有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100RAGG (EDINETへの外部リンク)
日本板硝子株式会社 事業等のリスク (2023年3月期)
当社グループは、経営指針「Our Vision」の下、「中期経営計画(RP24)」に沿って、持続的成長による企業価値の向上を目指しています。一方で、当社グループを取り巻く事業環境はますます複雑でダイナミックな変化を見せています。当社グループは、このような事業目標の達成に影響を及ぼす内部、外部の要因による不確実性をリスクと捉えています。そのマイナスの影響を最小化し、成果を最大化するため、重要なリスクについて識別、評価し確実に管理するリスクマネジメントは重要な経営基盤の一つと位置付けられます。
当社グループのリスクマネジメントは、会社法やコーポレートガバナンス・コードの原則に基づき、取締役会で決議された「内部統制システム等に関する基本方針」に準じています。また、企業活動上発生するリスクへの具体的な対処については社内規程「リスクマネジメントに関するグループポリシー」に定めています。
当社グループのリスクマネジメント体制は、日々の業務のなかに十分に活かされ、「3つのディフェンスライン」として機能します。第1のディフェンスラインは、それぞれの事業部門や間接部門(ファンクション部門)そのものの中に存在し、日々の業務として当社グループの全ての業務内に存在するリスクを識別、評価、管理することで、当該リスクを統制し、軽減します。第2のディフェンスラインは、ファンクション部門や経営陣によって担われ、業務やリスクマネジメントの方針や基準を定めるだけでなく、効果的なリスク統制活動をモニターします。第3のディフェンスラインは、内部監査部門によって担われ、独立して統制の有効性やリスクマネジメントプロセスを評価します。
全社的リスクマネジメント体制の中心として(主として第2のディフェンスライン)、当社グループは、トップダウンアプローチである戦略的リスク委員会(SRC)とボトムアップアプローチである全社的リスクマネジメントチーム(ERMT)を組み合わせたハイブリッド型の二層式リスクマネジメント体制を採用しています。いずれも経営会議の監督の下で運営され、その運営状況は取締役会に報告されます。
SRCストラクチャーとその目的 – トップダウンリスクレビュー
SRCの議長は、最高リスク責任者(CRO)が務め、SRCは、CEOをはじめとする執行役及び他の関連幹部社員によって構成されます。
SRCは、当社グループ全般にわたるリスク管理ポリシーや枠組みを決定し、その枠組みに従ってグループの戦略的リスクを特定のうえ、各戦略的リスクにつきリスクオーナーを定め、リスク軽減策の進捗等を含めモニターします。
ERMTストラクチャーとその目的 – ボトムアップリスクレビュー
ERMTの議長は、最高財務責任者(CFO)が務め、ERMTは各事業部門のトップや部長、経理、人事、法務といったファンクション部門のトップから構成されます。毎年それぞれの業務の遂行に付随する重要なリスクについて識別、評価、優先順位付けを行い、必要なリスク軽減策を講じることでリスクマネジメントの実効性の向上を図っています。これらのリスクやその軽減策については、状況に応じて都度見直され、とりわけ重要なリスクについては、SRCによってモニターされます。ERMTは、定期的に又は必要に応じて開催され、SRCに報告します。
上記の枠組みにより、当社グループでは、各連結会計年度末時点における事業活動の状況及び財政状態に照らして、主要な財務上及び事業運営上のリスク要因につき、定期的な見直しを行っています。当連結会計年度末時点において、当社グループが認識している主要な財務上及び事業運営上のリスクは、以下に記載の通りです。ただし、これらは当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見しがたいリスク又は重要とみなされていないリスクが顕在化した場合には、これらの影響を将来的に受ける可能性があります。
なお、文中における将来事項に関する記述は、当連結会計年度末時点における、当社グループの合理的な判断に基づくものです。
また、当社グループが将来にわたって事業活動を継続する前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況は、当連結会計年度末時点において存在していません。
(1)経済状況、地政学上の影響、事業環境
当社グループは、日本を含むアジア、欧州、米州等、世界各国・地域で事業展開しています。このため、通貨インフレやエネルギー価格の上昇といった世界経済の変化、新型コロナウイルス感染症等の感染症の拡大の影響を含む世界各国における顧客の事業環境の変化、及びグローバルにつながるサプライチェーンの断絶や米中貿易戦争、ロシアによるウクライナ侵攻など世界各地における地政学上の問題が、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。
また、南米等の新興市場については長期的には先進国・地域の市場を上回るペースで成長するものと考えていますが、当社グループが事業を展開している先進国・地域の市場に比べてより大きな潜在的リスクがあると考えています。
(2)特定の産業・分野への依存
当社グループの売上高の90%以上が、建築用ガラス事業及び自動車用ガラス事業におけるものであり、当連結会計年度では、それぞれ外部顧客への売上高の48%及び47%を占めています。また、当社グループの外部顧客への売上高は、主に建設、住宅産業及び自動車産業の顧客に対するものです。これらの業界では、これまでも消費者マインドの周期的な動きに連動して需要が変動してきました。需要の変動のみならず、顧客のサプライチェーンが、今後当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、相対的に利益率が高く、将来市場の大きな成長が見込まれる高付加価値製品の売上の増大に努めています。これらの製品は、一般的な製品に比べて価格の変動は通常小さいと考えられ、経済状況が悪化した場合の影響を受けにくいと考えられています。しかしながら、これらの製品が高い利益率を維持し続ける、又はこれらの製品の市場が製品全体の平均を上回るペースで成長し続けるという保証はありません。更に、他のガラスメーカーが技術的な優位を有する製品を市場に投入する結果、当社グループの製品との競合が高まり、高付加価値製品であるにもかかわらず利益率が低下する可能性があります。
