有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100M24U (EDINETへの外部リンク)
株式会社スリー・ディー・マトリックス 事業の内容 (2021年4月期)
当社グループは、当社及び連結子会社9社で構成され、MITより自己組織化ペプチド技術に係る特許の専用実施権の許諾を受けて、同技術を用いた製品の研究開発・製造・販売を実施することを目的とした医療製品事業を行っております。
当社グループは、医療製品事業の単一セグメントであり、医療製品開発・研究試薬販売で構成されております。その内容は以下のとおりです。
(医療製品事業の構成)
区分 | 内容 |
医療製品開発・販売 | 自己組織化ペプチド技術を基盤技術として外科領域・再生医療領域・DDS領域において医療機器及び医薬品の研究開発を行う事業です。 主要な開発パイプラインとしては、外科領域では吸収性局所止血材、粘膜隆起材、癒着防止材を有しており、再生医療領域では歯槽骨再建材、創傷治癒材を有しています。 |
研究試薬販売 | 自己組織化ペプチドのPuraMatrix製品を米国の販売会社を通じて研究試薬用途での販売を行っています。同製品は、国内外の大学・研究機関等における自己組織化ペプチドを用いた様々な医療分野の応用研究に用いられております。 |
(1)自己組織化ペプチド技術の特徴
当社グループの基盤技術となっている自己組織化ペプチド(*)のうち第一世代の製品であるPuraMatrix製品(RADA16)(*)は、体を構成するアミノ酸(*)であるアルギニン(R)(*)、アラニン(A)(*)、アスパラギン酸(D)(*)からなる(RADA)の繰り返し配列である16残基のペプチド(*)であり、このペプチドを溶解した水溶液はpH(*)が酸性から中性になると速やかにゲル化(*)する性質を有しています。具体的には、分子同士を繊維状に結合(自己組織化)してナノファイバーを形成し、そのナノファイバーが絡み合うことでゲル化します。形成されたゲルは生体内で細胞が培養される環境に近く、コラーゲン等の細胞外マトリックス(*)に似た網目構造をしています。
自己組織化ペプチドは、原材料に生物由来品を含まず化学合成により生産されることから、生物由来品から生じるウイルス等の感染や未知の成分の混入の可能性がないため安全性が高く、ほぼ均一の品質で大量生産が可能な点が特長として挙げられます。自己組織化ペプチドは、これまでに実施したADME試験(*)において、特定の臓器に蓄積されることなく、生体内のタンパク質と同様にタンパク質分解酵素(*)により分解され、30日程度で体外に排出されることが確認されています。
(2)医療製品事業の内容
①医療製品開発
医療製品開発は、自己組織化ペプチド技術を基盤技術として外科領域、再生医療領域、DDS(*)領域において医療機器及び医薬品の開発を行う事業です。
主要な開発パイプラインとしては、外科領域では吸収性局所止血材・粘膜隆起材・癒着防止材、再生医療領域では歯槽骨再建材・創傷治癒材があります。当社グループは、そのいずれについても、医療機器として自ら開発し製造販売承認を取得する方針であり、販売については国内外の提携先に独占販売権を許諾することとしておりますが、特に製品販売立ち上げ当初は直販による販売体制の構築や、また、薬事規制、市場動向、当社グループのリソース等を勘案して現地企業等と提携することでの製品化も実施していく方針です。また、当社グループは、再生医療領域では細胞再生の足場材(*)として骨再生や心筋再生を促進する研究を行っており、今後製品化に向けた開発も行ってまいります。DDS領域では、自己組織化ペプチドを薬剤の担体(*)とし、各薬剤と組み合わせた製品化に向け取り組んでおりますが、医薬品としての開発可能性が高く当社独自で薬剤や治療物質について技術を取得するには時間を要することからも、製薬会社等に技術供与(ライセンス)を行うことによりロイヤリティー等のライセンス収入の獲得を目指してまいります。
その他当社では、大学等の研究機関とのMTA契約(*)に基づく共同研究によって、自己組織化ペプチドをベースとした応用技術の獲得に取り組んでいます。
A各領域及び各パイプラインの概要
(A)外科領域
