有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100R6CC (EDINETへの外部リンク)
ENEOSホールディングス株式会社 研究開発活動 (2023年3月期)
当社グループは、グループ理念に定めた『エネルギー・資源・素材における創造と革新』を目指し、エネルギー関連と金属関連を中心に研究開発活動を進めています。当連結会計年度における研究開発活動の概要は以下のとおりです。
(1)エネルギー (研究開発費 14,930百万円)
エネルギー・素材関連の研究開発活動は、ENEOS株式会社(以下、ENEOS)の中央技術研究所と各事業カンパニーの研究開発部が連携をしながら進めています。現在の事業領域については操業安定性向上と競争力強化を主体とした研究開発を進めるとともに、脱炭素・循環型社会の実現に貢献すべく、新規事業の創出、拡大に向けて重点領域を設定して、研究開発を推進しています。また、社外との連携にも力を入れており、大学との産学連携の推進のみならず、ベンチャーキャピタルへの出資やアクセラレータープログラムの実施等を通してベンチャー企業とも連携を図り、オープンイノベーションを促進しています。
①脱炭素エネルギー分野
カーボンニュートラル社会に向け、海外の安価で潤沢な再生可能エネルギーを大量貯蔵・輸送に適した物質に変換し、エネルギー供給の安定性を高め、国内に使いやすい形で提供するための技術開発を進めています。
CO2フリー水素分野では、再生可能エネルギーから得られた電力で直接トルエンを電解水素化することで、貯蔵・輸送が簡単なメチルシクロヘキサン(MCH)を低コストで製造する技術(Direct MCH®)の商業化に向けた開発を進めています。2023年1月には電極面積を工業化サイズまで拡大した中型電解槽プラント(150kW級)を豪州クイーンズランド州に開所し、実証試験を行っています。さらに2025年度をめどに大型電解槽プラント(5,000kW級)の技術開発及び実証を行う予定です。これらは、「直接MCH電解合成(Direct MCH®)技術開発」として、経済産業省及び国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の進めるGI基金事業に採択されています。また、CO2フリー水素と工場等や大気から回収したCO2を原料に液体燃料を製造する「合成燃料」の開発についても、カーボンニュートラル社会の実現に向けて重要な取り組みと位置付け、技術開発を進めています。こちらもGI基金事業「CO2等を用いた燃料製造技術開発プロジェクト」に採択されており、2022年度から小規模プラント検証、2024年度以降はスケールアップした大規模パイロットプラント検証に向けた技術検討に取り組み、早期の社会実装を目指します。
バイオ燃料分野では、凸版印刷株式会社と古紙を原料としたバイオエタノール事業の立上げについて協業検討を進めています。その他、バイオジェット燃料の商業化を目指した技術開発や事業化検討にも取り組んでいます。
再生可能エネルギーの有効活用の実現に向け、再エネ発電量や電力価格、水素需要に応じて水電解装置による水素製造を制御する水素EMS(エネルギーマネジメントシステム)の開発やVPP(仮想発電所)事業における蓄電池運用計画の最適化に取り組んでいます。水素製造や蓄電池制御の最適化による電力需給バランスの調整等の検証を通して、技術・ノウハウの蓄積を進めるとともに、地産地消エネルギー活用推進の一環として、東京都東村山市において、電気自動車を活用したエネルギーマネジメントシステム実証を2022年度より開始し、最適制御手法を検討しています。
さらに循環型社会の実現に向け、株式会社ブリヂストンと使用済タイヤの精密熱分解によるケミカルリサイクル技術の社会実装に向けた共同プロジェクトを進めています。本プロジェクトは「使用済タイヤからの化学品製造技術の開発」としてGI基金事業に採択されており、検討を継続しています。
社外連携については、早稲田大学との包括的かつ分野横断的なオープンイノベーションを通して、カーボンニュートラル社会の実現に資する技術を探索しています。早稲田キャンパス研究開発センターエリアに設置した「ENEOSラボ」を共同研究の拠点として、水素、電池材料、ロボット関連の「CO2削減に向けた革新技術の研究」に取り組んでいます。
