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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S10080D5

有価証券報告書抜粋 日揮ホールディングス株式会社 研究開発活動 (2016年3月期)


事業等のリスクメニュー財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

当連結会計年度は、中期経営計画「NEW HORIZON 2015」の最終年度として“テクノロジービジネスクリエーター”を目指し、差別化技術に基づいたビジネス開発を推進してきました。重点戦略を①開発技術の早期商業化とライセンスビジネスの拡大、②成長分野における新規ビジネスの創出と推進、③オープンイノベーションの活用による社外との連携強化とし、資源、社会インフラ・ライフサイエンス、環境・新エネルギー、ものづくりの各分野に注力してきました。その結果、海外への技術ライセンス供与の実績をあげ、成長分野における新規ビジネスの創出を図るとともに、将来ビジネスの核となる技術獲得のために産官学の連携による開発を推進することができました。なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、54億83百万円(消費税等は含まない)です。

① 総合エンジニアリング事業
設計・調達・建設(EPC)ビジネス分野
コアビジネスである設計・調達・建設(EPC)ビジネス分野においては、既存のハイドロカーボン分野、ノンハイドロカーボン分野に加えて、EPCビジネスの領域拡大を目指し、洋上LNG(フローティングLNG)分野、インフラ分野に取り組んできました。また、近年の動向として、オフショアだけでなく、オンショアにおいても大型モジュール工法が採用される事例が増えてきており、これらのプロジェクトに対しても設計製作から輸送まで難度の高い同工法を適用しております。さらには、同工法を極寒地での建設にも利用するなどの適用範囲の拡大や、さらなる工法の開発・工夫による競争力強化に取り組んでまいります。

石油資源・精製分野
世界の石油需要が長期的に増大する傾向がある中、豊富な埋蔵量のカナダオイルサンドや南米の超重質油など、非在来型重質油の開発が注目されています。これら重質原油の多くが既発見ながら未開発のままである主たる理由として、粘度が高く消費地までのパイプラン輸送が困難であることが挙げられます。当社は独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構と共同で、超臨界水を利用したSCWC(Supercritical Water Cracking)プロセスを開発し、カナダに設置したパイロット装置で連続運転を終了しました。その結果、パイプラインで輸送できるまでに粘度を低減できること、副生するピッチは北米で需要が拡大している道路用アスファルトの原料として使用できることを確認しました。カナダをはじめベネズエラやコロンビアなどの超重質原油の開発を推進し、我が国の資源獲得に貢献します。
また、天然ガスの需要増加に伴い、その副生物として生産量が増えているコンデンセートは、原油に比べて軽質留分を多く含むため輸送燃料のみならず石油化学原料としても需要が増えています。コンデンセートに含まれる硫黄分を一つの反応器で一括して脱硫処理するシンプルな脱硫技術を確立しました。コンデンセートを各留分に分けた後に脱硫処理する従来法に比べて、設備費と運転費を大幅に削減できることを確認し、産ガス国に対してプロモーションを開始しました。

