有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100W043 (EDINETへの外部リンク)
オークマ株式会社 研究開発活動 (2025年3月期)
当グループでは、基礎及び応用研究、そして、これらの研究により裏付けされた新製品の開発までの一連の研究開発活動を、当社の技術本部及びFAシステム本部を中心として行っております。当連結会計年度は、研究開発費として4,409百万円を支出いたしました。
研究開発活動の概要は、次のとおりであります。
(1) 新機種・新技術開発
一般産業機械、半導体製造装置、自動車の生産に関わる設備投資の底堅さを受け、2024年暦年の日工会受注総額は前年比0.1%減の1兆4,851億円となりました。2024年後半からと見込んでいた本格的な回復局面は2025年以降に持ち越されてはいるものの、特に、労働人口減少、脱炭素化、サプライチェーン再編等、社会課題や地政学リスクへの対応に伴う需要は堅調に推移しました。こうした中、「ものづくりDXソリューションの展開」を基本戦略とし、存在意義(Purpose)である「『ものづくりサービス』の力で、社会に貢献する」ため、当社の強みである「機電情知(機械、電気(制御)、情報、知識創造)」の融合技術を活かし、高い生産性と安定した稼働を実現する新機種(スマートマシン)・新技術開発を進めています。「自動化、省人化」「工程集約」対応につきましては、開発した新技術を自社のスマートファクトリー「Dream Site(ドリームサイト)」で実証確認すると共に、お客様と共同で実行した経験をノウハウとして蓄積し、一層の信頼性向上を図っております。また、「脱炭素」対応につきましては、知能化技術を応用展開することで工作機械が自律的に高精度の安定維持と省エネルギーを実現するスマートマシンを「Green-Smart Machine」と位置づけて「脱炭素化」への取組を継続強化しております。
2024年度は、成長するEVや半導体製造装置部品等の生産を革新する新コンセプトの小型横形マシニングセンタ「MS-320H」を開発しました。多品種少量生産から量産、省人化から自動化まで小物部品加工に最適化し、人手不足の課題解決と働き方改革への貢献を図ってまいります。切粉処理性等安定稼働に必要な要件を見直した機械構造に、知能化技術、AI技術活用を適用することで、コンパクトでありながらも多様化する自動化ニーズに柔軟に応えることが高く評価され「2024年十大新製品賞本賞」(日刊工業新聞社主催)を受賞いたしました。
労働人口減少による自動化・省人化への要望の高まりは、生産性向上を目的とするものであり、そうした課題に 対応する技術開発を行っております。省スペースで長時間の自動運転を実現するパレット搬送システムの需要拡大に対し、タワー型APCや昇降2段式APC等の製品を強化しました。横形マシニングセンタ「MA-4000H」に搭載した新開発の多本数工具収納マガジンでは、最大で260本の工具を収納可能としながらもフロアスペースを従来機比で20%削減しました。加工の工程集約については、研削盤の製造販売で培った研削技術を複合加工機や5軸制御マシニングセンタに盛り込み提供を行っております。また、工作物を工作機械に投入するロボット操作においては、産業ロボットの操作にあたり工作機械とは異なったロボット特有の言語と取り扱い方を習得する必要があり、中小企業におけるロボット導入の障壁となっています。この課題に対して、生産を担う「工作機械オペレーターがすぐに使える自動化」をコンセプトとして新たな操作技術を開発し展開しております。工作機械とロボットを完全融合したロボットシステム『ARMROID(アームロイド)』をはじめ、ロボットと工作機械を組み合わせた加工セルでは、ロボットの動作順を表形式の工程表で指定するだけで動作可能なスマート加工セルコントローラ「smarTwinCELL(スマートツインセル)」を開発しました。Green-Smart Machineの複合加工機MULTUS B300Ⅱと組み合わせ、2023年度より提供を開始しております。2024年度は、旋盤LB3000 EX Ⅲ、5軸制御マシニングセンタMU-4000V、立形マシニングセンタMB-46,56V Ⅱと適用機種を拡大しました。一方で、現状の生産現場に対する自動化展開を図るため、生産の繁忙に合わせて柔軟に自動化することを目的に、移動可能なワークストッカとロボットを組み合わせた移動式協働ロボット「OMR」を開発し、提供を開始しました。自動化したい工作機械に対して約4分半で自動運転を可能とするだけでなく、最大10台の工作機械に対応ができること、最大30種の加工部品に対応可能であることが特徴で多品種少量生産の生産現場の生産性向上に貢献いたします。さらに、自働化において重要となるワークの品質管理にも取り組んでおります。品質管理の目的で使用される機内計測装置の校正において、手動で30分要していた作業を自動で5分にて完了する技術を開発し、提供しております。また、稼働の安定化に対しては、ドリル加工時に工作機械が自動で加工不具合を防ぐ「AI加工診断機能(ドリル)」を提供しております。2024年度は、タップ加工にも適用範囲を拡大しました。ドリル加工同様に、Dream Site(ドリームサイト)で実証確認すると共に、お客様でも効果を実証しています。
