有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100TUQZ (EDINETへの外部リンク)
東洋建設株式会社 研究開発活動 (2024年3月期)
当社はコーポレート・メッセージとして『人と地球への責任を果たす企業へ』を掲げております。これは「技術は人のため、地球に生きるみんなのために使われるべきものであり、技術を使う我々は、それを理解して事業活動を持続していく」という精神と決意を謳っております。総合技術研究所をはじめ、本社技術部門ではこの決意に則って、研究開発に取り組む技術が地球環境に優しいこと、また生産性を向上させること、そしてより安全であることを希求して日々研鑽を積んでおります。
当連結会計年度においては「洋上風力関連事業をはじめとするカーボンニュートラルへの取り組み」「ICT及び自動化技術の導入による生産性向上」「建設DXの推進」等の社会課題に対して研究開発を推進してまいりました。
主な成果は以下のとおりです。なお国内土木事業、国内建築事業及び海外建設事業を対象に行った研究開発活動の総額は2,264百万円となりました。
(1) 海底ケーブル埋設機施工技術実証の洋上風力発電低コスト施工技術開発事業への採択
当社と株式会社関海事工業所(以下「関海事」)は、2023年、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO」)から、風力発電等技術研究開発/洋上風力発電等技術研究開発/洋上風力発電低コスト施工技術開発(ウォータージェット式海底ケーブル埋設機施工技術実証)の採択を受けました。
洋上風力発電施設の設置範囲は非常に広いうえ、複雑で変化に富む日本の海底地盤にケーブルを埋設するためには、海底条件の変化に応じた施工が重要となります。
当社は洋上風力をはじめ多くの分野で基礎技術開発実績を有し、関海事は海底ケーブル工事における豊富な実績とノウハウを有しており、日本特有の海底条件に適用するケーブル埋設技術の確立により、洋上風力発電の低コスト化を実現すべく、両者の知見を活用し海底ケーブル埋設の施工技術開発に共同で取り組んでおります。
(2) TLP方式による浮体式洋上風力発電の実証試験事業における石狩湾沖合での大水深施工実験等の実施
当社は、2023年、TLP方式の浮体式洋上風力発電の実証試験事業において、外洋船を用いた大水深施工実験 (以下「本実験」)を北海道石狩湾沖合で実施いたしました。
これは、 NEDOにより、三井海洋開発株式会社、古河電気工業株式会社、株式会社JERAとともに採択されたグリーンイノベーション基金事業の一つである「低コストと優れた社会受容性を実現するTLP方式による浮体式洋上発電設備の開発」のうち、当社が担当する係留基礎の現地実証を行うもので、本実験では、外洋船により大口径かつ長尺の鋼管杭を用いた基礎杭の施工性の検証及び設計引抜力の計測を実施いたしました。
当社はこれまで排他的経済水域(EEZ)をはじめとする外洋や大水深での様々な施工実績を有しておりますが、本実験の成果により、TLP係留基礎の施工技術開発が大きく前進するものと考えております。
また、同時期に、国内初となる繰返し荷重を用いた杭の引抜き実験も北海道石狩湾にて実施いたしました。この実験は試験体として国内最大規模の鋼管杭を用い、かつ繰返し荷重を作用させた引抜き実験であり、国内で初の試みとなりました。今後、両実験にて取得したデータ等に基づき、TLP係留基礎の設計及び施工技術を確立してまいります。
(3) 深層混合処理改良体へのCO2 固定化技術実証実験を実施
当社とエア・ウォーター株式会社(以下「エア・ウォーター」)は、エア・ウォーターが開発した小型CO2回収装置「ReCO2 STATION®」を使用して、深層混合処理船排気ガスから回収したCO2の深層混合処理改良体への固定化を目的とした実証実験を実施いたしました。
