有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100TOYU (EDINETへの外部リンク)
マルハニチロ株式会社 研究開発活動 (2024年3月期)
当社グループでは「世界においしいしあわせを」お届けするために、おいしさ、栄養、健康をはじめ、持続可能な水産資源の追求や、食品加工における卓越した技術・価値の創出等『食』の未来へ新たな価値を提供するため、食品・水産素材に関する基礎研究から、事業化に向けた応用研究・技術開発まで、幅広い領域での研究開発に取り組んでおります。
特に、中期経営計画に掲げている、「イノベーション・エコシステム」を効率的に推進するために、①フードテック領域、②マリンテック領域、③バイオテック領域等の領域に注力いたしました。
当連結会計年度における研究開発費の総額は1,810百万円であり、特定のセグメントに区分できない研究開発費の各セグメントへの配賦額を含めたセグメント別の内訳は、水産資源事業1,020百万円、加工食品事業295百万円、食材流通事業332百万円、物流事業50百万円、全社費用配賦差額111百万円であります。
主なセグメント別の研究の目的、主要課題、研究成果は次のとおりであります。
水産資源事業
世界的な人口増加と新興国の経済成長により、良質かつヘルシーなたんぱく源である魚の需要が世界規模で急増しているなか、水産、養殖分野での取り組みの重要性が高まっております。特にSDGs目標14「海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する」に貢献することを目指して、養殖魚のエサとなる天然魚や魚粉原料をできる限り使用しない飼料開発のための昆虫ミールに着目した研究や、魚類の生理機能を活用した飼育方法による生産性の向上等に取り組んでおります。また、おいしさの部分においても、呈味成分等を詳細に分析することで客観的な指標を見出し、更に高いレベルの品位を目指して改良を進めております。
沿岸域での海面養殖だけではなく、台風や赤潮等の自然環境に影響されにくく、残餌や糞により海洋環境を汚すことのない閉鎖循環型陸上養殖については、研究助成を受けて産官学と連携を取りながら、山形県遊佐町において、サクラマス陸上養殖実証試験に係る研究開発を進めておりました。助成研究は2020年度で終了となりましたが、事業化に向けた研究を継続中であり、遺伝子情報を活用した高成長種苗の育種や高密度飼育技術の開発・検討に取り組んでおります。この陸上養殖研究の知見を生かし、2022年10月、三菱商事株式会社との合弁により、富山県入善町でサーモンの陸上養殖事業を行う「アトランド株式会社」の設立に至りました。デジタル技術も活用した陸上におけるサーモンの持続可能で安定的かつ効率的な生産体制の構築、地産地消型ビジネスモデルの実現、低・脱炭素化への貢献を目指し、施設の稼働開始、初出荷に向けて、サクラマスと並行してアトランティックサーモンの飼育試験を山形県遊佐町にて鋭意取り組んでおります。
種苗生産研究では、2020年4月に、増養殖事業部傘下の「南さつま種苗センター」を、中央研究所管轄の新会社として組織変更した「㈱マルハニチロ養殖技術開発センター」の本格稼働により、2023年度は更なる技術の革新に取り組み、陸上施設内でブリ類の稚魚に大きな被害を与える特定の魚病に罹患していないSPF種苗の作出を行い、種苗導入先への魚病拡散防止と環境保全に取り組みました。ブリでは、これまで天然親魚からの採卵でしたが、より養殖に適した人工孵化親魚から採卵して完全養殖を達成しており、高成長系統の選抜育種も併用し、養殖の生産性を更に上げていく予定であります。また、2021年3月に、完全養殖クロマグロ育種改良のための基盤・応用技術の開発に関して、国立研究開発法人水産研究・教育機構と協働していくことで合意し、共同研究を進めております。この取り組みによって、人工種苗を用いたクロマグロ養殖の体質強化と持続的発展に資する技術開発を推進してまいります。
