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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100W701 (EDINETへの外部リンク)

有価証券報告書抜粋 不二製油株式会社 研究開発活動 (2025年3月期)


事業等のリスクメニュー株式の総数等

当社グループは、植物性の油脂とたん白を基盤とする新しい機能を持つ食品素材の開発に取り組んできました。長年積み重ねてきた研究成果と先進の技術力を生かし、不二製油グループ憲法のビジョン「植物性素材でおいしさと健康を追求し、サステナブルな食の未来を共創します。」に向けて、新技術・新素材の開発による事業シナジーの最大化や新たなビジネスモデルの創出を目指した研究開発活動を実施しています。世界中の方々の食べることの歓びと健康に貢献することをモットーに、「社会になくてはならない会社」になるための研究開発活動に努めています。
日本国内の「不二サイエンスイノベーションセンター」と「つくば研究開発センター」を研究開発の中核拠点とし、主に中国・東南アジア地域に設置した顧客との共創の場である「フジサニープラザ」、オランダのフードバレーの中心となるワーヘニンゲン大学キャンパス内に2021年度に開設した「フジグローバルイノベーションセンターヨーロッパ」、そして各グループ会社の研究開発部門が連携し、事業戦略と一体となったグローバルな研究開発を推進しています。また、イノベーションを推進するため、国内外の大学や研究機関とのオープンイノベーションや顧客との共創活動を強化しています。

知的財産部では、創業当初より植物性の原料を基礎原料にして植物性の油脂とたん白の加工技術を深掘しながら、磨き上げてきた成果を特許ポートフォリオとして構築しています。市場優位性や価格決定力に影響し得る重要特許シェア率(注1)では国内トップレベルに位置しております。今後は、将来の重要特許を生み出すための人材投資(≒新規発明者数(注2)に注力することで、グローバルでの市場優位性をさらに高めてまいります。
技術開発部では、「安全、品質、環境」にこだわり、コア技術の強化・革新に関する研究開発を進めております。
当連結会計年度の研究開発費の総額は6,457百万円です。

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(注3)

(注)1.油脂、チョコレート関連特許は、2015年以降における油脂、チョコレート等に関する特許分類に基づいて抽出された母集団を定義。母集団の被引用数上位5%に該当するものを重要特許として定義。
2.2015年以降に新たに出願した発明者のみを集計して算出。
3.重要特許シェア率が1%を超えている企業をグラフに表示。


研究開発活動の概要は次のとおりです。

(植物性油脂事業)
安全・安心で環境に配慮した油脂の製造技術、新機能を有する油脂製品、及びその最適な応用法に関する研究開発を通して、顧客の要望を形にし、新しいおいしさの創造に貢献しております。
当連結会計年度の主な成果としては、価格が高騰している国内外のココアバターの代替需要への対応策として、低価格仕様のCBE(注1)の市場導入、多様な代用脂の利用方法等を顧客へ提案し、チョコレート菓子市場の安定化及び活性化に対応しました。エシカル消費の緩やかな拡大と動物性油脂の供給不安定化という環境において、プラントベースフード(植物性食品)向けとして開発した動物代用油脂では、当社独自技術の分散技術であるDTR技術(注2)を利用し、植物性油脂に不足しがちな風味の満足感の付与に加えて、加工適性の継続的な改良により冷凍食品や加工食品用途での実績化が進んでいます。
従来の油脂結晶制御技術や酵素応用技術の深掘も継続して技術革新を進めております。酵素技術を活用した新規改良法の導入によるココアバター代用脂の機能改良を図る等、日々改善取組の実現に向けた基盤技術開発にも取り組んでいます。欧州を中心に規制が強化されているプロセスコンタミナント(グリシドール脂肪酸エステル等)除去につながる製造技術開発に一層注力し、国内及びグローバルの市場環境にも対応可能な油脂素材として提案を継続しております。
また、栄養健康分野においては、風味劣化抑制技術を用いたDHA・EPA油素材やアマニ油素材の市場導入を進めており、DHA・EPA油では機能性表示制度対応の健康志向チョコレートに新たに採用されました。消費者への認知をさらに拡大するために、健康関連油脂の摂り方を伝える動画配信やウェブ配信記事を活用した製品案内を新たな市場展開ツールとして拡充させました。
当事業の研究開発費は1,147百万円です。
(注)1.CBE:Cocoa Butter Equivalentの略。ココアバターと同等の物性を持ったチョコレート用油脂。
2.DTR技術:水溶性成分を油脂に微分散させる技術で、素材の呈味(塩味、旨味、辛味等)や保存安定性を付与増強する技術。

