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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100R4YQ (EDINETへの外部リンク)

有価証券報告書抜粋 三菱電機株式会社 研究開発活動 (2023年3月期)


事業等のリスクメニュー株式の総数等

当社は、サステナビリティの実現に向け、「循環型 デジタル・エンジニアリング企業」としてグループ内外の知見を融合したソリューションの提供を目指し、研究開発を推進します。
事業競争力を生み出すコア技術を強化するとともに、機器・システム・サービスの機能・性能・品質・信頼性を支える基盤技術の深化を図り、ゲームチェンジなど将来に備えた新技術の探索・創出をバランス良く推進します。また、大学など社外研究機関と積極的に連携し、開発加速と価値創出に取り組み、多様化する社会課題の解決に貢献します。
当連結会計年度における三菱電機グループ全体の研究開発費の総額は2,123億円(前連結会計年度比109%)であり、事業セグメントごとの主な研究開発成果は以下のとおりです。

(1) インフラ
交通システム、ネットワークソリューション機器、発電機・電動機などの回転機、脱炭素に貢献する高効率な送変電機器や受配電機器、監視制御システム、電力情報システム、宇宙関連システム、及びこれらを組み合わせたソリューション(E&Fソリューション)の開発を行っています。当該分野における研究開発費は329億円であり、主な成果は以下のとおりです。
① 被災状況把握システム「ヘリサット浸水域把握機能」
河川氾濫等の現場に派遣されたヘリコプターから衛星を中継して送った被災地の映像情報で、浸水域の面積・深さ・水量の計測や段彩図の作成が可能なヘリサット浸水域把握機能を開発しました。大規模な浸水が発生した際に、浸水被害を安全かつ定量的に把握することで、排水ポンプ車の配置計画や派遣など、迅速な救難・復旧活動を支援します。
② 三菱ネットワークカメラ「MELOOK AI」シリーズ
ネットワークカメラ・システムの新製品として、カメラ内部にAIプロセッサーを搭載することでAIによる映像解析をカメラ本体のみで実現した「MELOOK AI (メルック エーアイ)」シリーズを開発しました。映像解析サーバーを使用せずに人物・車両の動きや数、混雑状況等の検知を実現し、監視業務の省力化、システム全体の低コスト化に貢献します。
③ HVDC*1システム
自社製の高性能パワー半導体を用いた小型で低損失な自励式HVDCシステムについて、基本性能検証を完了しました。また、開発力のさらなる強化を図るため、直流遮断器において世界最高レベルの技術を有するスウェーデンScibreak社を買収しました。HVDCシステムにより、太陽光・風力発電等の直流電力を低損失で送電し、再生可能エネルギーのさらなる普及を通じたカーボンニュートラルの実現に貢献します。
④ 宇宙空間において3Dプリンターで人工衛星アンテナを製造する技術
太陽光と紫外線硬化樹脂を利用して宇宙空間でアンテナを製造する技術を開発しました。打上げ時に折りたたんでいたアンテナを宇宙空間で広げる際に必要となっていた構造体が不要となります。小さなロケットで開口の大きなアンテナを実現できるため、人工衛星の軽量化や打ち上げコストの低減に貢献します。

(2) インダストリー・モビリティ
FAシステム、サーボモーターなどの駆動機器、配電制御機器、メカトロ機器、産業用ロボット、電動パワーステアリングなどの自動車用電装品、予防安全(自動運転)システム、ADAS*2などの競争力強化に向けた開発を行っています。当該分野における研究開発費は705億円であり、主な成果は以下のとおりです。
① データサイエンスツール「MELSOFT MaiLab」
専門知識が無くても生産現場のデータを自動で分析・診断できるデータサイエンスツールを開発しました。簡単な操作で、深層学習などのAI技術や統計的手法を取り入れて、熟練者の判断を自動学習することができます。自動学習後の分析・診断の結果を生産現場に適用することで、これまで熟練者の経験に頼ってきた生産現場の改善への取組みを自動化し、さらなる生産性の向上に貢献します。
② ワイヤ・レーザ金属3Dプリンタ「AZ600」
溶接用ワイヤをレーザで溶融し、三次元構造を高品質に造形するワイヤ・レーザ金属3Dプリンタ「AZ600」を開発しました。世界初*3の空間同時5軸制御と加工条件を協調制御するデジタル造形技術により、高品質・高精度な三次元造形を実現しました。また、ニアネットシェイプ*4加工を部品加工に適用し、加工時間短縮による省エネルギー化と廃棄材料の削減の両立を実現し、環境負荷に配慮した、脱炭素時代のモノづくりに貢献します。
なお、本件は2022年2月24日付で公表いたしましたが、主な業績への貢献は当連結会計年度であるため、本欄に記載しています。
③ ADAS制御機能とボディ制御機能を統合したECU*5
ADAS制御機能とボディ制御機能を1つのECUに統合した際の課題である筐体サイズの維持と放熱対策を両立させたADAS-ECUを開発・量産化しました。今後も路車間・車車間通信との連携や車室内センサーの活用等、より高度な自動運転レベルに対応した製品開発を進めることで安全で快適な交通社会の実現に貢献します。

