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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100R1KF (EDINETへの外部リンク)

有価証券報告書抜粋 日本郵政株式会社 事業等のリスク (2023年3月期)


従業員の状況メニュー研究開発活動


下記Ⅰ~Ⅲにおいて、当社グループの事業内容、経営成績、財政状態等に関する事項のうち投資者の投資判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主なリスクを例示しております。ただし、当社グループの事業等のリスクは、これらに限定されるものではありません。
下記「Ⅰ. 当社経営陣が特に重視する当社グループの事業等のリスク」に、当連結会計年度末現在において当社経営陣が特に重視する事項について、その他の重要なリスクは下記Ⅱ及びⅢに記載しております。
なお、文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。


当社グループでは、「日本郵政グループ協定」及び「日本郵政グループ運営に関する契約」(いずれも2015年4月1日発効。以下「グループ協定等」といいます。)に基づき、事業子会社の管理対象リスクや当社への報告事項等、リスク管理に係る基本事項を定め、当社がグループのリスク管理状況や改善状況をモニタリングすること等により、グループ全体のリスク管理を行っております。
当社では、グループガバナンス強化のため、グループのリスク管理統括責任者として、執行役の中から「グループ・チーフ・リスク・オフィサー(グループCRO)」を選任し、グループCROは、グループのリスク管理状況・取組について取締役会等への報告を行い、取締役等から監督を受けております。
また、グループ各社のリスク管理担当役員をメンバーとする「グループオペレーショナルリスク管理連絡会」等を通じ、事業子会社のリスク管理の向上に向けた情報共有・協議等を実施しております。
なお、事業子会社は、自社のリスク管理を統括する部署を定め、自ら主体的に自社の事業特性に応じたリスクの特定、評価、制御、モニタリング等のリスク管理を行うとともに、当社に対し必要事項を報告する等のリスク管理態勢を整備しております。




当社は、外部環境の変化や事業戦略等を踏まえ、毎年、当社グループの事業に重大な影響を及ぼす可能性のあるリスク(グループ重要リスク)の見直しを行っております。具体的なリスクの特定、評価については、取締役及び執行役へのアンケート(役員アンケート)を通じて行い、改善策の策定、取組状況のモニタリング等を経営陣が行うPDCAサイクルを回しております。




Ⅰ.当社経営陣が特に重視する当社グループの事業等のリスク

当社は、役員アンケートに基づき、グループ重要リスクのうち発生可能性と当社グループの業績への影響度の観点から特に優先度の高いものを「経営陣が特に重視する当社グループの事業等のリスク」(以下「トップリスク」)としております。下図はトップリスクの相対的な位置づけを図示したものであります。ここに記載した各リスクの発生可能性、影響度、優先度は、本書提出日現在における当社経営陣の認識であり、発生可能性、影響度又は優先度を「小」と記載したリスクが発生し当社グループの事業等に重大な影響を及ぼす可能性を否定するものではありません。



1.金利環境変化に伴うリスク
当社グループの収益の多くは、銀行業及び生命保険業から生じる収益により占められております。

(低金利継続リスク)
低金利環境の長期化を受け、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険の債券運用収益は低位で推移しており、引き続き回復しない場合には、さらに基礎的な収益力が低下し、当社グループの収益の減少幅が拡大するリスクがあります。
ゆうちょ銀行については、保有する金融資産と貯金や外貨を含む市場性調達の負債の期間や金利更改サイクル等に差異が存在すること、低金利環境の継続による運用収益の減少に比して相対的に貯金の調達コストが減少しないことにより、資金粗利鞘が減少するリスクがあります。
かんぽ生命保険については、保険契約者に対する債務のデュレーションが運用資産より長期であること、既に保有している保険契約の予定利率は変わらないことから、当初想定していた運用収益が確保できない、さらに逆ざや(資産運用ポートフォリオの平均運用利回りが既契約の責任準備金の積立てに用いた予定利率を下回る現象)となるリスクがあります。

(金利急上昇リスク)
世界的な高インフレを背景とした米国等の金融引き締め等の中、2022年12月には日銀による大幅緩和が一部修正されておりますが、今後の各国中央銀行の金融政策動向、国内外の景気変動、日本国政府の財政運営やその信認の変化等、様々な要因により急激な金利上昇が生じ、当社グループの保有資産の価値が大幅に下落するリスクや、定額貯金(預入から6か月経過後は払戻し自由、3年までは6か月ごとの段階金利、それ以降は固定金利の10年満期・複利貯金)等の預け替え、保険の解約が進むリスクがあります。
ゆうちょ銀行では、数十兆円規模の海外金融資産を保有しており、海外クレジット市場の信用スプレッド拡大時にはこれら海外金融資産の価格が下落し、保有する投資信託における収益認識できない特別分配金の発生等を通じて収益が大幅に減少する場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
これらに対し、金融2社では中長期的に収益の確保を図ることを目的に、資産・負債を総合管理するALM(Asset Liability Management)の枠組みの下、財務健全性の観点からストレス・テスト等を実施し、また、市場環境の変化、リスク・リターン等を踏まえた機動的なポートフォリオ運営を行うことにより、市場リスク等を適切に管理するよう努めておりますが、低金利環境の長期化や急激な金利上昇が生じた場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

2.金融2社の株式売却に関するリスク(売却に至るまで及び売却後のリスク)
当社は、郵政民営化法において、金融2社の経営状況、ユニバーサルサービスの履行への影響等を勘案しつつ、保有する金融2社の株式をできる限り早期に処分するものとされており、当社グループの中期経営計画において、金融2社株式の保有割合を50%以下とすることを目指しております(下記「(参考)①日本国政府による当社株式の保有状況及び当社による金融2社の株式保有状況(2023年3月期末日時点)」をご参照)。
今後の当該株式の売却については、証券市場への影響に配意し、時期、売出回数、規模等を慎重に検討し進めていく所存でありますが、適切な時期に適切な条件で売却できず、売却収入が当社保有の金融2社株式の帳簿価額を下回った場合には、当社の損益計算書に売却損失を計上する可能性があります(下記「(参考)②金融2社株式処分の連結財務諸表への影響」をご参照)。また、想定通りに売却が進まない結果、金融2社に係る郵政民営化法上の上乗せ規制が撤廃されず金融2社の経営自由度の拡大が実現できない可能性もあります(下記「Ⅱ.当社グループ全般に関するリスク 2.法的規制・法令遵守等に関するリスク ③当社グループ固有に適用される規制等」をご参照)。
また、2022年4月の東京証券取引所の市場区分見直しに際し、ゆうちょ銀行はプライム市場の上場維持基準のうち「流通株式比率35%以上」に適合しなかったため、経過措置の適用を受けた上で、プライム市場へ移行しました。当社は、2023年3月に当社保有のゆうちょ銀行の株式を一部売却しましたが、2023年3月末時点においてゆうちょ銀行は上記比率に適合しておりません(注)。ゆうちょ銀行が上場維持基準に適合できないことにより、ゆうちょ銀行の株式の株価下落により当社業績が悪化する、又はゆうちょ銀行株式売却がさらに困難になる可能性があります。
一方、当社グループの利益の大部分を占めるのは金融2社の利益であり(下記「(参考)③セグメント利益・資産(2023年3月末現在)」をご参照)、金融2社の株式の売却が進み、当社の持分比率が減少することで、親会社株主に帰属する当期純利益が減少することにより、当社の財務の健全性の確保ができなくなるほか、キャッシュフローの悪化、資金調達能力が制限される可能性があります。また、当社が金融2社から受け取る配当金が減少することにより、当社の期待する配当原資の確保ができなくなる可能性があります。
また、当社が金融2社の株式を処分しその持分が低下するのに伴い、金融2社以外の事業のウェイトが高まり、当該各事業における収益の悪化が、当社グループの事業、業績及び財政状態に、より影響を及ぼすことになります。
さらには、金融2社の株式保有割合が低下することにより、当社の利益と金融2社の少数株主の利益が相反し、金融2社の意思決定が、当社グループの意向に沿わないなど、グループの一体的な業務運営が難しくなる可能性があります。また、顧客離れ、ブランド力低下により当社グループの収益が金融2社の持分低下の影響を超えてさらに低下する可能性もあります(下記「(参考)④議決権等議決事項(2023年3月末現在)」をご参照)。
当社としては、株式売却により得た資金を活用して、資本の効率化の観点から自己株式取得も行いつつ、新たなビジネスを展開し、ビジネスポートフォリオの転換に取り組みます。加えて、郵便局を核としたグループ運営を徹底し、グループ各社の経営方針の整合性確保や、グループ内の人事交流、情報共有を図り、グループガバナンスを維持してまいります。しかしながら、それらが機能しなかった場合、金融2社に代わる事業基盤やグループのシナジー効果を確保できず、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(注)今後、2025年3月末までに上場維持基準を充足できない場合には、1年間の改善期間に入ります。さらに、改善期間内に基準に適合しなかった場合には、一定の監理銘柄(確認中)指定期間及び整理銘柄指定期間を経て上場廃止となります。

