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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100R4BH (EDINETへの外部リンク)

有価証券報告書抜粋 富士電機株式会社 研究開発活動 (2023年3月期)


事業等のリスクメニュー株式の総数等

富士電機は、パワー半導体、パワーエレクトロニクス、計測・制御、冷熱などのコア技術を活用して、創エネルギーからエネルギー安定供給や省エネルギー、オートメーション、モビリティの電動化など、多くの先端的なシステムを手掛けています。
当連結会計年度における富士電機の研究開発費は36,216百万円であり、各部門の研究成果及び研究開発費は次のとおりです。
また、当連結会計年度末において富士電機が保有する国内外の産業財産権の総数は13,178件です。

■パワエレ エネルギー部門
受配電設備の保全計画立案から設備の監視、さらに設備更新計画の立案までを支援する「まるごとスマート保安サービス」の機能拡充に向けて、高圧配電盤、GIS、変圧器などの絶縁不良や局部過熱などの劣化状態を常時監視するデータ収集装置を開発しました。長期稼働に伴う絶縁性能劣化により発生する部分放電を監視するTEV(Transient Earth Voltage:過渡接地電圧)センサと、ブスバーやケーブルの接合部の接触抵抗増加によって発生する局部過熱を監視する温度センサにより、機器の劣化状況の変化をデジタルデータで見える化し、電気設備の点検作業の効率化に貢献します。
変電分野では、冷却用に大豆由来の天然エステル絶縁油(FR3®:Fire Resistance 3rd generation、Cargill,Incorporatedの登録商標)を採用した導油式のFR3®適用変圧器を開発し発売しました。FR3®は、従来の鉱油系絶縁油に比べて生分解性が高く毒性がないことから万が一流出しても環境への影響を低減できます。また、引火点が高く燃えにくいことから防火設備への投資費用及び火災保険費用の削減に貢献します。
電機盤分野では、東南アジアを中心としたグローバル市場向けに、省スペースを実現したスイッチギヤ「VC-V20A-1」を開発し発売しました。電界計算に基づく独自の耐電圧予測技術により絶縁構造を最適化し設置面積を当社従来機種に比べて20%縮小するとともに、短絡事故時に発生する高温・高圧のホットガスを瞬時に冷却する構造を排気部に採用することで建屋外への放出を不要とし、設置場所の自由度が向上しました。
器具分野では、スタイリッシュなデザインに一新した操作表示機器「Φ16コマンドスイッチ」及び「Φ22コマンドスイッチ」シリーズを開発し発売しました。取付面からの突出量の少ないフラッシュマウント品のラインナップを充実させることで、市場のニーズに応えます。
当連結会計年度における当部門の研究開発費は7,516百万円です。

