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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100NSDQ (EDINETへの外部リンク)

有価証券報告書抜粋 日本ペイントホールディングス株式会社 研究開発活動 (2021年12月期)


事業等のリスクメニュー株式の総数等

第2「事業の状況」 1(1)①に記載されている会社の経営の基本方針のもと、当社は、塗料が持つ魅力を技術の力で最大化するために、国内外のグループ技術の総合力と社外ネットワークとのコラボレーションを強化する取り組みを進め、主力事業における継続的な新製品や、「感染症リスクの低減」、「スマート社会の実現」、「環境負荷の低減」、「社会的コストの低減」の4つの分野の社会課題を解決できる製品・サービスを提供するための技術開発を推進しております。R&D領域においては、2020年5月に東京大学と包括的な共同研究及び人材交流を、高度なレベルで推進する産学協創協定を締結し、東京大学内に『革新的コーティング技術の創生』社会連携講座を設置しました。協創資金は2020年10月から5年間で10億円規模を投入し、塗料とコーティングを軸に、抗ウイルス技術を含む新型コロナウイルス感染症の拡大防止に資する技術や、スマート・リモート社会の基盤づくり、並びに美しく魅力あふれる持続可能型社会を紡ぐための新たな技術を提供すべく研究を開始しております。
特に、抗ウイルス製品の開発においては、最優先課題として、グループ横断の専門チームを中心に、新型コロナウイルス感染症拡大の抑制を含む新たな社会課題の解決に資する製品を生み出し、社会貢献を果たしてまいります。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費用は24,251百万円であり、連結売上収益に占める割合は2.4%です。またグループ全体の費用のうち、全社に係る研究開発活動費用は841百万円であります。主な研究開発活動の概要及び成果は次のとおりであります。

