有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100W549 (EDINETへの外部リンク)
JX金属株式会社 事業等のリスク (2025年3月期)
1. フォーカス事業における競争優位性の喪失リスク
当社では、特にフォーカス事業である半導体材料/情報通信材料セグメントにおいて、顧客との永続的な強い信頼関係を構築することで、顧客要望や最新の開発動向などをいち早く入手し、的確にそれに応え続けることで競争優位性を確保しています。また、そのために、研究開発と先端技術の知的財産権の権利化・第三者による権利侵害の防止、事業運営に必要な人材の採用・育成、複数購買をはじめとするサプライチェーンの強靭化、品質管理体制の強化及び供給責任を果たすための生産能力の拡大等に積極的に取り組んでいます。しかしながら、当社が顧客要望に十分に応えられないケースが続いた場合には、シェアの喪失や販売マージンの縮小、あるいは代替製品の登場や顧客ニーズの変化等の事業環境の変化によっては、競争優位性を失う可能性があります。
現在の製品群が競争優位性を失った場合の対応として、注力領域を定め、新規製品・事業開発の取り組みを進めており、その実現に向けて、社内リソースは元より、当社グループ間の技術のコラボレーション、大学との共同研究及び外部企業とのパートナーシップ等、様々な外部リソースについても積極的に活用しています。しかしながら、新規製品・事業創出に向けた取り組みが、当社の収益基盤に成長するまでには、相応の時間と経営資源の投入が必要となります。そのため、新規製品・事業が創出できていない状況で、半導体材料/情報通信材料セグメントでの競争優位性を喪失した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
2. 中長期事業目標の未達リスク
当社グループは、半導体材料・情報通信材料のグローバルリーダーとして、先端素材で社会の発展と革新に貢献することを目指すべく、2024年5月に中長期の事業戦略及び事業目標を公表いたしました。当該中長期の事業戦略及び事業目標は、半導体市場の成長を中心とする事業環境の見通し、為替動向、金利動向、銅価格の見通し等、策定時点における経済・事業環境の認識を中心とした様々な前提に基づいて策定したものであります。しかしながら、半導体をはじめとする先端素材関連市場の成長鈍化や急激な円高進行による外貨建て取引の収益減等、経済・事業環境認識の前提が想定どおりとならない可能性を常に抱えています。
加えて、当社は、収益性及び資本効率の改善を目的として、「構造改革プロジェクト」を実行しています。当該プロジェクトにおいては運転資本の改善、設備投資の最適化、拡販・売価見直し及び全社での間接費を含むコストの最適化を進めており、約1,200件の施策を通じて、2024年3月期においては、約30億円の営業利益の改善(対2023年3月期実績)、約200億円の運転資本改善(対2023年3月期実績)及び約550億円の投資額削減(対2024年3月期予算)を実現いたしました。2025年3月期においても更なる営業利益改善を目指して追加的な施策を実施しており、その効果を当該事業目標の中に織込んでいます。施策の件数や各施策がもたらす財務指標の改善効果については実現可能性や進捗に応じて段階的に管理しています。
このような前提及び施策が想定どおりに実現しない場合には、当該中長期の事業戦略及び事業目標の達成が困難となり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
3. 市場環境の変化に関するリスク
(1) 半導体市場等の変動
持続可能な社会の実現に向けて、IT、モビリティ、ヘルスケア、エネルギー、建築など様々な産業でデジタルデータの活用が進展し、各分野に用いられる先端素材のニーズがさらに拡大しています。なかでも半導体市場は、IoT・AI社会の発展や第5世代移動通信システム(5G)の普及、DXの実現に向けたデータ社会への移行が加速するなか、技術革新が続くことで中長期的には更なる成長が見込まれています。当社は、先端素材を通じた社会の発展に貢献することを目指し、半導体メーカーをはじめとする世界各国に存在する顧客に対して製品を製造・販売していますが、世界経済の動向や最終製品の需要増減等の要因により、成長の過程で需給バランスが崩れ市場規模が急激に変動することがあります。例えば、半導体市場が縮小した場合には、需給バランスの崩れから生産過剰や在庫増加等が発生する可能性があります。また一方では、設備投資の実行タイミングの遅れや、市場の成長規模の見誤りなどにより、需要の増加に対応できない場合には、製品の供給において顧客のニーズに応えることができず、機会損失が生じる可能性があります。かかる状況を想定し、当社では、市場動向や顧客の需要動向の調査・分析結果を基に、生産量・在庫量の適正化を図っています。また、製品ラインナップの多様化や生産体制の増強に向けて時機をとらえた柔軟な設備投資判断に努めています。しかしながら、将来において当社の想定を超える市場環境の著しい変化が起きた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 金属価格・為替等の変動
