有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100OI7U (EDINETへの外部リンク)
富士電機株式会社 研究開発活動 (2022年3月期)
富士電機は、パワー半導体、パワーエレクトロニクス、計測・制御、冷熱などのコア技術を活用して、創エネルギーからエネルギー安定供給や省エネルギー、オートメーション、モビリティの電動化など、多くの先端的なシステムを手掛けています。
当連結会計年度における富士電機の研究開発費は33,756百万円であり、各部門の研究成果及び研究開発費は次のとおりです。
また、当連結会計年度末において富士電機が保有する国内外の産業財産権の総数は13,353件です。
■パワエレ エネルギー部門
IoT・AI技術を活用して、受配電設備の保全計画立案から設備の監視、設備更新計画の立案までを支援する「まるごとスマート保安サービス」を開発し発売しました。エッジコントローラで収集した稼動データをクラウド上のサーバに蓄積して一元管理し、設備の稼働監視と劣化診断を行うことで予防保全を可能にし、設備保全業務の効率化を支援します。
産業変電分野では、冷却用に大豆由来の天然エステル絶縁油(FR3)を採用した導油式のFR3適用変圧器を開発しました。FR3は、従来の鉱油系絶縁油に比べて生分解性や引火点が高いため、環境負荷の低減や防火設備への投資費用及び火災保険費用の削減を可能にします。
器具分野では、配線用遮断器・漏電遮断器「G-TWⅠN及びG-TWⅠNラムダ 母線プラグイン」シリーズにおいて、半導体装置やデータセンター、低圧受電盤、分電盤向けに標準の30mmピッチ品と、北米・アジア・EUの規格を取得したグローバル対応の30mm・70mmピッチ品を開発し発売しました。プラグイン方式により、省スペース化と施工作業性が向上し、容量変更や増設が容易になります。また、ユーザーのグローバルな展開に貢献します。さらに、配線用遮断器・漏電遮断器「G-TWⅠN」シリーズ32~100AF用の「IP54対応N形外部操作ハンドル」及び「IP20対応端子カバー」を開発し発売しました。外部操作ハンドルは、防塵・防水性能に関する保護等級IP54に対応するとともに、盤面フラット形の化粧板をオプションとして準備し、ハンドル操作部を盤面の内側に埋め込むことで、誤操作や盤輸送時の破損などのリスクを低減できます。端子カバーは、保護等級IP20に対応することで、盤内機器のメンテナンス時の安全性を向上し、機械制御盤の電気安全規格(IEC60204-1、NFPA79)を満足できます。
当連結会計年度における当部門の研究開発費は7,233百万円です。
■パワエレ インダストリー部門
システム事業拡大に向けて、データセンターや半導体工場、鉄鋼、鋳造、セメント、ごみ処理、化学、ガス、医薬・食品、電力、発電プラントなどのプラントシステムの開発・生産体制を強化するために東京工場(東京都日野市)に「プラントシステム棟」を新設し稼働を開始しました。現地のプラントを高い再現性で模擬する検証システムにより、工場出荷時のシステムの完成度を高め、実プラントの早期立ち上げ・稼働に貢献します。また、長年培った技術や経験を基に、さまざまなプラントに幅広く適用可能なプラントシステムの標準プラットフォームを構築しました。要求仕様に応じて、機器やソフトウェアを組み合わせて提供することで、リードタイムの短縮やシステムの品質・信頼性向上に貢献します。さらに、プラントシステムを構成する製品、ソフトウェアやソリューションをお客様に知っていただくために、実際の製品や大画面モニタを用いて紹介するコミュニケーションエリアを設けています。
スマートファクトリーを実現するため、パワエレ事業におけるシステム製品のマザー工場である東京工場で、自営の第5世代移動通信システム(ローカル5G)の実証実験を開始しました。工作機械や加工中の金属部品などの遮蔽物が多い環境下で電波の伝搬を調査し、生産管理システムなどの工場全体の情報を管理する基幹システムと、機械加工現場にある設備や機器との間における大容量データ通信の有効性を実証しています。本実証実験で得られた知見を当社の生産活動に活用するとともに、ローカル5Gの特長を生かしたソリューションを創出します。
