有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100OD53 (EDINETへの外部リンク)
MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社 事業等のリスク (2022年3月期)
(1) 当社グループのリスク管理
① リスク管理基本方針
当社グループは、持続的成長と企業価値向上を追い続ける世界トップ水準の保険・金融グループを創造することを経営ビジョンに掲げ、その実現を阻害するあらゆる不確実性を「リスク」と捉え、リスク管理態勢を整備し、リスク管理を経営の最重要課題として取り組んでおります。
当社グループでは、「MS&ADインシュアランス グループ リスク管理基本方針」を定め、グループ内で共有された基本的な考え方のもとでリスク管理を実行しております。
「MS&ADインシュアランス グループ リスク管理基本方針」には、リスク管理の基本プロセスと体制、保険グループとして認識すべきリスクの定義や管理の考え方等が定められております。
グループ国内保険会社では、この基本方針に沿って各社の実態に合わせた「リスク管理方針」を制定し、主体的にリスク管理を行っております。
② リスク管理体制
当社では、取締役会の課題別委員会の1つであるERM委員会にてリスク管理に係るモニタリング等を行い、重要事項についてはERM委員会の協議を踏まえて、グループ経営会議及び取締役会に報告を行う体制としております。
グループ国内保険会社は、国内外の子会社も含め各社それぞれのリスク管理を実行します。リスク管理部は、グループ全体のリスク及び各社のリスク管理の状況をモニタリングし、グループ全体の統合リスク管理を行い、ERM委員会へその結果を報告しております。
③ ERMをベースにしたグループ経営
ERM(Enterprise Risk Management)は、保険会社の経営において重要なリスク・収益(リターン)・資本という3つの経営指標をバランスよく管理していく機能を担っております。
当社グループでは、中期経営計画の基本戦略を支える基盤の1つとして、ERMを位置づけ、リスク・収益(リターン)・資本のバランスを取った経営資源配分により、企業価値向上に取り組んでおります。
a.ERMの機能と役割
ERMでは、リスクを取って収益を求める際、リスク対比の収益性(ROR※1やVA※2)の高いものや高まる取り方を考え、資本の健全性(ESR※3)を維持しつつ、目標とする資本効率性(グループ修正ROE※4)の達成を図ります。これら3者の関係は下図のようになります。
※1 ROR(Return on Risk):後述b.(a)参照
※2 VA(Value Added):後述b.(b)参照
※3 ESR(Economic Solvency Retio):経済価値ベースのソルベンシー・レシオ:後述b.(c)参照
※4 グループ修正ROE(Return on Equity):後述b.(d)参照
b.ERMで注視する指標
※5 統合リスク量:200年に一度の確率で当社グループ全体が被る損失の予想額(時価)。
※6 時価純資産:経営のバッファとしての純資産管理を徹底するために使用している指標(修正純資産+保険負債の含み損益+その他資本性負債等)
(a)ROR(Return on Risk)とは
リスク量に対して利益(リターン)がどの程度確保されているか(リスク量対比の収益性)を示す指標です。
リスクを引き受けるためには、それに見合う資本の確保が必要になります。したがって、RORが高い(すなわち、引き受けたリスクに対して得られる利益が大きい)事業は、必要な資本に対して、得られる利益がより大きい事業と言えます。
(b)VA(Value Added)とは
リスクを引き受けることによって、どれだけの付加価値が得られるかを示す指標です。資本コストは、資本資産価格モデル(CAPM)により推計しております。
(c)ESR(Economic Solvency Ratio)とは
リスク量に対する資本の充実度を示す指標(=「時価純資産」÷「統合リスク量」)です。リスク量は、事業や資産に係る損失や価値変動のリスクを統計的に数値化したものであり、統合リスク量は当社グループ全体のリスクの総額となります。
(d)グループ修正ROE(Return on Equity)とは
資本に対する利益の割合で、資本の効率性を示す指標です。
④ ERMとリスク管理
当社グループでは、リスク選好方針に沿って経営計画を策定し、ERMサイクルをベースに、健全性の確保と、収益力と資本効率の向上を図っております。ERMサイクルに沿って、リスクに見合った資本の配賦を行い、引き受けたリスクに対するリターン(ROR)のモニタリングを通じて、リスクコントロールやアンダーライティングの強化等を行っております。