水産・養殖現場では、AI(人工知能)、IoT(Internet of things)、ICT(情報通信技術)を活用して、生産性向上や省力化を目指した取り組みを進めております。それら技術と水産・養殖現場の課題を適切にマッチングさせ、費用対効果が出るような技術開発を行い、AI画像認識技術を活用した魚の尾数をカウントするシステム「かうんとと」、IoTを利用した養殖向けの環境データモニタリングシステムを実用化しております。また、人手で行っている養殖魚へのワクチン接種の省人化のため、ワクチン自動接種機の検討を進め、養殖現場に導入することができました。現在は、AI画像認識技術を利用して稚魚を計数する技術開発、マグロの大きさを測定する技術開発に取り組んでおります。なお、東京海洋大学が主催する「海洋AIコンソーシアム」に協力機関として参加し、東京海洋大学の行う卓越大学院プログラム、その他の海洋AIに関する教育及び研修に関する支援(インターンシップの学生の受け入れ等)を進めております。
エビについては調理後の食感や味を向上させるために浸漬剤による処理を行っており、エビの加工現場で用いる独自配合の浸漬剤の開発・実用化を進めております。これら浸漬剤を用いた処理により、素材が持つ美味しさを保ちつつ、品質を向上させることができ、特に食感や色の改良が認められております。これらエビの浸漬に関する技術は、特許を出願、取得しております。更に、浸漬処理の技術は、エビだけではなく、その他の水産物への応用にも取り組んでおります。
魚介類の国内での消費量が減少し続けるなか、魚介類の価値を高めるための一つの取り組みとして、魚由来の成分の健康に及ぼす影響、更に、日常の食生活の中で魚を中心とする食事の健康への効果を実証するための各種検討を進めております。
また、水産加工現場から排出される未利用資源の有効利用に関する技術開発を行い、環境負荷低減の取り組みを進めております。
加工食品事業
食品の見た目、香り、味や食感等の特徴を官能評価で数値化し、プロファイリングを行い、栄養成分や物性等の美味しさに関わる科学的な要素を分析し比較することで、理論的に食品の特徴をコントロールする取り組みを行っております。
食塩を控える等健康志向の強い消費者に対応できるよう、減塩しても美味しさが変わらない技術や噛みやすく飲み込みやすい食感(物性)が必要な介護食を安定して製造するための技術開発に取り組み、当社商品への応用展開を進めております。
特定保健用食品は、からだの生理学的機能等に影響を与える保健効能成分(関与成分)を含み、その摂取により、特定の保健の目的が期待できる旨の表示(保健の用途の表示)をする食品であり、この販売には、食品の有効性や安全性について国の審査を受け、許可を得なければなりません。
当社では、長年続けてきた魚油由来の健康成分であるDHAとEPAに関する研究成果をもとに、2004年に中性脂肪が高めの方を対象にした特定保健用食品「リサーラ」の販売を開始しました。また、日本人の死因で2番目に多い疾患である心血管疾患に着目し、2024年にはDHAとEPAを関与成分とし、心血管疾患に対するリスク低減効果の可能性がある「疾病リスク低減表示特保」として日本で初めて許可を取得したフィッシュソーセージ「DHA入りリサーラソーセージω(オメガ)」の発売をいたしました。疾病リスク低減表示特保とは、関与成分の疾病リスク低減効果が医学的・栄養学的に確立されている場合に限り、「特定保健用食品(疾病リスク低減表示)」として消費者庁から許可されている食品であり、本製品は、疾病リスク低減表示の個別評価第一号に当たります。また、機能性表示食品においても、開発にいち早く取り組みました。その結果、業界初やカテゴリー初となる機能性表示食品を次々に開発し、これまでに、DHA・EPAを関与成分とした中性脂肪を低下させる機能がある食品、DHAを関与成分とした情報の記憶をサポートする機能がある食品として、多数の品目について消費者庁で届出を受理されております。また、多様な生理活性を有する脂質研究を基に多くの医薬品を創製してきた小野薬品工業株式会社と協業し、エビデンスに基づく機能性脂質製品の商品開発に共同で取り組んでおります。具体的には、当社水産加工現場から排出される未利用資源よりDHAが結合したリン脂質を含むイクラ油を基にしたサプリメントを共同で開発しました。これには睡眠の質を向上させ、あるいは一時的な活気・活力の向上と日中の眠気の軽減に役立つ機能があることを臨床試験で確認し、機能性表示食品として受理され、2022年3月より「レムウェル」(小野薬品ヘルスケア)の販売に至りました。両社は、信頼できるパートナーとして、お互いの知見や事業ノウハウを有効活用し、引き続き脂質のもつ有用な生理活性に着目して、食品と医薬品の間に位置する予防・未病の分野を開拓し、より多くの方へ生涯にわたる健康をお届けしてまいります。
