有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100R83D (EDINETへの外部リンク)
TOPPANホールディングス株式会社 研究開発活動 (2023年3月期)
当社グループは、21世紀のあるべき姿を定めた「TOPPAN VISION 21」に基づき、各事業領域の基盤強化と市場ニーズを先取りした新商品の開発を積極的に推進しております。
当社グループの研究開発は、総合研究所を中心に、事業(本)部の技術関連部門及び主要連結子会社が一体となり収益力の強化を図っており、各事業分野の新商品開発に注力するとともに、コストダウン、品質ロスミス削減へ向けた開発を進めております。また、次世代商品系分野についても総合研究所を中心に産官学との連携を図り、中長期の収益の柱となる新規事業創出に努めております。
当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は26,591百万円であり、セグメントにおける主な研究開発とその成果は次のとおりであります。なお、研究開発費につきましては、当社の本社部門及び総合研究所で行っている基礎研究に係る費用を次の各セグメントに配分することができないため、研究開発費の総額のみを記載しております。
(1) 情報コミュニケーション事業分野
セキュア関連では、量子コンピュータによる公開鍵暗号の解読リスクに対し、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)と連携し、量子コンピュータでも解読が難しい耐量子計算機暗号(Post-Quantum Cryptography 以下PQC)の研究を進めております。NICTが運用するテストベッド「H-LINCOS」(※1)において、PQC対応のプライベート認証局(※2)を構築しました。さらに、電子署名や電子証明書発行機能に加え、当社とNICTが開発した「PQC CARD®」による改ざん検知機能を実装しました。これらの研究の一部を内閣府SIPプログラム「光・量子を活用したSociety 5.0実現化技術」(研究推進法人:国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構)にて実施しました。今後、これらの技術を活用し、インターネット上のサイバーセキュリティを担保し、安全・安心な社会インフラ実現を目指します。
自動認識技術関連では、環境に配慮したNFC(近距離無線通信)タグラベルを開発しました。これは、従来のPETフィルムに代わり、紙素材をアンテナ基材としつつも、新たな回路形成技術によってNFCデバイスとしての通信性能を維持しております。紙への置き換えによりプラスチックの使用量をゼロにすると同時に、紙製のNFCタグラベルは、剥がすと破壊される特性を活かし、不正利用防止が可能です。
DXの取り組みとしては、流通小売業の販促業務の効率化を支援する「PROMO CORE® for cloud」を開発しました。これは、当社が以前から提供している、販促情報や取扱商品を一元管理できるデータベース「PROMO CORE®(プロモコア)」をクラウド化したもので、より簡単・安価・スピーディーな導入が可能になります。
また、メタバースに対する社会的な関心の高まりを受け、商品の精緻な3D再現が可能な「MiraVerse® Core」を開発しました。利用企業はWebサイトを通じて、幅広い利用者にバーチャル体験の提供が可能になり、購買意思決定を強力にサポートできるようになります。また、「デジタルツイン・ワールドトリップ®」を開発しました。仮想空間とリアルタイム中継の組み合わせによる新たな体験を提供します。これらの技術は、西日本電信電話株式会社(NTT西日本)が展開する共創空間「LINKSPARK OSAKA」での実証実験にも利用され、施設の魅力を遠隔地からでも体験できるサービスの立ち上げを目指します。
(2) 生活・産業事業分野
パッケージ関連では、「TOPPAN S-VALUE® Packaging」を通じて「価値あるパッケージ」を提供し、より良い社会と心豊かで快適な生活に貢献します。軟包材においては、「即食ニーズ」に応えるため、冷凍食品向け新型包材「いただきピロー®」を開発しました。この製品はレンジ調理後にそのまま食器として使用可能で、プラスチックの使用量を大幅に削減し、包材製造時のCO2排出量も約20%削減します。
「GL BARRIER」(※3)シリーズの新しいラインアップとして、高いバリア性能と遮光性を有する「GL-ME-RC」を開発しました。この製品は、従来のアルミ蒸着フィルムでは実現が難しかった優れた耐屈曲バリア性能を有し、高いバリア性と遮光性、耐屈曲性が必要な医薬品や食品への使用が可能です。また、包材製造時に排出するCO2量を約15%削減することが可能です。