3.ユニバーサルサービス提供に係るリスク
当社及び日本郵便は、郵政民営化法等に基づき、ユニバーサルサービス確保の責務を負っております。
当責務については、2015年9月「郵政事業のユニバーサルサービス確保と郵便・信書便市場の活性化方策の在り方」に関する情報通信審議会の答申において、短期的には、「日本郵政及び日本郵便は自らの経営努力により現在のサービスの範囲・水準の維持が求められる」、中長期的には、「郵政事業を取り巻く環境の変化やこれに応じた国民・利用者が郵政事業に期待するサービスの範囲・水準の変化も踏まえて、ユニバーサルサービスの確保の方策やコスト負担の在り方について継続的に検討していくことが必要」とされました。こうした中、同審議会による2019年9月「郵便サービスのあり方に関する検討」に関する答申においては、郵便サービスを「あまねく、公平に」安定的に提供し続けるため、そのあり方について検討結果が取りまとめられ、郵便法改正を経て、日本郵便において土曜日配達の休止、お届け日数の繰り下げなどの見直しを行いました。
上記見直し後も、ユニバーサルサービスの維持に当たっては、全国各地の郵便局及び配送拠点等に係る設備費、車両費、社員の人件費等が発生しております。
今後、電子メールやウェブサイト等インターネットを通じた通信手段、金融サービスの普及等を背景に、郵便、貯金、保険といった郵便局で提供するサービスのご利用が減少した場合であっても、ユニバーサルサービスを維持する法的義務があることから、収益性の低い事業又は拠点等を縮小する等の対応が制限される可能性があります。
一方、ユニバーサルサービスを維持し、全国あまねく有人店舗展開を行うことは、他社にない当社グループの強みでもあります。お客さまが対面で相談したいというニーズに今後もお応えするため、当社グループの中期経営計画のもと、お客さまと地域を支える「共創プラットフォーム」の実現に向けて他社や地方公共団体と連携を図りながら、お客さまや地域のニーズに応じた商品・サービスの提供を行い、収益力の向上に取り組むとともに、業務運営のデジタル化等により業務効率化を図ってまいります。その上で、安定的なサービス提供の維持のため、コストに見合う各種郵便料金の改定を検討しております。
しかしながら、このような取組が奏功しなかった場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、ユニバーサルサービス維持のための費用負担の増大から当社グループの損益が大幅に悪化した結果、事業運営コストを賄うために収益性を過度に追求した営業や過度のリスクを伴う資金運用を行った場合、コンダクト・リスクや運用リスクが顕在化する可能性もあります。

4.サイバー攻撃に関するリスク(セキュリティの脆弱性を含む)
当社グループは、郵便・物流事業、銀行業、生命保険業等を運営している中で、事業運営上のシステムへの依存度が高い状況にあります。さらにリアルの郵便局ネットワークとデジタル(デジタル郵便局)とを融合し、幅広い世代・地域のお客さまへ新しい価値を提供するため、グループ一体でのDXを推進しており、今後ますますその重要性が高まることが予想されます。一方、近年増加の著しいサイバー攻撃や各種サービスの不正利用により企業・団体が保有する個人情報等の漏えいが多発しており、当社グループにおいても、サイバー攻撃の高度化、インターネットを介したお客さまとの双方向アクセス増加、在宅勤務(テレワーク)の拡大等の結果、当該リスクが高まっております。
こうした中、当社グループのサイバーセキュリティ担当役員で構成するグループサイバーセキュリティ委員会を設置し、グループ全体でセキュリティの高度化の推進、セキュリティ専門家による点検・指導、対策推進等サイバー攻撃への対応に努めております。
不正アクセス等のサイバー攻撃に対しては、メール受信やWeb閲覧に対するウイルス感染抑止等の入口対策、外部デバイスの接続制限や、許可された通信先以外の遮断等の出口対策を講じ、恒常的にサイバーセキュリティ対策の高度化に取り組んでおります。加えて、各種サイバーセキュリティ演習を実施し、事業継続も含めたインシデントレスポンス能力の向上などに努めております。
しかしながら、当社グループのシステムへの攻撃、各種サービスの不正利用により、事業が大規模かつ長期間に亘り停止又は制約を受けるような事案が発生した場合、さらに、お客さま対応に不備が生じ社会的信用の低下を招いた場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。


5.DXの取組が奏功しないリスク
少子高齢化・デジタル化の進展の中、企業が競争上の優位性を確保するためには、データとデジタル技術を活用して、ビジネス環境の激しい変化に対応し、お客さまや社会のニーズに基づき、商品・サービス、ビジネスモデル、業務等を変革することが必要となります。
当社グループでは、2021年7月に当社の連結子会社として株式会社JPデジタルを設立し、お客さまへの新たな体験価値を生み出す「みらいの郵便局」施策によりリアル/デジタル両面からお客さまと郵便局のタッチポイントの増加を目指すほか、JPプラットフォームアプリやOneID等のグループ横断的なDX施策を進めてまいります。
また、当社グループは、P-DX(Postal-Digital transformation:デジタル化された差出情報と、日本郵便ならではの配達先情報を活用し、データ駆動型のオペレーションサービスを実現するための郵便・物流事業改革)の推進によるオペレーション改革、窓口業務運営のデジタル化等を進めております。
しかしながら、これらの施策が計画どおり進まない場合や、事業環境の変化に適時かつ適切に対応できず、競争力が低下する場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

6.新しいかんぽ営業体制のもとでの営業推進に係るリスク
当社グループは、2019年12月にかんぽ生命保険商品の募集品質に係る諸問題により行政処分を受け、業務改善計画に基づく改善取組を行ってまいりました。2021年度には、信頼回復に向けた業務運営を継続する中で、お客さまのニーズを確認しながら金融商品の情報提供やご提案を実施する、新たな営業スタンスへ移行しました。また、2022年4月からは、お客さま担当制の導入などを含む「新しいかんぽ営業体制」を開始しました。日本郵便からかんぽ生命保険に兼務出向した高い機動性と専門性を持つコンサルタントと、多様なお客さまニーズに応える日本郵便の窓口社員が、それぞれの能力を最大限に発揮することを目指します。
新たな営業体制のもと、営業目標の達成に向けて、社員一人ひとりへの営業方針の浸透、営業活動の活発化を図るとともに、お客さま体験価値(CX)を最優先としたビジネスモデルへの改革と新商品の開発や既存商品の改定、お客さまの利便性を考慮した募集フローの確立等に取り組んでまいりますが、これらが奏功せず、営業方針の理解不足やスキルの不足、保険募集に対するモチベーションの低下等によって、新契約の実績が計画通り進捗せず、保有契約の維持を図れない可能性があります。加えて、マネジメント態勢等が十分に浸透しないことにより、不適正募集、お客さま本位の業務運営に反する事象が生じた場合、社会的信用の低下を招く可能性もあります。
なお、新契約の実績低迷は、かんぽ生命保険が日本郵便に支払う募集手数料等の事業費減少により、短期的にはかんぽ生命保険の利益増加の要因となりますが、長期的には、保有契約件数減少等につながり、当社グループの事業、業績、財政状態及びかんぽ生命保険のEV等の指標にも影響を及ぼす可能性があります。

