有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100OGHJ (EDINETへの外部リンク)
株式会社ダイフク 事業等のリスク (2022年3月期)
本文中における将来に関する事項の記述については、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1) リスクの管理体制
① リスクマネジメント委員会の新設
当社グループの経営目標の達成に影響を与える重要なリスクを組織横断で管理する目的で、2022年4月にリスクマネジメント委員会を新設しました。リスク管理については、これまでサステナビリティ委員会の中で取り扱ってきましたが、事業や経営環境を取り巻くリスクが急速に変化し、不透明感が増す中、迅速な意思決定と健全なリスクテイクの裏付けとなる管理体制の増強を目指して、グループ全体のリスクマネジメント活動を統合する独立の委員会を設置したものです。同委員会は、CEOが委員長を務め、事業部門長、事業部長、安全衛生管理本部及びコーポレート部門等の責任者で構成されます。同委員会は、年数回程度の全体会を開催するほか、重要なリスクマネジメント課題を取締役会へ適宜報告を行います。
② 平常時及び非常時の体制
リスクマネジメント委員会の新設に伴い、平常時と非常時の体制を明確にして運用しています。リスクマネジメント委員会が平常時の活動を推進し、リスクが顕在化する前にリスクコントロールを行います。一方、非常時は、リスクが顕在化した後の危機対応を行うBCP推進体制を整備しており、その対応を実施します。BCP推進体制では、リスクマネジメント委員会と連携を行うとともに、危機が発生する前の事前準備も行います。また、危機が発生した場合の体制と対応手順を定めており、定期的に訓練を行っています。
(2) リスク分析の前提条件
当社グループが、リスク分析に当たり主に考慮すべきと考えている前提条件は、以下のとおりです。
・特定業種のお客さまの設備投資動向の影響を大きく受けること
・業態として、長期のプラント工事を伴うこと
・売上高の70%近くを海外で上げているグローバル企業であること
・業績やグループ規模が急成長し、今後も持続的成長が見込まれること
・物流システムが重要な社会インフラとして認知され、社会的注目度が向上していること
(3) リスクマネジメントの運用状況
当社グループは、「リスクマネジメント規程」に則り、定期的にリスクアセスメントを行っています。
当社グループの事業活動に大きく影響を与える重要リスク項目を抽出し、「発生頻度」、「影響度」の2つの評価軸でマッピングを行い、リスクを把握・管理しています。
アセスメント対象は全事業部、国内外の子会社を網羅しています。アセスメント結果に基づき、外部機関が当社グループへのヒアリングを行うとともに専門的な知見を加えて補正しています。2019年に実施したアセスメントの結果と比較すると、2021年の結果においては「事業環境の変化に関するリスク」の影響度が増しました。新型コロナウイルス感染症の拡大、米中摩擦、世界的な半導体不足などが評価に大きく反映されました。
リスクアセスメントの結果等を踏まえ、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識しているリスクは次の通りです。①~⑥は通常の事業運営上で想定されるリスクを記載しています。「⑦新型コロナウイルス感染症のリスク」は現下の状況で重要度が高いもの、「⑧気候変動に関するリスク」は国際的な枠組みのもとで開示が求められるものです。
① 事業環境の変化に関するリスク
・お客さま業界の設備投資動向の影響
半導体・液晶業界を主体とするエレクトロニクス業界向け売上高は、商業及び小売業向けと並んで、当社グループの売上で最も大きな部分を占めます。エレクトロニクス業界は、景気変動ひいては設備投資動向の波が特に大きく、同業界向けの売上高は2018年度1,899億円、2019年度1,441億円、2020年度1,370億円、2021年度1,513億円と、他業界向けに比べて増減の度合いが高くなっています。当社グループではお客さま業界の動向を注視し経営計画に機動的に反映させるよう努めていますが、技術革新のスピードが非常に早い半導体・液晶業界の設備投資動向は、短期間で急速に変化するうえ、近年は先端技術の移転にからむ地政学的リスクも浮上しており業績予想に想定以上の影響を及ぼす可能性があります。