■パワエレ インダストリー部門
スマートファクトリーの実現に向け、システム製品のマザー工場である東京工場で自営の第5世代移動通信システム(以下、ローカル5G)の実証実験を2021年5月に開始し、遮蔽物やノイズの多い機械加工ラインにおける電波の伝搬状況の調査や、工作機械の稼働データの見える化などの実証に取り組んできました。この結果を踏まえ、無線局商用免許(使用周波数:4.8GHz)を2022年1月に取得し、機械加工ラインでの生産活動にローカル5Gの適用を開始し、継続して運用しています。今後は、無線機の設置環境などの実績・知見を活かしながら、異常による工作機械の稼働停止時間の短縮や次工程への不良品流出の防止を目指します。自社工場での適用範囲を広げるとともに、ローカル5Gの特長を活かした製品やエンジニアリング、サービス等のソリューションを創出します。
計測機器・センサ分野では、従来よりも小型で簡単に設置できるクランプオン式の「インテグラル超音波流量計(S-Flow)」を開発し発売しました。検出器と変換器を一体化することによりコンパクトな外形寸法を実現しました。半導体や空調などの分野において、これまで取りつけることが難しかった小口径配管(8A~32A)の流量計測が可能となり、適切な流量管理による半導体製造の歩留まり向上や、空調設備の省エネルギー化に貢献します。
FAコンポーネント分野では、アナリティクス・AI(MSPC)による異常診断機能を搭載した「SPH5000EC系 診断機能付きCPUモジュール」を開発し発売しました。設備の正常時のデータ(診断モデル)と稼動中のデータの差異を解析することで異常の検知や原因分析ができます。また、モーション制御と異常診断は1台のCPUモジュール上で個別に実行するので、モーション制御の速度や精度などに影響を与えることなく機械・装置の異常診断が可能です。
FAシステム分野では、電動車の開発効率向上に貢献する「EV駆動部品性能試験機」を開発しました。EVモータは従来のエンジンと比べて回転数が高いため、高速回転時に振動の小さい試験機が必要となります。新たに開発した試験機は、20,000min-1の高速回転に対応した自社製ダイナモメータの採用と、振動シミュレーションに基づく構造設計により、高速回転時でも振動の小さい安定した試験が可能です。
計測制御システム分野では、国内・海外の中小規模の産業プラント向けに、顧客課題に応じた柔軟なシステム構築と高い信頼性を実現したオートメーション監視制御システム「MICREX-VieW FOCUS Evolution」を開発し発売しました。産業プラントにおける幅広い運用ノウハウを活かしたライブラリを準備し、専門的な知識がなくても簡単・スピーディにシステムが構築できます。また、プラント設備のデータを複数台のオペレータマシンが保持する冗長構成により、万一いずれかが故障してもプラント設備の継続運転とデータの自動復旧ができるため、プラントの安定運転に貢献します。さらに、セキュリティを強化した国際標準の通信規格であるOPC UAを採用しており、お客様の持つ上位系システムとの連携が容易になります。
情報制御システム分野では、AIを活用した先進的な地域エネルギーマネジメントシステム(CEMS:Community Energy Management System)を開発しました。本システムでは、地域内にある医療施設、商業施設、ホテル、マンションなどの各施設のエネルギー需要を統計的機械学習手法を用いて高精度に予測し、その予測に基づいてエネルギー供給側と需要側の両方を自動調整することにより、地域全体のエネルギー利用効率の最大化を実現します。また、EMSパッケージとして販売しているEnergyGATEの省エネ最適化支援機能を拡張しました。AIを用いてエネルギーロスの真因を探索する新機能により最適制御パラメータや改善案の事例を提示することで、顧客のエネルギーコスト削減を支援します。
船舶・港湾分野では、船舶の燃料油に含まれる硫黄分を排気ガスから除去するSOxスクラバの大容量XLサイズを開発し、ラインアップしました。24MWまでのエンジン出力に対応し、大型原油タンカー等の大型船舶の環境規制対応に貢献します。また、SOxスクラバの排水を浄化してスクラバの給水に再利用する排水再生循環システムを開発しました。これを従来の船舶排ガス浄化システムと組み合わせることにより、スクラバからの排水が規制されている一部の沿岸海域でもスクラバによる排ガス浄化を行いながら航行することが可能になります。
放射線機器・システム分野では、環境放射線量を測定する新型モニタリングポストを開発し発売しました。放射線測定器及び計測部の一体化により、従来に比べ部品点数を削減して信頼性を向上することで住民の安全・安心に貢献します。
当連結会計年度における当部門の研究開発費は10,581百万円です。

