有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100R7AV (EDINETへの外部リンク)
九州電力株式会社 事業等のリスク (2023年3月期)
当社グループ(当社及び連結子会社)の経営成績、財務状況等に重要な影響を与える可能性があると経営者が認識している主要なリスクは、以下のとおりである。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものである。
(1) 競争環境等の変化
① 国内電気事業
当社グループは、発電・販売事業及び送配電事業を行っており、2022年度連結売上の大部分を占めている。
発電・販売事業については、気温・気候の変化、経済・景気動向、カーボンニュートラルへ向けた電化や省エネの進展、競合他社との競争状況の変化や燃料市場・電力取引市場の状況など外部環境変化により、総販売電力量や販売価格が大きく変動した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。
なお、2022年度の当社グループの総販売電力量は960億kWhで前年度に比べ1.3%減となっている。
かかるリスクに対し、当社グループでは、原子力発電を最大限活用することなどにより供給量の確保や原価の低減に取り組んでいる。また、魅力ある料金プランやサービスを提供し、全社一丸となった営業活動の強化などにより国内電気事業の収益減少リスクの低減に取り組んでいる。
② 海外事業
当社グループは、これまで国内外の電気事業で培ってきた技術やノウハウを活用し、収益拡大が期待できる成長分野として、発電や送電などの海外事業を行っている。2023年3月末現在の海外事業における持分出力は284万kWで、2030年度までに500万kWに拡大することを目標としている。
海外事業には、カントリーリスクの顕在化、物価・金利・為替の変動、環境・エネルギー政策の見直しなど特有のリスクがある。また近年は、脱炭素化の流れの中、再生可能エネルギー、送配電、デジタル化などによる新たなビジネスやイノベーションなど事業機会が多様化しており、同時にリスクも多様化している。このため当初想定のリターンが得られず、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。
かかるリスクに対し、当社グループは、案件ごとの管理体制の整備やモニタリングを実施し、リスクの早期把握や低減などのリスクマネジメントを行っている。また、案件ごとの収益性やリスクの評価を定期的に行い、事業ポートフォリオの最適化や収益向上を図っている。
③ その他エネルギーサービス事業
当社グループは、電気設備の建設・保守などの電力の安定供給に資する事業、ガス・LNG販売事業、石炭販売事業や再生可能エネルギー事業に取り組んでいる。
他事業者との競争、燃料国際市況の変動、再生可能エネルギーを巡る制度変更などの外部環境変化が生じた場合、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。
かかるリスクに対し、当社グループでは、効率化によるコスト削減及び新たな技術への取組みにより、お客さまニーズに応じたエネルギーサービスを提供し、収益の向上を図るとともに、再生可能エネルギーを取り巻く事業環境変化を的確に捉えた開発を推進している。また、ガス・LNG販売事業のうち燃料上流権益については、案件ごとに収益性評価やリスク評価を行っている。
④ ICTサービス事業、都市開発事業、新規領域の事業
当社グループは、エネルギーサービス事業以外に、当社グループの強みを活かした成長事業として、ICTサービス事業、都市開発事業を展開している。
これらの事業は、社会ニーズの変化、技術の進展・普及、他社との競争激化、物価上昇など、事業環境の変化により、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。
また、新たな収益源を生み出す観点から、新規領域を含めたイノベーションにも取り組んでいるが、既存事業領域と異なるリスクを有しており、顕在化した場合は、投資額に見合うリターンを得られず、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。
かかるリスクに対し、当社グループでは案件ごとに、収益性評価やリスク評価などを行っている。
(2) 原子力発電を取り巻く状況
① 原子力の安定稼働
当社グループは、原子力発電をGHG排出抑制面やエネルギーセキュリティ面などで総合的に優れた電源であると考えており、国の新規制基準を遵守することに加え、更なる安全性・信頼性向上への取組みを自主的かつ継続的に進めているなど、安全の確保を大前提に、原子力を最大限活用することとしている。
しかしながら、法令・基準などの変更により原子力発電所の稼働が制約される場合や原子力発電所に係る訴訟の結果によっては、原子力発電所の運転停止を余儀なくされ、原子力より割高である代替電源費用の発生や設備投資の増加など当社グループの業績に大きな影響を与える可能性がある。