・原材料費、輸送費の高騰及び原材料の入手遅延などの影響
世界的な半導体等部品の供給不足、エネルギー価格・原材料価格の高騰、物流網の混乱にも拍車がかかり、また北米を中心に人手不足は深刻さを増し、今後の経済活動の先行きは不透明感が増しています。当社グループにおいても、部品の価格高騰・入手遅延、工事現場の人件費上昇などを十分考慮して、コストや納期を管理するとともに、今後受注する案件については契約条件等にも留意して、影響の最小化を図っていきますが業績予想に想定以上の影響を及ぼす可能性があります。
・ロシア・ウクライナ情勢の影響
当社はロシアのサンクトペテルブルクに拠点を設置していますが、過去に納入したシステムの保守・メンテナンスが中心業務であり、ロシア及びウクライナへの売上規模は極めて小さく、今後も含めた当社グループの業績への直接的な影響は限定的です。一方で、エネルギーや食糧価格の上昇、サプライチェーンの分断が消費などに与える経済全般への影響を注視し、事業活動に及ぼす影響の最小化に努めますが業績予想に想定以上の影響を及ぼす可能性があります。
当社グループ全体の2021年度の売上高実績のうち約65%は海外でした。主要製品を生産・輸出するダイフクだけでなく、現地で生産・工事・サービスを行う海外子会社との連携、特に工事を担当する子会社のプロジェクト予算管理が非常に重要であると認識しています。当社グループは、プロジェクトの予算や進行管理の精度向上に努めていますが、プロジェクト管理の難度は建設地や納期、建屋も含めた進捗、技術的な要素などの条件によって個々の案件ごとに異なるうえに、複数案件の集中度合いによっては人手の確保が難しくなり、工事コストが上昇する可能性があります。また、上記「原材料費、輸送費の高騰及び原材料の入手遅延などの影響」のとおり、経済全般に不透明感が増しており業績予想に想定以上の影響を及ぼす可能性があります。
② コンプライアンスに関するリスク
当社グループの急成長、子会社や従業員の急速な増加により、当連結会計年度の当社グループの連結会社数は69社、従業員数は12,436名に達し、そのうち連結海外子会社の従業員数は8,643名(69.5%)となりました。当社グループは、コンプライアンス意識の醸成や浸透を図り、不祥事の発生などを含むコンプライアンスに関する広範なリスクに対応するために、
・社外取締役のコンプライアンス委員会への出席
・業務ラインから独立した監査本部による内部監査
・内部通報制度の見直し
・法務・コンプライアンス本部を設置し、贈収賄防止、競争法違反防止などの規程を整備
・監査役の監査の実効性をより高めるために、監査役及び監査役会の職務を補助する監査役室を設置
・グループガバナンス強化のため、リスク・ガバナンス室(現ガバナンス推進室)を設置
・輸出入取引に関するコンプライアンス体制整備のため、海外取引統括室を設置
などの手段を講じてきました。また、2021年度は、グループ全体にコンプライアンス意識の浸透を図るため、グループ行動規範を解説した「コンプライアンス・ガイドブック」を作成し、多言語化の上、CEOがコンプライアンスに関する考え方をグループ全体に伝える説明を行うなど、コンプライアンス意識の醸成・浸透活動を継続的に行っています。しかしながら、管理対象の大幅な増加、法制度の厳格化等により、コンプライアンスリスクが顕在化する可能性があります。
③ 人材に関するリスク
世界的な人手不足の中、eコマースの進展などによりマテリアルハンドリングシステム業界においても技術者・技能者不足が懸念されています。当社グループにおいても専門的知識や技術を持った人材不足をリスクと捉えています。
そのため当社グループでは、女性・外国人・キャリア採用者の採用・登用に積極的に取り組んでいます。また、従業員の一体感の醸成や生産性の向上を企図し、2021年度は国内グループ従業員に対し、「エンゲージメント・サーベイ」(働きやすさ、働きがいに関する調査)を実施しました。今後は海外のグループ従業員にも同サーベイを実施する予定です。しかしながら、人材獲得競争の激化及び人材の流動性の増大により、上記リスクが想定以上の影響を及ぼす可能性もあります。
また、後継者(役員、役職者)の育成に関しては、キーポジションの明確化、コンピテンシー(求める行動特性・姿勢)の策定などを通して計画的な後継者育成体制を構築していきますが、効果が出るには一定の時間を必要とします。