また顧客が当社グループに不利な形に戦略を見直す可能性があります。その場合は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があり、特定の顧客向けの高付加価値製品では影響がより大きい可能性があります。なお、自動車用ガラス事業では、自動車産業における企業間の合従連衡の結果、当社グループの顧客である自動車メーカーの購買力の上昇や販売先上位のメーカーへの顧客ベースの集中が生じる可能性があります。また、自動車産業においては、CASE(コネクテッド、自動化、シェアリング、電動化)の進展など歴史的な産業構造の変化が起こっており、サプライチェーンにも重大な変化をもたらす可能性あります。当社グループは、これらの変化に対応するため、更なる生産性の向上、コスト低減、リソース配分の選択と集中を進めていますが、こうした対応が功を奏さず、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3)競争
当社グループは、日本及び海外のガラスメーカーと競合関係にあります。また、プラスチックや金属をはじめ、建築分野、自動車分野及び情報電子分野等で使用される各種素材メーカーとも競合関係にあります。当社グループでは、独自技術や独自製品の市場への提供により競争力の確保に努めていますが、市場ニーズの変化、製品を低コストで提供するメーカーの台頭、あるいは強固な顧客基盤や高い知名度を有するメーカーの参入等によって、当社グループの競争優位を維持できない場合、又は当社グループが獲得できないような政府による助成制度を競合他社が受けている場合には、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響が及ぶ可能性があります。
(4)製品の開発及び技術革新
当社グループは、既存の事業分野における独自技術や独自製品の開発に注力するとともに、既存分野以外の新しい分野における新製品の開発に注力しています。近年の急速で大きな技術の変化にタイムリーかつ適切に対応することは、製品、サービス、更にはデジタライゼーションやオートメーションといった製造プロセスにおける当社グループの技術優位性を高め、維持するために必要です。そのためには、顧客ニーズを把握するとともに、気候変動等の環境問題対応にかかる技術を含め、関連マーケットや製造業界における技術変化を先読みし、当社グループが強みを持つ技術領域に選択的・重点的にリソースを投入することで、技術開発、商品化、事業化を効果的に実現することが重要となります。しかしながら、新製品や新技術の開発プロセスは相当な時間と支出を要する可能性があり、また新製品の販売による収益や新技術の貢献が得られるまでに、多くの投資が必要となる可能性があります。
また、競合他社が当社グループより先んじて技術開発を行い、特許権等の知的財産を確保し、商品化、事業化を成功させ、早く市場に製品を送り出した場合や、代替技術や代替製品が市場に受け入れられた場合には、当社グループによる製品開発のための投資は、当初想定した利益をもたらさない可能性があります。更に当社グループが技術革新を予測できない場合や、これに迅速に対応できない場合、あるいは顧客のニーズに適応した新製品の開発に成功しなかった場合には、当社グループの事業、業績及び財務状況に大きな影響が及ぶ可能性があります。
(5)将来の必要資金
当社グループは、①新製品の発売、②事業計画や研究開発計画の実行、③生産能力の拡大、④補完的な事業、技術又はサービスの取得、⑤コスト削減策やリストラクチャリング計画の実行、⑥期限を迎えた負債の返済やA種種類株式の償還等の目的に充当するため、将来において追加的な資金の調達が必要となる可能性があります。また、負債の借入契約に規定される財務制限条項等の条件に抵触することにより想定外のタイミングで当該負債の返済が必要となり、そのために追加の資金調達等が必要になる可能性もあります。当社グループが、借換えのための資金や新たに必要となる資金を想定する条件で調達できない又は全く調達できない場合、既存の製品及びサービスの拡充と改善や新事業開発のための投資を行うことが困難となり、その結果として競合他社よりも高い競争力を確保することが困難となる、又は資金調達コストが増加することなどにより、当社グループの事業活動、業績及び財務状況にも大きな影響が及ぶ可能性があります。
(6)海外における事業
当社グループは、日本、アジア、欧州、北米、南米等、世界各国・地域に生産設備及び販売拠点を有しています。更に当社グループは、南米、ロシア、中国等の新興国・地域において、子会社、ジョイント・ベンチャー、出資、提携といった様々な形態により事業運営を行っており、これらは当該国・地域における当社グループの生産、販売能力を維持するうえで重要な役割を担っています。
ロシアによるウクライナ侵攻を受け、当社グループは、2022年3月以降、ロシアにおける当社グループ合弁会社とのすべてのガラス取引、及び同社における主要新規投資の承認を停止するとともに、ロシア企業とのすべての通商取引を停止しています。ロシアにおける投資の見通しの不透明さに鑑み、2022年3月期において、当社グループは、ロシアで事業を操業する会社を所有するオランダの持分法適用会社SP Glass Holdings B.V.に対する投資の一部につき、約34億円の減損損失を計上しました。更に、ロシアにおいて資本規制が課され、ロシアの事業会社による返済が制限されていることを踏まえ、SP Glass Holdings B.V.のロシアの事業会社に対する金融債権について、約34億円の減損損失を計上しました。
しかし、当連結会計年度末後に、SP Glass Holdings B.V.は当該ロシアの事業会社を売却することにつき合意し、その後、連結財務諸表発行承認日時点において、当該譲渡取引は、ロシア関係当局の承認を経て、法的に完了しています。なお、当該譲渡取引の完了により、上記の減損損失については戻入益が発生し、当該譲渡取引については、全体として約50億円の利益計上が見込まれます。
これらの国・地域の市場環境が更に悪化する場合には、将来において追加の減損損失が発生する可能性もあります。また、ジョイント・ベンチャーのパートナー等との間での事業運営等の方針の相違により、事業の継続が困難になるような場合やその他の要因によっては、投資に対する想定外の損失が発生する可能性があります。
(7)事故・自然災害等による生産中断等のリスク
