有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100OG3Y (EDINETへの外部リンク)
ワタミ株式会社 事業等のリスク (2022年3月期)
当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
[A.各事業領域共通のリスク]
①新規事業について
当社グループは、「地球上で一番たくさんのありがとうを集めるグループになろう」というスローガンのもと、事業活動を通じて、社会の課題解決に貢献することに挑戦し続けていきたいと考えております。新規事業については現時点で入手可能な情報に基づき、その拡大可能性を判断し事業展開を図ってまいりますが、潜在的なリスクも含まれており、当社が現時点で想定する状況に大きな変化があった場合は、事業展開にも重大な影響を及ぼす可能性があります。
②仕入の変動要因について
伝染病の蔓延や天候不順、仕入先の環境変化、外国為替相場の大幅な変動、さらには自然災害の発生等により食材の需給が逼迫し仕入単価が高騰した場合、当社連結業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、資源の枯渇が危惧される品種の漁獲量制限等により、全世界的に入荷が困難になった場合には、当社連結業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
③生産の変動要因について
当社グループは、食料品材料セット・調理済み商品の製造工場として全国5箇所に製造拠点を設置しております。いずれも拠点の分散化が図られておりますが、食中毒や火災等によりセンター・工場が稼動不能の状態となった場合には、店舗等への食材供給や商品の供給に支障をきたす恐れがあり、その場合、当社連結業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
海外外食事業においては、香港に集中仕込センターを設置しており、食中毒や火災等によりセンター・工場が稼動不能の状態となった場合には、店舗等への食材供給や商品の供給に支障をきたす恐れがあり、その場合、当社連結業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
④特有の法規制に係わるもの
当社グループの国内外食事業については食品衛生法により規制を受けております。当社グループが飲食店を営業するためには、食品衛生管理者を置き、厚生労働省の定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければなりません。なお、食中毒を起こした場合、食品等の廃棄処分、営業許可の取り消し、営業の禁止、一定期間の営業停止等を命じられ、当社連結業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
海外外食事業においても各国における同様の法的規制を受けております。
[B.各事業領域におけるリスク]
①国内外食事業に関するリスク
国内外食事業における居酒屋事業は、マーケットの縮小傾向が続いており、お客様ニーズの多様化など厳しい事業環境にあります。加えて、今般の新型コロナウイルス感染症の影響拡大により、今後のお客様の飲食スタイルが大きく変化することも見込まれるため、お客様のニーズに適切に対応できない場合には、当社連結業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するため、店内飲食だけではなく、テイクアウト・デリバリー業態の拡大、焼肉業態店舗への転換等による成長戦略の推進や外食事業の仕組みを支える商品開発・仕入・物流・製造などのMD体制の見直しにより、他社との差別化並びに収益構造の改革を進めております。
②宅食事業に関するリスク
宅食事業は、高齢化社会の進展とともにマーケットが拡大している一方、新規参入業者の増加など競争環境も激化しており、競争環境に適切に対応できない場合には市場シェアの低下を招き、当社連結業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するため、商品力の強化、エリア戦略の見直しを継続的に行い、新規顧客の獲得による市場開拓、シェア拡大を図るとともに、新しい販売チャネルとして法人営業を全社的に取り組むとともに、製造工場における省人化投資を進めるなど、生産性の一段の向上を進めております。
③海外外食事業に関するリスク
海外外食事業は、日本食マーケットが拡大している一方、ニーズの細分化により競争環境も激化しております。加えて、デモ活動等、政治的要因による影響及び、昨今の新型コロナウイルス感染症の影響により店舗営業ができない不測の事態が継続して発生する場合、当社連結業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するためには、現在出店する商業施設のオーナー様のテナント入替ニーズ、お客様の飲食ニーズに的確に対応することが重要であると考えております。そのため、日本の国内外食事業と商品開発体制などの連携を強化して新業態の開発と出店を進めてまいります。また、競合店出店による集客力の低下、不動産施設費の高騰、人件費の上昇など収益環境が短期間で悪化する事態への対応として、戦略的なスクラップアンドビルドとあわせて、利益を捻出しやすい組織体質の継続的構築を進めてまいります。
[C.その他のリスク]
①新型コロナウイルス感染症の影響
新型コロナウイルス感染症が国内外で拡大と縮小を繰り返しており、完全な収束時期の見通しを立てることは困難な状況にあります。当社グループでは翌連結会計年度に緩やかに回復基調に向かうと想定しておりますが、当社グループの想定と実際の景気動向は乖離する可能性があります。また、新型コロナウイルス感染症で加速するお客様の行動様式の変化への対応が遅れた場合には、既存事業のビジネスモデルの陳腐化による顧客離れを招き、当社連結業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するため、国内外食事業において不採算店舗の撤退等による固定費削減により売上規模縮小への耐性を強化するとともに、居酒屋業態から「焼肉の和民」への業態転換及びフランチャイズモデルによるテイクアウト・デリバリー主体の「から揚げの天才」の出店強化等、将来の成長基盤の整備を継続して進めております。また、宅食事業においては、コロナ禍の外出自粛による宅配需要と健康意識の高まりに対応して売上高も堅調に成長しており、冷凍総菜宅配サービスの拡大及びインフレ環境における低価格商品の販売など、利用者ニーズに応じて継続的に成長基盤の強化を図っております。