DHA以外に、当社が原料調達等での優位性を有する他の素材についても検討を進めており、サケ白子に含まれるプロタミンの抗菌性を活用した口腔ケア等への応用研究、スケソウダラ由来魚肉タンパク質の機能性研究等、水産物由来の機能性成分に関する研究を推進しております。
また、新たな取り組みとして、持続可能な“次世代の魚タンパク”の商業化生産を目指し、2021年8月に細胞培養スタートアップのインテグリカルチャー株式会社と「魚類」の細胞培養技術の確立に向けた共同研究を開始しました。同社は、細胞農業(細胞培養)が普及する世界の実現に向けて、培養コストの低価格化と、細胞培養の大規模化技術の開発を行う革新的なスタートアップ企業です。同社が独自に展開する食品グレード培養液と汎用大規模細胞培養システム “CulNet System™”は、これまで牛と家禽の細胞で有効性が確認されており、本研究ではこれらを新たに魚類の細胞にも拡張してまいります。検証に必要な生きた魚(細胞)の提供を当社が担って、研究を推進してまいります。
更に、技術面及び法整備を含めた世界的な事業環境の変化を見据え、2023年8月 UMAMI Bioworks Pte Ltd.(本社:シンガポール)と協業契約を締結し、魚類の細胞培養技術の確立に向けた取り組みを推進いたします。同社は、シンガポールに本社を置くバイオテクノロジー企業で、培養魚の自動生産プラットフォームを構築しております。シンガポールは細胞性食品における法整備の可能性や市場形成の展望が世界的にも有望視されているなか、UMAMI Bioworksは培養魚研究開発においてすでに実用化に近い段階にあり、試食可能な細胞性水産物の開発に成功しております。当社は今回の協業を通じて、UMAMI Bioworksの細胞培養プラットフォームと当社の水産サプライチェーンを活用して、細胞性水産物の普及に向けた取り組みを推進します。
2023年1月からは、細胞性食品(いわゆる「培養肉」)のルール形成を行う団体である一般社団法人日本細胞農業研究機構に参画して活動を進めております。当社は創業以来、良質な魚タンパクの供給を通じて人々の食と健康に貢献してまいりました。魚類細胞性食品の生産技術が実現できれば、世界中で高まる魚需要に対して、持続可能な次世代の魚タンパク質の提供が可能になると考えております。
食材流通事業
自然解凍冷凍食品、フローズンチルド商品等、多様な流通カテゴリーからなる当社商品に関して、商品の安全性担保のための基盤となる微生物制御技術の研究を進めております。独立行政法人製品評価技術基盤機構との共同研究では、近年注目を浴びているマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF MS)を用いた、食中毒原因菌であるセレウス菌(Bacillus cereus)の迅速かつ精密な識別・同定(菌種特定)法を2018年に確立いたしました。更に、当該分析法を用いた同定精度向上とともに、食中毒菌等の迅速検出技術、増殖予測技術についても研究を進めており、「MALDI-TOF MSを用いた食品希釈液からの直接同定方法の開発」について日本農芸化学会2022年度大会で発表し、「トピックス賞」を受賞しました。安全、安心な商品の提供に貢献するため、当社グループ内における高度な微生物管理が要求される新商品の開発や生産等につなげてまいります。
地球温暖化や海洋環境変化等に起因する水産物の供給量や価格が不安定な状況になっていることを背景に、将来的な水産物の資源枯渇に対応するため、代替食品製造の技術開発を進めております。社内関連部署との取り組みとして、代替食品を用いた新商品の開発を進め、大豆たんぱくで作った常温トレー入りの「お魚屋さんの大豆たんぱく」シリーズを立ち上げ、「さけ風フレーク」と「かつお風しぐれ煮フレーク」を量販店の水産売り場にて販売を開始しました。なお、「さけ風フレーク」は1パック(30g)当たり、約5.5gのたんぱく質を含んでおり、実際の鮭を使用したフレークと同程度のたんぱく質量となっております。現在、「お魚屋さんの大豆たんぱく」シリーズ以外にも代替食品の開発を進めており、代替食品の可能性の追求を目指しております。
更に、水産・食品分野のリーディングカンパニーとして、関連学会での発表はもとより、関連セミナーにおける講師、理科授業の実施等、成果や技術力の情報発信に加え、社会に対する貢献活動に継続して取り組んでまいりました。