低圧インバータ分野では、「FRENIC-MEGA G2シリーズ」として「零相リアクトル内蔵タイプ」を開発し発売しました。主にオフィスビル・工場などの熱源・空調・給排水システムをターゲットとし、そこで求められる国土交通省監修の公共建築工事標準仕様書への対応が容易となります。
計測・センサ分野では、圧力発信器「FCX-AⅣシリーズ」を開発し発売しました。機能安全規格「IEC61508(SIL2)」を取得し、高い信頼性が要求される石油化学プラントの緊急停止システムなどでも使用できます。また、水素の利用拡大が予想される中、測定媒体中に水素が存在しても測定精度を保つことができる当社独自の表面処理技術を適用した製品もラインアップしました。
FAコンポーネント分野では、プログラマブルコントローラ「MICREX-SXシリーズ」を活用して生産工程における製品加工の異常を検知・分析する「異常診断ソリューション」を開発し発売しました。アナリティクス・AIの一つである多変量統計的プロセス管理(MSPC:Multivariate Statistical Process Control)を用いた異常検出技術により、設備の正常時のデータ(診断モデル)と稼働中のデータをリアルタイムで比較し、それらの乖離を検知して異常を知らせます。これにより、次工程への不良品の流出を抑制します。
また、高速性とリアルタイム性を備えたオープンネットワークであるEtherCATに対応したプログラマブルコントローラ「MICREX-SXシリーズ」の新CPUモジュール「SPH5000EC」を開発し発売しました。本CPUモジュールに、EtherCATを使って「サーボシステムALPHA7」や他社のスレーブ機器を接続して、高速・高精度なモーションシステムを構築できます。さらに、当社が用意したファンクションブロックを組み合わせて、お客様にとって最適なモーションシステムを短期間で構築できます。
PCS分野では、カーボンニュートラルの実現に向けて、今後拡大する需給調整市場向けに需要の増加が見込まれる大容量の蓄電池用PCS「PVI1400CJ-3/2600」(2,600kVA)を開発し発売しました。本PCSは、自社製パワー半導体の採用により、高い電力効率98.2%を実現しました。さらに、外部からの指令で瞬時に起動する制御方式の採用により、待機時の電力消費量を97%削減しています。また、既に発売中の太陽光発電用ストリング形PCS(50kWと21kW)においては、一般財団法人電気安全環境研究所(JET)による高圧系統連系認証を業界で初めて取得しました。太陽光発電設備を送電線につなぐには発電設備設置者と送配電事業者との間での協議が必要ですが、この認証を得ることで、申請から許可までの期間を通常の3~4週間から1週間以内に短縮できます。これらにより、再生可能エネルギーの普及拡大に貢献します。
当連結会計年度における当部門の研究開発費は9,397百万円です。
■半導体部門
産業用モジュールでは、低損失で高温動作を保証した最新の第7世代IGBT技術を適用した製品の系列を拡大しています。
産業用RC-IGBTモジュール1,700V/800A DualXTを開発し製品系列に加え、量産を開始しました。さらに大容量系列では、定格1,200V/2,400A、1,700V/2,400Aのサンプル展開を開始しました。RC-IGBT(逆導通IGBT)技術の採用によりパワー密度が更に向上し、同じパッケージのままで電流定格を拡大しました。パワーエレクトロニクス機器の大容量・小型・軽量化に貢献します。
第7世代IGBTモジュールは、標準品の系列化が完了し、駆動機能や保護機能を備えたIPM(Intelligent Power Module)の開発を進めています。第7世代IGBT-IPMは、FA、工作機械、空調機器向けに650V/20~250A、1,200V/10~150Aの系列化が完了し量産を開始しました。さらに大容量の650V/300~450A、1,200V/200~300Aはサンプル展開を開始しました。また、ルームエアコンやモータードライブ向けには650V/15~30Aの第3世代小容量IPMを開発しました。これらのIPM製品は、デバイスのプロセス条件を最適化することにより、インバータの発生損失と放射ノイズのトレードオフ特性を改善しました。これにより、省エネルギーとEMC規格対応を実現します。
