有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100R0RE (EDINETへの外部リンク)
大成建設株式会社 研究開発活動 (2023年3月期)
当社グループは、中期経営計画のグループ基盤整備計画:技術開発において、「オープンイノベーションの活用を通じて、環境・社会課題の解決に向けた技術開発を推進する」ことを重点課題として特定し、「経済と環境の好循環により成長が期待される産業分野に貢献する技術開発」及び「競争優位性のある技術開発」を目指し、経営資源を戦略的に投入しております。
具体的には「洋上風力産業」、「物流・人流・土木インフラ産業」、「カーボンリサイクル産業」、「住宅・建築物産業/次世代型太陽光産業」、「ライフスタイル関連産業」、「水素産業」、「原子力産業」、「食料・農林水産業」、「資源循環関連産業」の各分野において新技術の開発や効率化、低コスト化を推進しております。
また、「大型プロジェクト対応の特殊技術」、「高付加価値化・高品質化に資する技術」の開発も進めております。
当連結会計年度における研究開発費は168億円であります。このうち、主な研究開発事例とその成果は次のとおりであります。
(土木事業)
(1) 協調運転制御システム「T-iCraft®」を南摩ダム本体建設工事に導入
複数の自動運転建設機械の協調運転を制御するシステム「T-iCraft®」を、(独行)水資源機構発注の「南摩ダム本体建設工事」(栃木県鹿沼市)に導入しました。今回の導入では、大型ブルドーザ2台、振動ローラ2台の自動建機を用いて、「敷均し」、「転圧」の施工を制御し、ダム堤体盛り立てに係る一連の作業の協調運転を実用化しました。今後、本工事において、自動ダンプとの連携を実証するとともに、現場適用におけるユーザビリティ向上を目指すなど本システムの機能拡張を図り、施工現場における更なるDX戦略を推進してまいります。(2) コンクリート吹付け作業の遠隔操作技術「T-iROBO®Remote Shotcreting」の本格運用を開始
2019年に開発した山岳トンネル工事に使用しているコンクリート吹付け作業の遠隔操作技術「T-iROBO®Remote Shotcreting」に改良を加え、本格運用を開始しました。吹付け位置に複数のカメラを増設することで、操作者は切羽から十分離れた操作席から切羽近くに居るような臨場感を持ちながら作業を行うことが可能となります。従来の山岳トンネル工事におけるコンクリート吹付作業では、切羽近傍で作業する操作者の安全性や粉塵等による健康被害が懸念されておりますが、この改良で、より安全で効率的な作業環境を実現することができます。今後、本技術を全国の山岳トンネル工事に展開し、吹付作業における更なる安全性向上と作業環境改善を進め、生産性の向上に努めてまいります。また、今後の更なる技術開発により省力化・遠隔化を図り、将来的にはトンネル掘削サイクル全体の完全自動化を目指してまいります。
(3) 遠隔操縦式水中作業機「T-iROBO®UW」の硬岩掘削用アタッチメントを開発
ダムのリニューアル工事に適用実績のある遠隔操縦式水中作業機「T-iROBO®UW」に装着する硬岩掘削用アタッチメントを新たに開発しました。今回開発した、連孔スロット穿孔アタッチメント「T-A Slot Driller®」と穿孔・割岩一体型アタッチメント「T-A Rock Splitter®」の2機種は、水中での硬岩掘削が可能であり、また、既存の機種と併用することで、軟質な堆積土から硬質な岩盤まで様々な水中掘削を遠隔操縦により施工可能となります。これにより、従来は仮設桟橋から重装備となる掘削装置にて実施していた作業を軽減又は排除でき、工事の安全性と作業効率の向上が図られます。今後、ダムのリニューアルをはじめとする各種水中掘削工事において、本作業機を提案・活用し、工期短縮、コスト縮減及び作業の安全性確保を推進してまいります。
(4) 環境DNA分析技術を用いて希少両生類の水中生息状況を把握
水や土壌に含まれる生物由来(生物の破片、排泄物等)のDNA分析技術を用いて、従来の目視調査では困難であった、建設現場周辺の保全対象地域に生息する希少両生類(サンショウウオ類)の産卵期以降の水中での生息状況を把握することに成功しました。今後、より多くの生物に対し、本技術の適用可能性について検証を進めるとともに、建設工事における希少生物が生息する地域のより確実な把握と保全を目指して本技術の適用を積極的に提案し、自然と共生する社会の構築により持続可能な環境配慮型社会の実現に貢献してまいります。
