有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100R0AV (EDINETへの外部リンク)
株式会社LIXIL 事業等のリスク (2023年3月期)
当社グループでは、事業活動に影響を与える可能性のあるリスクを洗い出し、それらについてグループ共通の基準(事業計画への影響度と発生可能性等)で評価を行い、グループ内での事業規模の違いや外部環境の変化等に基づき、経営者の目線からリスク間の相対的な関係を考慮した上で対処すべきリスクの優先順位を決定しています。
なお、リスクの洗い出しに際して、リスクを戦略リスクとオペレーショナルリスクに分類し、それぞれ以下のように定義しています。
これらに基づき、リスクにおける重要性を判断した上で、当社グループの各事業、管理部門、マネジメントの各レベルが当該リスクに応じた対策を立案、実行し、対策の進捗状況をモニターし、継続的に改善する活動を展開しています。
また、監査委員会は取締役会、執行役会及び各委員会への参加、重要書類の閲覧、会計監査人とのコミュニケーション等を通じて、対処すべき優先順位の高いリスクについて適切な対策が実行されているかモニターしています。なお、上記に加えて、必要に応じて各事業及び子会社に対する往査も実施しています。
有価証券報告書に記載した事業の状況及び経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクについて、影響度、発生可能性、重要性の前年からの変化をリスクマップに一覧化し、詳細な情報を記載しています。当社グループでは、各リスクについてグループ共通の基準で評価した結果を一元的に管理するために、戦略リスクとオペレーショナルリスクを同一のリスクマップに表示しています。なお、以下に示す発生可能性及び影響度の評価は対応策を考慮した後の評価(残余リスク)となります。
また、記載しているリスクや対応策が互いに強く連関している場合は参照リスクとして該当番号を記載していますが、すべての連関を網羅するものではありません。
各リスクに紐づいている重要課題については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおりです。各リスクが重要課題の目標達成を阻害する又は未達成により発生する等の関連性がある場合、該当する重要課題を記載しています。
なお、本項に記載した将来や想定に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(リスクマップ及び凡例)
(注)1.前連結会計年度の評価から変更のあったリスクについて、前連結会計年度の発生可能性を併記しています。
2.前連結会計年度の「製造物責任や補償請求に関するリスク」は、新製品の開発に関連するものが多いため当連結会計年度より本リスクに包含しています。
3.前連結会計年度の「設備等の操業度に関するリスク」は、災害等によるものが多いため当連結会計年度より本リスクに包含しています。
4.前連結会計年度の「訴訟その他法的手続に関するリスク」は、知的財産権に関する重要性の高まりを踏まえ、リスク名称を変更し、当連結会計年度より本リスクに包含しています。
[戦略リスク 事業横断的なリスク]
(1) 経済状況、為替相場・金利の変動に関するリスク
当社グループは、グローバルに販売活動を行っており、その売上収益は世界における需要、景気、物価の変動、産業・業界の動向に影響を受けます。例えばアルミ、銅、樹脂、半導体など原材料価格や物流コスト、エネルギーコストの上昇は、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。特に日本国内においては、新設住宅着工戸数や建設会社の建設工事受注高の大幅な変動が同様に当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
さらに、為替相場の変動は、当社グループの外貨建取引により発生する資産及び負債の円貨換算額や外貨建で取引されている製品の価格や売上収益等にも重要な影響を与える可能性があります。また、当社グループの資金調達は、主として金融機関からの借入や社債の発行等の有利子負債によっており、市場金利が著しく上昇した場合には当社グループの資金調達に係る金利負担が増加し、借入や社債発行による資金調達の難航や支払利息・社債利息が増加する等、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。(参照リスク(2)(3)(4)(12)(16))
[戦略リスク 事業横断的なリスク]
(2) 地政学に関するリスク
当社グループは、グローバルに事業を展開しており、地政学の影響を広範囲に受ける可能性があります。国際情勢や多国間の国際関係は、原材料、資源・エネルギー価格や輸送費の高騰及び調達リスク、物流における供給停滞・遅延といった直接的な影響に加え、世界的な物価高や政策金利への影響を増長させるといった間接的な影響もあり、多岐にわたる他のリスクと複雑に関係し、それらの影響及び不確実性を増長する可能性があります。また、各国の経済安全保障政策が強化され、新たな制裁・法規制の対象となった国や企業との取引の停止、戦争・紛争が発生した地域における長期事業停止や事業撤退等、予期しない政策や法規制等の変更、また社会的な期待の変化が、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
複数のリスクに連関する地政学に関するリスクは従前から認識はしていたものの、近年の国際情勢の緊張の高まりを受け、個別の記載としています。(参照リスク(1)(4)(12)(13)(16))
[戦略リスク 事業横断的なリスク]
(3) 新製品の開発に関するリスク
当社グループは、常に技術と顧客ニーズを的確に把握し、魅力ある製品の開発に努めています。しかしながら、市場や業界のニーズ変化に対応できない、十分な開発投資を維持できず上市に至らない、あるいは新製品の価値が顧客へ効果的に訴求できない場合、将来の成長鈍化と売上収益の低下につながる可能性があります。また、製品に欠陥が生じリコールが発生するリスクもあります。大規模なリコールや製造物責任賠償につながった場合、多額の支払が生じ、当社グループ製品への信頼性や評判に悪影響を及ぼし、結果として当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。(参照リスク(1)(4)(16))
[戦略リスク 事業横断的なリスク]
(4) 原材料等の調達に関するリスク
当社グループの生産活動においては、資材、部品等の供給品を調達しています。そのため、業界の需要増加や事業展開国におけるインフレ等による原材料価格の高騰、為替レートの変動、コモディティの価格変動や重要な物的資源(アルミ、銅、ステンレス等)の調達可能性の変動の結果、売上原価が増加し、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。また、資材、部品等の供給品は、欠陥や欠品により当社グループの製品の信頼性や評判に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、生産・販売活動と密接に関わる物流業務に関して、運搬物の増加等による調達遅延や石油価格の変動、人件費の高騰などにより、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。(参照リスク(1)(2)(3)(5)(12)(16))
[戦略リスク 事業横断的なリスク]
(5) 環境(気候変動、水、資源)に関するリスク
当社グループは、製品開発から調達、生産、販売活動に至る事業活動において地球環境保全に向け様々な活動を行っています。特に近年においては、気候変動が自社のバリューチェーンにもたらす政策・規制や市場変化による移行リスク、異常気象などの物理リスクが顕在化する可能性が高くなっています。さらに、今後世界的な水問題への対応、原材料・部材の価格高騰、石油由来のプラスチックや木材に関する規制強化、サーキュラー・エコノミーの台頭による消費者嗜好の変化等の市場変化に柔軟に対応していかなければ、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。(参照リスク(4)(16))