さらに、Si(シリコン)に代わる半導体材料として注目されているSiC(炭化ケイ素)を使ったSiCモジュール製品の系列化を進めています。第2世代トレンチMOSFETチップを搭載した1,200V/300~600A、1,700V/200~400AのAll-SiCモジュールのサンプル展開を開始しました。SiCチップにより、電力変換装置の更なる電力効率の向上や小型化に貢献します。
車載モジュールでは、電気自動車やハイブリッド車の2022年モデル向けに、さらなる低損失を実現したRC-IGBTチップと電力密度をさらに高めた直接水冷型パワーモジュール、及び小型モータ駆動用の小容量インテリジェントパワーモジュール(IPM)を開発し量産を開始しました。これらの製品を通じて、電動車の高効率化と小型軽量化に貢献します。
産業用ディスクリート製品では、従来に比べて順方向電圧VFを低減し、サージ電流耐量の指標であるIFSMを高めた第2世代SiC-SBDを開発し系列化を図りました。サーバや通信基地局などの電源向けに、650V/10Aに加え、650V/6A、650V/8Aの量産を開始しました。電源機器の高効率化と信頼性向上に貢献します。
車載用ディスクリート製品では、第2世代ワンチップイグナイタを開発しました。従来製品と比べて、基本性能・機能を維持しつつ、車載用途に要求される耐ノイズ性能であるBCI(Bulk Current Injection)耐性を向上させ、より過酷な環境でも使用できるようにしました。
IC製品では、LED照明などの電源向けに低THD(全高調波ひずみ)制御回路と起動回路を内蔵した臨界モードPFC(力率改善)制御ICを開発しました。THD制御回路によりPFC回路部の入力電流が低ひずみ化され高調波規格への対応が容易になります。また、起動回路により電源投入時のLED照明の高速起動と待機時のPFC回路の低待機電力化による電源の省エネルギーの両立が可能となります。
感光体製品では、オフィス向けA4モノクロプリンタ用有機感光体を開発しました。複数の機能材を組み合わせることで温湿度などの環境変化に対して良好な印字品質を保つとともに、摩耗耐性に優れた樹脂を採用して長寿命化を達成しました。
当連結会計年度における当部門の研究開発費は10,953百万円です。
■発電プラント部門
再生可能エネルギー分野では、地熱発電の蒸気タービンの汚損を抑制する技術や寿命を拡大する技術を開発しています。また、風力発電の高度な系統連系条件でも安定した電力供給ができる高効率な出力安定化装置や太陽光パネルの出力が変動しても安定した無駄のない電力供給ができるコンパクトな蓄電池併用PCSを開発しています。
火力発電分野では、二酸化炭素の排出量を削減するため、蒸気タービンの高効率化の技術を開発しています。また、メンテナンスサービスとして、コロナ禍においてもお客様への対応を可能とするリモート技術や診断時間を短縮する技術を開発しています。
当連結会計年度における当部門の研究開発費は2,855百万円です。
■食品流通部門
自販機分野では、スマートフォンで決済可能なキャッシュレス装置を開発しました。当社が開発した自販機用通信端末「MCU」と自販機表面に貼り付けたステッカーなどの二次元コード(QRコード)だけで構成されています。利用者は、スマートフォンの決済アプリケーションを立ち上げて自販機前面のQRコードを読み取り、決済アプリケーション上で商品を選択すると自動的に決済され商品が購入できます。缶・ボトル用自販機から適用を開始し、食品用自販機や物品用自販機に拡大していく予定です。従来に比べて安価に導入できるため、キャッシュレス決済に対応した自販機台数の拡大に貢献します。
また、限られたスペースで多くの冷凍食品を販売できる大容量の冷凍自動販売機「FROZEN STATION」を開発し発売しました。標準仕様で7種類、70個の商品を収容できます。さらに、オプション部品を追加すると最大84個の商品を収容できます。また、高断熱機密構造を採用することで、当社類似機種に比べて消費電力量を約20%削減しました。本機に標準搭載する通信端末を用いて、売上や在庫などの販売データを遠隔地からリアルタイムに確認できる「オペレーションシステム」が利用できます。商品補充の頻度を減らし、輸送時のCO2排出量削減に貢献します。