7.人的リスク(人材確保・ハラスメント・労働問題・人件費増加)
2023年3月末現在、当社グループは、全国に20万人を超える従業員を配置しておりますが、少子高齢化による労働人口の減少や、当社グループの魅力や優位性が低下した場合などには、人材の確保が困難となる可能性があります。
郵便・物流事業では、郵便物や荷物の配達・集荷等の業務において、多数の協力会社に協力をいただいていることから、協力会社とのパートナーシップ構築に向けた取組を進めております。一方、2024年4月から、自動車運転業務に係るドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されることを受けて、トラックドライバー等の人手不足が深刻化し、適切な水準の人員の確保が困難となる可能性があります。
加えて、DX推進に必要なIT等の高度な専門性を有する人材の確保も、競争激化から困難となる可能性があります。
また、魅力的な労働環境を提供できなかった場合、あるいは人事処遇やハラスメント等の人事労務上の問題や職場の安全衛生管理上の問題等が発生した場合には、人材の流出・不足を招く可能性があります。
さらに昨今、国内の賃金水準が上昇しており、労使交渉・労働法制の変更等を受けて給与等を増額した場合には、一人当たりは小さな増額であっても、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、かかる事態に対処するため、働きやすい職場づくり、労働条件の整備、人材育成、女性活躍をはじめとしたダイバーシティの推進、ハラスメント相談体制の整備等を推進しておりますが、かかる施策が奏功しない場合には、人員不足、人件費の増加、競争力の低下等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、人的資本に関する事項は、上記「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。

8.システム障害等のリスク
郵便・物流事業、銀行業、生命保険業等を運営している当社グループにおいては、事業運営上のシステムへの依存度が高く、当社グループのコンピュータシステムは、お客さまや各種決済機構等のシステムに接続する極めて重要な機能を担っております。こうした中、大規模自然災害、テロリズム、停電、ITガバナンスの不備、システムの新規開発・更改における瑕疵、通信事業者等の第三者の役務提供の瑕疵、人的過失等により重大なシステム障害等が発生する可能性があります。当社グループでは、各社の基幹システムの基盤更改(日本郵便の郵便・物流システム(2024年2月サービスイン)、ゆうちょ銀行の業務システム・営業店システム(2023年5月サービスイン))等に当たり、ITガバナンスの強化に向けてグループCIOが経営層を含めた推進会議に出席し、情報共有を行うとともに、事業子会社のCIOと連携して、グループ内外で発生した障害に迅速に対応し、真因分析、再発防止策等に取り組んでおります。
しかしながら、このような取組によっても、システムの障害等に起因し、当社グループの事業が大規模かつ長期間に亘り停止又は制約を受ける場合、当社グループが保有する個人情報及び機密情報等の漏えいが発生した場合、お客さま対応に不備が生じた場合には、業務の停止・混乱及びそれに伴う損害賠償や対応費用、行政処分、社会的信用の低下等が発生することにより、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

9.情報漏えいに係るリスク
当社グループが保有するお客さま、従業員、取引先等に関する情報は、郵便法、銀行法、保険業法及び金融商品取引法等を踏まえ、個人情報の保護に関する法律等に基づき適切に取り扱うことに加え、社会的受容性にも十分配慮する必要があり、データガバナンスの強化が求められております。
また、2022年4月施行の改正個人情報保護法に基づく報告が義務付けられ、当社グループ内においても、個人情報データ等の漏えい事案を個人情報保護委員会等へ報告しております。かかる事態の発生を防止するため、グループ全社員を対象としたコンプライアンス教育を通じて個人情報保護を含めた情報管理に対する意識の醸成、適切な情報管理の徹底を図っております。さらに、2022年11月にグループ横断的なデータガバナンスを所掌するデータガバナンス室を新設するとともに、2023年3月にグループDXコミッティの下にグループ・データガバナンス分科会を設置し、体制強化を図っております。
このような施策が奏功せず、当社グループが保有する個人情報等の漏えいが発生した場合は、損害賠償や対応費用、行政処分、社会的信用の低下等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、サイバー攻撃による個人情報等の漏えいに関するリスクについては上記「4.サイバー攻撃に関するリスク」をご参照ください。

10.外貨資金調達環境の悪化リスク
当社グループでは、特にゆうちょ銀行において、収益源泉・リスクの分散を目的に、外国債券やこれを主な投資対象とする投資信託等の保有が増加しておりますが、世界的な高インフレを背景とした米欧中銀の金融引き締め等により、国内外の金利差が拡大していることから、外貨調達コストの上昇が顕在化し、業績に悪影響を与えております。今後、さらに外貨調達コストが上昇した場合、当社グループの業績及び財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
また、これらの外国証券の運用において、為替リスクを軽減する目的から通貨スワップや為替予約等のヘッジ取引を行っておりますが、ヘッジコストの上昇等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

Ⅱ.当社グループ全般に関するリスク

1.事業環境に関するリスク
(1) 経済・政治情勢その他の事業環境の変化に伴うリスク
① 郵便・物流事業等
米中覇権争いの激化、ロシア・ウクライナ情勢の長期化等による地政学リスクの高まりに伴い国内外の経済・金融の悪化やサプライチェーンの寸断による物流事業の停滞、エネルギー価格及び人件費の高騰等により、事業費が増加し収益性が低下する可能性があります。また、トール社がアジア太平洋地域等におけるフォワーディング、ロジスティクス等の国際物流事業を行っており、上記の地政学リスクの高まり等を原因とする世界経済の減速、各国・地域の経済情勢や政治情勢等の変動により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

② 銀行業・生命保険業
世界的な金融政策の変更、米欧金融機関の経営破綻、地政学リスクの高まり等に起因する歴史的な金融・資本市場の動揺、グローバル経済の減速懸念の中で、金融2社の海外金融資産の増加を受けて、海外クレジット市場の信用スプレッド拡大、外貨の調達、通貨ベーシスの拡大によるヘッジコスト上昇の影響で、保有資産の評価損、減損損失及び売却損の計上、剰余金の処分による分配可能額の減少・消失等が、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、金融2社の資産運用・ALMに係るリスクについては、上記「Ⅰ.当社経営陣が特に重視する当社グループの事業等のリスク 1.金利環境変化に伴うリスク及び10.外貨資金調達環境の悪化リスク」をご参照ください。その他の資産運用リスクは次のとおりであります。

(市場リスク)
金利リスクの影響の他、直接又は金銭の信託や投資信託を通じて間接的に保有している株式(プライベートエクイティファンドを含む。)の株価が、国内外の経済状況又は市場環境の変化によって変動する場合、あるいは為替相場が大幅に変動する場合には、保有有価証券に評価損・減損損失や売却損等が生じる可能性があります

(信用リスク)
有価証券の発行体や貸出先などの債務者において、国内外の経済情勢の深刻な影響や特定の業種を取り巻く経営環境の変化、誤った経営判断、不祥事、その他不測の事態による財政状態の悪化等が生じた結果、与信関係費用が増加し又は保有する有価証券等の価値が下落する可能性があります。

(市場流動性リスク・資金流動性リスク)
金融市場の混乱等により、市場の流動性が減退した場合、市場において正常に金融商品の取引・資金決済ができなくなる場合、大量解約に伴う解約返戻金の増加、巨大災害に伴う保険金の大量支払等により資金繰りが悪化した場合には、保有する資産の価値が減少する可能性、不利な価格での取引を余儀なくされる可能性、また、資金調達コストが上昇する可能性があります。

これらに対し、リスク管理態勢を高度化し、財務健全性の観点からストレス・テスト等を実施し、運用の分散や機動的な運営に努め、必要な法令上の規制比率を確保しておりますが、金融・資本市場、国内外の経済情勢その他事業環境の大幅な変動が生じた場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。