④ 大規模な自然災害によるリスク
地震、津波など大規模な自然災害の発生により、ライフラインの停止や従業員の出勤が難しくなり、事業活動が中断するリスクがあります。
対策として、拠点ごとの自然災害ハザード調査、発生時の時系列対応計画(タイムライン)策定と安否確認などの各種訓練、備蓄品の拡充などを進めています。また、必要に応じて、事業継続計画(BCP)などの計画類の実効性向上のため、事業影響度分析、各事業部体制表の見直しなどを実施しています。
これらの取り組みにより、大規模な自然災害が発生した際の被害規模局限化、影響度の低減に努めています。しかしながら、発生した事象が甚大な場合(南海トラフ地震、超大規模台風など)、影響は想定より大きくなる可能性があります。
世界的に流行するような感染症も、大規模な自然災害の一つとして分類しています。新型コロナウイルス感染症による影響は、後述します。
⑤ レピュテーションリスク
近年、SNSの普及などに伴い、誤った情報、 または広告、不適切な表現が拡散した場合のレピュテーション(風評被害)リスクが大きくなっています。特に人権問題や環境問題に対して社会の見る目は非常に厳しく、調達先も含めて責任ある対応を取らない場合は、当社グループのブランドイメージや社会的信用の低下につながり、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。そのため、役員層へのメディアトレーニング実施や各種ガイドライン等の作成に取り組み、対応強化に努めています。
⑥ サイバー攻撃・情報漏えいのリスク
情報はヒト、モノ、カネ、と並ぶ4大経営資源の一つですが、近年世界的に、サイバー攻撃や内部不正による情報漏えいが増加傾向にあり、情報に対する脅威が非常に高まっています。
そこで、2022年度より情報セキュリティ委員会はCEOを委員長とし、当社グループ横断で情報セキュリティ対策強化に取り組んでいます。
情報セキュリティ委員会を軸にCSIRT(Computer Security Incident Response Team:サイバー攻撃による情報漏えいなど、コンピューターセキュリティにかかる事故に対処するための組織)を運営し、サイバー攻撃を受けた場合の影響範囲や損害の特定、被害拡大防止の初動対応、再発防止策の検討などの実施、定期的な社員教育・訓練を実施していきます。しかしながら、情報を不正に入手、悪用する側の手口やスキルは年々巧妙化しており、すべてを防ぎきれない可能性があります。
⑦ 新型コロナウイルス感染症のリスク
新型コロナウイルス感染症による主なリスクとしては、当社グループ及びお客さまの移動・出社・活動制限、感染者の発生による事業活動の遅延停滞、景気後退に伴うお客さま設備投資の延期・中止、減産による収益性の悪化などが考えられます。
当社グループは、従前より、地震や津波などに備えてBCP体制を構築し、災害時・緊急時に対処するノウハウや知見を蓄積しています。2020年1月以降に影響が顕在化した新型コロナウイルス感染症に対しては、CEOを最高責任者とする新型肺炎対策本部を立ち上げ、各事業部門が状況を精査し必要に応じて取締役会に報告して対処しています。
社員とその家族、お客さま、お取引先さまなどの生命・健康・安全を最優先にし、国内外の政府や行政機関のガイドラインを遵守し、在宅勤務を実施することなどにより、事業活動に大幅な支障はきたしていません。
しかしながら、新型コロナウイルス感染症は収束には至っておらず、中国の厳格なコロナ政策が世界経済に及ぼす影響も懸念されており、リスクの及ぶ範囲が拡大する可能性もあると認識しています。
⑧ 気候変動に関するリスク
当社グループは、「深刻化する地球環境問題」が当社グループを取り巻く社会環境の重要な要素の一つであるととらえています。
当社は気候変動を含む「サステナビリティ経営」に関する審議項目の取締役会への上程、報告、情報提供を適宜行う「サステナビリティ委員会」(委員長:CEO)を設置しており、各事業部門長・関係執行役員を委員に充てています。
取締役会は、サステナビリティ委員会から報告を受け、必要な施策を決議します。
2019年5月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)勧告に賛同を表明しました。
2020年に、TCFDの枠組みに沿った情報を当社ウェブサイトで開示しています。