通貨機器分野では、釣銭機及びコインメカニズム(硬貨処理装置)が11月1日に発行された新500円硬貨に対応しました。既に市場に設置されている機器も順次適用を進めています。
店舗分野では、地球温暖化係数の低い冷媒の採用により環境負荷を低減しながら、省エネルギー性を向上した冷凍機を開発しました。この冷凍機を内蔵したショーケースを発売し、ラインアップを拡大しました。
当連結会計年度における当部門の研究開発費は3,265百万円です。
■新技術・基盤技術部門
カーボンニュートラルの実現に向けて、太陽光発電が電力系統に大量導入されると需給バランスを保つために火力発電が減少します。それに伴い、火力発電の発電機の回転体が持つ慣性の作用が低下し、事故などで需給バランスが崩れたときに系統周波数の維持が困難になります。そこで、本来、慣性の作用を持たない太陽光発電用PCSの制御を工夫して慣性の作用を疑似的に持たせることで系統周波数を維持する機能を開発しています。電流制御型と電圧制御型の2方式の周波数維持機能(疑似慣性制御)をPCSに実装して模擬系統につなげることで系統事故による周波数変動を再現し、各方式の系統周波数を維持する効果を確認できました。さらに、疑似慣性機能のPCSへの搭載に向けて、PCSが持つ電圧安定化などの他の制御機能との両立に向けた検討を完了しました。
製鋼プロセスの省エネルギー化のために、電気炉による原料の溶解プロセスにおける電力注入電極の昇降制御の最適化を実現する「ロバスト外乱フィードバック制御技術」を開発しました。この制御技術により溶解時間をこれまでより15%程度短縮して省エネルギーに貢献します。
アナリティクス・AIでは、お客様や自社のDXの推進に寄与するAIエンジンを開発しています。AIによる異常診断では、通常、診断結果に至った主な原因が分かりません。そこで、AIに入力されたデータと診断結果の関係を自動で分析することにより、主な原因を抽出する技術を開発し、工場における製造管理・運転管理システム「MainGATE」へ実装を進めています。これらの技術により異常の原因究明のスピードアップに貢献します。
北極海航路を利用した船舶の航行が増加する中、国際海事機関(IMO)を中心に国際的な排出規制の検討が始まっています。そこで、道路用集塵機で培った集塵技術を応用して、船舶向けにディーゼルエンジンの排ガスに含まれる微粒子(PM)を効果的に捕集する技術を開発しています。国立研究開発法人 海上技術安全研究所の設備を利用した性能評価により、高い集塵特性が得られることを検証しました。SOxを削減するスクラバー技術や排熱回収技術と組み合わせることで、船舶の排ガスをよりクリーンにするだけでなく、エネルギー利用の効率化と耐用寿命の延伸も期待できます。
コンビニエンスストアなどの店内に設置されるショーケースの排水管の詰まりによる漏水や臭いの発生を防止するため、ドレイン水を電気的にアルカリ化して排水することで、排水管の詰まりや臭いの原因となるバイオフィルムの発生を抑制する技術を開発しました。現在、実店舗での検証を進めています。
カーボンニュートラルの実現に向けて、工場廃熱の有効利用がこれまで以上に注目されています。自動販売機で培ったヒートポンプ技術を発展させ、工場の生産工程で生じる未利用の低温排熱を活用して高効率で冷水を生成する業界初のエジェクタ式コンプレッサーレス冷却技術の開発に取り組んでいます。
また、ウィズコロナ時代の感染症対策とその省エネルギー化に向けて、室内空間の浮遊ウイルス不活化装置を開発しています。トンネル用で実績のある電気集塵の技術を活用したウイルス除去と、深紫外線照射によるウイルスの不活化を組み合わせる方式により、浮遊ウイルス除去性能の規格に基づいた評価で99.99%のウイルス不活化を確認しました。本方式は、一般的な換気による通常のウイルス対策と比べて空調の電気代を大幅に削減できます。本開発の一部は、環境省“革新的な省CO2型感染症対策技術等の実用化加速のための実証事業”により実施しています。
■その他部門