②燃料油・化学品製造技術分野
製油所、製造所の安全・安定操業、競争力強化、及び液体燃料におけるCO2削減を目指した研究を行っており、中でもデジタル化技術の開発・活用においては、AI技術による石油化学プラントの連続自動運転が実用段階に入っており、対象装置を広げ、検討を継続しています。また、エンジンの熱効率向上が期待される革新燃焼技術(超希薄燃焼:スーパーリーンバーン)に適した燃料組成の検討を行い、製油所から得られる留分を利用することによるCO2削減の可能性を示すとともに、自社原料の更なる有効活用(ケミカルシフト)に向け、触媒・反応技術を活用した石油化学誘導品を開発し、光学材料原料等でユーザーより高い評価を得ています。
③機能材分野
機能材分野では、重点領域である「エラストマー」「高機能原料」「高機能樹脂」において、自社の強みである分子設計技術、配合技術、性能評価・分析技術を最大限に磨き、社会ニーズに応える素材開発を行っています。2022年4月より、JSR株式会社のエラストマー事業を承継した株式会社ENEOSマテリアル(以下、ENS)が事業を開始しました。承継したエラストマー分野では、環境に優しく、かつ確実に安全に止まる性能を有する低燃費タイヤの原料SSBR(溶液重合スチレン・ブタジエンゴム)や、リチウムイオン電池の負極用バインダー(接着剤)等の開発を行っています。高機能原料分野では、高耐熱・高透明性等の特長を有し、光学レンズや次世代ディスプレイ向け各種光学樹脂への適用が期待される脂環式モノマー等の開発、高機能樹脂分野では、次世代高速通信で使われる高周波帯に対応する低誘電LCP(液晶ポリマー)や、半導体封止材等への適用が期待されるENEOSの独自エポキシ樹脂を使用した高耐熱熱硬化レジン等の開発を行っています。現在はENSが保有するエラストマー技術とENEOSが保有する技術との融合による新たな素材開発を進めています。また、産学連携として東京工業大学や横浜国立大学と共同研究講座を設置して、素材開発を加速・深化させるオープンイノベーションの拠点としています。
④潤滑油分野
潤滑油分野では、地球環境に配慮した高性能潤滑油、グリースの製品開発に取り組んでいます。一例として、最新国際規格であるAPI SP/ILSAC GF-6の適合性能に加え、省燃費性能、加速性能、乗り心地性に優れるエンジン油「ENEOS X PRIME」を開発しました。このほかにも省燃費型駆動系油、安全・環境配慮型工業用潤滑油、自動車・産業用高性能グリース、新冷媒対応・省エネルギー型冷凍機油といった製品の開発を新規材料、新規解析評価技術を取り入れながら推進するとともに、高品質の製品を安定かつ効率的に製造するための製造技術の開発も行っています。さらに、世界的な潮流である脱炭素化への貢献のため、植物由来の基材を使用した潤滑油及びグリースや、電動モビリティ向けに冷却性能や電気絶縁性能を潤滑性と高次元で両立させた製品の技術開発にも注力しています。
⑤デジタル技術分野
デジタル技術を活用して自社業務の効率化や新たな価値を生み出すことを目指した研究を行っています。具体的には、プラントデータを活用した運転効率化、画像解析による安全・安定操業支援に加え、革新的な素材・触媒探索技術の研究を推進しています。一例として、株式会社Preferred Networks(以下、PFN社)と戦略的な協業体制を構築し、AI技術を活用した革新的事業創出に取り組んでいます。MI(マテリアルズ・インフォマティクス)分野ではPFN社との合弁会社として株式会社Preferred Computational Chemistryを設立し、共同開発した新物質開発・材料探索を高速化する汎用原子レベルシミュレータ「Matlantis™」をクラウドサービスとして提供する事業を展開しています。同サービスは2022年9月1日時点で41の企業・研究団体に導入され、触媒、電池材料、半導体、合金、潤滑油、セラミック材料、化学材料等、幅広い開発に用いられています。さらに、本技術に関する論文は著名な学術誌Nature Communicationsに掲載され、同誌編集部が特に注目する論文として選出されており、世界的にも高く評価されています。
