ適切に対処するよう努めております。

(2)医薬品の副作用等に関するリスク
医薬品は、世界各国の所管官庁の厳しい審査を受けて承認されておりますが、市販後に予期せぬ副作用等で販売中止、製品回収などの事態に発展し、業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、医薬情報担当者に限らず、副作用情報などを入手した場合、適切に情報を伝えるシステムを構築し、毎年全社員への教育を実施しております。これらの活動を通じて、予期せぬ副作用等の拡大や被害を最小限に抑えるよう努力しております。なお、副作用等に基づく医療被害補償に関しては、保険に加入しておりますが、それに伴うレピュテーションの低下などに起因する売上減少に関しては予想できておりません。

(3)医薬品の研究開発に関するリスク
医薬品の研究開発には、多大な経営資源の投入と時間を必要とします。また、新薬が実際に上市され、売上を計上するまでには様々な不確実性が存在します。さらに、新型コロナウイルスの世界的な蔓延を解決するべく、ワクチン、治療薬の研究開発が異次元のスピードで進められている現状から、今後の研究開発に求められるスピードが劇的に速まることが予想され、その対応如何では企業の存在価値を毀損することもリスクとして想定しなければなりません。
当社グループでは、長年にわたり蓄積した疾患領域の強み、低分子創薬の基盤を活かし、効率的な創薬研究を展開することでグローバルでもトップレベルの研究開発生産性を維持・向上させてまいりました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック下において、グローバルに展開された研究開発の加速は著しく、ワクチンの研究開発では海外他社が先行しましたが、治療薬については必要なデータを確認しつつ、優先度を考慮した研究開発の加速を進めており、これらの知見を感染症以外も含めた研究開発全体に拡大することによってさらなる生産性の改善に結びつけてまいります。一方で、新たな成長領域の育成や創薬確率の更なる向上に向けては、経営資源の適正な配分、低分子以外の創薬モダリティ、すなわち中分子医薬や抗体医薬のような新しい創薬技術の強化が必要となります。そのため、新型コロナウイルス感染症関連(治療薬、ワクチン等)を含む、注力する創薬プログラムや開発化合物を明確にし、自社の経営資源を集中的に投下するとともに、多様なベンチャーやアカデミア等とのアライアンスを活用しつつ、ペプチド医薬、ワクチン、細胞医療(再生医療)といった技術の獲得や、新たな疾患領域における研究展開を加速しております。また、多額の費用を要する臨床開発におけるリスク低減に向けて、データと経験に基づく試験計画のデザイン、試験結果に基づく厳格な見極めを適宜行い、適切な開発可否判断により開発の生産性を高めるとともに、化合物の導入や導出により研究開発の加速や価値最大化、様々な不確実性に対するリスク低減に取り組んでおります。

(4)知的財産に関するリスク
当社グループの製品は、知的財産権(特許権)により保護されて利益を生み出しますが、種々の知的財産が充分に保護できない恐れや第三者の知的財産権を侵害する可能性があります。
そのため、保有する知的財産の価値を毀損することのないよう、知的財産権を適切に管理する体制を整え、第三者からの侵害にも継続的に注意を払っております。また、事業活動にあたっては、侵害予防調査の実施や、導出入活動における知財デューデリジェンスの実施など、侵害予防のための体制を整え、第三者の知的財産権を侵害することのないように注意を払っております。これらを通じて、知的財産に関するリスク低減に努めております。

(5)特定製品への依存に関するリスク
サインバルタ、インチュニブの製品売上収益及び、テビケイ、トリーメク等のHIV製品のロイヤリティー収入が、売上収益合計の約55%(2021年3月期現在)を占めております。これらの品目において、知的財産権(特許権)の満了及びそれに伴う後発品の発売、薬価改定や競合品の出現、その他予期せぬ事情により売上減少や販売中止となった場合には、業績に影響を与える可能性があります。
これら医薬品事業において必然または予期せぬ形で起こり得るリスクに対して、薬価制度や競合状況等の最新情報をもとに、次なる製品群の市場投入や契約の見直し等の打ち手を検討し、その影響の低減に努めております。また、薬価制度の大幅な見直し等、事業の継続性に大きな影響を与える議論がなされる際は、(1)に記載のとおりイノベーション創出の重要性とその価値を訴求すべく業界団体で連携して意見の表明等を行っております。さらに、上記の事業リスクを孕む医薬品中心の事業から、医薬品を含むヘルスケアサービス全般を提供できる企業へと事業の変革を進め、リスクの低減に努めてまいります。