当連結会計年度における当部門の研究開発費は50百万円です。
当連結会計年度における富士電機の研究開発費は33,756百万円であり、各部門の研究成果及び研究開発費は次のとおりです。
また、当連結会計年度末において富士電機が保有する国内外の産業財産権の総数は13,353件です。
■パワエレ エネルギー部門
IoT・AI技術を活用して、受配電設備の保全計画立案から設備の監視、設備更新計画の立案までを支援する「まるごとスマート保安サービス」を開発し発売しました。エッジコントローラで収集した稼動データをクラウド上のサーバに蓄積して一元管理し、設備の稼働監視と劣化診断を行うことで予防保全を可能にし、設備保全業務の効率化を支援します。
産業変電分野では、冷却用に大豆由来の天然エステル絶縁油(FR3)を採用した導油式のFR3適用変圧器を開発しました。FR3は、従来の鉱油系絶縁油に比べて生分解性や引火点が高いため、環境負荷の低減や防火設備への投資費用及び火災保険費用の削減を可能にします。
器具分野では、配線用遮断器・漏電遮断器「G-TWⅠN及びG-TWⅠNラムダ 母線プラグイン」シリーズにおいて、半導体装置やデータセンター、低圧受電盤、分電盤向けに標準の30mmピッチ品と、北米・アジア・EUの規格を取得したグローバル対応の30mm・70mmピッチ品を開発し発売しました。プラグイン方式により、省スペース化と施工作業性が向上し、容量変更や増設が容易になります。また、ユーザーのグローバルな展開に貢献します。さらに、配線用遮断器・漏電遮断器「G-TWⅠN」シリーズ32~100AF用の「IP54対応N形外部操作ハンドル」及び「IP20対応端子カバー」を開発し発売しました。外部操作ハンドルは、防塵・防水性能に関する保護等級IP54に対応するとともに、盤面フラット形の化粧板をオプションとして準備し、ハンドル操作部を盤面の内側に埋め込むことで、誤操作や盤輸送時の破損などのリスクを低減できます。端子カバーは、保護等級IP20に対応することで、盤内機器のメンテナンス時の安全性を向上し、機械制御盤の電気安全規格(IEC60204-1、NFPA79)を満足できます。
当連結会計年度における当部門の研究開発費は7,233百万円です。
■パワエレ インダストリー部門
システム事業拡大に向けて、データセンターや半導体工場、鉄鋼、鋳造、セメント、ごみ処理、化学、ガス、医薬・食品、電力、発電プラントなどのプラントシステムの開発・生産体制を強化するために東京工場(東京都日野市)に「プラントシステム棟」を新設し稼働を開始しました。現地のプラントを高い再現性で模擬する検証システムにより、工場出荷時のシステムの完成度を高め、実プラントの早期立ち上げ・稼働に貢献します。また、長年培った技術や経験を基に、さまざまなプラントに幅広く適用可能なプラントシステムの標準プラットフォームを構築しました。要求仕様に応じて、機器やソフトウェアを組み合わせて提供することで、リードタイムの短縮やシステムの品質・信頼性向上に貢献します。さらに、プラントシステムを構成する製品、ソフトウェアやソリューションをお客様に知っていただくために、実際の製品や大画面モニタを用いて紹介するコミュニケーションエリアを設けています。
スマートファクトリーを実現するため、パワエレ事業におけるシステム製品のマザー工場である東京工場で、自営の第5世代移動通信システム(ローカル5G)の実証実験を開始しました。工作機械や加工中の金属部品などの遮蔽物が多い環境下で電波の伝搬を調査し、生産管理システムなどの工場全体の情報を管理する基幹システムと、機械加工現場にある設備や機器との間における大容量データ通信の有効性を実証しています。本実証実験で得られた知見を当社の生産活動に活用するとともに、ローカル5Gの特長を生かしたソリューションを創出します。
低圧インバータ分野では、「FRENIC-MEGA G2シリーズ」として「零相リアクトル内蔵タイプ」を開発し発売しました。主にオフィスビル・工場などの熱源・空調・給排水システムをターゲットとし、そこで求められる国土交通省監修の公共建築工事標準仕様書への対応が容易となります。
