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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100OETS (EDINETへの外部リンク)

有価証券報告書抜粋 五洋建設株式会社 研究開発活動 (2022年3月期)


事業等のリスクメニュー株式の総数等


当連結会計年度は、デジタルとグリーンに着目した技術の積極的導入を技術開発方針として、ブランド技術の開発や技術提案力の向上に資する技術開発を推進した。
なお、当連結会計年度における研究開発費は、24億円であった。
また、当連結会計年度における主要な研究開発内容および成果は次のとおりである。

(国内土木事業、国内建築事業及び海外建設事業)
1.土木分野

(1)BIM/CIMへの取組み

国土交通省は「発注工事の原則BIM/CIM化」を2023年までに達成するという目標を掲げ、BIM/CIM導入の取り組みを加速させている。当社は2016年度より桟橋工事に港湾分野としては初の全面的なBIM/CIMを導入して効果の検証を行うなど、積極的にBIM/CIMに取り組んできており、当連結会計年度も土木分野での取組案件数約100件を四年連続で達成した。
当連結会計年度においては、3次元の空間データに時間軸を持たせた4Dシミュレーションによる施工工程確認、XR(VR:Virtual Reality,MR:Mixed Realityなどの総称)を活用した安全教育や埋設物などの可視化、現地計測点群データとの重畳による干渉チェックなど、広範な用途にてBIM/CIMを活用し、多くの現場に展開した。当社はこれからも生産性向上や現場職員の負担軽減に寄与できるよう積極的にBIM/CIMの活用・導入に取り組む予定である。

(2)地盤情報の可視化ツール(Gi-CIM)の開発
地盤改良工事は施工対象が地中となるため、既設埋設物との干渉リスクがあり、また出来形や品質を直接確認することができない。当社はこれらの課題に対して、既設埋設物等のCIMモデルに地盤改良の調査・設計・施工管理等の情報を3次元的に統合して可視化することができるGi-CIM(Ground improvement Construction Information Modeling)を開発し、既に多くの工事で活用してきた。
曲がり削孔式浸透固化処理工法による空港の滑走路、誘導路等の地盤改良工事では、危険箇所(削孔と既設埋設物との干渉)の見える化によるトラブル回避、削孔出来形(設計との誤差把握)を反映した薬液注入計画の最適化など、安全・品質に関する効果を確認した。また、当連結会計年度においては、曲がり削孔による削孔出来形をリアルタイムに可視化する機能を付加し、施工リスクのさらなる低減を図ってきた。今後も、地盤情報と施工情報を3次元的かつリアルタイムに統合することにより地盤改良工事の見える化を行い、安全・品質の向上に取り組んでいく。なお、本技術を適用した「2018年北海道胆振東部地震により被災した札幌市清田区里塚地区の市街地復旧プロジェクト」は当連結会計年度において「地盤工学会技術業績賞」を受賞した。

(3)革新的ICT技術の山岳トンネル工事への導入

当社は、国土交通省の官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)を活用した「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」に四年連続で採択された。
四年目となる当連結会計年度は、四国地方整備局発注の「平成29-32年度見の越トンネル工事」において、自律制御バックホウによる自動コソク作業を現場試行し、切羽付近の安全性の向上と作業員の省人化を実現した。また、デジタルツインによる没入型遠隔臨場を開発・導入し、施工管理IоTデータをデジタルツインにリアルタイムに反映させ、タブレットなどを用いた関係者の常時現場確認を可能にした。さらに、VRデバイスを用いてデジタルツインに没入することにより、実寸での現場状況確認や切羽付近における多人数での打合せを安全に行うことが可能になった。引き続き当社は、これらの知見を活かし、ICT技術の適用工種を拡大していく予定である。


