有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100OALR (EDINETへの外部リンク)
古河電気工業株式会社 事業等のリスク (2022年3月期)
当社グループの業績、財務状況等は、当社グループが製品販売・サービス提供をしている様々な市場における経済状況の影響を受けます。
当社グループの業績、財務状況等に影響を及ぼす可能性のある重要なリスクには以下のようなものがあります。主にどの視点でリスク認識したかにより、リスク項目は大きく「経営戦略リスク」と「オペレーショナルリスク」に分類しております。各リスクに対する取り組みを進めるにあたり、特に経営戦略リスクについてはそれぞれ単独のリスクではなく、相互に連関したリスクであると認識しております。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
分類 | リスク項目 | リスクの内容 | 主要な取り組み |
経 営 戦 略 リ ス ク | 事業ポートフォリオ | ・事業構成が経済動向や市場環境の変化に対応できないことによる、収益性・成長性の停滞・悪化 ・M&Aや外部との提携後に発生した市場環境の悪化等による、当初の期待水準に満たない収益又は効果 | ・経営会議・取締役会などで定期的に事業ポートフォリオの構成を確認・検証し、必要に応じて見直しを討議・実施 ・事業の縮小・撤退に係る社内基準として投下資本利益率(ROIC)と投下資本付加価値額(FVA)を設定 ・買収・提携の目的明確化と資産内容・リスクの事前把握 ・リスクと収益性を踏まえた適切な投下資本額での買収・提携 ・買収・提携後、早期に投下資本を回収 |
人材・組織 | ・専門性を持つ人材や事業ポートフォリオマネジメントできる人材の不足により、新規事業が創出できない ・企業の持続的な成長の原動力である従業員エンゲージメントが高まらない ・人材獲得や定着、育成が不十分なことによる人材の質的量的な不足 | ・「古河電工グループPeople Vision」に基づき、当社グループの成長を牽引する多様な人材の確保と個々人の成長を支援する環境を整備(採用形態の多様化、各種制度の導入・改定等) ・「働き方改革活動」を通じ、場所や時間に捉われない柔軟で新たなワークスタイルを推進 ・リーダーシップ変革「フルカワセブン」を始めとした人材・組織実行力強化施策の継続・強化 | |
気候変動(カーボンニュートラル) | ・移行リスクとして、各国の温室効果ガス排出目標・政策による炭素税による製造コストや材料調達コストの上昇 ・気候変動対策が不十分であることによるサプライチェーン、製品・サービス・労働市場からの排除 ・気候変動による洪水・渇水リスクの未認識による工場操業の停止 | ・環境ビジョン2050を策定、温室効果ガス削減についてチャレンジ目標ゼロを設定、また、環境目標2030を引き上げ、再設定 ・気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に賛同し、シナリオ分析を実施 ・日光地区の水力発電利用に加え、国内外での太陽光発電の設置と購入電力の再生可能エネルギーへの転換 ・気候変動による洪水・渇水リスクの把握と対応策の策定 | |
地域戦略、国際政治経済 | ・ロシア・ウクライナ情勢の影響拡大に伴う、国家群間での経済制裁の影響によるサプライチェーンの寸断 ・米中貿易摩擦激化によるグローバル分業体制の崩壊 ・世界各地域における政情不安による事業継続不能、経済安全保障規制への対応不備による輸出入不全 | ・サプライチェーンの多重化 ・情報の入手、解析、迅速な対応 ・法令・規則の遵守 ・国際物流の主要ルートにおける潜在リスクの把握 | |
人権 | ・企業としての人権尊重に対する責任を果たせず、潜在的または実際に人権への負の影響が生じることに伴う、サプライチェーン、製品・サービス・労働市場からの排除 | ・国連グローバル・コンパクト10原則、当社グループ人権方針に基づき、人権を尊重した事業活動を推進 ・CSR調達ガイドラインの周知によりサプライチェーン上の人権リスクへの対応を強化 ・当社グループ及び単体の主要取引先向けの人権デューディリジェンス(人権DD)を開始 |