a.ERMサイクル
ERMは、企画・執行・モニタリングのサイクルを通じて実践しております。
b.ROR向上に向けた取組み
引き受けたリスクに対しどれだけの利益が得られるかを示すRORの推移は、当社グループのリスクポートフォリオの収益力の状況を表しております。当社グループでは、ERMサイクルをベースにRORの向上に取り組んでおります。
c.ストレステストの実施
当社グループは自然災害の発生、資産価値の下落など、様々な事象の発現による影響を分析して、資本の十分性、期間損益への影響、ポートフォリオの脆弱性の確認を行うためにストレステストを実施しております。
また、事象発現時の状況を分析し、資本を毀損する因子の洗い出しを行い、リスク耐性の向上に有効な対策の検討にも活用しております。
(2) 当社グループの主要なリスク
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。
なお、本項に記載した将来に関する事項は有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
① グループ重要リスク
グループ各社が洗い出した主要なリスク事象リストに基づき、下表のように発生可能性と影響度を目安として、総合的な判断により、経営が管理すべき重要なリスク事象を「グループ重要リスク」として選定し、グループ重要リスク管理取組計画を策定した上で、リスク対策の実行や各リスクの状況を定期的にモニタリングしております。
※7 発生可能性:当面(5年以内)の発生可能性。統計的な発生頻度(確率)に加え、統計的手法で捉えきれない切迫度、予兆等を勘案し、総合的に判断。
※8 影響度:「経済的損失」「ブランド力・信用力への影響」等を勘案し、総合的に判断。
2022年度は地政学リスクの高まり等の状況を踏まえて、グループエマージングリスクから、「国家間等対立の激化・経済安全保障の強化」をグループ重要リスクに移行し、追加しております。また、下表の環境変化については、すでにグループ重要リスクに包含して管理しておりますが、「主な想定シナリオ」に明示することで管理を強化しております。
2022年度グループ重要リスクは下表のNo.1~8及びA~Eのとおりであります。A~EはいずれもNo.1~8のグループ重要リスクの多くにまたがり影響を与えるリスク事象であります。そのため、A~Eについては下表のとおり、No.1~8との対応関係を明確にしております。また、この対応関係を踏まえて、具体的なリスク事象を示すため、「主な想定シナリオ」を明示しております。
これらのリスクが発現することにより、多額の保険金・給付金の支払・保有資産の価値の低下、競争環境や評判の変化等が生じ、当社グループの業績や財務状況に影響が生じるリスクがあります。当社グループでは、これらのリスクに対して、グループ重要リスク管理取組計画を策定(取締役会で決議)した上で、リスク対策の実行を通じて、リスクの軽減やリスクコントロールを実施しております。
※9 台風や地震等の自然災害による損害は時に巨額になることがあり、保険金の支払いが多額に及ぶ可能性があります。また、自然災害による支払保険金の増加等により、当社グループの資金繰りが悪化し、資金の確保に通常よりも著しく不利な条件での取引を余儀なくされる可能性があります。さらに、大規模自然災害の発生により当社グループが適切にビジネス・サービスを実行できない状態が発生する可能性があります。これらにより、当社グループの業績や財務状況に影響が生じるリスクがあります。
※10 当社グループは、有価証券や貸付金、不動産等の様々な運用資産(オフバランス資産を含む)を保有しておりますが、経済環境や金融市場の悪化等により資産又は負債の価値が変化することで当社グループの業績や財務状況に影響が生じるリスク(主に株価下落リスク、金利変動リスク、為替変動リスク)があります。
※11 保有している株式や社債、貸付金等の資産や、販売している信用・保証保険契約等については、株式・社債の発行者若しくは貸付先等の信用力の低下・破綻又は信用市場の混乱によって、資産価値の減少や元本・利息の回収不能等が生じる可能性があります。また、再保険会社の破綻等により再保険金の回収ができなくなる可能性があります。これらにより、当社グループの業績や財務状況に影響が生じるリスクがあります。
