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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100R5MS (EDINETへの外部リンク)

有価証券報告書抜粋 株式会社ワコールホールディングス 事業等のリスク (2023年3月期)


従業員の状況メニュー研究開発活動

当社のリスク管理基本規程において、「リスク」とは、「当社グループにおける事業目的の達成を阻害する要因すべて」と定義しております。これらのリスクを適切に認識し、発生の可能性や影響度の評価を行い、優先度を定め、リスクへの対処を決定したうえで、リスク顕在化の可能性をできるだけ低減するための活動を行っております。同時に、その活動をモニタリングすることにより、継続的に活動内容の改善に努めております。併せて、リスクが顕在化した場合には、発生する障害・事故へ迅速な対応を行い、人びとや社会をはじめとするステークホルダーへの影響を最小限に留めるべく、リスク管理を推進しております。
(1)リスク管理体制
当社グループのリスク管理体制は、“リスク管理統括責任者(代表取締役社長執行役員)”、“企業倫理・リスク管理委員会の委員長(代表取締役副社長執行役員)”を基軸として、下図のとおり、“企業倫理・リスク管理委員会(委員長が指名する委員による構成)”、また、企業倫理・リスク管理委員会の下部組織として、全社横断的な重要課題について活動方針策定やモニタリングを行う“リスク主管部署”及び“リスク対応部会(企業倫理・リスク管理委員会が決定/設置)”、さらに、企業倫理・リスク管理委員会が定めるリスク管理(抽出、評価、対応、モニタリング)を行う“リスク管理組織”及び“リスク管理責任者”によって構成されております。
“企業倫理・リスク管理委員会”では、それぞれの“リスク管理組織”から抽出されたリスクについて、発生の可能性と影響度の観点から評価を実施し、当社グループの経営に重大な影響が想定されると評価したリスク項目を、毎年、取締役会に上程し「グループ重要リスク」としての決定を踏まえております。その後、「グループ重要リスク」の項目ごとに、“リスク主管部署”、あるいは“リスク対応部会”を通してリスクを軽減化する対応策への取り組みを進め、併せて、“企業倫理・リスク管理委員会”を定期的(四半期ごと)及び必要に応じて臨時に開催し「リスク管理体制」が有効に機能しているかどうかのモニタリングを行っております。

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(2)事業等のリスク
有価証券報告書に記載した事業の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に、重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクとその対策は後述のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
“企業倫理・リスク管理委員会”が当社グループの経営に重大な影響が想定されると評価・選定したリスク項目を、取締役会で討議し「グループ重要リスク」を定めております。なお、★印は「経営環境・事業戦略」に関するリスク、■印は「事業運営上」のリスクであります。

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(2)-1 経営環境・事業戦略に関するリスク
市場の構造変化
□ 発生の可能性:高□ 影響度:大
● リスクの内容
百貨店・量販店をはじめとする大規模小売店や商業施設の減少は、百貨店・量販店の売上シェアが高い当社グループの業績に大きな影響を与える可能性があります。また、消費者接点(店舗)の減少はブランド認知率の低下、顧客の購入意欲の低下に波及するなど、この市場構造の変化は、既存業態の再編、営業政策の変更等をもたらし、グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。
● 対応策
小売市場の構造変化(オンラインモールやフリマアプリの市場拡大)が進んでおり、旧来の百貨店、量販店及び専門店といった卸売店舗の売上シェアは漸減していくと予測しています。
国内ではブランドや流通チャンネル業態を横断したエリア販売・マーケティング体制へ移行を進め、顧客データの一元管理を実現すると同時に、いろいろな流通チャネル業態を活用いただくことによって、それぞれのお客さまの求めに応じたLTV(ライフタイムバリュー)としての顧客体験価値を高めるCX戦略を推進しています。今後も、実店舗でのパーソナルサービスの強化と、WEB販売でのストレスフリーなパーソナル情報の連携の強化に、バランスよく取り組んでいきます。
また、海外では、オフラインとオンラインを融合した独自のサービスの展開によって、引き続き、個々の国や地域でブランド認知度を向上させる取り組みに注力する一方、競合他社には真似できないフィッティングにおける顧客体験の向上を目指しています。当社グループのグローバル展開におけるミレニアル世代の獲得、EC事業での成長機会創出・競争力強化をねらいに買収した米国のIntimates Online, Inc.をはじめとして、各々の国・地域でDXを加速させ、お客さまのLTVの向上を実現し2030年度にはEC売上比率を50%超に導くよう進めています。