②固定資産の減損リスク
国内外食事業及び海外外食事業では新規店舗の出店や改装に伴う自社保有の固定資産を利用して事業展開しているため、市場環境や経営環境が悪化して店舗の収益性が低下した場合には、固定資産の減損処理により、当社連結業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するため、出店及び改装時における投資リスクの評価や戦略的なスクラップアンドビルドによってリスクの軽減に努めております。
③差入保証金に関するリスク
当社グループは事業を展開するにあたり、物件オーナーと賃貸借契約を締結し保証金の差入をしております。
オーナーの破産等により保証金の回収不能が発生した場合、当社連結業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
④TCFD提言に沿った情報開示
ⅰ)当社グループが目指すサスティナビリティ経営
当社グループのミッションは、「地球人類の人間性向上のためのよりよい環境をつくり、よりよいきっかけを提供すること」です。その環境やきっかけを提供するという当社の理念はSDGsの考え方に重なります。
当社グループは、外食事業、宅食事業、原料調達から消費までのサプライチェーンを構成する事業、農業、エネルギー事業において、経済的・社会的・環境的ニーズの充足、従業員の幸せ、地域貢献などの持続可能な企業活動を通して、SDGsを達成します。
当社グループで栽培した農産物(1次産業)を当社グループで加工(2次産業)し、お客様に提供する(3次産業)ことに加えて、環境負荷を軽減するための取り組みや再生可能エネルギー事業にも取り組むことで、再生可能エネルギーを利用した循環型6次産業モデルを構築し、経済的・社会的・環境的パフォーマンスを向上し続けることで「地球上で一番たくさんのありがとうを集めるグループ」を目指します。
ワタミモデルの全体像
ⅱ)当社グループのマテリアリティ
ⅲ)気候変動への対応
近年、世界中で気候変動をはじめとする環境課題が深刻化しており、日本国内でも、異常気象による台風などの大規模な自然災害が発生するなど、経営に大きな影響をもたらす状況となっております。
このような状況の下、当社グループは、気候変動をサスティナビリティ経営上の最重要課題であると位置づけ、気候変動に伴うリスクや機会は、事業戦略に大きな影響を及ぼすものと認識しております。
当社グループでは、2020年に4つのマテリアリティを特定し、様々な活動に取り組んでおります。
「脱炭素社会構築への貢献」に関しては、事業拠点における電気利用の再生可能エネルギー化100%の実現、エネルギー消費量の削減等、Scope1・2排出量の削減に積極的に取り組んでおります。
また、環境配慮型の包材備品を使用、従業員の出張の削減、食品ロスの削減、お客様による宅食弁当容器の廃棄等、サプライヤーであるお取引先様や消費者であるお客様と協働したScope3排出量削減にも取り組んでおります。
ⅳ)TCFD提言が推奨する4つの開示項目に沿った情報開示
「サスティナブル方針」の基本理念に基づき、グループの重点課題(マテリアリティ)を決定するうえで、年々激化する気候変動問題についても非常に重要な項目の一つとしてとらえております。
「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」(※1)の最終報告書を受け、気候変動関連リスク及び機会に関する情報開示の準備を始めております。
※1 TCFDとは、G20の要請を受け、金融安定理事会(各国の金融関連省庁及び中央銀行からなる国際金融に関する監督業務を行う機関)により、気候関連の情報開示及び金融機関の対応をどのように行うかを検討するために設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Forceon Climate-related Financial Disclosures)」を指します。
TCFD提言は、すべての企業に対し、「ガバナンス」「リスク管理」「戦略」「指標と目標」の4つの項目に基づいて開示することを推奨しております。
当社グループは、TCFD提言の4つの開示項目に沿って、気候関連情報を開示いたします。
(a)取締役会が気候関連課題について報告を受けるプロセス、議題として取り上げる頻度、監視対象
会長兼社長を議長とする4つの会議(経営戦略会議、従業員の幸せ実現会議、ブランド向上会議、SDGs会議)を開催しております。
サスティナビリティ対応については、2019年に策定された、SDGsを経営の中核課題に取り入れた長期目標である「ワタミサスティナブル方針」に基づいて当社の環境・社会的課題に対しての取組として、社内4大会議の一角である、会長兼社長を議長とする、従業員の幸せ実現会議、ブランド向上会議、SDGs会議をはじめとする体制を構築し、全社一丸となって推進しております。
また、2019年にSDGs推進本部を設立し、本業の中でSDGsに取組むために、各事業本部から選出したメンバーによる社内組織横断タスクフォースチームを発足し、SDGsマテリアリティ(重要課題)を特定及びKPI(中間目標)・KGI(2030年目標)を立て、目標達成のために組織横断で取組んでおります。
特に従業員の職場環境については、従業員の幸せ実現会議にて、従業員の健康増進、キャリア形成、キャリアアップへの支援等を通し、人的資本育成、お客様、一般市民、行政機関、お取引業者様などステークホルダーとのパートナーシップ、全従業員へのサスティナブル教育の徹底を通し、サスティナブル目標に向かって取組んでおります。
