有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100VHA9 (EDINETへの外部リンク)
株式会社レゾナック・ホールディングス 研究開発活動 (2024年12月期)
当社グループは、「世界No.1技術・製品を生み出し続ける」と言うビジョンのもと、技術の染み出しによるイノベーションの実現、事業本部を横断する技術開発の牽引、社会を変える長期R&Dの推進、という3つのミッションを掲げ、私たちの強み(コアコンピタンス)である、「作る化学」「混ぜる化学」「考える化学」の技術共鳴(レゾナンス)によるシナジー創出を図りながら、最短かつ確実に社会課題にお応えできるよう、研究開発活動に取り組んでおります。またオープンイノベーションやM&Aを活用し、必要な技術を社内外から積極的に導入していくことで、将来の成長を牽引する事業の早期の成果顕現、多様な技術・事業を通じたSDGsへの貢献に注力しております。
なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は、44,806百万円であります。
セグメントごとの研究開発活動は次のとおりであります。
(半導体・電子材料)
半導体・電子材料分野では、次世代事業のコアとなる基礎・基盤技術の研究開発、事業部門協働による新製品・新事業創出、社会を変える長期R&Dを目的として、研究開発部門との密接な連携の下に研究開発を推進しております。
一例としては、半導体デバイスの微細な回路形成を実現する半導体前工程材料(情報電子化学品(電子材料用高純度ガス・機能性薬品)、半導体回路平坦化用研磨材料)、半導体後工程材料(エポキシ封止材、ダイボンディング材料、銅張積層板、感光性フィルム、感光性ソルダーレジスト)、デバイスソリューション(ハードディスク、SiCエピタキシャルウェハー(以下、「SiCエピウェハー」といいます。)、化合物半導体(LED))等の付加価値を高める開発をしました。
半導体前工程分野では、半導体製造プロセス材料として各種エッチングガス、クリーニングガス、成膜材料及び洗浄剤、超高純度溶剤の開発を進め、市場展開しております。今後も引き続き、低環境負荷、高性能化に寄与する研究開発を進めます。
半導体後工程分野では、AI半導体などの高性能半導体向け材料として絶縁接着フィルム「NCF」、及び放熱シート「TIM」の生産能力を従来の3.5~5倍に拡大することを決定し、市場での競争力を一層強化してまいります。さらには、先端半導体の製造に使用する高解像度の感光性フィルムを新たに開発し、先端パッケージの有機インターポーザーにおいて、線幅と配線間隔が各1.5マイクロメートルという微細な銅回路形成を実現します。この高解像度を達成するために、計算情報科学研究センター、高分子研究所、感光性材料開発部、パッケージングソリューションセンターの4つの部門が共創し、新規ポリマー樹脂を開発しました。また、外部との更なる共創活動として、半導体製造の後工程の自動化を目的とする「半導体後工程自動化・標準化技術研究組合(SATAS)」に参画しました。半導体材料メーカーとして、先端パッケージと後工程の研究開発で培った知識・経験を活用して、SATASの組立工程と検査工程を対象としたプロセス開発に貢献してまいります。次世代半導体パッケージ分野において、半導体の製造装置・材料メーカーの枠を超えて日本で進めてきた半導体パッケージ技術開発のコンソーシアム「JOINT」、及び「JOINT2」の取り組みに加え、日米の材料・装置等の企業12社によるコンソーシアム「US-JOINT」を米シリコンバレーに設立することを発表し、2025年稼働に向けてクリーンルームや装置導入等の準備を進めております。
ハードディスクについては、唯一のハードディスク外販メーカーとして、市場をリードする新技術の開発を継続しております。世界に先駆けて実用化した垂直磁気記録方式の高性能化を進めるとともに、次世代ハードディスク向け高密度記録方式であるシングルド記録(瓦書記録)、マイクロ波アシスト記録、熱アシスト記録の開発により更なる高性能化に向けた取り組みを行っており、熱アシスト磁気記録に対応した次世代ハードディスクに関して米シーゲイト・テクノロジー社と共同開発を進めております。シングルド記録方式では、アルミ基板を用いて当社の最新磁性層設計及び結晶微細化技術を導入することで、業界最高の記録容量となる1枚あたり2.8テラバイトの製品を出荷しております。