パリ協定及びSDGsの目標13に掲げられているとおり、CO2削減のため、製造・販売活動の見直しや気候変動による影響を低減するための取り組みを実施することが以前にも増して企業に求められています。また、世界的な人口増加や経済成長に伴い、SDGsの目標12や目標6に掲げられているとおり、持続可能な資源利用や節水・浄水技術に対する需要が高まっています。近年では、SDGsの目標14や15に掲げられているとおり、気候変動の影響と合わせて生物多様性の損失がグローバルリスクとして認識が高まり、自然資本に関するリスクの把握や対応に対する評価を求める動きが始まっています。
[戦略リスク 事業横断的なリスク]
(6) 事業再編に関するリスク
当社グループは、経営の効率化及び競争力強化のため、不採算事業からの撤退、子会社や関連会社の再編、製造拠点や販売・物流網の再編及び人員配置等の適正化による事業の再構築を行うことがあります。これらの施策に関連して、事業再編後の組織において全社的な戦略上の優先順位が劣後し、経営資源が適切に配分されないこと等により、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
さらに、投融資等の意思決定の際に、事業戦略、領域、展開国等に内在するリスクが的確に識別されず、投資実行後に当初想定していた利益やシナジー効果を実現できないこと等により、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
[戦略リスク 事業横断的なリスク]
(7) 他社との連携・企業買収等に関するリスク
当社グループは、企業買収及び資本参加を含む投資による事業の拡大を企画することがありますが、買収・投資実行後にグループ全体に内在するリスク及び機会を適時・的確に識別することができないことに加え、優秀な人材の離職や人材の融合が進まないことにより、当初想定した利益やシナジー効果を実現できない、あるいは買収後に偶発債務の発生や未認識の債務等が判明する可能性があります。さらに、事業拡大後、当社グループと対象事業の戦略が整合しておらず、全社的な戦略上の優先順位が劣後し、経営資源が適切に配分されないこと等により、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
[戦略リスク 事業横断的なリスク]
(8) 人材の獲得と育成及びダイバーシティ推進に関するリスク
当社グループが継続的に事業を発展させるためには、専門技術に精通した人材や、経営戦略や組織運営といったマネジメント能力に優れた人材の確保、育成を継続的に推進していくことが必要です。しかしながら、特に日本国内においては少子高齢化に伴う労働人口の減少等もあり、国内外で必要な人材を継続的に採用・維持するための競争は厳しく、人材獲得や育成が計画通りに進まない場合には、長期的観点から業務運営の効率性が損なわれ、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
近年、高齢化の進行による高齢世帯の増加及び障がい者人口の増加に対応した製品の必要性が高まっています。また、SDGsの目標5にて掲げられているとおり、企業に対して高齢者や障がい者の雇用だけでなく、ジェンダー格差の是正に対する取り組みも求められています。
[戦略リスク 事業特有のリスク ウォーターテクノロジー事業]
(9) 販売チャネルに関するリスク
当社の連結子会社であるASD Holding Corp.は様々な需要に応じて幅広い製品を展開していますが、近年特に北米を中心として流通構造の変革が起きています。具体的には、エンドユーザーへの直接的な販売の拡大が起きており、ASD Holding Corp.においても、Eコマース(EC)を活用したウェブサイトでの自社製品の販売等を含め、ビジネスの転換を図り、売上の伸長やコスト構造の改革に努めています。しかしながら、このような販路の転換に対して、想定していた顧客数が確保できない等の理由により、その売上成長が鈍化、若しくはコスト構造の改革が計画通りに進まない場合、当社グループが計上しているのれんについて減損損失が発生する可能性があります。
[戦略リスク 事業特有のリスク ウォーターテクノロジー事業]
(10) ブランドに関するリスク
当社グループの保有する数あるブランドのうち、GROHEブランドは富裕層をターゲットとしたプレミアムブランドとして認知されていますが、競争の激しい環境においてブランド価値を維持し、従来の欧州中心のビジネスのみならず、アジアやアフリカ等の新興国の市場でもGo to Market戦略を企てています。それに伴い、地域特有のニーズに応える製品の開発が求められることがあります。しかしながら、個々の市場に合わせた戦略を実施した結果、シグネチャーエレメンツに対する認識を維持できなくなる可能性があるため、注意深くモニタリングする必要があります。その認識を経済環境に合わせて適切にコントロールできなかったことにより、これまで当社の連結子会社であるLIXIL Europe S.à r.l.が維持してきたGROHEブランドの価値が毀損し、その売上成長が鈍化、若しくは利益率が低下した場合、当社グループが計上しているのれんについて減損損失が発生する可能性があります。
また、GROHEブランドを維持する際に、テクノロジー内において一貫性のある戦略に基づいた管理がされないことにより、GROHEのブランドやデザインの差別化がなされず、ブランド価値が毀損し、その売上成長が鈍化、若しくは利益率が低下した場合、当社グループが計上しているのれんについて減損損失が発生する可能性があります。
[戦略リスク 事業特有のリスク ハウジングテクノロジー事業]
(11) 競合他社との競争・製品価格に関するリスク
当社グループは、事業を展開する多くの市場において激しい競争に直面しています。特に日本国内の建材市場は寡占市場となっており、売上収益は競合他社の価格設定に影響を受けます。当社グループは高品質で魅力的な製品を市場へ投入する能力を保持していますが、価格面において競争優位に展開できる確証はありません。これにより、製品・サービスが厳しい価格競争に晒され、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
[オペレーショナルリスク]
(12) 災害・事故・感染症等に関するリスク
当社グループは、日本国内及び海外諸国の複数の拠点において生産・販売活動を行っていることから、各地で発生する地震や台風等の自然災害、未曽有の大事故や感染症によって、当社グループの調達、生産、物流、販売活動や情報管理関連施設等の拠点に甚大な被害を受ける可能性があります。特に、災害・事故等の発生により、当社グループの国内及び海外工場の生産活動が停止することは、市場への製品供給に深刻な影響を及ぼし、売上収益に悪影響を与える可能性があります。
また、感染症の発生や拡大は当社グループ従業員の健康状態悪化による労働力の低下の可能性や、取引先の生産・販売活動の一部停止等、当社グループの事業活動に支障が出る可能性もあります。その結果、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。(参照リスク(1)(2)(4)(16))
[オペレーショナルリスク]
(13) 情報・サイバーセキュリティに関するリスク
当社グループが行う生産・販売活動及び各種事業活動は、コンピュータシステム及びコンピュータシステムを結ぶ通信ネットワークを利用しています。このため、通信ネットワークに生じる障害や、ネットワーク又はコンピュータシステム上のハードウェア、若しくは、ソフトウェアの不具合・欠陥、データセンターの機能停止等により事業活動に支障が出る可能性があります。また、情報システムが適切に導入・更新されていないことによりシステム上の不具合、業務の非効率、生産性低下を招き、事業活動に支障が出る可能性があります。
さらに、当社グループでは、業務を遂行する中で顧客情報をはじめとする様々な個人情報を取り扱う機会があり、厳格な情報管理が求められています。このため、不測の事態により個人情報の遺漏が発生した場合には、社会的信頼の失墜を招くとともに多額の費用負担が生じる可能性があります。その結果、売上収益の減少あるいは販管費等の増加により、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。(参照リスク(2))
[オペレーショナルリスク]
(14) 知的財産に関するリスク
当社グループは、魅力ある差別化された製品やサービスの開発に努めています。このような製品やサービスに対し、第三者が保有する知的財産権との関係で紛争や交渉が生じる可能性があります。この場合、当該第三者の知的財産権を侵害しない製品やサービスの開発、損害賠償金の支払い、当該第三者の知的財産権のライセンスの取得とロイヤルティの支払い、差止命令による当社グループの製品やサービスの一部について製造販売や提供の中止、を要求される可能性があります。
