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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100YEFQ (EDINETへの外部リンク)

有価証券報告書抜粋 日揮ホールディングス株式会社 研究開発活動 (2026年3月期)


事業等のリスクメニュー株式の総数等


当連結会計年度は、長期経営ビジョン「2040年ビジョン」の1stフェーズ、「挑戦の5年間」と位置付ける中期経営計画「BSP2025」の最終年度として、3つの重点戦略①「EPC事業のさらなる深化」、②「高機能材製造事業の拡大」、及び③「将来の成長エンジンの確立」に取り組んでまいりました。
①「EPC事業のさらなる深化」では、設計・プロジェクトマネジメントのデジタル化、高度メンテナンス、現場建設の効率化・省人化などに関する技術開発に取り組みました。また、②「高機能材製造事業の拡大」を目指し、半導体分野での生産・開発基盤を強化するための開発投資及び設備投資を進めました。さらに、③「将来の成長エンジンの確立」として、バイオものづくり分野では、2件の国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、「NEDO」という。)によるプロジェクトの採択を受け、微生物を活用した素材・食料・エネルギーなどの幅広い製品を製造するプロセスを開発し、ライセンス事業や開発製造受託事業(CDMO)の確立に取り組んでおります。その一環として、神戸市ポートアイランドにおいて、CO2を原料とした世界初のガス循環発酵プロセスを開発するバイオプロセス研究所を竣工させました。加えて、持続可能な航空燃料(SAF)分野においては、国内初となるSAF大規模製造設備を竣工させ、エアラインへの供給を開始しました。2026年度から2030年度までの5ヶ年を対象期間とする中期経営計画「BSP2030」のもとにおいても、国産SAF実用化に係る継続的な生産及び供給体制を構築し、SAF製造のための原料となる廃食用油回収促進に向けたパートナリングの拡大及びサプライチェーンの安定化を目指して積極的な取組みを進めてまいります。また、今後進展するエネルギー変革に不可欠なカーボンマネジメントの一環として、CO2分離回収技術に関してSLB Capturi社及びその親会社SLB社との戦略的協業を開始し、日本をはじめとしたアジア太平洋地域及び中東地域での実装を目指しております。
このように、当社グループでは、様々な分野・領域において知財・無形資産の創出と活用を推進しております。重要テーマとなる事業・技術開発の戦略立案においては、知財・意匠・商標を組み合わせた多面的な保護である「知財ミックス」を活用するとともに、ビジネスの構想段階からIPランドスケープの分析結果を用い、協業やアライアンスなどの広い視点から事業拡大に取り組んでおります。
なお、当連結会計年度の研究開発費の総額8,745百万円には、総合エンジニアリング事業に関するもの1,870百万円及び機能材製造事業に関するもの3,033百万円に加え、その他の事業に関するもの28百万円及び各セグメントに配分できないもの3,812百万円が含まれております。

① 総合エンジニアリング事業等

設計・調達・建設(EPC)ビジネス分野
現地セキュリティが厳しい地域や自然環境が過酷な地域、労働者の確保が困難な地域等、建設工事の遂行にリスクを伴う地域においてEPCプロジェクトが増加する傾向にあります。こうした環境下では、従来型の現地集約型施工を前提とした遂行方法には限界があり、新たなアプローチが求められております。このような状況を踏まえ、当社グループでは現地での工事量を減らすために、大型モジュール工法の採用や、EPCプロジェクト遂行の効率性向上を目的としたAWP(Advanced Work Packaging)による工事管理を実践しております。さらに、当社グループのIT戦略である「ITグランドプラン2030」に基づき、新しい設計手法(AI設計やデジタルツイン)の導入を進めるとともに、現場作業の省人化・省力化に資する新しい工法(ロボティクスによる自動化、3Dプリンタの導入、中・小型モジュール工法の活用、リモート化の推進など)の開発・適用にも取り組んでおります。併せて、要素技術の高度化(新素材の適用、設計へのAI・BIM(Building Information Model)の導入など)及び、EPC全領域におけるAWP適用範囲の拡大を図っております。これらの取組みを実装することで、熟練労働者不足、不安定な現場生産性、スケジュール遅延といったEPCプロジェクトに内在する主要リスクの低減を図るとともに、現場工事の安全性向上を目指しております。同時に、こうした取組みが当社グループのEPC遂行力及び競争力強化につながるものと位置づけ、EPCを担う事業会社を中心に、全社横断的な活動として展開しております。

IT/DX関連
1. EPC効率向上を目指して行っているもの
(1) プロットプラン自動化Auto Plot PATHFINDER®
プラント全体の配置図であるプロットプランの設計は、プラントの運転・メンテナンスのし易さ、安全性の確保、環境保全はもちろんのこと、建設コストを決定付ける最も重要なものとして位置付けられております。したがって、複雑な制約条件のもとで様々な要求を最適化するという大変難しい技術が必要であり、従来、経験豊富なシニア技術者の感覚に頼る部分が大きい領域でした。
もっとも、当社グループはIT戦略「ITグランドプラン2030」において、AI設計イノベーションを掲げ、プロットプラン設計を自動化するAuto Plot PATHFINDER®を開発しました。Auto Plot PATHFINDER®による設計は、形式知化・コード化されたシニア技術とAIによるユニット分割をもとにしたユニット単位・機器単位の自動配置、位置確定などのエンジニアによる指示取込み、最適配置のステップで行われます。Auto Plot PATHFINDER®により、多数のプロットプラン案を超短時間で作成することが可能になり、人間が思いつかないものを含む多くの提案が瞬時にできることから、新しい提案型設計 (Generative Design)への変革につながり、基本設計の段階から顧客の検討に貢献しております。
今後は、FS(フィージビリティスタディ)、FEED(基本設計)、および見積業務にてさらに適用プロジェクトを増やし、顧客により良い価値を提供してまいります。