(4)センシング技術を用いた山岳トンネルの切羽評価システムを開発

山岳トンネル工事の切羽評価では、経験と知見が豊富な熟練技術者の減少により、属人的な技術判断を必要としない客観的な評価手法が求められている。
当社は、複数のセンシング技術を組み合わせた山岳トンネルの切羽評価システムを開発した。これまで、熟練技術者が岩石の観察や現位置試験などによって必要な項目を評価していたが、本システムでは削岩機の削孔検層、3D LiDAR、ステレオカメラ、スペクトルカメラなどの複数のセンシング技術とAI技術を用いることで、客観的な切羽評価を可能とした。当社は、山岳トンネル以外の分野でもさまざまなセンシング技術を積極的に導入して、デジタルデータに基づく施工品質の向上と作業の効率化、省力化を目指していく。

(5)海外大型プロジェクトへの国内技術導入

海外のプロジェクトでは、国内で経験のない施工条件や課題が課せられる場合が多く、また設計や施工計画・管理に必要な気海象情報が不足することが多い。バングラデシュのマタバリプロジェクトの建設場所は波浪条件の厳しい外洋に面しており、潮流が速く海域は著しく濁っている。このような環境下にあるため、現地に波高・流速計、濁度計などを設置して時系列データを取得するとともに、定期的な深浅測量や採水調査などを実施し、海底地形変化に関する総合的なモニタリング調査を行った。これらの物理データを基に開発した航路埋没予測解析モデルをブラッシュアップし、埋め戻り土砂量を考慮した浚渫計画に反映した。
また、マダガスカルのトアマシナ港拡張事業、インドネシアのパティンバン新港事業などの大型プロジェクトに対して、海外機関が公開している気海象推算データの導入・精度検証を行った上で、国内で活用実績が豊富な気海象予測システムや稼働率算定システム、数値波動水路CADMAS-SURF等の数値解析技術を適用し、構造物の設計や施工順序などの施工計画に反映した。

(6)桟橋の調査診断システムおよび残存耐力評価技術の開発

港湾施設の目視調査は、専門知識を有するものが小型船に乗り、船上から構造物を観察して劣化状況を把握するが、専門家の確保が困難であること、特に桟橋下面は狭い空間で上向きの調査となるため労力・時間を要することが問題となっていた。そこで「i-Boat(旧称:無線LANボート)」を航行させ、搭載したカメラにより桟橋下面の劣化状況を撮影し、得られた画像から構造物の劣化度を診断できるシステムを開発し、これまで複数の桟橋調査に適用してきた。
また、点検・診断結果からAIを用いて桟橋の残存耐力を評価する技術を開発した。これは、桟橋が地震や経年劣化によってどのように損傷するかを予測するものである。施設管理者にとって供用継続の可否や補修・補強の意思決定がしやすいため、不具合が生じてから対策を行う事後保全から、合理的・計画的な予防保全への転換が期待できる。なお、本技術は当連結会計年度において「日本港湾協会論文賞」を受賞した。
厳しい塩害環境下にある港湾施設は老朽化した施設が増加傾向にあるため、今後も港湾施設の適切な維持管理・更新に貢献していく予定である。

(7)新船種作業船の開発・建造

国内洋上風力発電プロジェクトは、港湾区域に引き続き、一般海域においても洋上風力発電の開発を促進する法律が整備され、全国各地で取り組みが本格化している。また、洋上風力発電の導入が進む欧州では、風車の大型化が進んでいる。
これらの動向を見据え、洋上風車および基礎構造の大型化に対応するため、10~15MWクラスの風車を複数基運搬・設置可能な1,600t吊SEP型多目的起重機船を、前々連結会計年度に建造開始し、2023年3月就役予定である。
さらに、連結子会社であるジャパンオフショアマリン㈱において、現在DEME Offshore社が保有する外国船籍のSEP船「Sea Challenger」を取得の上、1,600t吊に大規模改造し、2025年春の供用開始を目指して日本船籍化して保有する予定である。また、洋上風力発電向けのケーブル敷設船の保有に向けて検討を進めている。
当社グループは、保有する「CP-8001」と自航式多目的起重機船「CP-5001」に加え、新たな1,600t吊SEP型多目的起重機船を2隻とケーブル敷設船を投入することで、洋上風力建設工事に積極的に参入していく予定である。