(1)日本
当地域では、自動車用塗料・工業用塗料・汎用塗料・自動車補修用塗料・船舶用塗料・ファインケミカルなどの事業分野を中心に研究開発活動を行っております。
自動車用塗料分野においては、従来の活動である自動車ボデー外板への機能性や意匠価値を付与した高付加価値商品の市場導入に加え、自動運転、カーシェアリング等の世の中の変化を見据えた新たなコーティング技術の開発と、FPD(フラットパネルディスプレイ)分野への市場参入を進めております。また、環境対応面では、溶剤低減塗料・水性塗料・スズフリー電着塗料などの環境に優しい塗料開発・市場導入や、塗装工程の短縮や硬化温度を下げる事などにより、塗装時の消費エネルギー低減に貢献できる塗料開発を強化中です。
工業用塗料分野においては、VOC(揮発性有機化合物)排出量削減など国内外で環境規制の強化が進む社会情勢のもと、国内外の法規制(特化則、RoHS指令、SVHCなど)への対応や省エネに寄与する商品の上市により、水性塗料・粉体塗料、ハイソリッド塗料、遮熱塗料などの環境配慮型商品への移行が順調に進んできております。水性塗料では、顔料の沈降を抑え、沈降防止に必要な攪拌の為の電力エネルギー量を大幅に削減できる省エネ電着塗料「パワーフロート」が安定的に市場で定着しております。塗装現場の作業効率化と環境対応を両立させた1液常温乾燥形上塗り塗料「ニッペ1液パワーウレトップ」は、ライン塗装及び現場塗装でのニーズにマッチした商品として評価を受けております。高寿命化が求められる住宅については、外壁材向けに超高耐久を実現する業界初の水性無機クリヤー塗料「オーデパワー3000」の開発に成功し、市場導入を開始いたしました。プレコート用塗料については、市場ニーズにいち早く対応すべく、環境配慮型クロメートフリー塗料の研究開発を推進し、国内外での実証ステージに移行しております。粉体塗料では、耐擦り傷性とエッジカバー性に優れる新たな硬化系の「ビリューシアPL」を開発し、市場導入いたしました。また、都市部のヒートアイランド現象対策としてアスファルト路面の温度を10~15℃下げることが可能な遮熱塗料「ATTSU-9 ROAD(U)」は、都道・国道等の公道だけでなく、駐車場や事業所敷地など民間地舗装にも幅広い採用が進んでおります。抗ウイルス製品としては、瞬時性、持続性、耐久性、安全設計を兼ね備えた抗ウイルススプレー「PROTECTONバリアックススプレー」や、抗ウイルス機能を兼ね備えた不織布用塗料「オーデタイト610」を開発し、市場導入を果たしました。
汎用塗料分野においては、高付加価値商品や環境配慮商品の開発に注力してまいりました。建築用塗料においては、マンションおよび戸建住宅の基礎部の美装と長寿命化に貢献する水性反応硬化形基礎専用シリコン系塗料「ニッペキソエース」と、2工程で仕上げることができ工期の短縮が可能で好評いただいている「ALCワンデートップ」をシリコングレードに耐候性を向上させた「ALCワンデートップSi」を発売し、商品力強化を図っております。鉄構・コンクリート塗料においては、コンクリート表面含浸工法として活用できる「タフガード浸透シール」を発売しました。この商品は、土木学会コンクリート標準示方書[基準編]土木学会基準および関連基準のすべての試験項目でグレードA評価を有し、コンクリート構造物の維持・改修に大きく貢献できるものです。内装塗料の抗ウイルス分野においては、抗ウイルス・抗菌製品のグループ統一ブランドとして、PROTECTON®(プロテクトン)を2020年9月に立ち上げて以降、安心安全な環境づくりへのトータルソリューションに向けた製品開発を拡大しており、2021年度には、PROTECTON® インテリアウォールVK-500を上市し、合計4つの内装塗料製品のラインナップを整えました。加えて、東京大学との共同研究において、同4製品は新型コロナウイルスおよび変異株(アルファ株)に対して不活化効果があることを確認しました。さらに、教育現場における抗ウイルス・抗菌コーティングによる接触感染リスク低減対策の参考ガイドも共同で策定しました。PROTECTON®の接触表面に対する抗ウイルス・抗菌技術が、手洗い、消毒、換気などに加えて、感染症リスク低減のための新たな手段となり、社会貢献を果たすことができると期待しています。
自動車補修用塗料分野においては、e3(EASY×EXCITING×ECOLOGY = e3(イーキューブ))コンセプトを開発方針とし、次世代型水性塗料「nax e3 WB」シリーズの製品ラインナップ充足を行い高い評価を受けております。また、架装車両などの大面積塗装向けの2液ウレタン樹脂塗料「nax ネオウレタンエコ」も環境配慮型の2液ウレタン樹脂塗料として着実に実績を伸ばしております。
船舶用塗料分野においては、SDGs・ESG視点を経営の中核とし、環境負荷を低減する技術、商品の開発を行っております。昨年上市した船底防汚塗料「FASTAR」は、塗膜表層制御技術により業界初の「親水疎水ナノドメイン構造」を持っており、塗料中に含まれる防汚剤の溶出量を低減しながらも高い防汚性能を発揮できる製品となっており、発売1年目から多くの船舶に採用されております。また、当社が開発する長期防食塗料は、船舶・海洋構造物に要求される国際規格を満たし、資産価値の維持、向上に貢献しています。また施設面においては、自然海水を使用した評価・分析を行っている臨海評価技術センター(岡山県玉野市)が更なる機能・役割の強化を図り、商品開発の中核を担っています。今後も環境を保全し、社会課題の解決に貢献できる商品を生み出してまいります。
ファインケミカル分野においては、1マイクロメートル程度の非常に薄膜でありながら、素材の付加価値を飛躍的に高めるユニークな表面処理剤を開発・提供しています。当社の表面処理剤には、主に塗料と一緒に使用されて高い耐食性や塗膜密着性を付与する塗装前処理剤と、素材に親水性や耐汚染性など様々な機能を付与する機能性コーティング剤があります。
また、カーボンニュートラルとゼロエミッション実現に向けた革新的な技術開発により、皮膜形成工程におけるエネルギー消費抑制と、廃棄物発生量および排水量を大幅に削減できる塗装前処理システムを確立し、自動車・工業用市場を中心に導入を進めています。この環境配慮型塗装前処理システムは、長年のグローバルスタンダードであるリン酸亜鉛処理剤と同等以上の性能を有し、且つREACH規則・SVHC該当物質を含有しない次世代処理として注目を集めています。さらに、自動車EV化に必要なリチウムイオンバッテリー用アルミ包材向けの高接着コーティング剤(サーフコートNRシリーズ)、空調や冷蔵庫などの熱交換効率を高める高機能親水化コーティング剤(サーフアルコートシリーズ)の導入に加え、更なる技術開発により高付加価値をご提供することで、カーボンニュートラル社会の実現へ挑戦しています。
鉄鋼市場においては、新商品となる水性無機亜鉛コーティング剤(サーフコートZNシリーズ)の市場導入を果たし、環境負荷物質の低減、快適な作業環境の提供を実現する事が出来ました。飲料缶市場においては、国内随一の技術をもって、成型加工から塗装前処理工程まで、市場の要求にあった新システムを開発しています。更に潜在的な社会課題解決に向け、生活環境の豊かさを提供する防曇・防汚・滑雪等の機能性コーティング剤の開発・提供を進めています。今後も社会の要求に適合した、高度な機能を有する薄膜コーティングの開発に注力してまいります。
当地域における研究開発費用は5,842百万円であります。