取締役会は、会長兼社長を議長とする4つの会議(経営戦略会議、従業員の幸せ実現会議、ブランド向上会議、SDGs会議)で協議・決議された内容の報告を受け、当社グループの環境課題への対応方針及び実行計画等についての論議・監督を行っております。
(b)経営者の気候関連課題に対する責任、報告を受けるプロセス委員会等、モニタリング方法
会長兼社長は、4つの会議(経営戦略会議、従業員の幸せ実現会議、ブランド向上会議、SDGs会議)の長を担っており、環境課題に係る経営判断の最終責任を負っております。4つの会議(経営戦略会議、従業員の幸せ実現会議、ブランド向上会議、SDGs会議)で協議・決議された内容は、最終的に取締役会へ報告を行っております。
(a)気候関連リスクの特定・評価プロセスの詳細、重要性の決定方法
当社グループは、リスクを戦略の起点と位置づけ、「企業経営の目標達成に影響を与える不確実性であり、プラスとマイナスの両面がある」と定義しており、企業が適切に対応することで、持続的な成長につながると考えております。
当社グループは、環境課題に係るリスクについて、「SDGs委員会」の中でより詳細に検討を行い、各事業本部と共有化を図っております。各事業本部では、気候変動の取り組みを実行計画に落とし込み、各事業本部長を長とする会議の中で論議しながら実行計画の進捗確認を行っております。その内容について、「グループ経営会議」や「リスクマネジメント委員会」及び「サスティナビリティ委員会」において、進捗のモニタリングを行い、最終的に取締役会へ報告を行っております。
(b)重要な気候関連リスクの管理プロセスの詳細、優先順位付けの方法
当社グループは、気候変動に伴うリスクと機会は、自社の事業戦略に大きな影響を及ぼすとの認識のもと、下記のプロセスを通じて気候変動に伴うリスクと機会を特定し、その重要性を評価しました。
はじめに、当社グループは、サプライチェーン・プロセスの活動項目である、原材料の調達から商品の製造、物流、販売、廃棄、リサイクルに至るまでのサプライチェーンの各段階ごとに、気候変動に伴うリスクと機会を網羅的に抽出しました。次に、網羅的に抽出した気候変動に伴うリスクと機会の中から、当社にとって重要な気候変動に伴うリスクと機会を特定しました。最後に、特定した気候変動に伴うリスクと機会について「自社にとっての影響度及び発生可能性」と「ステークホルダーにとっての影響度」の2つの評価基準に基づき、その重要性を評価しました。
当社グループは、上記のプロセスを経て、特に重要と評価された気候変動に伴うリスクと機会について、取締役会による監督体制の下、当社における企業リスクの一つとして当社グループの戦略に反映し、対応しております。
(c)全社リスク管理の仕組みへの統合状況
当社グループは、リスクを全社的に管理する体制を構築することが重要であることを踏まえ、「グループリスク・コンプライアンス委員会」を設置しております。「グループリスク・コンプライアンス委員会」では、外部環境分析をもとに、環境課題に係るリスクを含めた企業リスクを識別・評価し、優先的に対応すべき企業リスクの絞り込みを行い、進捗のモニタリングを行っております。「グループリスク・コンプライアンス委員会」で論議・承認された内容は、取締役会による監督体制の下、当社グループの戦略に反映し、対応しております。
(a)短期・中期・長期のリスク・機会の詳細
当社グループは、環境課題が与えるリスクは重要な影響を長期間にわたり、与える可能性があると考えております。そのため、適切な目標と期限を設定し、継続的に推進することが重要であると考えております。当社グループは、マテリアリティ(重要課題)の中間目標(KPI)の実行期間である2023年度まで、SBT目標設定年度及び最終目標(KGI)の達成期間である2030年度を見据え、気候変動がもたらす異常気象等の物理リスク、政府による政策規制の導入、及び市場ニーズの変化等の移行リスクの検討を行い、検討の結果特定したリスク・機会は、当社グループの戦略に反映し、対応しております。
(b)リスク・機会が事業・戦略・財務計画に及ぼす影響の内容・程度
当社グループは、気候変動が当社グループに与えるリスク・機会とそのインパクトの把握、及び2030年時点の世界を想定した当社グループの戦略のレジリエンスと、さらなる施策の必要性の検討を目的に、シナリオ分析を実施しております。
シナリオ分析では、国際エネルギー機関IEAや、気候変動に関する政府間パネルIPCCが公表する複数の既存シナリオを参照の上、パリ協定の目標である「産業革命前からの全世界の平均気温の上昇を2℃未満に抑える」ことを想定したシナリオ、2℃未満シナリオ、及び新たな政策・制度が導入されず、公表済の政策・規制が達成されることを想定した世界の温室効果ガス排出量が、現在より増加するシナリオ、4℃シナリオの2つの世界を想定しました。
最重要マテリアリティの1つである「脱炭素社会構築への貢献」に向け、当社グループの事業活動について、上記シナリオを前提に、気候変動がもたらす影響を分析し、その対応策を検討し、当社グループの戦略レジリエンス強靭性を検証しております。
(c)関連するシナリオに基づくリスク・機会及び財務的影響とそれに対する戦略・レジリエンス
当社グループの温室効果ガス排出量の多くは、購入した製品・サービスに伴う排出(スコープ3のカテゴリ1)及び他社から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う間接排出(スコープ2)とに由来しており、当社グループの温室効果ガス排出量削減の取り組みは、低炭素由来の原材料の調達及び再生可能エネルギー由来の電力の調達に重点を置くことが重要であると考えております。この現状を踏まえ、当社グループは、2030年時点を想定した2つのシナリオにおける事業及び財務への影響のうち、特に日本国内における炭素税の導入及び再生可能エネルギー由来の電気料金の変動が、重要なパラメータ指標になると考えております。そのため、2℃未満シナリオ及び4℃シナリオにおける2つのパラメータについて、当社グループの財務への影響を定量的に試算しております。また、有機農業やバイオマスプラスティックへの取り組みとCO₂吸収効果による影響についても検討を進めております。
2030年時点を想定したシナリオにおける当社グループの事業及び財務への影響
(2030年時点に想定される前提条件)
