有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100OMHF (EDINETへの外部リンク)
フジテック株式会社 事業等のリスク (2022年3月期)
本項では、有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると特定した主要なリスクを記載しております。
なお、本項に記載した将来の事象や想定に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものです。
1. 当社グループのリスクマネジメント体制
当社グループのリスクマネジメントは、リスクおよび機会を踏まえた適切な意思決定を促し、ビジネスの成長を推進することを目的として取り組んでいます。
リスクマネジメントのプロセスは、はじめに当社グループの経営理念の実現、中期計画の実行および達成を阻害しうる不確実性をリスクと捉え、当社の全部門および全グループ会社からリスクおよびその対応策を抽出します。
次に、抽出したリスクを、影響度、発生可能性(頻度)の観点から評価し、社長を委員長としたリスクマネジメント委員会にて議論の上、重要なリスクを決定するとともに、各重要なリスクの責任者(執行役員)およびリスク対応策を決定します。
このように特定された重要なリスクについては、各重要なリスクの責任者(執行役員)の指示の下、実行部門により対応策が実行されます。各重要なリスクの責任者(執行役員)は、対応策の実行状況をモニタリングし、その実効性を測定します。これら一連の取り組みは取締役会に報告され、リスクマネジメントプロセスとその対応策の実効性が確認されます。
今後はより一層のリスクマネジメント体制強化のため、更なるリスクカルチャー醸成に向けた活動を推進してまいります。
リスクカテゴリ | リスク概要 | 影響 | 主な対策 |
コンプライアンス | ・事業活動における法令規則・社会的倫理規範を逸脱した行動による信頼の低下、企業価値の毀損 | ・社会的制裁・紛議、信用の失墜、労働環境の悪化および生産性の低下、停滞 | ・行動規範等の周知、教育・研修活動の実施、コミュニケーションの活性化 |
情報セキュリティ | ・サイバー攻撃やウイルス感染によるITシステム停止・不具合により、事業停止や情報漏洩、および信頼低下が発生するリスク | ・データ暗号化によるシステム停止に伴う事業停止および遅延による損害 ・データ窃取による情報漏洩 ・顧客等からの損害賠償請求、および当社グループに対する信頼の低下 | ・ITシステムの耐障害性、可用性の向上施策の実行 ・ウイルス感染および情報漏洩防止のため、セキュリティ対策と社員教育の実施 ・リスク顕在時を想定したIT-BCP訓練の実施 |
大規模自然災害 | ・地震、台風、大雨など大規模な自然災害により当社施設が被災し、生産から販売・保守メンテナンスに係わる当社事業活動への影響が生じるリスク | ・サプライチェーンの寸断等による事業活動の停滞、顧客に対する納期遅延 ・保守対象機器の被災に対する復旧の遅れ | ・事業継続計画(BCP)の策定およびシミュレーショントレーニングによる事業中断リスクへの対応力強化 ・被災に対する適正な保険の付保 |
新型コロナウイルス感染症 | ・新型コロナウイルス感染症の拡大による事業停止および中断、遅延等が発生するリスク | ・当社グループ社員への感染拡大による事業停滞 ・感染症のまん延によるサプライチェーンへの影響 | ・各国政府指針に基づく感染予防・感染拡大防止対策の実施 ・様々な状況に柔軟な対応ができるサプライチェーンの構築 ・事業継続計画(BCP)の策定による事業中断リスクへの対応力強化 |
品質と安全 | ・予期せぬ商品・サービスの品質低下や欠陥などに起因した事故発生のリスク | ・商品・サービスの品質低下や欠陥などの発生による当社への信頼の低下 ・損害賠償請求および訴訟 | ・製造、販売、据付、保守に至る当社事業活動における、社員の品質・安全管理に対する意識の醸成および安全対策の実施 ・仕入先への品質監査、品質認証の取得の推進 ・品質・安全問題への迅速かつ効率的な対応を可能とする原因特定および対応策策定プログラムの強化 |
リスクカテゴリ | リスク概要 | 影響 | 主な対策 |
人材確保 | ・当社事業の成長を支える優秀な人材を確保できないリスク | ・魅力ある新商品を開発できない、また業界や市場の変化に対する技術開発の遅れによる競争力の低下 ・社会インフラである昇降機を安定的に維持する力の低下、災害時の復旧スピードの低下 ・各業務プロセスにおける業務品質、生産性の停滞 | ・画期的な商品開発を可能とする人員、グローバルやデジタルトランスフォーメーションをけん引する人材など優秀な人材の採用 ・フィールドエンジニアにとってより魅力のある処遇、労働環境の整備 ・各職種、階層での社内研修の充実 |
調達価格 | ・原材料・資材の価格変動および調達・物流に関するリスク | ・原材料・資材・物流費の高騰による財務影響 | ・複数社購買による価格交渉力の維持ならびに良好な関係構築 ・公的な原材料の市況価格に基づく値決めによる仕入れ価格の適正化 |
