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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100OCR3 (EDINETへの外部リンク)

有価証券報告書抜粋 旭化成株式会社 事業等のリスク (2022年3月期)


従業員の状況メニュー研究開発活動


当社グループは、その広範にわたる事業により安定的な事業運営を実現していますが、個々の事業では事業の性格により異なる市場リスク・投資リスクをはじめ様々なリスクを内在しています。これらのリスクは予測不可能な不確実性を含んでおり、当社グループの財政状態や業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクの回避及び発生した場合の対応に必要なリスク管理体制及び管理手法を整備し、リスクの監視及び管理等の対策を講じますが、これらすべてのリスクを完全に回避するものではありません。
将来の事項に関する記述につきましては、有価証券報告書提出日現在において入手可能な情報に基づき、当社グループが合理的であると判断したものです。

(1) グループのリスク管理・コンプライアンス基本規程
「グループリスク管理・コンプライアンス基本規程」において、事業運営に関わるリスク管理と有事における対応の基本的事項を定めています。



(2) グループリスク管理・コンプライアンス基本規程に定めるリスク・コンプライアンス管理体制
社長を委員長とし、各事業本部と事業会社の長を委員とするリスク・コンプライアンス委員会を設置し、同委員会の事務局が各スタッフ部門と連携し、事業部門とのやりとりを通じてリスク対策の進捗状況とコンプライアンスの徹底状況のモニタリングを行っています。また、委員会での審議結果等については、年に2回、取締役会に報告しています。なお、この管理体制に加え、環境、品質、労働安全衛生、災害などに関するリスクへの対応については、それぞれの所管部場において規程の制定、教育・啓発を実施し、状況を監査等を通じて確認し、継続的に改善を図ることでリスクのミニマイズに努めています。



(3) 当社グループ全体に係るリスク
① 気候変動リスク
当社グループは、気候変動に関して生じる変化を重要なリスク要因として認識しています。当社グループではTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures。気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同するとともに、TCFD提言の枠組みに基づき、気候変動が事業に及ぼす影響の分析、対応策の検討を行っています。
産業革命前からの気温上昇を+2℃未満に抑えるシナリオ(主として移行リスク)においては、社会の脱炭素化に向けた規制強化によるコストの増加が、業績に影響を与える可能性があります(例: 2020年度のGHG排出量約400万tに、仮に炭素税等として10,000円/tを乗じた場合、年間400億円程度)。このようなリスクに対して、当社グループは、再生可能エネルギーの活用拡大、エネルギー消費の低減、脱炭素化の工業プロセスの開発・実用化、事業ポートフォリオの転換等により、影響の抑制を図っていきます。また、脱炭素社会で必要となる電気自動車等の環境対応車の普及、政策によるZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及、再生可能エネルギー拡大に伴う水素利用の普及は、当社グループにとって、事業展開・拡大の機会であると分析しています。
一方、温暖化が十分に防止されず、産業革命前からの気温上昇が+4℃となるシナリオ(主として物理的リスク)においては、風水害の甚大化による工場の被災・生産停止、原材料供給網の寸断、また、酷暑による住宅建設現場等での屋外作業の労働環境・生産性の悪化が懸念され、業績に影響を与える可能性があります。これらのリスクに対して、当社グループは、BCP(事業継続計画)の継続的見直し、事前対応の強化(在庫水準見直し、複数購買・拠点化の検討等)、住宅建設の更なる工業化・IT技術の活用等により、影響の抑制を図っていきます。また、災害に強い住宅ニーズの高まり、熱中症、感染症の拡大による治療薬やクリティカルケア事業の需要拡大は、当社グループにとって事業展開・拡大の機会であると分析しています。
以上のとおり、気候変動は中長期的に財務面に少なからぬ影響を与えうると想定されるものの、多様な事業からなる事業ポートフォリオが機会とリスク対応を生み出すことから、グループ全体に与える財務リスクは限定的であると分析しています。また、多様な技術・事業によって、気候変動に関する新たな機会を獲得できるポテンシャルを当社グループは有していると認識しています。

② COVID-19感染拡大によるリスク
COVID-19の研究や人びとへのワクチンの接種が進んでいますが、感染力が強く重症化リスクが高いとされる変異株が確認され、再び感染者数が増加するなど、感染拡大が経済活動に及ぼす影響の程度、期間については見通しが依然不透明であり、当社グループの業績に影響を及ぼすリスクがあります。また、感染者増加の抑制や各地域政府による操業規制等の方針により、当社グループの製造・営業・物流・工事・建設等の拠点において、事業活動が制約を受ける可能性があるため、引き続き、オンラインでの業務対応等によりその影響を軽減していきます。加えて、COVID-19感染拡大による影響の内容や程度により、需要が大きく変動する製品もあるため、注意深く需要動向をモニタリングし、適正な水準の在庫の維持や安定的な供給対応を進めていきます。