・炭素税価格(※1) 100/tCO₂ 2℃未満シナリオ、33/tCO₂ 4℃シナリオ (※2)
※1 「Stated Policy Scenario STEPS」IEA、2019を参照。
※2 2030年時点では日本国内でも炭素税が導入されることを想定し、4℃シナリオにおけるEUの炭素税価格で試算。
・当社グループ温室効果ガス排出量:約28,000tCO₂(2020年度と同水準)
・再生可能エネルギー由来の電気料金:1~4円/kWhの価格高(再生可能エネルギー以外の電気料金との比較)
・当社グループ再生可能エネルギー由来の電気使用量:20,000MWh(再生可能エネルギー比率40%)
当社グループは、2℃未満シナリオ及び4℃シナリオのいずれのシナリオ下においても、中長期視点から高い戦略レジリエンスを強化してまいります。そのため、事業戦略や中期経営計画において、マイナスのリスクに対しては適切な回避策を策定する一方、プラスの機会に対しては、マーケット変化へ積極的に対応する等、新たな成長機会の獲得を目指してまいります。
(a)気候関連リスク・機会の管理に用いる指標
当社グループは、気候関連リスク・機会を管理するための指標として、Scope1・2・3温室効果ガス排出量を定め、その実現のため、有機栽培自社農場面積、事業活動で使用する電力に占める再生可能エネルギー比率、循環型社会を目指した容器回収率の指標を定めております。
(b)温室効果ガス排出量 Scope1・2・3
当社グループ(一部連結子会社を除く)は、国内外食事業をはじめ、海外外食事業、お弁当宅配の宅食事業、外食や宅食事業を支える仕入・物流・食品工場部門、農業、電力小売事業などの事業を行っておりますが、さまざまな資源やエネルギーを使用することで、環境に影響を与えております。その環境負荷は、直接管理するものだけでなく、原材料の調達から商品の製造、物流、販売、廃棄、リサイクルに至るまでのサプライチェーンの各段階に及びます。各段階における環境影響を把握し、低減又は相殺する方法を検討していくための基礎となるのが、温室効果ガスのサプライチェーン排出量算定です。
サプライチェーンの上下流(原料調達から製造、物流、販売、廃棄等)に渡る事業活動に伴う温室効果ガス(以下、GHG)排出量について、国際的なGHG算定・報告基準「GHGプロトコル」に準拠し、2018年度より「スコープ1,2,3」の算定を開始しました。第三者検証による透明性・信頼性の高い情報開示は必須であると考え、この度「スコープ1,2」について第三者検証を受け、保証書を取得しております。
当社グループ Scope1・2・3温室効果ガス排出量実績
(c)気候関連リスク・機会の管理に用いる目標及び実績
当社グループは、気候関連リスク・機会を管理するための指標として、Scope1・2・3温室効果ガス排出量を定め、その実現のため、事業活動で使用する電力に占める再生可能エネルギー比率(RE100 2030年までに40% 2040年までに100%)及び循環型社会を目指した容器回収率(2030年までに100%)の指標を定めております。
これらの長期目標達成のため、当社グループは、1998年度から、再生可能エネルギーを供給するためワタミエナジー株式会社を設立し、1999年度にはワタミ環境宣言、2018年度にはSDGs宣言、2018年に「RE100」(※)に加盟、2019年度にワタミサスティナブル方針を宣言しました。今後も、カーボンニュートラルの実現に向け、GHG削減のため、有機農業、容器リサイクル、バイオマス発電、再生可能エネルギーの調達促進に取り組みます。
※ 事業活動で使用する電力を、2050年までに100再生可能エネルギーにすることを目標とする国際的イニシアチブ。
当社グループの気候関連リスク・機会の管理に用いる目標
ⅴ)今後の取り組み
昨今、天然資源や製品が一度きりの使い捨ての形で使用されることが前提となる、従来型の「リニア・エコノミー」は、大量採取による天然資源の枯渇、温室効果ガス排出による地球温暖化、大量の廃棄物による海洋汚染等、深刻な気候変動をもたらしております。
当社グループは、飲食業を中核とする企業グループである強みをいかし、これらの気候変動に伴うリスクと機会に対応していくことが重要であると考え、「再生可能エネルギーを利用した循環型6次産業モデルの推進」、「気候変動に伴う物理リスクへの対応策の強化による強靭なサプライチェーンの実現」、「消費者の消費行動の変化に対応した低炭素製品・サービスへの積極的対応」等に取り組んでまいります。
今後も、当社グループは、取締役会による監督体制のもと、環境マネジメントにおけるガバナンスの強化を進め、中長期の目標達成に向けた実行計画の立案等、全社的な取り組みを進めてまいります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
[A.各事業領域共通のリスク]
①新規事業について
当社グループは、「地球上で一番たくさんのありがとうを集めるグループになろう」というスローガンのもと、事業活動を通じて、社会の課題解決に貢献することに挑戦し続けていきたいと考えております。新規事業については現時点で入手可能な情報に基づき、その拡大可能性を判断し事業展開を図ってまいりますが、潜在的なリスクも含まれており、当社が現時点で想定する状況に大きな変化があった場合は、事業展開にも重大な影響を及ぼす可能性があります。
②仕入の変動要因について
伝染病の蔓延や天候不順、仕入先の環境変化、外国為替相場の大幅な変動、さらには自然災害の発生等により食材の需給が逼迫し仕入単価が高騰した場合、当社連結業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、資源の枯渇が危惧される品種の漁獲量制限等により、全世界的に入荷が困難になった場合には、当社連結業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
③生産の変動要因について
当社グループは、食料品材料セット・調理済み商品の製造工場として全国5箇所に製造拠点を設置しております。いずれも拠点の分散化が図られておりますが、食中毒や火災等によりセンター・工場が稼動不能の状態となった場合には、店舗等への食材供給や商品の供給に支障をきたす恐れがあり、その場合、当社連結業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