2.建築分野

(1)設計、施工へのBIM活用

当社は、フロントローディングによる品質および生産性の向上を目指し、計画・設計段階や施工段階でのBIM活用に取り組んでいる。
当連結会計年度は、6件の設計施工案件に対してBIMを適用し、基本設計・実施設計を行った。まず、基本設計段階において意匠設計と構造設計の3次元モデルを統合して納まりを調整し、その後、実施設計段階において建築(意匠・構造)と設備(電気・機械)の統合・調整をおこなった。これにより、意匠・構造・設備間で整合性が取れた3次元モデルから任意の2次元設計図を作成することが可能となり、品質の向上につなげることができた。さらに、実施設計が完了した4件については設計の3次元モデルを施工に引き継ぎ、施工図の作成に活用した。また、施工支援として15件の工事に対し、施工検討や納まり調整等にBIMを導入・活用した。今後も、設計施工案件や施工案件でBIM活用を進め、さらなる品質と生産性の向上を目指していく。

(2)ICTを用いた施工管理システムの開発と導入
当社は、これまでにBIMモデルを活用して建築工事を統括管理する「五洋建設統合施工管理システム」(PiCOMS(ピーコムス):Penta-ocean integrated COnstruction Management System)を開発し、生産性向上に資するICT技術として工事現場へ導入してきた。
当連結会計年度は5件の建築工事へ導入、プレキャスト外壁工事や杭工事にも適用範囲を拡張し、それぞれの現場での運用を通じて生産性向上に対する効果を確認した。今後も他工種および品質管理にも展開し、さらなる生産性向上に向けて現場導入を加速させる予定である。

(3)環境配慮型BFコンクリート「CELBIC」の開発と活用

前連結会計年度において、脱炭素社会の形成と地球環境問題の改善に寄与することを目的とし、建築コンクリート構造物に求められる所要の品質を確保しつつ、コンクリート材料に由来する二酸化炭素の排出量の約9~63%を削減するCELBIC(セルビック:Consideration for Environmental Load using Blast furnace slag In Concrete)を13社共同で開発した。
当連結会計年度では、当社初めての実績(共同開発グループ内で2例目)としてヒューリック錦糸町へB種クラスを適用し、建築物のコンクリート材料に由来する二酸化炭素の51%削減を達成した。今後もカーボンニュートラル実現へ向けCELBICを適材適所に活用し、普及展開を図っていく予定である。

(4)室内(空気)環境改善に関する技術開発

室内の環境の良し悪しは、健康や知的生産性等多くの面で人の活動に影響を与える。その中でも、空気環境に位置付けられる花粉やPM2.5などの微粒子の侵入や不快な臭気、有害な化学物質の発生、さらに最近はコロナウイルスや菌などの脅威にも晒されることがあり、室内環境を改善することが重要な課題となっている。そこで当社では、医療施設等不特定多数が利用する施設を対象に菌や化学物質の除去に有効な空気清浄システムの開発に取り組んでいる。前連結会計年度は、第三者試験機関において空気清浄システムの除菌性能を確認し、同システムの最適配置を検討するための解析ツールの整備を図った。
当連結会計年度では、実建物(飲食店)への適用を実現し、施設での運用を通じて除菌性能に対する効果を確認した。今後は、当社が提供する施設建物への適用に向け取り組みを加速させていく予定である。