一方では、当社グループの製品やサービスの差別化要素となる技術やデザイン等が第三者に模倣されることにより、当社グループの製品又はサービスの市場競争力の低下を引き起こす可能性があります。また、当社の商標権等の知的財産権を侵害する模倣品の流通により、当該模倣品を使用した顧客に事故や健康被害等が発生した場合、当社グループへの評判、ブランド価値、当社グループの製品の信頼性に悪影響を及ぼす可能性があります。
これらは、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、近年の浄水カートリッジに対する模倣品の増加を踏まえ、発生可能性を「低」から「中」へ変更しています。
[オペレーショナルリスク]
(15) 繰延税金資産の回収可能性に関するリスク
当社グループは、税効果会計を適用し、税務上の繰越欠損金及び将来減算一時差異に対してそれらを回収できる課税所得が生じると見込まれる範囲において繰延税金資産を計上しています。
将来の課税所得は、マネジメントが確認した3か年分の見積りを基礎としています。当該見積りにおいて、日本国内における人口減少に伴う新設住宅着工戸数の減少が予想される中、販売価格の適正化及び政府による住宅省エネ化支援策の拡充も踏まえたリフォーム戦略の強化等による売上収益の増加や原価低減による売上総利益率の改善等の収益性向上を見込んでおり、これらの施策の達成には不確実性が伴います。また、税務上の繰越欠損金の繰越年数や使用上限割合が変更される等、当社グループにとって不利な税制改正が行われる可能性が否定できません。これらの結果、繰延税金資産の一部又は全部の回収ができないと判断された場合、当該繰延税金資産は減額され、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
[オペレーショナルリスク]
(16) 規制強化に関するリスク
当社グループは、日本国内において事業活動を行う上で、会社法や独占禁止法、個人情報保護法、税法、会計基準等、経営に係る一般的な法令諸規制の適用を受けています。また、海外での事業活動についても、それぞれの国や地域における競争法、個人情報保護法、国際取引規制、その他の法令諸規制の適用を受けています。近年、当社グループの重要な物的資源(アルミ、銅、ステンレス等)又はその原材料を含む自然資源の利用や、非財務情報開示を含むサステナビリティに関わる規制等、新たな法令諸規制の導入について活発に議論されています。また、個人情報保護に関する規制については、グローバルに規制強化の一途を辿っており、その執行も活発化しています。
これらの法令諸規制は、労務費、原材料費、エネルギーコスト等の上昇、国際情勢や多国間の国際関係の変化、その他の社会情勢の変化などに応じて、将来において急速に新設・変更・廃止され、厳正な法執行が行われる可能性があります。その結果、製品その他サービスの提供の制限や、売上原価の増加、設計・開発段階におけるコスト増、新たな制裁・法規制の対象となった国や企業との取引の停止等、当社グループの事業運営や、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。また、新たな法令諸規制に対応できる人材の確保を含む体制整備や、システム導入に遅れが生じた場合、従来と比較して法令違反のリスクが高まる可能性があります。
規制に関するリスクは事業活動において常に存在するものの、規制が強化され、また新たな規制化の動きが早まっているとともに、その執行も活発化していることを受け、個別の記載としています。(参照リスク(1)(2)(3)(4)(5)(12))
なお、リスクの洗い出しに際して、リスクを戦略リスクとオペレーショナルリスクに分類し、それぞれ以下のように定義しています。
戦略リスク | 事業戦略の策定及び遂行により獲得を企図する成果が予定通り獲得できない程度及びその発生可能性であり、健全な範囲で事業成果を獲得するために敢えて選択して取るリスク |
オペレーショナルリスク | 戦略遂行を支えるオペレーション上の事象による損失額及び事象発生可能性であり、事業遂行上一定以下に抑制すべきリスク |
これらに基づき、リスクにおける重要性を判断した上で、当社グループの各事業、管理部門、マネジメントの各レベルが当該リスクに応じた対策を立案、実行し、対策の進捗状況をモニターし、継続的に改善する活動を展開しています。
また、監査委員会は取締役会、執行役会及び各委員会への参加、重要書類の閲覧、会計監査人とのコミュニケーション等を通じて、対処すべき優先順位の高いリスクについて適切な対策が実行されているかモニターしています。なお、上記に加えて、必要に応じて各事業及び子会社に対する往査も実施しています。
有価証券報告書に記載した事業の状況及び経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクについて、影響度、発生可能性、重要性の前年からの変化をリスクマップに一覧化し、詳細な情報を記載しています。当社グループでは、各リスクについてグループ共通の基準で評価した結果を一元的に管理するために、戦略リスクとオペレーショナルリスクを同一のリスクマップに表示しています。なお、以下に示す発生可能性及び影響度の評価は対応策を考慮した後の評価(残余リスク)となります。
また、記載しているリスクや対応策が互いに強く連関している場合は参照リスクとして該当番号を記載していますが、すべての連関を網羅するものではありません。
各リスクに紐づいている重要課題については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおりです。各リスクが重要課題の目標達成を阻害する又は未達成により発生する等の関連性がある場合、該当する重要課題を記載しています。
なお、本項に記載した将来や想定に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(リスクマップ及び凡例)
事業等のリスク | 2023年3月期の以下に関するリスク | 発生 可能性 (注)1 | 影響度 | 重要性の 前年からの変化 | |||
戦略リスク | 事業横断的な リスク | (1) | 経済状況、為替相場・金利の変動 | 高 | 高 | 同水準 | |
(2) | 地政学 | 高 | 中 | 新規 | |||
(3) | 新製品の開発(注)2 | 中 | 中 | 同水準 | |||
(4) | 原材料等の調達 | 中 | 中 | 同水準 | |||
(5) | 環境(気候変動、水、資源) | 中 | 中 | 同水準 | |||
(6) | 事業再編 | 低 | 中 | 同水準 | |||
(7) | 他社との連携・企業買収等 | 低 | 低 | 同水準 | |||
(8) | 人材の獲得と育成及びダイバーシティ推進 | 中 | 中 | 同水準 | |||
事業特有のリスク | ウォーターテクノロジー事業 | (9) | 販売チャネル | 中 | 中 | 同水準 | |
(10) | ブランド | 低 | 高 | 同水準 | |||
ハウジングテクノロジー事業 | (11) | 競合他社との競争・製品価格 | 中 | 中 | 同水準 | ||
オペレーショナル リスク | (12) | 災害・事故・感染症等(注)3 | 中 | 高 | 同水準 | ||
(13) | 情報・サイバーセキュリティ | 高 | 中 | 同水準 | |||
(14) | 知的財産(注)4 | 低→中 | 中 | 増加 | |||
(15) | 繰延税金資産の回収可能性 | 低 | 中 | 同水準 | |||
(16) | 規制強化 | 低 | 低 | 新規 |
2.前連結会計年度の「製造物責任や補償請求に関するリスク」は、新製品の開発に関連するものが多いため当連結会計年度より本リスクに包含しています。
3.前連結会計年度の「設備等の操業度に関するリスク」は、災害等によるものが多いため当連結会計年度より本リスクに包含しています。
4.前連結会計年度の「訴訟その他法的手続に関するリスク」は、知的財産権に関する重要性の高まりを踏まえ、リスク名称を変更し、当連結会計年度より本リスクに包含しています。
[戦略リスク 事業横断的なリスク]
(1) 経済状況、為替相場・金利の変動に関するリスク