当社グループでは、先端素材の製造・開発を成長戦略のコアとして位置づけ、そこに良質な原料を供給するため、資源開発から製錬・リサイクル事業を一貫して展開しています。製品の販売や原材料及び資材の購入は、その多くを米国ドルや現地通貨建てで行っています。そのため、金属価格や為替変動等のリスクにさらされており、先物ヘッジ取引の活用等によるリスク低減に努めています。しかしながら、金属価格及び為替等の急激かつ大幅な変動が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。4. M&Aや事業提携に関するリスク
当社は、事業の成長を加速させるうえで有効な手段となる場合や競争優位性に寄与する場合には、必要に応じてM&Aや事業提携(出資、合弁及びスタートアップ投資等を含む)を実施しています。これらの実施に当たっては、相手企業の財務状況や事業内容について可能な限り情報収集と分析を踏まえた事前審査を行っています。しかしながら、事前審査にも関わらず市場環境の将来的な著しい変化等により、事業を計画どおりに展開することができない場合には、投下資金の未回収等、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
5. 地政学リスク
当社グループは世界の各地域に事業拠点を有しており、グローバルなネットワークを構築しています。資源事業においては南米チリのカセロネス鉱山をはじめ銅やレアメタル鉱山への出資、探鉱、開発を行っているほか、金属・リサイクル事業やタンタル・ニオブ事業においても、世界各国から原料を調達し、半導体材料や情報通信材料に不可欠な原料のサプライチェーン強化に向けた取り組みを進めています。また、当社グループではグループ内シンクタンクと連携し、オープンソースだけではなく各分野の専門家とのネットワーキングを駆使して情報を収集し、社内への提供に努めています。近年、将来における資源枯渇への危機意識や資源需給の不均衡に加え、資源国のロイヤリティ課税や高付加価値化政策の導入といった戦略物資化(いわゆる資源ナショナリズム)や紛争鉱物問題、需要国におけるリサイクル原料などの囲い込みの動きなどが進んでいます。このような動きがさらに進むと、原料の調達がより困難になる可能性があります。こうした原料調達リスクに加え、国際的な政治対立が深まり、当社製品のサプライチェーンが寸断された場合、事業継続に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループの海外における事業活動が訴訟、紛争、その他の法的手続の対象になることがあります。当社はこのような訴訟における争点及び進捗について定期的にモニタリングを行っており、事業継続にあたって重大な支障をきたす恐れはないものと判断していますが、訴訟には不確実性が伴うことから、複数の訴訟において多額の和解金や損害賠償請求が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
6. 自然災害リスク
近年の異常気象により自然災害は激甚化する傾向にあります。当社グループは、国内外に多数の事業拠点とグループ会社を有し、グローバルに事業活動を展開しています。地震、津波、洪水、大雪等の規模が極めて大きい自然災害が発生した場合、社会インフラや経済活動の停止によるサプライチェーンの寸断だけではなく、当社資産の甚大な被害により、長期にわたって、顧客への供給遅延や供給停止が発生し、収益を悪化させる可能性があります。また、従業員の被災により、人命にかかわる事態となる可能性があります。このような事態に備え、当社グループでは、危機・緊急事態対応規則に基づき人的・物的被害の最小化及び早期復旧を図るための事業継続計画を策定し、定期的な各種訓練と、その結果に基づく改善を継続的に行っています。しかしながら、当社の想定を遥かに超える被災状況に陥り、早期復旧が困難な場合には、当社グループの事業継続に支障をきたす可能性があります。
7. 感染症流行リスク