当社グループは、生産活動の中断により生じる潜在的な影響を最小限に抑えるため、設備に対して定期的な防災点検や保守を行っています。それに加え、生産設備に対する自然災害等(地震、台風、洪水、停電及び当社グループ又は顧客の生産を停止させるその他の事象等)の影響を抑えるべく、主要拠点では事業継続計画(BCP)を策定しています。しかしながら、事故、自然災害、新型コロナウイルス感染症等の感染症の大流行などによる当社グループの生産設備等の被害や生産活動の中断等の影響を完全に予防又は低減できない可能性があります。また、当社グループの特定の設備で生産される製品を、他の設備で生産できない場合もあります。したがって、地震及びその他の事象により、当社グループのいずれかの設備において生産の中断があった場合には、特定の製品の生産能力が著しく低下する可能性があり、結果的に当社グループの業績及び財務状況に大きな影響が及ぶ可能性があります。当社グループでは、このような事態を想定して保険に加入していますが、いかなる場合でも当社グループの損害が補償されるわけではなく、保険の対象外である場合又は保険の限度額を上回る損害が発生した場合には、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響が及ぶ可能性があります。
(8)為替及び金利の変動
当社グループは、世界の多くの国々や地域で事業活動を展開しており、こうした国々や地域において為替レートの変動及び金利の変動のリスクを有しています。また、海外子会社の現地通貨で表示される資産・負債等については、連結財務諸表の作成のために円換算される過程において、為替レートの変動によるリスクも有しています。更に金利の変動は、支払利息や受取利息、あるいは金融資産や金融負債の金額に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは為替予約契約や金利スワップ取引等によりこれらのリスクのヘッジに努めていますが、為替レート及び金利の変動は、当社グループの事業、業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。
(9)原燃材料の調達及び製品供給
ガラスの製造や販売の過程においては、珪砂やソーダ灰等の原材料、重油や天然ガス、電気等のエネルギー、物流や保管、また国や地域によっては温室効果ガス排出権の状況が大きな影響を持ちます。当社グループでは、商品デリバティブ取引やスワップ取引により、原燃料の価格変動リスクをヘッジしていますが、これらの手法によって原燃料価格の上昇による影響を完全に除去できるわけではありません。当連結会計年度において欧州の天然ガス価格は下落傾向にあるものの、依然として高水準にあり、その他世界的なインフレ傾向等により原材料その他のコストは増加しています。これらの調達コストや価格の上昇や変動は、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、原燃材料の調達に関して、仕入先との間で長期間に及ぶ固定価格での購入契約を締結する場合があります。また、当社グループの製品は、当社グループ独自の販売ルートに加え、当社グループ以外の第三者を通じて販売されています。何らかの理由により、主要な仕入先や販売先との関係の終了や重要な変更が生じ、又は主要な仕入先が契約上の義務を履行できなくなった場合には、現在よりも不利な条件での契約の締結が必要となり、又は原燃材料の仕入れや製品の流通に支障が生ずる可能性があり、結果的に当社グループの業績及び財務状況に大きな影響が及ぶ可能性があります。
(10)退職給付債務
当社グループでは、多数の企業年金制度や退職者向け医療給付制度を運営しています。年金資産の時価が大きく変動した場合、又は年金債務計算に使用される割引率や死亡率等が大きく変動した場合には、当社グループの退職給付制度に対する追加的な資金拠出や保全措置が必要となる可能性があります。
当社グループでは、従業員に対して適切な退職給付制度を提供する一方で、追加的な資金拠出が必要となるリスクを低減するため、退職給付債務について定期的に見直しを行っています。過去数年間にわたって、当社グループでは、年金資産の運用構成の見直し、年金受給者に関する長寿リスクのヘッジ、及び現役従業員に関する年金給付額算定のベースとなる給与額の上昇に対する上限の設定等の対応を行ってまいりました。しかしながら、こうした対応によって、将来における当社グループの年金制度に対する資金拠出増加のリスクを完全に除去できない可能性があります。
(11)法的制約
当社及びその子会社、並びにジョイント・ベンチャー及び関連会社では、投資や輸出入に関する規制、公正な競争に関する規制、環境保護に関する規制並びにその他商取引、労働、退職年金、知的財産権、租税、通貨管理、支払い、資本、制裁等に関する所在国・地域の各種法令規則及び国際規則・条約の適用を受けています。これらの法令規則又はその運用の変更は、当社グループの事業活動に対する制約の発生、法令遵守対応に関する費用の発生、あるいは法令規則違反による当社グループに対する過料の賦課、又はこれに派生する民事賠償請求等によって、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響が及ぶ可能性があります。
また、当社グループは、当社グループの役職員が職務遂行に際し法令及び定款に適合することを確保するため、「NSGグループ倫理規範」を制定し、倫理・コンプライアンス部を設置して継続的に倫理・コンプライアンスに関する周知、教育活動を行っていますが、当社グループ会社又はそれら役職員による法令違反が発生した場合には、当社グループの社会的評価、事業、業績及び財務状況に大きな影響が及ぶ可能性があります。
(12)事業戦略
当社グループの事業戦略は、経済、法制環境、原料価格、為替レート、新技術や新製品の開発や提供、現在締結されている又は将来締結される契約の条件等の様々な要因により影響を受けます。そのため、当社グループの事業戦略が成功し、想定した成果を収めることができるという保証はありません。更に当社グループの事業計画の遂行が想定した効果を生まない、あるいは期待された効果を実現できない可能性があります。
当社グループは、競争優位を維持するため、利益率の低い製品から高付加価値製品へのシフトを目的に新技術や新製品の開発に努め、投資を行っています。しかしながら、当社グループが、競合他社に先駆けてより高度な技術の開発やその事業化に成功し、又は結果的に競合他社よりも高い競争力を維持できるという保証はありません。
1「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記述の通り、当社グループは、中期経営計画「リバイバル計画24」の下、収益構造の抜本的改革、財務基盤の回復、及び事業ポートフォリオの転換に集中的に取り組みます。本質的なコスト構造改革(人員効率化、固定費削減、購買コスト削減等)の推進にあたっては、DX(デジタルトランスフォーメション)が非常に重要です。しかし、こうした取り組みが計画通りにいかない結果、さらなるリストラクチャリングや事業売却、そのための追加資金調達や金融支援が必要となる可能性があります。
(13)知的財産権