※12 企業価値の著しい毀損・社会的信用の失墜につながる行為とは、グループ事業に関連する法令等違反行為、重大な労務問題(長時間労働・ハラスメント等)、人権侵害・多様性の排除、データガバナンスの不備等に加え、社会規範等からの逸脱(不作為によるものを含む)や顧客本位の視点の欠如・不徹底等(コンダクトリスク)に起因するものをいいます。このような行為の発生により、当社グループの業績や財務状況に影響が生じるリスクがあります。
※13 サイバー攻撃による不正アクセス等により、大規模な情報システムの停止・誤作動・不正使用、情報漏えいが発生する可能性があります。また、サイバーリスクを補償する保険契約の引受により、保険金支払が発生する可能性があります。これらにより、当社グループの業績や財務状況に影響が生じるリスクがあります。
※14 大規模システム開発等において、予期せぬ事故等により開発作業の進捗遅延や開発予算の超過等が発生する可能性があります。また、大規模自然災害の発生等によりシステム関連施設が罹災することにより当社グループのビジネス・サービスが停滞する可能性があります。これらにより、当社グループの業績や財務状況に影響が生じるリスクがあります。
※15 新型インフルエンザ等の感染症の大流行により、当社グループの事業継続が阻害されたり、想定を超える影響を受ける可能性があります。また、新規契約の提案のためのお客さま提案活動が抑制されること、企業の事業活動・物流量が減少することなどから保険料収入が減少する可能性があります。さらに、新型インフルエンザ等の感染症に関わるリスクを補償する保険契約の引受により保険金支払が発生する可能性があります。これらにより、当社グループの業績や財務状況に影響が生じるリスクがあります。
※16 デジタルプラットフォーマーの台頭や自動車運転支援・自動運転技術の進展、消費者意識の変化等のビジネス環境の変化により、当社グループを取り巻く事業環境・競争環境が変化する、又は、市場規模・構造が変化する可能性があります。これらにより、当社グループの業績や財務状況に影響が生じるリスクがあります。
※17 デジタライゼーションの急速な進展により、「保険市場の変化(上表No.8)」が生じる可能性があります。また、サイバー攻撃が巧妙化・多様化し、「サイバー攻撃による大規模・重大な業務の停滞・情報漏えい・保険金支払の発生(上表No.5)」が生じる可能性があります。さらに、デジタライゼーションの進展に伴い、「システム障害の多発や重大なシステム障害の発生、大規模システムの開発計画の進捗遅延・未達・予算超過・期待効果未実現(上表No.6)」が生じるリスクが高まる可能性があります。その他のグループ重要リスクとの関係は上表を参照してください。
※18 気候変動により、「大規模自然災害の発生(上表No.1)」の確率・規模等の変化が生じる可能性があります。また、脱炭素社会への移行の過程で、環境関連の政策・規制の強化等により、投融資先企業の業績等が悪化し、「信用リスクの大幅な増加(上表No.3)」等が生じる可能性や当社グループにおける気候変動対応に関わる課題への対応不備やそれに伴う訴訟等が、「グループの企業価値の著しい毀損や社会的信用の失墜につながる行為の発生(上表No.4)」の原因となる可能性があります。さらに、地球温暖化や気候の変化等が、「新型インフルエンザ等の感染症の大流行(上表No.7)」につながる可能性があります。その他のグループ重要リスクとの関係は上表を参照してください。
※19 少子高齢化の進展により、市場規模・構造の変化といった「保険市場の変化(上表No.8)」が生じる可能性があります。その他のグループ重要リスクとの関係は上表を参照してください。
※20 新型コロナウイルスの影響長期化により、経済活動の停滞や市場規模・構造の変化等が生じ、「金融マーケットの大幅な変動(上表No.2)」「信用リスクの大幅な増加(上表No.3)」「保険市場の変化(上表No.8)」が生じる可能性があります。また、リモートワークの進展が、「サイバー攻撃による大規模・重大な業務の停滞・情報漏えい・保険金支払の発生(上表No.5)」や「システム障害の多発や重大なシステム障害の発生、大規模システムの開発計画の進捗遅延・未達・予算超過・期待効果未実現(上表No.6)」の誘因となる可能性があります。その他のグループ重要リスクとの関係は上表を参照してください。
※21 国家間等対立の激化・経済安全保障の強化により、制裁・規制の強化、経済活動の停滞、サプライチェーンの分断、暴動・軍事的行為等が生じ、「金融マーケットの大幅な変動(上表No.2)」「信用リスクの大幅な増加(上表No.3)」「保険市場の変化(上表No.8)」が生じる可能性があります。また、サイバー攻撃が活発化し、「サイバー攻撃による大規模・重大な業務の停滞・情報漏えい・保険金支払の発生(上表No.5)」が生じる可能性があります。さらに、経済安全保障に関する当社グループの対応が遅れる場合等には、「システム障害の多発や重大なシステム障害の発生、大規模システムの開発計画の進捗遅延・未達・予算超過・期待効果未実現(上表No.6)」「グループの企業価値の著しい毀損や社会的信用の失墜につながる行為の発生(上表No.4)」につながる可能性があります。