https://www.daifuku.com/jp/sustainability/assets/pdf/environmental-management/tcfd_2020.pdf
その後の組織改編などにより、現時点でのTCFDの「4つの中核要素と当社の取り組み」は以下のとおりです。
1) ガバナンス
・CEO直轄のサステナビリティ委員会を設置
・取締役会は同委員会より報告を受け必要な施策を決議
2) 戦略
・シナリオ分析の結果、事業コスト増加の影響があるものの業績への影響は軽微
・一方でそれを上回る製品・サービス需要の拡大が見込まれる
3) リスク管理
・サステナビリティ委員会が一元的に管理し、優先度の高いものは取締役会に報告
4) 指標と目標
・「ダイフク環境ビジョン2050」を2021年に策定
・同ビジョンに基づき2030年目標を設定
上記2) 記載のシナリオ分析は、21世紀中の気温上昇を4℃、1.5℃未満という2つの想定に基づいて気候変動リスクを分析しました([表]気候変動リスクに対するシナリオ分析概要参照)。4)に記載の「ダイフク環境ビジョン2050」は、主に気候変動の移行リスクと機会に対応するものとし、2050年に「マテリアルハンドリングシステムが環境負荷ゼロで動く世界を目指す」ためのKPI等を示しました。概要は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4) 環境ビジョンとサステナビリティアクションプラン」をご覧ください。進捗の状況は、2022年8月頃に発行予定の統合報告書で開示予定です。
〔表〕気候変動リスクに対するシナリオ分析概要
上記のように、経済価値だけなく、社会価値の面からも、企業は厳しく評価されるようになりました。当社グループは、環境・社会・ガバナンス(ESG)、サステナビリティといった観点での社外機関の評価を積極的に活用し、投資家との直接対話にも注力してPDCAのサイクルを回し、たゆみない改善をはかっていきます。
社外機関の評価の詳細については、以下をご参照ください。
https://www.daifuku.com/jp/sustainability/external-evaluation/
(1) リスクの管理体制
① リスクマネジメント委員会の新設
当社グループの経営目標の達成に影響を与える重要なリスクを組織横断で管理する目的で、2022年4月にリスクマネジメント委員会を新設しました。リスク管理については、これまでサステナビリティ委員会の中で取り扱ってきましたが、事業や経営環境を取り巻くリスクが急速に変化し、不透明感が増す中、迅速な意思決定と健全なリスクテイクの裏付けとなる管理体制の増強を目指して、グループ全体のリスクマネジメント活動を統合する独立の委員会を設置したものです。同委員会は、CEOが委員長を務め、事業部門長、事業部長、安全衛生管理本部及びコーポレート部門等の責任者で構成されます。同委員会は、年数回程度の全体会を開催するほか、重要なリスクマネジメント課題を取締役会へ適宜報告を行います。
② 平常時及び非常時の体制
リスクマネジメント委員会の新設に伴い、平常時と非常時の体制を明確にして運用しています。リスクマネジメント委員会が平常時の活動を推進し、リスクが顕在化する前にリスクコントロールを行います。一方、非常時は、リスクが顕在化した後の危機対応を行うBCP推進体制を整備しており、その対応を実施します。BCP推進体制では、リスクマネジメント委員会と連携を行うとともに、危機が発生する前の事前準備も行います。また、危機が発生した場合の体制と対応手順を定めており、定期的に訓練を行っています。
(2) リスク分析の前提条件
当社グループが、リスク分析に当たり主に考慮すべきと考えている前提条件は、以下のとおりです。
・特定業種のお客さまの設備投資動向の影響を大きく受けること
・業態として、長期のプラント工事を伴うこと
・売上高の70%近くを海外で上げているグローバル企業であること
・業績やグループ規模が急成長し、今後も持続的成長が見込まれること
・物流システムが重要な社会インフラとして認知され、社会的注目度が向上していること
(3) リスクマネジメントの運用状況
当社グループは、「リスクマネジメント規程」に則り、定期的にリスクアセスメントを行っています。
当社グループの事業活動に大きく影響を与える重要リスク項目を抽出し、「発生頻度」、「影響度」の2つの評価軸でマッピングを行い、リスクを把握・管理しています。