計測・センサ分野では、圧力発信器「FCX-AⅣシリーズ」を開発し発売しました。機能安全規格「IEC61508(SIL2)」を取得し、高い信頼性が要求される石油化学プラントの緊急停止システムなどでも使用できます。また、水素の利用拡大が予想される中、測定媒体中に水素が存在しても測定精度を保つことができる当社独自の表面処理技術を適用した製品もラインアップしました。
FAコンポーネント分野では、プログラマブルコントローラ「MICREX-SXシリーズ」を活用して生産工程における製品加工の異常を検知・分析する「異常診断ソリューション」を開発し発売しました。アナリティクス・AIの一つである多変量統計的プロセス管理(MSPC:Multivariate Statistical Process Control)を用いた異常検出技術により、設備の正常時のデータ(診断モデル)と稼働中のデータをリアルタイムで比較し、それらの乖離を検知して異常を知らせます。これにより、次工程への不良品の流出を抑制します。
また、高速性とリアルタイム性を備えたオープンネットワークであるEtherCATに対応したプログラマブルコントローラ「MICREX-SXシリーズ」の新CPUモジュール「SPH5000EC」を開発し発売しました。本CPUモジュールに、EtherCATを使って「サーボシステムALPHA7」や他社のスレーブ機器を接続して、高速・高精度なモーションシステムを構築できます。さらに、当社が用意したファンクションブロックを組み合わせて、お客様にとって最適なモーションシステムを短期間で構築できます。
PCS分野では、カーボンニュートラルの実現に向けて、今後拡大する需給調整市場向けに需要の増加が見込まれる大容量の蓄電池用PCS「PVI1400CJ-3/2600」(2,600kVA)を開発し発売しました。本PCSは、自社製パワー半導体の採用により、高い電力効率98.2%を実現しました。さらに、外部からの指令で瞬時に起動する制御方式の採用により、待機時の電力消費量を97%削減しています。また、既に発売中の太陽光発電用ストリング形PCS(50kWと21kW)においては、一般財団法人電気安全環境研究所(JET)による高圧系統連系認証を業界で初めて取得しました。太陽光発電設備を送電線につなぐには発電設備設置者と送配電事業者との間での協議が必要ですが、この認証を得ることで、申請から許可までの期間を通常の3~4週間から1週間以内に短縮できます。これらにより、再生可能エネルギーの普及拡大に貢献します。
当連結会計年度における当部門の研究開発費は9,397百万円です。
■半導体部門
産業用モジュールでは、低損失で高温動作を保証した最新の第7世代IGBT技術を適用した製品の系列を拡大しています。
産業用RC-IGBTモジュール1,700V/800A DualXTを開発し製品系列に加え、量産を開始しました。さらに大容量系列では、定格1,200V/2,400A、1,700V/2,400Aのサンプル展開を開始しました。RC-IGBT(逆導通IGBT)技術の採用によりパワー密度が更に向上し、同じパッケージのままで電流定格を拡大しました。パワーエレクトロニクス機器の大容量・小型・軽量化に貢献します。
第7世代IGBTモジュールは、標準品の系列化が完了し、駆動機能や保護機能を備えたIPM(Intelligent Power Module)の開発を進めています。第7世代IGBT-IPMは、FA、工作機械、空調機器向けに650V/20~250A、1,200V/10~150Aの系列化が完了し量産を開始しました。さらに大容量の650V/300~450A、1,200V/200~300Aはサンプル展開を開始しました。また、ルームエアコンやモータードライブ向けには650V/15~30Aの第3世代小容量IPMを開発しました。これらのIPM製品は、デバイスのプロセス条件を最適化することにより、インバータの発生損失と放射ノイズのトレードオフ特性を改善しました。これにより、省エネルギーとEMC規格対応を実現します。
さらに、Si(シリコン)に代わる半導体材料として注目されているSiC(炭化ケイ素)を使ったSiCモジュール製品の系列化を進めています。第2世代トレンチMOSFETチップを搭載した1,200V/300~600A、1,700V/200~400AのAll-SiCモジュールのサンプル展開を開始しました。SiCチップにより、電力変換装置の更なる電力効率の向上や小型化に貢献します。