(2)アジア
当地域では、アジアのパートナー企業グループである海外パートナー会社と共同で、自動車用塗料・工業用塗料・汎用塗料・自動車補修用塗料・船舶用塗料・ファインケミカルなどの事業分野を中心に、研究開発活動を行っております。
自動車用塗料分野においては、新たな取組みであるグループ会社間でのグローバルな研究開発活動の一環として、中国、東南アジア各国で現地法人との協業により、環境配慮型水性塗料や塗装工程での消費エネルギー低減を可能とする塗料の開発を進めています。また、東南アジアで需要が高い二輪向け塗料については、現地ニーズに対応した商品開発が現地主体で完了し、すでに供給が進んでおります。
工業用塗料分野においては、海外パートナー会社との連携により、環境配慮型商品を軸に技術融合を積極化しております。VOC(揮発性有機化合物)の含有量を従来型塗料に比べ低減できる水性塗料やハイソリッド塗料など、各国の市場ニーズに適合した商品開発による事業領域の拡大を進めております。
汎用塗料分野においては、分野別に共有技術を明確にして、海外パートナー企業との共同研究を進めているとともに、SDGsを視野に入れた水性塗料の開発、普及に注力しております。

船舶用塗料分野においては、中国(張家港)、韓国(釜山)、シンガポールを生産拠点としています。近年厳しくなる各国の環境規制に対応し、グローバルに調達可能な原料や、適切なローカル原料の選択などを行っています。主要商品を現地生産することにより、船舶用塗料の主要消費地となったアジアへの供給体制を構築してまいりました。今後も、既存製品だけでなく、新製品の導入をいち早く行うことのできる研究開発活動を行ってまいります。
ファインケミカル分野においては、日本で高めた塗装前処理剤や機能性コーティング剤などの表面処理剤を、アジア顧客の様々な要求に適合させた製品開発活動を進めています。日本の高度な製品技術を礎として、アジア各国の拠点において再設計から製造まで一貫して実施することにより、顧客の技術的な要求を満足するとともに、安価かつ短納期で提供する体制の確立を進めています。
当地域における研究開発費用は13,235百万円であります。