当社は、外科領域において、吸収性局所止血材、粘膜隆起材、癒着防止材の開発パイプラインを有しています。
a)吸収性局所止血材
当社は、自己組織化ペプチドであるRADA16を基に、出血部に塗布して用いる外科手術用の吸収性局所止血材(開発コード:TDM-621)(以下「TDM-621」という。)の開発を進めています。TDM-621は、血液等の体液と接触するとpHが中性化され、自己組織化してナノファイバーを形成しゲル化します。ゲルは体組織との接触面を隙間なく被覆し、被膜が形成されて表面皮膜及び血管浅部を物理的に閉鎖し、血管深部では血液凝固が生じることで止血されます。
自己組織化前のペプチド分子
TDM-621は、ペプチド水溶液をシリンジに無菌充填したプレフィルドシリンジ(*)形態で、ブリスター包装(*)された製品であるため、手術現場では、パックを開封してすぐに使用することが可能であること、使用前の調製の必要がないなど適用量が調整しやすく操作性に優れていることといった特長を有しています。また、澄明な液体形状であることから術野を妨げることがなく、カテーテルや組織の狭部への適用も容易です。
既存の止血剤製品群(*)は、糊状・シート状・粉末状等の形状がありますが、主として糊のように機能して接着することにより止血効果を得るものであるのに対し、TDM-621は物理的に表面皮膜及び血管浅部を閉鎖して止血するものであるため、既存製品と異なり接着による待ち時間、圧迫による圧着時間を短縮することが可能です。また、既存製品は、一度組織に接着すると除去が困難であるのに対し、TDM-621は、余剰部分を生理食塩水により洗い流すことで容易に除去することができます。既存製品の多くは、フィブリノゲン(*)等の人や動物の血液から生成又は動物の皮膚から生成したコラーゲン等を原材料としており生物由来の材料を含むため、ウイルス感染等のリスクは完全には否定できないのに対し、TDM-621は、生体内に存在するアミノ酸を化学的に合成したもので生物由来品を含まないため、生物由来品から生じるウイルス等の感染や未知の成分の混入によるリスクがありません。生物由来品は、医療現場においては、① 患者(又はその家族)への適切な説明、② 使用記録の作成と保管、③ 感染症等情報の報告等における管理体制の厳格化が要請されることから、より安全性の高い製品が期待される状況となっており、TDM-621は患者と医師の負担・リスク軽減に貢献できるものと考えられます。
(研究開発の状況)
当社は、TDM-621の日本での製造販売承認申請に向けて、2010年1月より臨床試験(*)を開始し、2011年5月にPMDAに対してTDM-621 の製造販売承認申請を行いましたが、2015年3月に申請の取下げを行いました。有効性評価をより客観的に検証するため2017年4月に再度治験計画届を提出し、消化器内視鏡治療の領域において有効性を従来の止血法と比較する試験を実施、2020年7月にPMDAより消化器内視鏡領域において製造販売承認を取得しております。
また、当社は、TDM-621の海外展開に向け開発を進めております。欧州においては、2014年1月にCEマーキングの指令適合について第三者認証機関から認証を受け、EU加盟国への販売が可能となりました。当社は、CEマーキングを活用し、アジア・オセアニア・南米地域の主要国での登録承認を取得し、製品販売を開始しております。米国においてはまず消化器内視鏡の領域において、510(k) (*)のプロセスにて承認申請を行いました。
b)粘膜隆起材
当社は、自己組織化ペプチドを基に、消化器内視鏡治療による胃癌や食道癌等の粘膜切除術や粘膜下層剥離術(*)において、腫瘍部位の粘膜隆起を形成する内視鏡用粘膜下注入材(*)(開発コード: TDM-644)(以下「TDM-644」という。)の研究開発を進めています。胃や食道等の早期癌治療において行われる内視鏡による粘膜切除術や粘膜下層剥離術では、粘膜下層に生理食塩水や内視鏡用粘膜下注入材を病変部の粘膜下層に注入し、病変部を隆起させ、隆起させた根元部分に細いワイヤーをかけて締めたうえで高周波を流して焼き切り(内視鏡的粘膜切除術)、又は隆起させた病変部を粘膜下層の深さで電気メスにより引き剥がし(内視鏡的粘膜下層剥離術)、病変部を取り除きます。この病変部を隆起させるために用いられる内視鏡用粘膜下注入材として開発しているのがTDM-644であり、血液等の体液と接触することで中性化しゲル化する特徴から、必要な隆起を形成するとともに、副次的には止血効果も有することが動物実験により確認されています。