③ グローバルなサプライチェーンに関するリスク
当社グループは、「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」の3つのセグメントからなる多様な事業を運営しており、事業ごとに原材料や部品、施工業者、物流経路、倉庫、販売先に至るまで、国内外で多様なサプライチェーンを構成しています。そのため、世界中で発生する自然災害、保安事故、人権問題、紛争、経営破綻等による、取引先との取引回避や取引先の機能不全により、サプライチェーンが途絶するリスクがあり、ロシア・ウクライナ情勢も注視が必要です。サプライヤーの選定におけるリスク評価や監査の実施、サプライヤー及び販売先のモニタリングなどを通じて、リスクを低減させることに加えて、主要製品・事業における原材料の調達ルートの多様化や適正な水準の在庫の確保を通じて、安定操業に向けた取り組みを強化しています。

④ 通商・経済制裁等規制に関するリスク
・ 通商に関するリスク
当社グループは、原材料の購入や製品の輸出、海外における現地生産等、幅広く海外で事業を展開し、国際貿易や資金決済に関する二国間あるいは多国間の協定や枠組みのメリットを享受しています。これらの協定や各種枠組み等の変更や新規規制の導入などにより、関税の増加、通関の遅延・不能、資金決済の遅延・不能が生じ、代金回収や事業遂行の遅延・不能、業績悪化等が発生するリスクを負っています。当社グループでは、適時に規制内容を理解することや、関係当局に事前に相談し、対策を講じることによって、これらのリスクの低減に努めています。
また、グループ会社間の国際的な取引価格については、当社グループ税務方針に基づき、日本国政府及び相手国政府の移転価格税制を遵守していますが、税務当局から取引価格が不適切であるとの指摘を受ける可能性や、協議が不調となった場合に二重課税や追徴課税を受ける可能性があります。そのため、重要性の高いグループ会社間取引については、事前確認制度の活用、あるいは、外部専門家の意見も参考にしながら、各国の移転価格税制を踏まえた独立企業間価格を設定しています。

・ 経済制裁、各種規制に関するリスク
当社グループは、製品の輸出や海外における現地生産等、幅広く海外で事業展開をしており、安定的な国際通商のメリットを享受しています。そのため、何らかの理由により二国間あるいは多国間の通商環境が変化することにより、海外の会社との取引や出資、その他事業活動に影響を受けるリスクがあります。特に、米中対立やロシア・ウクライナ情勢等、近年国際関係の緊張が高まっており、これに伴って日本や諸外国において、経済安全保障の観点から経済制裁、輸出管理規制、外国直接投資規制を強化する動きが続いています。これらの動向には常に注意を払っており、適時に規制内容を理解することや関係当局に事前に相談することに加えて、経済制裁については外部の顧客スクリーニングシステム等を利用して慎重な取引審査を行うなどにより、適切な対応に努めています。これらの規制に対応することにより、取引先との取引の停滞・中断、資金の移動の遅延・停止、事業遂行の遅延・不能等により、業績に影響を及ぼすなどのリスクがあります。

⑤ 事業競争力に関するリスク
当社グループは、「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」の3つのセグメントにおいて、付加価値の高い製品・サービスを提供していますが、類似の製品や技術による競合企業のキャッチアップ、新たな競合企業の参入等によって競争環境が激化することや、デジタル技術や脱炭素化に貢献する技術等急速な技術革新による産業構造の変化、急激な需要構造・市場構造の変化などにより、当社グループの各事業の競争力を損なう可能性があります。当社グループでは、競合製品の競争力や産業構造の変化をタイムリーかつ的確に見通すことに努めるとともに、製品やサービスの絶え間ない差別化や模倣困難なビジネスモデルの構築、知的財産等による高い参入障壁を設けることにより、これらのリスクの低減に努めています。