(業務用チョコレート事業)
チョコレートを通して社会課題解決を行うべく、新技術開発・原料選定を行い、具現化したアプリケーションと共にソリューション提案を行っております。
未曽有のカカオ不足と価格高騰に苦慮するチョコレート業界を支えるべく、国内ではカカオ原料の使用削減と風味の維持を両立させたコンパウンドチョコレート(注1)製品の「CPチョコレート」シリーズ2品(ビター、ホワイト)をいち早く導入し(2024年6月に上市)、供給不安が広がりつつあった市場の混乱を未然に防ぐことができました。この「CPチョコレート」は、ココアバターを極力使わずに植物性代替油脂(CBE)の機能を最大限に活用したその品質に加えて、魅力的な価格や供給安定性を兼ね備えたことから、これまで海外ブランドを使用していたパティシエの方々が当社のチョコレートに目を向けるきっかけとなりました。本製品は、想定以上の販売数量で推移しており、急遽3品目のミルクタイプも上市(2025年2月)するに至る等、これまでクーベルチュールの独壇場であったパティシエの世界においてもコンパウンドチョコレートの定着が確実視されております。一方、海外のブラジル市場においてもチョコレートの価格上昇に対するソリューションの提案が必要でした。南米の子会社であるHARALD INDÚSTRIA E COMÉRCIO DE ALIMENTOS LTDAでは、従来から強みとするコンパウンドチョコレート製品を使ったアプリケーション紹介を増やすことに加えて、CBEコンパウンドチョコレート製品である「Inovare」をリニューアル発売してお客様の選択肢を増やす提案を行いました。これまでブラジル市場ではCBEコンパウンドチョコレートはあまり馴染みがないという課題がありましたが、チョコレートと同様に使えて美味しく、価格的にも求めやすい製品であることを直接消費者に説明して実感していただくために、店頭での試食キャンペーンの取組を行いました。その効果もあり「Inovare」は計画以上にお客様にご購入いただいています。米国の子会社のBlommer Chocolate Company, LLCは、CBEを活用したプレミアムコンパウンドチョコレートブランド「Elevate」を立ち上げました。従来のチョコレートよりも低価格で、風味や物性面ではココアバターを用いたチョコレートとそん色ない品質を有する「Elevate」シリーズは、発売と同時期に行われた北米最大の食品原料と食品技術の展示会IFTで大々的に紹介され、話題となりました。
カカオ非生産国である日本でカカオ輸入が全く困難になる状況を想定して、カカオ原料を一切使用しないミルクチョコレートタイプの「アノザM」を導入いたしました。国内外の顧客からの問い合わせもさることながら、メディアからの取材依頼も多く、当社のチョコレート市場における地位向上に寄与しております。
当事業の研究開発費は1,488百万円です。
(注)1.コンパウンドチョコレート:チョコレートの規格は国によって異なり、北米ではココアバター以外の油脂を配合すると「コンパウンドチョコレート」と分類される。