かかるリスクに対し当社グループは、法令・基準などの変更については、国の審査に真摯かつ丁寧に対応するとともに、追加の安全対策が必要な場合は着実に工事を進めていく。また、訴訟においては、当社グループの主張を十分に尽くし、原子力発電所の安全性などについてご理解いただけるよう努めている。
② 原子燃料サイクル・原子力バックエンド事業
当社グループは、原子燃料サイクル事業の実施主体である日本原燃株式会社に対して、2023年3月末時点で780億円の保証債務を保有しており、日本原燃株式会社の財務状態が悪化した場合、保証の履行を債権者より求められる可能性がある。
かかるリスクに対し、当社グループでは日本原燃株式会社の再処理事業等の早期竣工及びその後の安定稼働に向けて、応援要員の派遣等の支援を行っている。
また、超長期の事業である原子力施設の廃止措置や使用済燃料の再処理・処分などの原子力バックエンド事業等の費用は、今後の制度見直しや将来費用の見積額の変更などによって変動することから、当社グループの業績に影響を与える可能性はあるが、現時点において、当社グループは、国の制度措置等に基づき、必要な費用を計上・拠出していることから、これらのリスクは一定程度低減されている。
上記の費用のうち、当社が実施主体である原子力施設の廃止措置に係る費用については、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」に規定された特定原子力発電施設の廃止措置について資産除去債務を計上するとともに、これに対応する費用は「原子力発電施設解体引当金に関する省令」等の規定に基づき、毎年度、原子力発電施設解体引当金等取扱要領に定められた算式(解体に伴って発生する廃棄物の種類及び物量から解体に要する費用を見積もる方法)により算定した原子力発電施設解体費の総見積額を発電設備の見込運転期間にわたり、定額法により費用計上している。ただし、エネルギー政策の変更等に伴って原子炉を廃止する場合については、特定原子力発電施設の廃止日の属する月から起算して10年が経過する月までの期間にわたり、定額法により費用計上している。また、使用済燃料再処理機構や原子力発電環境整備機構が実施主体である使用済燃料の再処理・処分などに係る費用については、「原子力発電における使用済燃料の再処理等のための積立金の積立て及び管理に関する法律の一部を改正する法律」及び「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」に規定する拠出金を、原子力発電所の運転に伴い発生する使用済燃料や特定放射性廃棄物等の量に応じて費用計上している。
(3) 市場価格の変動
① 燃料価格の変動
当社グループの発電事業における主要な燃料であるLNGや石炭の調達価格は、燃料調達先の設備・操業トラブル、自然災害や政治・経済動向などによる燃料国際市況の変動及び外国為替相場の変動影響を受けることがあり、調達価格の変動が当社グループの業績に影響を与える可能性がある。
特にLNGについては、長期間貯蔵することが困難であり貯蔵量が限られることから、供給元の情勢などによるLNG供給の減少、電力需要の急伸及び発電所の計画外停止などにより、電力の安定供給のためLNGを緊急に調達した場合、調達価格によっては、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。
かかるリスクに対し、当社グループでは、燃料の調達先の分散化や燃料トレーディングなどによる燃料調整機能と電力の自社需給関連機能を一体的に運用することで調整機能を高め、調達の安定性・柔軟性の確保を行っている。
また、燃料の購入などに伴う外貨建債務などについては、必要に応じて為替予約取引や燃料価格スワップ取引などを利用することにより、為替変動リスク及び燃料価格変動リスクを低減している。
なお、燃料価格や外国為替相場の変動を電気料金に反映させる「燃料費調整制度」により、当社グループの業績への影響は緩和されている。ただし、反映までの期ずれがあることや、経過措置料金に反映できる上限があるなどの理由により緩和は一定程度となる。
② 金利の変動
当社グループは、国内電気事業に必要な発電設備、送変電設備及び配電設備といった多数の設備を保有している。これら設備の建設や更新工事などを計画的に進めていくために多額の資金が必要である。
当社グループは、これらの必要資金に充当するため自己資金のほか金融機関からの借入及び社債の発行により資金調達しており、当社グループの有利子負債残高は、2023年3月末時点で3兆9,915億円(総資産の71%に相当)となっている。このため、今後の市場金利の変動が、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。
ただし、有利子負債残高の96%が社債や長期借入金であり、その大部分を固定金利で調達していることなどにより、金利の変動による当社グループへの影響を限定化している。
③ 卸電力取引所における取引価格の変動
当社グループでは、低廉で安定した電気をお客さまにお届けするため、自社電源の運用や相対取引の他に、卸電力取引所を活用して電源調達を行っている。また、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」による電源調達を行っており、調達価格は卸電力取引所の取引価格と連動する。