(2) Data Centric EPC遂行、AWP
Data Centric EPC遂行は、従来の人の手を介した図書ベースの情報交換に代え、IT技術を最大活用したデータ中心の効率の良い情報交換とタイムリーな意思決定を図ることを目指した新たなEPCプロジェクト遂行手法であり、EPCプロジェクト遂行におけるリスクを低減して品質・コスト・納期それぞれの要素を向上させることが期待されております。
当社グループにおけるData Centric EPC開発においては、設計・調達・建設の作業対象となるタグを一元管理し、そのタグのデータをデータソースとなるシステムから集約し、またそのデータを活用するシステムへ連携する仕組みを構築しております。AWPは、Data Centric EPC遂行の仕組みを活用した一例であり、対象作業の開始を制限する可能性がある先行作業の特定とモニタリングが可能となります。現在進行中の複数プロジェクトにおいて、建設工事に実装したほか、設計・調達業務との連携と効果波及を目指してAWP管理の拡大を進めております。また、当社グループでは、Data Centric EPC遂行とAWPの統合を主軸に置き、EPC全体におけるデジタルトランスフォーメーション (Digital Project Delivery) にも取り組んでおります。

(3) 3D プリンタ導入
3Dプリンタを用いた製造・施工技術は、省力化施工による生産性向上や、リードタイム短縮による工期短縮、さらにサプライチェーンのレジリエンス向上といった効果が期待されており、建設産業においても大きな革新をもたらすポテンシャルを持つ技術として注目されております。また、海外顧客などがプラントのメンテナンス分野への適用を検討する動きも出てまいりました。
当社グループのIT戦略「ITグランドプラン2030」においても「3Dプリンタ導入や建設自動化による建設工法最適化」を掲げ、取組みを進めております。具体的には、セメント系材料を扱うデンマークのCOBOD International A/S社の3Dプリンタを導入し、国内EPCプロジェクトでの基礎型枠としての適用を皮切りに、海外EPCプロジェクトでの建屋外壁、国内EPCプロジェクトでの防音壁などへの適用を段階的に進めてまいりました。また、金属系材料を扱うオランダのMX3Dとの共同研究を通じて、炭素鋼を用いた形状最適化により、配管部材の重量削減や強度向上が可能であることを確認しました。さらに、複数の3D造形手法による熱交換器等のプロセス機器の造形検証および仕様確認も実施いたしました。今後も、当社グループの競争力強化に向けて検証活動及びEPCプロジェクトへの導入を継続してまいります。

2. 顧客によるオペレーション&メンテナンス(O&M)業務の面からの要求に応えるもの
(1) アセットインフォメーションマネジメント(IM)
アセットインフォメーションは、顧客がプラントを安全かつ安定的に操業するための重要な基盤情報です。近年、オペレーション&メンテナンス(O&M)高度化に対する顧客要求の高まりを背景に、複数のEPCプロジェクトにおいてアセットインフォメーションマネジメントを実現するシステムの実装が進んでおり、当社グループでは、こうしたプロジェクトを通じ、着実に技術・知見を蓄積しております。
EPCの各フェーズでは、プラントを構成する膨大かつ多種多様なアセットインフォメーションが生成されます。これらの情報を一貫性をもって管理・統合するため、当社グループではデジタルツイン技術の活用を推進するとともに、その社内標準化を進めております。これにより、インフォメーションの精度を飛躍的に向上させると同時に、データハンドオーバーの国際業界標準規格である「CFIHOS」に準拠したインフォメーションマネジメントの遂行を実現しております。こうした取組みにより、当社グループが遂行したプラントでは、引渡し後においても顧客が円滑に運転・保全業務へ移行することが可能となります。さらに、プラント操業を通じて蓄積されるアセット及びプラント全体のO&Mコスト低減に資する情報を、将来の設備改良や業務改善へと継続的に活用することで、顧客の中長期的な事業価値向上に貢献します。

(2) スマート保全ビジネス
エネルギーや産業素材などの安定供給においてプラントの円滑な運転の重要性が高まる一方、保全業務を取り巻く環境は、設備の高経年化や人材不足などにより一層厳しさを増しております。当社グループでは、こうした課題に対応するため、設備診断業務の基礎データとなる検査情報を収集・管理する設備管理システムA-MIS® の販売・運用に加え、A-MIS®を包含したIoT・データ分析を活用する統合型スマート保全サービス「INTEGNANCE®」 の事業化を推進しております。
INTEGNANCE®では、検査結果や運転情報などのデータを活用し、以下のような機能・サービスを提供しております。
・ 配管内面腐食や回転機を対象とした予兆保全サービス(検査ポイントの推奨、故障リスクのアラート)
・ 過去の保全対応や手順書などを学習させたAIチャットボット
・ 定期修理計画の立案を支援する保全戦略支援サービス
・ モバイル端末やタブレットを活用した作業状況の可視化による工事進捗管理
また、当社グループ会社である「ブラウンリバース株式会社」が開発した、既存プラントの360°写真から構築されたデジタルツイン上で各機器や部材の関係性を可視化する3Dビューア「INTEGNANCE® VR」により、自由な視点移動とプラント内情報への直感的なアクセスが可能となっております。これにより、実務者の運用・保守業務の大幅な効率化を実現し、現在、多くのプラント保全現場で実運用されております。
さらに当社グループでは、英国の原子力業界をはじめとする高度かつ確実な安全管理が求められる分野で広く利用されている事故想定シナリオ管理手法「フォルトスケジュール」をベースに開発した、スマート保安の最適化を支援するリスクマネジメントソフトウェア CoreSafety® も提供しております。