② グループエマージングリスク
中長期的な視点から当社グループ経営に影響を与える可能性のある事象や、現時点では当社グループ経営への影響の大きさ、発生時期の把握が難しいものの、経営が認識すべき事象を次のとおり「グループエマージングリスク」として特定し、定期的にモニタリングしております。
2022年度は「国家間等対立の激化・経済安全保障の強化」をグループ重要リスクへ移行したことに伴う見直しを行うとともに、自然資本の保全に対する意識の高まりを踏まえ、2021年度までの「資源の枯渇」や「環境災害」に「生態系の劣化・危機」を加え、「自然資本の毀損」として統合・拡張しております。
③ グループ重要リスクとグループエマージングリスクの管理
グループ重要リスクとグループエマージングリスクの管理の概要は下図のとおりです。
2022年度はモニタリング結果等を踏まえ、「国家間等対立の激化・経済安全保障の強化」を経営が管理すべきリスク事象として認識し、グループエマージングリスクから、グループ重要リスクに移行しております。
① リスク管理基本方針
当社グループは、持続的成長と企業価値向上を追い続ける世界トップ水準の保険・金融グループを創造することを経営ビジョンに掲げ、その実現を阻害するあらゆる不確実性を「リスク」と捉え、リスク管理態勢を整備し、リスク管理を経営の最重要課題として取り組んでおります。
当社グループでは、「MS&ADインシュアランス グループ リスク管理基本方針」を定め、グループ内で共有された基本的な考え方のもとでリスク管理を実行しております。
「MS&ADインシュアランス グループ リスク管理基本方針」には、リスク管理の基本プロセスと体制、保険グループとして認識すべきリスクの定義や管理の考え方等が定められております。
グループ国内保険会社では、この基本方針に沿って各社の実態に合わせた「リスク管理方針」を制定し、主体的にリスク管理を行っております。
② リスク管理体制
当社では、取締役会の課題別委員会の1つであるERM委員会にてリスク管理に係るモニタリング等を行い、重要事項についてはERM委員会の協議を踏まえて、グループ経営会議及び取締役会に報告を行う体制としております。
グループ国内保険会社は、国内外の子会社も含め各社それぞれのリスク管理を実行します。リスク管理部は、グループ全体のリスク及び各社のリスク管理の状況をモニタリングし、グループ全体の統合リスク管理を行い、ERM委員会へその結果を報告しております。
③ ERMをベースにしたグループ経営
ERM(Enterprise Risk Management)は、保険会社の経営において重要なリスク・収益(リターン)・資本という3つの経営指標をバランスよく管理していく機能を担っております。
当社グループでは、中期経営計画の基本戦略を支える基盤の1つとして、ERMを位置づけ、リスク・収益(リターン)・資本のバランスを取った経営資源配分により、企業価値向上に取り組んでおります。
a.ERMの機能と役割
ERMでは、リスクを取って収益を求める際、リスク対比の収益性(ROR※1やVA※2)の高いものや高まる取り方を考え、資本の健全性(ESR※3)を維持しつつ、目標とする資本効率性(グループ修正ROE※4)の達成を図ります。これら3者の関係は下図のようになります。
※1 ROR(Return on Risk):後述b.(a)参照
※2 VA(Value Added):後述b.(b)参照
※3 ESR(Economic Solvency Retio):経済価値ベースのソルベンシー・レシオ:後述b.(c)参照
※4 グループ修正ROE(Return on Equity):後述b.(d)参照
b.ERMで注視する指標
※5 統合リスク量:200年に一度の確率で当社グループ全体が被る損失の予想額(時価)。
※6 時価純資産:経営のバッファとしての純資産管理を徹底するために使用している指標(修正純資産+保険負債の含み損益+その他資本性負債等)
(a)ROR(Return on Risk)とは
リスク量に対して利益(リターン)がどの程度確保されているか(リスク量対比の収益性)を示す指標です。
リスクを引き受けるためには、それに見合う資本の確保が必要になります。したがって、RORが高い(すなわち、引き受けたリスクに対して得られる利益が大きい)事業は、必要な資本に対して、得られる利益がより大きい事業と言えます。
