有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100R8UQ (EDINETへの外部リンク)
日本製紙株式会社 事業等のリスク (2023年3月期)
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。ただし、これらはすべてのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外も存在し、それらのリスクが影響を与える可能性があります。また文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものです。
(リスク管理体制)
当社は、取締役会の監督のもと、代表取締役社長を責任者とするリスクマネジメント委員会を設置しています。当社グループの経営におけるリスク発生防止と実際にリスクが発生した場合の影響を最小限にとどめることを目的として、リスクマネジメント規程と危機対策規程を定め、平常時と緊急時の両面で対応することとしており、リスクマネジメント委員会では、当社グループのリスクを定期的に洗い出し、評価、防止対策及び発生時の対策を検討・審議し、取締役会に報告します。
(1) 経営戦略に関する重要なリスク
① 原燃料調達や国内外輸送に関するリスク
当社グループは、主としてチップ、古紙、重油、石炭、薬品などの原燃料を購入して製品を製造・販売する事業を行っています。そのため国際市況及び国内市況による原燃料価格の変動リスクを負っており、その変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。また新型コロナウイルス感染症拡大を発端とした世界的なコンテナ輸送能力不足や港湾労働者・トラックドライバー不足、地政学リスクに起因するグローバルサプライチェーンの寸断、さらには環境問題対応によるクリーンエネルギーの使用や原燃料価格上昇の価格転嫁のため、輸送費の上昇や納期遅延が発生しています。今後国内においては、2024年4月からトラックドライバーの残業規制が強化されることによりドライバー不足が懸念される、いわゆる「物流2024年問題」が顕在化することで、この傾向がさらに強くなることが予想され、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。主な対策として、原料や燃料の一部について、リスクヘッジのため予約購入のスキームを設定し運用する等の施策を取っています。また、安定調達のため、船会社との良好な関係を構築するとともに、必要に応じて他社との共同輸送・共同調達の検討、長期契約や複数社・複数地域からの購買、グループ横連携強化による融通及び調達網拡大等を進めています。在庫については、在庫水準の見直しなど、適正な在庫管理や融通を行っています。
② 事業構造転換・新規事業創出遅延に関するリスク
当社グループの事業の1つである洋紙事業は、DXの進展や新型コロナウイルスを契機とした生活様式の変化を受けて市場縮小の傾向が続いています。そのため生活関連事業等の成長事業への経営資源のシフト、新規事業・新製品の早期戦力化を進めています。これらが予定通り進捗しないことにより、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。主な取り組みとしては、容器包装を中心としたプラスチック代替となる紙製品の開発、CNFをはじめとする木質バイオマスの利用拡大、成長事業への投資や人材の再配置、海外事業の拡大等になりますが、これらを計画通り進め、収益の向上に努めていきます。
特に海外事業については、グループとして成長していくため、これまで以上に海外展開の速度を速めています。当社グループは、北米・南米・北欧・東南アジア・豪州等で、紙・パルプの製造販売、植林等の海外事業展開を行っており、既存事業とのシナジー効果発現を目指しています。なお、海外における事業展開には、現地政府による法規制の変更、労働争議の発生、政情不安に伴う経済活動への影響等のリスクが内在しています。このため外部法律事務所と情報を共有し適切に対応することでリスクの未然防止に努めています。
③ 気候変動に関するリスク
エネルギー多消費型の紙・パルプを主要事業とする当社グループは、気候変動問題への対応を、企業グループ理念を実現するための重要課題のひとつとして捉え、2050年カーボンニュートラルを宣言し、GHG削減に取り組んでいます。脱炭素化の動きが急加速する状況において、当社グループの対応が遅れた場合、カーボンプライシングなどの規制リスクや顧客、投資家からのレピュテーションリスクにより財務影響を受ける可能性があります。
当社グループは、これらリスクに関わる財務影響を適切に評価し、TCFDに基づく開示を行っています。リスクについては、その低減のために、高効率設備の導入や製造工程の見直しによる省エネルギー対策、エネルギー構成の見直しによる非化石エネルギーへの転換を加速することで、GHGの早期削減に取り組んでいます。また、モーダルシフト化の推進や輸送距離の短縮など、バリューチェーンでの排出削減についてもステークホルダーと協働して取り組んでいます。自助努力による削減を継続しつつ、カーボンフリー燃料の利用や森林吸収等により2050年カーボンニュートラルを目指します。
④ 製品需要及び市況の変動リスク
当社グループは、紙・板紙事業をはじめ、生活関連事業、エネルギー事業、木材・建材・土木建設関連事業等を行っています。これらの製品等は経済情勢等に基づく需要の変動リスク及び市況動向等に基づく製品売価の変動リスクを負っており、その変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。
対策として、DXの進展やコロナ禍における生活様式の変化により、市場の縮小傾向が大きい洋紙事業については、生産体制の再編成を行い、生産拠点の集約に取り組むとともに、需要増が見込まれる生活関連事業への投資等を実施しています。
(2) 事業環境及び事業活動に関するリスク
① 生産設備に関するリスク