特許権等の知的財産権は、当社グループの事業において競争力をもたらす重要な要素です。しかしながら、当社グループが有する知的財産権を常に保護できるという保証はなく、当該知的財産権の競争優位性が失われる可能性もあります。また、当社グループは世界各国・地域で事業を行っているため、知的財産権に関する第三者との紛争のリスクも高まっています。このような知的財産権に関する侵害や紛争が生じた場合には、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響が及ぶ可能性があります。
(14)民事賠償責任
当社グループの製品の欠陥により第三者に損害が発生した場合、当社グループは製造物責任に基づく賠償請求を受ける可能性があり、また、これにより当社グループの社会的評価に大きな影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、このような賠償責任に対して保険に加入していますが、いかなる場合でも当社グループの賠償責任が補償されるわけではなく、当該賠償責任の内容が保険の対象にならない場合や保険の限度額を上回る場合もあり得ます。
また、当社グループでは、高品質の製品の製造に注力していますが、予期しない品質問題が生じた場合、大規模なリコールの実施が必要となる可能性があります。その場合は、当社グループの社会的評価が毀損し、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。
(15)気候変動や環境に関する法規制その他の要請への対応
当社グループは、気候変動対策を始めとする持続可能な社会への取り組みに注力しています。地球環境に与える負荷を低減するため、温室効果ガス排出削減、省エネ・創エネ、廃棄物削減、有害物質の不使用・除去等の環境課題に取り組み、環境に関する様々な法令規則を遵守しています。しかしながら、環境に関する法令規則やその運用に関する変更が行われた場合には、当社グループの事業活動に対する制約の発生、法令遵守対応に関する費用の発生、あるいは法令規則違反による当社グループに対する過料の賦課等によって、当社グループの社会的評価が低下したり、業績及び財務状況に大きな影響が及んだりする可能性があります。また、社会やステークホルダーから企業に対して気候変動や環境への対策及びその開示を求める要請は年々高まっており、それらについての十分な対応又は開示ができないことによって、当社グループの社会的評価が低下したり、業績及び財務状況に大きな影響が及んだりする可能性があります。気候変動に関する取り組みについては、2「サステナビリティに関する考え方及び取組」2.気候変動をご参照ください。
(16)貸借対照表に計上された資産の評価及び減損等
当社グループは、貸借対照表において、減損テストの実施を毎年必要とする多額の資産項目を計上しています。これらの資産には、ピルキントン社買収により発生したのれんや無形資産が含まれますが、これらに限定されるものではなく、各国・地域における税務上の繰越欠損金等に対して認識された繰延税金資産も含まれます。
当社グループは、当連結会計年度において、2006年のピルキントン社買収に伴って発生した欧州における自動車用ガラス事業ののれん及び無形資産残高488億円全額について減損損失を計上しました。これは、主に減損テストで使用する割引率が大幅に上昇した結果、減損損失を認識したことによるものです。
当社グループの資金生成単位について、将来において減損損失が全く発生しないという保証はありません。当社グループの今後の業績が以前に減損テストを実施した際の想定通りに改善しない場合には、将来において減損損失が発生する可能性があります。更に、経済状況に応じて事業の縮小・撤退を決める場合には、上述以外の資産を減損する可能性もあります。
当社グループは、年度末に回収可能性を検討し繰延税金資産を再評価しますが、繰延税金資産の算定に使用される適用税率が低下すれば、将来において繰延税金資産の評価減が発生する可能性があります。貸借対照表上の価値は、利益の減少や為替市場の変動リスクといった要素の影響を受け、連結資産価値の減少や資産の評価減、償却を伴う可能性があります。そのような要素は、更に株主資本を減少させ、資金調達や取引活動、ひいては当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(17)情報セキュリティ
当社グループでは、事業活動に関して様々な機密情報やデータを保有・使用しており、適切な情報の管理や効率的な業務の遂行のための情報システムのアップデートやコントロールの重要性はますます高まっています。当社グループは、外部専門サービスによるサポートを得たり、従業員に対する教育を行ったりするなど機密情報・データや情報システムの十分な保護に向けた施策に努めていますが、自然災害、通信トラブル、コンピューター・ウイルスの感染、サイバー攻撃等の事象により情報システムや事業活動の中断や機密情報の漏えい等の事態が発生した場合、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響が及ぶ可能性があります。
(18)人材の確保
当社グループの変革と将来の成長は有能な人材の確保と育成に大きく依存します。当社グループでは、人材確保・育成・リテンションのための各種施策に取り組んでいますが、技術者を中心とする人材獲得競争は更に激化しており、適切なタイミングで優秀な人材が計画通り確保できない、確保した人材の育成が計画通り上手くいかない、又は育成した優秀な人材を維持できず社外流出が生じた場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響が及ぶ可能性があります。人的資本に関する取り組みについては、2「サステナビリティに関する考え方及び取組」3.人的資本及び多様性をご参照ください。
(19)A種種類株式
A種種類株式には、普通株式を対価とする取得請求権が付されていますが、かかる取得請求権については、当社とA種種類株主との間で締結した引受契約において、2020年7月1日以降においてのみ行使することができるとの転換制限が付されていました。しかしながら転換制限解除事由の発生により、2020年5月22日以降、A種種類株主は当該取得請求権を行使することが可能となっています。今後、A種種類株式が普通株式に転換された場合には、当社の普通株式の発行済株式総数が増加し、また、かかる株式が市場に流入することにより、当社普通株式の1株当たりの株式価値及び持分割合が希薄化するとともに、当社株式の取引及び株価に悪影響を及ぼすおそれがあります。A種種類株式は、引受先から第三者へ譲渡されることがあり得ます。こうした転換や譲渡があった場合には、引受先や譲受先が当社の主要株主に該当する可能性がありますが、その議決権行使及び保有株式の処分等の状況により、当社の事業運営及び当社株式の需給関係に影響を及ぼす可能性があります。