事業構造の改革(人件費率、過剰在庫、直営店・WEB販売等)
□ 発生の可能性:高□ 影響度:大
● リスクの内容
卸売中心の事業構造の変革途上において、人件費比率が高止まりする、また、SKUの増大や総在庫総販売総生産管理の失敗による在庫の増大が、物流コストの増加や値引き評価替えを誘発するなど、収益業績に悪影響を与える可能性があります。一方、直営店やWEB販売での成長戦略を、エリア販売力の強化と併せて、迅速かつ効果的に進められないでいると流通チャネル構造の変化に抗えず、業績が低迷する可能性があります。
● 対応策
急速に進む市場の構造変化に中長期の経営戦略を重ねて、適正な人員体制を実現するための要員計画・組織改革を推進しています。当連結会計年度においては、㈱ワコールでフレックス定年制度の特別運用を実施し、人員及び人員構成の早期適正化、国内事業の収益力向上と事業構造改革のスピードアップ、また、従業員の今後のキャリア形成の支援を進めました。引き続き、従業員一人ひとりの会社への貢献度が見える化できる成果評価の制度整備を行い、自分たちが会社の未来を創っていることが実感できる組織風土づくりに取り組んでいきます。
他方、従前のブランド戦略は流通チャネル業態の特性に沿って、細やかな対応を進めてきた結果、近年、約60ものブランド(サブブランド含む)を展開するまでに至りました。現在、お客さまの購買行動(カスタマージャーニー)はオンライン・オフラインを問わないシームレスなものに変化し、加えてグローバルSPA型のブランドとの競争が激しさを増しています。ブランド編成を大胆に見直し、9つの基幹ブランドに集約すると同時に、その下に30程度の構成ブランドを配置する「基幹ブランド戦略」を定めました。ブランドや商品に重複がないかなど、顧客視点で全体最適に向けた整理に取り組んでいます。顧客中心の価値創造プロセスを構築し、顧客視点で発想し「必要とされる」・「期待を超える」商品とサービスが提供できるよう、加えて、基幹ブランド戦略のベースとなるファンづくりにつながるよう、成長戦略を描き、投資領域を絞り込んでいきます。



調達価格の上昇
□ 発生の可能性:高□ 影響度:大
● リスクの内容
サプライチェーンの構造変化が進行し、原材料の値上がりや生産地の人件費高騰、輸送コストの上昇等により仕入価格が上昇した結果、業績に影響を及ぼす可能性があります。
● 対応策
材料の調達や製品の生産においては、適切に品質とコストの両面を照合しながら、アジアの国々や地域での調達・生産の比重を増やしています。また、近年では、社会・労働環境の変化に対応し、海外生産の軸足は中国からベトナムをはじめとするASEANに移行しています。併せて、製品の企画・設計段階から、可能な限り、材料品種を増やさない集約化の取り組み、材料調達先を国内から海外に求める取り組み、廃棄に至る製品・材料の最少化への取り組みなども進めています。
他方、当社グループでは、国内の縫製会社3社を2022年4月から1社に統合しました。国内の高い縫製技術を継承しつつ、外部環境の変化に応じた柔軟な生産管理体制を構築することにより、競争優位性強化と事業効率向上の両立を目指します。同時に、製品の研究・開発を担う部門と縫製現場の連携を、統合した縫製会社の下で一元化し、短納期・高難度・小ロット生産に対応できる生産体制を高め、事業効果の強化に取り組んでいます。