特に、中期経営計画に掲げている、「イノベーション・エコシステム」を効率的に推進するために、①フードテック領域、②マリンテック領域、③バイオテック領域等の領域に注力いたしました。
当連結会計年度における研究開発費の総額は1,810百万円であり、特定のセグメントに区分できない研究開発費の各セグメントへの配賦額を含めたセグメント別の内訳は、水産資源事業1,020百万円、加工食品事業295百万円、食材流通事業332百万円、物流事業50百万円、全社費用配賦差額111百万円であります。
主なセグメント別の研究の目的、主要課題、研究成果は次のとおりであります。
水産資源事業
世界的な人口増加と新興国の経済成長により、良質かつヘルシーなたんぱく源である魚の需要が世界規模で急増しているなか、水産、養殖分野での取り組みの重要性が高まっております。特にSDGs目標14「海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する」に貢献することを目指して、養殖魚のエサとなる天然魚や魚粉原料をできる限り使用しない飼料開発のための昆虫ミールに着目した研究や、魚類の生理機能を活用した飼育方法による生産性の向上等に取り組んでおります。また、おいしさの部分においても、呈味成分等を詳細に分析することで客観的な指標を見出し、更に高いレベルの品位を目指して改良を進めております。
沿岸域での海面養殖だけではなく、台風や赤潮等の自然環境に影響されにくく、残餌や糞により海洋環境を汚すことのない閉鎖循環型陸上養殖については、研究助成を受けて産官学と連携を取りながら、山形県遊佐町において、サクラマス陸上養殖実証試験に係る研究開発を進めておりました。助成研究は2020年度で終了となりましたが、事業化に向けた研究を継続中であり、遺伝子情報を活用した高成長種苗の育種や高密度飼育技術の開発・検討に取り組んでおります。この陸上養殖研究の知見を生かし、2022年10月、三菱商事株式会社との合弁により、富山県入善町でサーモンの陸上養殖事業を行う「アトランド株式会社」の設立に至りました。デジタル技術も活用した陸上におけるサーモンの持続可能で安定的かつ効率的な生産体制の構築、地産地消型ビジネスモデルの実現、低・脱炭素化への貢献を目指し、施設の稼働開始、初出荷に向けて、サクラマスと並行してアトランティックサーモンの飼育試験を山形県遊佐町にて鋭意取り組んでおります。
種苗生産研究では、2020年4月に、増養殖事業部傘下の「南さつま種苗センター」を、中央研究所管轄の新会社として組織変更した「㈱マルハニチロ養殖技術開発センター」の本格稼働により、2023年度は更なる技術の革新に取り組み、陸上施設内でブリ類の稚魚に大きな被害を与える特定の魚病に罹患していないSPF種苗の作出を行い、種苗導入先への魚病拡散防止と環境保全に取り組みました。ブリでは、これまで天然親魚からの採卵でしたが、より養殖に適した人工孵化親魚から採卵して完全養殖を達成しており、高成長系統の選抜育種も併用し、養殖の生産性を更に上げていく予定であります。また、2021年3月に、完全養殖クロマグロ育種改良のための基盤・応用技術の開発に関して、国立研究開発法人水産研究・教育機構と協働していくことで合意し、共同研究を進めております。この取り組みによって、人工種苗を用いたクロマグロ養殖の体質強化と持続的発展に資する技術開発を推進してまいります。
水産・養殖現場では、AI(人工知能)、IoT(Internet of things)、ICT(情報通信技術)を活用して、生産性向上や省力化を目指した取り組みを進めております。それら技術と水産・養殖現場の課題を適切にマッチングさせ、費用対効果が出るような技術開発を行い、AI画像認識技術を活用した魚の尾数をカウントするシステム「かうんとと」、IoTを利用した養殖向けの環境データモニタリングシステムを実用化しております。また、人手で行っている養殖魚へのワクチン接種の省人化のため、ワクチン自動接種機の検討を進め、養殖現場に導入することができました。現在は、AI画像認識技術を利用して稚魚を計数する技術開発、マグロの大きさを測定する技術開発に取り組んでおります。なお、東京海洋大学が主催する「海洋AIコンソーシアム」に協力機関として参加し、東京海洋大学の行う卓越大学院プログラム、その他の海洋AIに関する教育及び研修に関する支援(インターンシップの学生の受け入れ等)を進めております。