(2) 他社との競合に関するリスク
当社グループの事業はいずれも激しい競争状況に置かれており、競業他社は、AI・Fintech・テレマティクス等の技術の活用、事業環境の変化、事業戦略の変更等で、競争力の優れた商品構成、サービス、価格競争力、事業規模、シェア、ブランド価値、顧客基盤、事業拠点、ATM・物流拠点その他のインフラ・ネットワーク等を有する可能性があります。
また、近年、国内外の各業界において統合や再編、業務提携が積極的に行われているほか、参入規制や業務範囲等の規制緩和が行われている中で、当社グループが市場構造の変化に対応できない可能性があります。
特に、eコマース市場の拡大に伴い宅配取扱数量の増加がみられる中で、物流事業における競争は激しく、競業他社が競争力のある価格でサービスを提供することが日本郵便のシェアに影響を与えます。また、物流事業者やEC事業者による提携、主要なECプラットフォーマーによる独自の物流サービスの展開等が進んでおり、他社の提供するサービスへの乗り換えが発生する可能性があります。
こうした中、当社グループの中期経営計画で掲げた、お客さまサービスの向上やDXの推進によるビジネスモデル等の変革に取り組んでおりますが、かかる取組が奏功しない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 大規模災害発生時等の事業継続に関するリスク
当社グループは、国内外で事業活動を行っており、各国・地域における地震、台風、洪水、大雪等の大規模自然災害、新型コロナウイルス等の感染症、戦争、テロリズム等の人的災害、水道、電気、ガス、通信、金融サービス等に係る社会的インフラの重大な障害や混乱等の発生、当社グループの店舗その他の設備や施設の損壊等が生じた場合、当社グループの事業運営に支障をきたし、設備やインフラの回復、お客さまの損失の補償等のために長期の時間及び多額の費用を要する可能性があります。また、新型コロナウイルス感染症の収束後においても、非対面・非接触サービスの定着や、ライフスタイルが変わるような事業環境の変化が生じた場合に当社グループが適切に対応できない可能性があります。特に、かんぽ生命保険においては、大規模災害や感染症の大流行に起因して、危険準備金を超える保険金・給付金の支払いが発生する可能性があります。
グループ各社は、緊急事態が発生した場合に優先的に再開させる重要業務を明確にし、事業継続と復旧をスムーズに実現させるための事業継続計画(BCP)を策定し、緊急時の危機管理体制を整備しております。しかしながら、同計画による対応を適切に行ったとしても、緊急事態の規模や状況によっては、事業活動を円滑に継続、又は早期に業務が復旧できる保障はなく、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

2.法的規制・法令遵守等に関するリスク
(1) 法的規制及びその変更に関するリスク
当社グループは業務を行うにあたり、以下のような各種の法的規制等の適用を受けております。
これらの規制により、当社グループは新規事業の展開や既存事業の拡大、低収益分野からの撤退又は縮小が制約される可能性があります。
当社グループの中期経営計画で新たな成長戦略に取り組んでおりますが、当社グループに適用のある法令等の改正や新たな法的規制等により、当社グループの競争条件が悪化したり、事業活動の一部が制限又は変更を余儀なくされた場合は、新たな対応費用の増加、収益機会等の喪失等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社グループの法的規制については、上記「第一部 企業情報 第1 企業の概況 3 事業の内容 (3) 事業に係る主な法律関連事項」をご参照ください。

① 郵便法等に基づく規制
郵便法上、郵便約款や業務委託の認可制、全国一律料金制度といった、本事業特有の規制又は他の事業や他社とは異なる規制を受けております。また、民間事業者による信書の送達に関する法律に基づき、一般信書便事業は一定の参入条件が課された許可制とされております。現時点において参入している民間事業者はありませんが、同法の改正等により、信書便事業の業務範囲の拡大や参入条件が変更されるなど参入規制が緩和された場合には、新規事業者の参入により競争が発生する可能性があります。
これらの規制の内容によっては、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

② 銀行法及び保険業法に基づく規制
金融2社は、銀行法及び保険業法等に基づき、自己資本比率規制及びソルベンシー・マージン規制を含む金融業規制を受けており、銀行持株会社・保険主要株主である当社も、銀行持株会社としての連結自己資本比率規制を含む各種規制を受けております。
また、銀行業におけるバーゼルⅢ規制の最終化や保険業における経済価値ベース規制等の新たな規制の導入や、国際的な監督規制として、システム上重要な銀行(SIBs)に対する規制が課せられる可能性もあります。
一方、日本郵便は、銀行法に基づき、ゆうちょ銀行を所属銀行とする銀行代理業者として、内閣総理大臣の承認を得ない限り、法令で定められた業務以外の業務を営むことができず、また、分別管理義務、銀行代理業務を行う際のお客さまへの説明義務、断定的判断の提供等の一定の禁止行為等の規制を受けております。また、保険業法に基づき、かんぽ生命保険を所属保険会社等とする生命保険募集人として、お客さまに対する説明義務、虚偽説明等の一定の禁止行為等の規制を受けております。
当社グループが上記規制に違反する等した場合には、規制当局から、許可、免許又は登録の取消し、業務の一部又は全部の停止、改善措置等を命ぜられる可能性があり、その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

[当社グループが受けている主な許認可等]
許認可等の名称根拠条文会社名有効期限許認可等の取消事由等
銀行持株会社の認可銀行法第52条の17第1項日本郵政株式会社なし同法第52条の34第1項
保険主要株主の認可保険業法第271条の10第1項日本郵政株式会社なし同法第271条の16第1項
銀行代理業の許可銀行法第52条の36第1項日本郵便株式会社なし同法第52条の56第1項
生命保険募集人の登録保険業法第276条日本郵便株式会社なし同法第307条第1項
銀行業の免許銀行法第4条第1項株式会社ゆうちょ銀行なし同法第26条第1項、
第27条、第28条
生命保険業の免許保険業法第3条第4項株式会社かんぽ生命保険なし同法第132条第1項、第133条、第134条

上記許認可等が取消しとなるような事由の発生は認識しておりませんが、将来、何らかの理由により、各法が定める取消事由等に該当し、所管大臣より許認可の取消処分等を受けることとなった場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

③ 当社グループ固有に適用される規制等
日本国政府は、郵政民営化法により、当社株式の発行済株式総数の3分の1超を保有する義務を負っていることから、引き続き当社に重要な影響を及ぼしうることになります。また、当社が将来、日本国政府の保有割合が発行済株式総数の3分の1を下回るような新株式の発行による資金調達を実施する場合、日本国政府にも一部を割り当てることが必要となるところ、その条件等について日本国政府と合意できずに、資金調達を断念せざるを得なくなる可能性があります。その他、当社グループに関する日本国政府の利益は、当社のその他の株主の利益と相反する可能性があり、また、日本国政府が、株主としての経済的利益よりも公共政策上の判断等を優先した場合等には、当社のその他の株主の利益に反する支配力又は影響力の行使がなされる可能性があります。
当社及び日本郵便は、日本郵政株式会社法及び日本郵便株式会社法により、新規業務、株式の募集、取締役の選解任(当社のみ)、事業計画の策定等を行う場合には、総務大臣の認可(日本郵便の新規業務は届出)が必要とされております。
金融2社は、郵政民営化法により、新規業務、合併、会社分割、事業の譲渡・譲受け等を行う場合には、内閣総理大臣及び総務大臣の認可が必要とされているほか、ゆうちょ銀行においては銀行を、かんぽ生命保険においては保険会社等を子会社として保有することはできません。また、銀行業における預入限度額規制、生命保険業における加入限度額規制が課される等、同業他社とは異なる規制が課されております(金融2社におけるこれらの規制を「郵政民営化法上の上乗せ規制」といいます。)。
なお、かんぽ生命保険については、当社が株式の2分の1以上を処分した旨の総務大臣への届出を行ったため、上記業務について、認可は要しなくなったものの、内閣総理大臣及び総務大臣への届出は要するとともに、業務を行うに当たっては、他の生命保険会社との適正な競争関係及び利用者への役務の適切な提供を阻害することのないよう特に配慮しなければならないものとされております。
こうした事業活動への一定の制約は、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