⑥ M&Aに関するリスク
当社グループは、事業ポートフォリオの進化にあたっては、「成長の為の挑戦的な投資」と「構造転換や既存事業強化からのフリー・キャッシュ・フロー創出」の両輪を回すことが重要と考え、事業投資、新規事業の創出や事業ポートフォリオの転換の手段として、国内外におけるM&Aを通じた事業展開を行っています。これまでZOLL Medical Corporation(2012年度)、Polypore International Inc.(2015年度)、Sage Automotive Interiors, Inc.(2018年度)、Veloxis Pharmaceuticals A/S(2019年度)など、大型買収を行ったことからのれん及び無形固定資産残高は増加傾向にあります。M&Aの結果取得した無形固定資産の企業結合日時点における時価については、コスト・アプローチ、マーケット・アプローチ、インカム・アプローチなどによって合理的に算定された価額を基礎として算定しており、事業計画等の不確実性を伴う仮定が反映されています。
そのため、事業計画等において初期に期待した投資効果が発現しなかった場合や合弁会社の経営が悪化した場合、被買収企業との事業統合が遅延した場合など、のれんや無形固定資産の減損等により当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。当社グループでは、買収検討の対象企業のデューデリジェンス(詳細調査)を慎重に行い、買収後の事業統合の計画を入念に検証することで、リスクの低減に努め、過去の大型買収に関する減損損失の計上はありません。しかし、過去の大型買収が海外での新規市場や成長市場に関する案件であり、想定外の事業環境の変化への対応を誤ると、投資額の回収が困難となるリスクを抱えています。

⑦ 市況変動によるリスク
・ 原油・ナフサ価格変動リスク
当社グループは、原油やナフサを原料とした石油化学製品の製造・販売事業を展開しています。また、各原料市況並びに需給バランスから固有の市況を形成しており、その変動は当該事業や誘導品からなる当社グループの各事業に影響を及ぼします。特に、事業規模が大きいアクリロニトリル事業は市況の変動の影響が大きいため、販売価格のフォーミュラの見直し等、収益の安定化に努めています。

・ 為替変動リスク
当社グループは、輸出入及び外国間等の貿易取引において、外貨建ての決済を行うことに伴い、円に対する外国通貨レートの変動による影響を受けます。そのため、取引においては、先物為替予約等によるヘッジ策やCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)の活用による、安定的かつ効率的な資金活用を目指しています。当社グループは、収益の多くが外貨建てであることに加え、当社の報告通貨が円であることから、外国通貨に対して円高が進むと、当社グループの業績にマイナスのインパクトを与えます。当社の試算では、米ドル・円レートが1円変動すると連結営業利益に年間14億円の変動をもたらします。

⑧ その他のリスク
上記のリスクのほか、大規模自然災害、保安事故、製品の欠陥に起因する事故、知的財産権、人権問題、新たな法令に起因する事業上のリスクが想定されますが、担当専門部署にて、予防策を講じることでリスクのミニマイズに努めています。また、リスクが顕在化した場合の復旧費用等に充当する目的で損害保険付保によるリスクファイナンス(資金確保)を行っています。

(4)各セグメントに係るリスク
① 「マテリアル」セグメント
「Environment & Energy」分野においては、リチウムイオン電池用セパレータの世界的な需要変化及び競合他社の販売政策により販売量・販売価格が当社予測を下回る可能性があります。そのため、当社グループは、多様化する顧客ニーズに対応すべく、中長期で需要が増えると予測する電気自動車等の環境対応車や蓄電システム(ESS)用途を中心に生産能力の増強を推進し、安定的かつ高水準の品質を強みに様々な顧客ニーズに対応します。また、同事業は、各国の規制・環境問題等によるサプライチェーンの変化、テクノロジーの変化により、事業環境が急激に変化することが中期的なリスク要因と考えられるため、事業環境の動向の把握と迅速な対応を続けていきます。
「Mobility」分野の事業は、世界の自動車業界の動向に影響を受ける場合があります。自動車部材用のエンジニアリング樹脂や低燃費タイヤ向けの合成ゴム、自動車内装材等については、COVID-19の感染拡大による需要減少からの回復は進むものの、足元ではロシア・ウクライナ情勢による原燃料の高騰、中国ロックダウンの影響など、サプライチェーンを含めた環境変動が見通しにくい状況が続いています。各国の自動車関連市場を注視するとともに、サプライチェーンの管理を強化し、適正な水準の在庫を保有することで、変化する需要に柔軟に対応します。一方、自動車の「CASE」と呼ばれる技術革新をはじめとした業界の変化は、今後も進展していくと考えています。特に脱炭素社会の実現に向けて、電気自動車向け素材等、環境負荷低減に対応した素材が求められており、自動車に求められる社会ニーズは加速的に変化しているため、顧客要求が大きく変わる可能性があります。このようなニーズや顧客要求に対応した、素材のラインナップ拡充や展開エリアの拡張を図り、持続的に成長できるビジネスモデルの構築を推進していきます。
「Life Material」分野においては、デジタルトランスフォーメーションの普及や電気自動車へのシフト等により半導体のニーズが益々拡大する一方で、世界各国の半導体ファウンドリ(foundry)やOSAT(Outsourced Semiconductor Assembly & Test)を活用する分業体制が業界全体として展開されているため、半導体製造に関わるサプライチェーンの動向に影響を受ける可能性があります。半導体生産に必要なレアガス(希ガス)やレアメタル(希少金属)などの原材料不足やCOVID-19感染拡大の影響を受けての需要変化による製造リードタイムの長期化など、電子部品事業において環境変動が見通しにくい状況となっていますが、半導体製造関連の主要サプライチェーンの状況(特に米国、中国、台湾)の動向をモニタリングし、リスクの発生状況を常時評価し、迅速に対応していきます。