分類 | リスク項目 | リスクの内容 | 主要な取り組み |
経 営 戦 略 リ ス ク | ガバナンス | ・コーポレートガバナンスやグループガバナンスの機能低下による、意思決定の透明性・公平性の低下、事業環境や市場変化に対応した機動的な意思決定の不能 ・当社と上場子会社の少数株主との利益相反リスク | ・取締役・監査役全体として知見・経験を異にする人材の充実、備えるべきスキル等を特定したうえでのスキルマトリクスの開示 ・当社グループのリスクアセスメントの高度化に取り組み、グループガバナンスを強化 ・上場子会社において、取締役会における独立社外取締役の比率を3分の1以上に高め、親会社との取引についてその合理性、公正性等を審査する機関として独立社外取締役が過半数を占める「利益相反管理委員会」を設置 |
災害・感染症等の影響 | ・異常気象によって起きる大型台風による建物被害や洪水による工場操業の停止 ・大規模な地震や津波、火災、感染症大流行等による納入先、調達先のサプライチェーンの寸断 ・従業員等の大規模クラスター発生による事業継続不能 | ・ISO22301による事業継続マネジメント(BCM)を促進 ・事業継続計画の策定、ブラッシュアップ、安否確認システムによる従業員の安全確保 ・耐震性と安定した通信環境が確保された施設におけるデータセンタの設置 ・サプライチェーンの多重化 [新型コロナウイルスへの対応] ・リモート等も活用し顧客との信頼関係を維持強化 ・納入先、調達先の与信調査、製造拠点調査 ・従業員等の在宅勤務、会議、イベントのリモート活用 ・来訪者受入・会食等に関するガイドライン、発熱等体調不良時の管理報告基準等の策定 | |
オ ペ レ 丨 シ ョ ナ ル リ ス ク | 従業員の安全・衛生 | ・労働災害、交通事故、疾病等による、従業員の死亡、就業不可、障害の残存、長期休業、体調不良 | ・安全推進活動の3本柱(安全人間化教育による安全知識の付与と実践、本質安全化活動による設備の安全化推進、安全管理レベルの向上による安全組織の構築)の確実な実践 ・産業医を中心とした産業保健体制を維持し、健診結果のフォローや指導・教育による従業員のヘルスリテラシー向上施策の実施 ・産業保健中期計画に基づく年度ごとの衛生管理指針により、喫煙対策・メタボリック対策・メンタルヘルス対策・身体機能向上施策、熱中症対策の各拠点での展開 ・感染症の予防対策の徹底と、産業医判断による発熱等の体調不良者への対応の徹底 |
品質(製品の欠陥) | ・欠陥の発生等により、将来に予期せぬ損失補償の発生(特に、電力ケーブル、通信ケーブル、自動車用部品等の関連製品で、欠陥の内容により多額な追加コストの発生) | ・お客様の期待する品質の実現を目指し、欠陥の未然防止を図る取り組み、並びに問題解決力を向上する活動を継続 ・品質管理に関するガイドラインを作成し、それに沿って品質マネジメントシステムを強化 ・損害賠償請求に備える為、生産物賠償責任保険や生産物回収費用保険等に加入 | |
新事業の創出 | ・新事業の企画・開発と営業との連携不足による、新事業創出の遅延・中止 | ・新事業創出の専門組織を営業組織に統合し、テーマ分野における顧客との共創を加速 | |
与信管理 | ・取引先の財政状態や資金繰りの悪化に伴い、売掛債権が回収困難となることによる貸倒損失の発生 | ・グループ関係会社内での与信情報共有等により、売掛金回収事故と回収遅延リスク最小化 |
分類 | リスク項目 | リスクの内容 | 主要な取り組み |