アセスメント対象は全事業部、国内外の子会社を網羅しています。アセスメント結果に基づき、外部機関が当社グループへのヒアリングを行うとともに専門的な知見を加えて補正しています。2019年に実施したアセスメントの結果と比較すると、2021年の結果においては「事業環境の変化に関するリスク」の影響度が増しました。新型コロナウイルス感染症の拡大、米中摩擦、世界的な半導体不足などが評価に大きく反映されました。
リスクアセスメントの結果等を踏まえ、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識しているリスクは次の通りです。①~⑥は通常の事業運営上で想定されるリスクを記載しています。「⑦新型コロナウイルス感染症のリスク」は現下の状況で重要度が高いもの、「⑧気候変動に関するリスク」は国際的な枠組みのもとで開示が求められるものです。
① 事業環境の変化に関するリスク
・お客さま業界の設備投資動向の影響
半導体・液晶業界を主体とするエレクトロニクス業界向け売上高は、商業及び小売業向けと並んで、当社グループの売上で最も大きな部分を占めます。エレクトロニクス業界は、景気変動ひいては設備投資動向の波が特に大きく、同業界向けの売上高は2018年度1,899億円、2019年度1,441億円、2020年度1,370億円、2021年度1,513億円と、他業界向けに比べて増減の度合いが高くなっています。当社グループではお客さま業界の動向を注視し経営計画に機動的に反映させるよう努めていますが、技術革新のスピードが非常に早い半導体・液晶業界の設備投資動向は、短期間で急速に変化するうえ、近年は先端技術の移転にからむ地政学的リスクも浮上しており業績予想に想定以上の影響を及ぼす可能性があります。
・原材料費、輸送費の高騰及び原材料の入手遅延などの影響
世界的な半導体等部品の供給不足、エネルギー価格・原材料価格の高騰、物流網の混乱にも拍車がかかり、また北米を中心に人手不足は深刻さを増し、今後の経済活動の先行きは不透明感が増しています。当社グループにおいても、部品の価格高騰・入手遅延、工事現場の人件費上昇などを十分考慮して、コストや納期を管理するとともに、今後受注する案件については契約条件等にも留意して、影響の最小化を図っていきますが業績予想に想定以上の影響を及ぼす可能性があります。
・ロシア・ウクライナ情勢の影響
当社はロシアのサンクトペテルブルクに拠点を設置していますが、過去に納入したシステムの保守・メンテナンスが中心業務であり、ロシア及びウクライナへの売上規模は極めて小さく、今後も含めた当社グループの業績への直接的な影響は限定的です。一方で、エネルギーや食糧価格の上昇、サプライチェーンの分断が消費などに与える経済全般への影響を注視し、事業活動に及ぼす影響の最小化に努めますが業績予想に想定以上の影響を及ぼす可能性があります。
当社グループ全体の2021年度の売上高実績のうち約65%は海外でした。主要製品を生産・輸出するダイフクだけでなく、現地で生産・工事・サービスを行う海外子会社との連携、特に工事を担当する子会社のプロジェクト予算管理が非常に重要であると認識しています。当社グループは、プロジェクトの予算や進行管理の精度向上に努めていますが、プロジェクト管理の難度は建設地や納期、建屋も含めた進捗、技術的な要素などの条件によって個々の案件ごとに異なるうえに、複数案件の集中度合いによっては人手の確保が難しくなり、工事コストが上昇する可能性があります。また、上記「原材料費、輸送費の高騰及び原材料の入手遅延などの影響」のとおり、経済全般に不透明感が増しており業績予想に想定以上の影響を及ぼす可能性があります。
② コンプライアンスに関するリスク
当社グループの急成長、子会社や従業員の急速な増加により、当連結会計年度の当社グループの連結会社数は69社、従業員数は12,436名に達し、そのうち連結海外子会社の従業員数は8,643名(69.5%)となりました。当社グループは、コンプライアンス意識の醸成や浸透を図り、不祥事の発生などを含むコンプライアンスに関する広範なリスクに対応するために、
・社外取締役のコンプライアンス委員会への出席
・業務ラインから独立した監査本部による内部監査
・内部通報制度の見直し
・法務・コンプライアンス本部を設置し、贈収賄防止、競争法違反防止などの規程を整備