陸上用深層混合処理装置(実機)を使用した実地盤での実証実験は、ミキシングプラントでのセメントスラリー練混ぜ時に混入させたドライアイスによりCO2を溶解させ、そのセメントスラリーを実地盤に吐出・攪拌混合するもので、施工後に改良体の分析を行った結果、CO2が改良体に固定化されていることが確認できました。
2024年に自社作業船への小型CO2回収装置を搭載する予定ですが、引き続き深層混合処理船の排出ガスから回収したCO2をセメントスラリーや地盤へ様々な形態で供給し、固定量を増加させる手法の開発を行ってまいります。また、長期的なCO2固定量の変動などを把握しCO2固定量を最大化させる技術や固定量を適切に評価する技術を開発する予定です。
(4) AIを活用した技術開発(フライングビュー、AI Loading Navi(エーアイ ローディング ナビ))
◆フライングビュー映像から効率的・経済的にAIモデルを作成
当社は、株式会社GAUSS、沖電気工業株式会社(以下「OKI」)と協働し、OKIのリアルタイムリモートモニタリングシステム「フライングビュー®※1」の広域俯瞰映像に表示される作業員や船舶などの画像データを使用し、クラウドを介してAIモデルを効率的・経済的に作成できる物体検知システムを構築いたしました。
今回、フライングビューの俯瞰映像から得られた画像データを使用し、クラウドを介してAIモデルを作成できる物体検知システムを構築することで、施工中におけるフライングビューの映像を誰でも・何処でも・容易にAI学習させることが可能となりました。これにより、従来に比べ導入費用と導入までの期間を6割以上削減することができました。
※1「フライングビュー®」は、沖電気工業株式会社の登録商標です。
◆土運船への積込管理支援システム「AI Loading Navi」を開発
当社は、富士通株式会社と協働し、土運船への積込映像からAI技術を活用して積込管理を支援するシステム「AI Loading Navi(エーアイ ローディング ナビ)※2」を共同開発いたしました。
本システムは、グラブ浚渫中における土運船の船倉部分のカメラ画像を、リアルタイムにAI処理することで、土砂・水面・壁を画素単位で識別し、区画毎の土砂割合から積込位置の状態を自動判別して合図者・オペレーターを支援します。このAI処理は、高精度な画像識別ができるセマンティックセグメンテーション※3を用いており、過去2年分の積込画像を教師データとして学習させたものです。本システムの導入で、瞬時の定量的な自動判断が可能となり、作業効率の向上が期待されます。
※2「AI Loading Navi(エーアイ ローディング ナビ)」は、特許共同出願中です。
※3セマンティックセグメンテーションとは、画像を画素単位で物体毎の領域に分類できるAIの画像認識技術です。
(5) 大型リクレーマ船※4による施工状況を4次元で「見える化」する「TORe-4D」を開発
リクレーマ船による揚土作業では、水中に投入した土砂の堆積状況の把握が困難で、作業員がレッド(重錘(じゅうすい)を使用して水深を確認し、土砂の投入管理を行う方法が一般的でした。そこで、土質性状を事前に把握し投入後の堆積状況を予測することで、状況の把握が困難だった水中への土砂投入作業を可視化することができる「TORe-4D」を開発し、当社保有の大型リクレーマ船「第二東揚号」に搭載いたしました。
「TORe-4D」は船体及びスプレッダー先端部に搭載した高精度のGNSS(全球測位衛星システム)によって正確な投入位置に誘導し、レーザー計測装置とベルトコンベアスピードモニターによって土量の管理を行うシステムです。事前に計測した含水比やスランプなどの土質条件に加え、気中部や水中部といった施工情報を複合的に組み合わせてシステムに反映し、投入位置及び水深データ(X,Y,Z)に時間の要素(t)を加えて四次元的に管理・記録することができるのが特徴です。
今後、「第二東揚号」が活躍する様々な現場にこのシステムを導入し、モデル精度の向上やシステムのアップデートを進め、より精度の高いシステム構築を行うことで、働き方改革・生産性向上を実現してまいります。
※4リクレーマ船は、海面の埋立工事等において、土運船より輸送されてきた土砂を揚土装置により揚荷し、コンベア等を介して埋立地等へ排出する作業船です。