オ ペ レ 丨 シ ョ ナ ル リ ス ク | 工事プロジェクトの採算悪化 | ・工事途中での設計変更、建設資材及び労務費の高騰 ・海底ケーブル敷設工事における海洋条件や台風等天候の影響による追加費用の発生 ・重大な瑕疵や事故の発生、それに伴う工期遅れが生じた場合の、修復費用や損害賠償金の支払、長期間に渡る瑕疵補修保証の延長 ・海外工事案件における当該国での法規制の変更や政情不安、災害、疫病の発生、為替レートの変動 ・コンソ-シアムを組成した場合におけるパートナ-企業のプロジェクト遂行能力の不足、分担業務の不履行などが生じた場合、予想外の大幅な費用負担の増大、追加費用の発生 | ・物品・工事それぞれの責任分解点・仕様と保証範囲を厳格に見極め、プロジェクト固有のリスク分析を行い、合理的な条件での契約を締結する活動を強化 ・遂行段階においては、プロジェクトの進捗、採算状況等を適切にモニタリングすることによるリスクの低減 ・建設工事保険等の付保によるリスクヘッジ ・コンソ-シアム組成時の契約における責任関係の明確化、パートナ-所管を含む工事プロジェクト全体の工事進捗管理の徹底 |
原料の調達 | ・自然災害や事故等による供給遅延、供給不足 ・特定の購入先からの供給依存による供給不足、供給停止 | ・購入先の複数化、製造拠点の分散 ・在庫数量の適正化 ・長期契約による安定調達 | |
原料及び燃料価格の変動 | ・需給関係や投機的取引、世界情勢等の変動による、銅・アルミ等の非鉄金属やポリエチレン等合成樹脂及び燃料である重油やLPG、LNG価格の急激な変動 | ・市況を反映した非鉄金属、合成樹脂、燃料価格等の製品販売価格への転嫁 ・先物取引を利用したヘッジ ・生産活動におけるコスト低減や省エネ化 ・複数購買化による価格変動リスクの分散 | |
情報システム、情報セキュリティ | ・サイバー攻撃や不正アクセス等の外的要因や人為的要因等に起因する情報流出による不正使用、システム障害 ・レガシーシステム利用によるセキュリティリスクの増加 | ・情報セキュリティ基本方針のもと、グループ全体へのセキュリティガバナンス強化、教育・支援活動 ・ゼロトラスト視点でのネットワークセキュリティ強化等の対策による情報資産の保護 ・レガシーシステム更新の中期的な取り組み実施 | |
環境汚染・環境規制 | ・製造工程における有害物質の漏洩による環境保全上の問題の発生や、環境関連法令の改正等による新たな設備投資や対策費用の発生 ・土地の使用・処分等に対する制限 ・過去の製造状況等に伴う土壌汚染やアスベスト・PCB等の有害物質の処理について、関連法規制の強化等による追加の対策費用の発生 ・世界各国におけるRoHS指令やREACH規制等の製品含有化学物質に関わる規制に違反した場合の製品リコール、生産・販売中止などの損失・費用の発生 | ・当社グループの生産拠点において、環境マネジメントシステム(ISO14001)にもとづき、事業活動に関連する各種環境関連法規制の順守と保全対策等の徹底 ・製品含有化学物質に関わる規制について、CSR調達ガイドライン、グリーン調達ガイドラインの発行とパートナーへの遵守状況確認、及び規制の強化に対応した定期的な当社グループ内調査の実施 | |
法令違反等(注) | ・事業展開する国内外の法令や規則に関するコンプライアンス違反 ・事業展開する上で適用される国内外の法令改正、規制当局から受ける規制強化や法令解釈の厳格化による、事業制限や費用の増加等 ・法令違反等の事象が生じた場合の、各規制当局からの処分・制裁、取引先等関係者からの損害賠償請求、社会的評価の悪化等 ・禁輸国への輸出による行政処分、外国為替法違反、米中関係悪化による米国及び中国における輸出管理規則・法令の域外適用リスク ・海外拠点での不適切会計や粉飾決算 | ・当社グループ理念、Core Value、CSR行動規範を倫理法令遵守の基本とするコンプライアンス体制を構築。 ・毎年定期的にコンプライアンス自主点検を行うとともに、国内外でコンプライアンスセミナーを開催し、競争法上の規制や贈収賄防止等のテーマについて当社グループ内への教育を実施 ・安全保障貿易管理や関税等に関して、関連する部署への教育及び内部監査の実施。海外輸出管理法令の専門弁護士との提携 ・東南アジアや中国における地域統括会社により、当該地域内の拠点における調達、経理、人事等の業務統括に着手 ・データアナリティクスを活用した財務分析による統制の実施 |
分類 | リスク項目 | リスクの内容 | 主要な取り組み |