エビについては調理後の食感や味を向上させるために浸漬剤による処理を行っており、エビの加工現場で用いる独自配合の浸漬剤の開発・実用化を進めております。これら浸漬剤を用いた処理により、素材が持つ美味しさを保ちつつ、品質を向上させることができ、特に食感や色の改良が認められております。これらエビの浸漬に関する技術は、特許を出願、取得しております。更に、浸漬処理の技術は、エビだけではなく、その他の水産物への応用にも取り組んでおります。
魚介類の国内での消費量が減少し続けるなか、魚介類の価値を高めるための一つの取り組みとして、魚由来の成分の健康に及ぼす影響、更に、日常の食生活の中で魚を中心とする食事の健康への効果を実証するための各種検討を進めております。
また、水産加工現場から排出される未利用資源の有効利用に関する技術開発を行い、環境負荷低減の取り組みを進めております。
加工食品事業
食品の見た目、香り、味や食感等の特徴を官能評価で数値化し、プロファイリングを行い、栄養成分や物性等の美味しさに関わる科学的な要素を分析し比較することで、理論的に食品の特徴をコントロールする取り組みを行っております。
食塩を控える等健康志向の強い消費者に対応できるよう、減塩しても美味しさが変わらない技術や噛みやすく飲み込みやすい食感(物性)が必要な介護食を安定して製造するための技術開発に取り組み、当社商品への応用展開を進めております。
特定保健用食品は、からだの生理学的機能等に影響を与える保健効能成分(関与成分)を含み、その摂取により、特定の保健の目的が期待できる旨の表示(保健の用途の表示)をする食品であり、この販売には、食品の有効性や安全性について国の審査を受け、許可を得なければなりません。
当社では、長年続けてきた魚油由来の健康成分であるDHAとEPAに関する研究成果をもとに、2004年に中性脂肪が高めの方を対象にした特定保健用食品「リサーラ」の販売を開始しました。また、日本人の死因で2番目に多い疾患である心血管疾患に着目し、2024年にはDHAとEPAを関与成分とし、心血管疾患に対するリスク低減効果の可能性がある「疾病リスク低減表示特保」として日本で初めて許可を取得したフィッシュソーセージ「DHA入りリサーラソーセージω(オメガ)」の発売をいたしました。疾病リスク低減表示特保とは、関与成分の疾病リスク低減効果が医学的・栄養学的に確立されている場合に限り、「特定保健用食品(疾病リスク低減表示)」として消費者庁から許可されている食品であり、本製品は、疾病リスク低減表示の個別評価第一号に当たります。また、機能性表示食品においても、開発にいち早く取り組みました。その結果、業界初やカテゴリー初となる機能性表示食品を次々に開発し、これまでに、DHA・EPAを関与成分とした中性脂肪を低下させる機能がある食品、DHAを関与成分とした情報の記憶をサポートする機能がある食品として、多数の品目について消費者庁で届出を受理されております。また、多様な生理活性を有する脂質研究を基に多くの医薬品を創製してきた小野薬品工業株式会社と協業し、エビデンスに基づく機能性脂質製品の商品開発に共同で取り組んでおります。具体的には、当社水産加工現場から排出される未利用資源よりDHAが結合したリン脂質を含むイクラ油を基にしたサプリメントを共同で開発しました。これには睡眠の質を向上させ、あるいは一時的な活気・活力の向上と日中の眠気の軽減に役立つ機能があることを臨床試験で確認し、機能性表示食品として受理され、2022年3月より「レムウェル」(小野薬品ヘルスケア)の販売に至りました。両社は、信頼できるパートナーとして、お互いの知見や事業ノウハウを有効活用し、引き続き脂質のもつ有用な生理活性に着目して、食品と医薬品の間に位置する予防・未病の分野を開拓し、より多くの方へ生涯にわたる健康をお届けしてまいります。
DHA以外に、当社が原料調達等での優位性を有する他の素材についても検討を進めており、サケ白子に含まれるプロタミンの抗菌性を活用した口腔ケア等への応用研究、スケソウダラ由来魚肉タンパク質の機能性研究等、水産物由来の機能性成分に関する研究を推進しております。