卸電力取引所の取引価格は、売り入札(供給)と買い入札(需要)のバランスによって決定するため、猛暑・厳冬などによる電力需要の急伸又は発電所の計画外停止・電力系統の事故などによる供給力の低下により取引価格が急騰した場合は、購入電力料が増加し、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。
かかるリスクに対し、当社グループでは、燃料価格や電力需給の動向に関する想定に基づき、電源調達手段を組み合わせた電源ポートフォリオの最適化やデリバティブ取引の活用などを行っている。
(4) 電気事業関係の制度変更等
政府は、「第6次エネルギー基本計画」や「GX実現に向けた基本方針」のもと、エネルギーの安定供給をはじめ、電力市場の競争の深化やカーボンニュートラルの実現などの公益的課題の達成に向け、エネルギー政策に関する制度設計や市場整備を進めている。
上記を含めた電気事業を取り巻く制度の変更などに伴い、規制や制度に適合するための設備投資や費用などの増加、当社グループが保有する発電設備の稼働率の低下や各種電力取引市場からの収益変動などが発生した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。
かかるリスクに対し、迅速かつ的確に対応できるよう、エネルギー政策、電気事業に係る制度、環境規制などに関する情報を積極的に収集の上、関係箇所で連携し、戦略や具体的対応の検討を実施している。
(5) 気候変動に関する取組み
気候変動への関心が高まる中、世界的に低・脱炭素社会実現に向けた取組みが進んでおり、政府はGX(グリーントランスフォーメーション)を通じて脱炭素、エネルギーの安定供給、経済成長を同時に実現すべく、国内でも「GX実現に向けた基本方針」に基づいた規制の見直し・強化が予想される。
特に、カーボンプライシングの導入や化石燃料の規制が実施された場合、発電設備などの電力供給設備に対する投資、費用が増大するなど、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。
また、消費者や社会からの脱炭素ニーズの高まりや環境技術の進展に適応できない場合、事業の停滞など当社グループの業績に影響を与える可能性がある。
さらに、金融・資本市場でも、ESG(環境・社会・ガバナンス)情報を重視する傾向が強まっており、低・脱炭素化への取組みが不十分、あるいは気候変動に関する情報開示に的確に対応していないなどと判断された場合、株主・投資家から信頼・評価を失い、株価低迷や資金調達の困難化など、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。
かかるリスクに対応するため、当社グループは、「九電グループ カーボンニュートラルビジョン2050」を策定し、エネルギー供給面(電源の低・脱炭素化)と需要面(電化の推進)の両面から低・脱炭素化に取り組み、日本の脱炭素をリードする企業グループ及び「カーボンマイナス」の実現を目指す。
この具現化に向けて、「カーボンニュートラルの実現に向けたアクションプラン」を策定し、2030年の経営目標(環境目標)や、その達成に向けたKPI(重要業績評価指標)を設定した。なお、温室効果ガス削減目標について国内大手エネルギー事業者で初めて「Science Based Targets(SBT)イニシアチブ」から認定を取得した。
また、当社グループは、気候変動対応を含めたESGの取組みを推進するため、「サステナビリティ推進委員会」、担当役員及び専任部署を設置し、情報開示の充実やステークホルダーとの対話を推進している。
(6) 設備事故・故障、システム障害
① 自然災害
当社グループは、お客さまの生活や社会経済活動に欠かせない電力の安定供給に必要な発電設備や送変電設備、配電設備などの電力供給設備をはじめ、電気事業の遂行に必要となる多数の設備を広範囲に設置している。
地震・津波・台風・集中豪雨など自然災害が発生した場合には、設備・サプライチェーンが被害を受け、広範囲・長期間の停電により社会経済活動に重大な影響を及ぼし、社会的信用が低下する可能性があるとともに、収益の減少や多額の復旧費用など、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。
かかるリスクに対し、当社グループでは、設備の耐力強化や復旧資機材の事前確保などを進めるとともに、自治体や自衛隊などの関係機関との協力体制構築により、災害予防、災害応急対策及び災害復旧に取り組んでいる。
また、九州電力送配電株式会社は一般送配電事業者10社連名による「災害時連携計画」を作成し、大規模災害が発生した場合には、他社からの応援受け入れや関係機関との連携などによる迅速な復旧対応が可能な体制を構築している。
なお、原子力施設については、自然災害に対する国の新規制基準の対応に加え、国内外の最新知見などを活かしながら継続的に自主的対策を実施することで、自然災害に対する強化を図っている。