天然ガス分野
昨今、温室効果ガスの1つである二酸化炭素(CO2)の排出量削減が求められておりますが、当社グループでは、CO2の排出抑制、分離回収、有効利用・貯留、資源再生というカーボンマネジメント・サイクルの各要素で技術・知見を継続して積み上げております。
当社グループでは、効率的にCO2を分離・回収し有効に活用するための技術開発を進めております。その一つであるHiPACT®は、溶剤を用いた天然ガスからのCO2分離技術であり、従来技術よりも高圧でCO2を回収することで効率的なCO2の有効活用に資する技術です。HiPACT®は既に商業化されており、現在も商業機は稼働を続けております。また、さらなるCO2分離技術として、高濃度CO2を含む天然ガス及びCO2-EOR(原油増進回収)に伴って産出される随伴ガスから、特殊なゼオライト膜を用いて効率的にCO2を分離回収する技術を開発しており、米国テキサス州等での実証試験を継続して実施中です。これらの技術とともにカーボンマネジメント・サイクルの知見と合わせて、産油ガス国、企業向けにCO2に関する課題解決に向けたトータルソリューションを提供していく方針です。
燃焼後の排ガスに含まれるCO2回収分野にも注力しており、当社グループは、CO2回収分野において欧州市場をリードしている技術を保有するSLB Capturi社及びその親会社SLB社と協業し、SLBグループの欧州における導入実績と、当社グループが持つエンジニアリング力並びに日本をはじめとしたアジア太平洋地域及び中東地域における豊富な実績と知見、顧客や取引先との基盤を組み合わせることで、技術とその実装を含めた多様なソリューションを提供し、顧客の低・脱炭素化実現に貢献することを目指しております。また、JOGMECの先進的CCS事業として採択された「マレーシア・サラワク沖CCS事業」にも引き続き取り組んでおり、日本から排出されるCO2を回収、輸送し、大規模貯留適地でのCCSを実現、日本の脱炭素化に寄与することを目指していきます。本プロジェクトが実現すれば、アジア地域における国境を越えたCCS事業のモデルになるものと期待しております。
さらに、温室効果ガスの中でもメタンの排出量は、既存の計算や計測では精度高く求めることが困難とされております。欧州や米国などでは、規制によりメタン排出量の実測が求められつつありますが、実際に精度の高い計測を実施している企業は多くありません。精度の高いメタン排出量の計測がなされていないために、実際の排出量と排出源が特定されておらず、その結果、正しいメタン削減ソリューションに繋げられていない現状があります。当社グループは、石油・天然ガス設備からのメタン排出を想定した「メタン排出計測技術評価設備」を技術研究所に建設し、国内外の計測器メーカーなどと幅広い協働と独自の測定手法の開発を通じて計測技術を向上させることにより、一層効果的なメタン排出対策を実現してまいります。優れた温室効果ガス測定技術とエンジニアリング技術を駆使し、温室効果ガス排出の少ない設備の実現を目指しております。
加えて、既設LNGプラントの運転データ解析及び気象解析を通じて得られた知見をもとに、操業改善によるLNG増産サービスを海外顧客向けに展開しております。例えば、空冷式LNGプラントの場合、生産量減退の要因となるHot Air Recirculation(HAR)に対しコンピューター解析を活用した予測モデル「HARview®」による対策や、Dry Fogging systemによるHARの緩和等、LNGプラントの運転改善ソリューション「AIRLIZE LNG®」を提案し、増産やプラントの低炭素化に貢献しております。

オフショア分野
世界には、未開発の中小規模海洋ガス田や、発生する随伴ガスを再圧入・フレアリングしている既存の石油生産設備が多数存在し、それらのガス資源をいかに効率的に開発・活用するかは、エネルギー供給の安定化と環境負荷低減の両面から課題となっております。その解決策として最も有力なのは、当社グループが世界有数の建造実績を有する洋上LNGプラント(以下、「FLNG」という。)です。FLNGは、現地のガス消費市場規模が限定的な地域や、セキュリティ・環境面の制約により陸上パイプラインの整備が困難な地域において、ガスを海上で直接LNG化することを可能にします。また、操業中の洋上石油生産設備から大量に生産される随伴ガスや、海洋ガス田から採掘されるガスをその場で液化・輸送できるため、ガス資源の現金化を実現する実用的なソリューションでもあります。
また、海洋石油・ガス開発分野において、低炭素化・脱炭素化に代表されるSDGs達成に向けたソリューションへのニーズのさらなる高まりを受け、当社グループは、社会と顧客の課題に応えるべく、浮体式海洋石油生産・貯蔵・出荷設備上で、従来技術よりも効率的かつ低コストで高濃度CO2を分離・回収し、海底への再注入を行うゼオライト膜の適用技術開発を2023年から継続して取り組んでおります。