(6) 港湾コンクリート構造物 高機能型塗装「ワンダーコーティングシステム W-MG」を開発
当社は、大成ロテック株式会社及び株式会社フェクトと協働し、これまで陸上の鉄筋コンクリート構造物で施工実績のあるガラス質膜塗装を、港湾の鉄筋コンクリート構造物へ適合させた“港湾コンクリート構造物 高機能型塗装「ワンダーコーティングシステム W-MG」”を開発いたしました。
本技術に用いる塗料は、遮塩性、遮気性及び遮水性に優れており、被膜層をコンクリート表面に形成することで、塩害等の著しい腐食環境下にある港湾構造物を保護します。また、ひび割れ追従性と耐候性も確認済みの塗装材のため、長期的な保護効果が期待できます。
塗料としての基本性能を有したうえで、無色透明でかつ長期的に透明度を維持できるので、維持管理における目視点検、診断、性能低下度の評価、維持・補修のサイクルの中で、塗布後もコンクリート表面の劣化状況や変状の進行を早期に発見できます。
さらに作業工程は、プライマー、下塗り、中塗り、上塗りの4工程(4日)が一般的ですが、本技術は、塗り重ね時間が短く、プライマーと上塗り2回の3工程を1日で施工完了できるため、作業期間を大幅に短縮でき、荒天待機が生じる港湾工事特有の海象による作業工程への影響を最小限にすることができます。
これまで、供試体による要素試験や実構造物における実証実験によるデータ収集を実施してきました。今後は、実証実験での長期的な性能確認を実施するとともに、さらに多用途に適用できる工法の開発を継続し、港湾コンクリート構造物の維持管理に貢献してまいります。なお、本技術は、一般財団法人沿岸技術研究センターが実施する港湾関連民間技術の確認審査・評価事業における評価証を取得しております。
(7) 2023年度 生成AIアプリ開発による設計施工プロセスの革新
当社は、建設プロジェクトの複雑化と情報共有の課題に対し、生成AI技術を活用した新たなデジタルワークフローを開発・導入いたしました。本取り組みは、設計施工プロセスにおける情報アクセスと意思決定の効率化を実現し、生産性向上、品質改善、更には安全性の強化に貢献しております。
建設プロジェクトは、企画から設計、施工、維持管理まで、膨大な情報がやり取りされる複雑なプロセスです。これまで設計者は、過去の指摘事項、法令データ、災害事例など、多岐にわたる情報を迅速かつ正確に確認する必要があり、情報検索に多くの時間を費やしておりました。特に、業務効率化と労働時間の短縮が喫緊の課題となっており、また、経験の浅い担当者の育成や、ベテラン技術者の経験値共有も重要な課題となっておりました。
これらの課題解決のため、当社はGoogle Cloud の Vertex AI Search を中心としたRAGシステムを導入いたしました。本システムは、過去の指摘事項、デジタル庁が公開する各種法令データ、不具合・災害事例などを統合し、設計者にチャットボット形式で迅速な回答やアドバイスを提供いたします。
本システム導入による主な効果は以下のとおりです。
・情報検索時間の短縮
膨大なデータの中から、設計者の求める情報を迅速かつ正確に引き出すことで、検索時間の短縮を実現いたしました。
・誰でも簡単に利用可能な環境構築
チャットボット形式を採用することで、情報検索の専門知識がなくても、誰でも簡単に利用できる環境を構築いたしました。
・同種課題の早期解決と新たな価値創造
過去の類似事例を迅速に参照することで、同種課題の早期解決を実現いたしました。また、生成AIによる情報分析を通じて、新たな価値創造や未然の事故防止にも貢献しております。
・経験値の共有と人材育成
ベテラン技術者の経験値をシステムに蓄積することで、経験の浅い担当者の育成を支援し、人材育成の効率化を図っております。
本アプリは、社内での試験運用を経て、2024年度より本格的な導入を開始しており、今後は検索範囲の拡大や外部情報との連携も視野に入れ、建設業界全体のDX化を加速させることを目指してまいります。