(研究開発の状況)
2014年12月に国内での臨床試験を開始しましたが、有効性をより明確にできる試験方法や製材の検討を実施するために、2015年2月に自主的に臨床試験を一時中断しました。その後、製品の優位性の検討を高めるため、ペプチドに改良を加えた新たな配列で開発を進めております。2020年12月に治験を必要としない改良医療機器での承認申請を行いました。
c)血管塞栓材
当社は、自己組織化ペプチドであるRADA16を基に、肝動脈塞栓術及び子宮動脈塞栓術における塞栓物として用いるための血管内塞栓促進用補綴材(*)(開発コード:TDM-631)(以下「TDM-631」という。)の研究開発を進めています。肝臓癌や子宮筋腫に対する肝動脈塞栓術及び子宮動脈塞栓術では、カテーテルを通じて動脈内に塞栓物を注入し、血管内腔を物理的に塞栓することで、腫瘍の栄養血管である動脈を塞いで腫瘍への栄養を絶ち、腫瘍を死滅させます。TDM-631は、血液と接触するとゲル化するため、カテーテルから動脈内に注入されると血管内腔を塞ぐことが可能であり、当社は新たな塞栓物としてTDM-631の開発を進めております。
(研究開発の状況)
当社は、前臨床試験(*)により、TDM-631を造影剤に溶解しカテーテルを通して血管内に注入するとゲル化することや、ゲル化したTDM-631はX線カメラにより視認可能なことを確認しております。また、TDM-631の生体内における血管塞栓効果をみるために、動物モデルを用いた実験を行っております。
(B) 再生医療領域
自己組織化ペプチドは細胞の増殖を支える細胞外マトリックスに似た物理構造を有することから、当社グループでは、再生医療領域において歯槽骨再建材、創傷治癒材を開発パイプラインとして有しております。また当社グループは、当該パイプライン以外に、歯槽骨以外の骨の再建、軟骨・腱の再生、心筋の再生等に関する研究を行っております。
a)歯槽骨再建材
当社グループは、歯周病による歯槽骨の退行で歯が脱落した場合等に、インプラント術前にインプラント固定に充分な骨量を確保するために行う歯槽骨再建術において、骨再生のための足場材となる製品(開発コード:TDM-711)(以下「TDM-711」という。)の開発を行っています。
ゲル化された自己組織化ペプチドは、ナノファイバーによる3次元構造が維持され、生体内で細胞が増殖する環境に近く、生体組織の再生をサポートする特性を有しています。TDM-711は、骨量不足箇所に充填されると、かかる特性により足場材として骨再生を促進します。米国でのインプラント治療における歯槽骨再建術では、代替骨を用いる施術も少なくなく、自家骨(*)や他家骨(*)、人工骨を用いた再建術が行われていますが、当社グループは、他家骨や人工骨を用いた再建術において、その生着を高めるためにTDM-711を用いることの開発を進めております。
(研究開発の状況)
当社グループは、GLP(*)下において歯槽骨に欠損がある状態でのTDM-711の有効性の確認試験を実施し、通常の欠損群に比べ有意な骨再生が認められたため、その後も研究開発を進めてまいりました。当社グループは、TDM-711につき、2012年2月には、米国ハーバード大学の医学部・歯学部の付属研究所であるフォーサイス・インスティテュート(Forsyth Institute)において、臨床試験を開始し、プロトコルで規定した15症例の施術および経過観察が完了しております。骨再生に有効なデータを得ておりますが、プロトコルに改善の余地があったため、2018年4月期に症例を追加して現在も臨床試験を継続しており、今後も製品化に向けた開発を進めてまいります。
b)創傷治癒材
当社グループは、皮膚(表皮、表皮・真皮)からの出血を迅速に止血する局所止血材、皮膚の創傷部の再生環境を整え、創傷治癒を促す製品(開発コード:TDM-511)(以下「TDM-511」という。)を開発しております。
(研究開発の状況)