② 設備の高経年化等
当社グループは九州を中心に発電設備、送変電設備、配電設備などの多数の電力供給設備や情報通信設備などを保有している。
大規模発電所や超高圧送電線などで、経年劣化により故障発生確率が上昇し、重大な設備事故が発生した場合、当社グループの経済損失が発生するとともに、広範囲・長期間の停電により社会経済活動に重大な影響を及ぼし、社会的信用が低下する可能性がある。
かかるリスクに対し、当社グループでは設備巡視による危険箇所の事前把握や設備状態に応じたきめ細やかなメンテナンスに取り組んでいる。また、経年の進んだ電力供給設備に対する重点的な点検・補修に加え、計画的な高経年設備の更新に取り組んでいる。さらに、ドローン、画像解析、AIなどの新技術を活用した設備保全の高度化・効率化にも取り組んでいる。
③ システム障害
当社グループでは、お客さま情報や社内情報などを扱う情報処理システムを開発・運用している。また、成長事業として、社外に対してICTサービスを提供している。
このため、これら情報処理システムの動作不具合や停止などのトラブルにより、情報漏洩、業務の停滞及びICTサービス支障が発生した場合、事後対応費用や信頼の失墜など当社グループの業績に影響を与える可能性がある。
かかるリスクに対し、当社グループでは24時間365日のシステム運用監視や計画的な設備更新など、システム障害の未然防止に取り組む一方、システム障害が発生した場合の速やかな初動・復旧体制の整備などを行い、万一の事態に備えている。
④ サイバー攻撃
当社グループに対するサイバー攻撃は年々増加しており、攻撃方法も巧妙かつ悪質化するなど、その脅威はますます増大している。
当社グループでは国内電気事業、ICTサービス事業など、幅広く事業を展開しており、サイバー攻撃により、機密性の高い内部情報や個人情報が流出する可能性がある。
また、海外では電力供給設備に対するサイバー攻撃による停電が発生しており、当社グループの電力供給設備がサイバー攻撃を受けた場合、電力の供給が停止する可能性がある。
いずれの場合にも、当社グループの信頼が失墜するとともに、事後対応費用が発生し、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。
かかるリスクに対し、当社グループではサイバーセキュリティ対策室を中心に、多層防御として、組織的・人的・物理的・技術的な対策を講じており、当社グループ全体の情報セキュリティレベルの維持向上を図っている。
(7) オペレーショナルリスク
① 業務上の不備
当社グループは、国内電気事業をはじめ、幅広く事業を展開しており、従業員の過失などによる業務上の不備が生じた場合、お客さまへのサービス提供に支障が出るのみならず社会活動に大きな影響を及ぼす可能性がある。
特に、国内電気事業においては、電力システム改革や再生可能エネルギーの普及などにより、従来と比べ需給運用が複雑化している。作業ミスなどにより、感電など人の死傷や広範囲・長期間の停電などが発生した場合、当社グループの信頼が失墜するとともに、事後対応費用など当社グループの業績に影響を与える可能性がある。
かかるリスクに対し、当社グループでは電力供給設備の作業時のミス未然防止に向けて、綿密な事前の計画、作業管理体制を整備するとともに、作業の教育・訓練を実施している。
また、労働災害・事故の防止にあたっては、「九電グループ安全行動憲章」に基づき、事業に関わるすべての人たちの安全と安心の永続的な確保に向け、重大災害の防止対策や災害の未然防止に向けた先取り型の安全諸活動にグループ一体となって取り組んでいる。この取組みにあたっては、社長を委員長とする「九州電力安全推進委員会」を中心とした安全推進体制を整備し、安全を最優先する風土・文化の醸成に努めている。
② 法令違反等
当社グループは、国内電気事業をはじめ、幅広く事業を展開しており、関連する法令や規制は多岐にわたる。また海外での事業運営においては、当該国の法的規制の適用を受けている。
当社グループでは、これらの様々な法的規制の遵守に努めているが、各種法令や電力システム改革に伴う行為規制などに対する理解が不十分または法令などが変更された際の対応が適切でなく、法令などに違反したと判定された場合や、従業員による個人的な不正行為などを含めて社会的要請に反した場合は、行政指導や行政処分、信頼の失墜、事後対応費用など、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。
かかるリスクに対し、当社では法令理解の浸透を通じた法的規制の遵守はもとより、社会的規範や企業倫理を守ることをコンプライアンス経営と定め、社長を委員長とするコンプライアンス委員会のもと、業務執行機関の長を「コンプライアンス責任者」として、活動計画を策定・実践するとともに、社内外に相談窓口を設置するなどの体制を整備し、コンプライアンスを推進している。
また、グループ会社に対しては、コンプライアンス情報の共有や意見交換などを行い、グループ会社と一体となった取組みを推進しているほか、グループ会社の指導・支援に関する管理部門の役割を明確化するなど、当社グループ全体での推進体制の強化を図っている。