■半導体部門
産業用モジュールでは、低損失で高温動作を保証した最新の第7世代IGBT技術を適用した製品の系列を拡大しています。電鉄や再生可能エネルギー分野における市場要求に対応するために、第7世代「Xシリーズ」チップを搭載した大容量モジュール「HPnC」(High Power next Core)の系列として1,700Vに加えて、2,300V耐圧品を開発し、サンプル展開を開始しました。さらに、HPnCパッケージに第2世代「SiCトレンチゲートMOSFET」チップを搭載して低損失・高効率化を実現した2,300V、3,300V耐圧品を開発し、サンプル展開を開始しました。高速スイッチングの妨げとなる内部インダクタンスを低減したパッケージの開発により、従来に比べて低損失化と小型・軽量化を実現します。
駆動機能や保護機能を備えた第7世代IGBT-IPM(Intelligent Power Module)の系列化を完了しました。これまでにFA、工作機械、空調機器用途向け650V、1,200V耐圧の中容量製品に加えて、大容量製品として650V/200~450A、1,200V/100~300Aを製品化しました。また、エアコン向けに開発したモールドタイプのIPM製品を産業向け用途に最適化した小容量IPM 650V/10~30Aを新たに系列化しました。モールド構造により高密度実装が可能となり外形寸法が小さくできるため、機器の小型化に貢献します。
車載モジュールでは、xEV(電動車)向け製品の系列拡大として、従来に比べて低損失化した新RC-IGBTチップ及び第4世代冷却器を搭載し小型化を実現した直接水冷型パワーモジュール750V/800A品を開発し量産を開始しました。車載向け製品として600A、800A、1,200A品をラインアップしたことで、様々なモータ出力の電動車に幅広く対応できます。さらに2024年以降のxEVモデル向けに、次世代IGBT及びSiC技術を開発しています。これらの製品を通じて、xEVのさらなる小型軽量化や高効率化に貢献します。
産業用ディスクリート製品では、小型UPS、太陽光PCS、EV充電器などの電源のさらなる省エネに向けて最新の第7世代IGBT技術を適用したディスクリートIGBT「XSシリーズ」としてサブエミッタ端子を有するTO-247-4パッケージの1,200V/75A品を開発し系列に加えました。エミッタの配線インダクタンスにより生じる逆起電力を抑制し、ゲート電圧への影響を抑えることでスイッチング損失が低減し、電源機器の損失低減、高効率化を実現します。サーバや通信基地局などの電源向けに、第2世代SiC-SBDの系列化を図り、650V/6A、8A、10Aに加え、1,200V/20A、40Aの量産を開始しました。従来に比べて順方向電圧VFを低減し、サージ電流耐量の指標であるIFSMを高めたことで、電源機器の高効率化と信頼性向上に貢献します。
IC製品では、75W以上の機器に内蔵される電源向けにLLC電流共振ICを開発しました。位相補償及びレギュレータを内蔵したことにより電源出力電圧のリップル電圧の低減や周辺部品点数の削減による電源の小型化、トータルコストダウンを実現します。
感光体分野では、プロダクションプリンタ用のワイドフォーマット(A0サイズ)有機感光体を開発し、量産を開始しました。アルミニウム基体の高精度加工技術によりワイドフォーマットに対応すると同時に、摩耗耐性に優れた樹脂を採用し膜厚を最適化することで、色ムラの無い画像品質を達成しました。また、オフィス向け高速モノクロプリンタ用の有機感光体を開発し、量産を開始しました。感光ドラムの表面に傷つきにくく汚染耐性に優れた材料を採用するとともに、感光ドラムの形状を最適化して周辺部材との接触圧を均一化することにより、安定した画像品質を実現しました。さらに、家庭や小規模オフィス向け小型カラープリンタ用の有機感光体を開発し、量産を開始しました。感光層の空間を埋める添加剤の量を増やすことで耐ガス性を向上するとともに、電荷発生材料を増量することで少ない光量で感光体の表面電位を下げることができ、長期間にわたり、点状欠陥や色ムラの無い画像品質を実現します。
当連結会計年度における当部門の研究開発費は11,839百万円です。

■発電プラント部門
再生可能エネルギー分野では、地熱発電プラントの発電効率や稼働率の向上に向けて、復水器の高効率化、タービンの汚損抑制や高腐食性蒸気への対策などの技術を開発しています。また、マイクログリッドや風力発電サイト向けの蓄電池システムで要求される停電時の自立運転機能を付加した、大容量の蓄電池型PCS(Power Conditioning System)を開発しています。
ソリューションサービス分野では、既設のプラント向けメンテナンスサービスとして、発電機の部品を取り外さずに、内部の簡易点検ができる発電機検査ロボットを開発しました。これにより点検による稼働停止時間を短縮できます。
当連結会計年度における当部門の研究開発費は2,812百万円です。