また、新たな取り組みとして、持続可能な“次世代の魚タンパク”の商業化生産を目指し、2021年8月に細胞培養スタートアップのインテグリカルチャー株式会社と「魚類」の細胞培養技術の確立に向けた共同研究を開始しました。同社は、細胞農業(細胞培養)が普及する世界の実現に向けて、培養コストの低価格化と、細胞培養の大規模化技術の開発を行う革新的なスタートアップ企業です。同社が独自に展開する食品グレード培養液と汎用大規模細胞培養システム “CulNet System™”は、これまで牛と家禽の細胞で有効性が確認されており、本研究ではこれらを新たに魚類の細胞にも拡張してまいります。検証に必要な生きた魚(細胞)の提供を当社が担って、研究を推進してまいります。
更に、技術面及び法整備を含めた世界的な事業環境の変化を見据え、2023年8月 UMAMI Bioworks Pte Ltd.(本社:シンガポール)と協業契約を締結し、魚類の細胞培養技術の確立に向けた取り組みを推進いたします。同社は、シンガポールに本社を置くバイオテクノロジー企業で、培養魚の自動生産プラットフォームを構築しております。シンガポールは細胞性食品における法整備の可能性や市場形成の展望が世界的にも有望視されているなか、UMAMI Bioworksは培養魚研究開発においてすでに実用化に近い段階にあり、試食可能な細胞性水産物の開発に成功しております。当社は今回の協業を通じて、UMAMI Bioworksの細胞培養プラットフォームと当社の水産サプライチェーンを活用して、細胞性水産物の普及に向けた取り組みを推進します。
2023年1月からは、細胞性食品(いわゆる「培養肉」)のルール形成を行う団体である一般社団法人日本細胞農業研究機構に参画して活動を進めております。当社は創業以来、良質な魚タンパクの供給を通じて人々の食と健康に貢献してまいりました。魚類細胞性食品の生産技術が実現できれば、世界中で高まる魚需要に対して、持続可能な次世代の魚タンパク質の提供が可能になると考えております。
食材流通事業
自然解凍冷凍食品、フローズンチルド商品等、多様な流通カテゴリーからなる当社商品に関して、商品の安全性担保のための基盤となる微生物制御技術の研究を進めております。独立行政法人製品評価技術基盤機構との共同研究では、近年注目を浴びているマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF MS)を用いた、食中毒原因菌であるセレウス菌(Bacillus cereus)の迅速かつ精密な識別・同定(菌種特定)法を2018年に確立いたしました。更に、当該分析法を用いた同定精度向上とともに、食中毒菌等の迅速検出技術、増殖予測技術についても研究を進めており、「MALDI-TOF MSを用いた食品希釈液からの直接同定方法の開発」について日本農芸化学会2022年度大会で発表し、「トピックス賞」を受賞しました。安全、安心な商品の提供に貢献するため、当社グループ内における高度な微生物管理が要求される新商品の開発や生産等につなげてまいります。
地球温暖化や海洋環境変化等に起因する水産物の供給量や価格が不安定な状況になっていることを背景に、将来的な水産物の資源枯渇に対応するため、代替食品製造の技術開発を進めております。社内関連部署との取り組みとして、代替食品を用いた新商品の開発を進め、大豆たんぱくで作った常温トレー入りの「お魚屋さんの大豆たんぱく」シリーズを立ち上げ、「さけ風フレーク」と「かつお風しぐれ煮フレーク」を量販店の水産売り場にて販売を開始しました。なお、「さけ風フレーク」は1パック(30g)当たり、約5.5gのたんぱく質を含んでおり、実際の鮭を使用したフレークと同程度のたんぱく質量となっております。現在、「お魚屋さんの大豆たんぱく」シリーズ以外にも代替食品の開発を進めており、代替食品の可能性の追求を目指しております。
更に、水産・食品分野のリーディングカンパニーとして、関連学会での発表はもとより、関連セミナーにおける講師、理科授業の実施等、成果や技術力の情報発信に加え、社会に対する貢献活動に継続して取り組んでまいりました。
このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E00015] S100TOYU)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
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