(乳化・発酵素材事業)
ホイップクリーム、調理用クリーム、ドリンクベース、マーガリン、フィリング、チーズ風味素材等の乳製品代替素材の開発、弊社独自のUSS製法による豆乳を活用した新技術・新製品開発、及びアプリケーション開発を通し、美味しさにこだわりながら社会課題のソリューションの提供を目指して活動しております。
当連結会計年度は、乳原料をはじめとする原料価格の高騰や供給の不安定化、急激な物価の上昇等、原料事情や市場の変化に迅速に対応した新製品開発を行い、大きく利益貢献を果たしました。マーガリン関連ではバターの濃厚な風味の強化に取り組み、従来に比べてバターの使用量を低減しながらも良好なバター風味を実現し、商品価値を向上させつつ原料コストを抑えるソリューションとして製菓製パン市場を中心に高い評価を得ております。ドリンクベース、フィリング類等の製品開発では、インバウンド等による外食市場での需要増加に対応し、乳化技術をベースとした機能性や風味づくりで顧客からの厚い支持をいただき採用が進みました。
また、新しい発酵技術開発に取り組み、本格的な熟成チーズ風味を実現する技術を開発しました。輸入中心で高価かつ物性面でも制約の多い熟成チーズに依存しなくとも、本発酵技術によって従来品とは異なるなめらかな物性と本格的な風味等を表現でき、高まるチーズ需要にリーズナブルに応える製品開発が可能となりました。すでに、製菓製パン、外食、加工食品等幅広い市場で高く評価いただき、実績化に大きく貢献しております。
植物性素材では、特においしさにフォーカスした製品開発に注力し市場で高く評価されております。豆乳クリームバター「ソイレブール®」はバターのようなクリーミーさ、ジューシーさを持ちながらも、バターとは異なる他素材との相性の良さという特徴で顧客の商品の幅を広げ、高い評価をいただくとともに年々実績を伸ばしています。さらに、USS製法による新しい価値として、独特のなめらかな食感と口当たりの「やみつき新食感スイーツ」を上市、外食市場等で簡便にスイーツを提供できるとして高い評価を受けております(関連:ESGマテリアリティ取組テーマ「多様な植物性素材の創造」)。
日本のパンや洋菓子のトレンドは、中国や東南アジア地域で非常に注目されています。当連結会計年度では数回にわたり中国の大手ベーカリーや洋菓子チェーン向けに日本のトレンドを紹介するツアーを行い、中国と日本の市場開発メンバーが協業して日本で人気のパンや洋菓子の紹介を実施しました。このような活動が功を奏し、マーガリンやクリームの採用につながっております。
当事業の研究開発費は1,065百万円です。

(大豆加工素材事業)
大豆たん白質や大豆たん白食品、大豆ペプチド、大豆多糖類等による、お客様の課題解決を目指した製品の開発・上市や改善に取り組んでいます。
粉末状大豆たん白素材では従来からの主要市場である畜肉、水産、総菜加工用途向けの「サンラバー®SY2000」を上市しました。これは粉体の分散性と物性に優れ、従来製品では対応できなかったミキサー攪拌機での乳化生地生産が可能となり、生産現場の作業効率化や省人化を可能とする点が高く評価され、市場での採用が進みました。
栄養健康市場用途では、2023年に開発した「プロリーナ®HD505」や「プロリーナ®23LG」のプロテイン飲料市場での採用が順調に伸長しました。「プロリーナ®1400H」は東南アジア向けとしてHALAL認証に対応し、栄養健康市場での海外採用が進みました。高騰する卵素材への対応としては、スポンジケーキ等の洋菓子利用に特化した大豆たん白製剤の「ウフリー®」を上市し、全卵の一部置き換え利用や卵を使わないプラントベースのスポンジケーキに採用されました。大豆多糖類素材では、高pH設計の酸性乳飲料用途向けに「ソヤファイブ®HP100」を開発し、競合となるペクチンにはない低粘度特性も高く評価されております。
粒状大豆たん白素材では、従来からの主要市場である総菜加工用途向けで肉を置き換えられ、噛み応えのある食感の新製品として「アペックス®TMR10」を上市し、採用が進んでいます。肉質感に優れた大豆ミート素材として「プライムソイ®」を提案し、「プライムソイ®国産大豆」はホテルメニューや流通PBのワンハンドスナック等に、海外では「プライムソイミート」がシンガポールの外食店に採用されました。また、焼き肉にも使えるスライス肉タイプや、外食・中食のお客様向けに小袋タイプを発売しました(関連:ESGマテリアリティ取組テーマ「多様な植物性素材の創造」)。
栄養スナック、バー市場では、プロテインのコンセプトをうたう商品の多様化が進んでいます。「ソヤパフ®10」は大豆の美味しさを活かした製品として発売し、たん白質訴求スナックで採用されました。新たにペットフード市場向けにも新製品を開発しており、大豆の栄養価に着目した市販商品に採用されました。
副産物のオカラから機能性食物繊維素材の「ソヤセル®」を開発・上市しました。小麦粉加工製品や畜肉総菜生地等での食感改良や保存性の向上、スープやソース類等での耐熱、耐冷性があり、粘度安定性に優れた特性を有しながらも食品添加物扱いではなく食品としての表示が可能です。加えて、呈味の増強効果があり、調味料低減にも対応できます。同じく大豆加工時の副産物から農業向け肥料「ソヤウェイ®」を上市し、大阪公立大学や各企業様との圃場試験において作物栽培への有効性データ取得を進めました(関連:ESGマテリアリティ取組テーマ「フードロスの削減とアップサイクル」)。
当事業の研究開発費は1,290百万円です。