天然ガス分野
地球温暖化ガスであるCO2の排出量削減の観点から、CO2の回収や有効利用が強く求められています。当社は、合成ガスや天然ガスに含まれるCO2を吸収分離し、高圧で回収する高圧再生型CO2回収(HiPACT®)プロセスを保有しています。この技術を用いることによりCO2を低コストで地中に注入することができ、地中貯留(CCS/Carbon Capture and Storage)あるいは石油増進回収(CCS-EOR /Enhanced Oil Recovery)のために新たに必要となるエネルギーを大幅に削減することができます。一方、今後、資源開発が見込まれる高濃度・中濃度CO2含有天然ガス田に含まれるCO2を特殊なセラミック膜で効率的に分離・回収する技術の開発を進めております。
また、海洋ガス田向けの洋上LNGプラントや中小ガス田向けの陸上小型LNGプラントの開発に継続して取り組んできた結果、東南アジアの洋上LNGプラントにおけるEPCビジネスに結びつきました。現在、複数のプロジェクトを遂行しています。さらに複数のFEED業務(Front End Engineering and Design)も遂行中です。また、陸上LNGプラントのEPCと連携したO&M(Operation and Maintenance)手法の基本スキームを開発しており、O&Mサービスの販売活動を展開しております。空気冷却式の陸上LNGプラントでは、操業場所の気象条件も考慮したプラント周辺の熱風のシミュレーションによる生産性の高いプラントを設計する解析技術(AIRLIZE LNG®)を確立し、幅広い顧客のニーズに対して、多彩なソリューションを提案しております。
シェールガスをはじめとする天然ガスは、液体燃料製造や高付加価値の化学品製造の原料としても期待されています。天然ガスなどから合成されるメタノールを原料とするプロピレン製造プロセス(DTP®)は、現在産ガス国や化学会社などに対して営業活動を展開しております。また、次世代の高性能触媒も継続して開発中です。

炭酸ガスマネジメント分野
気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において採択された「パリ協定」の中で、すべての国においてCO2排出抑制目標が設定されることになり、また、イノベーションの重要性が位置づけられました。この社会課題に対して、当社では先に述べたCO2分離技術と資源増産を組み合わせたCCS-EORの可能性に関して、産油国との共同スタディを進めています。また今後は炭素循環を一つの目標とすべく、関連技術の調査を開始しています。

CO2フリーエネルギーキャリア分野
経済産業省は2015年を「水素1年」と位置付けている中、近年、大手自動車会社が相次いで燃料電池自動車を発売しました。日本政府は2020年夏に東京で開催するオリンピック・パラリンピックまでに、水素エネルギーの導入を促進し、世界最先端の水素社会をアピールする方針です。このような国の水素戦略に基づいて、当社は、内閣府による戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)のエネルギーキャリアプロジェクトに参画し、最近CO2フリーエネルギーとして注目されはじめているアンモニアを再生可能エネルギーから製造するシステムを開発しています。本開発では、太陽光や風力の不安定な出力を平準化するために、蓄電池や水電気分解などを組み合わせた全体システムとして最適化も検討しております。

ケミカル・非鉄金属分野
硫化水素は、エンジニアリングプラスチックPPS、医薬品やメチオニンなどの硫黄を含む化合物を製造するための中間原料として使用されております。当社が開発した高純度の硫化水素および硫化水素ナトリウムを製造するプロセスは、国内に5基のプラントの技術ライセンスおよび建設の実績がありますが、当連結会計年度は、新たに海外でもプラントが稼働し、初の海外ライセンス実績となりました。さらに海外からも新規案件の引き合いがあり、新たなニーズにも対応できるようにプロセスのさらなる差別化を図っています。

一般産業分野
インフラ分野では、顕在化する社会インフラの老朽化問題の解決に取り組んでおります。具体的には、道路橋RC床板の疲労損傷および異常気象による河川の洪水による鉄道橋梁の洗掘を対象として、光ファイバーセンサを用いたモニタリング評価方法の技術開発と実証試験を行っています。
ライフサイエンス分野では、バイオ医薬品製造技術としてマイクロバブル発生技術に高性能撹拌技術を付加したバイオリアクターやシングルユース機器のハンドリング技術の開発を行なっています。また、視覚・触覚のフィードバックを伴うマスター・スレーブ方式の遠隔操作による無人(塵)化対応、粉体コンテナのドライ洗浄、高薬理活性物質の飛散性測定、原薬および製剤の連続製造など、多角的な技術開発を行っています。
再生医療分野では再生医療関連施設の多くの実績を踏まえ、細胞・組織培養環境基準の構築や再生医療関連要素技術の高度化を進めています。病院建設では、病院総合運営パートナー事業にも踏み込んだ展開を国内外で進めた結果、カンボジアで病院建設、運営を行うに至っています。

