有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100R9YB (EDINETへの外部リンク)
富士フイルムホールディングス株式会社 研究開発活動 (2023年3月期)
当社グループは、写真感光材料やドキュメント等の事業で培った材料化学、光学、解析、画像等の幅広い基盤技術のもと、機能性材料、ファインケミカル、エレクトロニクス、メカトロニクス、生産プロセス等の技術領域で多様なコア技術を有しています。現在、様々な分野でビジネスを展開している当社グループでは、これらの基盤技術とコア技術を融合した商品設計によって、重点事業分野への研究開発を進める一方、将来を担う新規事業の創出も進めています。バイオ医薬品の開発・製造受託事業の成長を一段と加速させるため、バイオCDMO事業の中核会社FUJIFILM Diosynth Biotechnologies(以下、「FDB」と記載します。)の欧米拠点に、総額約2,000億円の大規模投資を行います。本投資は、バイオ医薬品市場で高いウエイトを占める抗体医薬品の生産能力増強を目的に、FDBのデンマーク拠点と米国テキサス拠点に対して実施するものです。今回、当社は、抗体医薬品の旺盛な製造受託ニーズを受け、最短で生産設備の立ち上げが可能なデンマーク拠点に、20,000リットル培養タンク8基を追加導入する第二弾大型設備投資を行います。本投資により、2026年までに、同サイズのタンク保有数を、デンマーク拠点で20基、全世界で合計28基に拡大させます。また、世界最大のバイオ医薬品市場である米国にも戦略的投資を行い、欧米両市場で連続生産システムによる原薬製造体制を確立します。今回、英国拠点に続き、米国テキサス拠点に連続生産システムによるGMP製造が可能な設備を導入します。新薬開発を行う顧客との協働のみならず規制当局との連携で早期商用化を目指し、連続生産システムを用いた製造受託のグローバルな市場形成を図ります。
また、細胞培養に必要な培地の事業成長を加速させるため、米国子会社のFUJIFILM Irvine Scientific, Inc.(以下、「FISI」と記載します。)に約260億円の設備投資を行い、培地の生産拠点を米国ノースカロライナ州に新設します。今回の設備投資により、当社グループとして世界5拠点を有する、培地のグローバル生産体制を構築し、バイオ医薬品の研究開発・製造を強力にサポートしていきます。なお、新設する拠点は、2025年に稼働を開始する予定です。
このほか、デジタル病理診断用ソフトウェア等の開発・販売を行っている、Inspirata, Inc.のデジタル病理部門を買収しました。これにより、当社グループはデジタル病理事業に本格参入し、メディカルシステム事業の成長をさらに加速させます。世界トップシェアを誇る当社グループの医療用画像情報システム(PACS)と本デジタル病理診断用ソフトウェアを組み合わせて院内検査画像の一元化を実現し、病理診断ワークフローの効率化を支援していきます。
当社グループでは、富士フイルム㈱、富士フイルムビジネスイノベーション㈱及びその他の子会社とのグループシナジーを強化するとともに、他社とのアライアンス、M&A及び産官学との連携を強力に推進し、新たな成長軌道を確立していきます。
当連結会計年度における研究開発費の総額は154,147百万円(前年度比2.4%増)、売上高比5.4%となりました。各セグメントに配賦していない汎用性の高い上記基盤技術の強化、新規事業創出のための基礎研究費は16,065百万円です。
当連結会計年度の研究開発の主な成果は次のとおりであります。
(1)ヘルスケア セグメント
メディカルシステム事業では、国立がん研究センターと共同で開発したAI技術開発の研究基盤システムを用いて、プログラミング等の専門知識がなくても医師や研究者が自身で画像診断支援AI技術を開発することが可能な「SYNAPSE Creative Space」を開発しました。上部消化管の内視鏡検査時に胃腫瘍性病変や食道扁平上皮癌が疑われる領域をリアルタイムに検出し、胃がん・食道がんの早期発見をサポートする内視鏡診断支援ソフトウェア「EW10-EG01」について、薬機法に基づく医療機器製造販売承認(薬事承認)を取得しました。