(中長期視点での研究活動)
中長期視点の研究開発活動としては、大きくは、社会課題に対する研究開発及び新規事業につながる技術開発を行っています。
昨今、気候変動対策や世界的な人口増加、人権侵害等の多くの社会課題に対して、将来を見据えた取組が企業に求められています。未来創造研究所では、人口・経済・環境・食糧・ヘルスケアに関する定量情報を用いて2050年までの未来年表を作成することで将来起こりうる社会課題を把握し、これらの課題解決につながる研究テーマに取り組んでいます。中でも、社会・環境に対応したサステナブルな固体脂源等の創出と利用を掲げて、パーム・カカオ・大豆等による環境負荷の低減、安定調達に寄与する技術開発を推進しております。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発」に参画し、新潟薬科大学との共同研究により、産業用スマートセルを用いたパーム油代替油脂の生産技術における開発成果も着実に出ていることから、さらに研究体制を強化し、油脂生産酵母による地球環境に優しいパーム油代替技術の社会実装を確実なものといたします。また、佐賀市・国立大学法人佐賀大学・伊藤忠エネクス株式会社と共同で推進する、ごみ焼却施設の排熱及びCO2を利用した大豆育成研究プロジェクトでは小型植物工場での栽培実験を継続しています。これまでの研究から、2023年産の日本における大豆の平均収量169kg/反(農林水産省作物統計)と比較し、1作あたり約3倍(注1)に増加する結果を得ることができました。将来的にはCCU(注2)による温室効果ガスの低減を訴求できる大豆植物工場の完成と、栽培大豆を用いたプラントベースフードの開発を目指します(関連:ESGマテリアリティ取組テーマ「環境に配慮したものづくり」)。
「ヘルスケア」領域では、認知症やメンタルヘルス、フレイル(注3)等を重要な健康課題と設定し、当社独自の風味劣化抑制技術を用いたDHA・EPA油脂素材による研究により、脳機能に加え、骨代謝に関わる新たな知見を見出しており、「真価を発揮するドコサヘキサエン酸~“酸化していない”からこその可能性」と題して、第24回日本抗加齢医学会総会シンポジウムにて発表いたしました(関連:ESGマテリアリティ取組テーマ「高齢者の心身の健康課題の解消」)。
新規事業につながる技術開発として、当連結会計年度は植物性素材で動物性特有の満足感を表現するMIRACORE®技術により開発された新製品、貝出汁タイプ「MIRA-Dashi®C500」を上市しています。また、MIRA-Dashiシリーズを用いた植物性の業務用ラーメンスープも3種(製品名『MIRACORE®RAMEN T3(豚骨風)』、『味噌ラーメンスープ M1』及び『塩ラーメンスープ S1』)発売いたしました。これらのラーメンスープは、世界中の誰もが楽しめる地域色豊かなラーメンをつくるプロジェクト:Minna no Ramen. project(通称:みんラー)での中心的食材として活用が進められています。
未来創造研究所は、不二製油グループの将来の事業を創造する研究所として、積極的に国内外の大学を含む公的研究機関や企業とのコラボレーション、及び研究員の派遣に取り組んでいます。オーフス大学との共同研究では、水溶性エンドウ多糖類に関する内容が論文「Food Chemistry, 477, 143588 (2025)」として、ワーヘニンゲン大学との共同研究では、プラントベース肉代替組織における乳化物の挙動と影響に関する内容が論文「Journal of Food Engineering, 387, 112353 (2025)」及び「Current Research in Food Science, 10, 100989 (2025)」としてそれぞれの学術誌(査読有り)に受理されました。茨城大学に設置している「食の創造」講座での当社研究員による学生指導の成果としては、新規多糖類の開発に関する研究結果が論文「International Journal of Biological Macromolecules, 278, 134664 (2024)」及び「International Journal of Biological Macromolecules, 304, 140880 (2025)」として学術誌(査読有り)に受理されました。
当事業の研究開発費は1,466百万円です。

(注)1.1作あたり約3倍:実験面積を一反あたりに換算した上で全量収穫が前提。
2.CCU(Carbon dioxide Capture, Utilization):排出されたCO2を他の気体から分離して集め、新たな製品の製造に利用する技術
3.フレイル:健康な状態と要介護状態の中間に位置し、加齢とともに身体的機能や認知機能の低下が見られる状態のこと。

事業等のリスク株式の総数等


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