また、ロボティクスを活用したプラント・次世代型エネルギー設備への保守点検サービス事業について、株式会社イクシスに出資し、協業検討を開始しました。デジタル技術を活用した新たなビジネス創出につなげることも目指し、国内外のスタートアップ企業等との連携も活発化させています。
(2)石油・天然ガス開発
該当事項はありません。
(3)金属 (研究開発費 13,573百万円)
金属事業(JX金属株式会社)では、長年培ってきたコア技術の進化・活用に加え、グループ企業内での技術コラボレーション、大学等研究機関との共同研究、外部企業とのパートナーシップ構築等、様々な形の共創を推進し、研究開発を行っています。データ社会の進展に寄与する次世代の先端素材の開発や、脱炭素や資源循環といった地球規模のESG課題解決に向けた製品・技術開発、車載用リチウムイオン電池(LiB)のリサイクル技術開発等に積極的に取り組んでいます。
①新規事業開発
CVD用塩化物、3Dプリンター用金属粉、銅微粉、LiBリサイクル及び電池材料の開発等について、事業部、関係会社等を跨ぎ全社横断で早期事業化に向けた取り組みを強化しています。
LiBリサイクル関連では、2022年4月に採択された新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のGI基金を活用し、リサイクルの環境負荷の定量評価、無害化、回収技術高度化をアカデミアと連携して進めています。さらに欧州では2022年1月にドイツ連邦経済・気候保護省(BMWK)が主導する共同研究開発コンソーシアム"HVBatCycle"へTANIOBIS GmbHを通じて参画し、TANIOBIS GmbH(ゴスラー)に、Volkswagen AG(フォルクスワーゲングループ)から提供される電池粉を用いるベンチスケールプラントを新設する等、国内・欧州でLiBリサイクル推進の取り組みを進めています。
また、2022年7月に行った、ドイツのダルムシュタット工科大学発スタートアップで優れた接合技術を有するNanoWired GmbHへの出資、及び2022年9月に行った、先端素材の分野において20年以上の投資実績のあるベンチャーキャピタルファンドPangaea Ventures Impact Fund, LPへの出資等、各スタートアップとの共創を通したスピーディな新規事業創出の取り組みを進めています。
②事業別(資源分野)
資源分野では、選鉱工程に適用する自動化技術や鉱石からのレアメタル回収技術の開発を進めています。また、環境負荷低減に向けて、鉱山で使用する重機等のCO2排出量削減に資する技術等の調査を進めています。
③事業別(金属・リサイクル分野)
銅製錬におけるリサイクル原料処理拡大に向け、リサイクル原料から回収する貴金属及びレアメタル等の金属種拡大のための技術開発や、銅製錬工程からの有価金属回収工程の効率化を推進しています。他製錬所との差別化として、2040年にリサイクル原料処理量を50%とするハイブリッド製錬を実現することを目指し、技術開発を進めています。
④事業別(薄膜材料分野)
薄膜材料分野では、高純度化技術及び材料組成・結晶組織の制御技術をベースに、半導体・電子部品用途向け製品に関する開発を進めています。半導体用ターゲット、フラットパネルディスプレイ用ターゲット、磁気記録膜用ターゲット等の各種スパッタリング用ターゲットや、その他電子材料における新規製品開発及び関連プロセスの技術開発に継続的に取り組んでいます。
⑤事業別(機能材料分野)
機能材料分野では、コネクタ等の用途に、精密な組成制御、独自の圧延加工プロセス及びユーザーニーズに適合した評価技術を用いて、強度・導電性・加工性・耐久性に優れた高機能銅合金の開発を進めています。次世代材料として、コルソン系及びチタン系新規銅合金の開発等、更なる高機能製品化に取り組んでいます。また、プリント配線板材及び シールド材用途等では、屈曲性、エッチング性、密着性等の高い機能を付加した銅箔等の開発・バージョンアップを進めています。
⑥基盤技術開発
分析及びシミュレーションについて最先端技術の導入・開発を進め、それらを駆使することにより技術開発の促進・効率化を図っています。