■食品流通部門
自販機分野では、省エネ性能を向上させた「サステナ自販機シリーズ」を開発し発売しました。インバータ制御によるコンプレッサの高効率化、庫内構造と断熱材の最適化による侵入熱量の低減などを進めることにより、当社前年度機と比べて年間消費電力量を最大20%削減し、業界最高レベルの省エネを実現しました。また、自社開発のMCU(双方向通信端末)を活用し、売上げや在庫などのデータを遠隔地からリアルタイムで確認することにより、オペレータの作業効率を向上させ、省人・省力化にも貢献します。
また、冷凍自販機「FROZEN STATION Ⅱ」を開発しました。従来機種より商品収容部容積を30%拡大したことで大型商品の販売が可能になりました。また、商品展示のためのディスプレーを明るくし視認性が向上しました。
中国・東南アジア向けに、国内で流通していない長身のペットボトル商品を販売するため、新たな販売機構を搭載した自販機を開発し発売しました。この販売機構は、商品の補充しやすさの向上、収容数の増加などの顧客の要望にも対応しています。また、東南アジアの特定顧客向けに、21インチ液晶ディスプレーを搭載し、スマートフォンによりキャッシュレスでQRコード決済ができる大型グラスフロント自販機を開発し発売しました。利便性だけでなく、国内で販売している自動販売機の技術を活用し、商品温度の均一性や自動販売機本体の信頼性も向上させています。
店舗分野では、地球温暖化係数の低い冷媒の採用により環境負荷を低減しながら、省エネルギー性を向上した冷凍機を開発しました。この冷凍機を内蔵した冷凍・冷蔵ショーケースのラインアップを拡大しています。また、冷凍・冷蔵ショーケースの遠隔監視システムを新たに開発しました。クラウドサーバに蓄積した稼働データの分析により故障の予兆を検知できます。該当箇所を事前にメンテナンスすることで、故障による商品販売機会の損失を削減します。
当連結会計年度における当部門の研究開発費は3,411百万円です。

■新技術・基盤技術部門
製造現場から様々なデータを収集し、クラウドシステムで製品の品質診断や設備の異常兆候検知などを行うIoT(Internet of Things)の活用が進展しています。IoT活用の更なる拡大を図るため、現場に設置するエッジデバイスとクラウドシステム間の通信量の削減や応答の高速化を狙い、エッジデバイス側で最適制御やAIなどの複雑なデータ処理を実行するための要素技術を開発し、新たなエッジデバイスの製品化に移行しました。自動販売機や、店舗内機器の消費エネルギー管理用コントローラへの実装に向けた検討を進めています。
脱炭素化に向けて、太陽光発電や風力発電など、再生可能エネルギーの導入が拡大しています。再生可能エネルギーのように、出力が変動する発電システムが大量導入されると、電力系統の電圧や周波数が不安定になる恐れがあります。この問題を解消するため、再生可能エネルギー用PCSに付加して系統を安定化させるための電圧・周波数調整などのスマートインバータ機能、及びPCSが多数台接続された電力系統を高速に監視制御する技術を開発しています。模擬系統によるスマートインバータ機能の検証を完了し、製品化に向けて開発を進めています。
環境負荷を低減するため、地球温暖化係数が大きいSF6ガスを使用しないガス絶縁開閉装置(GIS)の実現に向けた開発に取り組んでいます。絶縁性能が優れたSF6ガスを使用せずに代替ガスで同一の遮断性能を得るためには装置寸法が大きくなります。そこで、絶縁上重要な絶縁スペーサの誘電率分布を最適に制御して系全体の絶縁性能を高めることで装置を小型化する誘電率傾斜技術を開発し、製品化を進めています。
SiCデバイスの性能を向上させるため、デバイス特性を劣化させる欠陥の発生や抑制メカニズム解明に取り組んでいます。文部科学省の「スーパーコンピュータ「富岳」成果創出プログラム」に参画し、これまで困難だった窒化ガスプロセスで発生する結晶界面の欠陥の解析を、原子数が従来比30倍規模の第一原理計算により実現し、プロセスの改善提案が可能となりました。今後、更に計算で扱うガスの種類を増やして、結晶の深さ方向の欠陥解析を進めます。
カーボンニュートラルの実現に向けて、工場のコージェネレーションシステムや船舶エンジンなどに適用できる小規模なCO2分離回収が求められており、膜分離方式によるCO2分離回収技術とともに、CO2を効率良く分離するために排ガス中に含まれる粒子状物質(PM)などの介在物を除去する前処理技術の開発に取り組んでいます。また、将来の水素社会実現へ貢献する技術として、AEM(Anion Exchange Membrane)型水電解水素生成技術の研究開発を開始しました。AEM型は主流となっているPEM(Polymer Electrolyte Membrane)型と比較して、水素製造コストの大幅な削減が期待されており、性能向上などの技術課題に対する取り組みを進めています。

■その他部門
当連結会計年度における当部門の研究開発費は54百万円です。


事業等のリスク株式の総数等


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