(3)オセアニア
当地域では、オーストラリアとニュージーランドを拠点とするDuluxグループが、塗料及び塗料関連事業で研究開発活動を行っております。同社は経営資源を汎用塗料、木材保護塗料、粉末塗料、保護用・防食塗料、自動車補修用塗料及び一般工業用塗料セグメント等に配分しており、また、Selleysブランドの接着剤及び充填剤事業においても研究開発活動を行っております。
汎用塗料事業では、UltraAirシリーズを発売し、新製品開発において持続可能性を主な取り組み課題としております。また、DIY及び業務用ユーザー向けに水性塗料及び低VOC塗料製品の開発を継続しております。同社は、塗料周辺事業の拡大を事業戦略の重要な要素とし、ティルトアップ工法のコンクリート建築及び屋根補修用洗浄剤及び塗装設備の発売に向けた研究活動も実施しております。保護用・防食塗料事業においては、引き続き耐火塗料製品の開発や、重工業セクターのエンドユーザー向けに耐食性塗料製品の開発を行っております。自動車補修用塗料事業においては、日本ペイントとDuluxグループの塗料製品及びカラーシステムの統合に向けた活動を継続しており、また工業用塗料事業においては、引き続きUVコーティングの開発を中心とした活動が中心となります。
Selleysブランドではシーリング材、接着剤、充填剤及び表面処理剤製品を展開しており、Sil-X技術の開発が進行中であり、DIY及びプロジェクト市場向けに、柔軟性に優れ高伸長を実現した高機能の接着剤およびシーリング材を発売しております。Duluxグループは、耐水性などSelleysブランド製品の主な特長を保ちつつ、溶剤系塗料製品に代わるものとして、水性塗料製品や、低VOCの建築用接着剤及び工業用機能性塗料など、低VOC塗料製品の開発に向けた技術開発を行っております。その他、有害性溶剤を含まない塗料剥離剤や研磨時の粉じん発生を減らす充填剤など、ユーザーの安全性やユーザー・エクスペリエンスを向上させた製品開発プロジェクトが進行中です。Selleysブランドでは、2025年までにより持続可能かつリサイクル可能な梱包材料を選択可能とすべく検討を進めております。
当地域における研究開発費用は1,791百万円であります。

(4)米州
当地域では、自動車用塗料・汎用塗料・ファインケミカルなどの事業分野を中心に研究開発活動を行っております。
自動車用塗料分野においては、環境配慮型水性塗料や塗装工程での消費エネルギー低減を可能とする塗料あるいは、自動車の車体軽量化に貢献するプラスチック素材向け塗料の開発、導入が進んでおります。
汎用塗料分野においては、当社グループであるDunn-Edwards Corporationの研究開発部門と協力して、安全・快適を志向した塗装技術及び商品開発活動を進めております。
ファインケミカル分野においては、自動車市場向け塗装前処理剤とアルミニウム箔向け親水化処理剤の導入を進めています。いずれも日本で開発した商品技術を基盤に、現地で製品の最適化と製造を実施し、北米各国とブラジル・アルゼンチンなど南米諸国への拡大が進んでおります。
当地域における研究開発費用は2,044百万円であります。


(5)その他
欧州地域では、汎用塗料・船舶塗料などの事業分野を中心に研究開発活動を行っております。
船舶用塗料分野においては、環境への意識が日々高まっており、国際海事機関IMOは2050年までにCO2排出量を半減(2008年対比)させるという目標を掲げております。この目標をさらに推し進め、事業活動からのCO2排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を宣言している船会社もあり、同社には低摩擦塗料「A-LF-Sea」が採用されており、その性能が高く評価されております。クルーズ会社では防汚剤フリー塗料「アクアテラス」の良好な実績が注目されており、今後も「FASTAR」の推進や、環境に配慮した製品の開発を進めてまいります。
当地域における研究開発費用は494百万円であります。

今後も引き続き、日本及び各国におけるグループ各社の技術開発部門が、最新の技術情報とノウハウを共有して、グローバル市場に向けての商品開発に取り組むとともに、さらなる製造コストの低減、安定した品質の確保に取り組んでまいります。

事業等のリスク株式の総数等


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