また、乳房の断層画像を生成し内部構造の3次元的な観察を可能にするトモシンセシス機能を搭載し、低線量・高画質とAI技術によるワークフロー向上を実現したデジタルマンモグラフィシステム「AMULET SOPHINITY」を発売しました。富士フイルム㈱と地方独立行政法人東京都健康長寿医療センターは、AI技術を活用した新たな認知症スクリーニング検査手法の共同研究を開始しました。本研究では、高精度センサーを搭載した眼鏡型ウェアラブルデバイスを用いて患者の視線移動、まばたきの回数、頭部の傾き、歩行時の左右バランス等のデータを、AI技術を用いて解析することで、認知症疑いの判定に有効なデータ指標を見出すことを目指します。また、富士フイルムヘルスケア㈱と国立大学法人千葉大学は、次世代CT装置「フォトンカウンティングCT」(以下、「PCCT」と記載します。)の臨床有用性を評価する共同研究を開始しました。本研究は、富士フイルムヘルスケア㈱が開発したPCCTを用いて撮影した組織のデータを収集・検証し、組織内出血やがんの早期発見の可能性等を検討するものです。
バイオCDMO事業では、当社グループ国内初のバイオCDMO拠点を富山県富山市に新設します。新拠点は、富士フイルム富山化学㈱による設備投資を通じて設立するもので、2026年度の稼働を予定しています。本拠点には、海外で培ってきた高度なバイオ関連技術やデュアルユース設備等を導入します。バイオ医薬品のプロセス開発・製造受託サービスを製薬企業に提供し、事業成長を加速させていきます。また、パンデミック時には、受託サービスを通じて、製薬企業による国産ワクチンの迅速開発・供給をサポートします。
ライフサイエンス事業では、米国子会社のFUJIFILM Cellular Dynamics, Inc.(以下、「FCDI」と記載します。)が、グローバルに事業展開するヘルスケア企業Novo Nordisk社と、治療用iPS細胞を利用できる権利を同社に供与する契約を締結しました。本契約は、FCDIがNovo Nordisk社に対して、細胞治療薬の研究開発や治験薬製造・商業生産を対象にFCDIの治療用iPS細胞を利用できる権利を供与するものです。今後も、FCDIは、製薬企業等パートナーとの連携強化を図り、iPS細胞を用いた細胞治療薬の創出に貢献していきます。
コンシューマーヘルスケア事業では、皮膚の正常なターンオーバー※2を維持する表皮幹細胞の情報伝達物質であるcAMPが、加齢に伴い減少することを発見しました。また、カフェインに、cAMPを増加させ“若々しい肌”へ導く効果があることを見出しました。さらにカフェインを、独自開発した単層リポソーム※3に含有することで、その作用が高まることを確認しました。当社は、本研究により「cAMPを増加させることで皮膚のターンオーバーを正常化し、“若々しい肌”へ導く」という新しいアプローチを見出しました。今後、本研究成果を化粧品開発に生かしていきます。
本部門の研究開発費は、48,882百万円となりました。
※1 患者自身の滑膜組織から採取した間葉系幹細胞。間葉系幹細胞は、生体内に存在し、一定の分化能・増殖能を有する細胞。
※2 表皮の最も下に位置する表皮幹細胞が、分裂を繰り返しながら最上層の角層へ達し、垢となって剥がれ落ちるサイクル。
※3 細胞膜の構成成分であるリン脂質を用いて、ナノサイズ(1mの10億分の1サイズ)に微細化されたカプセル状の微粒子。
当社グループにおける新薬開発状況は次のとおりであります。(2023年6月現在)
(2)マテリアルズ セグメント
電子材料事業では、生産子会社の富士フイルム九州㈱に、約20億円の設備投資を行い、半導体製造プロセスの基幹材料であるCMP※4スラリーを生産する最新鋭設備を導入します。当社は、米国・台湾・韓国にCMPスラリーの生産拠点を有し、安定供給と品質に対する高い顧客要求に応え続けることで、同製品の市場伸長を大きく上回る売上成長を達成しています。今後、世界4拠点の生産体制の下、CMPスラリーの安定・迅速供給を実現することで、さらなるビジネス拡大を図っていきます。また、FUJIFILM Electronic Materials Korea Co., Ltd.は韓国平澤市にイメージセンサー用カラーフィルター材料を生産する新工場を建設します。今後、日本・台湾・韓国の3拠点の生産体制の下、高い品質基準のイメージセンサー用カラーフィルター材料を安定的に生産・提供しトップメーカーとしての供給責任を果たすとともに、顧客ニーズにあった新規製品の市場導入を加速させることで、「Wave Control Mosaic」※5の売上拡大を目指します。