新型コロナウイルスの発生時には、JX金属グループ感染症対策基本規則及び感染症対応マニュアルを定め、政府・官公庁・地方自治体等の公的機関等、適切と考えうる国内外の情報を収集し、さらに、基本方針、実施する対策、出社方針・勤務体制の変更、感染した場合の行動等を適宜従業員に対して周知徹底いたしました。上記のとおり、感染症流行時には、適切な対応を実施し、当社グループの事業運営に大きな影響を発生させないよう努めています。しかしながら、将来において予期せぬ強毒性かつ感染力の高い新たなパンデミックが発生した場合には、拠点地域での人流の抑制や既存のサプライチェーンの寸断が発生する可能性があります。また、当社従業員が当該感染症にり患し、生産拠点での必要な人員を確保できない場合、当社グループの事業継続に支障をきたす可能性があります。
8. サステナビリティに関するリスク
近年、ステークホルダーから企業に対して、脱炭素・循環型社会への貢献、生物多様性や水資源の保全、人権の尊重等、サステナビリティに関する各分野に対する取り組みが求められています。当社グループでは、長期ビジョンにおいて、持続可能な社会の実現に貢献することを打ち出し、経営方針として同分野の取り組みを重点課題に定め、その中でも特に優先的に取り組むべき6つのテーマをマテリアリティとして特定し、各種施策の推進・対応を積極的に進めています。しかしながら、将来においてステークホルダーからの要請の厳格化や諸外国の規制強化に対して、十分な対応が取れない場合、顧客との取引関係の解消、操業の縮小に追い込まれる等、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響が発生する可能性があります。また、当社グループのブランドに対する社会的信用の低下につながる可能性があります。
9. 人事リスク
少子高齢化により国内労働人口が減少するなか、現役世代、特に10-30代の働き方への価値観は、急激に変化かつ多様化しています。また、海外で主流だったキャリア志向は、国内にて近年急速に広く定着したものと認識しています。当社では、優秀な人材の獲得及び定着に向けて、人事制度の見直しによる処遇改善により、雇用市場における競争力を高める取り組みや、自己申告に基づく柔軟な配置転換の実施及び多様な人材が活躍できる仕組み作り等により、事業環境の変化に対応できる組織風土を醸成する取り組みを進めています。しかしながら、当社が、将来的な労働市場の変化に十分に対応できない場合、従業員が当社で働く魅力は相対的に低下し、離職者が増加する可能性があります。また当社が求めるあらゆる人材の層において、新規採用者の確保が困難となることが想定されます。さらに、人員の不足が長期にわたり継続する場合には、事業運営に支障をきたし、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響が発生する可能性があります。
10. 労務リスク
当社グループは、グローバルにビジネスを展開しており、国内外に多くの従業員を抱えていることから、各国の関連法令、ルール等の定めにしたがって、各種人事制度と内部通報制度を整備するとともに、役員・従業員向け教育を充実することで、コンプライアンス知識や意識の向上を図っています。しかしながら、それらの制度設計やその運用が、将来において関連法規の予期せぬ変更に追従できない場合、当局から課徴金の支払をはじめとする行政処分を受ける可能性があります。また、不適切な労働時間の管理による長時間労働や、モラルの欠如による各種ハラスメント行為、海外の労働慣習からの逸脱行為等が発生した場合、従業員の心身の健康が損なわれたり、人材の流出や訴訟に発展することにより、当社グループの財政状態に影響を及ぼすだけでなく、社会的信用の低下を招く可能性があります。
11. 内部統制に関するリスク
当社グループは、業務の効率性と適正性を十分に確保するための内部統制システムを、取締役会の監督のもと、「内部統制システム整備・運用の基本方針」に基づき整備し運用するとともに、その状況についてモニタリングを実施しています。しかしながら、当社及びグループ各社において、取り組みの範囲を超える予期せぬ事態により、内部統制システムが有効に機能せず、法令・規則違反、巨額な損失リスクの顕在化(契約違反による損害賠償、役員・従業員等の不正の誘発などを含む)、ディスクロージャーの信頼性の毀損等に発展した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
12. 情報セキュリティリスク
サイバー攻撃や誤操作、内部不正により、当社や取引先の情報資産が流出・毀損し、生産・事業運営の停止や、顧客・サプライチェーンへの深刻な影響が発生する可能性があります。当社グループでは、ISO/IEC27001に基づく情報セキュリティマネジメントシステムを導入し、その運用状況について情報セキュリティ委員会でレビューを実施するとともに、サプライチェーン全体における情報セキュリティの強化を推進しています。また、役員・従業員等の情報セキュリティ意識向上に向けて研修を実施することで、情報資産を確実に保護する体制を整備し継続的に改善しています。しかしながら、サイバー攻撃や産業スパイ等による機密情報を狙う手口は巧妙化しており、当社グループの取り組みの範囲を超える予期せぬ事態による情報流出事故等が発生した場合、行政処分による課徴金や刑事訴訟による罰金、民事訴訟による損害賠償金等を課せられ、当社グループの財政状態に影響を及ぼすだけでなく、社会的信用の低下を招く可能性があります。
