ライオン株式会社 研究開発活動 (2020年12月期)

当社グループは、経営ビジョン『次世代ヘルスケアのリーディングカンパニーへ』の実現に向け、「健康」、「快適」、「清潔・衛生」を通じた新たな顧客体験価値を創造し、お客様一人ひとりの「心と身体のヘルスケア」を実現する製品の開発や、未来の生活を提案する研究開発に取り組んでいます。健やかで自立した人生や、清潔で快適な生活の実現、さらに、未来にわたり安心して暮らせる社会を目指し、確かな科学的根拠に基づく研究を進めています。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、10,906百万円であります。
各セグメントの研究開発活動は下記のとおりです。

(1) 一般用消費財事業

一般用消費財事業では、オーラルケア、ビューティケア、ファブリックケア、リビングケア、薬品、その他の6つの事業分野に分け、研究開発を行っています。

① オーラルケア事業分野では、口腔科学を中心とする研究成果を活かして、ハミガキ、ハブラシ、デンタルリンスなどの開発を行っています。
予防歯科から生まれた「クリニカ」ブランドからは、歯の根元までトータルケアし、蓄積した歯の黄ばみも浮かせて除去する『クリニカアドバンテージ Next Stage+ホワイトニング ハミガキ』を新発売しました。また、オフィスなどの職場で周囲に気兼ねなく歯みがきができるように設計され、通気性がよくハブラシを衛生的に保管できるコップ付オーラルケアセット『MIGACOT』を新発売しました。さらに、音声ガイドで誘導したお子様のハブラシの動きをハブラシ内の加速度センサーが検知し、歯みがきの点数や磨き残し部位をアプリに表示することで、お子様による自主的な歯みがきをサポートするIoTハブラシ『クリニカKid’s はみがきのおけいこ』を新発売しました。歯周病セルフケアをリードする「システマ」ブランドからは、歯に蓄積したくすみを除去する『システマ EX W ハミガキ』を発売しました。加えて、歯ぐきのコラーゲンを守り、組織を修復して歯周病を防ぐ「システマ ハグキプラス」シリーズとして、『システマ ハグキプラス ハミガキ』『システマ ハグキプラス デンタルリンス』を、改良発売しました。また『システマ ハグキプラス プレミアム ハミガキ』に優雅でリラックスした気分にさせてくれる新香味「ロイヤルハーブミント」を追加発売しました。口臭科学から生まれた「NONIO」ブランドからは、若年層の関心が高い「口臭ケア」と「美白ケア」のダブルケアができる『NONIO プラスホワイトニングハミガキ』と『NONIO プラスホワイトニングデンタルリンス』を発売しました。加えて20-30歳代の男性をターゲットとした「強刺激」な新香味を追加し『NONIOハミガキ スパイシーミント』と『NONIOマウスウォッシュ スパイシーミント』を発売しました。今ある歯を1本でも多く守る「デントヘルス」ブランドからは、「歯の土台」を守る力を引き出し、歯槽膿漏を防ぐ『デントヘルス薬用ハミガキSP』を改良発売しました。
歯科医院向け製品では、知覚過敏の症状をダブルで防ぐ歯磨剤『Systema Sensitive』を発売しました。

② ビューティケア事業分野では、皮膚科学、界面科学を中心とする研究成果を活かして、ハンドソープ、ボディソープ、制汗デオドラントなどの開発を行っています。
吸着保湿処方で肌にうるおいを与えるボディソープ「hadakara(ハダカラ)」では、より保湿を求める方に向けた新製品として、『hadakara(ハダカラ)ボディソープ オイルインタイプ』を発売しました。さらに、汗じみの原因となるワキ汗を抑える制汗剤「Ban(バン)汗ブロック」から、1日中落ちにくい「超耐久」を実現し、植物エキスを新たに配合した『Ban(バン)汗ブロックプラチナロールオン』を、汗もニオイもしっかり拭き取り、高い清涼感で肌をさらさらにする『Ban(バン) 爽感さっぱりシャワーシート クールタイプ』からトレンドの香り2香調を発売しました。

③ ファブリックケア事業分野では、界面科学を中心とする研究成果を活かして、衣料用洗剤、柔軟仕上げ剤などの製品開発を行っています。
洗濯用洗剤ブランド「トップ」から、高濃度処方で高い洗浄力を実現し、環境にも配慮し100%リサイクルPETの透明ボトルを採用した、衣料用液体高濃度洗剤『トップ スーパーNANOX』を改良新発売しました。また、同じ「トップ」ブランドから、部屋干しでもイヤなニオイを抑え、衣類だけでなくお部屋に広がる香りまで楽しめる、『香りつづくトップ 抗菌plus Shiny Rose』を新発売しました。漂白剤ブランド「ブライト」から、粉末漂白剤の性能を高める漂白活性化剤を当社史上最大濃度配合し、汚れの漂白、ニオイの徹底除去だけでなく、除菌、ウイルス除去(つけおき洗いの条件)まで可能にした衣料用酸素系粉末漂白剤『ブライトSTRONG極パウダー』を、EC(ネット通販)サイト「Amazon」 「楽天市場」 「LOHACO」で、限定新発売しました。柔軟剤ブランド「ソフラン」から、より多くのお客様へお届けするため、“臭くならない服は、つくれる”という新提案とともに、パッケージをリフレッシュした『ソフラン プレミアム消臭』を改良新発売しました。