生成AI技術を活用した取り組みは、当社の成長戦略における重要な柱の一つであり、今後も更なる技術開発と社会貢献に尽力してまいります。
(8) 設計初期段階のトイレレイアウト検討を支援する生成AI設計支援システムを開発
当社は、株式会社テクトム(以下「テクトム」)が開発するディープラーニング(深層学習)を用いた画像生成AI技術を適用して、同時に複数のトイレレイアウト案を自動生成させることに成功いたしました。
建設業界は長時間労働や担い手不足が課題となっており、生産性向上と技術継承が求められております。意匠設計においても、顧客から住居や物流倉庫、商業施設等のレイアウトに対して様々な要望があることから提案のレパートリーと発想力が求められ、良質なレイアウトの企画検討に時間がかかる、あるいは短時間に最良なレイアウトにたどり着けないといった課題がありました。
このような背景から、設計者のクリエイティブな発想を支援しながら検討業務を効率化することを目的に、2021年よりトイレレイアウトの自動設計AIにおける実証実験を行ってまいりました。本実証実験では、従来の遺伝的アルゴリズムによるアプローチのみではなく、深層学習でのアプローチも用いており、当社の熟練設計者が過去に作成した設計図面を中心に、およそ1,400枚をAIに学習させました。これにより、自動設計結果に求める膨大なルールを記述する必要がなく、過去の熟練技術者の傾向を学習した人間らしいデザインを生成することが可能となります。
このように学習させた結果、設計者が検討させたいエリアを指定するだけで複数のレイアウト案を自動生成させることに成功いたしました。また、その後の開発において、男女の別、大便器数、小便器数、洗面器数の条件を指定することで、指定条件を満たすレイアウト案を自動生成させることが可能となりました。
当社は今回の実証実験結果を受け、テクトムが提供するAIプラットフォーム”Tektome”を活用したトイレレイアウト自動設計AIをAI Design Assistantとして位置付け運用を開始いたしました。また、将来的には様々な用途の施設においてレイアウトを自動生成できるシステムへと進化させ、単純作業にかかる労働時間を削減しながら、設計者がよりクリエイティブな作業に集中できるように支援する役割を担わせることにより、設計業務の品質向上を目指すとともに業務の省人化・省力化を目指してまいります。
当連結会計年度においては「洋上風力関連事業をはじめとするカーボンニュートラルへの取り組み」「ICT及び自動化技術の導入による生産性向上」「建設DXの推進」等の社会課題に対して研究開発を推進してまいりました。
主な成果は以下のとおりです。なお国内土木事業、国内建築事業及び海外建設事業を対象に行った研究開発活動の総額は2,264百万円となりました。
(1) 海底ケーブル埋設機施工技術実証の洋上風力発電低コスト施工技術開発事業への採択
当社と株式会社関海事工業所(以下「関海事」)は、2023年、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO」)から、風力発電等技術研究開発/洋上風力発電等技術研究開発/洋上風力発電低コスト施工技術開発(ウォータージェット式海底ケーブル埋設機施工技術実証)の採択を受けました。
洋上風力発電施設の設置範囲は非常に広いうえ、複雑で変化に富む日本の海底地盤にケーブルを埋設するためには、海底条件の変化に応じた施工が重要となります。
当社は洋上風力をはじめ多くの分野で基礎技術開発実績を有し、関海事は海底ケーブル工事における豊富な実績とノウハウを有しており、日本特有の海底条件に適用するケーブル埋設技術の確立により、洋上風力発電の低コスト化を実現すべく、両者の知見を活用し海底ケーブル埋設の施工技術開発に共同で取り組んでおります。
(2) TLP方式による浮体式洋上風力発電の実証試験事業における石狩湾沖合での大水深施工実験等の実施
当社は、2023年、TLP方式の浮体式洋上風力発電の実証試験事業において、外洋船を用いた大水深施工実験 (以下「本実験」)を北海道石狩湾沖合で実施いたしました。