(5) 国土交通省の「宇宙無人建設革新技術開発推進事業」における「月面適応のためのSLAM自動運転技術の開発」の採択
SLAM(Simultaneous Localization And Mapping)技術を活用し、当社が独自に開発した自己位置推定技術「T-iDraw Map®」の更なる高度化に向けた技術開発を進めており、国土交通省の「宇宙無人建設革新技術開発推進事業」の無人建設に係る技術に対して「月面適応のためのSLAM自動運転技術の開発」を提案し、採択されました。今後、各種シミュレーションに加え、SLAM技術の実現可能性や施工性などを検証するための月面を模した環境での実証実験などを通じて、建設機械位置情報の正確な取得による自動運転実現のための技術確立に向け、更なる研究開発を推進してまいります。
(6) 連結子会社における研究開発の主なもの
大成ロテック㈱において、高速道路で採用している床板防水用のグースアスファルトの新製品として、混合物基準を適合しながら、アスファルト材料製造時の骨材加熱温度を従来よりも60℃低減することにより化石燃料使用量を抑え、CO2排出量をおよそ20%削減する「TRストロング―ス」を開発しました。本製品により、改質グースに防水機能を持たせることで、床板防水工の施工時間を従来より1/4程度短縮することが可能となります。既に高速道路本線で本製品を導入しており、今後、更なる路線への展開を目指してまいります。(建築事業)
(1) 木質建築の技術開発を促進
現代の建築に求められる性能や経済性を満たし、新築工事からリニューアルまで幅広く対応できる木造・木質建築のための技術として「T-WOOD®」シリーズの技術開発を推進しており、主に以下のような成果をあげております。・壁や柱等の木材の表面に透明な塗料を塗布するだけで耐燃焼性を向上させて準不燃材料に変える「難燃WOOD塗るだけ®」を開発しました。木材に難燃薬剤を事前に含浸させる従来の方法に比べて、大幅にコスト、施工手間を軽減しつつ、木材の質感を損なわない意匠性を向上させております。
・火災時に木材が炭化して断熱層を形成する知見に着目し、安価で施工性に優れた準耐火構造部材を開発しました。鋼管柱の周囲にスギ、ヒノキなどの木板を、接着剤を使用せずにビスだけで組み立てることが可能となり、木材利活用促進に寄与する技術を確立しました。
・CLT(直交集成板)などの木質系材料と石こうボードを組み合わせて、建築基準法の耐火性能を満足し、かつ高い遮音性能と意匠性を兼ね備えた間仕切壁「T-WOOD®Silent Wall」を開発しました。住宅居室、ホテル客室等の空間に適用できる「一般仕様」と吹抜空間等の壁高さが高い「大空間仕様」の選択が可能となります。
引き続き木材の利活用促進に関わる技術開発と適用を推進し、脱炭素社会や循環型社会の実現に貢献してまいります。
(2) 「グリーン・リニューアルZEB」を推進する新技術を開発・適用
既存建物の窓の断熱性能を大幅に向上させる高断熱窓システム「T-Green®DI Window」と、天井面に施工可能で照明器具の光反射効果を併せ持つ薄型放射空調ダクト「T-Green®Radiant Duct」を開発・適用しました。今回開発した新技術は新築建物でのZEB化実現はもとより、既存建物を改修工事によりZEB化する「グリーン・リニューアルZEB」への貢献も大いに期待できます。当社では関西支店ビル及び横浜支店ビルの改修工事にこれらの技術を適用しております。引き続きZEBにつながる技術開発に積極的に取り組み、新築建物のZEB化及び既存建物における「グリーン・リニューアルZEB」の推進を図り、2050年の脱炭素社会の実現に貢献してまいります。
(3) 建設用3Dプリンティング技術を環境配慮コンクリート向けに展開
CO2排出量を削減する環境配慮コンクリートの開発で培った材料や製造技術のノウハウを活用し、建設用3Dプリンティング技術「T-3DP®(Taisei-3D Printing)」に適用可能な環境配慮コンクリートを国内で初めて開発しました。本技術で製作した建設部材は、コンクリートとしての性能を確保しつつ、複雑で多彩なデザインと機能を持ちながらCO2排出量の削減が可能となります。今後、建設用3Dプリンティング技術に環境配慮コンクリート「T-eConcrete®」を組み合わせることで、バリエーションの拡大やデザインの高度化を図った多彩な環境配慮建材を提供し、更なるCO2排出量の抑制と脱炭素社会の実現に貢献してまいります。(4) 布製ダクトによるクリーンルームシステム「T-Flexible Cleanroom®Membrane」を開発