また、リサイクル適性に優れたバリアパッケージを2種類開発しました。レトルト食品向けのPP(ポリプロピレン)モノマテリアルバリアパッケージと、液体内容物向けのPE(ポリエチレン)モノマテリアルバリアパッケージです。これらの新製品はそれぞれ耐熱性等の強度と環境適性を両立しております。
さらに、「チューブなパウチ®」を開発し、公益社団法人日本包装技術協会が主催する「第46回木下賞 研究開発部門」を受賞しました。この製品は、消費者の利便性向上と、プラスチック樹脂使用量の大幅削減を同時に実現しました。
紙器では、レトルト対応の新型紙製スタンディングパウチを開発しました。この製品は「GL BARRIER」を使用し、レトルト殺菌や電子レンジ加熱が可能な紙製パウチです。従来のアルミを使用したレトルトパウチと比較して、プラスチック使用量を約25%削減でき、また、包材製造時のCO2排出量を約17%削減できます。
建装材関連では、周波数28~300GHzのミリ波帯で、複数の電波を選択的に吸収する、マルチバンド対応ミリ波吸収体を開発しました。この製品はメタサーフェス構造(※4)のフレキシブル性のあるシートで、装飾用としてオフィスや工場内部に取り付けることができ、第5世代移動通信システム(5G)で使用する高周波数のミリ波帯において、無線通信機器からの電波の干渉や漏洩を低減し、高速化・低遅延・多数同時接続を可能にします。
(3) エレクトロニクス事業分野
近年、スマートフォンやゲーム機の高機能化、産業用の自律走行ロボットなどの普及に伴い、3Dセンサの市場拡大が期待されております。当社は、2023年4月1日付で吸収合併した株式会社ブルックマンテクノロジと共同で、1~30mの範囲で距離を測定できる「ハイブリッド駆動ToF(Time of Flight)方式」(※5)による「三次元距離画像センサ(3Dセンサ)」を開発しました。本製品は、従来の「間接ToF方式」による3Dセンサよりも5倍以上の距離の計測が可能で、自律飛行ドローンや自律走行型搬送ロボットなどの操作性と安全性の向上に寄与します。また、独自の外光ノイズ除去機能を搭載し、CMOS方式のイメージセンサとして世界で初めて(※6)真夏の日中に相当する照度10万ルクスの環境下で、最長20mまでの距離測定が可能となりました。
製造工場の環境データ自動収集とリスクマネジメント強化を可能とする統合監視システム「e-Platch®(イープラッチ)」を開発しました。本製品は、当社が以前より進めてきた次世代LPWA(低消費電力広域ネットワーク)規格ZETA(ゼタ)(※7)を活用し、「死角のない通信ネットワーク」上で「環境データ自動収集システム」を構築したものです。本システムにより、工場・施設の環境保全や、点検作業の負荷軽減・効率化が可能となり、人的リソースをより積極的に環境保全活動へ割り当てることができます。さらに、工場内の金属同士の衝突や摩擦により起こる異常音を遠隔監視する収音センシングシステムを「e-Platch®」専用のツールとして開発しました。これにより、設備の異常を早期発見し、機械部品の交換時期を適切に把握することで、保守・点検作業の効率化を実現できます。
当社が2016年より提供している液晶調光フィルム「LC MAGIC™(エルシーマジック)」の新たなラインアップとして、「ノーマルブラック」を開発しました。これは、電源OFF時に可視光線透過率が「5%」の「黒色」となるものです。本製品を自動車のサンルーフなどに搭載することで、電源ONの時には開放的な空間、電源OFF時には遮光性のあるプライバシー空間を瞬時に実現します。モーターや可動部品を必要としないため、車体の軽量化と車内の居住性向上の両立が可能です。
(4) その他
ヘルスケア関連では、当社は「健康・ライフサイエンス」領域を今後の成長領域と定め、事業拡大を進めております。電子カルテデータの匿名加工とデータベース構築を共同で推進してきたICI株式会社を2023年1月に連結子会社化しました。
これにより、2022年度初めに提供を開始した「DATuM IDEA(デイタム イデア)」は、医療機関から収集した電子カルテデータから、診断患者数、処方患者数、性別、年代などの情報を直感的に分析できるようになります。電子カルテデータベースの強化と、データ分析ツールのさらなる拡充により、より効果的な医薬品開発や治験モデル構築、個別化医療の実現に貢献していきます。
また、当社は、地方自治体が直面する課題にも取り組んでおります。ライフスタイルの変化や長寿命化により、医療費の適正化や健康増進対策が必要になっております。自治体の保有する健診結果や医療レセプト情報、自治体独自の保健事業によって取得した住民のヘルスケアデータなどを集約・可視化する「自治体向けBIツール」を開発しました。この製品は、保有データを一元的に分析し、新たな保険事業の立案に貢献します。今後は、疾病予測や介護状態の予測など、AIによる分析機能などのアップデートを進め、提供先の拡大と、当社が提供する他のヘルスケア関連サービスとの連携も進めていきます。