② 「住宅」セグメント
「Home & Living」分野の国内事業においては、日本国内の個人消費動向・金利・地価・住宅関連政策ないし税制の動向に大きく影響を受ける場合があります。COVID-19感染拡大により、顧客とのコミュニケーションのあり方が大きく変わるなどの影響を受けていますが、一方で、在宅勤務等により暮らしや働き方の新たなニーズが生まれる機会でもあると考えています。当社グループは、デジタル技術を活用したマーケティング等による集客、受注活動の推進等により、新たな顧客とのコミュニケーションのあり方を確立し、ニーズに対応していきます。
北米、豪州の事業においては、各国の住宅市場の影響を受けることから、現地の関係会社を通じ、市場動向をモニタリングしていきます。また、国内事業同様に、住宅需要増、半導体不足や災害等により、原材料や建築資材の需給バランスが崩れて価格が変動する可能性があるため、原材料や建築資材価格をモニタリングし、影響の抑制に努めていきます。
加えて、事業の特性上、大量の個人情報を扱っているため、個人情報の漏洩等があれば、当社グループの信用を毀損するリスクがあります。そのため、個人情報保護の徹底した対策を講じています。

③ 「ヘルスケア」セグメント
医薬品や医療機器等の「Health Care」分野の事業においては、一般的に、その販売数量や販売単価等が定期的な薬価・保険償還価格の改定の影響を受ける場合があります。特に新薬の研究開発期間は長期にわたることに加え、新薬が承認取得に至る確率が高くないことなどから、製品化の確度や時期について正確な予測が困難な状況にあり、計画どおりに製品化できなかった場合は業績に影響を与える可能性があります。医薬品や医療機器が製品化した場合でも、競合品の開発・上市の動向、有害事象の報告、後発品の上市等により、業績に影響を与える可能性があります。そのため、当社では医薬事業と医療事業の両方を持つことで、多様な成長力・競争力を獲得し、イノベーション獲得機会の増加を図るとともに、医療規制等将来の不確実性への対応力を高めていきます。また、パイプラインの拡充、製品導出・導入、共同開発、グローバル展開の加速等に努めることで持続的な安定成長を図ります。
また、COVID-19感染拡大による患者様の受診抑制や医療従事者への対面での情報提供活動の制限等の影響により、国内医薬品やクリティカルケア製品の一部の需要が減少する可能性がありますが、オンラインでの面談やe-プロモーション等の新たな手法を積極的に活用しながら医療従事者への情報提供活動を継続するとともに、需要動向を注視して需要変動に応じた柔軟な生産対応を実施していきます。

(5) リスク管理の強化・高度化
当社グループを取り巻く環境が急激に変化する中で、複雑化するリスクが当社グループに及ぼす影響がこれまで以上に大きくなっていることから、リスク管理のさらなる強化・高度化を以下の2つの観点で実施します。

・ 全社的な対応を要する重大リスクについて
従前から認識しているリスクも踏まえ、特に全社的な対応を要する重大リスクの選定方針や対応方針を再整理し、取組状況をモニタリングします。

・ 各事業の重要リスクについて
各事業の経営計画の重点課題の達成を阻害する可能性があるリスクや各事業特有のリスクのうち、重要なものについて、取締役会で審議・承認される当社グループ全体の年度経営計画の施策に織り込みます。各事業の経営計画の社長によるモニタリングを通じ、当該リスクへの対応状況を評価します。

従業員の状況研究開発活動


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