当社グループは、グローバルに販売活動を行っており、その売上収益は世界における需要、景気、物価の変動、産業・業界の動向に影響を受けます。例えばアルミ、銅、樹脂、半導体など原材料価格や物流コスト、エネルギーコストの上昇は、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。特に日本国内においては、新設住宅着工戸数や建設会社の建設工事受注高の大幅な変動が同様に当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
さらに、為替相場の変動は、当社グループの外貨建取引により発生する資産及び負債の円貨換算額や外貨建で取引されている製品の価格や売上収益等にも重要な影響を与える可能性があります。また、当社グループの資金調達は、主として金融機関からの借入や社債の発行等の有利子負債によっており、市場金利が著しく上昇した場合には当社グループの資金調達に係る金利負担が増加し、借入や社債発行による資金調達の難航や支払利息・社債利息が増加する等、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。(参照リスク(2)(3)(4)(12)(16))
発生可能性 | 高 | 影響度 | 高 | 重要性の 前年からの変化 | 同水準 |
対応策 | 当社グループ全体における販売活動においては、適切なタイミングにおける価格改定を実施し、価格の適正化を図っています。日本での販売活動においては、日本国内における人口減少に伴う新設住宅着工戸数減少の予想を踏まえ、新築市場におけるシェアの拡大の取り組みのみならず、中高級品市場への拡販、リフォーム戦略の強化を進めています。また、生産活動においては、代替調達先の確保による製品・原材料を含めた適切な在庫水準の維持により、安定的な供給体制の構築に努めています。 さらに、日本の財務部門において、運転資金及び投融資による資金需要を把握し、投資審査委員会等で案件を審査する体制を構築しています。また、日本の財務部門の他に、中国、シンガポール、ドイツ、米国に1か所ずつ計4拠点の「リージョナル・トレジャリー・センター」を設置し、各拠点において為替相場の動向を月次でモニタリングするとともに、必要に応じヘッジ手続きを実行することにより、為替相場の変動影響を低減しています。当該「リージョナル・トレジャリー・センター」に各地域における資金管理業務等を集約することにより、資金調達の効率化及び安定化を進めています。 | ||||
重要課題 との関連性 | すべて |
[戦略リスク 事業横断的なリスク]
(2) 地政学に関するリスク
当社グループは、グローバルに事業を展開しており、地政学の影響を広範囲に受ける可能性があります。国際情勢や多国間の国際関係は、原材料、資源・エネルギー価格や輸送費の高騰及び調達リスク、物流における供給停滞・遅延といった直接的な影響に加え、世界的な物価高や政策金利への影響を増長させるといった間接的な影響もあり、多岐にわたる他のリスクと複雑に関係し、それらの影響及び不確実性を増長する可能性があります。また、各国の経済安全保障政策が強化され、新たな制裁・法規制の対象となった国や企業との取引の停止、戦争・紛争が発生した地域における長期事業停止や事業撤退等、予期しない政策や法規制等の変更、また社会的な期待の変化が、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
複数のリスクに連関する地政学に関するリスクは従前から認識はしていたものの、近年の国際情勢の緊張の高まりを受け、個別の記載としています。(参照リスク(1)(4)(12)(13)(16))
発生可能性 | 高 | 影響度 | 中 | 重要性の 前年からの変化 | 新規 |
対応策 | 事業継続に関わる対応を様々な面から強化しています。供給網の寸断に対応するため、2次サプライヤーも考慮したカントリーリスク対応を推進し、サプライヤーが特定国・地域に過度に偏ることがないようバランスを考慮しています。物流では供給網の寸断に加えエネルギーコストも考慮してグローバルのサプライチェーンを地域内に順次変更しています。また欧州における配送センターの再編、北米においてはメキシコの生産力を高め地域内での供給体制を強化し、国内においても複数拠点の生産体制や工場間の応援生産体制の整備、適切な在庫水準の維持を進めています。 また、外部の第三者機関等を通じて政治情勢、政策変更等をモニタリングすることや、社内のエスカレーションやコミュニケーション強化を行っています。例えば、国内外の事業部やコーポレート部門のリーダー達が政治・地政学・社会的動向リスクを共有・議論できるよう、社内SNSを運用することにより、政情不安等の地政学リスク顕在化の兆候を早期に把握することに努めています。また、地域において迅速な対応が求められる場合も、地域で速やかに立ち上げるタスクフォースと本社が連携をすることで検討・対策実行ができる体制を構築しています。 | ||||
重要課題 との関連性 | すべて |
[戦略リスク 事業横断的なリスク]
(3) 新製品の開発に関するリスク
当社グループは、常に技術と顧客ニーズを的確に把握し、魅力ある製品の開発に努めています。しかしながら、市場や業界のニーズ変化に対応できない、十分な開発投資を維持できず上市に至らない、あるいは新製品の価値が顧客へ効果的に訴求できない場合、将来の成長鈍化と売上収益の低下につながる可能性があります。また、製品に欠陥が生じリコールが発生するリスクもあります。大規模なリコールや製造物責任賠償につながった場合、多額の支払が生じ、当社グループ製品への信頼性や評判に悪影響を及ぼし、結果として当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。(参照リスク(1)(4)(16))
発生可能性 | 中 | 影響度 | 中 | 重要性の 前年からの変化 | 同水準 |
対応策 | 革新的なスタートアップ企業との提携やグローバル情報ネットワークの活用を通じて、消費者ニーズの変化に迅速に対応する体制を構築しています。自宅にいながら来館時と同様のサービスが受けられる「LIXILオンラインショールーム」や欧州における「GROHE X」など、当社グループ独自のデジタル技術を組み合わせ、エンドユーザーとビジネスパートナーをつなぎ、新たな価値を提供するエコシステムを確立しています。開発にはデザインの総合力を重視し、デザインとテクノロジーを融合させることで新たな価値を生み出す製品開発を加速させています。また、顧客志向を強化するインクルージョン文化の醸成として、「LIXILユニバーサルデザインコンセプト」を積極的に取り入れ、泡シャワー「KINUAMI U」や電動オープナーシステム「DOAC」など、誰もが使いやすい製品の開発、提供に努めています。加えて、脱炭素・資源循環型社会の実現など、企業や個人に対して資源の責任ある利用が求められていることを踏まえ、業界トップクラスのリサイクル率70%を実現したアルミ形材「プレミアル R70」の展開や2031年3月期までにアルミリサイクル率100%を目指すなど、 製品の原材料として可能な限りリサイクル素材を使用し、責任ある資源の使用を推進し、消費者のニーズに訴求しています。 その他、株式会社ヘラルボニーが契約するアーティストが描いた、アール・ブリュット(障害(※)のあるアーティストによって描かれた作品)デザインをタイル製品「エコカラット」に起用し販売するなど、多様性が尊重される社会の実現に向けた新しい製品開発の取り組みも行っています。各製品上市後は業績管理により、市場トレンドと開発戦略の適合性の確認を継続しています。開発プロセスにおいては、各段階で品質に関するゲートを設け、指摘された問題を解決しなければ次のゲートに進むことができないステージゲートシステムを導入し、大規模な製造物責任賠償やリコールにつながる可能性を低減しています。また、従業員を対象とした品質意識調査の実施や毎年の品質テーマを掲げた啓発活動、品質意識を継続的に高めることを目的とした情報メディアの発行など、コストや納期よりも顧客目線での品質を最優先する風土の醸成に努めています。 ※エコカラットのアール・ブリュットにおける「障害」の表記について: 「障害」という言葉については多様な価値観があり、それぞれの考え方を否定する意図はないことを前提に、本製品においては社会側に障壁があるというヘラルボニーの考え方に賛同し、「障害」という表記で統一しています。 | ||||
重要課題 との関連性 | グローバルな衛生課題の解決、気候変動対策を通じた緩和と適応、水の持続可能性の追求、 資源の循環利用の促進、製品ライフサイクルを通じた環境への影響、多様性の尊重、 製品の安全性、顧客満足、企業倫理とインテグリティ、リスクマネジメント、 ステークホルダーエンゲージメント、情報セキュリティ |