産業機材事業では、圧力測定フィルム「プレスケール」の専用アプリとして、圧力画像解析アプリ「プレスケールモバイル」を発売しました。「プレスケール」での目視判定によるばらつきを低減し、圧力検査の品質をさらに向上させます。今後、「プレスケールモバイル」で集約した圧力検査データを管理・保存するクラウドシステムや新たな分析機能を導入する等、本アプリをさらに進化させて、新たな価値を提供していきます。
ファインケミカル事業では、化粧品用増粘剤「ソルトレラ®Neo」を新たに開発しました。「ソルトレラ®Neo」は、高い耐塩性と滑らかなチキソトロピー性※6を両立した化粧品用増粘剤「ソルトレラ®」シリーズの新製品で、現行品の約1.5倍の増粘性を実現し、医薬部外品原料規格※7にも適合したもので医薬部外品への配合が可能。塩系成分のビタミンC誘導体※8を高濃度で配合した美容ジェル、汗で有効成分が流されずに効果が持続する日焼け止めや制汗剤等、高機能・高付加価値製品の開発の応用が期待できます。
グラフィックコミュニケーション事業では、業界トップクラスの印刷速度と高濃度印字を両立したトランザクション市場向け高速ロール紙カラーインクジェットプリンター「Jet Press 1160CF」を発売しました。また、印刷物の検品を自動化し、生産性向上と品質維持を支援する「検査マネジメントシステム」の提供を開始しました。
インクジェット事業では、水性顔料インクジェットインク用色材である顔料分散液の新色として、オレンジ(PO71)・グリーン(PG7)・バイオレット(PV23)の3色を発売しました。顔料分散液には、当社独自の「Reactive Dispersant」技術を用いており、インク製造時に溶剤や機能性材料等が加わっても、その影響を受けずに顔料分散の安定性が維持されるため、インクに使用する材料の選択肢の幅が広がり、様々な分野のインク製造が可能です。
本部門の研究開発費は、46,671百万円となりました。
※4 Chemical Mechanical Polishing(化学的機械研磨)の略。
※5 広範囲な波長の電磁波(光)をコントロールする機能性材料群の総称。デジタルカメラやスマートフォンに用いられるCMOSセンサー等のイメージセンサーのカラーフィルターを製造するための着色感光材料を含む。
※6 かき混ぜる等一定の力を加えると粘度が下がって液体のようになる一方で、放置すると粘度が上がり元の固体のように戻る性質。
※7 医薬部外品、化粧品の原料として配合することが認められている成分のうち、日本薬局方、食品添加物公定書及び日本産業規格に収載されている成分規格以外のもの。
※8 ビタミンCを肌に吸収しやすくするために、ビタミンCの一部構造を改良した化合物。
(3)ビジネスイノベーション セグメント
オフィスソリューション事業では、最小クラス・最軽量の容積※9と高速プリントを実現したA3モノクロプリンター「ApeosPrint 4560 S/3960 S/3360 S」を発売しました。中速機では、最大75枚/分の高速出力に加え、セキュリティの強化と環境負荷を低減したA3モノクロ複合機「Apeos 7580/6580/
5580」を発売しました。
ビジネスソリューション事業では、社内申請業務のさらなる効率化を支援する「DocuWorks Cloud Connector for X-point Cloud」を提供開始しました。また、中堅・中小企業向けDXを加速するソリューション「Bridge DX Library」のラインアップを146種類に拡大し、業種別・業務別にお客様のDX課題解決を強力に支援します。このほか、経理業務のDXとインボイス制度・電子帳簿保存法への対応を支援する請求書受領クラウドサービス「TOKIUMインボイス」を提供開始しました。
今後も、当社グループのシナジーを加速し、革新的な製品やサービスをさらに多くのお客様にお届けします。
本部門の研究開発費は、33,056百万円となりました。
※9 2022年11月2日発表時点。モノクロ毎分連続プリント速度30枚以上(A4片面)のA3モノクロプリンター ApeosPrint 3960 S/3360 Sの容積において。当社調べ。
(4)イメージング セグメント