(6)他社とのパートナーシップに関するリスク
医薬品の研究、開発、製造、販売等において、共同研究、共同開発、技術導出入、共同販売等、様々な形で他社との提携を行っております。何らかの事情により提携先との契約が変更・解消され、これら企業との提携に遅延または停滞等が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、提携に際し多方面からの分析・評価を行ったうえで、提携可否を判断しております。また、契約締結においては、発生しうるリスクを想定し、これを低減するための協議と合意形成に努め、その内容を契約書に定めております。さらに、提携中も提携先との間で様々な機能・階層を通じた強固なガバナンス体制を構築し、提携におけるリスクの把握と解決策の協議を密に行い、必要な打ち手を講じることで、業績への影響を最小化するよう努めております。

(7)自然災害やパンデミックに関するリスク
突発的に発生する大地震や気候変動に伴う暴風雨、洪水等の自然災害、不慮の事故、パンデミックの発生等による事業所の閉鎖または工場の操業停止に伴い市場への製品供給に支障をきたした場合、業績に重大な影響を与える可能性があります。また、研究所や臨床試験実施施設等が被害を被った際には、創薬研究または臨床開発の進展に影響が生じる可能性があります。
そのため、経営層が重要と判断した業務を明確にしたうえで、自然災害及びパンデミックに対応するBCP(事業継続計画)を組織単位で策定しており、継続的な訓練の実施や定期的な計画の見直しを行うことにより、有事への備えを強化しております。また、自社工場のみならず、重要なサプライヤーについても、自然災害の影響や、その他環境・安全に対する状況等について、EHS(環境・安全衛生)監査等を通じて確認しており、必要に応じて改善要求をしております。サプライチェーンマネジメントの観点においては、製品の安定供給のため、複数社から原材料の調達を検討し、リスクの低減を図っております。

(8)環境に関するリスク
医薬品の研究、製造の過程等で使用・生成する物質には、人体や生態系に影響を及ぼすものがあります。事業活動を行う過程において環境汚染やそれに伴う危害等が顕在化した場合、施設の一時閉鎖や対策・復旧費用の発生、法的責任を負うこと等により、当社の信用または業績に影響を与える可能性があります。2021年1月に発生しましたシオノギファーマ(株)金ケ崎工場における溶剤 ジクロロメタンの漏出に関しては、回収と漏洩防止に努めており、現時点で工場敷地外への漏洩は確認されておりませんが、敷地外への漏洩のリスクに対して、今後も継続して監視活動を行い適切な対応を実施いたします。
環境・安全衛生に関するリスクを低減するために、当社グループ統括管理体制及び管理規程を設定し、法令遵守はもとより、より厳しい自主管理基準・目標を策定し、対応・対策の実行とそれらの適切性の確認を行っております。加えて、サプライヤーにも同様な対応を依頼し、当社グループを含めたサプライチェーン全体でリスクの低減を進めております。
更に、製薬企業として革新的な新薬を創出し社会課題の解決に努めるだけでなく、国連が定めたSDGs(持続可能な開発目標)に代表されるグローバルなフレームワークに沿った取り組みを進めることは地球の持続的可能性のためにも重要であると考えております。具体的には環境マテリアリティ(重要課題)として特定したAMR※1や気候変動、プラスチック廃棄物対策などに長期目標を設定し、サステイナビリティ課題に取り組んでおります。特に気候変動においては、温室効果ガスの削減の目標を設定し、SBT※2を取得いたしました。

※1 AMR:Antimicrobial Resistance(薬剤耐性)
※2 SBT:Science Based Targets(パリ協定の水準に科学的に整合する温室効果ガス排出削減目標)

(9)金融市場及び為替動向に関するリスク
予測の範囲を超える金融市場や為替市場の変動があった場合には、退職給付債務の増加や海外提携先からのロイヤリティー収入への影響等、業績、財産に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、年金資産を複数の運用商品に分散投資することで、退職給付債務が増加するリスクの低減に努めております。また、外貨建取引及び外貨建金銭債権債務の為替変動リスクに対して、為替予約取引を活用して対応しております。

(10)人材確保・育成に関するリスク
雇用情勢の変化やESG経営への要請の高まり等の環境変化に加え、ポストコロナ時代を見据えた働き方の変化により、労働に対する価値観や必要となる専門性も変わりつつあります。そのような中では、環境変化を好機と捉え社会課題の解決を加速させる人材、HaaS(Healthcare as a Service)企業として持続的に成長していく当社グループのトランスフォーメーションを具現化できる人材、全社視点で論理的に考えグループの高効率経営を支える人材などが求められますが、それら人材を十分に確保・育成できない場合は、競争優位性のある組織が実現できず、中長期的には会社の業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、経営ビジョンの実現に必要な多様な人材の確保・育成に努めております。社会に新たな価値を生み出し、企業価値を高めるために何よりも大切な資本は従業員です。STS2030の達成に向けて新たに定めた人材像「Shionogi Way:一人ひとりが他者を惹きつける尖った強みを持ち、新しいことにチャレンジを続ける人」を実現するために、自ら成長していく機会や自己投資支援の充実、育成を支えるマネジャーへの重点トレーニングに加え、STS2030で目指すHaaS(Healthcare as a Service)企業の実現に資する人材育成プログラムの一つとしてIT/デジタル技術活用による業務変革/価値創造トレーニングなど、種々の施策を実行することで人材育成の強化を図っております。さらに、経営トップ自らが開催する社長塾や経営幹部候補者のグループ会社役員への登用による会社経営の実践を通じて、将来の経営幹部育成にも取り組んでおります。