国内外の大手の製造業が脱炭素化に向けた取組を開示し、サプライチェーン全体への波及が進んでいることから、中小規模企業においても脱炭素化の取組が必要となっています。このような状況を踏まえ、部品加工工場の電力消費量の多くを占める工作機械の省エネルギー(温室効果ガス排出量の削減)技術の開発を進めております。具体的には、精度安定化のために必要となる工作機械の暖機運転や工場の環境温度変化を抑制するための空調を削減しても工作機械が自律的に高精度の安定維持を行うと共に、周辺機器の稼働を自動できめ細かく運転することで省エネルギーを実現するスマートマシンを「Green-Smart Machine」として展開し、提供しております。
当グループは今後とも、お客様の利益の最大化に向けて「高精度と高生産性」を追求し、お客様が求める「ソリューション(課題解決や付加価値向上のための提案)」の実現に必要な技術開発、新製品開発を行い、「最高のものづくりサービス」を提供することで、世界の工作機械のエクセレントカンパニーを目指してまいります。
(2) スマートマシンを支えるNC装置の開発とスマートファクトリー実現の取組
当グループは、1963年(1963年)に自社製NC装置「OSP」の開発に成功して以来、機械とNC装置を一体でサポートする「トータルレスポンシビリティ」を基本理念とし、現在では、「機電情知(機械、電気(制御)、情報、知識創造)」の融合をコンセプトとして、お客様のものづくりを支えるソリューションを提供する先進技術と機能の開発を続けております。近年、社会における人々の志向の多様化、脱炭素社会への移行、安全保障、地政学的リスクへの対応等、時代が大きく転換している中で、ものづくり産業における生産革新、スマート化が進展しております。こうしたスマートなものづくりを支えるのが、スマートマシンであり、スマートマニュファクチャリング(スマートなものづくりの仕組み)であります。
スマートマシンを支えるNC装置では、お客様の「ものづくりDX(デジタル・トランスフォーメーション)」を実現する新世代CNC「OSP-P500」を2023年5月より当社工作機械への搭載を開始しました。高性能CNCハードウエアとソフトウエア制御を最適化し、一般部品加工における加工中の非切削時間を削減、高度なデジタル技術に基づく加工形状に最適な軸制御により、金型や自由曲面形状の加工性能、加工面品位の向上、あわせて、加工時間を短縮しました。加えて高精度・高生産性と環境対応を両立する脱炭素ソリューション、セキュアな環境を実現する強固なセキュリティを備えています。
さらには、迅速かつ正確なフロントローディングを実現するデジタルツイン、初心者でも簡単に加工が可能な革新的操作性を強化し、幅広い産業の製造現場においてお客様の「ものづくりDX」の実現を支援し、社会課題解決と高精度・高生産性を両立したものづくりを推進します。
1) スマートマシンを支える新世代CNC「OSP-P500」での機能開発
1-1) 2つのデジタルツイン
実際の機械から収集した様々なデータを元に、限りなく実際の機械に近いシミュレーションを可能とするデジタルツイン技術を活用し、迅速かつ正確なフロントローディングを実現するPC上でのデジタルツインと、実際の機械上で機械動作を高速、高精度でシミュレーション可能なデジタルツインの2つのデジタルツインを開発しました。
PC上でのデジタルツイン(「デジタルツイン オンPC」)では、実際の機械の軸動作だけでなく、ATC等の周辺装置等の様々な動作情報をNC装置(OSP-P500)により収集、PCに送出することにより、PC上においても精度の高い機械動作のシミュレーションを高速で実行することにより、より精度の高い工具パスや干渉チェックの検証、高精度の加工時間見積を可能にしました。
実際の機械上でのデジタルツイン(「デジタルツイン オンマシン」)では、実際の機械を制御するための制御データをそのままシミュレーションに用いることにより、加工を開始する前の作業者が設定したデータ設定ミス等を事前に確認できるようになりました。