(b)VA(Value Added)とは
リスクを引き受けることによって、どれだけの付加価値が得られるかを示す指標です。資本コストは、資本資産価格モデル(CAPM)により推計しております。
(c)ESR(Economic Solvency Ratio)とは
リスク量に対する資本の充実度を示す指標(=「時価純資産」÷「統合リスク量」)です。リスク量は、事業や資産に係る損失や価値変動のリスクを統計的に数値化したものであり、統合リスク量は当社グループ全体のリスクの総額となります。
(d)グループ修正ROE(Return on Equity)とは
資本に対する利益の割合で、資本の効率性を示す指標です。
④ ERMとリスク管理
当社グループでは、リスク選好方針に沿って経営計画を策定し、ERMサイクルをベースに、健全性の確保と、収益力と資本効率の向上を図っております。ERMサイクルに沿って、リスクに見合った資本の配賦を行い、引き受けたリスクに対するリターン(ROR)のモニタリングを通じて、リスクコントロールやアンダーライティングの強化等を行っております。
a.ERMサイクル
ERMは、企画・執行・モニタリングのサイクルを通じて実践しております。
b.ROR向上に向けた取組み
引き受けたリスクに対しどれだけの利益が得られるかを示すRORの推移は、当社グループのリスクポートフォリオの収益力の状況を表しております。当社グループでは、ERMサイクルをベースにRORの向上に取り組んでおります。
c.ストレステストの実施
当社グループは自然災害の発生、資産価値の下落など、様々な事象の発現による影響を分析して、資本の十分性、期間損益への影響、ポートフォリオの脆弱性の確認を行うためにストレステストを実施しております。
また、事象発現時の状況を分析し、資本を毀損する因子の洗い出しを行い、リスク耐性の向上に有効な対策の検討にも活用しております。
(2) 当社グループの主要なリスク
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。
なお、本項に記載した将来に関する事項は有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
① グループ重要リスク
グループ各社が洗い出した主要なリスク事象リストに基づき、下表のように発生可能性と影響度を目安として、総合的な判断により、経営が管理すべき重要なリスク事象を「グループ重要リスク」として選定し、グループ重要リスク管理取組計画を策定した上で、リスク対策の実行や各リスクの状況を定期的にモニタリングしております。
※7 発生可能性:当面(5年以内)の発生可能性。統計的な発生頻度(確率)に加え、統計的手法で捉えきれない切迫度、予兆等を勘案し、総合的に判断。
※8 影響度:「経済的損失」「ブランド力・信用力への影響」等を勘案し、総合的に判断。
2022年度は地政学リスクの高まり等の状況を踏まえて、グループエマージングリスクから、「国家間等対立の激化・経済安全保障の強化」をグループ重要リスクに移行し、追加しております。また、下表の環境変化については、すでにグループ重要リスクに包含して管理しておりますが、「主な想定シナリオ」に明示することで管理を強化しております。
主な領域 | 「主な想定シナリオ」に明示する環境変化 | |
外的変化 | 社会 | ①サステナビリティ課題などの社会的要請の変化 ②人権や多様性に対する意識の高まり ③上記及びデジタライゼーションの進展等による消費者意識の変化 |
経済 | ④供給制約等によるインフレの懸念 ⑤各国の金融政策の変更 | |
環境 | ⑥世界の複数の地域・ペリルでの海外自然災害の発生 ⑦気候変動に伴う訴訟リスクの高まり | |
内的変化 | ― | ⑧補償・保障前後のサービス提供の増加とそれに伴うリスクの発現 ⑨デジタルトランスフォーメーション推進に伴うお客さま・代理店向けシステムの増加 ⑩IFRS導入が想定されている時期の到来 |
2022年度グループ重要リスクは下表のNo.1~8及びA~Eのとおりであります。A~EはいずれもNo.1~8のグループ重要リスクの多くにまたがり影響を与えるリスク事象であります。そのため、A~Eについては下表のとおり、No.1~8との対応関係を明確にしております。また、この対応関係を踏まえて、具体的なリスク事象を示すため、「主な想定シナリオ」を明示しております。
これらのリスクが発現することにより、多額の保険金・給付金の支払・保有資産の価値の低下、競争環境や評判の変化等が生じ、当社グループの業績や財務状況に影響が生じるリスクがあります。当社グループでは、これらのリスクに対して、グループ重要リスク管理取組計画を策定(取締役会で決議)した上で、リスク対策の実行を通じて、リスクの軽減やリスクコントロールを実施しております。