(3) ライフ
昇降機、ビル管理システム、空調機器、調理家電、家事家電、照明機器、電材住設機器などの開発を行っています。当該分野における研究開発費は591億円であり、主な成果は以下のとおりです。
① 三菱エレベーターのリニューアル工事メニュー「Elemotion+[STEP]」
一定期間に連続して行う従来のリニューアル工事とは異なり、段階的な工事を可能にするために、新旧電気系統機器の制御を同時に行うハイブリッド制御盤を開発しました。ビル・マンションのオーナーの個別の事情やニーズ等に合わせて工事契約を複数回に分割することを実現しました。これにより、利用者の建物内の移動の利便性を保ちながら、お客様のさまざまなニーズに応えるリニューアル商品のラインアップを拡充し、より多くのビルの安心・安全・快適な環境の維持・向上に貢献します。
② 「エモコテック*6」を搭載した三菱ルームエアコン霧ヶ峰「Zシリーズ」の開発
バイタルセンサー「エモコアイ*7」を富士通コンポーネント株式会社、株式会社カレアコーポレーションと共同で開発しました。このセンサーは、世界で初めて*8非接触で人の脈波から感情を推定するもので、従来の赤外線センサー「ムーブアイmirA.I.+(ミライプラス)」と組み合わせることにより、ルームエアコン「霧ヶ峰」の新製品では世界で初めて*9気持ちに合わせて空気を整える「エモコテック」を実現しました。これにより、生活者のウェルビーイング実現に貢献します。
③ ボーイング787向け複合材主翼の工程廃材の当社家電部品へのリサイクル利用
三菱重工業株式会社と共同で、ボーイング社の中型ジェット旅客機「787」向け複合材主翼の工程廃材である炭素繊維複合材料を家電部品へ適用するリサイクル技術を開発し、コードレス掃除機「iNSTICK ZUBAQ」シリーズのパイプ部分とハンドル部分へ再利用しました。今後、リサイクル材の有効活用に向けた協業により、家電製品だけでなく、さまざまな用途で再利用を進め、温室効果ガス排出削減とカーボンニュートラル社会の実現に貢献します。

(4) ビジネスプラットフォーム
デジタル変革を牽引する情報技術、様々な事業分野を支える半導体デバイスなどの開発を行っています。当該分野における研究開発費は123億円であり、主な成果は以下のとおりです。
① GHG排出量データ一元管理ソリューション「cocono*10(ココノ)」
企業が各拠点や各製品のGHG排出量を効率的に収集・管理するための基盤として、GHG排出量データ一元管理ソリューション「cocono」を開発しました。GHGプロトコル対応データを収集して専用ダッシュボードで可視化することで、GHG削減に向けた多角的な分析を可能とし、GHG 排出量削減に貢献します。
② 高性能パワー半導体モジュール
脱炭素社会に向けたキーデバイスとして、「高耐電圧4.5kV・定格電流450A HVIGBT*11モジュール Xシリーズ dualタイプ HV100」と「SLIMDIP-Z」シリーズを開発しました。
「高耐電圧4.5kV・定格電流450A HVIGBTモジュール Xシリーズ dualタイプ HV100」は、耐電圧4.5kVにおいて業界最大*12の定格電流450Aを実現し、高耐電圧を必要とする大型産業機器向けの多様なインバーターにおいて、さらなる高出力・高効率化、システムの信頼性向上に貢献します。
また「SLIMDIP-Z」シリーズは、独自の最適化を施したSi半導体チップと放熱性の改善により、従来製品*13比で同パッケージサイズを維持しながら、最大定格電流を30Aに拡大しました。今後、家電製品や産業用モーターのインバーターへの採用により、設計簡素化、小型化、低コスト化に貢献します。
③ 次世代高速光ファイバー通信用デバイス
光トランシーバー*14用の半導体レーザーダイオードチップとして、「200Gbps(112Gbaud*15 PAM4*16)EML*17チップ」を開発しました。EMLチップの高性能化と当社独自の構造により、200Gbpsの高速動作を実現。CWDM*18に対応した4チップを搭載することで800Gbps、波長拡大により8チップ搭載することで1.6Tbpsの通信が可能となり、動画配信サービスの普及などで通信量が爆発的に増加しているデータセンターの高速大容量化に貢献します。