13. 製品品質リスク
当社グループは、国内外生産拠点において、国際品質マネジメント規格や各業界で求められる基準に従い、多様な製品の品質マネジメントを実施しています。また、独自に保有する品質技術や過去から蓄積する品質トラブルデータを活用し、製品の企画、設計、試作、製造の各段階での設計審査、内部監査、サプライヤーとの協力関係構築・品質監査・指導、工程管理等を通じて製品の信頼性や安全性を十分に確保するため、品質管理体制の構築を図っている他、各拠点における検査自動化、人材育成を継続的に推進しています。
しかしながら、当社グループの取り組みの範囲を超える予期せぬ事態により、品質上の不具合(規制物質含有を含む)や不正が発生した場合、回収コストや賠償費用が発生し、当社グループの財政状態に影響を及ぼすだけでなく、社会的信用の低下を招く可能性があります。
14. 環境問題に関するリスク
当社グループの事業は、国内外で様々な環境関連法令の適用を受けており、それらの法令に基づき、環境保全活動を行っています。
子会社であるグールド・エレクトロニクス社(米国法人、以下、「グールド社」という。)は、過去の事業において生産拠点を展開していた米国内の地域における環境問題に関連して、米国スーパーファンド法等の環境法令に基づき特定のサイトについて潜在的責任当事者として浄化作業を中心とする環境対策等に関する責任の対象とされています。同社の最終的な負担額は、地域指定の原因となった物質の量及び性質、他の潜在的責任当事者の総数及びその財政状態、対応工事の方法及び技術、環境法令の改正、物価の動向など多くの要因に左右され、相応に多額となる可能性があります。グールド社は、上記に関しては、合理的な見積りに基づき引当計上を行っていますが、上記要因により実際の負担額が引当額を上回り、結果として、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは長年の事業活動の結果、全国各地に休廃止鉱山を所有しています。鉱山保安法に基づき、それらの休廃止鉱山の坑廃水処理などの活動を実施していますが、関連法令の改正や自然災害等が発生した場合には、休廃止鉱山の管理に要する費用が変更となる可能性があります。上記負担額に関しては、合理的な見積りに基づき引当計上を行っていますが、上記要因により実際の負担額が引当額を上回る可能性があり、この場合、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響が生じる可能性があります。
15. 役員・大株主・関係会社等に関する重要事項等
当連結会計年度末日現在、ENEOSホールディングス株式会社(以下、「ENEOSホールディングス」という。)が所有する議決権数の割合は、42.39%です。
当社グループとENEOSグループとの間には事業上の競合及び当社グループの経営において事前にENEOSホールディングスの承認を要する事項等はありませんが、当社は引き続き経営意思決定の透明性・公正性を確保すべく、取締役11名のうち独立社外取締役を5名選任しているほか、委員の過半数かつ議長を独立社外取締役で構成する指名・報酬諮問委員会において、当社取締役の選解任及び役員報酬に関連する重要事項について審議しています。
なお、当社は、ENEOSホールディングスの監査等委員である取締役を務める塩田智夫氏を監査等委員である取締役として選任していますが、当該人事は、事業運営、財務・会計及びサステナビリティ等の分野における同氏の知見を活かして当社の取締役会の経営機能の一層の強化を図ることを目的としたもので、企業経営の健全性及び少数株主保護の観点からも支障がないとして、指名・報酬諮問委員会に諮問の上で決定しています。
また、当社グループでは、健全な取引を実施し少数株主の利益に十分配慮すべく、ENEOSホールディングスを含む関連当事者との取引を行うに当たっては、関連当事者取引規則に基づき、各取引について合理性及び取引条件の妥当性が担保される場合に限り取引を実施することとしています。
以上を踏まえれば、当社グループの事業運営の独立性は確保されていると判断しています。
このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E01081] S100W549)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。