(5) ZEB化技術への取り組み
地球温暖化防止に向けた脱炭素化への動きを背景に、省エネルギー・ZEB化に対する顧客の関心が高まっている。前々連結会計年度末に竣工し、設計において建築物省エネルギー制度(BELS)の最高ランク「ZEB」(Net Zero Energy Building)の認証を受けた久光製薬ミュージアムでは、運用データの分析結果においても二年連続して、「ZEB」を達成していることを確認した。
当連結会計年度では、BELSのNearly ZEBの認証を受けたJR九州社員研修センターやホーコス株式会社本社ビルをZEBの実績を活かして施工した。また、そのほかにも建物のZEB化提案や施工を進めている。今後とも、各施設のZEB化で得たデータ、知見を活かして、顧客への設計提案、技術提案に積極的に取り組んでいく予定である。

3.環境分野

(1)浚渫土の有効利用技術

カルシア改質土は、浚渫土にカルシア改質材(転炉系製鋼スラグを成分管理、粒度調整した材料)を混合することで、浚渫土の物理性・化学性を改善した材料である。港湾工事によって発生する浚渫土を有効活用し、埋立材や干潟・浅場の中詰材、潜堤材等として使用されている。前連結会計年度は、大規模施工(2,500~4,000m3/日)に対応可能なカルシア落下混合船「オーシャン3号」を建造した。従来は、カルシア改質土の製造・運搬・投入作業をバックホウ、土運船、グラブ浚渫船など複数の重機と作業船で行っていたが、カルシア改質土の製造から投入までの作業を一隻で行うことが可能となった。
ただし、「オーシャン3号」が有する高い施工能力を発揮するためには、カルシア改質土の投入時の材料分離と海域の濁りを抑制する必要があった。そこで当連結会計年度は、浅場造成工事において新たに開発したトレミー管を用いてカルシア改質土の水中投入を行った。カルシア改質土の品質確保と海洋環境の保全を満足しつつ急速施工を実現することが確認できた。今後もカルシア落下混合船とトレミー管を活用し、埋立や干潟・浅場の造成等を効率的に進めていく予定である。

(2)泥土のリサイクル技術
河川・湖沼の浚渫土や陸上の掘削工事にともなって発生する泥土の利活用は重要な課題であり、その解決のため当社はこれまで様々な技術開発に取り組んできた。
吸水性泥土改質材「ワトル」は、製紙会社から発生するペーパースラッジ焼却灰(PS灰)に特殊薬剤を混合し水和処理した製品で、泥土に対し、吸水による物理的改質(瞬時の改良効果)に加え、時間経過にともなう化学的改質(緩やかな強度発現)を合わせ持つことが特徴である。高含水比状態の建設汚泥や発生土のような泥土を処理する場合、天日干しやセメント・石灰等による固化処理が用いられてきたが、時間やコスト、アルカリ化等の課題があった。「ワトル」はこのような課題を解決する多くの使用実績があるが、さらにカーボンリサイクルへの貢献など環境負荷の低減、利用用途の拡大など、より高機能な材料の開発へと取り組みを進めている。なお、本技術は当連結会計年度において「国土技術開発賞優秀賞」を受賞した。

4.技術評価証等の取得
NETIS更新
・吸水性泥土改質材「ワトル」 TK-160010-VR

NETIS登録
・CIMを活用した施工情報収集共有システム(i-PentaCOL) QS-210005-A
・航跡波予測システム KTK-210008-A
・Gi-CIM KTK-210009-A
・ポンプ浚渫船の自動浚渫制御システム KTK-210010-A
・土質定数推定システム「サウンディングAI」 KTK-210017-A
・トラックスケール自動計量・伝票発行システム「K-GO!システム」 KTK-210018-A


建築物防災技術評価
・鋼構造物の耐震補強を対象とした高力ボルトによる挟み込み接合(PNW工法)2021年6月

性能評定
・非耐力壁の一部に水平部分を有するせっこうボードを用いた耐火壁構造(クランク耐火壁)
の耐火性能に関する技術的評価:一般財団法人ベターリビング、CBL PF012-20号 2022年3月

大臣認定
・高強度コンクリート(Fc60~120):国土交通大臣認定(一般) 2021年8月

事業等のリスク株式の総数等


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