[戦略リスク 事業横断的なリスク]
(4) 原材料等の調達に関するリスク
当社グループの生産活動においては、資材、部品等の供給品を調達しています。そのため、業界の需要増加や事業展開国におけるインフレ等による原材料価格の高騰、為替レートの変動、コモディティの価格変動や重要な物的資源(アルミ、銅、ステンレス等)の調達可能性の変動の結果、売上原価が増加し、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。また、資材、部品等の供給品は、欠陥や欠品により当社グループの製品の信頼性や評判に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、生産・販売活動と密接に関わる物流業務に関して、運搬物の増加等による調達遅延や石油価格の変動、人件費の高騰などにより、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。(参照リスク(1)(2)(3)(5)(12)(16))
発生可能性 | 中 | 影響度 | 中 | 重要性の 前年からの変化 | 同水準 |
対応策 | 原材料価格高騰部分の販売価格への転嫁、価格変動のヘッジを目的としたデリバティブの活用、複数購買の実施、有事における対応力の強いサプライヤーの選定、取引先の信用情報調査や責任ある調達アンケートの実施、取引先との定期的なコミュニケーションの実施、2次サプライヤーも考慮したカントリーリスク対応の推進、定期的な品質テスト、安全在庫量の確保等により、BCPの観点を踏まえた安定的な供給体制の構築に努めています。 銅から安価な亜鉛や樹脂製部品に代替していくなど、可能な限り代替素材への転換を行い、コモディティ価格の高騰の影響の緩和に努めています。さらに、製品の原材料として可能な限りリサイクル素材を使用し、長寿命化とリサイクル性を考慮した設計を推進しています。また、当社グループが掲げる「LIXIL環境ビジョン2050」の注力分野の1つとして資源の循環利用を促進しています。原材料の安全性、原料の再利用、再生可能エネルギー利用とCO2排出管理、責任ある水管理、社会的な公正さの5つの条件を満たした複数の製品が国際的な環境認証「Cradle to Cradle」の認証取得を推進するなど、循環型社会への移行を目指しています。さらに、物流効率の改善に取り組むことで物流費の安定化を図っています。 | ||||
重要課題 との関連性 | 資源の循環利用の促進、製品ライフサイクルを通じた環境への影響、生物多様性の保全、 製品の安全性、人権、サプライチェーンマネジメント、リスクマネジメント |
[戦略リスク 事業横断的なリスク]
(5) 環境(気候変動、水、資源)に関するリスク
当社グループは、製品開発から調達、生産、販売活動に至る事業活動において地球環境保全に向け様々な活動を行っています。特に近年においては、気候変動が自社のバリューチェーンにもたらす政策・規制や市場変化による移行リスク、異常気象などの物理リスクが顕在化する可能性が高くなっています。さらに、今後世界的な水問題への対応、原材料・部材の価格高騰、石油由来のプラスチックや木材に関する規制強化、サーキュラー・エコノミーの台頭による消費者嗜好の変化等の市場変化に柔軟に対応していかなければ、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。(参照リスク(4)(16))
発生可能性 | 中 | 影響度 | 中 | 重要性の 前年からの変化 | 同水準 |
対応策 | 当社グループでは、執行役会から任命を受けた担当役員が委員長を務める環境戦略委員会を設置し、環境ガバナンスに関わる規程や方針の制定、気候変動を含む環境重要課題に対する施策の審議と決定、当社グループ全体の目標管理とモニタリングなど、環境戦略を構築し、実行しています。 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言を踏まえ、気候変動問題が当社グループに及ぼすリスクと機会を特定・評価し、執行役会・取締役会へ報告・承認を経て、環境戦略に反映させる取り組みを進めています。移行リスクに対しては、生産活動におけるエネルギー使用効率化や積極的な再生可能エネルギー活用に加えて、今後はサプライチェーン全体での環境負荷削減の取り組みを強化していきます。さらに、インターナルカーボンプライシングのより実効的な運用に向けた検証や、2050年に向けた長期的な脱炭素技術の開発や導入を促進していくための製造技術や製品材料の研究を進めています。また、物理リスクに対しては、BCP計画によるリスク最小化、生産バックアップ体制整備、固定資産への保険、渇水対策のための取水管理などを進めています。 気候関連を含めた移行リスク及び機会への対応においては、環境目標・実行計画に落とし込み、環境パフォーマンス向上やリスク管理に関わる施策を推進・展開し、その進捗の監視と振り返りを行う管理プロセスの構築を進めています。また、ISO14001若しくは環境マネジメントシステムによる環境関連法令の洗い出しや遵守の点検ルールを定め、運用状況について定期的に内部監査を実施し、内部監査で指摘があった事項については、フォローアップを行い、改善の実施を確認することで、環境マネジメントシステムの効果的な運用につなげています。 LIXIL環境ビジョン2050では「Zero Carbon and Circular Living(CO2ゼロと循環型の暮らし)」を掲げ、2050年までのCO2排出ネットゼロ及び水の恩恵と限りある資源を次世代につなぐことを目指した活動を推進しています。その中間目標である2030年までのCO2削減目標(Science Based Targets)については、従来の2℃水準から1.5℃水準へ上方修正し、認定を更新する計画です。さらに、住宅・建築物で使用されるエネルギーや水の削減に貢献するための機会管理の指標として、環境配慮型製品の販売構成比の向上を進めています。 | ||||
重要課題 との関連性 | 気候変動対策を通じた緩和と適応、水の持続可能性の追求、資源の循環利用の促進、 製品ライフサイクルを通じた環境への影響、環境マネジメント、生物多様性の保全、 サプライチェーンマネジメント、コーポレート・ガバナンス、リスクマネジメント |
パリ協定及びSDGsの目標13に掲げられているとおり、CO2削減のため、製造・販売活動の見直しや気候変動による影響を低減するための取り組みを実施することが以前にも増して企業に求められています。また、世界的な人口増加や経済成長に伴い、SDGsの目標12や目標6に掲げられているとおり、持続可能な資源利用や節水・浄水技術に対する需要が高まっています。近年では、SDGsの目標14や15に掲げられているとおり、気候変動の影響と合わせて生物多様性の損失がグローバルリスクとして認識が高まり、自然資本に関するリスクの把握や対応に対する評価を求める動きが始まっています。
[戦略リスク 事業横断的なリスク]
(6) 事業再編に関するリスク
当社グループは、経営の効率化及び競争力強化のため、不採算事業からの撤退、子会社や関連会社の再編、製造拠点や販売・物流網の再編及び人員配置等の適正化による事業の再構築を行うことがあります。これらの施策に関連して、事業再編後の組織において全社的な戦略上の優先順位が劣後し、経営資源が適切に配分されないこと等により、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
さらに、投融資等の意思決定の際に、事業戦略、領域、展開国等に内在するリスクが的確に識別されず、投資実行後に当初想定していた利益やシナジー効果を実現できないこと等により、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
発生可能性 | 低 | 影響度 | 中 | 重要性の 前年からの変化 | 同水準 |
対応策 | 経営陣と従業員とのコミュニケーション強化を図ることにより、当社グループの経営戦略の浸透を図っています。 事業・地域ポートフォリオマネジメントを強化することを通じて経営資源配分の優先順位を明確にすることにより、事業再編後の組織において、シナジー効果の最大化や戦略実効性の向上が早期に実現するよう努めています。事業再編後のスムーズな組織の構築に向けて、M&Aにおける買収先企業のPMIを強化しています。その一環として、ガイドラインの策定を通じて、PMI推進体制及び進捗報告プロセスを明確化することにより、有効かつ適切なPMIプロセスの整備・運用による子会社のガバナンス強化を推進しています。さらに、当社又はその子会社による会社の新設、事業再編等を含む投融資に関する事項(投融資案件)については、その内容や金額的重要性に応じて適時適切な判断ができるよう、投資審査委員会やM&A委員会による審査や決議をする体制を整えています。 | ||||