No. | グループ重要リスク (点線枠内は「主な想定シナリオ」) | 対応関係(◎:大~△:小) | |||||
A | B | C | D | E | |||
デジタライゼーションの急速な進展※17 | 気候変動 ※18 | 少子高齢化の進展 ※19 | 新型コロナウイルスの影響長期化 ※20 | 国家間等対立の激化・経済安全保障の強化 ※21 | |||
1 | 大規模自然災害の発生※9 | ◎ | |||||
・国内及び海外の大規模な風水災・地震等の発生 ・気候変動の影響も受けた大規模自然災害の発生確率・規模等の変化 ・大規模自然災害の発生によりグループが適切にビジネス・サービスを実行できない状態の発生 | |||||||
2 | 金融マーケットの大幅な変動※10 | △ | ◎ | ○ | |||
・新型コロナウイルスの影響長期化や大国間対立激化等に伴う経済活動の停滞の懸念による株式等の保有資産価値の下落 ・インフレ懸念に伴う金融市場の変動、各国の金融政策の変更等に伴う金利上昇 | |||||||
3 | 信用リスクの大幅な増加※11 | ○ | ◎ | ○ | |||
・信用市場の混乱による資産価値の急落 ・新型コロナウイルスの影響長期化・実体経済の悪化によるデフォルトの多発 ・企業の気候変動への対応に伴う「移行リスク」の顕在化(環境関連の政策・規制の強化、脱炭素技術の進展、商品・サービスの需要の変化、訴訟の増加、社会・消費者による評価の低下等)による当社グループの保有資産の価値下落 ・大国間の制裁強化や各国の経済安全保障関連規制の強化等により、サプライチェーンが分断されることなどによる投融資先企業の業績悪化 | |||||||
4 | グループの企業価値の著しい毀損や社会的信用の失墜につながる行為の発生※12 | ○ | ○ | △ | ○ | ○ | |
・当社グループにおける気候変動対応等のサステナビリティに関わる課題への対応不備やそれに伴う訴訟等による評判の低下や財務的な負担 ・リモートワークの進展に伴う不祥事の増加 ・国際財務報告基準(IFRS)に基づく連結財務諸表の開示に向けた準備遅延・対応不備等による開示情報の重大な誤謬の発生、若しくは、IFRSベースの新たな経営管理・指標に対する投資家の否定的な反応 ・当社グループ又は外部委託先等における人権や知的財産権の侵害・経済安全保障上の問題等による当社グループの評判の低下 | |||||||
5 | サイバー攻撃による大規模・重大な業務の停滞・情報漏えい・保険金支払の発生※13 | ◎ | ○ | ○ | |||
・当社グループ及び外部委託先等に対するサイバー攻撃による業務の停滞・情報漏えいの発生 ・サイバー攻撃の巧妙化・多様化等による保険金支払の増加 ・在宅勤務・デジタライゼーション等の進展や大国間の対立激化等に伴うサイバー攻撃による世界的な被害の拡大 | |||||||
6 | システム障害の多発や重大なシステム障害の発生、大規模システムの開発計画の進捗遅延・未達・予算超過・期待効果未実現※14 | ◎ | ○ | ○ | ○ | ||
・在宅勤務・デジタライゼーションの進展により影響が増大したシステム障害の発生 ・大規模自然災害の発生等によりシステム関連施設が罹災することによるビジネス・サービスの停滞 ・休日や営業時間外に稼働するお客さま・代理店向けシステムの大規模な障害発生によるお客さま等への対応の遅れ ・各国の経済安全保障関連規制の強化等から外部委託先等を変更することによるシステム開発の遅延やサービスの劣化 |
No. | グループ重要リスク (点線枠内は「主な想定シナリオ」) | 対応関係(◎:大~△:小) | |||||
A | B | C | D | E | |||
デジタライゼーションの急速な進展※17 | 気候変動 ※18 | 少子高齢化の進展 ※19 | 新型コロナウイルスの影響長期化 ※20 | 国家間等対立の激化・経済安全保障の強化 ※21 | |||
7 | 新型インフルエンザ等の感染症の大流行※15 | ○ | △ | ○ | |||
・世界的な感染拡大・長期化に伴う経済活動の縮小 ・保険金・給付金支払の増加 ・地球温暖化や気候の変化に起因する感染地域の拡大、新種の感染症の発生・大流行 ・感染症の大流行によりグループが適切にビジネス・サービスを実行できない状態の発生 | |||||||
8 | 保険市場の変化※16 | ○ | △ | ○ | ○ | ○ | |