フォトイメージング事業では、スマホの画像をカードサイズのチェキフィルムにプリントできる“チェキ”「INSTAX mini Link 2」や、スクエアフォーマットのチェキフィルムに出力できる“チェキ”「INSTAX SQUARE Link」を発売しました。また、任天堂㈱の「Nintendo Switch」の全てのゲームから、お気に入りのシーンやキャラクターのベストショットを、スマホプリンター“チェキ”「INSTAX mini Link」シリーズでプリントできる専用アプリ「INSTAX mini Link for Nintendo Switch」のバージョンアップ版をリリースしました。ゲーム画面をプリントできることに加え、スマホで友人や自分を撮影する際に「スプラトゥーン3」のエフェクトを重ね合わせてデコレーションしたり、撮影した後の画像にお気に入りのキャラクターデザインのステッカーを追加できる等、楽しい機能を充実させました。このほか、撮ったその場ですぐにプリントが楽しめるインスタントカメラINSTAXシリーズの最新エントリーモデルとして、“チェキ”「INSTAX mini 12」を発売しました。
光学・電子映像事業の電子映像分野では、独自の色再現技術による卓越した画質と小型軽量を実現する「Xシリーズ」のフラッグシップモデルとして、高剛性ボディに強力な手ブレ補正機構を採用し、豊富なインターフェースも備えプロの幅広いニーズに応えるミラーレスデジタルカメラ「FUJIFILM X-H2S」や、約4020万画素センサーを搭載し、高画素を生かした写真撮影と8K/30Pの映像撮影が可能なミラーレスデジタルカメラ「FUJIFILM X-H2」を発売しました。また、「Xシリーズ」の最新モデルとして、質量約557gの小型軽量ボディに約4020万画素センサー、天面部3ダイヤル、3方向チルト液晶モニターを装備したミラーレスデジタルカメラ「FUJIFILM X-T5」を発売しました。光学デバイス分野では、世界初の「屈曲型二軸回転機構レンズ」を搭載した超短焦点プロジェクター「Zシリーズ」の新たなラインアップとして、高輝度6000ルーメンの明るい映像投写とクラス最小・最軽量※10を実現した「FUJIFILM PROJECTOR Z6000」を発売しました。
本部門の研究開発費は、9,473百万円となりました。
※10 2022年5月9日発表時点。レーザー光源を搭載し6000ルーメン以上の明るさの映像を投写できる、超短焦点プロジェクター(TR値0.4以下)として。当社調べ。
また、細胞培養に必要な培地の事業成長を加速させるため、米国子会社のFUJIFILM Irvine Scientific, Inc.(以下、「FISI」と記載します。)に約260億円の設備投資を行い、培地の生産拠点を米国ノースカロライナ州に新設します。今回の設備投資により、当社グループとして世界5拠点を有する、培地のグローバル生産体制を構築し、バイオ医薬品の研究開発・製造を強力にサポートしていきます。なお、新設する拠点は、2025年に稼働を開始する予定です。
このほか、デジタル病理診断用ソフトウェア等の開発・販売を行っている、Inspirata, Inc.のデジタル病理部門を買収しました。これにより、当社グループはデジタル病理事業に本格参入し、メディカルシステム事業の成長をさらに加速させます。世界トップシェアを誇る当社グループの医療用画像情報システム(PACS)と本デジタル病理診断用ソフトウェアを組み合わせて院内検査画像の一元化を実現し、病理診断ワークフローの効率化を支援していきます。
当社グループでは、富士フイルム㈱、富士フイルムビジネスイノベーション㈱及びその他の子会社とのグループシナジーを強化するとともに、他社とのアライアンス、M&A及び産官学との連携を強力に推進し、新たな成長軌道を確立していきます。
当連結会計年度における研究開発費の総額は154,147百万円(前年度比2.4%増)、売上高比5.4%となりました。各セグメントに配賦していない汎用性の高い上記基盤技術の強化、新規事業創出のための基礎研究費は16,065百万円です。
当連結会計年度の研究開発の主な成果は次のとおりであります。
(1)ヘルスケア セグメント