重要課題 との関連性 | 企業倫理とインテグリティ、コーポレート・ガバナンス、リスクマネジメント |
[戦略リスク 事業横断的なリスク]
(7) 他社との連携・企業買収等に関するリスク
当社グループは、企業買収及び資本参加を含む投資による事業の拡大を企画することがありますが、買収・投資実行後にグループ全体に内在するリスク及び機会を適時・的確に識別することができないことに加え、優秀な人材の離職や人材の融合が進まないことにより、当初想定した利益やシナジー効果を実現できない、あるいは買収後に偶発債務の発生や未認識の債務等が判明する可能性があります。さらに、事業拡大後、当社グループと対象事業の戦略が整合しておらず、全社的な戦略上の優先順位が劣後し、経営資源が適切に配分されないこと等により、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
発生可能性 | 低 | 影響度 | 低 | 重要性の 前年からの変化 | 同水準 |
対応策 | 統合時における対応策として、統合に関するグローバル共通のポリシーを策定し、統合後のレビューやモニタリングプロセスを効率的に整備・運用する体制を強化しています。また、環境や人権などのサステナビリティ項目についても、ポリシーに盛り込んでいます。統合後においては、シナジー創出に向けて効率的でフラットかつシンプルな組織構造の構築を目的とし、意思決定の迅速化を含めた組織変革を推進するとともに、対象事業の従業員が当社グループの一員としてすぐに活躍できるよう、インクルーシブな文化の醸成や環境整備に取り組んでいます。 投融資案件については、その内容や金額的重要性に応じて、投資審査委員会やM&A委員会による審査や決議をする体制を整えています。また、買収先企業のPMI強化の一環として、ガイドラインの策定を通じて、PMI推進体制及び進捗報告プロセスを明確化することにより、有効かつ適切なPMIプロセスの整備・運用によりガバナンスを強化しています。 なお、対応策については2015年に発覚した当社の海外子会社であったJoyou AGにおいて不適切な会計処理が行われていた事実(Joyou問題)への再発防止策を踏まえたものです。 | ||||
重要課題 との関連性 | 環境マネジメント、多様性の尊重、人材と能力開発、企業倫理とインテグリティ、 人権、コーポレート・ガバナンス、リスクマネジメント |
[戦略リスク 事業横断的なリスク]
(8) 人材の獲得と育成及びダイバーシティ推進に関するリスク
当社グループが継続的に事業を発展させるためには、専門技術に精通した人材や、経営戦略や組織運営といったマネジメント能力に優れた人材の確保、育成を継続的に推進していくことが必要です。しかしながら、特に日本国内においては少子高齢化に伴う労働人口の減少等もあり、国内外で必要な人材を継続的に採用・維持するための競争は厳しく、人材獲得や育成が計画通りに進まない場合には、長期的観点から業務運営の効率性が損なわれ、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
発生可能性 | 中 | 影響度 | 中 | 重要性の 前年からの変化 | 同水準 |
対応策 | 当社グループにおいて、継続的な事業の発展のためにグループ全体で女性のさらなる活躍、障がいのある従業員のための取り組みや人種における平等、性的マイノリティに関する取り組み等を推進しており、地域ごとに人事制度の改定や拡充を行うほか、グローバル規模の従業員リソースグループ(ERGs:Employee Resource Groups)として、ジェンダー平等、多文化、障がい、働く親や介護者、LGBTQ+にフォーカスした5つのグループを立ち上げる等、インクルーシブな組織風土を醸成するために様々な活動を行っています。 日本において、新卒採用や経験者の通年採用を積極的に展開するほか、人事・教育体系を充実させ、従業員の定着と育成に努めています。また、グローバルで活躍できる人材を育成するために、各プログラム(海外派遣研修、選抜型の育成プログラム、eラーニング等)を実施しています。多様なバックグラウンドを持つ従業員が個性や能力を十分に発揮し活躍できるよう、インクルーシブな環境を構築するための取り組みを推進しており、多様な人材を受け入れる企業文化の醸成、在宅勤務等の職場環境の整備、エキスパート制度等の新たな人事制度の構築に取り組んでいます。 さらに、「シェアード・サービス・センター」をアジアのみならず、欧米諸国及び日本においても設立し、各地域におけるガバナンスを強化するとともに、間接業務の集約化や効率化を図ることにより、日本国内あるいはグローバルにおける将来の労働環境に左右されない柔軟な組織を構築することを目指しています。加えて、「報酬・福利厚生委員会」を設置し、グローバルでの処遇の公平性・透明性に向けた取り組みを強化しています。 | ||||
重要課題 との関連性 | 多様性の尊重、人材と能力開発、従業員の安全と健康、企業倫理とインテグリティ、人権 |
近年、高齢化の進行による高齢世帯の増加及び障がい者人口の増加に対応した製品の必要性が高まっています。また、SDGsの目標5にて掲げられているとおり、企業に対して高齢者や障がい者の雇用だけでなく、ジェンダー格差の是正に対する取り組みも求められています。
[戦略リスク 事業特有のリスク ウォーターテクノロジー事業]
(9) 販売チャネルに関するリスク
当社の連結子会社であるASD Holding Corp.は様々な需要に応じて幅広い製品を展開していますが、近年特に北米を中心として流通構造の変革が起きています。具体的には、エンドユーザーへの直接的な販売の拡大が起きており、ASD Holding Corp.においても、Eコマース(EC)を活用したウェブサイトでの自社製品の販売等を含め、ビジネスの転換を図り、売上の伸長やコスト構造の改革に努めています。しかしながら、このような販路の転換に対して、想定していた顧客数が確保できない等の理由により、その売上成長が鈍化、若しくはコスト構造の改革が計画通りに進まない場合、当社グループが計上しているのれんについて減損損失が発生する可能性があります。
発生可能性 | 中 | 影響度 | 中 | 重要性の 前年からの変化 | 同水準 |
対応策 | 販売チャネルの拡大を進めるために、従来、外部の販売代理店が行っていた営業活動を内製化し、非住宅設備案件に影響力を持つ施工会社等のステークホルダーに専門性を持った担当者が直接アプローチすることで自社製品の販売促進に努めています。 また、自社のECを活用したウェブサイトで、エンドユーザーからの直接需要を効率的に取り込んでいます。さらに、取引先のECサイトへ新たな機能を追加し、エンドユーザーの購買行動の促進に努めています。 安定した販売活動を支え、運営上の安全性を担保するため、目的に応じ適切な管理システムを導入することで情報漏洩やサイト運営に支障が出ることを事前に防ぐ体制を整えています。また、コスト構造の改革については、当社グループ全体としての効率を重視した製造・物流拠点の選択など、ASD Holding Corp.のみに留まらない改革を進めています。 | ||||
重要課題 との関連性 | 顧客満足、サプライチェーンマネジメント、情報セキュリティ、 責任あるマーケティングと広告 |
[戦略リスク 事業特有のリスク ウォーターテクノロジー事業]
(10) ブランドに関するリスク
当社グループの保有する数あるブランドのうち、GROHEブランドは富裕層をターゲットとしたプレミアムブランドとして認知されていますが、競争の激しい環境においてブランド価値を維持し、従来の欧州中心のビジネスのみならず、アジアやアフリカ等の新興国の市場でもGo to Market戦略を企てています。それに伴い、地域特有のニーズに応える製品の開発が求められることがあります。しかしながら、個々の市場に合わせた戦略を実施した結果、シグネチャーエレメンツに対する認識を維持できなくなる可能性があるため、注意深くモニタリングする必要があります。その認識を経済環境に合わせて適切にコントロールできなかったことにより、これまで当社の連結子会社であるLIXIL Europe S.à r.l.が維持してきたGROHEブランドの価値が毀損し、その売上成長が鈍化、若しくは利益率が低下した場合、当社グループが計上しているのれんについて減損損失が発生する可能性があります。