これらに、その他の事業における研究開発費861百万円を加えた当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は、29,364百万円です。
(1)エネルギー (研究開発費 14,930百万円)
エネルギー・素材関連の研究開発活動は、ENEOS株式会社(以下、ENEOS)の中央技術研究所と各事業カンパニーの研究開発部が連携をしながら進めています。現在の事業領域については操業安定性向上と競争力強化を主体とした研究開発を進めるとともに、脱炭素・循環型社会の実現に貢献すべく、新規事業の創出、拡大に向けて重点領域を設定して、研究開発を推進しています。また、社外との連携にも力を入れており、大学との産学連携の推進のみならず、ベンチャーキャピタルへの出資やアクセラレータープログラムの実施等を通してベンチャー企業とも連携を図り、オープンイノベーションを促進しています。
①脱炭素エネルギー分野
カーボンニュートラル社会に向け、海外の安価で潤沢な再生可能エネルギーを大量貯蔵・輸送に適した物質に変換し、エネルギー供給の安定性を高め、国内に使いやすい形で提供するための技術開発を進めています。
CO2フリー水素分野では、再生可能エネルギーから得られた電力で直接トルエンを電解水素化することで、貯蔵・輸送が簡単なメチルシクロヘキサン(MCH)を低コストで製造する技術(Direct MCH®)の商業化に向けた開発を進めています。2023年1月には電極面積を工業化サイズまで拡大した中型電解槽プラント(150kW級)を豪州クイーンズランド州に開所し、実証試験を行っています。さらに2025年度をめどに大型電解槽プラント(5,000kW級)の技術開発及び実証を行う予定です。これらは、「直接MCH電解合成(Direct MCH®)技術開発」として、経済産業省及び国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の進めるGI基金事業に採択されています。また、CO2フリー水素と工場等や大気から回収したCO2を原料に液体燃料を製造する「合成燃料」の開発についても、カーボンニュートラル社会の実現に向けて重要な取り組みと位置付け、技術開発を進めています。こちらもGI基金事業「CO2等を用いた燃料製造技術開発プロジェクト」に採択されており、2022年度から小規模プラント検証、2024年度以降はスケールアップした大規模パイロットプラント検証に向けた技術検討に取り組み、早期の社会実装を目指します。
バイオ燃料分野では、凸版印刷株式会社と古紙を原料としたバイオエタノール事業の立上げについて協業検討を進めています。その他、バイオジェット燃料の商業化を目指した技術開発や事業化検討にも取り組んでいます。
再生可能エネルギーの有効活用の実現に向け、再エネ発電量や電力価格、水素需要に応じて水電解装置による水素製造を制御する水素EMS(エネルギーマネジメントシステム)の開発やVPP(仮想発電所)事業における蓄電池運用計画の最適化に取り組んでいます。水素製造や蓄電池制御の最適化による電力需給バランスの調整等の検証を通して、技術・ノウハウの蓄積を進めるとともに、地産地消エネルギー活用推進の一環として、東京都東村山市において、電気自動車を活用したエネルギーマネジメントシステム実証を2022年度より開始し、最適制御手法を検討しています。
さらに循環型社会の実現に向け、株式会社ブリヂストンと使用済タイヤの精密熱分解によるケミカルリサイクル技術の社会実装に向けた共同プロジェクトを進めています。本プロジェクトは「使用済タイヤからの化学品製造技術の開発」としてGI基金事業に採択されており、検討を継続しています。
社外連携については、早稲田大学との包括的かつ分野横断的なオープンイノベーションを通して、カーボンニュートラル社会の実現に資する技術を探索しています。早稲田キャンパス研究開発センターエリアに設置した「ENEOSラボ」を共同研究の拠点として、水素、電池材料、ロボット関連の「CO2削減に向けた革新技術の研究」に取り組んでいます。
②燃料油・化学品製造技術分野