メディカルシステム事業では、国立がん研究センターと共同で開発したAI技術開発の研究基盤システムを用いて、プログラミング等の専門知識がなくても医師や研究者が自身で画像診断支援AI技術を開発することが可能な「SYNAPSE Creative Space」を開発しました。上部消化管の内視鏡検査時に胃腫瘍性病変や食道扁平上皮癌が疑われる領域をリアルタイムに検出し、胃がん・食道がんの早期発見をサポートする内視鏡診断支援ソフトウェア「EW10-EG01」について、薬機法に基づく医療機器製造販売承認(薬事承認)を取得しました。また、乳房の断層画像を生成し内部構造の3次元的な観察を可能にするトモシンセシス機能を搭載し、低線量・高画質とAI技術によるワークフロー向上を実現したデジタルマンモグラフィシステム「AMULET SOPHINITY」を発売しました。富士フイルム㈱と地方独立行政法人東京都健康長寿医療センターは、AI技術を活用した新たな認知症スクリーニング検査手法の共同研究を開始しました。本研究では、高精度センサーを搭載した眼鏡型ウェアラブルデバイスを用いて患者の視線移動、まばたきの回数、頭部の傾き、歩行時の左右バランス等のデータを、AI技術を用いて解析することで、認知症疑いの判定に有効なデータ指標を見出すことを目指します。また、富士フイルムヘルスケア㈱と国立大学法人千葉大学は、次世代CT装置「フォトンカウンティングCT」(以下、「PCCT」と記載します。)の臨床有用性を評価する共同研究を開始しました。本研究は、富士フイルムヘルスケア㈱が開発したPCCTを用いて撮影した組織のデータを収集・検証し、組織内出血やがんの早期発見の可能性等を検討するものです。
バイオCDMO事業では、当社グループ国内初のバイオCDMO拠点を富山県富山市に新設します。新拠点は、富士フイルム富山化学㈱による設備投資を通じて設立するもので、2026年度の稼働を予定しています。本拠点には、海外で培ってきた高度なバイオ関連技術やデュアルユース設備等を導入します。バイオ医薬品のプロセス開発・製造受託サービスを製薬企業に提供し、事業成長を加速させていきます。また、パンデミック時には、受託サービスを通じて、製薬企業による国産ワクチンの迅速開発・供給をサポートします。
ライフサイエンス事業では、米国子会社のFUJIFILM Cellular Dynamics, Inc.(以下、「FCDI」と記載します。)が、グローバルに事業展開するヘルスケア企業Novo Nordisk社と、治療用iPS細胞を利用できる権利を同社に供与する契約を締結しました。本契約は、FCDIがNovo Nordisk社に対して、細胞治療薬の研究開発や治験薬製造・商業生産を対象にFCDIの治療用iPS細胞を利用できる権利を供与するものです。今後も、FCDIは、製薬企業等パートナーとの連携強化を図り、iPS細胞を用いた細胞治療薬の創出に貢献していきます。
コンシューマーヘルスケア事業では、皮膚の正常なターンオーバー※2を維持する表皮幹細胞の情報伝達物質であるcAMPが、加齢に伴い減少することを発見しました。また、カフェインに、cAMPを増加させ“若々しい肌”へ導く効果があることを見出しました。さらにカフェインを、独自開発した単層リポソーム※3に含有することで、その作用が高まることを確認しました。当社は、本研究により「cAMPを増加させることで皮膚のターンオーバーを正常化し、“若々しい肌”へ導く」という新しいアプローチを見出しました。今後、本研究成果を化粧品開発に生かしていきます。
本部門の研究開発費は、48,882百万円となりました。
※1 患者自身の滑膜組織から採取した間葉系幹細胞。間葉系幹細胞は、生体内に存在し、一定の分化能・増殖能を有する細胞。
※2 表皮の最も下に位置する表皮幹細胞が、分裂を繰り返しながら最上層の角層へ達し、垢となって剥がれ落ちるサイクル。
※3 細胞膜の構成成分であるリン脂質を用いて、ナノサイズ(1mの10億分の1サイズ)に微細化されたカプセル状の微粒子。
当社グループにおける新薬開発状況は次のとおりであります。(2023年6月現在)
開発番号 | 薬効・適応症 | 剤形 | 地域 | 開発段階 |
T-705 | 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)治療薬 | 経口 | 日本 | PhⅢ |
T-817MA | アルツハイマー型認知症治療薬 | 経口 | 米国 日本 欧州 | PhⅡ PhⅡ PhⅡ |
脳卒中後のリハビリテーション効果促進薬 | 経口 | 日本 | PhⅡ | |