SiCエピウェハーについては、世界最大の外販メーカーとして、最高水準の品質の製品を提供し、国内外のデバイスメーカーから高い評価を得ております。SiCエピ膜製造に関しては、(一財)電力中央研究所、㈱デンソー、㈱ニューフレアテクノロジーと共同で、研究開発テーマ「高品質SiC単結晶膜の高速製造技術の開発と応用」について「第50回(2023年度)岩谷直治記念賞」を受賞しました。2022年に開始した内製基板を用いた8インチSiCエピウェハーのサンプル出荷を進めるとともに、さらなる品質向上に向けて、(国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、「NEDO」といいます。)の「グリーンイノベーション基金事業」において研究開発を進めております。ここでは、より高速でエピウェハーを製造する高速昇華法技術の開発にも取り組んでおります。なお、先駆的な技術開発の成果により取得した特許群は、2024年米LexisNexis社PatentSight+の特許データベースを用いた有効特許に対する総特許価値でグローバルトップです。仏KnowMade社による特許分析においても高く評価されております。さらに当社は先進的な半導体基板材料を製造する仏ソイテック社と、パワー半導体に使用される8インチのSiCエピウェハーの材料となる8インチSiC貼り合わせ基板の共同開発契約を締結しました。SiCエピウェハービジネスでのサプライチェーンの多様化を目指します。今後も高性能で高い信頼性の製品を供給することで、SiCパワー半導体の普及に貢献します。
化合物半導体を用いた発光素子・材料では、高効率化、高出力化をターゲットとしたLED製品の開発に注力しております。成長する車載センサーや高性能フォトカプラなどの赤外領域の発光デバイスを主ターゲットに業界トップの品質とカスタマイズ力によりお客様の要望に応える製品を提供しております。
当連結会計年度における半導体・電子材料セグメントの研究開発費は、20,899百万円であります。
(モビリティ)
モビリティ分野では、自動運転化、電動化、軽量化、電装化、冷却性、安全性といった市場ニーズに幅広い材料ソリューションで応えるとともに、企業の社会的責任としてカーボンニュートラルへの取り組みを一層進めております。具体的には、製品や工場端材のリサイクルやバイオプラスチックの開発を推進しております。
現在、上市中の樹脂ギヤ、樹脂バックドア、負極材、ブレーキパッド、粉末冶金などの製品については、変化する市場動向に迅速に適応するため、開発を継続しております。それらに加えて、自動運転化のためのセンサー対応技術として「ミリ波透過コーティング」、車載デバイスの軽量化と冷却性を両立させた新コンセプトの冷却ユニット「樹脂ウォータージャケット」など、その他の製品技術の開発も進めております。
また、主要な自動車メーカーやTier1サプライヤーにおいて既に主流となっているモデルベース開発(MBD)を継続的に推進しております。MBDでは、自動車システム全体から末端部品の機能や必要性能をモデル上でシミュレーションを実施します。これにより、開発初期段階において3Dモデルと計算科学を活用し、仮想試作や仮想評価を行うことで、自社や顧客の開発時間を大幅に短縮することが可能です。さらに、これまでにない新システムに必要な解析手法や評価方法は、社内の計算情報科学研究センターや大学と共同で開発中です。加えて、2050年のカーボンニュートラルに向けた長期R&Dテーマとして、資源循環型材料の開発を大学との共同研究で進めており、外部機関が主催するコンソーシアムにも参加しております。
先端電池材料については、リチウムイオン電池向け導電助剤である気相法炭素繊維「VGCF-H」の新プラントを川崎事業所内に建設し生産能力を年産300トンから400トンに引き上げました。
アルミニウムでは、市場から要望されている材料、部品及び製品の開発を進めるとともに、これらの製造プロセスに係る基盤技術の研究にも注力しております。自動車メーカーと共創しリサイクル材適用増加の検討や次世代冷却器の開発などに取り組んでおります。
当連結会計年度におけるモビリティセグメントの研究開発費は、6,380百万円であります。
(イノベーション材料)