④ WTO(World Trade Organization:世界貿易機関)による政府調達ルール
公社を承継した機関として、当社、日本郵便及び金融2社が政府調達協定その他の国際協定の適用を受ける物品等を調達する場合には、国際協定に定める手続の遵守が求められます。当社グループ各社は、適切な調達に向けた態勢を整備しておりますが、当該手続を遵守できなかった場合には、調達行為が成立しない、あるいは遅れが発生し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 法令等違反に関するリスク
当社グループでは、貯金払戻金窃取や郵便物等の放棄・隠匿事案等が複数件発生しており、発生原因の分析、再発防止策の検討等を行い、法令等違反の撲滅に向けて、コンプライアンスの徹底・強化、並びにグループガバナンス及び内部統制の強化に取り組んでおります。
また、当社グループは、2019年12月にかんぽ生命保険商品の募集品質に係る諸問題に関し、監督当局からの行政処分を受け、2020年1月に策定した業務改善計画に基づき各種施策に取り組み、外部専門家で構成されたJP改革実行委員会のモニタリングを受けながら、お客さまからの信頼回復を図ってまいりました。
さらに、当社グループは、お客さまの声や内部通報制度等を通じた社員の声の収集・分析を行い、潜在的なリスクを検知して防止策を講じ、法令等遵守を徹底しております。
しかしながら、かかる態勢・予防策が十分な効果を発揮せず、法令等違反があった場合には、当社グループの事業、社会的信用、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(3) マネー・ローンダリング、テロ資金供与、拡散金融対策及び銀行口座の不正使用等に伴うリスク
金融犯罪が多様化かつ高度化し、世界各所でテロ犯罪が継続的に発生する等、マネー・ローンダリング、テロ資金供与及び拡散金融対策(以下「マネロン等対策」といいます。)の重要性が急速に高まっております。
本邦においては、2021年8月の我が国のマネロン等対策に関する法規制の遵守状況及び対策の実効性を審査するFATF第4次対日相互審査結果の公表及び本邦の行動計画の策定等を受けて、マネロン等対策の強化が課題となっております。
当社グループの商品・サービス、従業員、提携先又は委託先企業に関連して、マネー・ローンダリング、テロ資金供与等の犯罪、銀行口座の不正使用等が発生した場合には、当社グループに対する社会的信用が低下する可能性があります。
このため、当社グループは、国内外の法令諸規制を遵守する態勢を整備するとともに、役員・従業員への研修等を通じてマネロン等対策の強化を図っております。
しかしながら、かかる取組が有効に機能せず、仮に法令諸規制の違反等が発生した場合には、業務停止、制裁金等の行政処分等により、当社グループの事業、社会的信用、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(4) お客さま本位の業務運営に関するリスク
当社グループでは、経営理念にお客さま本位のサービスを提供する旨掲げており、各社において「お客さま本位の業務運営に関する基本方針」を制定・公表し、その徹底に向け、取り組んでおりますが、2019年にかんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題、2020年にかんぽ生命保険商品と投資信託の横断的な販売について、お客さま本位といえない営業が行われていた問題が発覚しました。当社グループは、業務改善計画を着実に実行しており、さらに外部専門家の方々で構成されたJP改革実行委員会から受けた評価、助言等も踏まえ、グループガバナンスの強化等を図っております。さらに、信頼回復に向け、お客さまや社員の声を経営改善に活用する等、改善策を実行し、「お客さま本位の業務運営」に取り組んでまいりました。
当社は、2021年4月にグループコンダクト統括室を設置し、子会社からのコンダクト・リスクに係る情報を迅速に把握する態勢を整備し、グループとして一体的な対応をしております。また、2022年4月にグループコンダクト向上委員会を設置し、グループ行動憲章を実践していくためのグループコンダクトを向上させる取組について、外部有識者による助言をいただき、信頼回復などに取り組んでおります。
当社グループは、こうしたお客さま本位の業務運営を徹底し、組織風土改革を含む信頼回復に向けた取組を継続してまいりますが、今後、お客さまの不利益となるような事例が追加で判明した場合には、更なる行政処分を受ける可能性があり、当社グループの事業、社会的信用、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(5) 訴訟その他法的手続に関するリスク
当社グループは、事業の遂行に当たり、人事労務、業務上の事故、外部委託、知的財産権等の利用に関する事項をはじめとする、訴訟、行政処分その他の法的手続が提起されるリスクを有しております。実際、人事処遇や勤務管理などの人事労務上の問題や職場の安全衛生管理上の問題等に関連する訴訟等を、当社グループの従業員等から提起されております。
かかる訴訟等の解決には相当の時間及び費用を要する可能性があるとともに、社会的関心・影響の大きな訴訟等が発生した場合や、当社グループに対して損害賠償の支払等が命じられる等不利な判断がなされた場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、2020年10月に最高裁判所から、労働契約法第20条(2018年法律第71号による改正前のもの)に基づき、一部の手当や休暇制度について、正社員と期間雇用社員である原告間に差異があるのは不合理との判決を言い渡されました。当社グループにおける今後の人事労務制度の改正内容については、最高裁判所の判決内容を踏まえ、検討してまいりますが、その対応内容によっては相当の費用を要するなど、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(6) 社会的信用の低下に関するリスク
当社グループの事業、従業員、提携先又は委託先企業に関連して、郵便物や荷物の誤配・紛失等、交通事故、重大な事務事故、個人情報等の漏えい、サイバー攻撃等によるシステム障害、お客さま本位の業務運営に反する行為、反社会的勢力との取引、マネー・ローンダリング、テロ資金供与等の犯罪、労働問題、ハラスメント等が発生した場合には、当社グループの社会的信用が低下する可能性があります。
当社グループでは、グループ全社員へのコンプライアンス教育や「お客さま本位の業務運営」の徹底を通じ、かかる事態の未然防止に努めております。
2021年には、日本郵便において、経費で購入した業務用カレンダーの配布にあたって全国郵便局長会より不適切な指示が行われていた問題が発覚しました。再発防止のため、「会社の活動」と「業務外の活動」のしゅん別に関する全役員・社員への継続的な指導等を着実に実行し、同様の事案を発生させないよう取り組んでおります。また、同カレンダーの配布にあたって、業務上得られた個人情報を業務外の活動に使用する等の不適切な取扱いも発覚したことに伴い、再発防止のため、個人情報の適正な取扱いの徹底等に関する教育・研修を日本郵便の全社員対象に行っております。
しかしながら、これらの施策にもかかわらず上記のような事態が生じ、当社グループの風評・風説が、市場関係者への情報伝播、インターネット上の掲示板やSNSへの書込み等により拡散した場合、又は、報道機関により否定的報道が行われた場合には、仮にそれらが事実に基づかない場合であっても、お客さまや市場関係者等から否定的な認識又は強い批判がなされ社会的信用が低下し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。


3.事業運営に関するリスク
(1) 中期経営計画に関するリスク
当社グループは、中期経営計画において、お客さまと地域を支える「共創プラットフォーム」を目指し、DXの推進により、リアルの郵便局ネットワークとデジタルの融合に取り組んでおります。ユニバーサルサービスを含むコアビジネスの充実強化については、郵便・物流事業では、P-DXの推進、商品・サービス、オペレーションの戦略的見直しによる競争力の強化(荷物収益の拡大等)に取り組んでおります。加えて、不動産事業の拡大や、新規ビジネス等の推進により、ビジネスポートフォリオの転換、グループの新たな成長の実現に取り組んでおります。
しかしながら、将来の戦略、計画、方針等には本「事業等のリスク」に記載のものを含む様々なリスクが内在しており、想定通りに進捗しなかった場合には、当該計画の実現又は目標の達成ができず、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、コアビジネスのうち、銀行業及び生命保険業にかかる事業戦略及び経営計画に関するリスクについては、下記「Ⅲ.各事業に特有のリスク」をご参照ください。

(2) サステナビリティ経営に係るリスク
上記「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおり、当社グループは、「日本郵政グループサステナビリティ基本方針」において、当社グループの事業活動を通じてサステナビリティを巡る社会課題の解決に貢献することにより、グループの持続可能な成長と中長期的な企業価値の向上に努めることを掲げるとともに、当社グループの中期経営計画において、「人生100年時代の『一生』を支え、日本全国の『地域社会』の発展・活性化に貢献し、持続可能な社会の構築を目指すこと」をESG目標として設定しております。
当社グループのサステナビリティに関する重要課題については、①地域生活・地域経済、②高齢社会への対応、③サービスアクセス、④環境、⑤人材・人的資本、⑥経営基盤、といった領域を特定しております(それぞれの領域における取組の方向性については、上記「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。)。
これらの課題に関するリスク及び機会に対処するための具体的な取組については、サステナビリティ委員会及び日本郵政グループサステナビリティ連絡会において確認と推進管理を行っておりますが、その対応が十分でない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態並びに当社の株価に影響を及ぼす可能性があります。