これは、 NEDOにより、三井海洋開発株式会社、古河電気工業株式会社、株式会社JERAとともに採択されたグリーンイノベーション基金事業の一つである「低コストと優れた社会受容性を実現するTLP方式による浮体式洋上発電設備の開発」のうち、当社が担当する係留基礎の現地実証を行うもので、本実験では、外洋船により大口径かつ長尺の鋼管杭を用いた基礎杭の施工性の検証及び設計引抜力の計測を実施いたしました。
当社はこれまで排他的経済水域(EEZ)をはじめとする外洋や大水深での様々な施工実績を有しておりますが、本実験の成果により、TLP係留基礎の施工技術開発が大きく前進するものと考えております。
また、同時期に、国内初となる繰返し荷重を用いた杭の引抜き実験も北海道石狩湾にて実施いたしました。この実験は試験体として国内最大規模の鋼管杭を用い、かつ繰返し荷重を作用させた引抜き実験であり、国内で初の試みとなりました。今後、両実験にて取得したデータ等に基づき、TLP係留基礎の設計及び施工技術を確立してまいります。
(3) 深層混合処理改良体へのCO2 固定化技術実証実験を実施
当社とエア・ウォーター株式会社(以下「エア・ウォーター」)は、エア・ウォーターが開発した小型CO2回収装置「ReCO2 STATION®」を使用して、深層混合処理船排気ガスから回収したCO2の深層混合処理改良体への固定化を目的とした実証実験を実施いたしました。
陸上用深層混合処理装置(実機)を使用した実地盤での実証実験は、ミキシングプラントでのセメントスラリー練混ぜ時に混入させたドライアイスによりCO2を溶解させ、そのセメントスラリーを実地盤に吐出・攪拌混合するもので、施工後に改良体の分析を行った結果、CO2が改良体に固定化されていることが確認できました。
2024年に自社作業船への小型CO2回収装置を搭載する予定ですが、引き続き深層混合処理船の排出ガスから回収したCO2をセメントスラリーや地盤へ様々な形態で供給し、固定量を増加させる手法の開発を行ってまいります。また、長期的なCO2固定量の変動などを把握しCO2固定量を最大化させる技術や固定量を適切に評価する技術を開発する予定です。
(4) AIを活用した技術開発(フライングビュー、AI Loading Navi(エーアイ ローディング ナビ))
◆フライングビュー映像から効率的・経済的にAIモデルを作成
当社は、株式会社GAUSS、沖電気工業株式会社(以下「OKI」)と協働し、OKIのリアルタイムリモートモニタリングシステム「フライングビュー®※1」の広域俯瞰映像に表示される作業員や船舶などの画像データを使用し、クラウドを介してAIモデルを効率的・経済的に作成できる物体検知システムを構築いたしました。
今回、フライングビューの俯瞰映像から得られた画像データを使用し、クラウドを介してAIモデルを作成できる物体検知システムを構築することで、施工中におけるフライングビューの映像を誰でも・何処でも・容易にAI学習させることが可能となりました。これにより、従来に比べ導入費用と導入までの期間を6割以上削減することができました。
※1「フライングビュー®」は、沖電気工業株式会社の登録商標です。
◆土運船への積込管理支援システム「AI Loading Navi」を開発
当社は、富士通株式会社と協働し、土運船への積込映像からAI技術を活用して積込管理を支援するシステム「AI Loading Navi(エーアイ ローディング ナビ)※2」を共同開発いたしました。
本システムは、グラブ浚渫中における土運船の船倉部分のカメラ画像を、リアルタイムにAI処理することで、土砂・水面・壁を画素単位で識別し、区画毎の土砂割合から積込位置の状態を自動判別して合図者・オペレーターを支援します。このAI処理は、高精度な画像識別ができるセマンティックセグメンテーション※3を用いており、過去2年分の積込画像を教師データとして学習させたものです。本システムの導入で、瞬時の定量的な自動判断が可能となり、作業効率の向上が期待されます。
※2「AI Loading Navi(エーアイ ローディング ナビ)」は、特許共同出願中です。