低炭素・脱炭素化分野
温室効果ガス排出量削減に向けた取組みとして、当社グループではCO2フリー燃料の導入促進やカーボンリサイクル及びEMS(エネルギーマネジメントシステム)の観点で研究開発を行っております。
CO2フリー燃料としてCO2フリーアンモニアが国内で着目されており、2020年代半ばの日本でのCO2フリーアンモニアの商業実装に向けた検討が進められております。当社グループは、2014~2018年度に実施した内閣府による戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)のエネルギーキャリアプロジェクトの成果を活用し、再生可能エネルギーや化石資源からのCO2フリーアンモニアの製造・供給の社会実装を目指して、様々な案件のフィージビリティスタディに参画するとともに、CO2フリーアンモニアのより効率的な製造方法やコストダウンに向けて、研究開発段階から技術実証段階へと移行し、取組みを進めております。特に、変動する再生可能エネルギー由来のCO2フリーアンモニア製造について、従来にはないダイナミックな変動型アンモニア合成を目指したシステムを開発しております。
再生可能エネルギー由来の水素を利用したグリーンケミカルの普及に際しては、天候・時刻・季節によって変動する再生可能エネルギーを利用し、いかにして安定的・効率的にケミカルを製造するかが課題になります。その課題解決のためには、統合制御システムの開発が必須となります。
当社グループは、福島県浪江町の福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)で製造される水素利用を想定したアンモニア製造プラントの基本設計や、統合制御システムの要件定義を行ってまいりました。この統合制御システムを組み込んだ再生可能エネルギー由来のグリーンアンモニア製造技術の実証プラントを福島県浪江町に建設し、グリーンアンモニアの生産を開始、統合制御システムによる安定的な運転を実証いたしました。当社グループは、かかる実証プロジェクトで得た知見を活用して、再生可能エネルギー由来の水素を原料とするグリーンアンモニア製造技術の確立を引き続き目指してまいります。
また、当社グループでは、NEDOの支援を受けて、アンモニアを熱分解し、水素を製造する技術の開発を行っております。現在、アンモニアを分解して水素を製造する技術は、要素技術の多くが商業レベルに達する一方で、実際は小型の装置でしか商業利用されておらず、大規模には行われていません。特に、アンモニア分解管と、アンモニア分解ガスから窒素ガスとアンモニアを分離精製する一段ガス製造装置(PSA方式)については、さらなる要素試験による検証・開発が必要であり、かかる技術開発による進展が期待されております。今後も、国内外で水素の利用拡大が見込まれる2030年代初旬の社会実装を視野に入れ、カーボンニュートラル社会に欠かせない大規模な水素製造の技術開発を行ってまいります。

資源循環分野
1. ケミカルリサイクル
当社グループでは、2021年度から2025年度までの5か年を対象とする中期経営計画「BSP2025」において、ケミカルリサイクルを注力分野の1つと位置づけ、ガス化ケミカルリサイクル、油化、モノマー化(廃繊維リサイクル)を含め、幅広いプロセス技術を通じてケミカルリサイクルを推進し、循環型社会の構築に貢献していくことを目指してまいりました。
廃プラスチックのケミカルリサイクルは、リサイクルが困難な異種素材や不純物を含むプラスチックを分解し、様々な化学物質に再生することが可能であり、リサイクル率の大幅な向上をもたらす技術として期待されております。当社グループは、荏原環境プラント株式会社とUBE株式会社からEUP(Ebara Ube Process)に関する技術供与、また株式会社レゾナックから量産化技術の供与と運転支援を受け、廃プラスチックのリサイクル推進に向けて、①廃プラスチックのガス化設備及びガス化設備から製造される合成ガスを用いた化学品製造設備の提案、②廃プラスチックを原料とする水素製造装置の提案、並びに③廃プラスチックリサイクルを実現するためのバリューチェーン構築を行っております。このEUPは、2003年より稼働を続けているガス化設備で、世界で唯一の長期商業運転実績を有する極めて信頼性が高いプロセスです。さらに、EUPでは、混合プラスチックや不純物を含むプラスチックの活用が可能となります。当社グループは、廃プラスチックの活用及び地産地消水素の製造により、水素社会の実現にも貢献してまいります。
また、プラスチックのケミカルリサイクル技術の1つに油化技術があり、当社グループでは、10年間の運転実績を有する国内大型商用装置をベースとした、廃プラスチックの油化ケミカルリサイクル技術(Pyro-Blue®)のライセンス販売を展開しております。Pyro-Blue®は、他の油化プロセスでは事前除去する必要があるPVC(塩化ビニル)やPET(ポリエステル)の混入プラスチックの処理が可能です。顧客が処理したい廃プラスチックを試験的に処理しサンプル油を製造できるベンチ装置を技術研究所に所有し、実際にサンプルを希望している顧客向けの提供を行っております。今後、処理できるプラスチックの種類拡大、装置の大型化による経済性向上、効率化等を進め、プラスチックの資源循環社会の実現に貢献していきます。
繊維産業においては、製造工程における大量のCO2排出や衣類の大量廃棄が課題となっております。使用済繊維製品の利用は、現状、熱利用を目的とする「サーマルリカバリー」や別の製品原料とする「マテリアルリサイクル」が一般的ですが、「ケミカルリサイクル」は繊維製品を再び繊維の原料へ化学的に分解することにより、繊維 to 繊維のリサイクルができる画期的な方法です。PET(ポリエステル)は、繊維製品だけではなく、ボトルをはじめ、フィルムや食品トレーなど多くの製品に使用されております。当社グループが提供するケミカルリサイクル技術は、着色されたポリエステルから染料や不純物を除去できるため、添加物、付着物等の影響によりメカニカルリサイクルできないポリエステル製品の受け皿としても機能し、製品を限定せず素材としてのポリエステル全体の資源循環を目指すことが可能な技術です。当社グループは、本技術のライセンスを提供する目的において「株式会社RePEaT(リピート)」を設立し、中国の浙江建信佳人新材料有限公司へライセンス提供を行い、プラントの稼動を開始いたしました。