車載モジュールでは、電気自動車やハイブリッド車の2022年モデル向けに、さらなる低損失を実現したRC-IGBTチップと電力密度をさらに高めた直接水冷型パワーモジュール、及び小型モータ駆動用の小容量インテリジェントパワーモジュール(IPM)を開発し量産を開始しました。これらの製品を通じて、電動車の高効率化と小型軽量化に貢献します。
産業用ディスクリート製品では、従来に比べて順方向電圧VFを低減し、サージ電流耐量の指標であるIFSMを高めた第2世代SiC-SBDを開発し系列化を図りました。サーバや通信基地局などの電源向けに、650V/10Aに加え、650V/6A、650V/8Aの量産を開始しました。電源機器の高効率化と信頼性向上に貢献します。
車載用ディスクリート製品では、第2世代ワンチップイグナイタを開発しました。従来製品と比べて、基本性能・機能を維持しつつ、車載用途に要求される耐ノイズ性能であるBCI(Bulk Current Injection)耐性を向上させ、より過酷な環境でも使用できるようにしました。
IC製品では、LED照明などの電源向けに低THD(全高調波ひずみ)制御回路と起動回路を内蔵した臨界モードPFC(力率改善)制御ICを開発しました。THD制御回路によりPFC回路部の入力電流が低ひずみ化され高調波規格への対応が容易になります。また、起動回路により電源投入時のLED照明の高速起動と待機時のPFC回路の低待機電力化による電源の省エネルギーの両立が可能となります。
感光体製品では、オフィス向けA4モノクロプリンタ用有機感光体を開発しました。複数の機能材を組み合わせることで温湿度などの環境変化に対して良好な印字品質を保つとともに、摩耗耐性に優れた樹脂を採用して長寿命化を達成しました。
当連結会計年度における当部門の研究開発費は10,953百万円です。
■発電プラント部門
再生可能エネルギー分野では、地熱発電の蒸気タービンの汚損を抑制する技術や寿命を拡大する技術を開発しています。また、風力発電の高度な系統連系条件でも安定した電力供給ができる高効率な出力安定化装置や太陽光パネルの出力が変動しても安定した無駄のない電力供給ができるコンパクトな蓄電池併用PCSを開発しています。
火力発電分野では、二酸化炭素の排出量を削減するため、蒸気タービンの高効率化の技術を開発しています。また、メンテナンスサービスとして、コロナ禍においてもお客様への対応を可能とするリモート技術や診断時間を短縮する技術を開発しています。
当連結会計年度における当部門の研究開発費は2,855百万円です。
■食品流通部門
自販機分野では、スマートフォンで決済可能なキャッシュレス装置を開発しました。当社が開発した自販機用通信端末「MCU」と自販機表面に貼り付けたステッカーなどの二次元コード(QRコード)だけで構成されています。利用者は、スマートフォンの決済アプリケーションを立ち上げて自販機前面のQRコードを読み取り、決済アプリケーション上で商品を選択すると自動的に決済され商品が購入できます。缶・ボトル用自販機から適用を開始し、食品用自販機や物品用自販機に拡大していく予定です。従来に比べて安価に導入できるため、キャッシュレス決済に対応した自販機台数の拡大に貢献します。
また、限られたスペースで多くの冷凍食品を販売できる大容量の冷凍自動販売機「FROZEN STATION」を開発し発売しました。標準仕様で7種類、70個の商品を収容できます。さらに、オプション部品を追加すると最大84個の商品を収容できます。また、高断熱機密構造を採用することで、当社類似機種に比べて消費電力量を約20%削減しました。本機に標準搭載する通信端末を用いて、売上や在庫などの販売データを遠隔地からリアルタイムに確認できる「オペレーションシステム」が利用できます。商品補充の頻度を減らし、輸送時のCO2排出量削減に貢献します。
通貨機器分野では、釣銭機及びコインメカニズム(硬貨処理装置)が11月1日に発行された新500円硬貨に対応しました。既に市場に設置されている機器も順次適用を進めています。