・デジタルプラットフォーマーの台頭等によるビジネスモデルの大きな変革(ビルトイン型保険、AI技術を活用した保険料率計算の効率化など)や消費者意識の変化 ・運転支援・自動運転技術の進展による自動車事故の減少に伴う自動車保険市場の変化 ・補償・保障前後のサービス拡大に伴うアプリ・システム・IoT機器等の不具合、業務委託先・事業提携先の不正・事務ミスによる風評被害、機器等のサプライチェーンにおける供給制約や知的財産権侵害等による販売戦略への影響 ・気候変動への対応、新型コロナウイルスの影響長期化、少子高齢化の進展・人口減少等による市場規模・構造の変化、物価変動(主にインフレ)に伴う保険金・事業費への影響 ・大国間の対立激化に伴う輸出制限・サプライチェーンの分断・規制変更・暴動・軍事的行動等による事業の中断・制限、渡航や資金移動の制限 |
※9 台風や地震等の自然災害による損害は時に巨額になることがあり、保険金の支払いが多額に及ぶ可能性があります。また、自然災害による支払保険金の増加等により、当社グループの資金繰りが悪化し、資金の確保に通常よりも著しく不利な条件での取引を余儀なくされる可能性があります。さらに、大規模自然災害の発生により当社グループが適切にビジネス・サービスを実行できない状態が発生する可能性があります。これらにより、当社グループの業績や財務状況に影響が生じるリスクがあります。
※10 当社グループは、有価証券や貸付金、不動産等の様々な運用資産(オフバランス資産を含む)を保有しておりますが、経済環境や金融市場の悪化等により資産又は負債の価値が変化することで当社グループの業績や財務状況に影響が生じるリスク(主に株価下落リスク、金利変動リスク、為替変動リスク)があります。
※11 保有している株式や社債、貸付金等の資産や、販売している信用・保証保険契約等については、株式・社債の発行者若しくは貸付先等の信用力の低下・破綻又は信用市場の混乱によって、資産価値の減少や元本・利息の回収不能等が生じる可能性があります。また、再保険会社の破綻等により再保険金の回収ができなくなる可能性があります。これらにより、当社グループの業績や財務状況に影響が生じるリスクがあります。
※12 企業価値の著しい毀損・社会的信用の失墜につながる行為とは、グループ事業に関連する法令等違反行為、重大な労務問題(長時間労働・ハラスメント等)、人権侵害・多様性の排除、データガバナンスの不備等に加え、社会規範等からの逸脱(不作為によるものを含む)や顧客本位の視点の欠如・不徹底等(コンダクトリスク)に起因するものをいいます。このような行為の発生により、当社グループの業績や財務状況に影響が生じるリスクがあります。
※13 サイバー攻撃による不正アクセス等により、大規模な情報システムの停止・誤作動・不正使用、情報漏えいが発生する可能性があります。また、サイバーリスクを補償する保険契約の引受により、保険金支払が発生する可能性があります。これらにより、当社グループの業績や財務状況に影響が生じるリスクがあります。
※14 大規模システム開発等において、予期せぬ事故等により開発作業の進捗遅延や開発予算の超過等が発生する可能性があります。また、大規模自然災害の発生等によりシステム関連施設が罹災することにより当社グループのビジネス・サービスが停滞する可能性があります。これらにより、当社グループの業績や財務状況に影響が生じるリスクがあります。
※15 新型インフルエンザ等の感染症の大流行により、当社グループの事業継続が阻害されたり、想定を超える影響を受ける可能性があります。また、新規契約の提案のためのお客さま提案活動が抑制されること、企業の事業活動・物流量が減少することなどから保険料収入が減少する可能性があります。さらに、新型インフルエンザ等の感染症に関わるリスクを補償する保険契約の引受により保険金支払が発生する可能性があります。これらにより、当社グループの業績や財務状況に影響が生じるリスクがあります。
※16 デジタルプラットフォーマーの台頭や自動車運転支援・自動運転技術の進展、消費者意識の変化等のビジネス環境の変化により、当社グループを取り巻く事業環境・競争環境が変化する、又は、市場規模・構造が変化する可能性があります。これらにより、当社グループの業績や財務状況に影響が生じるリスクがあります。
※17 デジタライゼーションの急速な進展により、「保険市場の変化(上表No.8)」が生じる可能性があります。また、サイバー攻撃が巧妙化・多様化し、「サイバー攻撃による大規模・重大な業務の停滞・情報漏えい・保険金支払の発生(上表No.5)」が生じる可能性があります。さらに、デジタライゼーションの進展に伴い、「システム障害の多発や重大なシステム障害の発生、大規模システムの開発計画の進捗遅延・未達・予算超過・期待効果未実現(上表No.6)」が生じるリスクが高まる可能性があります。その他のグループ重要リスクとの関係は上表を参照してください。