当社グループは、前臨床試験を実施し、申請に必要な有効性に関するデータを入手しております。当該結果をもとに市販前届510(k)による申請の準備を進め、2014年10月に医療機器として市販前届510(k)を米国FDAに申請し、2015年2月に販売承認を得ました。創傷治癒材としての活用に加え、他薬剤とのコンビネーションによる治療効果の増大が期待できることから、熱傷治療、皮膚がん治療などへの応用研究を進めていく計画です。また、米国において巨大な市場である美容整形分野にアクセスするために、現在米国FDAに対して適応の拡大を申請しております。
(C)DDS領域
当社は、DDS領域において、自己組織化ペプチドをDDSにおける薬剤や治療物質のキャリア担体として活用するための研究開発を行っており、bFGF(*)・PDGF(*)等のタンパク質の徐放においても複数の有効性試験を実施しております。中でも、ハイドロゲルを形成する自己組織化ペプチドとは異なり界面活性(*)作用を持つペプチド(A6K(*))については、溶液中でナノチューブを形成する性質を有するため、当社は、癌細胞へのsiRNA(*)の導入試験において、かかる性質を活かし、ナノチューブに内包された形で癌細胞膜透過性をもたらし、導入効率を高めていく研究を行っております。
(研究開発の状況)
当社は、界面活性ペプチドを用い国立がん研究センターと新規癌治療技術の開発に向けて共同研究を行っており、癌細胞への徐放技術の確立に向け前臨床試験実施し、乳がん治療に向けたsiRNA核酸医薬のDDS(ドラッグ・デリバリー・システム)を共同開発しております。外科領域・再生医療領域では、当社は自ら医療機器として臨床試験・製造販売承認取得まで開発を進めますが、DDS領域では、医薬品としての開発が主力となるため、事業化に関してはsiRNA等の薬剤や治療物質についての技術を有する大手製薬企業への技術供与(ライセンス)を実施する予定です。
B 医療製品の開発プロセス
当社グループが自社による開発や製造販売承認取得を目指している医療製品は、医療機器に分類されます。
新たに医療機器や医薬品を開発する場合、その開発プロセスは、基礎研究、前臨床試験、臨床試験、製造販売承認申請という基本的な流れは共通ですが、医薬品の場合には臨床試験が多段階に設定されており、一般に試験を行うことが要求される対象例や症例数が多く、医薬品の開発プロセスは長期に亘ります。
医薬品の開発プロセスでは、臨床試験の試験相が第Ⅲ相まで(第Ⅰ相・第Ⅱ相で少数の健常人や患者に対して投与し安全性や有効性の評価を行い、第Ⅲ相で多数の患者に投与し、安全性や有効性の確認・実証を行う)に分かれるのに対し、当社が開発している医療機器では1つの相で比較的短期間に臨床試験が実施されます。
当社グループでは、現在、外科領域における吸収性局所止血材・粘膜隆起材・癒着防止材、再生医療領域における歯槽骨再建材・創傷治癒材を医療機器として開発し、当社グループ自ら製造販売承認を取得します。主にDDS領域における自己組織化ペプチド薬剤の担体については、医薬品としての開発となる可能性が高いこと、また、当社独自で薬剤や治療物質についての技術を取得するには時間を要することなどから、主に大手製薬企業への技術供与(ライセンス)を行うことでロイヤリティー等のライセンス収入の獲得を目指します。
当社の医療機器の研究開発プロセスの概要は以下のとおりです。
各プロセス | 内容 | |
① | 基礎研究 | 当社技術が適用可能で医療機器として開発可能なアプリケーションの探索及び製品スペックの最適化を行う。 |
② | 前臨床試験 | 医療機器としての条件を満たす安全性、有効性を動物実験により検証を行う。 |
③ | 臨床試験 | 患者に対する医療機器の安全性、有効性について検証を行う。 |
④ | 製造販売承認申請 | 厚生労働省/PMDA、米国のFDA等の各国の許認可審査機関へ製造販売承認の申請を行う。 |
⑤ | 製造販売承認取得 | 厚生労働省/PMDAや各国の許認可審査機関から製造販売承認を得る。 |
⑥ | 保険収載 | 各健康保険の適用が可能な償還価格(*)を得る。 |
⑦ | 上市 | 医療機器製品として製造及び販売を行う。 |