また、GROHEブランドを維持する際に、テクノロジー内において一貫性のある戦略に基づいた管理がされないことにより、GROHEのブランドやデザインの差別化がなされず、ブランド価値が毀損し、その売上成長が鈍化、若しくは利益率が低下した場合、当社グループが計上しているのれんについて減損損失が発生する可能性があります。
発生可能性 | 低 | 影響度 | 高 | 重要性の 前年からの変化 | 同水準 |
対応策 | 継続的なブランド投資によりブランド価値の維持や、製品開発を実施しています。また、グローバルでGROHEブランド及び競合他社ブランドの販売価格を継続的にモニタリング・分析し、収集した情報を基にブランド戦略に沿った価格を設定・共有した上で、当社グループ全体において統一的な施策を立案・実行できる仕組みを整備しています。その結果、競争の激しい市場においてもブランド価値を反映した価格帯を維持できるよう対応しています。さらに、ウォーターテクノロジー事業におけるGROHEブランドの位置付けについて、事業内の他ブランドとの差別化を図るため、ブランドデザインの使用に関するルールを設け、ブランド価値の維持・管理に努めています。このような総合的なブランド戦略により、GROHEブランドの認知度を高め、市場でのトップポジションを維持することを目指しています。 | ||||
重要課題 との関連性 | 多様性の尊重、顧客満足、責任あるマーケティングと広告 |
[戦略リスク 事業特有のリスク ハウジングテクノロジー事業]
(11) 競合他社との競争・製品価格に関するリスク
当社グループは、事業を展開する多くの市場において激しい競争に直面しています。特に日本国内の建材市場は寡占市場となっており、売上収益は競合他社の価格設定に影響を受けます。当社グループは高品質で魅力的な製品を市場へ投入する能力を保持していますが、価格面において競争優位に展開できる確証はありません。これにより、製品・サービスが厳しい価格競争に晒され、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
発生可能性 | 中 | 影響度 | 中 | 重要性の 前年からの変化 | 同水準 |
対応策 | 競合他社との激しい競争による市場価格の下落に対し、多様なニーズに寄り添った付加価値製品の市場投入による差別化を進め、販売価格の底上げに取り組んでいます。生産活動においても共通部分の生産を汎用設備で行うことで生産スペースを削減(プラットフォーム化)するなど、投資資本効率の向上に努めています。プラットフォーム化により、新製品の早いサイクルでの市場投入を可能とし、時代に合った新しい価値を常に提供し続けることも可能となります。 また、高価格帯の魅力ある製品を開発・販売したことで、当該製品の割合を増やし、製品セールスミックスを改善しています。 その他の取り組みとして、クラウドファンディングを活用し、市場に対して新しい価値を提供する製品を試験的に販売することで、価格ではなく「価値」で顧客に選ばれる取り組みを実施しています。 | ||||
重要課題 との関連性 | 多様性の尊重、顧客満足、責任あるマーケティングと広告 |
[オペレーショナルリスク]
(12) 災害・事故・感染症等に関するリスク
当社グループは、日本国内及び海外諸国の複数の拠点において生産・販売活動を行っていることから、各地で発生する地震や台風等の自然災害、未曽有の大事故や感染症によって、当社グループの調達、生産、物流、販売活動や情報管理関連施設等の拠点に甚大な被害を受ける可能性があります。特に、災害・事故等の発生により、当社グループの国内及び海外工場の生産活動が停止することは、市場への製品供給に深刻な影響を及ぼし、売上収益に悪影響を与える可能性があります。
また、感染症の発生や拡大は当社グループ従業員の健康状態悪化による労働力の低下の可能性や、取引先の生産・販売活動の一部停止等、当社グループの事業活動に支障が出る可能性もあります。その結果、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。(参照リスク(1)(2)(4)(16))
発生可能性 | 中 | 影響度 | 高 | 重要性の 前年からの変化 | 同水準 |
対応策 | 大規模自然災害や事業活動に伴う事故に備え、早期に復旧できるよう事業継続計画(BCP)の策定及び定期的な見直しを実施しています。また、工場の分散、耐震工事の実施、サプライヤーの分散や連携強化等のリスク軽減をはかり、適切な保険を付保することにより、事業への影響を軽減しています。 当社グループでは、従業員及び家族の命の安全確保を最優先に考えています。海外での緊急事態発生に備え、複合リスクへの発展可能性を考慮し、予め有事における対応部門やレポートライン、対応の具体的手順等について協議しています。これを踏まえ有事が発生した際には、現地の最新の安全対策情報等も活用し、従業員とその家族への支援、営業活動や経済制裁など幅広い論点に対応し、情報共有することで経営層が積極的に関与し必要なグローバル対応を行っています。 感染症対策に関して、当社グループでは、在宅勤務の環境整備と運用を従来から推進しており、現状の政府指針や会社の状況などを踏まえ、勤務ガイドライン及びオフィス環境ガイドラインを改定しています。また、感染予防法の周知、感染発生時の対応準備、感染発生時の報告フロー整備などを行い、従業員が安心して働ける環境を構築するとともに、事業活動を従来通り継続することに努めています。 在宅勤務の推進とデジタル技術の活用を踏まえ、有事の際の安否確認、情報共有やコミュニケーションをよりタイムリーに行えるよう努めています。なお、災害発生を含め、有時の行動や対策についても従業員への周知徹底を実施しています。 | ||||
重要課題 との関連性 | 気候変動対策を通じた緩和と適応、従業員の安全と健康、サプライチェーンマネジメント、 リスクマネジメント |
[オペレーショナルリスク]
(13) 情報・サイバーセキュリティに関するリスク
当社グループが行う生産・販売活動及び各種事業活動は、コンピュータシステム及びコンピュータシステムを結ぶ通信ネットワークを利用しています。このため、通信ネットワークに生じる障害や、ネットワーク又はコンピュータシステム上のハードウェア、若しくは、ソフトウェアの不具合・欠陥、データセンターの機能停止等により事業活動に支障が出る可能性があります。また、情報システムが適切に導入・更新されていないことによりシステム上の不具合、業務の非効率、生産性低下を招き、事業活動に支障が出る可能性があります。
さらに、当社グループでは、業務を遂行する中で顧客情報をはじめとする様々な個人情報を取り扱う機会があり、厳格な情報管理が求められています。このため、不測の事態により個人情報の遺漏が発生した場合には、社会的信頼の失墜を招くとともに多額の費用負担が生じる可能性があります。その結果、売上収益の減少あるいは販管費等の増加により、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。(参照リスク(2))
発生可能性 | 高 | 影響度 | 中 | 重要性の 前年からの変化 | 同水準 |
対応策 | 情報セキュリティ委員会を設置し、情報セキュリティに関する社内規程の整備、不正アクセス等を未然に防止するための対策、従業員に対する教育等を実施し、さらにこれらの取り組みを定期的に評価・見直すことにより、情報セキュリティマネジメントの継続的な改善を実施しています。特に、効率的で安定した事業活動の遂行を担保するため、老朽化した基幹システムの刷新を進めています。また、サイバー攻撃全体への対応としてCSIRT (シーサート: Computer Security Incident Response Team)を設置し、外部からの不正アクセスを常時監視するとともに、有事の際に適切な対応を実現する体制を構築しました。また、情報セキュリティリスクが顕在化した場合には、緊急時の報告基準とフローに沿ってエスカレーションを行い、事業部門とコーポレート部門が連携し、速やかに初動対応と事業復旧対応が取れる危機管理体制の整備を推進しています。 IoT (Internet of Things)やOT (Operational Technology)も含めたサイバーセキュリティ強化の構築も推進しています。また、個人情報保護に関する法令を遵守すべく、必要な社内規程の整備やEU一般データ保護規則 (GDPR)で要求されるデータ保護責任者を含む個人情報責任者の設置、適切な研修の実施、プロセス整備等を行っています。 さらに、在宅勤務につきましては、従前より導入を進めていましたが、今般の新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、より推進されたことに伴い、情報漏洩防止に関するルールの周知・徹底、理解度向上のための従業員教育の強化に努めています。 | ||||
