有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100R9LQ (EDINETへの外部リンク)
太平電業株式会社 研究開発活動 (2023年3月期)
当社グループの研究開発は、工事施工の能率および安全性の向上を目的とした機械・工具等の開発・改良と、受注領域拡大のための新分野技術の研究・習得を主体として行っております。開発品および開発工法を通じ、社員指導教育も併せて実施することで社員の専門知識の向上、技術レベルの向上を目指し活動を行っております。
当連結会計年度における各種プラント設備の建設、補修、維持関連の研究開発費はグループ全体で831百万円であり、その主なものは次のとおりであります。なお、当社グループの研究開発活動においては、各セグメントに関連したものが非常に多いため、セグメント別の記載はしておりません。
(1) 風力発電設備建設・解体工法の開発
再生可能エネルギーの普及拡大に伴い、大型風力発電設備の建設増加が見込まれます。発電効率向上による設備の大型化に伴い、据付け機器の重量が大幅に増加することが予想されるため、当社の揚重技術を活用した施工技術の開発を進めております。陸上風力分野では耐用年数を迎える風車の増加により、解体・リプレースの需要増加が見込まれます。当連結会計年度は、陸上風力分野において、大型クレーンを使用しないことで、コスト低減、省スペースでの施工、工期短縮の実現を目的とし、当社で取得した特許工法(新工法)であるジャッキダウン解体工法の開発に着手しました。この工法の開発がNEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成事業に採択され、10月~12月に北海道室蘭市で実機サイズのジャッキ架台と1.5MW級風車の模擬タワーを用いて実証試験を実施しました。現在は、この試験で得られた知見、データ、課題を基に工法の改善を行い、安全かつ高効率な工法の実用化を目指して研究開発を進めております。
(2) 林業における新工法(成木切り出し方法)の開発
政府による2050年カーボンニュートラル宣言以降、電力業界以外にもカーボンニュートラル達成のためCO2削減に向けた様々な取組みを行う事業主が官民問わず増えることが予想されます。当社は、バイオマス発電所を中心として地域の林業・農業の活性化を促し、地域循環型社会を実現させてカーボンニュートラルからカーボンネガティブを目指しております。そのなかで、林業における課題として①厳しい自然環境下での人力作業の軽労化・効率化、②傾斜などの現場の状況に応じた効率的な作業システムによる生産コストの低減が挙げられます。この課題を解決するため、林業における作業工程別(伐採・集材・造材・運搬)で比較した場合、特に高コストとなっている集材作業に着目しました。
集材作業においては当社開発品のセーフティステージを改良した、支柱を用いた集材システムを導入することで、架線設置・撤去等の準備作業を簡略化し、一度の架設で広範囲の集材を行える新工法が成立する開発を進めております。当連結会計年度は、当社工場敷地内で検証試験を実施いたしました。次年度は実際に集材作業をしている現場に持ち込み実証試験を実施いたします。
(3) 廃止措置工事に向けた福井工業大学との共同研究
原子力発電設備の廃止措置分野は、今後、廃炉ユニット数が増えることが予想されます。当社は、数多くの原子力発電所の補修工事を経験している利点を生かし、廃止措置工事における技術的課題をいち早く掴み、それらを解決して技術的優位性を得て受注拡大を目指しております。これに伴い、原子力発電設備の廃止措置工事に適応可能な技術について、2017年度から福井工業大学(以下、福井工大)と共同研究を継続して行っております。当連結会計年度は、次の2テーマについて共同研究を行いました。① アイスコンデンサー氷処理手法の確立
② 遮へい体(鉛)の効率的解体・減容技術
アイスコンデンサー氷処理手法の確立では、福井工大と共同で考案した処理手法により、原子力発電設備内で実機氷を使った検証試験を実施しました。その結果、処理技術の一つとして確立することができました。
遮へい体(鉛)の効率的解体・減容技術では、鉛ブロックの切断手法について、日本原子力学会が主催する2022年秋の大会および2023年春の年会にて福井工大と共同で研究成果を発表しております。次年度は遮へい体(鉛)切断の実機適応に向けた研究を進めてまいります。
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