除塵と空気吹出しの機能を兼ね備えた多孔質膜の布製ダクトに着目し、従来の高性能フィルタ相当の除塵効果を発揮する軽量クリーンルームシステムを開発しました。半導体や電子部品、精密機器などの工場に設けられたクリーンルームでは、一般にパネル型塵埃除去フィルタやFFU(ファンフィルタユニット)が導入されておりますが、吊荷重が大きいことが欠点でした。本システムのダクトは軽量であることから、ローコストなクリーンルームの構築が可能となり、送風時の抵抗が少ない特性から運用時の省エネにもつながります。今後、新築建物だけでなく既存建物でのクリーンルーム構築に対しても本システムを積極的に提案してまいります。(土木事業・建築事業共通)
(1) 環境配慮コンクリート「T-eConcrete®」の技術開発を推進
建設事業で最も利用頻度の高い材料の一つであるコンクリートについて、資源の有効利用や二酸化炭素の排出削減・固定化を図る技術開発を推進しております。セメントの使用量を抑制し、通常コンクリートと同等の強度及び施工性を保持しながら、目的や用途、条件に応じて選択可能な4タイプ(建築基準法対応型、フライアッシュ活用型、セメント・ゼロ型、Carbon-Recycle)を実用化しており、主に以下のような成果をあげております。
・「T-eConcrete®/建築基準法対応型」を場所打ち杭工法「T-EAGLE®杭工法」に適用して現場実証実験を行い、技術認証を取得しました。
・自社施設以外では初めて、「T-eConcrete®/Carbon-Recycle」を生産工場の門塀に適用しました。
・独自の方式でコンクリートの練混ぜ時にCO2を噴霧して固定させるとともに、硬化後も強アルカリ性を保持して鉄筋コンクリート構造物にも使用できる「T-Carbon Mixing」を開発しました。
引き続き環境配慮コンクリート「T-eConcrete®」の技術開発と適用を推進し、2050年のカーボンニュートラル実現に貢献します。
(2) 雨水浸透・貯留機能の高い植栽基盤を用いた外構創出技術「T-GI®rain garden」を開発
雨水浸透・貯留機能の高い植栽基盤材を用いた外構創出技術「T-GI®rain garden」を開発しました。多孔質な火山砂利を採用するとともに、土壌中の空隙を確保するために粒径の異なる火山砂利を適切に配合した素材を用いることにより、雨水の浸透性と貯留性に優れた植栽用基盤材を実現しております。本技術により、都市部における水害を抑制し、緑地創出による多様な機能を発揮するグリーンインフラの整備が可能となります。今後、主に都市部における各種施設の外構緑地に対して本技術を積極的に提案し、グリーンインフラを活用した防災・減災及び生物多様性の向上に貢献してまいります。(3) 高速道路に実装可能な無線給電道路「T-iPower®Road」の実証を開始
走行中の電気自動車(EV)に連続かつ非接触状態で電力を給電できる道路「T-iPower®Road」に関する実証実験を開始しました。本実証実験により、高速道路への実装及び中型車両や商用車が走行できる10kW無線給電道路に関する技術開発を加速させ、EVの長距離・連続走行を可能とする実用化システムの確立を目指します。今後、将来のカーボンニュートラル社会を見据え、低炭素化に対応したインフラの発展に貢献できるよう、走行中のEVに連続して電力供給可能な無線給電道路の実用化に向けた技術開発を進めてまいります。
(4) 河川工事の出水警報システム「T-iAlert®River」の機能を拡張
河川工事において、施工現場やその周辺流域の急激な水位上昇を予測し,出水が懸念される際、警報を配信する出水警報システム「T-iAlert®River」に、雨雲画像を用いてAIにより24時間先までの河川水位を予測する機能を追加しました。従来のシステムでは、予測のために河川の水位観測所の水位データが必要でしたが、今回の機能追加により、水位観測所のない河川においても適用が可能となり、従来よりも早い段階から予測結果の配信が可能となります。今後、より安全に人員や建設機械・資材などを守るため、水位観測所データに基づく従来のシステムとの併用により予測精度を高めながら、土木・建築工事を問わず本システムを積極的に活用してまいります。
このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E00052] S100R0RE)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
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