重要課題 との関連性 | リスクマネジメント、情報セキュリティ |
[オペレーショナルリスク]
(14) 知的財産に関するリスク
当社グループは、魅力ある差別化された製品やサービスの開発に努めています。このような製品やサービスに対し、第三者が保有する知的財産権との関係で紛争や交渉が生じる可能性があります。この場合、当該第三者の知的財産権を侵害しない製品やサービスの開発、損害賠償金の支払い、当該第三者の知的財産権のライセンスの取得とロイヤルティの支払い、差止命令による当社グループの製品やサービスの一部について製造販売や提供の中止、を要求される可能性があります。
一方では、当社グループの製品やサービスの差別化要素となる技術やデザイン等が第三者に模倣されることにより、当社グループの製品又はサービスの市場競争力の低下を引き起こす可能性があります。また、当社の商標権等の知的財産権を侵害する模倣品の流通により、当該模倣品を使用した顧客に事故や健康被害等が発生した場合、当社グループへの評判、ブランド価値、当社グループの製品の信頼性に悪影響を及ぼす可能性があります。
これらは、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、近年の浄水カートリッジに対する模倣品の増加を踏まえ、発生可能性を「低」から「中」へ変更しています。
発生可能性 | 中 | 影響度 | 中 | 重要性の 前年からの変化 | 増加 |
対応策 | 知的財産部門と事業部門が連携し、第三者の知的財産権の調査分析を行う等の知的財産権についてのリスクアセスメントを製品開発のプロセスに組みこむことで、開発段階から訴訟その他の重大な事業リスクの発生を未然に防止する対応をしています。すなわち、第三者の知的財産権についての事前調査や必要なライセンスの取得などの対応を図っています。 また、長期にわたって事業の競争優位性と高収益性を実現するために、競争力の源泉である当社の差別化要素の第三者による模倣を防ぐ対応を行っています。そのため技術開発、製品企画の段階から保護すべき知的財産を特定し、特許権、意匠権、商標権及びその他の知的財産権を取得し、又は当該知的財産を秘匿する等の対応を図るとともに、日本及び各国における知的財産ポートフォリオマネジメントを推進しています。なお、模倣品に対しては、お客様に対する注意喚起や税関への差止申立て、インターネット販売における監視と排除、当局による摘発への協力等を行い、その流通の防止に努めています。 さらに、知的財産情報をはじめとする各種のデータ分析に基づく知財インテリジェンスを実行し、上記のリスクアセスメントを効率的に行うとともに、戦略的に知的財産ポートフォリオを構築することに活用しています。 | ||||
重要課題 との関連性 | リスクマネジメント |
[オペレーショナルリスク]
(15) 繰延税金資産の回収可能性に関するリスク
当社グループは、税効果会計を適用し、税務上の繰越欠損金及び将来減算一時差異に対してそれらを回収できる課税所得が生じると見込まれる範囲において繰延税金資産を計上しています。
将来の課税所得は、マネジメントが確認した3か年分の見積りを基礎としています。当該見積りにおいて、日本国内における人口減少に伴う新設住宅着工戸数の減少が予想される中、販売価格の適正化及び政府による住宅省エネ化支援策の拡充も踏まえたリフォーム戦略の強化等による売上収益の増加や原価低減による売上総利益率の改善等の収益性向上を見込んでおり、これらの施策の達成には不確実性が伴います。また、税務上の繰越欠損金の繰越年数や使用上限割合が変更される等、当社グループにとって不利な税制改正が行われる可能性が否定できません。これらの結果、繰延税金資産の一部又は全部の回収ができないと判断された場合、当該繰延税金資産は減額され、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
発生可能性 | 低 | 影響度 | 中 | 重要性の 前年からの変化 | 同水準 |
対応策 | 見積りの達成にあたっては、当社グループ全体の業績管理を担う企画管理部門によるモニタリングを強化しており、見積りの達成を阻む要因があれば、早期に対応できる体制を構築しています。 さらに、当社CFO直轄組織がガバナンス強化の取り組みの一環として国内外子会社の業績管理プロセスを強化することにより、業績悪化の兆候を早期に捉えるようにしており、税制改正にかかる情報については、当社税務部門において早期に捉えるようにしています。これらの部門が、業績悪化の兆候や税制改正にかかる情報を把握した際には、当社経理財務部門及び税務部門と協議を行い、繰延税金資産の回収可能性に関して見直しの必要性を含めて適時に対策が打てるような体制を構築しています。 | ||||
重要課題 との関連性 | 税の透明性 |
[オペレーショナルリスク]
(16) 規制強化に関するリスク
当社グループは、日本国内において事業活動を行う上で、会社法や独占禁止法、個人情報保護法、税法、会計基準等、経営に係る一般的な法令諸規制の適用を受けています。また、海外での事業活動についても、それぞれの国や地域における競争法、個人情報保護法、国際取引規制、その他の法令諸規制の適用を受けています。近年、当社グループの重要な物的資源(アルミ、銅、ステンレス等)又はその原材料を含む自然資源の利用や、非財務情報開示を含むサステナビリティに関わる規制等、新たな法令諸規制の導入について活発に議論されています。また、個人情報保護に関する規制については、グローバルに規制強化の一途を辿っており、その執行も活発化しています。
これらの法令諸規制は、労務費、原材料費、エネルギーコスト等の上昇、国際情勢や多国間の国際関係の変化、その他の社会情勢の変化などに応じて、将来において急速に新設・変更・廃止され、厳正な法執行が行われる可能性があります。その結果、製品その他サービスの提供の制限や、売上原価の増加、設計・開発段階におけるコスト増、新たな制裁・法規制の対象となった国や企業との取引の停止等、当社グループの事業運営や、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。また、新たな法令諸規制に対応できる人材の確保を含む体制整備や、システム導入に遅れが生じた場合、従来と比較して法令違反のリスクが高まる可能性があります。
規制に関するリスクは事業活動において常に存在するものの、規制が強化され、また新たな規制化の動きが早まっているとともに、その執行も活発化していることを受け、個別の記載としています。(参照リスク(1)(2)(3)(4)(5)(12))
発生可能性 | 低 | 影響度 | 低 | 重要性の 前年からの変化 | 新規 |
対応策 | 当社グループは、複雑化し急速に変化し続けるグローバルな規制環境の中で行う事業活動に機動的に対応するため、2022年1月に法務・コンプライアンス部門のグローバルでの組織再編を実施しています。また、2022年4月には個人情報保護をグローバルで統括する専任の組織を立ち上げました。これらの新体制のもと、法務部門を中心とした各地域の法令遵守と法的リスクを抑制するための体制が整備されています。 さらに、法令諸規制に関する情報発信や定期的な教育等により、従業員の理解度を高めるとともに、事業部門とコーポレート部門が規制対応に関して適切に連携できるよう取り組んでいます。規制の新設・変更・廃止が実施された場合には、規程やガイドライン等の作成・更新に加えて、取引先に対するコンプライアンスデューデリジェンスにその内容を反映する等の実務的な方策によって、規制違反の回避に努めています。 | ||||
重要課題 との関連性 | すべて |
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ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
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