イノベーション材料分野では、広範多岐にわたる需要、個々のお客様の要望に迅速に応え、お客様の新製品開発の鍵となる材料をタイムリーに提案することを目的として、光機能材料、エネルギー領域、インフラケミカルズ、高機能ゲル、化粧品原料、及びセラミックスの研究開発を推進しております。
テレビなどの大型液晶ディスプレイ、スマートフォン端末などの有機ELに使用される各種製品は、市場で高い評価を受けております。市場が中国シフトする中で2020年6月に増設を完了した上海においても生産・供給を開始し、現地需要の取り込みに向けお客様の要望に即した新規開発品を複数市場に投入しております。また電子材料、光学材料や歯科材料などに使用されるイソシアネートモノマー「カレンズMOI」や機能性アクリレート・メタクリレート「ファンクリルFAシリーズ」の開発、生産能力の強化を行い、販売を継続しております。特に「ファンクリルFA500シリーズ(脂環式モノマー)」の耐熱性及び高信頼性の特徴を生かし、電子部品材料用途への横展開を行い、事業拡大を図っております。
エネルギー領域におきまして、電力モーターの高性能化に伴う高電圧・耐サージ性に対応できる、xEV向け高耐熱絶縁ワニスの技術開発を継続して進めております。また、リチウムイオン電池負極材用水系バインダー樹脂「ポリゾールLBシリーズ」につきましては、その低抵抗性や優れた温度特性などが評価され、急速充電対応が求められるHEV用途への国内納入を開始いたしました。今後は、市場動向を注視しつつ、xEV向けリチウムイオン電池全般への展開を推進してまいります。
インフラケミカルズでは、耐用年数が寿命を迎えた下水道管補修用不飽和ポリエステル樹脂「リゴラック」の光硬化タイプに注力しております。下水道管補修市場においては、熱硬化タイプから環境負荷の小さい光硬化タイプへの転換が進んでおり、この変化に対し樹脂技術で貢献してまいります。
高速液体クロマトグラフィー用「ショウデックスカラム」では、新製品として単糖の分離性能を改善した糖分析カラム、次世代医薬品バイオナノパーティクル精製を目的としたゲルろ過カラムの販売を開始し、新市場の獲得を進めております。環境関連では国際的に規制強化が進むPFASやハロゲン酸化物の高感度分析を可能とする各種カラムの市場展開を推進しております。今後もバイオ・医薬分野、迅速・省溶媒、高感度・高分離に重点を置いたゲル(充填剤)やカラムの研究開発を促進します。
化粧品原料では、オンリーワン製品であるビタミンC誘導体「アプレシエ」及びビタミンE誘導体「TPNa」を中心に、市場ニーズの高いアンチエイジング、保湿、アイケア、ヘアケアの分野で新機能を見出し、お客様の製品企画のきっかけを作ることで市場の拡大を図っております。
セラミックス関連では、電子デバイス、パワーデバイス市場向けには、デバイスの高密度化、高性能化に対応した高い放熱性と電気絶縁性を併せ持つフィラー材料(アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム)の開発を行っております。また、スマートフォンなど多くの電子機器に用いられる積層セラミックコンデンサー(MLCC)の更なる小型化・高容量化に貢献すべく、酸化チタンの微粒子化に向けた課題をお客さまとの共創により解決し、量産化を実現しました。
当連結会計年度におけるイノベーション材料セグメントの研究開発費は、2,754百万円であります。
(ケミカル)
ケミカル分野では、石油化学・基礎化学で、さまざまな産業の起点・インフラとなる製品を提供するとともに、製造工場のCO2排出量削減などカーボンニュートラルに向けた技術開発に取り組んでおります。
石油化学においては、コア技術である触媒、有機合成、高分子合成の技術を集積し、多様な市場ニーズに応えるための研究開発を推進しております。主要な誘導品事業であるアセチル及びアリルアルコール製品群では、自社開発した製造プロセスの優位性を伸長させるため、触媒の性能向上と新触媒の開発を進めております。大分コンビナートの酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸アリルのプラントは、更なるコスト競争力の強化と生産性の向上を達成すべく、触媒性能の向上を追求しております。