競争激化 | ・想定を超える競争激化および市場変化により事業影響が生じるリスク | ・低廉な事業展開による収益の悪化 ・競争による事業機会の減少 | ・部門間連携プロジェクトによる優位性推進策の実行 |
グローバルな事業活動 | ・不安定な政情、戦争やテロといった国際政治に関わるリスク ・関税引上げや輸出入制限といった国内政治・経済に起因するリスク ・文化や慣習の違いから生ずる労務問題や疾病といった社会的なリスク | ・事業停止/休止/撤退の可能性 ・サプライチェーンへの影響 ・不買運動、賠償等の発生 | ・グローバルな政治・経済情勢、各国固有事情などの定常的な把握と事業に及ぼす影響の分析 ・グローバル拠点全体での相互補完的な機能分担、有事の際の複数拠点での事業インパクト吸収 |
為替変動 | ・予想を超える急激かつ大幅な為替相場の変動 | ・外貨建取引により発生する業績への悪影響 ・海外法人の円換算額への悪影響 | ・為替予約の実施 ・複数調達先の確保 |
株価の変動 | ・株価の急激かつ大幅な下落による純資産額の減少 | ・財政状態の悪化 | ・政策保有株式の縮減 |
M&A、合弁事業 | ・期待する効果が実現できないリスク ・合弁相手先の方針変更による合弁事業継続リスク | ・投資回収ができない、のれん減損など財務的な悪影響 ・合弁事業の見直し、組み換え、解消による業績への悪影響 | ・当社グループの目指すべき姿や成長戦略との整合性およびシナジー発揮の検証 ・M&A実施後のPMI(Post Merger Integration)の実施およびガバナンス体制の構築 ・合弁相手先(中華人民共和国)との緊密な関係構築 |
資金調達 | ・金融制度の不安定化、金融機関の貸出方針変更による資金調達リスクおよび金利の大幅な上昇に伴うコスト増 | ・財政状態の悪化 ・必要資金の調達難による事業計画遂行への悪影響 ・調達コストの大幅増 | ・グループ各社による資産負債管理(ALM)の実施 |
2. 気候変動、脱炭素リスク(気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に基づく情報開示)
本項では、当社としてTCFDのフレームワークに基づく開示項目を記載いたします。
TCFDフレームワークに基づく気候変動開示
(1) ガバナンス
当社は、経営理念を実践することこそが、社会や自然との共生や、持続可能な社会の実現につながると認識し、ステークホルダーの皆様とともに、“安全・安心”の追及、人材開発、技術の伝承、社会貢献活動、環境活動を含む、さまざまな事業活動に取り組みます。
気候変動に係るリスク・機会の分析・管理に関しては、社長が管掌するサステナビリティ委員会が、他のサステナビリティ課題・取り組みなどと併せて、経営計画との整合性の確認及び施策の管理・監督を行います。
また、サステナビリティ委員会は気候変動を含むサステナビリティに関する重要事項について、必要に応じて取締役会への報告を実施します。
気候変動に関する具体的な分析や施策については、サステナビリティ推進室がサステナビリティ委員会及び取締役である環境マテリアリティ・オーナーの監督のもとに実施しています。
また、サステナビリティ推進室はグループ内の事業部門、本社機構、子会社と連携し、気候変動リスク・機会の事業戦略への落とし込みや気候変動関連課題への対応策、管理指標および目標の検討を行い、サステナビリティ委員会へ上申、報告を行います。
(2) 戦略:気候変動によるリスクと機会
気候変動が当社事業・業績に与える影響について、TCFDフレームワークに基づいて定性的な分析を行いました。
シナリオ | 以下2つのシナリオに基づきシナリオ分析を実施しました。 2℃未満シナリオ(IPCC SSP1-2.6シナリオ):低炭素経済へ移行するシナリオ 4℃シナリオ(IPCC SSP5-8.51): 物理的気候変動リスクが高まるシナリオ なお、分析の時間軸は基本的に移行リスクについては2030年、物理的リスクは2050年を基準としています。 |
対象範囲 | フジテック株式会社及び連結子会社を分析対象として選定しています。 |
特定した気候変動に関連するリスクと機会は下表のとおりです。
当社では、今回特定したリスクと機会に関して、財務インパクトの把握やリスク・機会への対応策の導出を、引き続き進めてまいります。
気候変動によるリスクと機会一覧
カテゴリ | 世の中の動き | 温度 シナリオ | 事業リスク (インパクトを定性的に、どの勘定にどのような影響を及ぼすか) | 影響度 評価 | 発現の時間軸 中期:2030年 長期:2050年 | 機会 (インパクトを定性的に、どの勘定にどのような影響を及ぼすか) | 影響度 評価 |
政策・法的リスク | 建築物のエネルギー原単位規制 | 2.0℃ | 建築物のエネルギー使用原単位低下に向けた、省エネ製品開発のプレッシャー拡大による売上減少リスク | 小~中 | 中期 | 昇降機の軽量化、回生電力対応、DX活用などの省エネ製品開発により、省エネ需要の増加への対応力強化、売上機会の拡大 | 中 |