海外外食事業においては、香港に集中仕込センターを設置しており、食中毒や火災等によりセンター・工場が稼動不能の状態となった場合には、店舗等への食材供給や商品の供給に支障をきたす恐れがあり、その場合、当社連結業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
④特有の法規制に係わるもの
当社グループの国内外食事業については食品衛生法により規制を受けております。当社グループが飲食店を営業するためには、食品衛生管理者を置き、厚生労働省の定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければなりません。なお、食中毒を起こした場合、食品等の廃棄処分、営業許可の取り消し、営業の禁止、一定期間の営業停止等を命じられ、当社連結業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
海外外食事業においても各国における同様の法的規制を受けております。
[B.各事業領域におけるリスク]
①国内外食事業に関するリスク
国内外食事業における居酒屋事業は、マーケットの縮小傾向が続いており、お客様ニーズの多様化など厳しい事業環境にあります。加えて、今般の新型コロナウイルス感染症の影響拡大により、今後のお客様の飲食スタイルが大きく変化することも見込まれるため、お客様のニーズに適切に対応できない場合には、当社連結業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するため、店内飲食だけではなく、テイクアウト・デリバリー業態の拡大、焼肉業態店舗への転換等による成長戦略の推進や外食事業の仕組みを支える商品開発・仕入・物流・製造などのMD体制の見直しにより、他社との差別化並びに収益構造の改革を進めております。
②宅食事業に関するリスク
宅食事業は、高齢化社会の進展とともにマーケットが拡大している一方、新規参入業者の増加など競争環境も激化しており、競争環境に適切に対応できない場合には市場シェアの低下を招き、当社連結業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するため、商品力の強化、エリア戦略の見直しを継続的に行い、新規顧客の獲得による市場開拓、シェア拡大を図るとともに、新しい販売チャネルとして法人営業を全社的に取り組むとともに、製造工場における省人化投資を進めるなど、生産性の一段の向上を進めております。
③海外外食事業に関するリスク
海外外食事業は、日本食マーケットが拡大している一方、ニーズの細分化により競争環境も激化しております。加えて、デモ活動等、政治的要因による影響及び、昨今の新型コロナウイルス感染症の影響により店舗営業ができない不測の事態が継続して発生する場合、当社連結業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するためには、現在出店する商業施設のオーナー様のテナント入替ニーズ、お客様の飲食ニーズに的確に対応することが重要であると考えております。そのため、日本の国内外食事業と商品開発体制などの連携を強化して新業態の開発と出店を進めてまいります。また、競合店出店による集客力の低下、不動産施設費の高騰、人件費の上昇など収益環境が短期間で悪化する事態への対応として、戦略的なスクラップアンドビルドとあわせて、利益を捻出しやすい組織体質の継続的構築を進めてまいります。
[C.その他のリスク]
①新型コロナウイルス感染症の影響
新型コロナウイルス感染症が国内外で拡大と縮小を繰り返しており、完全な収束時期の見通しを立てることは困難な状況にあります。当社グループでは翌連結会計年度に緩やかに回復基調に向かうと想定しておりますが、当社グループの想定と実際の景気動向は乖離する可能性があります。また、新型コロナウイルス感染症で加速するお客様の行動様式の変化への対応が遅れた場合には、既存事業のビジネスモデルの陳腐化による顧客離れを招き、当社連結業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するため、国内外食事業において不採算店舗の撤退等による固定費削減により売上規模縮小への耐性を強化するとともに、居酒屋業態から「焼肉の和民」への業態転換及びフランチャイズモデルによるテイクアウト・デリバリー主体の「から揚げの天才」の出店強化等、将来の成長基盤の整備を継続して進めております。また、宅食事業においては、コロナ禍の外出自粛による宅配需要と健康意識の高まりに対応して売上高も堅調に成長しており、冷凍総菜宅配サービスの拡大及びインフレ環境における低価格商品の販売など、利用者ニーズに応じて継続的に成長基盤の強化を図っております。
②固定資産の減損リスク
国内外食事業及び海外外食事業では新規店舗の出店や改装に伴う自社保有の固定資産を利用して事業展開しているため、市場環境や経営環境が悪化して店舗の収益性が低下した場合には、固定資産の減損処理により、当社連結業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対応するため、出店及び改装時における投資リスクの評価や戦略的なスクラップアンドビルドによってリスクの軽減に努めております。
③差入保証金に関するリスク
当社グループは事業を展開するにあたり、物件オーナーと賃貸借契約を締結し保証金の差入をしております。
オーナーの破産等により保証金の回収不能が発生した場合、当社連結業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
④TCFD提言に沿った情報開示
ⅰ)当社グループが目指すサスティナビリティ経営
当社グループのミッションは、「地球人類の人間性向上のためのよりよい環境をつくり、よりよいきっかけを提供すること」です。その環境やきっかけを提供するという当社の理念はSDGsの考え方に重なります。