※18 気候変動により、「大規模自然災害の発生(上表No.1)」の確率・規模等の変化が生じる可能性があります。また、脱炭素社会への移行の過程で、環境関連の政策・規制の強化等により、投融資先企業の業績等が悪化し、「信用リスクの大幅な増加(上表No.3)」等が生じる可能性や当社グループにおける気候変動対応に関わる課題への対応不備やそれに伴う訴訟等が、「グループの企業価値の著しい毀損や社会的信用の失墜につながる行為の発生(上表No.4)」の原因となる可能性があります。さらに、地球温暖化や気候の変化等が、「新型インフルエンザ等の感染症の大流行(上表No.7)」につながる可能性があります。その他のグループ重要リスクとの関係は上表を参照してください。
※19 少子高齢化の進展により、市場規模・構造の変化といった「保険市場の変化(上表No.8)」が生じる可能性があります。その他のグループ重要リスクとの関係は上表を参照してください。
※20 新型コロナウイルスの影響長期化により、経済活動の停滞や市場規模・構造の変化等が生じ、「金融マーケットの大幅な変動(上表No.2)」「信用リスクの大幅な増加(上表No.3)」「保険市場の変化(上表No.8)」が生じる可能性があります。また、リモートワークの進展が、「サイバー攻撃による大規模・重大な業務の停滞・情報漏えい・保険金支払の発生(上表No.5)」や「システム障害の多発や重大なシステム障害の発生、大規模システムの開発計画の進捗遅延・未達・予算超過・期待効果未実現(上表No.6)」の誘因となる可能性があります。その他のグループ重要リスクとの関係は上表を参照してください。
※21 国家間等対立の激化・経済安全保障の強化により、制裁・規制の強化、経済活動の停滞、サプライチェーンの分断、暴動・軍事的行為等が生じ、「金融マーケットの大幅な変動(上表No.2)」「信用リスクの大幅な増加(上表No.3)」「保険市場の変化(上表No.8)」が生じる可能性があります。また、サイバー攻撃が活発化し、「サイバー攻撃による大規模・重大な業務の停滞・情報漏えい・保険金支払の発生(上表No.5)」が生じる可能性があります。さらに、経済安全保障に関する当社グループの対応が遅れる場合等には、「システム障害の多発や重大なシステム障害の発生、大規模システムの開発計画の進捗遅延・未達・予算超過・期待効果未実現(上表No.6)」「グループの企業価値の著しい毀損や社会的信用の失墜につながる行為の発生(上表No.4)」につながる可能性があります。
② グループエマージングリスク
中長期的な視点から当社グループ経営に影響を与える可能性のある事象や、現時点では当社グループ経営への影響の大きさ、発生時期の把握が難しいものの、経営が認識すべき事象を次のとおり「グループエマージングリスク」として特定し、定期的にモニタリングしております。
2022年度は「国家間等対立の激化・経済安全保障の強化」をグループ重要リスクへ移行したことに伴う見直しを行うとともに、自然資本の保全に対する意識の高まりを踏まえ、2021年度までの「資源の枯渇」や「環境災害」に「生態系の劣化・危機」を加え、「自然資本の毀損」として統合・拡張しております。
グループエマージングリスク | |
1 | 経済・消費者行動・ビジネスモデルの大きな変化・変革を及ぼす新たな仕組みや革新的な技術の出現・台頭 |
2 | 自然資本の毀損(資源の枯渇、生態系の劣化・危機、環境に甚大な損害を与える人為的な汚染や事故) |
3 | 当社グループに大きな影響を及ぼす可能性がある国内外の法令・制度・規制等の新設・改廃 |
4 | 労働需給の大きな変化 |
5 | 国家統治・政治の大きな混乱・機能不全・崩壊、安全保障の危機 |
③ グループ重要リスクとグループエマージングリスクの管理
グループ重要リスクとグループエマージングリスクの管理の概要は下図のとおりです。
2022年度はモニタリング結果等を踏まえ、「国家間等対立の激化・経済安全保障の強化」を経営が管理すべきリスク事象として認識し、グループエマージングリスクから、グループ重要リスクに移行しております。
このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E03854] S100OD53)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
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