ZEB導入目標 | 2.0℃ | 製品使用量GHG排出量データ提出義務化等の規制強化、対応できない場合の売上機会喪失リスク | 小~中 | 中期 | 昇降機の軽量化、回生電力対応、DX活用などの省エネ製品開発により、省エネ需要の増加への対応力強化、売上機会の拡大 | 大 | |
市場動向 | 原料価格の高騰(鉄、アルミ、銅) | 2.0℃ | CO2排出規制による、金属素材のコスト増加による部材価格の高騰リスク | 大 | 中期 | 金属使用量を減らし、軽量化したエレベータの開発による売上機会へ拡大 | 中 |
産業廃棄物の規制強化 | 2.0℃ | 既存エレベーターのモダニゼーションに伴う廃棄物管理によるコスト上昇リスク | 中~大 | 中期 | ― | ― | |
輸送の脱炭素化 | 2.0℃ | 航空機、船舶などの電化が困難な輸送手段の運賃高騰リスク | 中~大 | 中期 | ― | ― |
カテゴリ | 世の中の動き | 温度 シナリオ | 事業リスク (インパクトを定性的に、どの勘定にどのような影響を及ぼすか) | 影響度 評価 | 発現の時間軸 中期:2030年 長期:2050年 | 機会 (インパクトを定性的に、どの勘定にどのような影響を及ぼすか) | 影響度 評価 |
市場での評判 | 脱炭素対応が遅れている/未対応企業に対する顧客からの引き合い減少 | 2.0℃ | 脱炭素の対応遅れによる新規・既存顧客からの引き合い減少・売上減少リスク | 中 | 中期 | 顧客の脱炭素に貢献する、省エネ・省資源・環境にやさしい製品の開発により競争力を高める | 中 |
脱炭素対応が遅れている/未対応企業に対する投資家からの低評価・ダイベストメント | 2.0℃ | 脱炭素の対応遅れによる投資家の評価の低下、株価下落リスク | 小 | 中期 | ― | ― | |
平均気温の上昇 | ヒートストレスの拡大による労働生産性低下、対応コストの上昇 | 4.0℃ | 不十分な夏季の暑さ対応による、従業員の体調不良の発生、労働生産性の低下リスク | 中~大 | 長期 | ― | ― |
平均気温上昇による猛暑日の増加 | 4.0℃ | 外気温が一定水準を超えた場合の操業停止規制リスク | 大 | 長期 | ― | ― | |
天候災害の激甚化 | 大雨や降水量の増加に伴う洪水発生頻度の増加 | 4.0℃ | 事業活動の停止による機会損失の発生、 設備・製品・在庫などの損壊による資産価値の下落リスク | 大 | 長期 | 沿岸地域を中心とした既存設備の故障増加に伴うモダニゼーションの機会の増加(マシン配置位置変更等による水害に強い昇降機開発も含む) | 中~大 |
天候災害によるサプライヤー拠点の被害 | 4.0℃ | サプライチェーンの寸断、輸送の遅延、原材料調達の遅延、コスト増加リスク | 大 | 長期 | サプライチェーンリスク管理ができていた場合には、部品供給や修理を含む災害への迅速な対応による顧客からの評判・評価の上昇、事業機会の拡大 | 小 | |
天候災害による浸水・停電などの頻度増加 | 4.0℃ | 災害時に顧客設備復旧への迅速・柔軟な対応ができない場合の顧客の評判低下リスク | 中 | 長期 | 大規模災害発生時のDX活用による復旧要員の最適な配置、リモート監視による復旧の早期化に伴う競争力向上の機会 | 中 |
(3) リスク管理
フジテックでは、社長を委員長とする「リスクマネジメント委員会」を設置し、事業リスクの低減と倫理・遵法、環境、品質問題など社会的に大きな影響を与えるリスクの根絶をめざし、リスクの早期発見とその対策に取り組んでいます。
この下位組織として、「リスクマネジメント運営委員会」を設置して、リスクマネジメントが全社的に機能するよう、情報の収集および指導・管理を行い、企業を取り巻く潜在的なリスクに対して、迅速かつ的確な対処を行っております。
気候変動に関連する重要なリスク等については、全社リスクマネジメント管理のプロセスと同様に、リスクマネジメント委員会がサステナビリティ委員会と経営会議による分析を経てその影響度や管理状況について適宜取締役会への報告を行っています。
(4) 指標と目標
フジテックグループの温室効果ガス(以下、GHG)排出量(Scope1,2)は以下の通りです。
2020年のScope1,2のGHG排出量は、前年比10.8%減少し、23,691トンでした。売上高原単位は、前年の14.6トン/億円から14.0トン/億円に減少しています。
フジテックは環境や社会にやさしい企業として、脱炭素など社会的課題の解決に向けて、社会インフラを担う当社ならではの貢献ができることを検討し、社会的責任を積極的に果たしていきます。
脱炭素の取り組みとしては、今後はサプライチェーンのお取引先様との情報共有を進めながら、Scope3のGHG排出量の捕捉を進めてまいります。
将来的には、脱炭素社会への貢献にかかる目標を策定し、開示に向けて検討を進めてまいります。
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