当社グループでの医療製品開発における、主要なパイプラインの進捗状況は以下のとおりです。
(主要なパイプライン開発の状況)
(注)1 吸収性局所止血材
欧州:2014年1月にCEマーキング指令適合を受け2015年4月期に製品販売を開始。
日本:2020年7月に製造販売承認を取得。
米国:510(k)での承認申請済。
韓国:CEマーキングでの製品登録申請済、2022年4月期での承認取得、2023年4月期での製品販売開始を予定。
南米地域(ブラジル、メキシコ、コロンビア等):2016年4月期に各国での製品登録が完了。2017年4月期より製品販売を開始。
他アジア・オセアニア地域:香港、シンガポール、インドネシア、マレーシア、ブルネイ、オーストラリアタイの各国にて2017年4月期に製品販売を開始。
2 癒着防止材
米国においてFDA(米国食品医薬品局)へ市販前届510(k)申請による承認取得。適応拡大を申請中。
3 歯槽骨再建材
米国において2012年2月に臨床試験を開始、2018年4月期に症例を追加し継続中。
4 創傷治癒材
2014年10月にFDA(米国食品医薬品局)へ市販前届510(k)を申請。2015年2月にFDAより同承認を取得。
5 DDS領域
DDS(ドラッグ・デリバリー・システム)領域において当社ペプチドを医薬品等のキャリアとする開発で、当社単独での事業化ではなく大手製薬企業への技術供与(ライセンス)を目標。
C医療製品開発の事業体制
当社グループでは、小規模・少人数の組織体制で医療製品開発を効率的に進めるため、外部機関を有効に活用して事業を遂行しています。研究開発においては、当社グループがMITから専用実施権を得ている自己組織化ペプチド技術を基盤技術として、大学・研究機関等とMTA契約を締結し共同研究等によって応用技術の獲得に取り組んでいます。
当社は、ペプチド原材料の製造を複数社に委託しており、吸収性局所止血材の製造については、扶桑薬品工業株式会社との間で締結した製造委受託契約が終了しましたが、新たな製造受託先への移行までに必要と想定される製造量についての製造を行うことを同社との間で合意しております。製造所移管に関しましては、次世代止血材の製造を行う相手先を第一候補として、製造バリデーション等の準備を整えております。
また当社は、2009年4月に伊藤忠ケミカルフロンティア株式会社と業務提携契約を締結しており、ペプチド原材料調達・製品製造委託・販売に関して協力・支援を受ける体制をとっています。
製品販売に関しては、吸収性局所止血材の販売について、2014年1月にCEマーキングの指令適合に係る認証を取得し、EU加盟国及びCEマーキング適用圏であるアジアにて製品販売を開始しております。欧州地域における販売契約は、まず内視鏡領域に関しては、2019年6月にFUJIFILM Europe B.V.(以下「FUJIFILM」という)と独占販売の締結を致しました。その他の領域に関しては、複数社との交渉を継続して進めております。なお、オーストラリアに関しては、当初現地代理店による販売を行いましたが、販売力強化のため、2019年4月期より、直販体制に移行しております。日本においては、扶桑薬品工業株式会社との間で締結された独占販売権許諾契約が終了したため、新しい販売パートナーを早期に獲得すべく活動を進めるとともに、直販も含めた様々な選択肢を検討し、新たな販売体制を早急に構築してまいります。当社は、海外への製品販売に向けても、韓国Daewoong Pharmaceutical Co.LTDとPARTNERSHIP AGREEMENTを2010年9月に締結し、同社に対し韓国における独占販売権を許諾し、また、台湾Excelsior Medical Co.,Ltd.とLICENSE AGREEMENTを同月に締結し、同社に対し台湾における独占的開発・製造・販売権を許諾しております。また、2013年3月には、医療機器の品質マネジメントシステムのための国際標準規格ISO13485の認証を取得しており、各国への輸出を実施しております。
当社グループにおける基本的な医療製品事業の流れは以下のとおりです。
(注)1 製品販売/代金回収を示しております。
2契約一時金は提携契約締結時に収益となるものであり、マイルストーンペイメントは開発過程において提携契約に定める一定の段階を達成した場合に収益となるものです。
