シェア: facebook でシェア twitter でシェア google+ でシェア

有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100W14C (EDINETへの外部リンク)

有価証券報告書抜粋 鹿島建設株式会社 研究開発活動 (2025年3月期)


事業等のリスクメニュー株式の総数等


当社グループは、中期経営計画に基づき、施工の自動化やデジタル化など中核事業の一層の強化に資する技術とともに、社会課題解決型ビジネスやオープンイノベーションによる新たな価値創出への挑戦を目指して、CO2削減に寄与する環境配慮型技術などの開発を進めている。
当連結会計年度における研究開発費の総額は222億円であり、主な成果は次のとおりである。なお、当社は研究開発活動を土木事業、建築事業のセグメントごとに区分していないため建設事業として記載している。

(建設事業)

1 当社

(1) 中核事業の一層の強化
① 鉄骨梁の製作手間と現場溶接量を削減する「鹿島式ストレート梁工法」を実導入
当社は、高層建築物の鉄骨梁端部の接合部を合理化することで品質と生産性が向上した「鹿島式ストレート梁工法」を開発し、(仮称)札幌4丁目プロジェクト新築計画(札幌市中央区)ほか8件の工事に採用した。本工法では、CFT柱と鉄骨梁の接合部に、孔あき鋼板ジベル(*1)を用いて接合部を補強する技術を活用した。これにより、梁端フランジへの水平ハンチ(*2)の取付けが不要になることで、鉄骨梁の製作手間や現場での溶接作業量を軽減できる。同時に高い構造性能を確保しながら柱周りのスペースを広げることが可能となる。
*1:鋼材とコンクリート間の応力伝達を可能とする接合技術
*2:フランジ破断を防止するために、梁端のフランジを拡幅したもの

② 柱一本を全自動で溶接する新型のマニピュレータ型現場溶接ロボットを実導入
当社は、溶接量が多い大型鉄骨柱を主な対象として、柱の全周溶接に伴う一連の繰り返し作業を全自動化する新型の「マニピュレータ(多関節型アーム)型現場溶接ロボット」を開発し、横浜市内の当社施工中ビルにおいて実導入した。本ロボットは、開先(*3)形状計測、溶接、スラグ(*4)除去の一連のフローを熟練技能者と同等以上の高い品質を確保しながら全自動で繰り返すことができるため、昼夜連続作業が可能となるほか、技能者が作業中のロボットから離れ、同時に複数台のロボットを運用するなど他の作業を行うことが可能となる。
*3:部材同士を繋ぎ合わせるために、溶接材料で埋める隙間
*4:溶接時に表面に発生する不純物

③ 70年ぶりの新工法となる「型枠一本締め※工法」を開発し歩掛(*5)を20%向上
当社は、岡部㈱、㈱丸久、㈱楠工務店と共同で、コンクリート構造物の施工に不可欠な型枠工事を省力化する「型枠一本締め※工法」を開発し、全国20件以上の現場に導入した。在来工法が普及し始めた1950年代以降、画期的な技術革新がなかった型枠工事において、約70年ぶりの新工法となる。本工法は、在来工法に比べて、使用するパイプの軽量化と本数の削減、並びに施工方法の簡素化により、歩掛を約20%向上できる。これにより、技能者の身体的負担を大幅に軽減するとともに、歩掛の向上は作業時間の短縮に直結するため、時間外労働時間の上限規制への対応にも繋がる。さらに、運搬由来のCO2発生量を約50%削減できるほか、パイプ等に採用したアルミ材はリサイクル率が高いことから産業廃棄物を削減できるなど、環境負荷低減にも貢献する。
*5:作業を行う場合の作業手間を数値化したもの

④ 国内で初めてUFC(*6)道路橋床版への床版取替工事を1車線規制で実現
当社は、UFC道路橋床版を、幅員方向分割(2車線道路の場合1車線規制)で施工する名神高速道路(特定更新等)河内橋他1橋床版取替工事(岐阜県不破郡関ケ原町~滋賀県彦根市)に国内で初めて導入した。床版取替えに伴う道路面の高さ調整が不要なUFC道路橋床版の採用や、一次床版と二次床版の接合部の工夫による確実な一体化により、片側1車線の通行が可能な幅員方向分割の施工を実現し、工事に伴う交通規制等によるソーシャルロスを低減した。
*6:Ultra-high strength Fiber reinforced Concrete(超高強度繊維補強コンクリート)

⑤ 安価で締固めが不要な高流動コンクリート「LACsコンクリート※(*7)」を開発
当社は、鉄筋コンクリート構造物の施工における生産性向上を目的に、安価で締固め作業(*8)が不要な高流動コンクリート「LACsコンクリート※」(ラックスコンクリート)を開発し、横浜環状南線公田笠間トンネル工事(横浜市栄区)に初導入した。その結果、普通コンクリートで施工した場合と比べ、作業人数を約80%削減、打設時間を約60%短縮できること及び材料分離が生じることなく充填が可能で、硬化後も所定の品質を確保できていることを確認した。また、セメントよりも安価な細骨材を増量することで、トータルコストの増加を抑制した。