製油所、製造所の安全・安定操業、競争力強化、及び液体燃料におけるCO2削減を目指した研究を行っており、中でもデジタル化技術の開発・活用においては、AI技術による石油化学プラントの連続自動運転が実用段階に入っており、対象装置を広げ、検討を継続しています。また、エンジンの熱効率向上が期待される革新燃焼技術(超希薄燃焼:スーパーリーンバーン)に適した燃料組成の検討を行い、製油所から得られる留分を利用することによるCO2削減の可能性を示すとともに、自社原料の更なる有効活用(ケミカルシフト)に向け、触媒・反応技術を活用した石油化学誘導品を開発し、光学材料原料等でユーザーより高い評価を得ています。
③機能材分野
機能材分野では、重点領域である「エラストマー」「高機能原料」「高機能樹脂」において、自社の強みである分子設計技術、配合技術、性能評価・分析技術を最大限に磨き、社会ニーズに応える素材開発を行っています。2022年4月より、JSR株式会社のエラストマー事業を承継した株式会社ENEOSマテリアル(以下、ENS)が事業を開始しました。承継したエラストマー分野では、環境に優しく、かつ確実に安全に止まる性能を有する低燃費タイヤの原料SSBR(溶液重合スチレン・ブタジエンゴム)や、リチウムイオン電池の負極用バインダー(接着剤)等の開発を行っています。高機能原料分野では、高耐熱・高透明性等の特長を有し、光学レンズや次世代ディスプレイ向け各種光学樹脂への適用が期待される脂環式モノマー等の開発、高機能樹脂分野では、次世代高速通信で使われる高周波帯に対応する低誘電LCP(液晶ポリマー)や、半導体封止材等への適用が期待されるENEOSの独自エポキシ樹脂を使用した高耐熱熱硬化レジン等の開発を行っています。現在はENSが保有するエラストマー技術とENEOSが保有する技術との融合による新たな素材開発を進めています。また、産学連携として東京工業大学や横浜国立大学と共同研究講座を設置して、素材開発を加速・深化させるオープンイノベーションの拠点としています。
④潤滑油分野
潤滑油分野では、地球環境に配慮した高性能潤滑油、グリースの製品開発に取り組んでいます。一例として、最新国際規格であるAPI SP/ILSAC GF-6の適合性能に加え、省燃費性能、加速性能、乗り心地性に優れるエンジン油「ENEOS X PRIME」を開発しました。このほかにも省燃費型駆動系油、安全・環境配慮型工業用潤滑油、自動車・産業用高性能グリース、新冷媒対応・省エネルギー型冷凍機油といった製品の開発を新規材料、新規解析評価技術を取り入れながら推進するとともに、高品質の製品を安定かつ効率的に製造するための製造技術の開発も行っています。さらに、世界的な潮流である脱炭素化への貢献のため、植物由来の基材を使用した潤滑油及びグリースや、電動モビリティ向けに冷却性能や電気絶縁性能を潤滑性と高次元で両立させた製品の技術開発にも注力しています。
⑤デジタル技術分野
デジタル技術を活用して自社業務の効率化や新たな価値を生み出すことを目指した研究を行っています。具体的には、プラントデータを活用した運転効率化、画像解析による安全・安定操業支援に加え、革新的な素材・触媒探索技術の研究を推進しています。一例として、株式会社Preferred Networks(以下、PFN社)と戦略的な協業体制を構築し、AI技術を活用した革新的事業創出に取り組んでいます。MI(マテリアルズ・インフォマティクス)分野ではPFN社との合弁会社として株式会社Preferred Computational Chemistryを設立し、共同開発した新物質開発・材料探索を高速化する汎用原子レベルシミュレータ「Matlantis™」をクラウドサービスとして提供する事業を展開しています。同サービスは2022年9月1日時点で41の企業・研究団体に導入され、触媒、電池材料、半導体、合金、潤滑油、セラミック材料、化学材料等、幅広い開発に用いられています。さらに、本技術に関する論文は著名な学術誌Nature Communicationsに掲載され、同誌編集部が特に注目する論文として選出されており、世界的にも高く評価されています。
また、ロボティクスを活用したプラント・次世代型エネルギー設備への保守点検サービス事業について、株式会社イクシスに出資し、協業検討を開始しました。デジタル技術を活用した新たなビジネス創出につなげることも目指し、国内外のスタートアップ企業等との連携も活発化させています。