※3セマンティックセグメンテーションとは、画像を画素単位で物体毎の領域に分類できるAIの画像認識技術です。
(5) 大型リクレーマ船※4による施工状況を4次元で「見える化」する「TORe-4D」を開発
リクレーマ船による揚土作業では、水中に投入した土砂の堆積状況の把握が困難で、作業員がレッド(重錘(じゅうすい)を使用して水深を確認し、土砂の投入管理を行う方法が一般的でした。そこで、土質性状を事前に把握し投入後の堆積状況を予測することで、状況の把握が困難だった水中への土砂投入作業を可視化することができる「TORe-4D」を開発し、当社保有の大型リクレーマ船「第二東揚号」に搭載いたしました。
「TORe-4D」は船体及びスプレッダー先端部に搭載した高精度のGNSS(全球測位衛星システム)によって正確な投入位置に誘導し、レーザー計測装置とベルトコンベアスピードモニターによって土量の管理を行うシステムです。事前に計測した含水比やスランプなどの土質条件に加え、気中部や水中部といった施工情報を複合的に組み合わせてシステムに反映し、投入位置及び水深データ(X,Y,Z)に時間の要素(t)を加えて四次元的に管理・記録することができるのが特徴です。
今後、「第二東揚号」が活躍する様々な現場にこのシステムを導入し、モデル精度の向上やシステムのアップデートを進め、より精度の高いシステム構築を行うことで、働き方改革・生産性向上を実現してまいります。
※4リクレーマ船は、海面の埋立工事等において、土運船より輸送されてきた土砂を揚土装置により揚荷し、コンベア等を介して埋立地等へ排出する作業船です。
(6) 港湾コンクリート構造物 高機能型塗装「ワンダーコーティングシステム W-MG」を開発
当社は、大成ロテック株式会社及び株式会社フェクトと協働し、これまで陸上の鉄筋コンクリート構造物で施工実績のあるガラス質膜塗装を、港湾の鉄筋コンクリート構造物へ適合させた“港湾コンクリート構造物 高機能型塗装「ワンダーコーティングシステム W-MG」”を開発いたしました。
本技術に用いる塗料は、遮塩性、遮気性及び遮水性に優れており、被膜層をコンクリート表面に形成することで、塩害等の著しい腐食環境下にある港湾構造物を保護します。また、ひび割れ追従性と耐候性も確認済みの塗装材のため、長期的な保護効果が期待できます。
塗料としての基本性能を有したうえで、無色透明でかつ長期的に透明度を維持できるので、維持管理における目視点検、診断、性能低下度の評価、維持・補修のサイクルの中で、塗布後もコンクリート表面の劣化状況や変状の進行を早期に発見できます。
さらに作業工程は、プライマー、下塗り、中塗り、上塗りの4工程(4日)が一般的ですが、本技術は、塗り重ね時間が短く、プライマーと上塗り2回の3工程を1日で施工完了できるため、作業期間を大幅に短縮でき、荒天待機が生じる港湾工事特有の海象による作業工程への影響を最小限にすることができます。
これまで、供試体による要素試験や実構造物における実証実験によるデータ収集を実施してきました。今後は、実証実験での長期的な性能確認を実施するとともに、さらに多用途に適用できる工法の開発を継続し、港湾コンクリート構造物の維持管理に貢献してまいります。なお、本技術は、一般財団法人沿岸技術研究センターが実施する港湾関連民間技術の確認審査・評価事業における評価証を取得しております。
(7) 2023年度 生成AIアプリ開発による設計施工プロセスの革新
当社は、建設プロジェクトの複雑化と情報共有の課題に対し、生成AI技術を活用した新たなデジタルワークフローを開発・導入いたしました。本取り組みは、設計施工プロセスにおける情報アクセスと意思決定の効率化を実現し、生産性向上、品質改善、更には安全性の強化に貢献しております。
建設プロジェクトは、企画から設計、施工、維持管理まで、膨大な情報がやり取りされる複雑なプロセスです。これまで設計者は、過去の指摘事項、法令データ、災害事例など、多岐にわたる情報を迅速かつ正確に確認する必要があり、情報検索に多くの時間を費やしておりました。特に、業務効率化と労働時間の短縮が喫緊の課題となっており、また、経験の浅い担当者の育成や、ベテラン技術者の経験値共有も重要な課題となっておりました。