*7:Low Action Casting / Low Actual Cost / Limited Abandoned Compaction / Lead Abbreviation Casting / 楽(らく)コンクリート
*8:コンクリート打設中にコンクリート中の空気と過剰な水を追い出し、型枠の隅々まで行き渡らせる作業

⑥ 山岳トンネルの自動化施工システム「A4CSEL※for Tunnel」が完成
当社が2017年から開発を進めてきた、次世代の山岳トンネル自動化施工システム「A4CSEL※for Tunnel」(クワッドアクセル・フォー・トンネル)が完成した。当社が各種実証試験を行っている神岡試験坑道(岐阜県飛騨市)にて当システムの実証施工を行い、山岳トンネルの掘削作業6ステップ(①穿孔 ②装薬・発破 ③ずり出し ④アタリ取り ⑤吹付け ⑥ロックボルト打設)で使用する重機の自動化・遠隔化に成功し、安全性向上並びに省力化及び生産性向上に貢献できることを確認した。

(2) 新たな価値創出への挑戦
① 羽田イノベーションシティで「Wi-SUN FAN(*9)」によるロボット遠隔誘導の実証実験に成功
当社は、SolidSurface㈱及び㈱日新システムズと共同で、「Wi-SUN FAN」を活用したロボット遠隔誘導の実証実験を羽田イノベーションシティにて行っている。従来、4GやWi-Fiの通信電波は、壁などの障害物に影響を受けるため、建物の最奥部やエレベータ内に電波が行き届かず、ロボットが一時的にコントロール不能になるという課題があったが、「Wi-SUN FAN」を4GやWi-Fiの補助として用いることで“電波が途切れることで生じるコントロール不能時間”を大幅に短縮することに成功した。これにより、更に安定したロボットの遠隔誘導が可能となり、実際の運用においても高い信頼性が確保できることを確認した。
*9:Wireless Smart Utility Network for Field Area Network profile
Wi-SUNアライアンスが策定した通信仕様。2.4GHzや5GHz帯を使用するWi-Fiと異なり、920MHz帯で使用され、複数の中継器を経由した無線マルチホップ方式により屋外のような広い場所での通信に優れる。

② 鹿島の立体音響スピーカー「OPSODIS 1」がGREEN FUNDINGの2024年最優秀プロジェクトに選出
当社は、英国サウサンプトン大学と共同開発した立体音響技術「OPSODIS※(*10)」(オプソーディス)を搭載した小型スピーカー「OPSODIS 1」のプロトタイプを開発し、クラウドファンディングサイト「GREEN FUNDING」で2024年6月から販売を開始した。その後、約8か月で単独の国内企業による製品開発プロジェクトとしては過去最高となる支援総額6億円を突破した。また、「GREEN FUNDING」で起案された優れたプロジェクトを選出する「GREEN AWARD 2024」で、その年を象徴する卓越したプロジェクトとして評価され、最優秀賞を受賞した。
*10:Optimal Source Distribution(最適音源配置)

③ デジタルで森林づくりを総合支援

当社は、森林内の自律飛行が可能なドローンなどを活用して取得した森林上空と森林内のデータを解析することで、森林を構成する樹種毎のボリュームや樹々毎の位置・樹高などを点群データ化し、評価する技術を開発した。本技術を用いて、自治体や企業などの森林所有者が行う森林づくり計画の提案から森林経営、活用支援までをトータルにサポートするサービス「Forest Asset※」(フォレストアセット)の提供を開始した。当サービスを活用することで、森林管理の生産性が向上するほか、森林資源を生かしたJ-クレジット制度や自然共生サイト認定の申請など、森林が持つ付加価値向上に向けた取り組みが可能となる。

④ 月面人工重力居住施設の成立性を京都大学と鹿島が共同研究
当社と京都大学は、月面人工重力居住施設「ルナグラス※」の実現に向けた第一歩として共同研究を開始した。これまで、宇宙居住に必要な3つの構想(人工重力、縮小生態系、人工重力交通システム)を掲げ、基礎的な概念の構築を行ってきた。本共同研究においては、これまでの概念検証から一歩進め将来的な実現に向けて、月面での人工重力居住施設の構造成立性、施工成立性、居住性、人体への影響評価、閉鎖生態系(ミニコアバイオーム)の確立について、研究を進める。