④ リビングケア事業分野は、界面科学を中心とする研究成果を活かして、台所用洗剤、住居用洗剤などの製品開発を行っています。
台所用洗剤分野では、すばやい水切れで食器が速く乾く『Magica速乾+(プラス)』をリニューアルし、圧倒的な水切れによる速乾性能はそのままに、爽やかでスッキリした香りにリフレッシュしました。また、住居用洗剤分野では、18年発売後好調の、浴槽の“真のこすらず洗い”を実現した『ルックプラス バスタブクレンジング』より、浴槽をこすらずに洗える機能に加えて、銀イオン配合により「除菌」も「ピンク汚れ予防」もこすらずにできる『ルックプラス バスタブクレンジング 銀イオンプラス』を新発売しました。さらに、調理サポートブランド「リード」では簡単に・確実に開け閉めできるスライドジッパータイプで、抗菌加工フィルムを採用した食品保存バッグ『リード 冷凍も冷蔵も新鮮保存バッグ スライドジッパー』を新発売するなど、“家事ストレス低減”に向けた製品群を発売しています。

⑤ 薬品事業分野では、製剤技術や薬効・薬理技術を中心とする研究成果を活かして、人々のセルフメディケーション意識を支える一般用医薬品などの開発を行っています。
目薬ブランド「スマイル」から、目の疲れ、目のかすみ、充血、かゆみに優れた効き目を発揮する防腐剤無添加の『スマイル40EXa』と『スマイル40EXマイルドa』を改良発売しました。皮膚薬ブランドでは、2019年に資生堂薬品㈱から譲り受けた一般用医薬品ブランド「エンクロン」の製品をかゆみ治療薬「メソッド」に統合し、“かゆみの治療は部位で選ぶ”を新たなブランドコンセプトとして製品リニューアルをしました。

⑥ 通信販売事業では、生命科学や製剤技術を中心とする研究成果を活かし、健康寿命の延伸およびQOL(生活の質)の維持・向上を通じた生活者のウェルビーイングに向けた製品やサービスなどの開発を行っています。
足の筋肉の機能維持に役立つHMBカルシウムと、膝関節の曲げ伸ばしをサポートするグルコサミン塩酸塩を配合した機能性表示食品「エグゼアクティブ」を新発売しました。
ペット事業においては、当社獣医師、社外獣医師との協働により動物行動学、口腔科学の研究とライオングループ内の技術を活かしてペットオーラルケア用品、ボディケア用品などの開発を行っています。
オーラルケア分野においては、犬用「PETKISS食後の歯みがきガム」シリーズの改良品ならびにシニア用を追加発売しました。また、オーラルケア用品は、「PETKISS指サック歯磨きシート」2品、「PETKISSデンタルブラシ」3品を発売しました。オーラルケア習慣化促進を狙った「ペットオーラルケア相談室、セミナー」活動は、コロナ禍により対面、集合形式での開催を避け、リモート対応を開始しました。
ボディケア分野では、泡で出てくるタイプの「ペットキレイ毎日でも洗える泡リンスインシャンプー」「ペットキレイ皮フを守る泡リンスインシャンプー」を発売しました。空間ケア分野では、気になるお部屋のニオイをやさしく、しっかり消臭する「シュシュット!植物生まれの消臭剤」4品を発売しました。
さらに、猫サニタリー分野では、猫にもオーナーにとっても理想のトイレ環境を目指して、「獣医師開発ニオイをとる砂専用猫トイレ」を新発売しました。動物行動学に基づいたサイズ設計など、当社獣医師と猫専門医とで共同開発した商品です。

一般用消費財事業に関わる研究開発費は、9,116百万円であります。

(2) 産業用品事業

① ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ㈱は、界面科学、合成技術を中心とする技術を生かし、導電性材料、ゴム加工薬剤、機能性ポリマー、繊維加工薬剤、脂肪酸窒素誘導体、土木建築用途を含むインフラ薬剤などについて、お客様に密着した開発を行っています。当連結会計年度の主な研究成果は次のとおりです。
導電性材料では、主力商品であるケッチェンブラックおよびその派生品の育成に向けた応用研究を、自動車用二次電池用途、半導体包装材料用途を中心に進めております。ゴム薬剤では、機能性を高めた防着剤を開発・発売し、国内外のお客様にご好評を頂いております。機能性ポリマーでは、耐熱性を向上させたアクリル粘着剤や高機能フィルム用粘着剤を開発・発売し、国内外のお客様にご好評を頂いております。土木建築用途を含むインフラ薬剤では、地盤改良薬剤を中心に工事現場の施工性向上や廃棄物低減に貢献する薬剤を開発し、市場展開を進めています。