競争・競合環境の変化
□ 発生の可能性:中□ 影響度:大
● リスクの内容
国内外の市場において、競合会社、低価格品、また、異業種からの新規参入者などにより、市場競争が激化し、販売シェアが奪われ、長期的に業績が低下する可能性があります。
● 対応策
競争激化は、価格の下落、広告宣伝費の増加、売上高及び市場シェアの減少等につながり、当社グループの事業、業績及び財政状態に重大な影響を及ぼします。
㈱ワコールの収益力の改善と成長軌道への回帰を実現するためには、「顧客中心戦略」を軸に、競争優位性の強化に照準を絞った取り組みが欠かせないと考えています。デジタル技術を用いてパーソナライズ化された情報を顧客に提供し、流通チャネル業態やブランドを横断してお客さま一人ひとりとのつながりをさらに深める「CX戦略」を推進することによって、一層の「顧客起点」を実現いたします。また、パーソナライズアプリ「Wacoal Carnet」や、「Wacoal 3D smart & try」を通して、お客さまに、科学的に先進的に、そして、わかりやすく情報をお届けすることで、ブランドへの信頼感を高め、ロイヤルカスタマーとして「深く・広く・長く」関わっていただける絆づくりに努めています。
さらに、米国・欧州・中国の主要3法人では、グループ独自の特徴あるブランド展開・商品戦略を高めることによって、他社との差別化を実現すべく事業への成長投資を継続しています。併せて、新興国においては先駆的な利点を獲得すべく、インド市場での出店加速と積極的な広告宣伝投資を進めています。

消費者の価値観変化
□ 発生の可能性:中□ 影響度:大
● リスクの内容
ブランド戦略、商品、サービスが消費者の価値観変化に合わずに、顧客を獲得できず、もしくは顧客を失って経営が悪化する可能性があります。また、ブランドマネジメント、マーケティングミックスの失敗により、若年層顧客の囲い込みが適わず、一方で既存顧客の離反が進み、ブランド価値を毀損する可能性があります。
● 対応策
顧客にとっての価値を創造する活動すべてを「マーケティング」と位置づけ、一連の顧客体験を描き、顧客に選ばれるための必然を創造する取り組みを高めています。商品を購入いただくといった旧来型の志向から脱却し、オンラインとオフラインのすべての顧客との接点において、顧客情報が連携され、ブランドとのつながりが生まれる仕組みを築き、お客さまの一連の行動フローに対して価値を提供し、長い関係づくり、生涯顧客づくりに変えていく取り組みをスタートしました。ブランドマネジメントの面では9つの基幹ブランドへの整理・集約、これと連動した、ブランドコミュニケーション、マーケティングコストの集中と選択を実施することで、お客さまに向けたメッセージの質と量、双方の拡充を進めています。併せて、サステナビリティ活動への取り組みを強化し、社会をはじめステークホルダーからのレピュテーション向上と確立にも力を入れています。


新しい市場・顧客の開拓
□ 発生の可能性:中□ 影響度:大
● リスクの内容
日本の人口減少や少子高齢化による国内市場の縮小に向けて、当社グループは、海外市場の開拓や新業態・新分野への進出等、新規市場の開拓に取り組んでいますが、一方、多様化する消費者の価値観に応えきれず、計画した成果が出せないとグループ業績に影響を与える可能性があります。
● 対応策
国内では、当社ブランドとの接点が少ない潜在顧客に対し、購入意欲を喚起できる商品・マーケティング施策が打ち出せず、新規の顧客獲得に苦慮しています。一連の顧客体験や購買行動(カスタマージャーニー)を見極め、顧客に選ばれる必然の創出について、改めて見直す取り組みを進めています。他方、既存の愛用者に向けたリテンションマーケティング強化の取り組みは着実に成果に結びついており、ロイヤルカスタマーとして、これまで以上に太い絆を築くことができています。ロイヤルカスタマーに対するワードローブの品揃えを拡充するなど、当社グループの提供価値として実現できるLTVの最大化に向けて、より一層、優先的に力を注いでいきます。
一方、米国では、引き続き、デジタルマーケティングへの投資を積極的に実施することで、EC事業主体の成長を目指しています。自社EC事業強化の一環として導入したデジタルフィッティングアプリ「Wacoal-mybraFit」の利便性を向上することなどによって、現状は46%程度のEC売上比率を長期的には70%程度まで高めたいと取り組んでいます。加えて、物流インフラなど今後のEC成長を支える体制についても強化を行っています。中国では、感染症の影響からの回復を加速すべく、商品開発とWEB販売の組織体制強化を図りました。百貨店において20%程度のシェアを持つものの、下着市場全体では1%未満に留まっているため、中間層が購買の中心であるEC市場において、オフラインとオンラインの連携やCRM戦略の強化に取り組みながら、新規顧客の獲得と既存顧客のロイヤルカスタマー化を進めていきます。これらのほか、消費者に中間所得者層が多いにも関わらず、当社グループの事業規模がまだ小さいドイツやインドなどは、今後の拡大余地が大きい市場と捉えて戦略的な投資を進めています。