これらの課題解決のため、当社はGoogle Cloud の Vertex AI Search を中心としたRAGシステムを導入いたしました。本システムは、過去の指摘事項、デジタル庁が公開する各種法令データ、不具合・災害事例などを統合し、設計者にチャットボット形式で迅速な回答やアドバイスを提供いたします。
本システム導入による主な効果は以下のとおりです。
・情報検索時間の短縮
膨大なデータの中から、設計者の求める情報を迅速かつ正確に引き出すことで、検索時間の短縮を実現いたしました。
・誰でも簡単に利用可能な環境構築
チャットボット形式を採用することで、情報検索の専門知識がなくても、誰でも簡単に利用できる環境を構築いたしました。
・同種課題の早期解決と新たな価値創造
過去の類似事例を迅速に参照することで、同種課題の早期解決を実現いたしました。また、生成AIによる情報分析を通じて、新たな価値創造や未然の事故防止にも貢献しております。
・経験値の共有と人材育成
ベテラン技術者の経験値をシステムに蓄積することで、経験の浅い担当者の育成を支援し、人材育成の効率化を図っております。
本アプリは、社内での試験運用を経て、2024年度より本格的な導入を開始しており、今後は検索範囲の拡大や外部情報との連携も視野に入れ、建設業界全体のDX化を加速させることを目指してまいります。
生成AI技術を活用した取り組みは、当社の成長戦略における重要な柱の一つであり、今後も更なる技術開発と社会貢献に尽力してまいります。
(8) 設計初期段階のトイレレイアウト検討を支援する生成AI設計支援システムを開発
当社は、株式会社テクトム(以下「テクトム」)が開発するディープラーニング(深層学習)を用いた画像生成AI技術を適用して、同時に複数のトイレレイアウト案を自動生成させることに成功いたしました。
建設業界は長時間労働や担い手不足が課題となっており、生産性向上と技術継承が求められております。意匠設計においても、顧客から住居や物流倉庫、商業施設等のレイアウトに対して様々な要望があることから提案のレパートリーと発想力が求められ、良質なレイアウトの企画検討に時間がかかる、あるいは短時間に最良なレイアウトにたどり着けないといった課題がありました。
このような背景から、設計者のクリエイティブな発想を支援しながら検討業務を効率化することを目的に、2021年よりトイレレイアウトの自動設計AIにおける実証実験を行ってまいりました。本実証実験では、従来の遺伝的アルゴリズムによるアプローチのみではなく、深層学習でのアプローチも用いており、当社の熟練設計者が過去に作成した設計図面を中心に、およそ1,400枚をAIに学習させました。これにより、自動設計結果に求める膨大なルールを記述する必要がなく、過去の熟練技術者の傾向を学習した人間らしいデザインを生成することが可能となります。
このように学習させた結果、設計者が検討させたいエリアを指定するだけで複数のレイアウト案を自動生成させることに成功いたしました。また、その後の開発において、男女の別、大便器数、小便器数、洗面器数の条件を指定することで、指定条件を満たすレイアウト案を自動生成させることが可能となりました。
当社は今回の実証実験結果を受け、テクトムが提供するAIプラットフォーム”Tektome”を活用したトイレレイアウト自動設計AIをAI Design Assistantとして位置付け運用を開始いたしました。また、将来的には様々な用途の施設においてレイアウトを自動生成できるシステムへと進化させ、単純作業にかかる労働時間を削減しながら、設計者がよりクリエイティブな作業に集中できるように支援する役割を担わせることにより、設計業務の品質向上を目指すとともに業務の省人化・省力化を目指してまいります。
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