※ A種種類株式: 詳細については、後掲の第4 提出会社の状況 1「株式等の状況」をご参照ください。
当社グループのリスクマネジメントは、会社法やコーポレートガバナンス・コードの原則に基づき、取締役会で決議された「内部統制システム等に関する基本方針」に準じています。また、企業活動上発生するリスクへの具体的な対処については社内規程「リスクマネジメントに関するグループポリシー」に定めています。
当社グループのリスクマネジメント体制は、日々の業務のなかに十分に活かされ、「3つのディフェンスライン」として機能します。第1のディフェンスラインは、それぞれの事業部門や間接部門(ファンクション部門)そのものの中に存在し、日々の業務として当社グループの全ての業務内に存在するリスクを識別、評価、管理することで、当該リスクを統制し、軽減します。第2のディフェンスラインは、ファンクション部門や経営陣によって担われ、業務やリスクマネジメントの方針や基準を定めるだけでなく、効果的なリスク統制活動をモニターします。第3のディフェンスラインは、内部監査部門によって担われ、独立して統制の有効性やリスクマネジメントプロセスを評価します。
全社的リスクマネジメント体制の中心として(主として第2のディフェンスライン)、当社グループは、トップダウンアプローチである戦略的リスク委員会(SRC)とボトムアップアプローチである全社的リスクマネジメントチーム(ERMT)を組み合わせたハイブリッド型の二層式リスクマネジメント体制を採用しています。いずれも経営会議の監督の下で運営され、その運営状況は取締役会に報告されます。
SRCストラクチャーとその目的 – トップダウンリスクレビュー
SRCの議長は、最高リスク責任者(CRO)が務め、SRCは、CEOをはじめとする執行役及び他の関連幹部社員によって構成されます。
SRCは、当社グループ全般にわたるリスク管理ポリシーや枠組みを決定し、その枠組みに従ってグループの戦略的リスクを特定のうえ、各戦略的リスクにつきリスクオーナーを定め、リスク軽減策の進捗等を含めモニターします。
ERMTストラクチャーとその目的 – ボトムアップリスクレビュー
ERMTの議長は、最高財務責任者(CFO)が務め、ERMTは各事業部門のトップや部長、経理、人事、法務といったファンクション部門のトップから構成されます。毎年それぞれの業務の遂行に付随する重要なリスクについて識別、評価、優先順位付けを行い、必要なリスク軽減策を講じることでリスクマネジメントの実効性の向上を図っています。これらのリスクやその軽減策については、状況に応じて都度見直され、とりわけ重要なリスクについては、SRCによってモニターされます。ERMTは、定期的に又は必要に応じて開催され、SRCに報告します。
上記の枠組みにより、当社グループでは、各連結会計年度末時点における事業活動の状況及び財政状態に照らして、主要な財務上及び事業運営上のリスク要因につき、定期的な見直しを行っています。当連結会計年度末時点において、当社グループが認識している主要な財務上及び事業運営上のリスクは、以下に記載の通りです。ただし、これらは当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見しがたいリスク又は重要とみなされていないリスクが顕在化した場合には、これらの影響を将来的に受ける可能性があります。
なお、文中における将来事項に関する記述は、当連結会計年度末時点における、当社グループの合理的な判断に基づくものです。
また、当社グループが将来にわたって事業活動を継続する前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況は、当連結会計年度末時点において存在していません。
(1)経済状況、地政学上の影響、事業環境
当社グループは、日本を含むアジア、欧州、米州等、世界各国・地域で事業展開しています。このため、通貨インフレやエネルギー価格の上昇といった世界経済の変化、新型コロナウイルス感染症等の感染症の拡大の影響を含む世界各国における顧客の事業環境の変化、及びグローバルにつながるサプライチェーンの断絶や米中貿易戦争、ロシアによるウクライナ侵攻など世界各地における地政学上の問題が、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。
また、南米等の新興市場については長期的には先進国・地域の市場を上回るペースで成長するものと考えていますが、当社グループが事業を展開している先進国・地域の市場に比べてより大きな潜在的リスクがあると考えています。
(2)特定の産業・分野への依存
当社グループの売上高の90%以上が、建築用ガラス事業及び自動車用ガラス事業におけるものであり、当連結会計年度では、それぞれ外部顧客への売上高の48%及び47%を占めています。また、当社グループの外部顧客への売上高は、主に建設、住宅産業及び自動車産業の顧客に対するものです。これらの業界では、これまでも消費者マインドの周期的な動きに連動して需要が変動してきました。需要の変動のみならず、顧客のサプライチェーンが、今後当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、相対的に利益率が高く、将来市場の大きな成長が見込まれる高付加価値製品の売上の増大に努めています。これらの製品は、一般的な製品に比べて価格の変動は通常小さいと考えられ、経済状況が悪化した場合の影響を受けにくいと考えられています。しかしながら、これらの製品が高い利益率を維持し続ける、又はこれらの製品の市場が製品全体の平均を上回るペースで成長し続けるという保証はありません。更に、他のガラスメーカーが技術的な優位を有する製品を市場に投入する結果、当社グループの製品との競合が高まり、高付加価値製品であるにもかかわらず利益率が低下する可能性があります。
また顧客が当社グループに不利な形に戦略を見直す可能性があります。その場合は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があり、特定の顧客向けの高付加価値製品では影響がより大きい可能性があります。なお、自動車用ガラス事業では、自動車産業における企業間の合従連衡の結果、当社グループの顧客である自動車メーカーの購買力の上昇や販売先上位のメーカーへの顧客ベースの集中が生じる可能性があります。また、自動車産業においては、CASE(コネクテッド、自動化、シェアリング、電動化)の進展など歴史的な産業構造の変化が起こっており、サプライチェーンにも重大な変化をもたらす可能性あります。当社グループは、これらの変化に対応するため、更なる生産性の向上、コスト低減、リソース配分の選択と集中を進めていますが、こうした対応が功を奏さず、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3)競争