人材の確保
□ 発生の可能性:高□ 影響度:中
● リスクの内容
特に、ものづくり(企画力・技術力)、IT・デジタル、販売員、海外経営において人材の確保、育成ができないと、今後の成長や競合会社に対する優位性を作り出せず、グループの業績が低迷する可能性があります。また、販売員、退職後再雇用者の効率的配置ができないと、人件費効率の低下やモチベーションの低下が起こり業績の低迷を及ぼす可能性があります。
● 対応策
当社グループではジョブ型採用をはじめ、新しい採用手段の導入による人材確保に併せて、集団型講義やオンラインでの専門知識研修の実施やOJT、海外研修制度、他社と合同で実施する異業種クロスラーニングの開催などといった、実地研修機会の充実によって人材の育成を行っています。また、キャリア採用の比重を拡大するほか、リファラル採用にも注力し多様な人材の確保による活性化も進めています。
一方、市場の構造変化を受けて、販売員の評価については、接客人数や顧客視点での満足度(LTV=生涯顧客価値)といった成果へ見直しを進めています。また、退職後再雇用者は、再契約に際して責任と役割を高める職群を増やし、適材適所の異動を進めると同時に、目標管理評価を運用した成果配分給の採用によってモチベーション向上を図っています。


(2)-2 事業運営上のリスク
情報システム可用性障害の発生
□ 発生の可能性:中□ 影響度:大
● リスクの内容
システム開発のミスや遅延、また、重要なシステムに障害が発生することで、事業継続が困難になってしまうと、得意先・顧客はじめ、すべてのステークホルダーからの信頼を失う可能性があります。外部からの悪意ある攻撃、あるいは天災被害等により、基幹システムやWEB販売サイト等の稼働が不可能となった場合、ファイルサーバや従業員のPCから機密情報が流出した場合、事業への悪影響が出る可能性があります。
● 対応策
当社では「情報セキュリティ基本方針」、「情報セキュリティ関連組織と責任に関する規程」を定め、すべての従業員に対して情報保護の必要性と責任についての理解促進を図っています。“企業倫理・リスク管理委員会”の傘下に「情報セキュリティ部会」を設置し、現状の管理体制の把握と改善、また、顧客情報や重要技術情報にかかる不正なアクセスによるデータの破壊や漏えい、ウイルスやランサムウェアによる事業運営そのものの阻害を狙ったサイバー攻撃などについて、情報の収集、現状の調査、分析等を実施しています。同時に、当社グループの活動方針や具体的対策の立案、関連規程の制定・改廃、戦略的な投資案件の討議を行い、情報セキュリティリスクの低減に努めています。具体的には、不慮のシステム障害・誤作動に備えて、システムやデバイスをリアルタイムで監視するセキュリティツールの導入と運用を開始する一方、重要なシステムは適切なハードウェアやネットワーク構成、クラウド化の選択ができているか、また、IT資産の適切なメンテナンスが実施されているかなど、適宜モニタリングを行っています。さらに、国内連結子会社を対象に、定期的な標的型メール訓練の実施や、昨今報道されているような情報事故事例などを用いた注意喚起を行うなど、従業員の意識向上と仕組みの構築による両面からリスクの軽減を行っています。