北海道大学大学院先端生命科学研究院の湯山耕平特任准教授らの研究グループと共同研究を行い、アルツハイマー病の発症リスク評価に有用な血液バイオマーカーである、アミロイドβ(※8)が結合したエクソソーム(※9)を1個単位で識別・検出する技術を開発しました。本技術は、検出チップ上に集積した100万個のマイクロメートルサイズの微小なウェル(※10)に、標的となる分子や粒子を確率的に1個ずつ閉じ込め、分子や粒子から発する信号の有り「1」、無し「0」で標的をデジタル検出・定量する高感度バイオセンシング技術です。当社は、高感度蛍光検出技術「Digital ICA®」や検査キット等の提供により、エクソソームの検出・定量に関する技術開発を推進します。
また、大阪大学等との共同研究により「3Dプリントによる独自組織造形技術」の実用化を目指し、株式会社島津製作所、伊藤ハム米久ホールディングス株式会社、株式会社シグマクシスと共に「培養肉未来創造コンソーシアム」を設立しました。この協業により「3Dバイオプリント技術の応用開発」「生産・流通までの一貫したバリューチェーンの確立」「省庁や民間企業との連携による法規制整備への貢献」を進めます。
昨今の少子高齢化による労働力不足への対策として、受付業務ロボットや清掃ロボットなどを一元管理する「TransBots®(トランスボッツ)」を開発しております。AIによる人物認識機能を有しており、登録した人物が入場した際に、走行している複数台のロボットがその人物を認識し、病院や入場制限が設けられた展示会など様々な活用が期待できます。さらに、テレプレゼンスロボット(※11)以外の搬送ロボット、移動型ピッキングロボットなど多様なサービスロボットへの応用も可能です。
(※1)H-LINCOS:保健医療用の長期セキュアデータ保管・交換システムH-LINCOS(Healthcare Long-Term Integrity and Confidentiality Protection System)は秘密分散と量子暗号など秘匿通信及び公開鍵認証基盤の技術により、電子カルテデータのセキュアかつ可用性の高いバックアップや、医療機関間での相互利用などを行う保健医療用の長期セキュアデータ保管・交換システム。
(※2)プライベート認証局:社内ネットワークなど限られた範囲で運用され、サーバーの正当性を保証する電子証明書を発行する機能を持つシステム。
(※3)GL BARRIER:当社が開発した世界最高水準のバリア性能を持つ透明バリアフィルムの総称。独自のコーティング層と高品質な蒸着層を組み合わせた多層構造でバリア性能を発揮。
(※4)メタサーフェス構造:波長より小さい構造体を周期配置して任意の誘電率・透磁率を実現する人工媒質(メタマテリアル)の一種で、構造体の周期を二次元配置した人工表面。
(※5)ハイブリッド駆動ToF(Time of Flight)方式:静岡大学・川人祥二教授により提唱されたToF計測法で、位相差によって距離を計測する「間接ToF方式」をベースに、時間差によって計測する「直接ToF方式」の機能を組み合わせた、新しいセンシング技術。「マルチタイムウインドウ技術」と呼ばれる、複数の短時間ウインドウの組み合わせにより光の往復時間を推定するため、従来の間接ToF方式と比較して、屋外でのセンシング時に問題となる外光ノイズの影響を受けにくいという特長がある。
(※6)CMOS方式のイメージセンサとして世界で初めて:アバランシェフォトダイオードを用いない、従来のCMOSイメージセンサ型の画素構造を用いたToFセンサとして。(先行技術論文及び先行製品のカタログ調査に基づく当社調べ(2022年6月))
(※7)ZETA:英国ZiFiSense社が開発した、超狭帯域(UNB: Ultra Narrow Band)による多チャンネルでの通信、メッシュネットワークによる広域の分散アクセス、双方向での低消費電力通信が可能といった特長を持つ、IoTに適した最新のLPWA(Low Power Wide Area)ネットワーク規格。LPWAの規格の1つであるZETAは、中継器を多段に経由するマルチホップ形式の通信を行うことで、他のLPWAと比べ、基地局の設置を少なくでき、低コストでの運用が可能な方式として注目されている。
(※8)アミロイドβ:アミロイドβ前駆体タンパク質が切断されて産生され、約40個のアミノ酸で構成される蛋白質。アルツハイマー病では、この蛋白質の過剰な脳内蓄積が発病の引き金になると考えられている。
(※9)エクソソーム:様々な種類の細胞から分泌される細胞外小胞の一種。特定の分子を包含し、細胞間で受け渡すキャリアーの役割を担う。
(※10)微小なウェル:樹脂版の表面に設けられた直径数マイクロメートルの凹部で、1つの解析チップに100万個を配置。検出対象の分子を格納し、検出反応が行われる反応容器となる。
(※11)テレプレゼンスロボット:遠隔制御技術とロボット技術を組み合わせ、人が離れた場所から制御し、自分を存在(プレゼンス)させるロボット。
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