2. 持続可能な航空燃料(SAF)
2050年のカーボンニュートラルに向けて、航空分野における脱炭素化として、「空のカーボンニュートラル」の機運が高まっております。中・大型機に対しては、機体の軽量化と効率化を進める一方、燃料の低脱炭素化が必須とされております。また、空のカーボンニュートラル達成のためには、実質的にはSAF(Sustainable Aviation Fuel)が切り札とも言われており、世界的なSAF需要の高まりに対し、日本でも国産SAFの安定的な供給及び利用拡大は急務となっております。
当社グループは、廃食用油を原料としたSAFの継続的な生産及び利用体制の確立とバリューチェーンの構築による国内初となる国産SAFの実用化を達成いたしました。具体的には、「合同会社SAFFAIRE SKY ENERGY」を設立し、最大で年間約3万キロリットルのSAFを継続的に供給できる国内初となるSAF大規模製造設備を2025年3月に竣工させました。同社を通じて、2025年4月以降、当該プラントにてSAFの生産及び供給を行っており、今後も長期にわたり継続していく予定です。
加えて、SAFが持続可能な事業となるための機運醸成活動として、個人や自治体、企業がSAFの原料となる廃食用油の提供を通じ国内における資源循環の促進に直接参加ができる場である「Fry to Fly Project」を、当社が事務局となって2023年より開始し、既に300を超える企業、自治体、学校などの方々に参加していただいております。また、原料の種類を問わない国産SAFのサプライチェーン構築、普及と拡大を目指す「Act for Sky」についても、当社が代表幹事となって2022年より取り組んでおり、現在、50の企業や自治体に参画していただいております。今後とも、国内において脱炭素化に向けた資源循環の促進に積極的に参加できる機会を創出し、また、これらの活動を通じて、個人や自治体、企業の行動変容に繋げていくことを目指してまいります。

バイオ分野
バイオ分野における取組みとして当社グループが注力しているものは、NEDOより2023年度に採択された「グリーンイノベーション基金事業・バイオものづくり技術によるCO2を直接原料としたカーボンリサイクルの推進/CO2からの微生物による直接ポリマー合成技術開発」(以下、「グリーンイノベーション基金事業」という。)、及び2024年度に採択された「バイオものづくり革命推進事業・木質等の未利用資源を活用したバイオものづくりエコシステム構築事業」(以下、「バイオものづくり革命推進事業」という。)となります。これらのバイオものづくりは、微生物を活用し、素材、エネルギー、食品など幅広い分野の製品を生み出す手法であり、経済協力開発機構(OECD)によると、2030年には世界の市場規模が200兆円に達すると試算されております。
グリーンイノベーション基金事業では、NEDOに対する共同提案者の株式会社カネカ、株式会社バッカス・バイオイノベーション及び株式会社島津製作所とともにバイオものづくりの社会実装に向けた開発を推進しております。その一環として、神戸市ポートアイランドにバイオプロセス研究所を2026年1月に竣工させました。同研究所において、当社は、当社グループが長年培ってきた安全にガスを取扱うハンドリング技術を活用し、世界初のガス循環発酵プロセス技術の開発を行っております。
バイオものづくり革命推進事業は、化石資源を原料とした既存の製造プロセスからバイオマスをベースとした製造プロセスへの転換を目指し、持続可能な原料の開発、微生物の育種、培養・分離・精製・加工プロセスの開発及び生産実証を一貫して実施するものであり、NEDOに対する共同提案者の王子ホールディングス株式会社、株式会社ENEOSマテリアル、大阪ガス株式会社、東レ株式会社、株式会社バッカス・バイオイノベーション及び当社が知見や技術を結集して開発を推進してまいります。
当社はバイオものづくり分野において、株式会社バッカス・バイオイノベーションと共同で、微生物の開発・改良から生産プロセスの開発までをワンストップで手掛ける「統合型バイオファウンドリ®」※の事業を推進しており、従来、数十年かかっていた微生物の開発から商業化までの期間を1/10以下に短縮し、社会実装に向けた時間とコストを大幅に削減することを目指しております。CO2や木質等の多種多様な原料、微生物、プロダクト(製品)に対応したデータ駆動型の生産プロセス開発基盤を確立し、バイオものづくりプロセス開発に貢献するとともに、「バイオものづくりプラットフォーマー」としてバイオものづくり産業の普及推進に取り組みます。
また、当社グループは、「タイヤ原料のブタジエン選択率が高い」独自の触媒を保有しており、バイオマス由来の原料(エタノール)を使用してタイヤの原料となるブタジエンを製造するプロセス開発に取り組んでおります。株式会社ENEOSマテリアル及び当社は、2022年より各社の経営ビジョンに共通する持続可能な社会の実現に向けて、植物資源由来のバイオブタジエン及びタイヤ用合成ゴム製造の基礎的な技術検討や市場調査を進めており、今後も植物資源由来の合成ゴムを使用したタイヤの商業化に向けた取組みを継続してまいります。かかる取組みにより、タイヤ原材料のサステナビリティの向上や将来的なブタジエンの安定確保へ貢献していくとともに、植物資源由来の合成ゴムの使用により、タイヤの廃棄・リサイクル段階でのCO2削減にも貢献していきます。
※統合型バイオファウンドリは、株式会社バッカス・バイオイノベーションの登録商標です。