(3) 成長・変革に向けた経営基盤整備とESG推進
① 大気中から回収したCO2を用いたコンクリート製造を実証
当社と川崎重工業㈱は、川崎重工業㈱が保有するDAC(Direct Air Capture)技術を用いて開発した、大気中から1日5kg以上のCO2を99%以上の高純度で回収できるCO2分離・回収装置と、当社らが開発したCO2吸収コンクリート「CO2-SUICOM※(*11,12)」(シーオーツースイコム)にCO2を吸収・固定させるための炭酸化養生槽(*13)とを組み合わせたシステムを構築した。このシステムをプレキャストコンクリート製品工場に設置して実証実験を行った結果、所定のCO2固定量並びにコンクリートとしての品質が得られることを確認した。同システムを用いて舗装ブロック「CUCO※(*14,15)-SUICOMブロック」を製造し、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の「CUCO※-SUICOMドーム」(愛称:サステナドーム)のエントランスの一部に敷設した。

*11:CO2-Storage Utilization Infrastructure by Concrete Materials
*12:当社、中国電力㈱及びデンカ㈱の登録商標
*13:安定した環境でCO2を吸収・固定することを目的とした、CO2を封入したコンクリートの養生装置
*14:Carbon Utilized Concrete
*15:当社、デンカ㈱及び㈱竹中工務店の登録商標

② 低炭素型コンクリート「ECM コンクリート※(*16)」を成瀬ダム堤体へ本格導入
当社は、成瀬ダム堤体打設工事(秋田県雄勝郡東成瀬村)において、低炭素型コンクリート「ECM(エネルギー・CO2ミニマム)コンクリート※」計1,526m3を、ダム堤体と造成岩盤コンクリートの一部に国内で初めて導入した。当コンクリートは、普通セメントの代わりに、高炉スラグ微粉末を60~70%混合したECMセメントを使用する。当セメントは、一般的なダムコンクリートに用いられる中庸熱フライアッシュセメントと比べ、製造時に排出されるCO2を52%削減できる。これにより、本ダムの建設工事に伴い発生するCO2排出量を73t削減した。
*16:当社及び㈱竹中工務店の登録商標

③ フィリピンのサンゴ礁再生プロジェクトにおいてコーラルネット※と環境評価技術を実証
当社は、東京科学大学及びフィリピン大学と共同で、衰退の危機にあるサンゴ礁の保全と再生を目的としたプロジェクト「InCORE※(*17)」(インコア)をフィリピン・パナイ島タンガラン湾で2023年2月から2024年7月にかけて実施した。その結果、数値シミュレーション技術等による環境評価と当社の「コーラルネット※」を用いて行ったサンゴ再生試験において、複数の地点でサンゴの成長やサンゴ幼生の着生が認められるなどの効果を確認した。このプロジェクトはアジア開発銀行の国際公募事業に採択されたものである。
*17:Integrated Approach for Coral Conservation and Rehabilitation

(国内関係会社)
1 鹿島道路㈱
舗装に関する新技術の開発
建設副産物の有効利用とCO2排出量削減を目指し、100%リサイクル安定処理路盤材を開発した。この路盤材は、再生クラッシャランと高炉スラグ微粉末などのリサイクル材のみを原料としており、一般的なセメント安定処理路盤と同等の圧縮強度を有するため、舗装構造の高耐久化の効果も期待できる。
また、作業の省力化を図るため、25tタイヤローラ搭載式平板載荷試験機を開発した。この試験機は、試験に必要な反力を十分得ることができ、100㎏程度の載荷板の設置・撤去作業を自動化することで、省力化と安全性の向上を実現した。現在、この技術は、空港の滑走路舗装工事で採用している。

2 ケミカルグラウト㈱
PFAS(*18)汚染対策技術の開発
PFAS汚染対策を目的として、新開発の特殊吸着材を用いた固定化技術及び低温による加熱浄化工法を開発した。
この特殊吸着材は、鉱物主体の原料に電荷を付与し、PFASの優先吸着性能を向上させており、室内実験では、一般的な吸着材の活性炭のPFAS溶出量75%減に対し、95%減と効率的な流出防止が期待できる。一方、熱処理の場合、PFASは1,100℃の高温加熱処理が推奨されているが、処分場への運搬による拡散リスクや汚染土の掘削除去コストが懸念される。新開発の浄化工法は、室内試験で450℃と低温での浄化に成功したものであり、規制対象を含めた49,000種類のPFASを除去できることが確認できた。
今後、温度と浄化効果の関係を評価するとともに、固定化技術及び原位置での加熱浄化工法の実証実験を行い、開発を進めていく。
*18:Perfluoroalkyl and Polyfluoroalkyl Substances
発がん性がある難分解性物質で、人体や環境中に長期間滞留するため「永遠の化学物質」とも呼ばれている。

(開発事業等及び海外関係会社)

研究開発活動は特段行われていない。

(注) 工法等に「※」が付されているものは、当社及び関係会社の登録商標である。

事業等のリスク株式の総数等


このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E00058] S100W14C)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。