(11)ITセキュリティ・情報管理に関するリスク
当社グループでは、各種ITシステム(アウトソーシング先を含む)を利用し、かつ個人情報を含む多くの機密情報を保有している中、従業員及びアウトソーシング企業等の不注意または故意による行為、あるいは悪意をもった第三者によるサイバー攻撃やウイルスの感染等によるシステムの停止及びセキュリティ上の問題が発生した場合、事業活動、経営成績及び財政状態、信用に重大な影響を及ぼし、さらには損害賠償請求等の法的な損害や、事後対応に係る費用等が発生する可能性があります。
本リスクを低減するために、情報管理を統括する責任者として情報の保全及び情報セキュリティの確保に関する方針を定めるCIO(Chief Information Officer)、データ及び文書類の利用並びに管理を統制する責任者としてCDO(Chief Data Officer)、IT運営の責任者としてグローバルITヘッドをそれぞれ任命し、法規制やガイドラインを踏まえた情報管理に関する規程等を整備し、従業員へ情報管理の重要性を周知徹底しております。また、個人情報に関しては、グローバルプライバシーポリシーを策定し、個人情報の重要性に対する認識及び個人情報の保護に関する法令を遵守する必要性を従業員に周知しております。
加えて、サイバー攻撃や大規模災害等の危機事象が発生した際の事業継続をより確実に遂行するためのIT-BCP体制構築のプロジェクトを立ち上げ、ITインフラの整備、情報セキュリティ基盤の強化・運用の改善を図るとともに、台湾拠点におけるサイバー攻撃の実例から、再発防止及びグローバル各拠点での未然防止に向けた対策としてグローバルセキュリティアセスメントの実施と対応、グループ全体でのネットワーク体制の抜本的見直し等の対策を行っております。

(12)コンプライアンスに関するリスク
事業活動の遂行にあたって、薬事規制や製造物責任等の様々な法規制の適用を受けるだけでなく、生命に直結する医薬品産業として社会から極めて高い倫理観を求められます。そのため、法令違反だけでなく、社会の要請に反するような行動は、ステークホルダーからの当社グループに対する信頼の失墜や低下を招き、結果として業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、事業活動の中でコンプライアンスの遵守を常に最優先事項として定め、四半期ごとの社長メッセージの中で必ずコンプライアンスについて言及し、従業員のコンプライアンス意識の強化を図っております。またシオノギグループ行動憲章の項目としてコンプライアンスを定め、コンプライアンスポリシーを制定し、コンプライアンス委員会、内部通報窓口(社内、社外)を設置しております。コンプライアンス委員会は、代表取締役社長をコンプライアンス委員長として年4回開催し、コンプライアンス上の課題を協議し、必要な教育(ハラスメント・情報漏洩・贈収賄防止など)や取り組みを実施しております。

(13)訴訟に関するリスク
事業活動に関連して、医薬品の副作用、製造物責任、労務問題、公正取引などに関して訴訟を提起される可能性があり、その動向によって、当社グループの信用または業績に影響を与える可能性があります。
本リスクを低減するために必要な社内体制を構築するとともに、適宜、弁護士や弁理士などの専門家と協議のうえ、適切な対応をとっております。なお、現在、係争中の主な訴訟に関しては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (2)その他 ②重要な訴訟」に記載しております。

(14)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大
今後、更なる感染拡大に伴い事業活動が制限された場合、原材料の調達などのサプライチェーンの停止・停滞により、医薬品の安定供給に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、研究・臨床試験の遅延やMRによる情報提供活動の制限により、新製品等の承認・上市や市場浸透、医薬品の安全性情報や適正使用情報の収集・提供に重大な影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクを低減するために、感染拡大防止に向けた出社率抑制などの政府・行政の要請に応えつつ、生産性を維持・向上するために必要な新しい働き方に取り組んでおります。加えて、製薬企業として社会的責任を果たすため、自社医薬品の安定供給を最優先とした対応を行うことを目的に、これまでに想定していたパンデミックBCPの活用により、安定供給を含む重要業務に影響を及ぼさないよう、事業継続を進めております。また、コロナ禍における販売活動は、厚生労働省による販売情報提供活動に関するガイドラインの発出下で情報提供の仕組みや内容を変更し、対応しております。

上記以外にも、事業活動に関連した様々なリスクがあり、ここに記載されたものが当社グループのすべてのリスクではありません。

従業員の状況研究開発活動


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