・監査役の監査の実効性をより高めるために、監査役及び監査役会の職務を補助する監査役室を設置
・グループガバナンス強化のため、リスク・ガバナンス室(現ガバナンス推進室)を設置
・輸出入取引に関するコンプライアンス体制整備のため、海外取引統括室を設置
などの手段を講じてきました。また、2021年度は、グループ全体にコンプライアンス意識の浸透を図るため、グループ行動規範を解説した「コンプライアンス・ガイドブック」を作成し、多言語化の上、CEOがコンプライアンスに関する考え方をグループ全体に伝える説明を行うなど、コンプライアンス意識の醸成・浸透活動を継続的に行っています。しかしながら、管理対象の大幅な増加、法制度の厳格化等により、コンプライアンスリスクが顕在化する可能性があります。
③ 人材に関するリスク
世界的な人手不足の中、eコマースの進展などによりマテリアルハンドリングシステム業界においても技術者・技能者不足が懸念されています。当社グループにおいても専門的知識や技術を持った人材不足をリスクと捉えています。
そのため当社グループでは、女性・外国人・キャリア採用者の採用・登用に積極的に取り組んでいます。また、従業員の一体感の醸成や生産性の向上を企図し、2021年度は国内グループ従業員に対し、「エンゲージメント・サーベイ」(働きやすさ、働きがいに関する調査)を実施しました。今後は海外のグループ従業員にも同サーベイを実施する予定です。しかしながら、人材獲得競争の激化及び人材の流動性の増大により、上記リスクが想定以上の影響を及ぼす可能性もあります。
また、後継者(役員、役職者)の育成に関しては、キーポジションの明確化、コンピテンシー(求める行動特性・姿勢)の策定などを通して計画的な後継者育成体制を構築していきますが、効果が出るには一定の時間を必要とします。
④ 大規模な自然災害によるリスク
地震、津波など大規模な自然災害の発生により、ライフラインの停止や従業員の出勤が難しくなり、事業活動が中断するリスクがあります。
対策として、拠点ごとの自然災害ハザード調査、発生時の時系列対応計画(タイムライン)策定と安否確認などの各種訓練、備蓄品の拡充などを進めています。また、必要に応じて、事業継続計画(BCP)などの計画類の実効性向上のため、事業影響度分析、各事業部体制表の見直しなどを実施しています。
これらの取り組みにより、大規模な自然災害が発生した際の被害規模局限化、影響度の低減に努めています。しかしながら、発生した事象が甚大な場合(南海トラフ地震、超大規模台風など)、影響は想定より大きくなる可能性があります。
世界的に流行するような感染症も、大規模な自然災害の一つとして分類しています。新型コロナウイルス感染症による影響は、後述します。
⑤ レピュテーションリスク
近年、SNSの普及などに伴い、誤った情報、 または広告、不適切な表現が拡散した場合のレピュテーション(風評被害)リスクが大きくなっています。特に人権問題や環境問題に対して社会の見る目は非常に厳しく、調達先も含めて責任ある対応を取らない場合は、当社グループのブランドイメージや社会的信用の低下につながり、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。そのため、役員層へのメディアトレーニング実施や各種ガイドライン等の作成に取り組み、対応強化に努めています。
⑥ サイバー攻撃・情報漏えいのリスク
情報はヒト、モノ、カネ、と並ぶ4大経営資源の一つですが、近年世界的に、サイバー攻撃や内部不正による情報漏えいが増加傾向にあり、情報に対する脅威が非常に高まっています。
そこで、2022年度より情報セキュリティ委員会はCEOを委員長とし、当社グループ横断で情報セキュリティ対策強化に取り組んでいます。
情報セキュリティ委員会を軸にCSIRT(Computer Security Incident Response Team:サイバー攻撃による情報漏えいなど、コンピューターセキュリティにかかる事故に対処するための組織)を運営し、サイバー攻撃を受けた場合の影響範囲や損害の特定、被害拡大防止の初動対応、再発防止策の検討などの実施、定期的な社員教育・訓練を実施していきます。しかしながら、情報を不正に入手、悪用する側の手口やスキルは年々巧妙化しており、すべてを防ぎきれない可能性があります。
⑦ 新型コロナウイルス感染症のリスク