情報管理の不備
□ 発生の可能性:中□ 影響度:大
● リスクの内容
情報管理の不備により、機密情報や個人情報の漏えいや紛失が発生すると、活動上、不利益を被るばかりか、社会的信用の失墜、事業運営の停止といった重大な損失影響が出る可能性があります。
● 対応策
当社では「情報分類規程」、「秘密情報取扱規程」、「個人情報保護規程」を定め、取り扱うすべての情報を、機密性、一貫性及び可用性の観点から適切に分類するとともに、保護・漏えい防止を図っています。また、重要情報の保護・管理の徹底をねらいに、当社グループの重要情報一覧表を整備し、経営、事業・販売戦略、製品開発、自社ノウハウ、個人情報、情報システム等の区分から、具体的なインサイダー情報事例を挙げて対策に取り組んでいます。
とりわけ、当社グループは事業活動上、多数の顧客に関わる個人情報を有しています。将来を見据え、㈱ワコールでは「CX戦略」を成長の柱と位置付け、収集した個人情報を含めたデジタルデータを基盤としたビジネスモデルの再構築を進めています。また、海外では顧客の個人情報を直接取得するEC事業を強化し、成長の柱とする計画を進めています。国内における改正個人情報保護法の施行対応に止まることなく、個人情報保護は当社グループ事業活動上の重要性が増しています。
“企業倫理・リスク管理委員会”の傘下に設置した「情報セキュリティ部会」では個人情報の保護・管理の強化、関連法規制への対応、従業員への教育等を含め、個人情報を外部の脅威から守るために、国内外の関係会社を対象に管理状況の調査と対策指導・助言等を進めています。



新しい疫病の蔓延
□ 発生の可能性:中□ 影響度:大
● リスクの内容
新疫病の蔓延による、政府・地方自治体からの外出自粛要請や店舗休業要請等を受けて、売上が低下しグループ業績に大きな影響を与える可能性があります。また、事業所内で感染者が拡大することで、従業員の出勤停止や事業所閉鎖により事業運営に支障をきたす可能性があります。
● 対応策
新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、顧客・取引先及び当社従業員の安全確保を第一に考え、いかに合理的に事業活動を継続すべきか、“企業倫理・リスク管理委員会”の下に「新型コロナウイルス感染症対策本部」(本部長:代表取締役副社長執行役員)を設置し、国内外の感染状況を注視しながら対策を講じました。具体的には、感染状況に応じて、店頭販売員の勤務やサービスの方法、店舗の営業体制を決定するほか、内勤者には国や地域状況にあわせた勤務体制(リモート会議や在宅勤務の推進、出張・会議等の制限や緩和など)を臨機応変に示してきました。こうした対応を踏まえて、新しい疫病の蔓延に備えた指針、行動計画の見直しを進めております。
また、感染症と共生する個人消費行動の変化を見通し、通販サイトの利便性向上や感染の予防をしながら行動範囲を広げるワードローブの提案など、お客さまが求めるサービスの強化や新たな商品の開発を行い、競争優位の確保に努めます。
生活必需品を扱う企業として衛生的で快適な生活を守り、お客さまに安心を提供し続ける責任を果たします。