T-4288 | 新規フルオロケトライド系抗菌薬 | 経口 | 日本 | 承認申請中 |
FF-10502 | 進行・再発固形がん治療薬 | 注射 | 米国 | PhⅡ |
FF-10832 | 進行性固形がん治療薬(ゲムシタビンリポソーム) | 注射 | 米国 | PhⅠ |
FF-10850 | 進行性固形がん治療薬(トポテカンリポソーム) | 注射 | 米国 | PhⅠ |
(2)マテリアルズ セグメント
電子材料事業では、生産子会社の富士フイルム九州㈱に、約20億円の設備投資を行い、半導体製造プロセスの基幹材料であるCMP※4スラリーを生産する最新鋭設備を導入します。当社は、米国・台湾・韓国にCMPスラリーの生産拠点を有し、安定供給と品質に対する高い顧客要求に応え続けることで、同製品の市場伸長を大きく上回る売上成長を達成しています。今後、世界4拠点の生産体制の下、CMPスラリーの安定・迅速供給を実現することで、さらなるビジネス拡大を図っていきます。また、FUJIFILM Electronic Materials Korea Co., Ltd.は韓国平澤市にイメージセンサー用カラーフィルター材料を生産する新工場を建設します。今後、日本・台湾・韓国の3拠点の生産体制の下、高い品質基準のイメージセンサー用カラーフィルター材料を安定的に生産・提供しトップメーカーとしての供給責任を果たすとともに、顧客ニーズにあった新規製品の市場導入を加速させることで、「Wave Control Mosaic」※5の売上拡大を目指します。
産業機材事業では、圧力測定フィルム「プレスケール」の専用アプリとして、圧力画像解析アプリ「プレスケールモバイル」を発売しました。「プレスケール」での目視判定によるばらつきを低減し、圧力検査の品質をさらに向上させます。今後、「プレスケールモバイル」で集約した圧力検査データを管理・保存するクラウドシステムや新たな分析機能を導入する等、本アプリをさらに進化させて、新たな価値を提供していきます。
ファインケミカル事業では、化粧品用増粘剤「ソルトレラ®Neo」を新たに開発しました。「ソルトレラ®Neo」は、高い耐塩性と滑らかなチキソトロピー性※6を両立した化粧品用増粘剤「ソルトレラ®」シリーズの新製品で、現行品の約1.5倍の増粘性を実現し、医薬部外品原料規格※7にも適合したもので医薬部外品への配合が可能。塩系成分のビタミンC誘導体※8を高濃度で配合した美容ジェル、汗で有効成分が流されずに効果が持続する日焼け止めや制汗剤等、高機能・高付加価値製品の開発の応用が期待できます。
グラフィックコミュニケーション事業では、業界トップクラスの印刷速度と高濃度印字を両立したトランザクション市場向け高速ロール紙カラーインクジェットプリンター「Jet Press 1160CF」を発売しました。また、印刷物の検品を自動化し、生産性向上と品質維持を支援する「検査マネジメントシステム」の提供を開始しました。
インクジェット事業では、水性顔料インクジェットインク用色材である顔料分散液の新色として、オレンジ(PO71)・グリーン(PG7)・バイオレット(PV23)の3色を発売しました。顔料分散液には、当社独自の「Reactive Dispersant」技術を用いており、インク製造時に溶剤や機能性材料等が加わっても、その影響を受けずに顔料分散の安定性が維持されるため、インクに使用する材料の選択肢の幅が広がり、様々な分野のインク製造が可能です。
本部門の研究開発費は、46,671百万円となりました。
※4 Chemical Mechanical Polishing(化学的機械研磨)の略。
※5 広範囲な波長の電磁波(光)をコントロールする機能性材料群の総称。デジタルカメラやスマートフォンに用いられるCMOSセンサー等のイメージセンサーのカラーフィルターを製造するための着色感光材料を含む。
※6 かき混ぜる等一定の力を加えると粘度が下がって液体のようになる一方で、放置すると粘度が上がり元の固体のように戻る性質。
※7 医薬部外品、化粧品の原料として配合することが認められている成分のうち、日本薬局方、食品添加物公定書及び日本産業規格に収載されている成分規格以外のもの。
※8 ビタミンCを肌に吸収しやすくするために、ビタミンCの一部構造を改良した化合物。
(3)ビジネスイノベーション セグメント