ライフサイエンス・ヘルスケア分野
1. ライフサイエンス
ライフサイエンス分野においては、低分子合成医薬品に加え核酸及びペプチドを含む中分子合成医薬品、バイオ医薬品を主体とする高分子医薬品の設備投資が増加傾向であり、これらの複合製剤を含む従来にない複雑な医薬品や活性の強い医薬品など、付加価値の高い医薬品が開発されております。また、厚生労働省が「治験・臨床試験の推進に関する今後の方向性について 2025年版とりまとめ」にて示した国内の治験・臨床研究を強化する方針を背景とした治験又は共同研究等に用いられるラボ施設のニーズの高まりや、医療用医薬品の安定供給に向けた取組みに基づく既存設備の更新の要請が年々強まっております。当社グループでは、こうしたマーケット変化に対応すべく、以下の技術開発活動を推進しており、建設するプラント・施設への導入事例を増やすことで、技術差別化に繋げております。
① 高薬理活性物質製造への対応:高薬理活性の医薬品製造において必要とされる高度な封じ込め技術と封じ込め性能を正しく評価する測定手法について医薬品業界内への浸透を進めております。
② 合成医薬品製造への対応:合成医薬品製造におけるプロセスの連続化について近年注目度が高まっており、知財戦略に基づき開発した製造技術の実装を推進しております。
③ 中分子医薬品製造への対応:上流の合成工程から下流の精製工程に対応する多様な製造法の実績を積み上げております。
④ バイオ医薬品製造への対応:大量培養に向けたスケールアップ技術及び高度な品質モニタリング技術の他、合成医薬品製造と同様に連続生産に向けた技術開発を進めております。
⑤ 再生医療等製品への対応:中期的に需要拡大が見込まれる根治治療に対し、個別プロセスの効率化や実現可能な設備コンセプト開発を支援し、社会実装を推進しております。
⑥ 固形製剤/無菌製剤製造におけるスマート工場の実現:ロボット活用による無人(塵)化の実現、情報管理と一体化した生産設備など、スマート工場のコンセプト開発を進めております。
⑦ ラボ施設の設計高速化対応:検討から実装までのリードタイムを最短化するために、多様な要望を高速に具体化するエンジニアリングプラットフォームの開発を推進しております。
⑧ 製造DXシステム:新設だけでなく既存設備におけるデータインテグリティ及び電子化を進めるための体制づくりを強化しております。
⑨ 環境負荷低減対策:近年重要視されているライフサイクルアセスメント技術の強化を進めております。

2. ヘルスケア
ヘルスケア分野においては、「病院からのまちづくり」及び「病院から地域をデザインする」をキーワードとする「まちづくり×医療」の実現に向け、医療・健康データを活用した地域連携の仕組み及びその運用モデルの開発・実装に取り組んでおります。横浜市泉区ゆめが丘エリアにおける「ゆめが丘ソラトス」及び「ゆめが丘総合病院」(当社グループが設計及び施工)並びに大規模居住施設を中心とするまちづくり活動においては、エリアマネジメント協議会に参画し、新たなコンセプト「WELL-BEING TOWN ゆめが丘」のもと、健康増進に資するサービス・動線・施設機能の設計と、地域の医療機関等との連携を組み合わせたヘルスケアシティの社会実装を推進しております。具体的には、健康データ管理及びかかりつけ医連携等を包含する「クラウドチェックアップ」の実装・機能拡充に取り組み、地域における予防・健康増進と医療アクセスの向上に資する仕組みの確立を目指しております。
また、カンボジア王国で当社グループが出資するSunrise Japan Hospitalにおいては、現地での診療・健診サービス提供を通じて把握した課題を踏まえ、医療の質・安全性の向上とサービス提供の安定化に向けて、診療体制(診療科・救急・健診等)及び病院業務(受付・予約・検査・会計等)の標準化・改善に取り組んでおります。具体的には、脳神経外科、内科、外科、小児科、産婦人科、循環器内科、救命救急及び健康診断等の診療・サービス提供に加え、プノンペン市内におけるサテライト健診クリニックの運営等を通じて、医療サービス提供モデルの拡充に取り組んでおります。さらに、国内外の医療機関との連携を通じた人材育成・臨床研修の枠組みづくりを推進し、教育・診療・院内業務の各面での標準化やノウハウ蓄積を進めております。加えて、当社グループは、病院事業を通じて得られる医療・経営に関する知見と医療施設の設計・建設に関するエンジニアリング技術の融合を図り、より高機能で持続可能な医療施設づくりに資する技術・運用コンセプトの開発を継続してまいります。