長期R&Dの取組みとして、NEDOの「グリーンイノベーション基金事業/CO2の分離回収等技術開発プロジェクト」において、日本製鉄㈱とともに、低圧・低濃度のCO2を低コストで分離回収するための技術開発及び、回収したCO2を原料に化学品を製造する技術検証に取り組み、カーボンニュートラルの実現に貢献してまいります。また、内閣府総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)による戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「アンモニア・水素利用分散型エネルギーシステム」において、岐阜大学、三菱化工機㈱とともに、アンモニア燃焼器用改質器ユニット及び燃料電池用改質器ユニットの研究開発で協働し、アンモニア分解技術を活用した化学品事業のビジネスモデルの創出を目指します。
当連結会計年度におけるケミカルセグメントの研究開発費は、1,942百万円であります。
(その他)
計算科学・情報科学の技術力強化と材料開発への適用に積極的に取り組んでまいりました。
半導体パッケージ用レジストの感光性樹脂の原料となるポリマー探索でも、AIを活用し、材料の最適な組成を従来の5分の1の時間で探索できる独自技術を確立し、さらに、材料探索の汎用ツールとして本技術の社内展開を開始しております。
材料開発のためのシミュレーションとして一般的に用いられる計算手法「第一原理計算」と、AIを融合した新しいシミュレーション技術「ニューラルネットワークポテンシャル(NNP)技術」を、CMPスラリーによる半導体回路の研磨メカニズムのシミュレーションに初めて導入し、解明しました。NNP技術は、これまで難しかった化学反応のシミュレーションを、第一原理計算と同程度の精度を維持しながら、10万倍以上の速度で実施できる技術です。当社は、本技術により複雑な半導体製造プロセスで起きている材料の挙動を解明し、迅速な新材料創出に繋げます。
過去蓄積してきたデータや文書を、生成AIにより対話形式で活用できる社内システムChat Resonacを構築しました。技術文書だけにとどまらずガイドライン統合業務効率化など全社での活用が進んでおります。
共創の舞台では、長期R&Dテーマとして、循環型ケミカルリサイクルを目指し、カーボンリサイクルテーマを推進しております。また6G向け半導体の新材料開発テーマとして、次世代高速通信材料テーマにも取り組んでおります。
当連結会計年度における報告セグメントに含まれない「その他」の研究開発費は全社共通を含め12,830百万円であります。
なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は、44,806百万円であります。
セグメントごとの研究開発活動は次のとおりであります。
(半導体・電子材料)
半導体・電子材料分野では、次世代事業のコアとなる基礎・基盤技術の研究開発、事業部門協働による新製品・新事業創出、社会を変える長期R&Dを目的として、研究開発部門との密接な連携の下に研究開発を推進しております。
一例としては、半導体デバイスの微細な回路形成を実現する半導体前工程材料(情報電子化学品(電子材料用高純度ガス・機能性薬品)、半導体回路平坦化用研磨材料)、半導体後工程材料(エポキシ封止材、ダイボンディング材料、銅張積層板、感光性フィルム、感光性ソルダーレジスト)、デバイスソリューション(ハードディスク、SiCエピタキシャルウェハー(以下、「SiCエピウェハー」といいます。)、化合物半導体(LED))等の付加価値を高める開発をしました。
半導体前工程分野では、半導体製造プロセス材料として各種エッチングガス、クリーニングガス、成膜材料及び洗浄剤、超高純度溶剤の開発を進め、市場展開しております。今後も引き続き、低環境負荷、高性能化に寄与する研究開発を進めます。