オフィスソリューション事業では、最小クラス・最軽量の容積※9と高速プリントを実現したA3モノクロプリンター「ApeosPrint 4560 S/3960 S/3360 S」を発売しました。中速機では、最大75枚/分の高速出力に加え、セキュリティの強化と環境負荷を低減したA3モノクロ複合機「Apeos 7580/6580/
5580」を発売しました。
ビジネスソリューション事業では、社内申請業務のさらなる効率化を支援する「DocuWorks Cloud Connector for X-point Cloud」を提供開始しました。また、中堅・中小企業向けDXを加速するソリューション「Bridge DX Library」のラインアップを146種類に拡大し、業種別・業務別にお客様のDX課題解決を強力に支援します。このほか、経理業務のDXとインボイス制度・電子帳簿保存法への対応を支援する請求書受領クラウドサービス「TOKIUMインボイス」を提供開始しました。
今後も、当社グループのシナジーを加速し、革新的な製品やサービスをさらに多くのお客様にお届けします。
本部門の研究開発費は、33,056百万円となりました。
※9 2022年11月2日発表時点。モノクロ毎分連続プリント速度30枚以上(A4片面)のA3モノクロプリンター ApeosPrint 3960 S/3360 Sの容積において。当社調べ。
(4)イメージング セグメント
フォトイメージング事業では、スマホの画像をカードサイズのチェキフィルムにプリントできる“チェキ”「INSTAX mini Link 2」や、スクエアフォーマットのチェキフィルムに出力できる“チェキ”「INSTAX SQUARE Link」を発売しました。また、任天堂㈱の「Nintendo Switch」の全てのゲームから、お気に入りのシーンやキャラクターのベストショットを、スマホプリンター“チェキ”「INSTAX mini Link」シリーズでプリントできる専用アプリ「INSTAX mini Link for Nintendo Switch」のバージョンアップ版をリリースしました。ゲーム画面をプリントできることに加え、スマホで友人や自分を撮影する際に「スプラトゥーン3」のエフェクトを重ね合わせてデコレーションしたり、撮影した後の画像にお気に入りのキャラクターデザインのステッカーを追加できる等、楽しい機能を充実させました。このほか、撮ったその場ですぐにプリントが楽しめるインスタントカメラINSTAXシリーズの最新エントリーモデルとして、“チェキ”「INSTAX mini 12」を発売しました。
光学・電子映像事業の電子映像分野では、独自の色再現技術による卓越した画質と小型軽量を実現する「Xシリーズ」のフラッグシップモデルとして、高剛性ボディに強力な手ブレ補正機構を採用し、豊富なインターフェースも備えプロの幅広いニーズに応えるミラーレスデジタルカメラ「FUJIFILM X-H2S」や、約4020万画素センサーを搭載し、高画素を生かした写真撮影と8K/30Pの映像撮影が可能なミラーレスデジタルカメラ「FUJIFILM X-H2」を発売しました。また、「Xシリーズ」の最新モデルとして、質量約557gの小型軽量ボディに約4020万画素センサー、天面部3ダイヤル、3方向チルト液晶モニターを装備したミラーレスデジタルカメラ「FUJIFILM X-T5」を発売しました。光学デバイス分野では、世界初の「屈曲型二軸回転機構レンズ」を搭載した超短焦点プロジェクター「Zシリーズ」の新たなラインアップとして、高輝度6000ルーメンの明るい映像投写とクラス最小・最軽量※10を実現した「FUJIFILM PROJECTOR Z6000」を発売しました。
本部門の研究開発費は、9,473百万円となりました。
※10 2022年5月9日発表時点。レーザー光源を搭載し6000ルーメン以上の明るさの映像を投写できる、超短焦点プロジェクター(TR値0.4以下)として。当社調べ。
このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E00988] S100R9YB)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
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