原子力分野
当社グループは、原子力発電所及び再処理工場の廃止措置に係るプロジェクトマネジメントのサービス提供と廃棄物処理関連技術の開発を進めております。このうち、原子力発電所の廃止措置について、発電所内に貯蔵されている放射線量の高い使用済イオン交換樹脂を安全、かつ安定的に貯蔵するための分解技術の実用化に目処が得られつつあります。また、分解されたイオン交換樹脂を含む、多種・多様な放射性廃棄物への適用を目指し、閉じ込め性能の高い固型化技術の開発を進めております。さらに、原子力発電所や再処理工場を含む様々な原子力施設の廃止措置を対象に、長期間にわたる廃止措置プロジェクトを安全かつ効率的に実施するためのマネジメント支援システムを開発中です。
フュージョンエネルギーについては、実用化に向けた取組みが各国で加速していることを踏まえ、国内スタートアップのなかでもフュージョン関連技術に独自の強みを有する京都フュージョニアリング株式会社や核融合燃料の供給に不可欠な技術を有する株式会社MiRESSOへのCVCからの出資を通じて、技術の共創に向けた取組みを進めております。また、2030年代前半に世界初となる商業用フュージョンエネルギー発電炉「ARC(アーク)」を米国バージニア州に建設する計画を有する米国Commonwealth Fusion Systems LLCに対し、日本コンソーシアムへの参加を通じた出資を行い、フュージョンエネルギー発電所EPCに関する技術・ノウハウの取得に向けた取組みを進めております。
国内外で注目されている小型モジュール原子炉(以下、「SMR」という。)をはじめとする次世代原子炉技術については、水素や再生可能エネルギーと並んで脱炭素社会の実現への貢献が期待され多くの炉型が提案されておりますが、なかでも米国NuScale Power, LLC(以下、「ニュースケール社」という。)が開発を進めるSMRが米国で初となる設計認証を取得しており、商業化に最も近いSMR技術の一つであると言われております。このような状況を踏まえ、当社グループは2021年3月に米国の特別目的会社を通じてニュースケール社に出資いたしました。また、2022年4月には株式会社国際協力銀行(JBIC)が、2024年11月には中部電力株式会社がそれぞれニュースケール社に出資しております。米国初のニュースケール社SMR実証プラントとして計画されていたプロジェクトは建設に至ることなく終了しましたが、ルーマニアにおけるプロジェクトでは、将来的なEPC実施を見据えた開発の次段階へ移行することが事業者により決定されるなど、新たな建設プロジェクトに向けた検討が進められており、当社グループも新規案件に向けてEPC準備業務を実施中です。さらに、東南アジア諸国を中心とするSMR需要の高まりを背景として、同地域におけるSMR導入可能性に関する検討業務を実施中です。
当社グループは、AIデータセンター電力需要や脱炭素電力需要に向けたSMRの将来的な市場拡大に伴って、中長期的には海外市場を中心にSMRのEPCプロジェクトを受注・遂行していくことを視野に入れ活動するほか、SMRと再生可能エネルギー設備、水素製造設備とのインテグレーションも検討していく予定です。

洋上風力発電分野
国内の洋上風力発電分野においては、「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」(2018年法律第89号)に基づき、ラウンド2とラウンド3の事業者グループが決定されております。世界的な物価高騰の影響により、一部のプロジェクトについては事業動向の不透明さがみられるものの、日本政府は制度の見直しを含めた対応などにより、引き続き洋上風力発電の本格的な導入を推進しております。当社グループは、洋上風力発電分野の主力EPCコントラクターを目指し、事業性検討や基本設計などの早期段階から計画に関与することで、プロジェクトの受注を目指しております。
今後の成長が期待される浮体式洋上風力分野については、2025年にNEDOが「浮体式洋上風力等に関する技術開発ロードマップ骨子」を公開しました。グリーンイノベーション基金の活用により「商用化を前提とした技術開発段階」へと移行しており、2030年以降の本格的な導入に向けた取組みが加速しております。当社グループにおいても、これまで取り組んできた撤去実証事業やフィージビリティスタディ、浮体の要素技術の検討などに加えて、浮体のサプライチェーン構築に向けた取組みを開始しており、継続的に技術力・競争力の強化を図りながら、プロジェクト全体の最適化とマネジメント力を武器に受注拡大を目指して取り組んでまいります。

蓄エネルギー分野
近年、太陽光発電や洋上風力発電等に代表される再生可能エネルギー発電の普及拡大に伴い、安定した電力供給を実現するため、出力変動の緩和が課題となっており、蓄エネルギー技術の発展が期待されております。蓄エネルギー技術のうち、長期のエネルギー貯蔵システム(LDES)は、出力変動の調整力・安定化技術の一つとして注目されており、今後更なる普及拡大が期待されております。
当社グループは、LDESの技術として有力なCO2バッテリー技術を有するイタリアのENERGY DOME社と日本市場での協業検討を目的とした覚書を締結し、同社が有する先進的で高効率な技術と、当社グループが有するエンジニアリング力や顧客及び取引先との基盤等を組み合わせることにより、日本市場への実装の加速を図ります。

② 機能材製造事業

石油精製分野
石油精製企業は、化石燃料及び石化原料の安定供給に加え、カーボンニュートラルに向けたエネルギーシフトに対応する製油所の事業変革が求められております。当社グループでは、これら顧客のニーズ変化に対応する触媒及び触媒素材開発に取り組んでおります。
FCC触媒については、多様化する各製油所のニーズにあわせ、石化原料、分解ガソリン、分解軽油など生成油の選択性を調整できる触媒開発と技術サービスによる国内外製油所へのソリューション展開を進めております。水素化処理触媒については、海外石油会社と共同開発し採用された水素化分解触媒のさらなる改良に取り組み、採用された製油所での継続採用及び他製油所への新たな採用に繋がりました。
当社グループの触媒調製技術を活用して開発されたゼオライトや非晶質シリカアルミナなどの触媒素材は、主に水素化分解触媒用材として触媒メーカーに採用されております。今後は、石油精製分野だけでなくケミカルや環境保全分野向け素材開発にも着手するとともに、海外顧客向けには納期短縮を目的として欧州に新設した保税倉庫を活用し、素材販売の拡大を目指してまいります。

石油化学分野
日本の汎用石油化学市場は、中国からの供給過多と汎用石化製品の需要減少により低迷が継続しております。このような事業環境の下、国内化学メーカーでは、収益性の低い汎用品から高付加価値な電子材料素材など高機能分野への事業転換や脱炭素化に向けた植物由来素材や再生可能資源活用などの新しい取組みが進められております。
当社グループにおいては、高機能ケミカル分野への展開拡大を目指して汎用樹脂から合成される高機能誘導体の製造に使用される水添触媒や吸着剤の開発に注力しており、高活性と高選択性を両立した粉体触媒を開発し、顧客での実機テスト段階まで進捗しております。また、既に開発している硫化カルボニルや硫化水素吸着剤については、国内シェア拡大を図るとともに海外展開にも着手いたしました。さらに、カーボンリサイクルに必要な塩素系吸着剤についても既存ケミカルプロセスでの脱塩素処理剤としてサンプルワークを進めております。
将来に向けたケミカルリサイクルやCO2リサイクルプロセス向け触媒・吸着剤の開発についても、石油精製及びケミカル触媒の要素技術や素材の展開を図っており、脱硫触媒担体やゼオライトをカーボンリサイクルやCO2吸着プロセスに応用した検討において良好な結果が得られ始めております。また、国の研究開発プロジェクトである「革新的な再生航空燃料(SAF)等製造技術の開発」にも着手いたしました。