3当社は、業務提携先からは、ペプチド原材料調達、製造技術、国内外の販売提携に関する助言/協力/支援を得ています。また、業務委託先とは受託臨床試験機関(以下「CRO」という。)や薬事アドバイザー等です。
4 連結子会社である3-D Matrix,Inc.であります。
②研究試薬販売
当社は、2008年2月より米国の販売会社とSupply Agreementを締結し、同社に対し自己組織化ペプチドのうちPuraMatrix製品(RADA16)の研究試薬としての独占販売権を許諾して、全世界の大学・研究機関等に向けて同製品を研究試薬として販売しています。かかる研究試薬については、ペプチド原材料の製造、溶解及び最終パッケージングを製造委託先に委託しています。当社は、各大学・研究機関等における研究に使用されることで新規アプリケーションの開発が進められることを期待して研究試薬販売を行っています。これまでに、当社が販売した研究試薬は、各研究機関において細胞種のin vitro(*)・in vivo(*)での注入実験などに使用されています。
研究試薬販売における基本的な事業の流れは以下のとおりです。
(3)MITとのライセンス契約について
自己組織化ペプチドの物質特許及び基本的な用途特許は、MITが有しています。当社子会社は2003年4月にMITとの間でExclusivePatentLicenseAgreementを締結し、MITから、全世界における医療・生命科学・美容の分野にかかる同特許の専用実施権(再許諾権付)の許諾を受け、また、当社は2004年10月に当社子会社との間でLicenseandSupplyAgreementを締結し、当社子会社からアジア地域における同分野にかかる同特許の実施権の再許諾を受けています(なお、2007年10月の米国3-DMatrix,Inc.の当社子会社化に伴い、当社及び当社子会社は2009年4月に同契約について必要な改訂を行っております。)。当社グループは、このようにしてMITからライセンスを受けた自己組織化ペプチド技術を用いて医療製品の研究開発に取り組んでいます。当社は、自己組織化ペプチド技術を基盤とした応用技術に関し、当社子会社とともに特許出願を行い、また共同研究先と特許共同出願をしています。
当社グループがMITから専用実施権の許諾を受けている主な特許権等は下記のとおりです。なお、当社子会社とMITとのライセンス契約の概要は、「第2 事業の状況 4 経営上の重要な契約等」に記載のとおりです。
対象発明の名称 | 登録番号 | 出願日 | 登録日 | 期限 |
自己組織化ペプチド修飾ペプチド物質特許 | US 7713923 | 2004年6月25日 | 2010年5月11日 | 2024年6月25日 |
自己組織化ペプチド修飾ペプチド物質特許 | US 8901084 | 2004年6月25日 | 2014年12月2日 | 2024年6月25日 |
自己組織化ペプチド修飾ペプチド細胞培養法 | 第5057781号 | 2004年6月25日 | 2012年8月10日 | 2024年6月25日 |
自己組織化ペプチド修飾ペプチド物質特許 | EP 1636250 | 2004年6月25日 | 2016年1月6日 | 2024年6月25日 |
自己組織化ペプチド神経再生法 | US 7846891 | 2003年10月17日 | 2010年12月7日 | 2023年10月17日 |
自己組織化ペプチド 界面活性剤様ペプチド ナノ構造 | US 7179784 | 2002年7月10日 | 2007年2月20日 | 2022年7月10日 |
自己組織化ペプチド 界面活性剤様ペプチド ナノ構造 | US 7671258 | 2006年1月25日 | 2010年3月2日 | 2026年1月25日 |
(4) アライアンス先との提携契約について
当社グループは、MITより実施許諾を受けている自己組織化ペプチド技術が幅広い応用可能性を持つ技術であると認識しております。当社は、当技術を用いたパイプラインの探索や医療機器としての開発、事業化戦略の立案等の企画機能に特化し、製造や販売機能は他社との事業提携によって補完する戦略を採っていることから、製造や販売に関しては適宜に戦略的な事業提携を行い、製品の開発から販売、継続供給の体制を構築していく方針です。