当社グループは、主として需要と現有設備を勘案した見込生産を行っていますが、設備トラブルや火災等により生産設備の稼働率が低下した場合などに製品供給力が低下するリスクを負っており、製品供給力の変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。そのため、生産設備について定期的な点検を行い、脆弱箇所を計画的に更新する老朽化対策工事等の実施、複数工場での供給体制の構築、在庫の適正化といった対応を行っています。
② 自然災害及び感染症等のリスク
当社グループの生産及び販売拠点周辺で地震や大規模な自然災害が発生し、生産・販売等の事業活動に影響を及ぼした場合、生産停止による機会損失、設備復旧のための費用、製品・商品・原材料等への損害などにより、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。当社グループでは、危機対策規程により緊急時には危機対策本部を立ち上げ、従業員や家族の安否確認、自社や顧客の被災状況の把握、顧客企業への供給継続のための対応を図ります。また緊急事態への対応のためBCM(事業継続マネジメント)を整備し、複数工場での供給体制の構築や、災害を想定した避難訓練や安否確認訓練等を行っています。
新型コロナウイルス感染症は、季節性インフルエンザ等の他の疾病と同様の「5類感染症」に位置付けられましたが、従業員感染による製造ラインの停止リスクは残っています。当社グループは、新型コロナウイルス以外の感染症も含め、感染者の発生が多発して事業継続に影響が出る可能性のある場合の連絡体制を整備し、また必要に応じて対策本部の立ち上げを行う体制を準備しています。
③ 人材確保及び労務関連リスク
当社グループは、人材戦略を事業活動における重要課題の一つとして捉えており、今後の事業展開には適切な人材の確保・育成が必要と認識しています。適切な人材を十分に確保できなかった場合、当社グループの事業遂行に制約を受けることにより、経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。また、労務関連の各種コンプライアンス違反(雇用問題、ハラスメント、人権侵害等)が発生した場合、訴訟や当社グループの社会的信頼喪失により、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。
多様な人材の積極的な採用や育成、働き方の柔軟性・多様性を前提とした職場環境の整備等を通じて最適かつ効率的な人材の確保に努めており、従業員エンゲージメント向上施策として、2022年度から育児等のライフイベントと仕事との両立支援を中心とした社内制度の見直しを実施しました。また、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から緊急対応として行っていた在宅勤務制度を常設化しました。労務関連のコンプライアンス問題については、定期的にコンプライアンス研修を実施し、従業員のコンプライアンス意識の向上に努めています。
また当社グループは、全事業所で安全最優先での操業に努めていますが、労働災害の発生は、労働者の健康や人命が失われる重大なリスクであり、災害内容によっては企業としての管理責任を問われ、設備停止の可能性もあります。労働災害を防ぐため独自の労働安全衛生マネジメントシステムを運用し、事業所毎に具体的、継続的かつ自主的な活動を安全衛生計画として組み込み、労働災害の防止と労働者の健康増進、快適な職場環境など安全衛生水準の向上に努めています。
④ 環境法令関連のリスク
当社グループは、各種事業において環境関連の法規制の適用を受けており、これらの規制の変更・改正によって、生産活動が制限を受けるあるいは対策のための追加費用が発生するなどにより、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。環境関連の法改正状況について定期的にモニタリングするとともに、環境設備の定期点検や老朽化設備の対策工事の推進などを行っています。
⑤ 情報システムに関するリスク
当社グループは、情報システムに関するセキュリティを徹底・強化し、また急速に普及した在宅勤務環境においても十分な情報セキュリティ対策を講じています。しかし、今後コンピュータへの不正アクセスによる情報流出や犯罪行為による情報漏えい、業務遂行妨害等問題が発生した場合には、損害賠償請求や当社グループの社会的信頼喪失、業務停止等により、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。情報セキュリティに関しては時流に合わせた防衛システムの導入や従業員教育を行い、個人情報については「個人情報取扱規則」を定め、全役員、全従業員及び関係取引先への周知を図るなど、管理体制を強化しています。
⑥ ESG・SDGs等の社会的要求に対するリスク
当社グループは、気候変動問題への対応や持続可能な森林資源の活用、生物多様性の保全といった環境に関わる課題のほか、人権の尊重、多様な人材の活躍、ガバナンスの充実など、様々なESG課題に対応していく必要があります。ESG課題の取り組みについて、取り組みの遅れや、投資家やESG評価機関が求める情報を適切に開示できない場合、当社グループの中長期的な成長性についてステークホルダーからの理解と信頼を得られず、当社グループブランドの失墜や、社会的評価の低下により、当社の経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。当社は、ESG評価機関とのエンゲージメントをはじめとする、ステークホルダーとの丁寧なコミュニケーションを継続的に実施することにより、当社グループのESG課題の取り組みを通じた中長期的な成長性について理解と信頼を得られるように努めています。
主なESG課題のうち、気候変動に関する取り組みは別掲のとおりです。人権の尊重については、2004年に策定した「人権と雇用・労働に関する理念と基本方針」を、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に沿って2022年に「日本製紙グループ人権方針」として改定しました。「日本製紙グループ人権方針」は、当社グループのすべての役員と従業員に適用し、サプライヤー等の取引先に対しても、支持と順守を働きかけることとしています。さらに、2021年に人権ワーキンググループを立ち上げ、人権デュー・ディリジェンスを導入しました。紙・板紙事業、紙パック事業、ケミカル事業に関するバリューチェーンで、すべてのステークホルダーを対象に人権リスクをリストアップした後、それらの評価を実施し、優先度の高い人権リスクを抽出し、対策の実施を進めています。