原子力分野
東日本大震災により発生した放射能を含んだ瓦礫、廃棄物、あるいは汚染土壌の一部は焼却処理や熱処理により除染することが検討されていますが、このような除染により除去され濃縮された放射能を処分するための処理方法はいまだ決定されていません。そこで、当社では、これらの放射能の高い汚染物に対して、新たな固化体を用いた封じ込め性の高い固化処理技術の開発に着手しました。

新規事業創出分野
低品位炭を原料とする石油代替燃料(JGC Coal Fuel: JCF®)への変換技術は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成により、インドネシアで年産1万トン規模のJCF製造およびその燃料を用いた発電実証を行っています。このプロセスは低品位炭を高圧熱水により改質させた後、水と混合してスラリー燃料に加工する当社の独自技術で、インドネシアのエネルギー自給への貢献が期待されています。
CO2の排出量削減に向けて、バイオマス由来の航空機燃料の開発が世界的に進められています。当社は、NEDOから微細藻類由来のオイル生産技術の開発事業を委託され、電源開発株式会社と国立大学法人東京農工大学とともに取り組んでいます。また、福島県再生可能エネルギー次世代技術開発事業向けに一般社団法人藻類産業創成コンソーシアムから委託された技術支援により土着藻類によるベンチスケールでのバイオ原油の生成に成功に導きました。引き続き商業化に向けた技術開発を支援しています。
非食物系バイオマスを原料にした酵素法エタノール製造プロセスは、NEDOからの委託事業として産学官連携により、技術の早期実用化にむけてパイロット装置を用いた開発を実施しています。

なお、当事業での研究開発費は24億87百万円(消費税等は含まない)です。

② 触媒・ファイン事業
石油精製分野
石油精製分野では、油価の大幅な下落やイラン制裁解除など、世界的な環境変化が起こっています。この環境変化に対応すべく、国内外で業界再編の動きが加速するとともに、アジアを中心に石精-石化のインテグレーションが進行しています。この市場変化へ迅速に対応すべく、流動接触分解(FCC)用触媒として、プロピレン増産用触媒の高性能化や補助触媒(FCC Additive)の開発に取り組みました。その成果の一部として、効率的に重質油を分解する新FCC触媒およびプロピレン増産用のFCC Additiveの新製品を日揮触媒化成(株)が2015年秋に開催した技術発表会にて紹介しました。触媒開発とともに、反応解析・シミュレーション技術の深耕に努め、顧客ニーズに的確かつ迅速に応えるテクニカルサービス体制を整えています。
一方、環境負荷低減として、先進国と同様に新興国でも燃料油の硫黄規制が強化されており、水素化処理触媒の需要は今後も堅調に伸びていくと予想されています。技術発表会では、高活性と高安定性を両立させた革新的な軽油サルファーフリー触媒およびFCC装置の前処理触媒として残圧原油(VGO)水素化処理の新触媒も合わせて紹介しました。これらの高性能水素化触媒の導入によって製油所の収益向上に貢献すべく、顧客への展開を開始しています。残油水素化処理装置用の新脱メタル触媒は、国内製油所で着実に実績を積み重ねて、海外製油所にも採用され、その有効性が実証されています。また、石油精製分野の触媒は、国内石油精製会社と共同で開発・実証化を進めてきた結果、軽油サルファーフリー触媒や水素化分解触媒が製油所に採用され収益向上に貢献しています。

石油化学分野
海外の大型エタン/ナフサクラッカーおよび関連装置の立ち上がりや国内ナフサクラッカーの統廃合の影響などにより、顧客の市場環境が変わりつつあります。このような状況の中で、顧客のニーズ変化に対応したニッケル触媒をはじめ各種石油化学向け触媒の高性能化を図るために、活性金属の担持・成型・還元技術などの開発・工業化の検討を進めています。また、ケミカルプロセスの原料中に含まれる不純物を除去する吸着剤として、例えば硫化カルボニル除去などの吸着剤の開発・工業化に取り組むとともに顧客価値創造を目指してテクニカルサービスを強化しています。