当社グループは、外食事業、宅食事業、原料調達から消費までのサプライチェーンを構成する事業、農業、エネルギー事業において、経済的・社会的・環境的ニーズの充足、従業員の幸せ、地域貢献などの持続可能な企業活動を通して、SDGsを達成します。
当社グループで栽培した農産物(1次産業)を当社グループで加工(2次産業)し、お客様に提供する(3次産業)ことに加えて、環境負荷を軽減するための取り組みや再生可能エネルギー事業にも取り組むことで、再生可能エネルギーを利用した循環型6次産業モデルを構築し、経済的・社会的・環境的パフォーマンスを向上し続けることで「地球上で一番たくさんのありがとうを集めるグループ」を目指します。
ワタミモデルの全体像
ⅱ)当社グループのマテリアリティ
ⅲ)気候変動への対応
近年、世界中で気候変動をはじめとする環境課題が深刻化しており、日本国内でも、異常気象による台風などの大規模な自然災害が発生するなど、経営に大きな影響をもたらす状況となっております。
このような状況の下、当社グループは、気候変動をサスティナビリティ経営上の最重要課題であると位置づけ、気候変動に伴うリスクや機会は、事業戦略に大きな影響を及ぼすものと認識しております。
当社グループでは、2020年に4つのマテリアリティを特定し、様々な活動に取り組んでおります。
「脱炭素社会構築への貢献」に関しては、事業拠点における電気利用の再生可能エネルギー化100%の実現、エネルギー消費量の削減等、Scope1・2排出量の削減に積極的に取り組んでおります。
また、環境配慮型の包材備品を使用、従業員の出張の削減、食品ロスの削減、お客様による宅食弁当容器の廃棄等、サプライヤーであるお取引先様や消費者であるお客様と協働したScope3排出量削減にも取り組んでおります。
ⅳ)TCFD提言が推奨する4つの開示項目に沿った情報開示
「サスティナブル方針」の基本理念に基づき、グループの重点課題(マテリアリティ)を決定するうえで、年々激化する気候変動問題についても非常に重要な項目の一つとしてとらえております。
「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」(※1)の最終報告書を受け、気候変動関連リスク及び機会に関する情報開示の準備を始めております。
※1 TCFDとは、G20の要請を受け、金融安定理事会(各国の金融関連省庁及び中央銀行からなる国際金融に関する監督業務を行う機関)により、気候関連の情報開示及び金融機関の対応をどのように行うかを検討するために設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Forceon Climate-related Financial Disclosures)」を指します。
TCFD提言は、すべての企業に対し、「ガバナンス」「リスク管理」「戦略」「指標と目標」の4つの項目に基づいて開示することを推奨しております。
当社グループは、TCFD提言の4つの開示項目に沿って、気候関連情報を開示いたします。
開示項目 | 具体的な開示内容 |
ガバナンス | (a)取締役会が気候関連課題について報告を受けるプロセス、議題として取り上げる頻度、監視対象 |
(b)経営者の気候関連課題に対する責任、報告を受けるプロセス(委員会等)、モニタリング方法 | |
リスク管理 | (a)気候関連リスクの特定・評価プロセスの詳細、重要性の決定方法 |
(b)重要な気候関連リスクの管理プロセスの詳細、優先順位付けの方法 | |
(c)全社リスク管理の仕組みへの統合状況 | |
戦略 | (a)短期・中期・長期のリスク・機会の詳細 |
(b)リスク・機会が事業・戦略・財務計画に及ぼす影響の内容・程度 | |
(c)関連するシナリオに基づくリスク・機会及び財務的影響とそれに対する戦略・レジリエンス | |
指標と目標 | (a)気候関連リスク・機会の管理に用いる指標 |
(b)温室効果ガス排出量Scope1・2・3 | |
(c)気候関連リスク・機会の管理に用いる目標及び実績 |
(a)取締役会が気候関連課題について報告を受けるプロセス、議題として取り上げる頻度、監視対象
会長兼社長を議長とする4つの会議(経営戦略会議、従業員の幸せ実現会議、ブランド向上会議、SDGs会議)を開催しております。
サスティナビリティ対応については、2019年に策定された、SDGsを経営の中核課題に取り入れた長期目標である「ワタミサスティナブル方針」に基づいて当社の環境・社会的課題に対しての取組として、社内4大会議の一角である、会長兼社長を議長とする、従業員の幸せ実現会議、ブランド向上会議、SDGs会議をはじめとする体制を構築し、全社一丸となって推進しております。
また、2019年にSDGs推進本部を設立し、本業の中でSDGsに取組むために、各事業本部から選出したメンバーによる社内組織横断タスクフォースチームを発足し、SDGsマテリアリティ(重要課題)を特定及びKPI(中間目標)・KGI(2030年目標)を立て、目標達成のために組織横断で取組んでおります。
特に従業員の職場環境については、従業員の幸せ実現会議にて、従業員の健康増進、キャリア形成、キャリアアップへの支援等を通し、人的資本育成、お客様、一般市民、行政機関、お取引業者様などステークホルダーとのパートナーシップ、全従業員へのサスティナブル教育の徹底を通し、サスティナブル目標に向かって取組んでおります。
取締役会は、会長兼社長を議長とする4つの会議(経営戦略会議、従業員の幸せ実現会議、ブランド向上会議、SDGs会議)で協議・決議された内容の報告を受け、当社グループの環境課題への対応方針及び実行計画等についての論議・監督を行っております。
(b)経営者の気候関連課題に対する責任、報告を受けるプロセス委員会等、モニタリング方法
会長兼社長は、4つの会議(経営戦略会議、従業員の幸せ実現会議、ブランド向上会議、SDGs会議)の長を担っており、環境課題に係る経営判断の最終責任を負っております。4つの会議(経営戦略会議、従業員の幸せ実現会議、ブランド向上会議、SDGs会議)で協議・決議された内容は、最終的に取締役会へ報告を行っております。
(a)気候関連リスクの特定・評価プロセスの詳細、重要性の決定方法