半導体後工程分野では、AI半導体などの高性能半導体向け材料として絶縁接着フィルム「NCF」、及び放熱シート「TIM」の生産能力を従来の3.5~5倍に拡大することを決定し、市場での競争力を一層強化してまいります。さらには、先端半導体の製造に使用する高解像度の感光性フィルムを新たに開発し、先端パッケージの有機インターポーザーにおいて、線幅と配線間隔が各1.5マイクロメートルという微細な銅回路形成を実現します。この高解像度を達成するために、計算情報科学研究センター、高分子研究所、感光性材料開発部、パッケージングソリューションセンターの4つの部門が共創し、新規ポリマー樹脂を開発しました。また、外部との更なる共創活動として、半導体製造の後工程の自動化を目的とする「半導体後工程自動化・標準化技術研究組合(SATAS)」に参画しました。半導体材料メーカーとして、先端パッケージと後工程の研究開発で培った知識・経験を活用して、SATASの組立工程と検査工程を対象としたプロセス開発に貢献してまいります。次世代半導体パッケージ分野において、半導体の製造装置・材料メーカーの枠を超えて日本で進めてきた半導体パッケージ技術開発のコンソーシアム「JOINT」、及び「JOINT2」の取り組みに加え、日米の材料・装置等の企業12社によるコンソーシアム「US-JOINT」を米シリコンバレーに設立することを発表し、2025年稼働に向けてクリーンルームや装置導入等の準備を進めております。
ハードディスクについては、唯一のハードディスク外販メーカーとして、市場をリードする新技術の開発を継続しております。世界に先駆けて実用化した垂直磁気記録方式の高性能化を進めるとともに、次世代ハードディスク向け高密度記録方式であるシングルド記録(瓦書記録)、マイクロ波アシスト記録、熱アシスト記録の開発により更なる高性能化に向けた取り組みを行っており、熱アシスト磁気記録に対応した次世代ハードディスクに関して米シーゲイト・テクノロジー社と共同開発を進めております。シングルド記録方式では、アルミ基板を用いて当社の最新磁性層設計及び結晶微細化技術を導入することで、業界最高の記録容量となる1枚あたり2.8テラバイトの製品を出荷しております。
SiCエピウェハーについては、世界最大の外販メーカーとして、最高水準の品質の製品を提供し、国内外のデバイスメーカーから高い評価を得ております。SiCエピ膜製造に関しては、(一財)電力中央研究所、㈱デンソー、㈱ニューフレアテクノロジーと共同で、研究開発テーマ「高品質SiC単結晶膜の高速製造技術の開発と応用」について「第50回(2023年度)岩谷直治記念賞」を受賞しました。2022年に開始した内製基板を用いた8インチSiCエピウェハーのサンプル出荷を進めるとともに、さらなる品質向上に向けて、(国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、「NEDO」といいます。)の「グリーンイノベーション基金事業」において研究開発を進めております。ここでは、より高速でエピウェハーを製造する高速昇華法技術の開発にも取り組んでおります。なお、先駆的な技術開発の成果により取得した特許群は、2024年米LexisNexis社PatentSight+の特許データベースを用いた有効特許に対する総特許価値でグローバルトップです。仏KnowMade社による特許分析においても高く評価されております。さらに当社は先進的な半導体基板材料を製造する仏ソイテック社と、パワー半導体に使用される8インチのSiCエピウェハーの材料となる8インチSiC貼り合わせ基板の共同開発契約を締結しました。SiCエピウェハービジネスでのサプライチェーンの多様化を目指します。今後も高性能で高い信頼性の製品を供給することで、SiCパワー半導体の普及に貢献します。
化合物半導体を用いた発光素子・材料では、高効率化、高出力化をターゲットとしたLED製品の開発に注力しております。成長する車載センサーや高性能フォトカプラなどの赤外領域の発光デバイスを主ターゲットに業界トップの品質とカスタマイズ力によりお客様の要望に応える製品を提供しております。
当連結会計年度における半導体・電子材料セグメントの研究開発費は、20,899百万円であります。
(モビリティ)
モビリティ分野では、自動運転化、電動化、軽量化、電装化、冷却性、安全性といった市場ニーズに幅広い材料ソリューションで応えるとともに、企業の社会的責任としてカーボンニュートラルへの取り組みを一層進めております。具体的には、製品や工場端材のリサイクルやバイオプラスチックの開発を推進しております。
現在、上市中の樹脂ギヤ、樹脂バックドア、負極材、ブレーキパッド、粉末冶金などの製品については、変化する市場動向に迅速に適応するため、開発を継続しております。それらに加えて、自動運転化のためのセンサー対応技術として「ミリ波透過コーティング」、車載デバイスの軽量化と冷却性を両立させた新コンセプトの冷却ユニット「樹脂ウォータージャケット」など、その他の製品技術の開発も進めております。