(5) その他・共通(新技術・基盤技術)
社会課題解決、新たな価値の創出・提供に向け、新技術・基盤技術の研究開発を推進しています。当該分野における研究開発費は374億円であり、主な成果は以下のとおりです。
① 学習モデルを自動設計しコンパクト化する「量子機械学習*19技術」
学習モデルを自動設計して最適化することで計算規模をコンパクト化する量子機械学習技術を開発しました。今回開発した量子機械学習技術では、古典機械学習*20と組み合わせて協調的に学習することで、限られた学習データでも計算時間の大幅な短縮が可能となります。また世界で初めて*21、非破壊テラヘルツ*22検査、無線室内モニタリング、圧縮センシング、生体信号処理などの複数の分野で高性能化に寄与することを確認しました。今後、量子機械学習技術の開発を進め、FA、空調、ビルシステム、モビリティなどの幅広い産業分野への活用を目指します。
② 隠れたものをミリメートル精度で可視化する断層イメージング技術
300GHz帯のテラヘルツ波を用いて、一方向から一回の照射により任意の深さで対象物の断層イメージングを行う業界初*23の技術を開発しました。移動する物体の撮像が可能となり、また、スキャン装置の小型化も実現できることから、ウォークスルー型のセキュリティーゲートや、ベルトコンベアなどで流れてくる生産ライン上での非破壊検査など、さまざまな場所への導入が可能となります。今後実用化に向けた研究開発を進め、安心で安全な社会の実現に貢献します。
③ 業界最高クラス*24の高効率電力変換を実現する「DC*25マルチ電圧システム」
DC 750V以下の中低圧直流配電システム向け電力変換器として「DCマルチ電圧システム」を開発しました。パワー半導体素子にSiC*26を適用することで業界最高クラスの電力変換効率を実現しました。従来比*27で電力変換器の電力損失を45%低減するとともに、変換器盤の体積を20%、質量を36%低減できます。また新しい回路方式である「マルチ電圧給電回路」により、設備機器への供給電圧を最適化し、既存の交流配電システムと比較して受配電損失を20%低減できます。設置場所の省スペース化とともに温室効果ガス排出量の削減に貢献します。
④ 「SOPIPM*28」の鉛フリー化技術
モーター駆動に用いられるIPMにおいて、基板実装が容易な表面実装パッケージと焼結銀含有接合材を採用したSOPIPMを開発しました。材料供給・チップ搭載、焼結・硬化の各プロセス条件を適正化し、ダイボンド*29材を鉛フリー化することで信頼性とより高い放熱性を実現し、省エネ社会に貢献します。

*1 High Voltage Direct Currentの略:高電圧直流送電
*2 Advanced Driver Assistance Systemの略:先進運転支援システム
*3 2022年2月24日現在(当社調べ)
*4 最終形状に近い状態に仕上げること
*5 Electronic Control Unitの略:システムを電子回路を用いて制御する装置
*6 Emotion Conditioning Technologyを略した当社造語
*7 Emotion Conditioning Eyeを略した当社造語
*8 2022年9月6日現在、電子機器センサーの分野において(当社調べ)。
*9 2022年11月1日現在、家庭用エアコンにおいて(当社調べ)。
*10 「cocono」は、三菱電機インフォメーションシステムズ㈱の登録商標です
*11 High Voltage Insulated Gate Bipolar Transistor:高耐圧絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ
*12 2023年4月25日現在、耐電圧4.5kVのSi IGBTモジュールにおいて(当社調べ)。
*13 最大定格電流20Aの「SLIMDIP-X」と比較して
*14 電気信号と光信号を相互に変換する電子部品
*15 baud:1秒間の変調回数を表す単位。112Gbaudの場合1秒間に1120億回変調する
*16 4-level pulse-amplitude modulationの略:4値パルス振幅変調。従来の「0」と「1」から成る2値のビット列でなく、4値のパルス信号として伝送する方式
*17 Electro-absorption Modulator integrated Laser diodeの略:電界吸収型光変調器を集積した半導体レーザーダイオード
*18 Coarse Wavelength Division Multiplexingの略:光通信における波長多重化通信技術の一つで、20nm間隔の複数波長の信号を1本の光ファイバーで伝送する方式。今回は1271、1291、1311、1331nmの4波長を採用
*19 量子力学的な現象である「重ね合わせ」の状態を利用することで高度な処理能力を発揮する量子コンピューターを用いて行う機械学習
*20 現在普及しているコンピューター上で動作するように設計された機械学習
*21 2022年12月2日現在(当社調べ)
*22 光と電波の中間の周波数領域にある、0.1~10テラヘルツ近傍の電磁波
*23 2023年3月29日現在(当社調べ)
*24 2022年11月17日現在(当社調べ)
*25 Direct Currentの略:直流
*26 Silicon Carbideの略:炭化ケイ素
*27 当社製の中低圧直流配電システム向け電力変換器と比較した場合
*28 Surface-mount Package Intelligent Power Moduleの略:表面実装パッケージ型インテリジェントパワーモジュール
*29 ダイボンド:分割された素子をリードフレームや多層基板のチップ搭載部分に接着剤を用いて固定するプロセス

事業等のリスク株式の総数等


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