当社は、吸収性局所止血材について、2009年4月に伊藤忠ケミカルフロンティア株式会社と業務提携契約を締結し、ペプチド原材料の調達、製品製造の委託、販売提携に関して相手先の推薦・選定及び条件について助言を受け、相手先との交渉・コミュニケーションについて継続的に協力・支援を受けることとしています。
また、当社は2010年9月に韓国Daewoong Pharmaceutical Co.LTDとPARTNERSHIP AGREEMENTを締結し、同社に対し吸収性局所止血材の韓国における独占的販売権を付与し、また同月、台湾Excelsior Medical Co.,Ltd.とLICENSE AGREEMENTを締結し、同社に対し吸収性局所止血材の台湾における独占的開発・製造及び販売権を付与しております。当社シンガポール子会社3-D Matrix Asia Pte. Ltd.は、2014年5月にインドネシアのPT. Teguhsindo Lestaritamaとインドネシアにおける独占販売権許諾契約を締結し、2015年7月に韓国Daewoong Pharmaceutical Co.LTDとタイ・ベトナム・フィリピンにおける独占販売権の許諾、インドネシアにおける非独占販売権の許諾を行っております。当社欧州子会社3-D Matrix Europe B.V.は、FUJIFILMとDISTRIBUTOR AGREEMENTを締結し、FUJIFILMによって欧州全域における消化器内視鏡手技向けに本製品を独占的に販売して頂くことになっております。
これらの契約の概要は、「第2 事業の状況 4 経営上の重要な契約等」に記載のとおりです。
(用語解説)
用語 | 意味・内容 |
自己組織化ペプチド | 生理的条件下(中性pH、塩の存在)に置くと、ペプチド分子同士が規則的に集合し、ナノファイバーを形成するペプチド群。 |
PuraMatrix製品 | 自己組織化ペプチド技術を用いたハイドロゲルの第一世代商品であり、体を構成するアミノ酸であるアルギニン(R)、アラニン(A)、アスパラギン酸(D)からなる繰り返し配列である16残基のペプチド(RADA16)。 |
アミノ酸 | 同一分子内にカルボキシル基(-COOH)とアミノ基(NH2)を有する化合物。 |
アルギニン(R) | タンパク質を構成する塩基性アミノ酸の一種。ヒトの非必須アミノ酸であり、天然に存在し食物では肉類・大豆・牛乳に多く含まれる。 略号はR又はArgで表記される。 |
アラニン(A) | タンパク質を構成する中性アミノ酸の一種。ヒトの非必須アミノ酸であり、天然に存在し食物では肉類・大豆・牛乳に多く含まれる。 略号はA又はAlaで表記される。 |
アスパラギン酸(D) | タンパク質を構成する酸性アミノ酸の一種。ヒトの非必須アミノ酸であり、天然に存在し食物では肉類・大豆・牛乳に多く含まれる。 略号はD又はAspで表記される。 |
ペプチド | アミノ酸が2個以上結合した化学物質(結合するアミノ酸の数によってジペプチド、ポリペプチドなどとも呼ばれる)。 |
pH | 酸性、アルカリ性を表す指標(水素イオン濃度)。 |
ゲル化 | 液体的な柔軟性を持ちつつ、個体のような弾力性を有する吸収性高分子素材であるゲルを生成すること。 |
細胞外マトリックス | 細胞の外側にあるコラーゲンなどの構造タンパク質、細胞の生着・増殖等を支える足場(Scaffold)材。 |
ADME試験 | ADMEとはAbsorption(吸収)・Distribution(分布)・Metabolism(代謝)・Excretion(排泄)の頭文字をとった名称で、医薬品等が体内に服用されてから体外に排泄されるまでの経過のこと。ADME試験とは、体内にある薬又は同等物の体内での存在期間、排出過程を時間単位で追跡していく薬物の動態試験。 |
タンパク質分解酵素 | タンパク質又はペプチドのペプチド結合を加水分解して、複数個のアミノ酸又はペプチドを生成する酵素であり、プロテアーゼ・ぺプチダーゼともいう。 |
DDS | 必要な薬物を必要な部位で必要な長さの時間、作用させるための薬物送達システム(工夫や技術)。Drug Delivery Systemの略称。 |