また、主要な自動車メーカーやTier1サプライヤーにおいて既に主流となっているモデルベース開発(MBD)を継続的に推進しております。MBDでは、自動車システム全体から末端部品の機能や必要性能をモデル上でシミュレーションを実施します。これにより、開発初期段階において3Dモデルと計算科学を活用し、仮想試作や仮想評価を行うことで、自社や顧客の開発時間を大幅に短縮することが可能です。さらに、これまでにない新システムに必要な解析手法や評価方法は、社内の計算情報科学研究センターや大学と共同で開発中です。加えて、2050年のカーボンニュートラルに向けた長期R&Dテーマとして、資源循環型材料の開発を大学との共同研究で進めており、外部機関が主催するコンソーシアムにも参加しております。
先端電池材料については、リチウムイオン電池向け導電助剤である気相法炭素繊維「VGCF-H」の新プラントを川崎事業所内に建設し生産能力を年産300トンから400トンに引き上げました。
アルミニウムでは、市場から要望されている材料、部品及び製品の開発を進めるとともに、これらの製造プロセスに係る基盤技術の研究にも注力しております。自動車メーカーと共創しリサイクル材適用増加の検討や次世代冷却器の開発などに取り組んでおります。
当連結会計年度におけるモビリティセグメントの研究開発費は、6,380百万円であります。
(イノベーション材料)
イノベーション材料分野では、広範多岐にわたる需要、個々のお客様の要望に迅速に応え、お客様の新製品開発の鍵となる材料をタイムリーに提案することを目的として、光機能材料、エネルギー領域、インフラケミカルズ、高機能ゲル、化粧品原料、及びセラミックスの研究開発を推進しております。
テレビなどの大型液晶ディスプレイ、スマートフォン端末などの有機ELに使用される各種製品は、市場で高い評価を受けております。市場が中国シフトする中で2020年6月に増設を完了した上海においても生産・供給を開始し、現地需要の取り込みに向けお客様の要望に即した新規開発品を複数市場に投入しております。また電子材料、光学材料や歯科材料などに使用されるイソシアネートモノマー「カレンズMOI」や機能性アクリレート・メタクリレート「ファンクリルFAシリーズ」の開発、生産能力の強化を行い、販売を継続しております。特に「ファンクリルFA500シリーズ(脂環式モノマー)」の耐熱性及び高信頼性の特徴を生かし、電子部品材料用途への横展開を行い、事業拡大を図っております。
エネルギー領域におきまして、電力モーターの高性能化に伴う高電圧・耐サージ性に対応できる、xEV向け高耐熱絶縁ワニスの技術開発を継続して進めております。また、リチウムイオン電池負極材用水系バインダー樹脂「ポリゾールLBシリーズ」につきましては、その低抵抗性や優れた温度特性などが評価され、急速充電対応が求められるHEV用途への国内納入を開始いたしました。今後は、市場動向を注視しつつ、xEV向けリチウムイオン電池全般への展開を推進してまいります。
インフラケミカルズでは、耐用年数が寿命を迎えた下水道管補修用不飽和ポリエステル樹脂「リゴラック」の光硬化タイプに注力しております。下水道管補修市場においては、熱硬化タイプから環境負荷の小さい光硬化タイプへの転換が進んでおり、この変化に対し樹脂技術で貢献してまいります。
高速液体クロマトグラフィー用「ショウデックスカラム」では、新製品として単糖の分離性能を改善した糖分析カラム、次世代医薬品バイオナノパーティクル精製を目的としたゲルろ過カラムの販売を開始し、新市場の獲得を進めております。環境関連では国際的に規制強化が進むPFASやハロゲン酸化物の高感度分析を可能とする各種カラムの市場展開を推進しております。今後もバイオ・医薬分野、迅速・省溶媒、高感度・高分離に重点を置いたゲル(充填剤)やカラムの研究開発を促進します。
化粧品原料では、オンリーワン製品であるビタミンC誘導体「アプレシエ」及びビタミンE誘導体「TPNa」を中心に、市場ニーズの高いアンチエイジング、保湿、アイケア、ヘアケアの分野で新機能を見出し、お客様の製品企画のきっかけを作ることで市場の拡大を図っております。