当社グループは、日本及び海外のガラスメーカーと競合関係にあります。また、プラスチックや金属をはじめ、建築分野、自動車分野及び情報電子分野等で使用される各種素材メーカーとも競合関係にあります。当社グループでは、独自技術や独自製品の市場への提供により競争力の確保に努めていますが、市場ニーズの変化、製品を低コストで提供するメーカーの台頭、あるいは強固な顧客基盤や高い知名度を有するメーカーの参入等によって、当社グループの競争優位を維持できない場合、又は当社グループが獲得できないような政府による助成制度を競合他社が受けている場合には、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響が及ぶ可能性があります。
(4)製品の開発及び技術革新
当社グループは、既存の事業分野における独自技術や独自製品の開発に注力するとともに、既存分野以外の新しい分野における新製品の開発に注力しています。近年の急速で大きな技術の変化にタイムリーかつ適切に対応することは、製品、サービス、更にはデジタライゼーションやオートメーションといった製造プロセスにおける当社グループの技術優位性を高め、維持するために必要です。そのためには、顧客ニーズを把握するとともに、気候変動等の環境問題対応にかかる技術を含め、関連マーケットや製造業界における技術変化を先読みし、当社グループが強みを持つ技術領域に選択的・重点的にリソースを投入することで、技術開発、商品化、事業化を効果的に実現することが重要となります。しかしながら、新製品や新技術の開発プロセスは相当な時間と支出を要する可能性があり、また新製品の販売による収益や新技術の貢献が得られるまでに、多くの投資が必要となる可能性があります。
また、競合他社が当社グループより先んじて技術開発を行い、特許権等の知的財産を確保し、商品化、事業化を成功させ、早く市場に製品を送り出した場合や、代替技術や代替製品が市場に受け入れられた場合には、当社グループによる製品開発のための投資は、当初想定した利益をもたらさない可能性があります。更に当社グループが技術革新を予測できない場合や、これに迅速に対応できない場合、あるいは顧客のニーズに適応した新製品の開発に成功しなかった場合には、当社グループの事業、業績及び財務状況に大きな影響が及ぶ可能性があります。
(5)将来の必要資金
当社グループは、①新製品の発売、②事業計画や研究開発計画の実行、③生産能力の拡大、④補完的な事業、技術又はサービスの取得、⑤コスト削減策やリストラクチャリング計画の実行、⑥期限を迎えた負債の返済やA種種類株式の償還等の目的に充当するため、将来において追加的な資金の調達が必要となる可能性があります。また、負債の借入契約に規定される財務制限条項等の条件に抵触することにより想定外のタイミングで当該負債の返済が必要となり、そのために追加の資金調達等が必要になる可能性もあります。当社グループが、借換えのための資金や新たに必要となる資金を想定する条件で調達できない又は全く調達できない場合、既存の製品及びサービスの拡充と改善や新事業開発のための投資を行うことが困難となり、その結果として競合他社よりも高い競争力を確保することが困難となる、又は資金調達コストが増加することなどにより、当社グループの事業活動、業績及び財務状況にも大きな影響が及ぶ可能性があります。
(6)海外における事業
当社グループは、日本、アジア、欧州、北米、南米等、世界各国・地域に生産設備及び販売拠点を有しています。更に当社グループは、南米、ロシア、中国等の新興国・地域において、子会社、ジョイント・ベンチャー、出資、提携といった様々な形態により事業運営を行っており、これらは当該国・地域における当社グループの生産、販売能力を維持するうえで重要な役割を担っています。
ロシアによるウクライナ侵攻を受け、当社グループは、2022年3月以降、ロシアにおける当社グループ合弁会社とのすべてのガラス取引、及び同社における主要新規投資の承認を停止するとともに、ロシア企業とのすべての通商取引を停止しています。ロシアにおける投資の見通しの不透明さに鑑み、2022年3月期において、当社グループは、ロシアで事業を操業する会社を所有するオランダの持分法適用会社SP Glass Holdings B.V.に対する投資の一部につき、約34億円の減損損失を計上しました。更に、ロシアにおいて資本規制が課され、ロシアの事業会社による返済が制限されていることを踏まえ、SP Glass Holdings B.V.のロシアの事業会社に対する金融債権について、約34億円の減損損失を計上しました。
しかし、当連結会計年度末後に、SP Glass Holdings B.V.は当該ロシアの事業会社を売却することにつき合意し、その後、連結財務諸表発行承認日時点において、当該譲渡取引は、ロシア関係当局の承認を経て、法的に完了しています。なお、当該譲渡取引の完了により、上記の減損損失については戻入益が発生し、当該譲渡取引については、全体として約50億円の利益計上が見込まれます。
これらの国・地域の市場環境が更に悪化する場合には、将来において追加の減損損失が発生する可能性もあります。また、ジョイント・ベンチャーのパートナー等との間での事業運営等の方針の相違により、事業の継続が困難になるような場合やその他の要因によっては、投資に対する想定外の損失が発生する可能性があります。
(7)事故・自然災害等による生産中断等のリスク
当社グループは、生産活動の中断により生じる潜在的な影響を最小限に抑えるため、設備に対して定期的な防災点検や保守を行っています。それに加え、生産設備に対する自然災害等(地震、台風、洪水、停電及び当社グループ又は顧客の生産を停止させるその他の事象等)の影響を抑えるべく、主要拠点では事業継続計画(BCP)を策定しています。しかしながら、事故、自然災害、新型コロナウイルス感染症等の感染症の大流行などによる当社グループの生産設備等の被害や生産活動の中断等の影響を完全に予防又は低減できない可能性があります。また、当社グループの特定の設備で生産される製品を、他の設備で生産できない場合もあります。したがって、地震及びその他の事象により、当社グループのいずれかの設備において生産の中断があった場合には、特定の製品の生産能力が著しく低下する可能性があり、結果的に当社グループの業績及び財務状況に大きな影響が及ぶ可能性があります。当社グループでは、このような事態を想定して保険に加入していますが、いかなる場合でも当社グループの損害が補償されるわけではなく、保険の対象外である場合又は保険の限度額を上回る損害が発生した場合には、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響が及ぶ可能性があります。