環境保全分野
環境保全分野では、バイオマス混焼・専焼焼却用及びごみ焼却用など低温脱硝向け触媒の実商化及び拡販に向けて取り組んでおります。その一環として、事業のサプライチェーン強化と機能向上を目的に海外原料の探索と改良検討及び評価技術の深化に向けた取組みを開始いたしました。

生活関連(眼鏡、ライフサイエンス、化粧品)分野
薄肉化(高屈折率化)が進むプラスチック眼鏡レンズ市場において、高屈折率ハードコート向け材料として高屈折率と耐候性を両立したチタニアナノ粒子の顧客評価が進む一方、薄肉レンズ汎用化に向けた低コスト対応にも並行して取り組んでおります。また、チタニア粒子を使用したハードコート塗布液(ラッカー材)については、高屈折のみならず短時間硬化、高硬度、高密着性など様々な顧客ニーズに応じた提案を行うなど、市場拡大を目指して取り組んでおり、一部顧客で採用に至りました。
ライフサイエンス分野では、昨年評価が進んだ金属ナノ粒子技術をベースとした特殊施設向け高濃度硝酸廃水分解触媒の一般工業廃液向け汎用硝酸分解触媒に取り組んでおります。特に、高濃度硝酸廃水処理のパイロットテストでの初期評価では良好な結果が得られております。また、抗菌材では着色など従来のAg系材料の課題を解決した非Ag系材料、有機・無機ハイブリッド材料などの顧客評価が進んでおります。
マイクロプラスチック海洋汚染問題に対応した化粧品マイクロプラスチックビーズ代替採用が進むなか、特にプラスチックビーズの使用感触に近いシリカマイクロビーズの採用が拡大しており、販売拡大に向けた生産設備の生産性向上に取り組んでおります。また、より環境負荷に配慮したもみ殻から抽出したシリカ原料を用いたビーズに加え、その副産物として得られる炭素を利用した黒色材料も化粧品用途展開に向け開発が進んでおります。

電子材料分野
世界的な生成AIの拡大によりデータセンター向けストレージデバイスなどの旺盛な需要は継続しており、ハードディスクやHBMなど半導体デバイス市場が堅調に推移しております。ディスプレイ市場は世界的にテレビの高品位化が進んでおり、最大生産国である中国でも低反射フィルムを搭載したテレビの生産が増大しております。
シリカゾルはハードディスクやシリコンウェハー市場拡大対応として建設した増設プラントの顧客認定が完了し、本格稼働を始めました。また、半導体CMP向け研磨材もHBM用途としての来年度における採用検討が進んでおります。一方、高速通信用低誘電率シリカバルーン封止材は昨年度サンプルワークを開始した顧客に加えて他顧客へのサンプルワークも進めており、早期量産化に向けた活動を推進しております。
高品位テレビ用反射防止膜用低屈折中空シリカ材料は需要が拡大しており、増販に向けた各種生産能力増強施策を急ぎ進めております。また並行してデジタルサイネージ、車載ディスプレイ、光学デバイスなど多用途展開に向けた材料開発とサンプルワークにも取り組んでおります。

ファインセラミックス分野
ハイブリッド車、電気自動車、太陽光発電、LEDなどの高出力化や省エネルギーを達成するために、パワー半導体の高性能化が進んでおりますが、同時に絶縁放熱基板への要求が厳しくなってきております。その要求に応えるため、当社グループでは、ファインセラミックス分野における開発加速のためのオープンイノベーション及びアライアンスを強化し、推進しております。新規市場への参入を見据えた知財戦略については、日本ファインセラミックス株式会社が当社ガバナンス統括オフィス知的資産ユニット等と連携して立案し、実施しております。
当社グループでは、国立研究開発法人産業技術総合研究所と共同開発した独自の製造方法により世界最高レベルの放熱性・信頼性を持つ「高熱伝導窒化ケイ素基板」の開発及び事業化を推進してまいりました。既に新量産工場を立ち上げ、製品の品質及び生産性向上を実現しながら、さらなる高性能品開発及び増産体制の構築にも取り組んでおります。
通信分野においては、自動運転やIoTの普及に欠かせない5Gが本格導入され、今後、さらなるデータ量の増大に向けたBeyond 5Gなどの無線通信や光通信回線の大容量化・高速化が必須になります。当社グループでは、最先端の無線通信技術、光通信技術に対応できる薄膜回路基板、電子材料・デバイスなどの性能・信頼性向上などの開発・製造・販売を行っております。
今後成長が期待される再生医療分野においては、最先端の骨再生材料について国立大学法人東北大学などとの共同研究を継続しております。その他、当社グループ独自のセラミックス材料技術と高精度加工技術により、補助人工心臓用部品や「はやぶさ2」などの宇宙衛星用部品、半導体製造装置用部材や燃料電池用部材など、先端分野で使用される製品の開発や新材料の開発に大学や各研究機関などと連携して取り組んでおります。

事業等のリスク株式の総数等


このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E01575] S100YEFQ)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
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