また、当社グループの事業基盤は森林資源であり、「日本製紙グループ環境目標2030」で、生物多様性に配慮した持続可能な森林経営に関する目標を掲げています。既存事業の水辺林など配慮すべき地形情報の確認や、森林生態系の定点調査などを実施しています。また、生物多様性を保全するために伐採を行わない保護区・保護林を設定するなど、経済的に利用する森林と、環境保全のための森林を適切に管理しています。
⑦ 為替レートの変動リスク
当社グループは、輸出入取引等について為替変動リスクを負っています。輸出入の収支は、チップ、重油、石炭、薬品などの原燃料の輸入が、製品等の輸出を上回っており、主として米ドルに対して円安が生じた場合には経営成績にマイナスの影響を及ぼします。なお当社グループは、為替変動による経営成績への影響を軽減することを目的として、為替予約等を利用したリスクヘッジを実施しています。
⑧ 製造物責任に基づくリスク
当社グループは、製品について製造物責任に基づく損害賠償を請求される対象であり、現在のところ重大な損害賠償請求を受けていませんが、将来的には直面する可能性があります。製造物責任にかかる保険(生産物賠償責任保険)を付保していますが、当社グループが負う可能性がある損害賠償責任を補償するには十分でない場合があります。当社グループではグループ製品リスク委員会を設置し、グループ各社の製品安全リスクの監督、支援を行っています。また、主要製造会社はそれぞれに製品リスク委員会を設置するとともに、製品リスク管理規程の整備を進め、製品安全事故の防止に努めています。
⑨ 訴訟等のリスク
当社グループは、業務の遂行にあたり法令遵守などコンプライアンス経営に努めていますが、国内外の事業活動の遂行にあたり、刑事・民事・租税・独占禁止法・製造物責任法・知的財産権・環境問題・労務問題等に関連した訴訟等のリスクを負っており、その結果、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。特に環境意識の高まりにより、森林資源の利用については地域住民への配慮や生物多様性の調査等を行っています。またコンプライアンスの遵守はグループ行動憲章にも掲げており、従業員に対し周知・研修活動を通じてコンプライアンス意識の喚起を行っています。
⑩ M&Aや業務提携に関するリスク
当社グループは、新たな事業機会の創出により持続的成長を実現するため、M&Aや業務提携等を行うことがありますが、事業環境等の変化により、当初期待した成果をあげられない場合には、経営成績や財政状態等に影響を与える可能性があります。これらの実施にあたっては、M&Aアドバイザーを活用しながら、事前に事業戦略や相乗効果を十分吟味のうえ実施を決定し、実施後は、最大の効果が得られるよう経営努力をしています。
(3) 財務・会計リスク
① 株価の変動リスク
当社グループは、取引先や関連会社等を中心に市場性のある株式を保有しており、株価の変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。このため保有株式の定期的な株価のモニタリングを行うことにより、財政状態に重要な影響を及ぼす可能性を察知しています。
② 金利の変動リスク
当社グループは、有利子負債などについて金利の変動リスクを負っており、その変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。当社では、長期借入金の固定金利借入の比率を一定水準以上に保っています。また、返済年限の分散化、調達の多様化に加えて金利スワップなどの金融商品を利用すること等により、金利変動リスクへの対応を行っています。
③ 信用リスク
当社グループは、与信管理規程に従い取引先の財務情報等を継続的に評価し、与信限度を設定するなど信用リスクに備えていますが、経営の悪化や破綻等により債権回収に支障をきたすなどの事象が発生した場合には、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。
④ 固定資産の減損リスク
当社グループは、生産設備や土地をはじめとする固定資産を保有しています。事業環境等の変化により当該資産から得られる将来キャッシュ・フローが著しく減少した場合、減損損失が発生し、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。
⑤ 退職給付債務に関するリスク
当社グループの退職給付費用及び債務は、年金資産の運用収益率や割引率等の数理計算上の前提に基づいて算出していますが、数理計算上の前提を変更する必要が生じた場合や株式市場の低迷等により年金資産が毀損した場合には、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。このため年金資産の運用については、外部コンサルタントの助言をもとに、リスク・リターン特性の異なる複数の資産クラス・運用スタイルへの分散投資を行っており、年金資産全体のリスク・リターンの分析を定期的に実施することで、分散効果の有効性について評価を実施しています。
⑥ 繰延税金資産の取崩しリスク
当社グループは、将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金に対して、将来の課税所得を見積った上で回収可能性を判断し、繰延税金資産を計上しています。しかし、事業環境等の変化による課税所得の減少や税制改正等により回収可能性を見直した結果、繰延税金資産の取崩しが発生し、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。
このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E11873] S100R8UQ)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
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