足場材 | 体内にあるコラーゲン等の細胞間マトリックスであり、細胞増殖のための足場となるもの。 |
担体 | 吸着や触媒活性を示す物質を固定する土台となる物質。 |
MTA契約 | 研究試料供給契約をいう。研究試料(試薬、遺伝子や細胞、実験動物等)の提供を行うための契約で、その試料の取扱や権利、免責等について規定する。 |
プレフィルドシリンジ | 治療等に必要である医薬品が注射器(シリンジ)にあらかじめ充填され、すぐに使用できる状態のもの。 |
ブリスター包装 | 片面を比較的堅い材質の板状のものを使う薬の包装や厚紙を台紙とし商品名などを印刷し、商品を板状のプラスチックをバキュームフォームなどで成型し囲み込み台紙に接着した又はスライド式着脱可能な包装のこと。 |
止血剤製品群 | 外科手術等で生じた比較的狭い範囲での出血を止めるために使用されるもので、外科手術等において止血用途で使用される止血剤や組織接着剤等を含めた広義の製品群。 |
フィブリノゲン | 血液凝固因子の一つで、線維素性の血漿蛋白原。 |
用語 | 意味・内容 |
臨床試験 | 薬事承認の取得を目的として、未承認の医薬・医療機器をヒトに投与してデータ収集し、ヒトに対する安全性・有効性を検証する試験。 |
内視鏡的粘膜下層剥離術 | 癌の周囲にヒアルロン酸などの薬液を注射し、十分な粘膜下膨隆を作ったうえで、さまざまな電気メスを用いて癌を少しずつ切りはがしていく早期胃癌や早期食道癌に対する比較的新しい手術方法。電気メスを用いて切り取るため、内視鏡的粘膜切除術とは異なり、切除する組織の大きさに制限がなく大きい病変を一括して切除することが可能。 |
内視鏡用粘膜下注入材 | 内視鏡的粘膜切除術や内視鏡的粘膜下層剥離術を実施する際に、病巣部を取りやすくするために、病巣部を隆起させるために使用する生理食塩液やヒアルロン酸などのもの。 |
血管内塞栓促進用補綴材 | 血管内に投与して塞栓を形成させ(血管を詰まらせ)、病巣部の血流を遮断することで病巣部の治療を意図する医療機器。 |
前臨床試験 | 医薬品や医療機器の製造承認申請に際し、開発段階で、ヒトへ使用する(臨床)前に、複数種類の動物で生体への基礎的な効果(安全性・有効性)を評価・証明する科学的データを取得するために実施する試験。 |
自家骨 | 自分自身の骨。 |
他家骨 | 他人の骨。 |
GLP | 医薬品・医療機器の開発のために行われる前臨床試験(動物試験等、特に安全性試験)のデータの信頼性を確保するための実施基準。 Good Laboratory Practiceの略称。 |
510(k) | 既存の医療機器と同等の機能を有する医療機器の登録制度。 |
bFGF | 塩基性線維芽細胞成長因子。創傷時における線維芽細胞増殖や血管新生に関与する。 |
PDGF | 血小板由来成長因子。主に間葉系細胞(線維芽細胞、平滑筋細胞、グリア細胞等)の遊走及び増殖などの調節に関与する。 |
界面活性 | 少量で液体の表面張力を低下させる物質。 |
A6K | 自己組織化ペプチドの一種で、アミノ酸配列AAAAAAKであるもの。水溶液中で粒子径が約50-100nmのナノチューブを形成する。 |
siRNA | 21-23塩基対から成る低分子二本鎖RNA。siRNAはRNA干渉(RNAi)と呼ばれる現象に関与しており、伝令RNA(mRNA)を分解することによって配列特異的に遺伝子の発現を抑制する。 |
償還価格 | 健康保険の給付対象となる医療機器等について、厚生労働省が定めた価格。 |
in vitro | ヒトや動物の組織を用いて生きたままの状態(生体)と同様の環境を人工的に作り、薬物の反応等を検証する試験。 |
in vivo | 動物を用いて生きたままの状態(生体)で、薬物の反応等を検証する試験。 |
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ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
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