当社グループは、リスクを戦略の起点と位置づけ、「企業経営の目標達成に影響を与える不確実性であり、プラスとマイナスの両面がある」と定義しており、企業が適切に対応することで、持続的な成長につながると考えております。
当社グループは、環境課題に係るリスクについて、「SDGs委員会」の中でより詳細に検討を行い、各事業本部と共有化を図っております。各事業本部では、気候変動の取り組みを実行計画に落とし込み、各事業本部長を長とする会議の中で論議しながら実行計画の進捗確認を行っております。その内容について、「グループ経営会議」や「リスクマネジメント委員会」及び「サスティナビリティ委員会」において、進捗のモニタリングを行い、最終的に取締役会へ報告を行っております。
(b)重要な気候関連リスクの管理プロセスの詳細、優先順位付けの方法
当社グループは、気候変動に伴うリスクと機会は、自社の事業戦略に大きな影響を及ぼすとの認識のもと、下記のプロセスを通じて気候変動に伴うリスクと機会を特定し、その重要性を評価しました。
はじめに、当社グループは、サプライチェーン・プロセスの活動項目である、原材料の調達から商品の製造、物流、販売、廃棄、リサイクルに至るまでのサプライチェーンの各段階ごとに、気候変動に伴うリスクと機会を網羅的に抽出しました。次に、網羅的に抽出した気候変動に伴うリスクと機会の中から、当社にとって重要な気候変動に伴うリスクと機会を特定しました。最後に、特定した気候変動に伴うリスクと機会について「自社にとっての影響度及び発生可能性」と「ステークホルダーにとっての影響度」の2つの評価基準に基づき、その重要性を評価しました。
当社グループは、上記のプロセスを経て、特に重要と評価された気候変動に伴うリスクと機会について、取締役会による監督体制の下、当社における企業リスクの一つとして当社グループの戦略に反映し、対応しております。
(c)全社リスク管理の仕組みへの統合状況
当社グループは、リスクを全社的に管理する体制を構築することが重要であることを踏まえ、「グループリスク・コンプライアンス委員会」を設置しております。「グループリスク・コンプライアンス委員会」では、外部環境分析をもとに、環境課題に係るリスクを含めた企業リスクを識別・評価し、優先的に対応すべき企業リスクの絞り込みを行い、進捗のモニタリングを行っております。「グループリスク・コンプライアンス委員会」で論議・承認された内容は、取締役会による監督体制の下、当社グループの戦略に反映し、対応しております。
(a)短期・中期・長期のリスク・機会の詳細
当社グループは、環境課題が与えるリスクは重要な影響を長期間にわたり、与える可能性があると考えております。そのため、適切な目標と期限を設定し、継続的に推進することが重要であると考えております。当社グループは、マテリアリティ(重要課題)の中間目標(KPI)の実行期間である2023年度まで、SBT目標設定年度及び最終目標(KGI)の達成期間である2030年度を見据え、気候変動がもたらす異常気象等の物理リスク、政府による政策規制の導入、及び市場ニーズの変化等の移行リスクの検討を行い、検討の結果特定したリスク・機会は、当社グループの戦略に反映し、対応しております。
期間 | 定義 | |
中期 | 2023年度まで | 中間目標(KPI)の実行期間 |
長期 | 2030年度まで | 国連により採択されたSDGs 2030アジェンダの達成までの期間であり、最終目標(KGI)の達成期間 |
(b)リスク・機会が事業・戦略・財務計画に及ぼす影響の内容・程度
当社グループは、気候変動が当社グループに与えるリスク・機会とそのインパクトの把握、及び2030年時点の世界を想定した当社グループの戦略のレジリエンスと、さらなる施策の必要性の検討を目的に、シナリオ分析を実施しております。
シナリオ分析では、国際エネルギー機関IEAや、気候変動に関する政府間パネルIPCCが公表する複数の既存シナリオを参照の上、パリ協定の目標である「産業革命前からの全世界の平均気温の上昇を2℃未満に抑える」ことを想定したシナリオ、2℃未満シナリオ、及び新たな政策・制度が導入されず、公表済の政策・規制が達成されることを想定した世界の温室効果ガス排出量が、現在より増加するシナリオ、4℃シナリオの2つの世界を想定しました。
最重要マテリアリティの1つである「脱炭素社会構築への貢献」に向け、当社グループの事業活動について、上記シナリオを前提に、気候変動がもたらす影響を分析し、その対応策を検討し、当社グループの戦略レジリエンス強靭性を検証しております。
(c)関連するシナリオに基づくリスク・機会及び財務的影響とそれに対する戦略・レジリエンス
当社グループの温室効果ガス排出量の多くは、購入した製品・サービスに伴う排出(スコープ3のカテゴリ1)及び他社から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う間接排出(スコープ2)とに由来しており、当社グループの温室効果ガス排出量削減の取り組みは、低炭素由来の原材料の調達及び再生可能エネルギー由来の電力の調達に重点を置くことが重要であると考えております。この現状を踏まえ、当社グループは、2030年時点を想定した2つのシナリオにおける事業及び財務への影響のうち、特に日本国内における炭素税の導入及び再生可能エネルギー由来の電気料金の変動が、重要なパラメータ指標になると考えております。そのため、2℃未満シナリオ及び4℃シナリオにおける2つのパラメータについて、当社グループの財務への影響を定量的に試算しております。また、有機農業やバイオマスプラスティックへの取り組みとCO₂吸収効果による影響についても検討を進めております。
2030年時点を想定したシナリオにおける当社グループの事業及び財務への影響
重要なパラメータ(指標) | 項目 | 2℃未満シナリオ | 4℃シナリオ |
炭素税 | ・炭素税価格(千円tCO₂) | 10 | 3.3 |
・炭素税課税に伴うコスト増(百万円) | 280 | 92 | |
再生可能エネルギー由来の 電気料金 | ・再生可能エネルギー由来の電気料金の 価格増(円/kWh) | 1~4 | |
・再生可能エネルギー由来の電気の調達 コスト増(百万円) | 20~80 |