(8)為替及び金利の変動
当社グループは、世界の多くの国々や地域で事業活動を展開しており、こうした国々や地域において為替レートの変動及び金利の変動のリスクを有しています。また、海外子会社の現地通貨で表示される資産・負債等については、連結財務諸表の作成のために円換算される過程において、為替レートの変動によるリスクも有しています。更に金利の変動は、支払利息や受取利息、あるいは金融資産や金融負債の金額に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは為替予約契約や金利スワップ取引等によりこれらのリスクのヘッジに努めていますが、為替レート及び金利の変動は、当社グループの事業、業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。
(9)原燃材料の調達及び製品供給
ガラスの製造や販売の過程においては、珪砂やソーダ灰等の原材料、重油や天然ガス、電気等のエネルギー、物流や保管、また国や地域によっては温室効果ガス排出権の状況が大きな影響を持ちます。当社グループでは、商品デリバティブ取引やスワップ取引により、原燃料の価格変動リスクをヘッジしていますが、これらの手法によって原燃料価格の上昇による影響を完全に除去できるわけではありません。当連結会計年度において欧州の天然ガス価格は下落傾向にあるものの、依然として高水準にあり、その他世界的なインフレ傾向等により原材料その他のコストは増加しています。これらの調達コストや価格の上昇や変動は、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、原燃材料の調達に関して、仕入先との間で長期間に及ぶ固定価格での購入契約を締結する場合があります。また、当社グループの製品は、当社グループ独自の販売ルートに加え、当社グループ以外の第三者を通じて販売されています。何らかの理由により、主要な仕入先や販売先との関係の終了や重要な変更が生じ、又は主要な仕入先が契約上の義務を履行できなくなった場合には、現在よりも不利な条件での契約の締結が必要となり、又は原燃材料の仕入れや製品の流通に支障が生ずる可能性があり、結果的に当社グループの業績及び財務状況に大きな影響が及ぶ可能性があります。
(10)退職給付債務
当社グループでは、多数の企業年金制度や退職者向け医療給付制度を運営しています。年金資産の時価が大きく変動した場合、又は年金債務計算に使用される割引率や死亡率等が大きく変動した場合には、当社グループの退職給付制度に対する追加的な資金拠出や保全措置が必要となる可能性があります。
当社グループでは、従業員に対して適切な退職給付制度を提供する一方で、追加的な資金拠出が必要となるリスクを低減するため、退職給付債務について定期的に見直しを行っています。過去数年間にわたって、当社グループでは、年金資産の運用構成の見直し、年金受給者に関する長寿リスクのヘッジ、及び現役従業員に関する年金給付額算定のベースとなる給与額の上昇に対する上限の設定等の対応を行ってまいりました。しかしながら、こうした対応によって、将来における当社グループの年金制度に対する資金拠出増加のリスクを完全に除去できない可能性があります。
(11)法的制約
当社及びその子会社、並びにジョイント・ベンチャー及び関連会社では、投資や輸出入に関する規制、公正な競争に関する規制、環境保護に関する規制並びにその他商取引、労働、退職年金、知的財産権、租税、通貨管理、支払い、資本、制裁等に関する所在国・地域の各種法令規則及び国際規則・条約の適用を受けています。これらの法令規則又はその運用の変更は、当社グループの事業活動に対する制約の発生、法令遵守対応に関する費用の発生、あるいは法令規則違反による当社グループに対する過料の賦課、又はこれに派生する民事賠償請求等によって、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響が及ぶ可能性があります。
また、当社グループは、当社グループの役職員が職務遂行に際し法令及び定款に適合することを確保するため、「NSGグループ倫理規範」を制定し、倫理・コンプライアンス部を設置して継続的に倫理・コンプライアンスに関する周知、教育活動を行っていますが、当社グループ会社又はそれら役職員による法令違反が発生した場合には、当社グループの社会的評価、事業、業績及び財務状況に大きな影響が及ぶ可能性があります。
(12)事業戦略
当社グループの事業戦略は、経済、法制環境、原料価格、為替レート、新技術や新製品の開発や提供、現在締結されている又は将来締結される契約の条件等の様々な要因により影響を受けます。そのため、当社グループの事業戦略が成功し、想定した成果を収めることができるという保証はありません。更に当社グループの事業計画の遂行が想定した効果を生まない、あるいは期待された効果を実現できない可能性があります。
当社グループは、競争優位を維持するため、利益率の低い製品から高付加価値製品へのシフトを目的に新技術や新製品の開発に努め、投資を行っています。しかしながら、当社グループが、競合他社に先駆けてより高度な技術の開発やその事業化に成功し、又は結果的に競合他社よりも高い競争力を維持できるという保証はありません。
1「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記述の通り、当社グループは、中期経営計画「リバイバル計画24」の下、収益構造の抜本的改革、財務基盤の回復、及び事業ポートフォリオの転換に集中的に取り組みます。本質的なコスト構造改革(人員効率化、固定費削減、購買コスト削減等)の推進にあたっては、DX(デジタルトランスフォーメション)が非常に重要です。しかし、こうした取り組みが計画通りにいかない結果、さらなるリストラクチャリングや事業売却、そのための追加資金調達や金融支援が必要となる可能性があります。
(13)知的財産権
特許権等の知的財産権は、当社グループの事業において競争力をもたらす重要な要素です。しかしながら、当社グループが有する知的財産権を常に保護できるという保証はなく、当該知的財産権の競争優位性が失われる可能性もあります。また、当社グループは世界各国・地域で事業を行っているため、知的財産権に関する第三者との紛争のリスクも高まっています。このような知的財産権に関する侵害や紛争が生じた場合には、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響が及ぶ可能性があります。
(14)民事賠償責任