店舗分野では、地球温暖化係数の低い冷媒の採用により環境負荷を低減しながら、省エネルギー性を向上した冷凍機を開発しました。この冷凍機を内蔵したショーケースを発売し、ラインアップを拡大しました。
当連結会計年度における当部門の研究開発費は3,265百万円です。
■新技術・基盤技術部門
カーボンニュートラルの実現に向けて、太陽光発電が電力系統に大量導入されると需給バランスを保つために火力発電が減少します。それに伴い、火力発電の発電機の回転体が持つ慣性の作用が低下し、事故などで需給バランスが崩れたときに系統周波数の維持が困難になります。そこで、本来、慣性の作用を持たない太陽光発電用PCSの制御を工夫して慣性の作用を疑似的に持たせることで系統周波数を維持する機能を開発しています。電流制御型と電圧制御型の2方式の周波数維持機能(疑似慣性制御)をPCSに実装して模擬系統につなげることで系統事故による周波数変動を再現し、各方式の系統周波数を維持する効果を確認できました。さらに、疑似慣性機能のPCSへの搭載に向けて、PCSが持つ電圧安定化などの他の制御機能との両立に向けた検討を完了しました。
製鋼プロセスの省エネルギー化のために、電気炉による原料の溶解プロセスにおける電力注入電極の昇降制御の最適化を実現する「ロバスト外乱フィードバック制御技術」を開発しました。この制御技術により溶解時間をこれまでより15%程度短縮して省エネルギーに貢献します。
アナリティクス・AIでは、お客様や自社のDXの推進に寄与するAIエンジンを開発しています。AIによる異常診断では、通常、診断結果に至った主な原因が分かりません。そこで、AIに入力されたデータと診断結果の関係を自動で分析することにより、主な原因を抽出する技術を開発し、工場における製造管理・運転管理システム「MainGATE」へ実装を進めています。これらの技術により異常の原因究明のスピードアップに貢献します。
北極海航路を利用した船舶の航行が増加する中、国際海事機関(IMO)を中心に国際的な排出規制の検討が始まっています。そこで、道路用集塵機で培った集塵技術を応用して、船舶向けにディーゼルエンジンの排ガスに含まれる微粒子(PM)を効果的に捕集する技術を開発しています。国立研究開発法人 海上技術安全研究所の設備を利用した性能評価により、高い集塵特性が得られることを検証しました。SOxを削減するスクラバー技術や排熱回収技術と組み合わせることで、船舶の排ガスをよりクリーンにするだけでなく、エネルギー利用の効率化と耐用寿命の延伸も期待できます。
コンビニエンスストアなどの店内に設置されるショーケースの排水管の詰まりによる漏水や臭いの発生を防止するため、ドレイン水を電気的にアルカリ化して排水することで、排水管の詰まりや臭いの原因となるバイオフィルムの発生を抑制する技術を開発しました。現在、実店舗での検証を進めています。
カーボンニュートラルの実現に向けて、工場廃熱の有効利用がこれまで以上に注目されています。自動販売機で培ったヒートポンプ技術を発展させ、工場の生産工程で生じる未利用の低温排熱を活用して高効率で冷水を生成する業界初のエジェクタ式コンプレッサーレス冷却技術の開発に取り組んでいます。
また、ウィズコロナ時代の感染症対策とその省エネルギー化に向けて、室内空間の浮遊ウイルス不活化装置を開発しています。トンネル用で実績のある電気集塵の技術を活用したウイルス除去と、深紫外線照射によるウイルスの不活化を組み合わせる方式により、浮遊ウイルス除去性能の規格に基づいた評価で99.99%のウイルス不活化を確認しました。本方式は、一般的な換気による通常のウイルス対策と比べて空調の電気代を大幅に削減できます。本開発の一部は、環境省“革新的な省CO2型感染症対策技術等の実用化加速のための実証事業”により実施しています。
■その他部門
当連結会計年度における当部門の研究開発費は50百万円です。
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ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
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