セラミックス関連では、電子デバイス、パワーデバイス市場向けには、デバイスの高密度化、高性能化に対応した高い放熱性と電気絶縁性を併せ持つフィラー材料(アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム)の開発を行っております。また、スマートフォンなど多くの電子機器に用いられる積層セラミックコンデンサー(MLCC)の更なる小型化・高容量化に貢献すべく、酸化チタンの微粒子化に向けた課題をお客さまとの共創により解決し、量産化を実現しました。
当連結会計年度におけるイノベーション材料セグメントの研究開発費は、2,754百万円であります。
(ケミカル)
ケミカル分野では、石油化学・基礎化学で、さまざまな産業の起点・インフラとなる製品を提供するとともに、製造工場のCO2排出量削減などカーボンニュートラルに向けた技術開発に取り組んでおります。
石油化学においては、コア技術である触媒、有機合成、高分子合成の技術を集積し、多様な市場ニーズに応えるための研究開発を推進しております。主要な誘導品事業であるアセチル及びアリルアルコール製品群では、自社開発した製造プロセスの優位性を伸長させるため、触媒の性能向上と新触媒の開発を進めております。大分コンビナートの酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸アリルのプラントは、更なるコスト競争力の強化と生産性の向上を達成すべく、触媒性能の向上を追求しております。
長期R&Dの取組みとして、NEDOの「グリーンイノベーション基金事業/CO2の分離回収等技術開発プロジェクト」において、日本製鉄㈱とともに、低圧・低濃度のCO2を低コストで分離回収するための技術開発及び、回収したCO2を原料に化学品を製造する技術検証に取り組み、カーボンニュートラルの実現に貢献してまいります。また、内閣府総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)による戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「アンモニア・水素利用分散型エネルギーシステム」において、岐阜大学、三菱化工機㈱とともに、アンモニア燃焼器用改質器ユニット及び燃料電池用改質器ユニットの研究開発で協働し、アンモニア分解技術を活用した化学品事業のビジネスモデルの創出を目指します。
当連結会計年度におけるケミカルセグメントの研究開発費は、1,942百万円であります。
(その他)
計算科学・情報科学の技術力強化と材料開発への適用に積極的に取り組んでまいりました。
半導体パッケージ用レジストの感光性樹脂の原料となるポリマー探索でも、AIを活用し、材料の最適な組成を従来の5分の1の時間で探索できる独自技術を確立し、さらに、材料探索の汎用ツールとして本技術の社内展開を開始しております。
材料開発のためのシミュレーションとして一般的に用いられる計算手法「第一原理計算」と、AIを融合した新しいシミュレーション技術「ニューラルネットワークポテンシャル(NNP)技術」を、CMPスラリーによる半導体回路の研磨メカニズムのシミュレーションに初めて導入し、解明しました。NNP技術は、これまで難しかった化学反応のシミュレーションを、第一原理計算と同程度の精度を維持しながら、10万倍以上の速度で実施できる技術です。当社は、本技術により複雑な半導体製造プロセスで起きている材料の挙動を解明し、迅速な新材料創出に繋げます。
過去蓄積してきたデータや文書を、生成AIにより対話形式で活用できる社内システムChat Resonacを構築しました。技術文書だけにとどまらずガイドライン統合業務効率化など全社での活用が進んでおります。
共創の舞台では、長期R&Dテーマとして、循環型ケミカルリサイクルを目指し、カーボンリサイクルテーマを推進しております。また6G向け半導体の新材料開発テーマとして、次世代高速通信材料テーマにも取り組んでおります。
当連結会計年度における報告セグメントに含まれない「その他」の研究開発費は全社共通を含め12,830百万円であります。
このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E00751] S100VHA9)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。