当社グループの製品の欠陥により第三者に損害が発生した場合、当社グループは製造物責任に基づく賠償請求を受ける可能性があり、また、これにより当社グループの社会的評価に大きな影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、このような賠償責任に対して保険に加入していますが、いかなる場合でも当社グループの賠償責任が補償されるわけではなく、当該賠償責任の内容が保険の対象にならない場合や保険の限度額を上回る場合もあり得ます。
また、当社グループでは、高品質の製品の製造に注力していますが、予期しない品質問題が生じた場合、大規模なリコールの実施が必要となる可能性があります。その場合は、当社グループの社会的評価が毀損し、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。
(15)気候変動や環境に関する法規制その他の要請への対応
当社グループは、気候変動対策を始めとする持続可能な社会への取り組みに注力しています。地球環境に与える負荷を低減するため、温室効果ガス排出削減、省エネ・創エネ、廃棄物削減、有害物質の不使用・除去等の環境課題に取り組み、環境に関する様々な法令規則を遵守しています。しかしながら、環境に関する法令規則やその運用に関する変更が行われた場合には、当社グループの事業活動に対する制約の発生、法令遵守対応に関する費用の発生、あるいは法令規則違反による当社グループに対する過料の賦課等によって、当社グループの社会的評価が低下したり、業績及び財務状況に大きな影響が及んだりする可能性があります。また、社会やステークホルダーから企業に対して気候変動や環境への対策及びその開示を求める要請は年々高まっており、それらについての十分な対応又は開示ができないことによって、当社グループの社会的評価が低下したり、業績及び財務状況に大きな影響が及んだりする可能性があります。気候変動に関する取り組みについては、2「サステナビリティに関する考え方及び取組」2.気候変動をご参照ください。
(16)貸借対照表に計上された資産の評価及び減損等
当社グループは、貸借対照表において、減損テストの実施を毎年必要とする多額の資産項目を計上しています。これらの資産には、ピルキントン社買収により発生したのれんや無形資産が含まれますが、これらに限定されるものではなく、各国・地域における税務上の繰越欠損金等に対して認識された繰延税金資産も含まれます。
当社グループは、当連結会計年度において、2006年のピルキントン社買収に伴って発生した欧州における自動車用ガラス事業ののれん及び無形資産残高488億円全額について減損損失を計上しました。これは、主に減損テストで使用する割引率が大幅に上昇した結果、減損損失を認識したことによるものです。
当社グループの資金生成単位について、将来において減損損失が全く発生しないという保証はありません。当社グループの今後の業績が以前に減損テストを実施した際の想定通りに改善しない場合には、将来において減損損失が発生する可能性があります。更に、経済状況に応じて事業の縮小・撤退を決める場合には、上述以外の資産を減損する可能性もあります。
当社グループは、年度末に回収可能性を検討し繰延税金資産を再評価しますが、繰延税金資産の算定に使用される適用税率が低下すれば、将来において繰延税金資産の評価減が発生する可能性があります。貸借対照表上の価値は、利益の減少や為替市場の変動リスクといった要素の影響を受け、連結資産価値の減少や資産の評価減、償却を伴う可能性があります。そのような要素は、更に株主資本を減少させ、資金調達や取引活動、ひいては当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(17)情報セキュリティ
当社グループでは、事業活動に関して様々な機密情報やデータを保有・使用しており、適切な情報の管理や効率的な業務の遂行のための情報システムのアップデートやコントロールの重要性はますます高まっています。当社グループは、外部専門サービスによるサポートを得たり、従業員に対する教育を行ったりするなど機密情報・データや情報システムの十分な保護に向けた施策に努めていますが、自然災害、通信トラブル、コンピューター・ウイルスの感染、サイバー攻撃等の事象により情報システムや事業活動の中断や機密情報の漏えい等の事態が発生した場合、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響が及ぶ可能性があります。
(18)人材の確保
当社グループの変革と将来の成長は有能な人材の確保と育成に大きく依存します。当社グループでは、人材確保・育成・リテンションのための各種施策に取り組んでいますが、技術者を中心とする人材獲得競争は更に激化しており、適切なタイミングで優秀な人材が計画通り確保できない、確保した人材の育成が計画通り上手くいかない、又は育成した優秀な人材を維持できず社外流出が生じた場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響が及ぶ可能性があります。人的資本に関する取り組みについては、2「サステナビリティに関する考え方及び取組」3.人的資本及び多様性をご参照ください。
(19)A種種類株式
A種種類株式には、普通株式を対価とする取得請求権が付されていますが、かかる取得請求権については、当社とA種種類株主との間で締結した引受契約において、2020年7月1日以降においてのみ行使することができるとの転換制限が付されていました。しかしながら転換制限解除事由の発生により、2020年5月22日以降、A種種類株主は当該取得請求権を行使することが可能となっています。今後、A種種類株式が普通株式に転換された場合には、当社の普通株式の発行済株式総数が増加し、また、かかる株式が市場に流入することにより、当社普通株式の1株当たりの株式価値及び持分割合が希薄化するとともに、当社株式の取引及び株価に悪影響を及ぼすおそれがあります。A種種類株式は、引受先から第三者へ譲渡されることがあり得ます。こうした転換や譲渡があった場合には、引受先や譲受先が当社の主要株主に該当する可能性がありますが、その議決権行使及び保有株式の処分等の状況により、当社の事業運営及び当社株式の需給関係に影響を及ぼす可能性があります。
※ A種種類株式: 詳細については、後掲の第4 提出会社の状況 1「株式等の状況」をご参照ください。
このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E01121] S100RAGG)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
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