(3) グループ外の企業との資本・業務提携、外部委託及び企業買収並びに業務範囲の拡大等に伴うリスク
① 資本・業務提携・外部委託先に関するリスク
当社グループは、当社グループ外の企業との間で様々な資本・業務提携、外部委託を行っております。主な資本・業務提携等は、下表のとおりであります。
こうした資本・業務提携、外部委託については、シナジー効果を含めたモニタリングを実施しておりますが、目標の変更や当社グループとの関係の変化等により、期待通りの効果が得られない場合や、顧客情報等の漏えい、不祥事等が発生した場合等には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

企業名日付当社グループ内容
アフラック・インコーポレーテッド

アフラック生命保険
2018年12月



当社



戦略提携に合意
アフラック・インコーポレーテッドの発行済株式総数(自己株式を除く。)の約7%を取得
(2023年3月末現在の保有株式数は、5,230万株)
楽天グループ株式会社







2021年3月



同年4月



同年7月
当社・日本郵便



当社・日本郵便・ゆうちょ銀行・かんぽ生命保険

日本郵便
資本・業務提携に合意
楽天株式会社(現楽天グループ株式会社)の発行済株式総数(自己株式を除く。)の約8%を取得
業務提携に合意



JP楽天ロジスティクス設立(日本郵便の連結子会社)


② 他の企業の買収に関するリスク
他の企業の買収については、当該事業分野の競争激化や当社のノウハウ不足から業務範囲の拡大が功を奏せず、過度の人的・物的負担が生じる可能性があり、また、買収先企業を当社グループ事業と統合する上では、買収先企業の重要な顧客等との良好な関係を維持できない、買収資産の価値が毀損し損失が発生する、又は買収先企業の経営陣を含む人材流出が発生する等により、当初想定した成果をもたらさず、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 投資事業に関するリスク
当社グループでは、日本郵政キャピタル株式会社及びJPインベストメント株式会社が投資事業を営んでおり、国内外への投資や新たな事業領域への出資等を行っております。こうした中、投資先の事業環境の変化その他様々な理由により、投資先の業績又は財政状態が悪化した場合には、投資資金を回収できず、また、投資活動により取得・発生した株式などの金融資産やのれんに評価損・減損損失が発生するなど、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、当社グループの投資先に内在する内部統制上の不備や法令等違反の問題を当社グループが投資後に早期に是正できない場合、当社グループの信用や企業イメージが低下し、その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(5) 不動産投資に伴うリスク
当社グループは、日本郵便株式会社において、自社所有の不動産を有効活用し、事務所・商業施設・住宅等の賃貸・管理事業、分譲住宅事業等の不動産事業を営むとともに、日本郵政不動産株式会社及び同社子会社のJPプロパティーズ株式会社において、自社所有及びグループ外から取得した不動産により同事業を営んでおります。国内外の景気又は特定地域の経済状況や紛争の発生、人口、市場における需給等の変化により、不動産価格の下落、賃貸料の下落・未収、空室率の上昇、建築資材の価格や工事労務費等の高騰、着工・竣工時期の遅延や見直し、棚卸資産の増加等の影響を受ける可能性があります。さらに、法的規制の変更、大規模災害や感染症の発生、特に新型コロナウイルス感染症の影響により、テナント賃料の減免等が一部発生しているほか、収束後も、eコマース市場の拡大などの消費者動向の変化、ライフスタイルや働き方の変容により、商業施設(特に小売り)やオフィスの需要の変化等の影響を受ける可能性があります。
また、上記不動産事業の利益拡大を目指してまいりますが、不動産事業におけるノウハウの不足、必要な人員の採用、定着が進まないこと等によっては想定通りに進捗する保証はなく、グループ外の企業との共同プロジェクトにおいては、当社グループによるプロジェクトへの管理が及ばなくなったり、共同事業者との間で意見の不一致が生じること等により、事業の進捗に支障が生じる可能性があります。
これらの事象が当社グループの不動産事業の収益や費用に影響を及ぼしたり、保有不動産等に評価損・減損損失や売却損が発生する場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(6) 海外子会社に関するリスク
① トール社の業績に関するリスク
国際物流事業を担うトール社の事業は、世界経済の減速や新型コロナウイルス感染症、サイバー攻撃等の影響等もあり、厳しい経営環境が継続しております。エクスプレス事業については、2021年8月、Allegro Funds Pty Ltdの傘下企業への譲渡手続が完了いたしましたが、トール社のオペレーションから当該事業を完全に切り離すために追加の費用等が生じる可能性があります。
エクスプレス事業の譲渡後、日本郵便は、人員配置の合理化等によりトール社の残るロジスティクス事業及びフォワーディング事業の採算性の向上に努めるとともに、JPロジスティクスグループ株式会社の活用等により、豪州に依存した経営構造から日本を含むアジアを中心としたビジネスモデルへの転換による成長を図ります。しかしながら、同社のかかる経営改善策及び成長戦略が功を奏せず、トール社の業績が向上しない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、日本郵便がトール社の事業再編その他日本を含むアジアを中心としたビジネスモデルへの転換をさらに進めるに際して総務大臣の認可が必要となる場合、必要な認可を適時に取得できないことにより、事業再編等に支障が生じる可能性があります。
また、トール社は、日本郵便の買収以前に多数の企業買収を行っておりますが、複数のビジネス・ユニットによる取引先の競合やオペレーションの重複等が解消しない可能性、複雑な業務及び設備、並びに世界各地の多様な従業員を十分に管理できない可能性があります。さらに競合関係にある競業他社が、トール社より優れた商品・サービスを提供することで、トール社のマーケットシェア及び利益が低減すること、自然災害、事故等により、基幹ⅠTシステム、主要な輸送手段、倉庫が損害等を受けること、さらには、買収時に発見できなかった問題が発生すること等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、トール社を親会社とする連結グループは、2022年12月末時点で826億円の債務超過となっておりました。これを受けて、日本郵便はトール社に対し2,000百万豪ドル(約1,800億円)の追加出資を行っており、これにより、2023年3月末時点でトール社の債務超過は解消しておりますが、トール社の収益性の悪化等により、日本郵便において減損損失が発生し又はさらなる出資を要する可能性があります。

② トール社に適用される規制等
トール社は、豪州を中心に、アジア太平洋地域等におけるフォワーディング、ロジスティクス事業を行っており、関連する国・地域の事業許可や租税に係る法規制、運送、貿易管理、独占禁止、為替規制、環境等の法規制の適用を受けております。法令等の改正や新たな法規制等により、当社グループの競争条件が悪化したり、事業活動の一部が制限又は変更を余儀なくされた場合、また、コンプライアンス態勢が十分な効果を発揮せず、法規制等の違反が生じた場合は、新たな対応費用の増加、収益機会の喪失等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

③ 為替変動・国際財務報告基準(IFRS)の適用のリスク
トール社の連結財務諸表は外貨建て(豪ドル)で作成されており、大幅な為替相場の変動が生じた場合、外貨建ての資産・負債等が当社の連結財務諸表作成のために円換算される際に為替相場の変動による影響を受けるため、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、トール社の連結財務諸表は国際財務報告基準(IFRS)が適用されていることから、同基準の変更により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