債券相場・金利の変動
□ 発生の可能性:中□ 影響度:大
● リスクの内容
保有する上場株式や債券等の市場価値が下落し、減損が発生する可能性があります。他方、年金資産の評価減・積立不足は追加拠出や引当が必要となりグループ業績に影響を与える可能性があります。
● 対応策
当社及び当社の特定完全子会社の㈱ワコールが保有している株式の状況は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (5)株式の保有状況」を参照ください。
当連結会計年度を初年度とする中期経営計画では、2025年3月期末までに保有する政策保有株式を150億円以上縮減する方針を示しています。当連結会計年度は、取締役会にて、個別の銘柄ごとに保有によって実現している収益が当社資本コストを上回っているか、当社の企業価値向上につながっているかを検証した結果、保有意義が希薄化した7銘柄・約40億円の処分・縮減を進めました。
他方、退職給付費用及び債務は、年金資産の期待運用利回りや将来の退職給付債務算出に用いる年金数理上の仮定に基づき算出していますが、有価証券の相場並びに金利環境の変化等により、実際の結果が仮定と異なる場合、または仮定に変化があった場合には、退職給付費用及び債務が増加するリスクがあります。当社は国内社債の利回りに基づいて割引率を設定しています。割引率については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 21.従業員給付」を参照ください。
企業年金のアセットオーナーとして期待される機能を発揮できるよう、財務・人事・経理等の部門長らで構成する年金委員会を設置し、四半期単位で資産運用方針や政策的資産構成割合等を検討すると同時に、外部の運用コンサルティング会社を起用し専門能力・知見を補完しています。

自然災害・事故等の発生
□ 発生の可能性:中□ 影響度:大
● リスクの内容
地震などの自然災害や火災・爆発等が発生し事業所・生産拠点が被害を受ける、あるいは、従業員が被災する可能性があります。また、交通網の遮断や電力供給の停止、通信回線の不通等、大型小売店や直営店舗、通販サイトや物流網の被災により事業活動に支障が出る可能性があります。
● 対応策
首都直下型地震をはじめとする大規模事故の緊急事態に備え、“企業倫理・リスク管理委員会”の傘下に設置した「BCP・災害対策部会」では、主要な事業拠点が被災した際のBCP策定を順次整備するなど、予防・減災、応急・初動、復旧・復興の観点で事業継続マネジメントに取り組んでいます。
具体的には建物の耐震化、データ関連サーバのクラウド化、災害発生時の従業員安否確認システム、モバイルワークなどといった環境整備に加え、社会的責任を踏まえて、緊急時においてもサービスや製品の安定供給ができるよう、販売事業所の業務バックアップ体制の確立や生産拠点の分散化配置によって、リスクの低減を図っています。また、当連結会計年度においては、首都直下型地震による被災を想定したBCPが合理的に機能するかの検証訓練を行いました。



企業倫理・コンプライアンスの姿勢
□ 発生の可能性:高□ 影響度:中
● リスクの内容
第三者から、サプライチェーンにおける人権、労働、環境問題等を指摘・公表され、事業活動に影響を与える、企業価値を毀損する可能性があります。また、企業倫理・コンプライアンスに反する行為が増加する、あるいは、ソーシャルメディアやブログ等のWEBサイト上を含めた広告表現や発言に問題が発生することによって、社会的な信頼を失い、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
● 対応策
当社グループを取り巻く国内外の法令や規制等への違反、社会的要請に反する行為等があった場合は、処罰や社会的な信用の低下などにより、経済的・社会的な影響を受けるリスクがあります。「企業倫理・ワコールの行動指針」を定め、従業員に頒布し周知徹底を図るだけでなく、“企業倫理・リスク管理委員会”の下に設置した「コンプライアンス部会」の活動を通じて、従業員への啓発活動、内部通報制度、外部専門機関による法令ヘルスチェックなどの施策を拡充し、法令順守の強化に努めています。
また、当社グループの事業領域において特に注力すべき点として、サプライチェーンでの労務・人権問題が挙げられます。過去には人権NPOから連結子会社の発注先である海外縫製工場における労務・人権問題について指摘を受けたことや、国内において二次製造委託先の外国人技能実習生に対する超過勤務手当の未払いが発覚したことがありました。2018年4月に立ち上げた「CSR調達部会」を、現在は“サステナビリティ委員会”の傘下に移管し、人権の尊重、環境・社会との調和、法令の順守、労働慣行、事業慣行の観点などから、製造委託先等の工場ごとに自己評価と現地監査を行い、是正・改善計画の策定とモニタリングを行う取り組みを高めています。併せて、CSR調達活動の対象先を、製造委託先を超えて漸次拡大を図るとともに、仕入先一覧を開示しています。