環境保全分野
環境保全分野では、CO2排出量削減の観点から木屑など木質バイオマスを混焼させる石炭火力発電所が増えている中、バイオマス由来の触媒毒成分による触媒劣化を抑制した脱硝触媒を国内企業と共同開発しています。また、「水銀に関する水俣条約」による水銀規制に対応すべく、水銀除去性能などを付与した脱硝触媒の開発を加速させています。さらに中国や欧州向けにディーゼル車排ガス浄化触媒の開発を行っております。
中国では石炭火力発電所向け排煙脱硝触媒の導入がピークを越えた一方、セメントキルン、鉄鋼コークス炉、およびガラス溶融炉などの排ガス浄化触媒のニーズが高まりつつあり、高性能な低温脱硝触媒の開発・商品化を引き続き進めております。

クリーンエネルギー分野
国の水素戦略や電力の自由化に伴って、定置型燃料電池の市場は拡大するものと予想されます。このような環境の中、当社は次世代の燃料電池用機能材料について大学と共同開発を行っており、燃料電池関連材料の製品ラインナップの充実に努めております。

生活関連・化粧品分野
眼鏡レンズのハードコート塗料用の高屈折率酸化物ゾルは、従来よりも耐候性を高める開発が進み、眼鏡レンズ用の販売を強化するとともに光学フィルム材等の他分野へ展開を図っています。また、サングラス用ラッカー材は顧客の採用が内定し、2016年度に立上る予定です。今後は、着色機能などの性能アップを図り、眼鏡分野でのシェア拡大に繋げます。
化粧品材料は市場ニーズを取り込んだ新商品開発による販売拡大に注力しております。スクラブ洗顔料などに使用されているプラスチック製マイクロビーズは環境負荷が高いため、この代替材料としてシリカビーズを開発し、数社に採用が決定しました。また、化粧品材のトイレタリー分野への応用についても継続して開発を行っており、新たにヘヤケヤ用の材料が注目され評価が開始されました。さらに、数年来開発を進めてきた紫外線遮蔽効果を増幅する光学材についても商品化に向けて工業化検討を開始しました。

電子材料分野
記録メディア市場はクラウドの大型需要により堅調に推移しています。このような高記憶容量化に伴い、高面精度、高研磨速度シリカ研磨砥粒の分野では業界トップシェアを維持しています。また、半導体の高容量化などの市場ニーズに対応し、平坦性や低ディフェクトと研磨速度を高い次元で両立させた無機ハイブリッド型研磨材の開発にも目途がたち、複数の顧客評価も順調に進んでいます。
光学フィルム用機能性光学材料は、採用されているスマートフォン、タブレットに加え新たな用途開発に取り組んできた結果、高画質の4Kテレビの視認性向上を目的とした反射防止フィルム用に低屈折率粒子の高性能タイプが採用され、需要が拡大しています。
半導体材料は半導体実装材料分野で使用されるシリカ粒子の商品化に取り組んでいましたが、ドライ研磨用の多孔質粒子が採用、商品化されました。

ファインセラミックス分野
ハイブリッド車、電気自動車、太陽光発電、LED照明などの高電力用のパワーデバイスを支える放熱用基板として使用される「高熱伝導率窒化珪素基板」の性能を高める開発を行っています。また、SIPの革新的設計生産技術の中で3Dプリンティングによる構造化機能材料・デバイスの迅速開発に再委託先として参画しております。
その他、材料による差別化を図るため、非酸化物系セラミックスの材料開発ならびにシリーズ化、セラミックス金属複合材(MMC)の開発に注力しております。

なお、当事業での研究開発費は29億10百万円(消費税等は含まない)です。

また、総合エンジニアリング事業および触媒・ファイン事業に加え、その他の事業において85百万円(消費税等は含まない)の研究開発費を計上しております。

事業等のリスク財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析


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