この2つのデジタルツイン(「デジタルツイン オンPC」および「デジタルツイン オンマシン」)により、迅速かつ正確なフロントローディングや実際の機械上での作業確認時間の短縮を図り、生産性の向上を実現します。
1-2) スマートOSP操作
製造業での人手不足、熟練技能者の高齢化が叫ばれる中、NCプログラムを全く知らない初心者の方でも、簡単に加工を行えるよう作業者を支援する「スマートOSP操作」を開発しました。
「スマートOSP操作」の加工においては、加工に必要データを表形式に順に入力することにより、加工するための動作を定義でき、加工工程、工具、切削条件を自動決定し、直ぐに加工が行えます。加工をするための原点設定や工具の取付け等の段取り作業についても、手順をガイダンスし、作業者の作業を支援します。
これにより、作業者は短期間で機械の操作や加工を習得できます。
1-3)セキュリティ機能
製造現場でのIoTが加速しています。工場内の機械や様々な機器がネットワークで繋がるだけでなく、グローバルに拡がる複数の工場間、あるいは、取引先を含めたサプライチェーンがネットワークで繋がっていきます。最近、お客様の工場でのサイバー攻撃等のセキュリティインシデントの報告が増加しています。このようなサイバー攻撃のリスクから工作機械を守るために、工作機械での強固なセキュリティ機能を開発しました。
不正なアクセスや接続を防ぐオペレーター認証機能による「防衛」、被害を抑制するホワイトリスト方式のウイルス対策による「防御」、万が一に備える制御ソフトウエアとデータのバックアップ機能による「復旧」の3つの観点で、サイバー攻撃のリスクからお客様の大切な資産を守ります。
1-4) ECO suite plus
環境対応として、脱炭素社会の実現に向け、工作機械の使用による温室効果ガス排出量(消費電力)を見える化すると共に、加工中は、必要な時に必要な分だけ周辺機器を運転するよう制御し、加工完了後は、機械が自律的に不要な周辺機器をアイドルストップしたり、作業者の作業状況を自動で判別して周辺機器のアイドルストップと復帰を自動化したりする等、様々な機能により当グループが提案する「Green Smart Machine」を支えています。2024年度には主軸冷却装置の消費電力を40%削減(従来機比)するオイルコントローラ自動制御機能を横形マシニングセンタMA-4000Hに搭載しました。従来の非加工中に加え、加工中にも対応した主軸冷却装置の自動運転制御を開発し適用しています。順次、他の横形マシニングセンタにも展開していきます。
2) スマートファクトリー実現の取組
次世代のものづくりが拡がる中、当グループ工場「Dream Site(DS1、DS2、DS3)」では、当グループが目指すスマートファクトリーとして、導入した自社製スマートマシンを活用し、全体最適の見える化工場、部品加工プロセスの制御周期の高速化によるスループット向上、ロボット・自動化システムによる自動化・省人化に取り組んでいます。さらには、業務・製造プロセスのデジタル化を進め、デジタルマニュファクチャリングの実現に向けて、着実な成果を上げております。
加えて、この取組を会社全体の業務プロセスに拡張し、当グループにおいて「ものづくりDX」として取り組んでいます。
今後は、「ものづくりDX」ソリューションとして、上記の当グループ工場や社内の業務プロセスにおけるDXの取組の成果やお客様のものづくりの現場でこれまで培ってきたノウハウや成功事例を、個人や個別組織の経験値として蓄積するだけでなく、デジタル化により全体で共有し、リードタイム短縮、生産性向上、品質向上に利活用し、変化する顧客や社会のニーズに迅速に適合できるように変革することをお客様と共に協創して取り組み、お客様の価値創造を支援していきます。
当グループでは、半世紀に渡る自社製NC装置開発の基本理念を今後も継承すると共に、当グループの強みである「機電情知」融合のコンセプトを基盤として、先進のサーボ技術、先進の情報技術、オンリーワンの知能化技術、先進のAI活用技術の開発と強化を進め、スマートマシンの実現を推進すると共に、当グループ工場「Dream Site(DS1、DS2、DS3)」で実証されたデジタルマニュファクチャリングを、「ものづくりサービス」として提供し、世界中のお客様の価値創造の実現と社会に貢献できるように推進してまいります。
このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E01481] S100W043)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
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