知的財産権の侵害・被侵害
□ 発生の可能性:高□ 影響度:中
● リスクの内容
知的財産権を侵害されたり侵害したりすることで、訴訟や経済的損失が起きる可能性があります。
また、近年、インターネット上で当社ブランドを詐称した「なりすまし広告・偽サイトへの誘導」が拡がっています。注意喚起や排除措置といった適切な対策を怠れば、消費者や市場からの信頼失墜を招きかねず、戦略的な知的財産権の保護や活用ができないでいると、事業に影響を及ぼす可能性があります。
● 対応策
当社グループは知的財産権があらゆる事業活動に関わり、競争優位性を確保する重要な資産であると認識しています。
ブランドや、独自の技術、デザイン、サービス等を、自社の競争力の源泉として知的財産権で保護・活用できるよう、一方で他社の知的財産権を尊重し侵害しないよう、従業員に対しセミナーによる教育や業界知財動向の共有を行い、正しい理解を促しています。また、外部専門家との連携を強化するなど、知的財産担当部門の知見を高めDXやCX戦略、新規事業における知的財産権の保護、活用を進めています。
また、国内外における模倣商品の出現や、他社による商標、特許等の無断使用といった知的財産権の侵害には、侵害者に対して権利主張を行い、厳格に対応を行うこととしております。最近では、EC事業のボーダーレス化に伴ったブランド価値の毀損、とりわけ、SNSを中心とした当社ブランドを騙る「なりすまし」の広告・販売の出現については、消費者への注意喚起の実施、販路の追跡と監視、排除措置の実施等に力を注ぐとともに、日本国内に留まらない消費者保護、ブランド保護対策に努めています。



デジタルマーケティングの加速による表現訴求、品質表示・取扱表示等の記載
□ 発生の可能性:高□ 影響度:中
● リスクの内容
主流になりつつあるデジタルマーケティングにおいて、従業員参加型を含むSNS上の発信内容、サステナビリティを巡る国際基準に逆らう概念での訴求表現によって、ネガティブキャンペーンや発信者への誹謗中傷をはじめとする社会問題を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。他方、品質表示等の法令違反や機能性表示における不適切な表現は社会的な信用を損なう可能性があります。また、商品の回収・表示変更のコスト発生、販売中止によって損失影響が出る可能性があります。
● 対応策
消費者が適正に商品を選択し使用するための品質表示については、商品そのものに付帯させる法定表示に始まり、店頭やメディアでの広告・宣伝での訴求、販促表現、知的財産保護表示など多岐にわたっており、リスクが顕在化しやすい事案だと認識しています。また、インフルエンサーや従業員参加型の積極的なデジタルマーケティング活動を通した、当社の発信や参加者の言動に対する社会的な批判が、昨今においては、その内容の真偽に関わらず拡散されるリスクも認識しています。
“企業倫理・リスク管理委員会”傘下の「品質保証審議会」、「品質管理委員会」の活動を通して、表示内容を決定する部門でのダブルチェックを前提にした表示確認体制の整備、表示決定のプロセスにおける可能な限りのシステム化、表示ミス発生時の迅速な対応、問題発生後の再発防止のための徹底的な原因究明と対策の実施といった、一連のサイクルをルール化し運用しています。また、品質表示に関わる社内啓発活動と担当者教育を、定期的に実施しています。
併せて、国内外の関係会社ごとの事業環境に照らしたSNS運用規程を定めて周知徹底を行うとともに、マーケティングやコミュニケーション部門の従業員を対象に、訴求表現内容の事前確認・適否判断を行うための教育を推進しています。
このほか、独禁法、景表法、薬機法などと絡めたガイドライン各種の制定と改訂、e-ラーニングによる従業員を対象にした教育の実施などによって、リスクの軽減を図っています。また、機能・効能表現においては、商品化計画部門と研究部門、品質保証部門間の連携フローと併せて表記ルールの再整備を行い、外部の機関を交えたエビデンスデータの確認体制を整えています。