オ ペ レ 丨 シ ョ ナ ル リ ス ク | 資産の減損 | ・市況や事業環境の悪化による収益性低下による資産の減損 | ・投資委員会や経営会議等における投資計画の適切性に関する審議 ・投資後の定期的なモニタリング及びフォローアップ |
固定資産への投資 | ・製造設備への投資の意思決定の遅れによる、設備の老朽化による故障や、自動化などの新技術導入遅れによる採算性悪化 | ・設備保全レベルの向上と維持更新計画の適正化 ・革新的な設備・生産技術開発の加速とグループ展開 | |
棚卸資産の評価 | ・新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う生産計画の見直し及び物流網の停滞に対応するため原材料及び製品在庫を積み増したこと、又は需要の急減により生じる過剰在庫の発生 | ・棚卸資産の内容精査と改善活動の実施 ・国際物流の主要ルートにおける潜在リスクの把握 | |
為替・金利・株価変動 | ・輸出入等の国外取引、外貨建て債権・債務の円換算金額の変動 在外連結子会社等の現地通貨建の個別財務諸表の円換算金額の変動 (米ドルに対し1円円高につき年間で約3億円の減益を予想) ・金利上昇による資金調達コストの増加 (当連結会計年度末の有利子負債残高は3,421億円) ・年金資産の時価減少による、会社からの追加的な資金拠出の発生と退職給付費用の増加 | ・先物為替予約等の活用 ・外貨建て取引額のバランス化 ・長期固定金利を中心とした資金調達により、金利上昇による資金調達コストの増加を抑制 ・キャッシュマネジメントシステム(CMS)を通じた資金効率改善や、財務体質の改善方針のもと、有利子負債を削減 ・運用リスク低減を考慮した運用資産のポートフォリオの構築 | |
資金調達 | ・金融環境悪化により、資金調達困難に陥る可能性と資金調達条件の悪化 ・当社の財務状況悪化に伴う与信力低下により、資金調達に制約が発生する可能性と資金調達条件の悪化 | ・多様な資金調達手段の確保と、返済時期の分散化 ・コミットメントラインの設定と一定水準の手元資金の確保 ・資金調達コスト低減とのバランスをとりつつ長期借入割合を増加 ・財務体質の改善 | |
税務コンプライアンス | ・各国の国内及び国際間取引に係る租税制度の変更や移転価格税制などによる税金コスト発生 ・各国の税務当局との見解の相違等による追加の税金コストの発生 | ・税務に関する基本方針を定めることによる税務コンプライアンスに対する意識向上 ・各国における税法の遵守や税制や税務行政の変更への対応策の実行 | |
研究開発 知的財産 | ・技術開発の遅れ、他社新技術による代替製品の台頭 ・研究開発データの改ざんによる訴訟、認証のはく奪、会社、製品の評判低下 ・知的財産における第三者の権利侵害に関する交渉や係争、第三者との不十分な技術契約に伴う紛争により、事業における直接的な損害や機会損失が発生 ・技術の流出により、企業競争力が低下 | ・高い専門性を持つ人材の確保、育成 ・社外との共創により、技術開発の優位性を確保 ・設計開発段階での他社特許調査や他社による権利行使抑制のカウンター特許出願 ・技術資産の保全、知的財産関係の法令順守のための教育 |
(注)当社は、自動車用部品カルテルに関し、ブラジル競争法当局の調査を受けております。また、米国での一連の自動車用部品カルテルによる損害の賠償を求める集団訴訟などにおいて、当社や当社連結子会社がその被告となっております。このほか、自動車メーカーなどの顧客に対して、当社または当社関係会社が民事賠償金を支払う可能性があります。なお、これまで複数の原告・顧客等との間で和解が成立し、上記継続案件の当社決算への潜在的な金額的インパクトは大きくないものと認識しております。今後も、これまでと同様、顧問弁護士とも連携しながら、早期解決、損失の最小化に向けて対応してまいります。また、上記継続案件はいずれも自動車用部品カルテルを含む過去の競争法違反行為に関するものであり、現時点においてはこれらの行為は行われておりません。
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