・炭素税価格(※1) 100/tCO₂ 2℃未満シナリオ、33/tCO₂ 4℃シナリオ (※2)
※1 「Stated Policy Scenario STEPS」IEA、2019を参照。
※2 2030年時点では日本国内でも炭素税が導入されることを想定し、4℃シナリオにおけるEUの炭素税価格で試算。
・当社グループ温室効果ガス排出量:約28,000tCO₂(2020年度と同水準)
・再生可能エネルギー由来の電気料金:1~4円/kWhの価格高(再生可能エネルギー以外の電気料金との比較)
・当社グループ再生可能エネルギー由来の電気使用量:20,000MWh(再生可能エネルギー比率40%)
当社グループは、2℃未満シナリオ及び4℃シナリオのいずれのシナリオ下においても、中長期視点から高い戦略レジリエンスを強化してまいります。そのため、事業戦略や中期経営計画において、マイナスのリスクに対しては適切な回避策を策定する一方、プラスの機会に対しては、マーケット変化へ積極的に対応する等、新たな成長機会の獲得を目指してまいります。
(a)気候関連リスク・機会の管理に用いる指標
当社グループは、気候関連リスク・機会を管理するための指標として、Scope1・2・3温室効果ガス排出量を定め、その実現のため、有機栽培自社農場面積、事業活動で使用する電力に占める再生可能エネルギー比率、循環型社会を目指した容器回収率の指標を定めております。
(b)温室効果ガス排出量 Scope1・2・3
当社グループ(一部連結子会社を除く)は、国内外食事業をはじめ、海外外食事業、お弁当宅配の宅食事業、外食や宅食事業を支える仕入・物流・食品工場部門、農業、電力小売事業などの事業を行っておりますが、さまざまな資源やエネルギーを使用することで、環境に影響を与えております。その環境負荷は、直接管理するものだけでなく、原材料の調達から商品の製造、物流、販売、廃棄、リサイクルに至るまでのサプライチェーンの各段階に及びます。各段階における環境影響を把握し、低減又は相殺する方法を検討していくための基礎となるのが、温室効果ガスのサプライチェーン排出量算定です。
サプライチェーンの上下流(原料調達から製造、物流、販売、廃棄等)に渡る事業活動に伴う温室効果ガス(以下、GHG)排出量について、国際的なGHG算定・報告基準「GHGプロトコル」に準拠し、2018年度より「スコープ1,2,3」の算定を開始しました。第三者検証による透明性・信頼性の高い情報開示は必須であると考え、この度「スコープ1,2」について第三者検証を受け、保証書を取得しております。
当社グループ Scope1・2・3温室効果ガス排出量実績
温室効果ガス排出量実績 排出量〔t-CO₂e〕 | |||
2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | |
Scope1・2排出量合計 | 52,867 | 57,852 | 34,158 |
内訳 | |||
Scope1排出量 | 14,481 | 15,852 | 7,875 |
Scope2排出量 | 38,386 | 42,000 | 26,283 |
Scope3排出量合計 | 292,763 | 309,256 | 203,366 |
(c)気候関連リスク・機会の管理に用いる目標及び実績
当社グループは、気候関連リスク・機会を管理するための指標として、Scope1・2・3温室効果ガス排出量を定め、その実現のため、事業活動で使用する電力に占める再生可能エネルギー比率(RE100 2030年までに40% 2040年までに100%)及び循環型社会を目指した容器回収率(2030年までに100%)の指標を定めております。
これらの長期目標達成のため、当社グループは、1998年度から、再生可能エネルギーを供給するためワタミエナジー株式会社を設立し、1999年度にはワタミ環境宣言、2018年度にはSDGs宣言、2018年に「RE100」(※)に加盟、2019年度にワタミサスティナブル方針を宣言しました。今後も、カーボンニュートラルの実現に向け、GHG削減のため、有機農業、容器リサイクル、バイオマス発電、再生可能エネルギーの調達促進に取り組みます。
※ 事業活動で使用する電力を、2050年までに100再生可能エネルギーにすることを目標とする国際的イニシアチブ。
当社グループの気候関連リスク・機会の管理に用いる目標
指標 | 目標年度 | 目標内容 |
温室効果ガス排出量 | 2050年 | 「パリ協定」で掲げられた2050年までに地球温暖化零を目標に段階的かつ具体的な対策を講じてまいります。 |
事業活動で使用する電力に占める再生可能エネルギー比率 | 2040年 | 事業活動で使用する電力に占める再生可能エネルギー比率100% |
2030年 | 事業活動で使用する電力に占める再生可能エネルギー比率40% | |
容器回収率 | 2030年 | 容器回収率100% |
ⅴ)今後の取り組み
昨今、天然資源や製品が一度きりの使い捨ての形で使用されることが前提となる、従来型の「リニア・エコノミー」は、大量採取による天然資源の枯渇、温室効果ガス排出による地球温暖化、大量の廃棄物による海洋汚染等、深刻な気候変動をもたらしております。
当社グループは、飲食業を中核とする企業グループである強みをいかし、これらの気候変動に伴うリスクと機会に対応していくことが重要であると考え、「再生可能エネルギーを利用した循環型6次産業モデルの推進」、「気候変動に伴う物理リスクへの対応策の強化による強靭なサプライチェーンの実現」、「消費者の消費行動の変化に対応した低炭素製品・サービスへの積極的対応」等に取り組んでまいります。
今後も、当社グループは、取締役会による監督体制のもと、環境マネジメントにおけるガバナンスの強化を進め、中長期の目標達成に向けた実行計画の立案等、全社的な取り組みを進めてまいります。
このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E03275] S100OG3Y)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
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