設計・製造上の品質保証
□ 発生の可能性:中□ 影響度:中
● リスクの内容
不良品を販売することや商品が人体へ危害を及ぼすこと等により、商品回収等のコストが発生する、当社が高品質の商品を提供するというレピュテーションが損なわれ社会的信用を失うといった、業績への悪影響を及ぼす可能性があります。
● 対応策
高品質な商品をグローバルに提供できることが、当社グループの強みの一つです。“企業倫理・リスク管理委員会”の下に「品質保証審議会」を設置し、安全性ガイドラインを整備すると同時に、製品企画・設計・開発時点での安全性確認ルールの順守、製造時の検査の徹底、問題発生時の原因追及と再発防止策の策定に取り組んでいます。併せて、こうした活動・情報内容については、グループの国内外関係会社へ水平展開・共有化を図ることによって、品質意識の高揚、全体での管理体制の底上げを行っています。また、「品質保証審議会」の傘下では、商品化計画を担う部門ごとのメンバー選出による「品質管理委員会」を運営し、個別課題への対策フォローアップ、品質管理全般に対する社内教育を実施しています。
他方、生産拠点の現場では、定めた品質管理・検査の徹底のみならず、製品受入ロックシステム(材料基準達成製品のみの受け入れ)の運用による基準未達品の排除、検査人員の技量の標準化、品質優秀表彰制度による従業員のモチベーションアップに取り組んでいます。

新興国の社会情勢変動
□ 発生の可能性:中□ 影響度:中
● リスクの内容
新興国に生産拠点を構える当社グループは、政治的不安定状態、法改正や制度変更、ストライキの発生、人材の確保難などによって材料調達や生産が滞り、業績に影響を与える可能性があります。
● 対応策
各国・地域の法律・規制の動向には常に十分な注意を払い、現地情報の収集・分析に努めています。現地の“リスク管理責任者”と連携し、地域の実情を把握し、必要に応じ外部の弁護士、コンサルタントなど、専門機関の協力を得て対応を行うよう整備と運用を図っています。軍事政権による掌握が続くミャンマーでは法律・規制の動向に加え、人権課題への対応についても注視しています。地政学的なリスクも見据え、適切な生産拠点の分散を行いリスクの軽減化に努めています。


税務の管理
□ 発生の可能性:中□ 影響度:中
● リスクの内容
税制改正や移転価格の調査等による多額の課税がなされた場合には、風評被害の他、当社グループの財政状況及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
● 対応策
繰延税金資産については、現行の会計基準に従い、将来の課税所得を合理的に見積もったうえで計上しています。将来の課税所得見積額の変更や税制改正に伴う税率の変更等により、繰延税金資産が減少し、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼすリスクがあります。これを踏まえて、当社では、適宜、経営環境の変化等に照らし、将来の課税所得の見積もりに関する見直しを行い、回収可能性を合理的に判断しています。
2021年1月には、事業を展開する国・地域の法令、国際税務関連法規を順守し、透明性の高い税務管理を行い、ステークホルダーからの信頼を得ることをねらいに「税務行動指針」を策定し開示しました。この指針では、国内外の連結子会社を対象に、税務の最新情報入手や研修による啓発活動を含めたグループ税務体制の構築をはじめ、不確実な税務ポジションへの対応、優遇税制の適用、グループ会社間取引、租税回避行為の禁止、税務に関するディスクロージャー等のガイドラインを示しています。加えて、当連結会計年度より、国内連結子会社を対象にした定期的な税務研修会を運営しています。当該研修会では、インボイス制度など、時事の税制改正に適切な対応を進める確認を行う一方、「税務行動指針」の周知・徹底を行っています。また、同指針に記載したガイドラインの運用状況については、IFRIC23の指針に基づいた対応状況と併せて、国内外の連結子会社から、事業年度末に報告書を受けることによってモニタリングを行っています。このほか、BEPSをはじめ国際税務に関する動向を把握し、適宜、海外連結子会社と最新情報を共有するなど、当社グループにおける税務体制の整備に努めています。

従業員の状況研究開発活動


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