④ 資金繰り等のリスク
トール社は、継続的に設備投資等を行っており、金融機関からの借入等が一定程度ありますが、その返済が困難となる場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(7) 宿泊事業・病院事業に関するリスク
当社の営む宿泊事業について、2023年3月末までに、営業中の全かんぽの宿33施設の事業譲渡・売却を完了しました。しかしながら、当社運営時における事象には、事業譲渡・売却後も事業譲渡先等に対する損害賠償責任を負うリスク、行政処分等のリスクが残存します。
病院事業については、自然災害、火災、医療事故等から生じる潜在的な損失の発生、損害賠償責任、行政処分等のリスクを内包しております。また、高齢化等に伴う近時の医療費適正化の流れは、病院事業の収益性に影響を及ぼす可能性があります。
京都逓信病院及び広島逓信病院を2022年10月1日に事業譲渡したため、当社が運営する病院は東京逓信病院のみになりましたが、近年継続して営業損失を計上していることから、病院の状況を踏まえ、増収対策や経費削減による経営改善を進めております。しかしながら、経営改善策が当初想定した成果をもたらさない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(8) 金融2社との関係に関するリスク(グループ協定等、人的関係・取引関係)
グループ会社としてシナジー効果を発揮するため、当社と事業子会社との間でグループ協定等を締結し、グループ共通の理念、グループ運営に係る基本的事項等について合意しておりますが、金融2社についてはその独立性を確保する観点から、グループ運営に必要な事項や法令等に基づき当社による管理等が必要となる事項について、事前協議又は報告のみを求めております。
グループ協定等の存続期間は、金融2社がそれぞれ日本郵便と締結している日本郵便株式会社法第2条第2項に定める銀行窓口契約又は同条第3項に定める保険窓口業務契約が解除される日までとしており、これらの契約の解除は、当社による金融2社の株式売却と連動しておりません。
こうした中、当社グループの企業価値を最大化していくために、当社及び日本郵便と金融2社との間で契約関係(下記「5 経営上の重要な契約等」をご参照)、人的関係・取引関係(下記「(参考)⑤~⑦」をご参照)を構築しグループ運営を行うこととしておりますが、これらが機能しない場合、金融2社と当社及び日本郵便とのシナジー効果を実現できない可能性や、利益相反を適切に管理できない可能性があります。また、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険からの受託手数料が郵便局窓口事業セグメントの収益の大部分を占めることから、金融2社の経営方針に変更が生じた場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(9) 当社の商標等の金融2社との関係に関するリスク
当社及び事業子会社等が締結した、「日本郵政グループ運営に関する契約」等(以下「グループ運営契約」といいます。)に基づき、金融2社株式売却後も、金融2社は引き続き「日本郵政」ブランド及び関連商標の使用を継続する予定であります。
そのため金融2社の株式売却後も、金融2社における業績の低迷、従業員の不祥事その他の理由により金融2社の社会的信用が低下した場合には、「日本郵政」のブランド・イメージに悪影響を及ぼす可能性、当社グループのコンプライアンス等の内部統制の有効性に疑義があるものと受け止められる可能性があり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社はグループ運営契約に基づき、金融2社から、当社グループに属することによる利益の対価としてブランド価値使用料を受け取っており、金融2社がそれぞれ日本郵便株式会社法第2条第2項に定める関連銀行又は同条第3項に定める関連保険会社である限り、収受することを想定しております。しかしながら、金融2社にグループ運営契約を適用しなくなった場合、又は重大な経済情勢の変化等に起因してブランド価値使用料の算定方法が変更された場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

4.財務に関するリスク
(1) 保有株式及び固定資産の減損損失に関するリスク
当社が保有する金融2社の株式や特定投資株式の株価等が帳簿価額に比べて著しく下落し、回復する可能性が認められない場合には、減損損失を計上することになり、当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、これにより当社の分配可能額が減少し、会社法の規定により当社株主への配当の支払いが困難となる可能性があります。
また、当社グループは、郵便・物流事業、郵便局窓口事業及び国際物流事業を中心に、多額の固定資産を所有しております。経営環境の変化や収益性の低下等により投資額の回収が見込めなくなった場合には、減損損失を計上することが必要となり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 繰延税金資産に関するリスク
当社グループは、現行の会計基準に従い、将来の課税所得見積りを行った上で、貸借対照表に繰延税金資産を計上しておりますが、将来の課税所得見積額の変更等により、繰延税金資産全額又は一部に回収可能性がないと判断した場合、繰延税金資産が減額され、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
かんぽ生命保険の繰延税金資産の計上では、当該課税所得の見積もりにおいて、経営計画を基礎としており、今後、当該計画における取組方針の下、一定の新契約水準に到達する前提で作成しております。しかし、同社の足元の新契約の実績は緩やかな回復に留まっており、このまま、新契約の実績が想定どおり進捗しない期間がより長期に継続する場合や、経済環境の大幅な悪化の継続などによる見積りの前提の変更、あるいは税制改正に伴う税率の引き下げにより繰延税金資産額が減少する場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 退職給付債務に関するリスク
当社グループの退職給付費用及び債務は、将来の退職給付債務算出に用いる年金数理上の前提条件に基づいて算出しておりますが、金利環境の急変等により、実際の結果が前提と異なる場合、又は、退職給付制度を改定した場合には退職給付費用及び債務が増加することで、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 国際財務報告基準(IFRS)の適用に関するリスク
当社は、今後の国際財務報告基準(IFRS)の適用について国内外の会計基準の動向等を勘案し対応を検討してまいりますが、将来的に同基準を適用する場合、現行会計と異なる業績評価や経営管理が当社グループに不利に働くことで当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(5) 格付の低下に関するリスク
当社及び金融2社は、格付機関より信用格付を取得しておりますが、財務内容の悪化、日本国債の格下げ等により当該格付が格下げとなった場合、著しく高い金利での資金調達を余儀なくされる、業務運営に対する不安を想起させる等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

Ⅲ.各事業に特有のリスク(上記Ⅰ、Ⅱの記載を除く。)
1.日本郵便の事業に関するリスク
(1) 金融2社から日本郵便に対する郵便局窓口業務の委託(代理店営業)に関するリスク
日本郵便は、金融2社との銀行窓口業務契約等及び保険窓口業務契約等に基づき金融2社から受託手数料を受領しております。
2018年12月、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法の一部を改正する法律が施行され、2020年3月期から郵便局ネットワーク維持に要する費用のうち、ユニバーサルサービス確保のために不可欠な費用(日本郵便が負担すべき額を除きます。)は、金融2社からの拠出金を原資として郵政管理・支援機構から日本郵便に交付される交付金で賄われることとなり、これを契機に受託手数料が見直されました。
本受託手数料が、銀行法・保険業法に定められたアームズレングスルールの遵守等のもと、今後、減額する又は対象となる業務の範囲を限定する等、日本郵便にとって不利に改定された場合、また、競合商品との競争が激化する等の理由で郵便局の利用者数や利用頻度、金融2社の商品・サービスの利用が減少した場合には、郵便局窓口事業における収益に影響を与える可能性があります。特に、ゆうちょ銀行からの受託手数料は、ゆうちょ銀行の直営店での業務コストをベースに、日本郵便での取扱実績に基づき算出されるため、ゆうちょ銀行において業務コストが削減された場合には、当社グループの郵便局窓口事業における収益に影響を与える可能性があります。
当社グループとしては、今後もユニバーサルサービスが郵便局で一体的に利用できるよう、日本郵便と金融2社との関係を引き続き強化していく所存でありますが、金融2社はユニバーサルサービスの提供に係る法的義務を負うものではなく、郵便局ネットワークに代替する販売チャネルをより重視するようになった場合等の理由から、銀行窓口業務契約等及び保険窓口業務契約等の解除が発生した場合には、当社グループの郵便局窓口事業の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

2.ゆうちょ銀行の事業に関するリスク
(1) 事業戦略・経営計画に係るリスク
ゆうちょ銀行は、“信頼を深め、金融革新に挑戦”のスローガンの下、5つの重点戦略である「リアルとデジタルの相互補完による新しいリテールビジネスへの変革」、「デジタル技術を活用した業務改革・生産性向上」、「多様な枠組みによる地域への資金循環と地域リレーション機能の強化」、「ストレス耐性を意識した市場運用・リスク管理の深化」、「一層信頼される銀行となるための経営基盤の強化」を通じて、2021年度から2025年度までを計画期間とする中期経営計画を推進しております。
しかしながら、これらに向けたゆうちょ銀行の事業戦略・経営計画は、本項に記載したリスク要因等に伴い、当初計画した成果が得られない可能性もあります。特に、市場(金利・為替等)・経済情勢(景気・信用状況等)等が想定通り推移しなかった場合、例えば、市場金利の低下による運用利回りの減少や米ドルをはじめとする海外短期金利上昇に伴う外貨調達コストの増加、海外のクレジットスプレッド拡大による保有投資信託の特別分配金発生、プライベートエクイティファンドの投資先の企業価値向上や資金回収ぺースの想定との乖離、国際分散投資等の高度化・加速の中で、適切なポートフォリオ分散を達成できない可能性の他、より高いリスクを有する運用資産の増加によって価格変動リスクを受けやすくなり、ゆうちょ銀行の事業、業績及び財政状態に及ぼす影響が大きくなる可能性があります。加えて、ゆうちょ銀行は、現在、主にLP(有限責任組合員)として出資をしておりますが、今後はGP(無限責任組合員)業務の本格化を計画しており、この場合ゆうちょ銀行が負う上記の投資リスクはより高くなることが見込まれます。さらに、DXの推進等による、各種決済サービス及び資産形成サポートサービスの利用促進等並びに店舗改革等の業務効率化、運用・リスク管理・営業等の人材確保・育成が、想定通り進捗しなかった場合、役務取引等利益の拡大や営業経費の削減等の計画が達成できなくなる可能性や、ゆうちょ銀行の既存の対面型のサービスとの両立が困難となる可能性があります。さらに、ゆうちょ銀行が推進するΣビジネス(上記「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)対処すべき課題 ⑥銀行業」をご参照ください。)については、地域経済の低迷、地域金融機関又は地方自治体の利益相反若しくは協力不足、適切な収益機会の逸失等により期待された成果を上げない可能性があります。また、減損損失、売却損の計上等により十分な利益水準が確保できない場合や、相場変動によりその他有価証券の評価損が拡大し、分配可能額を確保できない場合等には、株主還元の目標が達成できない可能性があります。