(2)石油・天然ガス開発
該当事項はありません。
(3)金属 (研究開発費 13,573百万円)
金属事業(JX金属株式会社)では、長年培ってきたコア技術の進化・活用に加え、グループ企業内での技術コラボレーション、大学等研究機関との共同研究、外部企業とのパートナーシップ構築等、様々な形の共創を推進し、研究開発を行っています。データ社会の進展に寄与する次世代の先端素材の開発や、脱炭素や資源循環といった地球規模のESG課題解決に向けた製品・技術開発、車載用リチウムイオン電池(LiB)のリサイクル技術開発等に積極的に取り組んでいます。
①新規事業開発
CVD用塩化物、3Dプリンター用金属粉、銅微粉、LiBリサイクル及び電池材料の開発等について、事業部、関係会社等を跨ぎ全社横断で早期事業化に向けた取り組みを強化しています。
LiBリサイクル関連では、2022年4月に採択された新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のGI基金を活用し、リサイクルの環境負荷の定量評価、無害化、回収技術高度化をアカデミアと連携して進めています。さらに欧州では2022年1月にドイツ連邦経済・気候保護省(BMWK)が主導する共同研究開発コンソーシアム"HVBatCycle"へTANIOBIS GmbHを通じて参画し、TANIOBIS GmbH(ゴスラー)に、Volkswagen AG(フォルクスワーゲングループ)から提供される電池粉を用いるベンチスケールプラントを新設する等、国内・欧州でLiBリサイクル推進の取り組みを進めています。
また、2022年7月に行った、ドイツのダルムシュタット工科大学発スタートアップで優れた接合技術を有するNanoWired GmbHへの出資、及び2022年9月に行った、先端素材の分野において20年以上の投資実績のあるベンチャーキャピタルファンドPangaea Ventures Impact Fund, LPへの出資等、各スタートアップとの共創を通したスピーディな新規事業創出の取り組みを進めています。
②事業別(資源分野)
資源分野では、選鉱工程に適用する自動化技術や鉱石からのレアメタル回収技術の開発を進めています。また、環境負荷低減に向けて、鉱山で使用する重機等のCO2排出量削減に資する技術等の調査を進めています。
③事業別(金属・リサイクル分野)
銅製錬におけるリサイクル原料処理拡大に向け、リサイクル原料から回収する貴金属及びレアメタル等の金属種拡大のための技術開発や、銅製錬工程からの有価金属回収工程の効率化を推進しています。他製錬所との差別化として、2040年にリサイクル原料処理量を50%とするハイブリッド製錬を実現することを目指し、技術開発を進めています。
④事業別(薄膜材料分野)
薄膜材料分野では、高純度化技術及び材料組成・結晶組織の制御技術をベースに、半導体・電子部品用途向け製品に関する開発を進めています。半導体用ターゲット、フラットパネルディスプレイ用ターゲット、磁気記録膜用ターゲット等の各種スパッタリング用ターゲットや、その他電子材料における新規製品開発及び関連プロセスの技術開発に継続的に取り組んでいます。
⑤事業別(機能材料分野)
機能材料分野では、コネクタ等の用途に、精密な組成制御、独自の圧延加工プロセス及びユーザーニーズに適合した評価技術を用いて、強度・導電性・加工性・耐久性に優れた高機能銅合金の開発を進めています。次世代材料として、コルソン系及びチタン系新規銅合金の開発等、更なる高機能製品化に取り組んでいます。また、プリント配線板材及び シールド材用途等では、屈曲性、エッチング性、密着性等の高い機能を付加した銅箔等の開発・バージョンアップを進めています。
⑥基盤技術開発
分析及びシミュレーションについて最先端技術の導入・開発を進め、それらを駆使することにより技術開発の促進・効率化を図っています。
これらに、その他の事業における研究開発費861百万円を加えた当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は、29,364百万円です。
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