② レストラン・居酒屋・集団給食などの外食・中食産業、食品工場、病院・介護施設、クリーニング向けの業務用洗浄剤などの製品開発と製造、販売、ならびにこれらのお客様の食の安全・安心をサポートする衛生診断や衛生講演をはじめとする総合衛生管理ビジネスをライオンハイジーン(株)が行っております。
当連結会計年度の主な成果としては、工業用分野では、野菜加工機用「発泡洗浄剤MF704A」を新発売、「野菜キレイ洗浄機クリーナー」を改良発売しました。当社独自の野菜殺菌・洗浄製法である「野菜キレイMiBOシステム」の関連アイテムとして、食品工場における安全で衛生的な、品質の高い製品づくりに役立てていただいております。
サニテーション分野では、新型コロナウイルス感染症が拡大する中、少しでも多くお客様のお手元に届けるべく、手指消毒剤をはじめハンドソープやアルコール製剤の増産と新製品開発に取り組みました。除菌・抗菌・ウイルス除去ができるアルコール製剤の「ファイナルアルコール」や室内空間用置き型除菌剤「メディナース空間除菌」、さらに、すばやく手肌になじんでさらっと乾く手指消毒剤の「ライオン手指消毒速乾ジェル」を新発売し、好評をいただいております。
一方、食品衛生法改正による、HACCPに沿った衛生管理の義務化に対応したソリューションツールとして「はやラクHACCP」を発売しました。
その他、クリーニング分野では、抗ウイルス効果もある濃縮抗菌剤「抗菌ファブキーパーコンク」、病院・介護施設向けには、1本で髪も身体もやさしく洗い上げる全身洗浄料「ソフィール泡の全身シャンプー」等、お客様の利便性や省力化ニーズに対応した商品を新発売しました。
今後ともお客様のニーズや社会的要請に対応したソリューションを提供し、ビジネスユースを通じた衛生的で安全な環境作りへの貢献を目指してまいります。

産業用品事業に関わる研究開発費は、1,109百万円であります。

(3) 海外事業

海外事業では、コロナ禍によりアジア各国市場も大きな変化を生じた中で、衛生関連商品の発売や、各国の消費行動変化を反映した製品の強化に努めました。
事業分野別の新製品・改良品は以下のとおりです。
オーラルケア分野では、衛生意識の高まりから使用率が向上している洗口液市場に対して、日本で好評のNONIO洗口液を発売しました。マスク着用による口臭が気になるお客様の増加により、香港では発売半年でシェア11%を獲得しました。また中国では、日本発のブランドの継続拡大を図る一方で、多様なニーズで消費をけん引する若年層を捉えるため充電式電動ハブラシを発売。毎分41,000回の高速振動で5段階モードが設定でき、今までにない磨き心地を実現しました。
ビューティケア分野では、拡大したハンドソープの需要に対応して生産量を拡大するとともに、各国でご好評を頂いている「キレイキレイシリーズ」の商品ラインアップを強化しました。泡ハンドソープでは、タイで「ラベンダーの香り」を追加発売し、韓国では、殺菌力と手肌マイルドを両立して手洗い回数の増加に対応する、コンディショニングタイプを発売するとともに、手指消毒ジェルも新たに投入しました。
さらに、新たな試みとして「Kビューティ」と呼ばれる韓国発のフェイスケア化粧品の新ブランド「RAWQUEST(ロークエスト)」を発売しました。優れた保湿力の安心な基礎化粧品シリーズとして、拡大するEコマース市場から販売を開始しています。
ハウスホールド分野では、タイでルックブランドから「多目的消毒スプレー」を発売し、韓国では衛生ケアの専門ブランド「hygia(ハイジア)」を立ち上げました。各種消毒スプレーから消毒紙クリーナー、手指消毒ジェルなどの幅広い品揃えで衛生ニーズに応えます。また衣料用洗剤は各国の行動規制を受けて市場縮小が顕著となりました。その中で、マレーシアではトップ「シルキーミラクル」を粉末・液体2つのタイプで追加発売しました。柔軟効果と優れた洗浄力を併せ持つ経済性と利便性が高い評価を頂いています。
海外事業では、今後も日本発・海外発の製品を拡大しスピーディーなグローバル化を進めて参ります。

海外事業に関わる研究開発費は、680百万円であります。
なお、海外事業に関連する日本国内での研究開発費は、一般用消費財事業に含まれております。