3.かんぽ生命保険の事業に関するリスク
(1) 事業戦略・経営計画に関するリスク
かんぽ生命保険は、募集品質問題等の反省を踏まえ、お客さまから真に信頼される企業へと再生し、持続的な成長を目指すため、「信頼回復に向けた取組みの継続」、「事業基盤の強化」、「お客さま体験価値の向上」、「ESG経営の推進(社会課題の解決への貢献)」、「企業風土改革・働き方改革」、「ガバナンスの強化・資本政策」に取り組むことを基本方針とした2021年度から2025年度を計画期間とする中期経営計画をはじめとする事業戦略・経営計画を策定しております。
しかしながら、これらに含まれる施策には、各種のリスクが内在しております。また、将来において、かんぽ生命保険による上記施策の実施を阻害するリスクが高まる又は新たなリスクが生じる可能性もあります。
さらに、これらの事業戦略・経営計画は、市場金利、外国為替、株価、事業環境、法制度、一般的経済状況、新しいかんぽ営業体制の下での日本郵便及びかんぽ生命保険の従業員の活動状況などの多くの前提を置き、作成されておりますが、かかる前提通りとならない場合や各施策に対する十分な事業評価が行われない場合には、当該計画における目標を達成できない可能性があります。なかでも、新契約の実績は、新しい営業体制を立ち上げ、お客さま担当制や新医療特約の取扱いなどを開始する中、お客さまとの面談件数は堅調に推移したものの、提案数の増加には十分結びついておらず、結果として緩やかな回復にとどまっております。収益の源泉となる保有契約が減少する中でかんぽ生命保険の純利益への影響も顕在化してきており、このまま、新契約の実績が想定どおりに進捗しないなどの期間がより長期にわたり継続する場合には、保有契約件数の減少等につながり、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、かんぽ生命保険は、自己株式取得等により、当社のかんぽ生命保険株式の議決権比率が50%を下回ったことから、新商品の販売開始に当たって郵政民営化法に基づく認可手続は不要となり、届出制へ移行しました。このため、新商品の投入スピードの向上が見込まれるものの、かんぽ生命保険が届出を適時適切に行うことができない、郵政民営化委員会から適正な競争関係の確保と役務の適切な提供の配慮義務に関して必要な意見が述べられる、金融庁による保険業法上の認可が得られない等の事由により、新商品を予定通りに販売できない、販売した場合であっても、予想を超える外部要因等により収益が確保できない等、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
さらには、中期経営計画期間において、DX推進等をはじめ、かんぽ生命保険全体で約2,500億円規模の投資を行うこととしております。これらの投資の管理・維持にも相当程度のコストが生じる見込みでありますが、投資額やコストに見合った成果が得られない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 商品に関するリスク
かんぽ生命保険の取り扱う商品は、個人向け生命保険、とりわけ養老保険・終身保険などの貯蓄性商品の割合が高く、長期的な日本の人口動態等の要因のほか、国内の雇用水準及び家計水準、代替商品であるその他の商品に対する相対的魅力、保険会社の財務健全性、社会的信用に対する一般的な認識が、新契約数や保有契約の消滅率に影響を及ぼしているほか、長引く低金利環境等により、貯蓄性商品の貯蓄としての魅力が低下しております。また、かんぽ生命保険の顧客基盤は中高年層及び女性の比重が高く、青壮年層の割合が相対的に低くなっております。
かんぽ生命保険では、人口減少や公的医療費の増加等の社会的課題を踏まえ、2022年4月より、お客さまの保障ニーズに対応するため、新しい医療特約「もっとその日からプラス」の取扱い等を開始し、また、2023年4月より、昨今の教育費用の高まりやお客さまからのご要望を受け、学資保険「はじめのかんぽ」の改定を行うとともに、子育てに役立つ情報・サービスを提供する子育て支援サイトを開設するなど、青壮年層を含めたあらゆる世代のお客さまニーズにマッチした保険サービスの開発や、DX推進とともにお客さま体験価値(CX)を最優先とするサービス提供体制の構築を目指しておりますが、これらが想定どおりに進捗しない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 保険負債に関するリスク
① 保険料設定と責任準備金の積立に関するリスク
かんぽ生命保険は、保険の種類及び内容、契約時の被保険者の年齢、性別、保険金額等を考慮して計算基礎率(予定死亡率、予定利率、予定事業費率)等に基づいて保険料を設定しておりますが、実際の死亡率、運用利回り、経費が事前に設定した計算基礎率を超過又は下回った場合には、損失が発生し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、かんぽ生命保険は、保険業法及び関連業規制に基づき、保険料収入の大部分を責任準備金として将来の保険金等の支払いに備えて積み立てており、各保険契約の保障対象となる事象の起こる頻度や時期、保険金等支払額、資産運用額等につき一定の前提を置き責任準備金を計算しておりますが、これらの前提と実際の結果が乖離した場合や環境の変化により将来乖離が見込まれる場合には、責任準備金の積増しが必要となる可能性があり、さらに、規制当局が定める責任準備金の積立に関する規制や標準利率・標準生命表に変更があった場合には、保険料見直しや責任準備金の積増しが必要となる可能性があり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

② 契約者配当準備金に関するリスク
かんぽ生命保険が確保すべき契約者配当準備金の繰入額は費用として扱われ、これにより各事業年度における純利益が減少します。かんぽ生命保険はかんぽ生命保険商品の競争力、業績、ソルベンシー・マージン比率等の様々な要素を考慮して繰入額を判断しておりますが、その繰入額によっては、かんぽ生命保険の株主への配当原資の額、事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、かんぽ生命保険が郵政管理・支援機構から受再している簡易生命保険契約については、「旧簡易生命保険契約に基づく保険責任に係る再保険契約」において、かんぽ生命保険が引き受けた保険契約と区分してその収益及び費用を経理するものとし、簡易生命保険契約の再保険損益の8割を契約者配当準備金に繰り入れることとしております。また、再保険配当の計算方法の変更の必要性について、毎事業年度、郵政管理・支援機構と当社間で協議することとされておりますが、本契約締結以降、当該計算方法が変更されたことはなく、当連結会計年度末現在において変更の予定もありません。

(参考)金融2社の株式売却に関するリスク(上記[Ⅰ.2.関連、Ⅱ.3(8)関連])

①日本国政府による当社株式の保有状況及び当社による金融2社の株式保有状況(2023年3月期末日時点)

(日本国政府による当社株式の保有状況)
株式保有保有割合
(発行済株式)
保有割合
(議決権)
郵政民営化法の規定
日本国政府保有(当社株式)34.3%36.3%3分の1超


(当社による金融2社の株式の保有状況)
株式保有保有割合
(発行済株式)
保有割合
(議決権)
郵政民営化法の規定
当社保有(ゆうちょ銀行株式)60.3%60.6%できる限り早期に処分
当社保有(かんぽ生命保険株式)47.8%49.8%同上


②金融2社株式処分の連結財務諸表への影響
金融2社の形態売却価額が減少した場合の連結財務諸表への影響
子会社売却価額

従業員の状況研究開発活動


このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E31748] S100R1KF)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
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