なお、当社及び九電みらいエナジー株式会社は、公正取引委員会から独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)に違反する行為があったとして、2023年3月30日に排除措置命令及び課徴金納付命令を受けた。これに伴い、今後の課徴金納付の可能性に備えるため、当該課徴金納付命令に基づく金額27億円を、独禁法関連損失引当金繰入額として特別損失に計上している。
また、九州電力送配電株式会社及び当社において、行為規制にかかる情報漏洩及びその情報の不正閲覧があり、2023年4月17日、両社は経済産業大臣から電気事業法に基づく業務改善命令を受けた。
これらの事案の発生を受け、再発防止及びコンプライアンスを最優先にした事業活動をより一層徹底していく。
③ 人権侵害
従業員、お客さま及びサプライチェーンにおいて、差別、製品・サービスによる事故、環境汚染・破壊、地域住民の権利の不適切な制限及びハラスメントといった人権侵害が起きた場合、社会的信用の低下とともに取引停止・調達困難・訴訟などによる業務支障や費用増加の可能性がある。
かかるリスクに対し、当社グループでは、「九電グループ人権方針」を策定し、教育・研修の実施やサプライチェーンの管理など人権尊重に係る取組みを行っている。
④ 環境汚染・破壊
環境負荷を低減する取組みが不十分な場合や、サプライチェーンにおいて当社グループまたは取引先が環境汚染などを引き起こした場合、社会的信用の低下とともに取引停止・調達困難・訴訟などによる業務支障や費用増加の可能性がある。
かかるリスクに対し、当社グループでは、環境アセスメントによる生物多様性の保全措置の実施、産業廃棄物の適正管理・処理の実施、資源循環の推進、グリーン調達の推進など、事業活動に伴う環境負荷及び環境リスクの低減に取り組んでいる。
⑤ 人財・スキル不足
デジタル化の進展に伴う当社の事業運営に求められる能力・スキルの高度化や、国内の労働力人口の減少が進む中、継続的に質の高い商品、サービスをお客さまに提供するためには、優秀な人財の確保やそのスキル向上が重要である。
当社グループの国内電気事業は、電力供給設備の運用に技術・ノウハウの継承が必要であり、必要な人財の確保・育成ができなかった場合には、業務品質の低下や生産性の低下など当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。
また、成長事業における新たな事業創出などにより、収益を生み出せる人財を確保・育成していく必要があり、そうした人財の確保・育成ができなかった場合、今後の持続的な成長を妨げ、業績に影響を及ぼす可能性がある。
かかるリスクに対し、当社は毎年、中長期的な想定に基づく採用計画を策定し、新卒採用に加えて、高度・専門人財などの中途採用も実施することで新たな事業領域を含め必要な人財の確保に努めている。また、「九電グループ経営ビジョン2030」の実現に向け、特に必要となる行動を整理し、それらを職場で実践することで、成長につなげていくことができる人財の育成に取り組んでおり、専門力向上、技術継承、イノベーション創出、DXなどに資する様々な教育・研修を実施している。
更に、当社グループの総合力強化を目指し、グループ合同研修の実施や当社とグループ会社間の人財交流を行うなど、グループ全体の人財育成にも取り組んでいる。
そのほかにも、ダイバーシティ推進の観点から、女性、高年齢者、障がい者など、属性のみならず、多様な知や経験を有する人財が活躍できる職場環境を整備するとともに、人事処遇制度を見直し、多様な人財が更なる働きがいを持って仕事に取組める環境づくりを進めている。
(8) その他
① 固定資産の減損
当社グループは多数の設備を保有しており、その資産及び資産グループが生み出す将来キャッシュ・フローは、当社グループが置かれる経営環境の変化の影響を受ける。
このため、総販売電力量の減少、販売価格の低下、原子力発電所の計画外停止、発電設備の稼働率低下など、様々なリスクの顕在化によって収益性が低下した結果、将来キャッシュ・フローが減少し投資額の回収が見込めなくなった場合は、固定資産の減損により、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。
② 繰延税金資産の取崩し
当社グループでは、主に当社において、過年度の原子力発電所停止の長期化や当年度のロシア・ウクライナ情勢などに伴う燃料価格・卸電力市場価格の上昇などを原因として税務上の繰越欠損金が生じているが、これに係る繰延税金資産については、将来の課税所得の見積りに基づいて、その回収可能性を判断している。
このため、総販売電力量の減少、販売価格の低下、原子力発電所の計画外停止など、課税所得に重要な影響を及ぼすリスクが顕在化し、将来の課税所得の悪化が見込まれることになった場合は、繰延税金資産の取崩しにより、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。
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