新型コロナウイルス感染症による主なリスクとしては、当社グループ及びお客さまの移動・出社・活動制限、感染者の発生による事業活動の遅延停滞、景気後退に伴うお客さま設備投資の延期・中止、減産による収益性の悪化などが考えられます。
当社グループは、従前より、地震や津波などに備えてBCP体制を構築し、災害時・緊急時に対処するノウハウや知見を蓄積しています。2020年1月以降に影響が顕在化した新型コロナウイルス感染症に対しては、CEOを最高責任者とする新型肺炎対策本部を立ち上げ、各事業部門が状況を精査し必要に応じて取締役会に報告して対処しています。
社員とその家族、お客さま、お取引先さまなどの生命・健康・安全を最優先にし、国内外の政府や行政機関のガイドラインを遵守し、在宅勤務を実施することなどにより、事業活動に大幅な支障はきたしていません。
しかしながら、新型コロナウイルス感染症は収束には至っておらず、中国の厳格なコロナ政策が世界経済に及ぼす影響も懸念されており、リスクの及ぶ範囲が拡大する可能性もあると認識しています。
⑧ 気候変動に関するリスク
当社グループは、「深刻化する地球環境問題」が当社グループを取り巻く社会環境の重要な要素の一つであるととらえています。
当社は気候変動を含む「サステナビリティ経営」に関する審議項目の取締役会への上程、報告、情報提供を適宜行う「サステナビリティ委員会」(委員長:CEO)を設置しており、各事業部門長・関係執行役員を委員に充てています。
取締役会は、サステナビリティ委員会から報告を受け、必要な施策を決議します。
2019年5月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)勧告に賛同を表明しました。
2020年に、TCFDの枠組みに沿った情報を当社ウェブサイトで開示しています。
https://www.daifuku.com/jp/sustainability/assets/pdf/environmental-management/tcfd_2020.pdf
その後の組織改編などにより、現時点でのTCFDの「4つの中核要素と当社の取り組み」は以下のとおりです。
1) ガバナンス
・CEO直轄のサステナビリティ委員会を設置
・取締役会は同委員会より報告を受け必要な施策を決議
2) 戦略
・シナリオ分析の結果、事業コスト増加の影響があるものの業績への影響は軽微
・一方でそれを上回る製品・サービス需要の拡大が見込まれる
3) リスク管理
・サステナビリティ委員会が一元的に管理し、優先度の高いものは取締役会に報告
4) 指標と目標
・「ダイフク環境ビジョン2050」を2021年に策定
・同ビジョンに基づき2030年目標を設定
上記2) 記載のシナリオ分析は、21世紀中の気温上昇を4℃、1.5℃未満という2つの想定に基づいて気候変動リスクを分析しました([表]気候変動リスクに対するシナリオ分析概要参照)。4)に記載の「ダイフク環境ビジョン2050」は、主に気候変動の移行リスクと機会に対応するものとし、2050年に「マテリアルハンドリングシステムが環境負荷ゼロで動く世界を目指す」ためのKPI等を示しました。概要は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4) 環境ビジョンとサステナビリティアクションプラン」をご覧ください。進捗の状況は、2022年8月頃に発行予定の統合報告書で開示予定です。
〔表〕気候変動リスクに対するシナリオ分析概要
上記のように、経済価値だけなく、社会価値の面からも、企業は厳しく評価されるようになりました。当社グループは、環境・社会・ガバナンス(ESG)、サステナビリティといった観点での社外機関の評価を積極的に活用し、投資家との直接対話にも注力してPDCAのサイクルを回し、たゆみない改善をはかっていきます。
社外機関の評価の詳細については、以下をご参照ください。
https://www.daifuku.com/jp/sustainability/external-evaluation/
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ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
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